特許第6573448号(P6573448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573448導体を曲げ且つ巻いて超伝導コイルを作る装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573448
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】導体を曲げ且つ巻いて超伝導コイルを作る装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/06 20060101AFI20190902BHJP
   H01F 41/06 20160101ALI20190902BHJP
【FI】
   H01F6/06 150
   H01F41/06
   H01F6/06 110
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-234304(P2014-234304)
(22)【出願日】2014年11月19日
(65)【公開番号】特開2015-103807(P2015-103807A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2017年10月27日
(31)【優先権主張番号】TO2013A000942
(32)【優先日】2013年11月20日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514294212
【氏名又は名称】チティエ スィステミ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ダーニ
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−219722(JP,A)
【文献】 特開2004−79786(JP,A)
【文献】 特開2001−332435(JP,A)
【文献】 特開2004−71769(JP,A)
【文献】 特開2014−179506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/06
H01F 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体(C)を曲げ且つ巻いて超伝導コイル(B)を作る装置であって、
導体(C)のコイルを巻き出して、まっすぐに矯正された導体(C)を提供するための第1の作動ユニット(10)と、
前記第1の作動ユニット(10)から出た前記矯正された導体(C)を曲げるように配置された曲げデバイス(14)、及び前記曲げデバイス(14)から出た曲がった導体(C)が上に置かれ、それにより一連の巻回が形成されて前記超伝導コイル(B)が作られる回転テーブル(16)を有する第2の作動ユニット(12)と
を有し、
前記回転テーブル(16)が、固定垂直軸(z)の周りで回転可能に設置されること、
前記曲げデバイス(14)が、前記第1の作動ユニット(10)により前記曲げデバイス(14)に供給される前記矯正された導体(C)の長手軸の方向と一致する長手方向(x)、及び前記長手方向(x)に垂直な横断方向(y)の両方に並進可能に設置されること、及び
前記第1の作動ユニット(10)が、前記曲げデバイス(14)とともに前記横断方向(y)にのみ並進可能に設置されること
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1の作動ユニット(10)と前記第2の作動ユニット(12)の間に、前記第2の作動ユニット(12)の上流の前記矯正された導体(C)を処理するように配置された複数の中間デバイス(18、20、22)をさらに有し、前記中間デバイス(18、20、22)が、前記第1の作動ユニット(10)及び前記曲げデバイス(14)とともに前記横断方向(y)にのみ並進可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記中間デバイス(18、20、22)が、前記第1の作動ユニット(10)から出た前記矯正された導体(C)をさらにまっすぐに矯正するように配置された1又は複数の精密矯正デバイス(18)、及び/又は洗浄デバイス(20)、及び/又はサンドブラスト・デバイス(22)を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
導体(C)を曲げ且つ巻いて超伝導コイル(B)を作る方法であって、
a)第1の作動ユニット(10)において、導体(C)のコイルを巻き出して、まっすぐに矯正された導体(C)を提供するステップと、
b)曲げデバイス(14)を使用して、前記矯正された導体(C)を曲げるステップと、
c)固定垂直軸(z)の周りで回転可能な回転テーブル(16)上に前記曲がった導体(C)を置くステップであって、それにより一連の巻回が形成されて前記超伝導コイル(B)が作られるステップと
を含み、
前記ステップb)及びc)が、外側の巻回(S)を毎回形成するように実施され、該外側の巻回(S)は、一定の曲げ半径を持つ主要部分と、前記主要部分を次の内側の巻回(S)の主要部分に接続する移行部分(L、L)とを有、前記移行部分(L、L)が、作られている前記コイル(B)の前記軸(z)に対して接線方向に配置された前記導体(C)であって、しかし前記外側の巻回(S)から内方又は外方に所与の距離だけ離間された前記導体(C)で終わるように形成され、また前記移行部分(L、L)が、前記外側の巻回(S)の前記主要部分の前記曲げ半径よりも小さい曲げ半径を有する第1の区間(L)と、前記外側の巻回(S)の前記主要部分の前記曲げ半径よりも大きい曲げ半径を有する第2の区間(L)とを含むこと、及び
前記回転テーブル(16)の前記垂直軸(z)の周りでの回転運動と、前記矯正された導体(C)の長手軸と一致する長手方向(x)における前記曲げデバイス(14)の並進運動と、前記長手方向(x)に垂直な横断方向(y)における前記第1の作動ユニット(10)と一緒の前記曲げデバイス(14)の並進運動とを制御することにより前記移行部分(L、L)が得られること
を特徴とする方法。
【請求項5】
前記回転テーブル(16)を前記垂直軸(z)の周りで回転させることにより、また前記曲げデバイス(14)を前記長手方向(x)に並進させると同時に前記曲げデバイス(14)を前記第1の作動ユニット(10)とともに前記横断方向(y)に並進させることにより、前記第1の区間(L)が得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の区間(L)が直線区間であり、且つ前記回転テーブル(16)を停止させた状態で前記曲げデバイス(14)を前記長手方向(x)に並進させることによって得られる、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体を曲げ且つ巻いて超伝導コイルを作るための、特に円形の巻回を有する超伝導コイルを作るための装置及び方法に関する。
【0002】
導体を曲げ且つ巻いて超伝導コイルを作る典型的な装置は、基本的に、巻出し及び矯正ユニットと、曲げ及び巻きユニットとを備える。巻出し及び矯正ユニットは、一定の半径で曲げられ且つ円筒螺旋形経路に沿って巻かれた導体によって形成された垂直軸を持つコイルを巻き出して、まっすぐに矯正された導体を提供する機能を有する。この目的のために、巻出し及び矯正ユニットは、コイルをその垂直軸の周りで回転させ、それと同時にローラ矯正デバイスを使用して、コイルから出てくる導体をまっすぐに矯正する。コイルは通常、連続的に且つ一定の速度で巻き出されるが、この速度は様々な理由からオペレータ又は制御システムによって変更されてもよく、例えばその後の巻き動作のうちの幾つかの重要な段階中に減速されてもよい。曲げ及び巻きユニットは、まっすぐに矯正された導体を曲げるように配置された曲げデバイスと、曲げデバイスから出てくる曲がった導体が上に置かれそれにより超伝導コイルを作るように一連の巻回(即ち一連の一巻き部分)が形成される回転テーブルとを含む。巻出し及び矯正ユニットと曲げ及び巻きユニットとの間には、例えば、導体をさらにまっすぐに矯正するためにローラ矯正デバイスの下流に設置される1又は複数の精密矯正デバイス、洗浄デバイス、及びサンドブラスト・デバイスなどの、巻出し及び矯正ユニットから出てくる矯正された導体を処理するように配置される追加のデバイスを設けることもできる。しかし、サンドブラスト・デバイスは、曲げデバイスの上流ではなく、下流に設置することもできる。曲げデバイスから出てくる曲がった導体を処理するために、曲げデバイスと回転テーブルとの間にさらなるデバイスを配置することもできる。
【0003】
通常、超伝導コイルは、垂直軸を持つ円筒螺旋形経路に沿って導体を巻くこと、したがって導体を一定の曲げ半径で曲げることによって得られるのではなく、以下の方法で得られる。まず導体は、広い角度(例えば330度)にわたって一定の半径で曲げられ、次いで、通常「巻回から巻回への移行部(turn−to−turn transition)」と呼ばれる、円周角までの残りの角度(例えば30度)を占める連結部分が作られる。そのような連結部分は、導体を再度コイルの軸に対して接線方向に配置し、しかしそこから1巻きピッチ(これは通常、巻回の横断方向サイズに絶縁層によって占められる空間を加えたのに等しい)だけ内方又は外方に離間するようにして作られる。この方法は、軸方向に非対称な経路を円周角に対して比較的狭い角度に制限して、広い角度にわたって完全に軸方向に対称な平坦な巻回を得ること(これは、コイルの適切な動作を確実にするのに重要である)を可能にする。
【0004】
或る巻回(即ち一巻き部分)から隣接する巻回への移行部は、油圧駆動ダイを使用してS字の形状に作られうる。この作業は、回転テーブルを停止して手動で行わなければならず、したがってコイルを作るのに必要とされる全体的な時間の増加、及び位置決めエラーの危険性の増大を伴う。したがってこの第1の解決法は、移行部の角度を制限できるようにはするが、現在好ましい解決法ではない。現在好ましい解決法とされる他の解決法によれば、巻回から次の巻回への移行部は、曲げデバイスを用いて、一定の曲げ半径を有する部分の終わりに、(前述の一定の曲げ半径に対して)小さい曲げ半径を持つ区間と(やはり前述の一定の曲げ半径に対して)大きい曲げ半径を持つ区間とを含む連結部分を作ることによって得られる。最初に小さい曲げ半径を持つ区間を作り、次いで大きい曲げ半径を持つ区間を作ることにより、先に形成された巻回から新しい内側の巻回へのシフトが可能になり、一方、2つの区間を逆の順序で作ることにより、先に形成された巻回から新しい外側の巻回へのシフトが可能になる。大きい曲げ半径を持つ区間は、この区間を直線のものとして作ることにより他の全ての状態を同一にして連結部分の全長を最小限に抑えることが可能になるので、直線区間、即ち無限の曲げ半径を有する区間であることが好ましい。
【0005】
上述の巻回から巻回への移行部を作るための第2の解決法は、より広い移行角度を必要とするが、より迅速で且つより正確であり、また装置の停止を伴うことがない。
【0006】
この第2の解決法を使用して装置が巻回から巻回への移行を実施できるようにするためには、曲げデバイスを巻出し及び矯正ユニットとともに、またもしあれば曲げデバイスの上流のさらなるデバイスとともに動かないようにし、且つ回転テーブルを水平面において(具体的には、以下長手方向又はx方向と呼ばれるまっすぐに矯正された導体の前進方向、及び以下横断方向又はy方向と呼ばれるx方向に垂直な方向の両方において)並進可能にし、それにより、移行段階の開始時に曲げ半径が変更されるときに、またその段階の終わりまで、回転テーブルが水平面において(したがってx方向及びy方向の両方において)その位置を変更できるようにすることが知られている。移行段階の終わりには、回転テーブルは、x方向に沿っては最初の位置と同じ位置になるが、y方向に沿っては1巻きピッチに等しい距離だけシフトされる。回転テーブルは、いったん移行段階が完遂されると、次の移行段階まで回転運動のみを行う。
【0007】
20メートル程度かそれより大きな直径を持った巨大なサイズの超伝導コイルを製造しなければならない場合、水平面内において並進する回転テーブルを作ることが非常に難しくなる場合がある。したがって、そのようなサイズのコイルを製造し、且つ上述の第2の解決法による巻回から巻回への移行部を得なければならない装置は、非常に複雑で費用がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一つの目的は、上述の第2の解決法による巻回から巻回への移行部を得ることを可能とし且つ従来技術よりも複雑ではない、導体を曲げ且つ巻いて超伝導コイルを作るための装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記その他の目的は、本発明によれば、添付の独立請求項1及び4に記載の導体を曲げ且つ巻いて超伝導コイルを作る装置及び方法により、それぞれ完全に達成される。
【0010】
本発明のさらなる有利な特徴が従属請求項に記述されており、その内容は、以下の説明の不可欠且つ統合的な部分として見なされるべきである。
【0011】
要するに、本発明は、回転テーブルにその軸の周りでの回転運動のみを与え、装置のうちの回転テーブルの上流の全部品(即ち、巻出し及び矯正ユニット、曲げデバイス、及びもしあれば巻出し及び矯正ユニットと曲げデバイスとの間に設けられたさらなるデバイス)に横断方向に沿った並進運動を与え、また、曲げデバイスのみに長手方向の並進運動も与え、それにより、回転テーブルの回転運動と、曲げデバイスを含む装置のうちの回転テーブルの上流の部品の横断方向における並進運動と、長手方向における曲げデバイスの並進運動とを適切に組み合わせることにより、巻回から巻回への移行段階が実施されるという考え方に基づく。
【0012】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら、単に非限定的な実例として以下に詳細に説明することから、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例による、導体を曲げ且つ巻いて超伝導コイルを作るための装置の平面概略図である。
図2図1の装置の曲げデバイスの斜視図である。
図3a】本発明による装置及び方法を用いてどのようにして巻回から巻回への移行段階が実施されるかを順に示すための概略図である。
図3b】本発明による装置及び方法を用いてどのようにして巻回から巻回への移行段階が実施されるかを順に示すための概略図である。
図3c】本発明による装置及び方法を用いてどのようにして巻回から巻回への移行段階が実施されるかを順に示すための概略図である。
図3d】本発明による装置及び方法を用いてどのようにして巻回から巻回への移行段階が実施されるかを順に示すための概略図である。
図3e】本発明による装置及び方法を用いてどのようにして巻回から巻回への移行段階が実施されるかを順に示すための概略図である。
図3f】本発明による装置及び方法を用いてどのようにして巻回から巻回への移行段階が実施されるかを順に示すための概略図である。
図3g】本発明による装置及び方法を用いてどのようにして巻回から巻回への移行段階が実施されるかを順に示すための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず図1を参照すると、導体Cを曲げ且つ巻いて超伝導コイルBを作るための装置が、基本的に、
一定の半径で曲げられ且つ円筒螺旋形経路に沿って巻かれた導体Cによって形成された垂直軸を持つコイルを巻き出すため、且つまっすぐに矯正された導体Cを提供するための、巻出し及び矯正ユニット10と、
巻出し及び矯正ユニット10から出てくる矯正された導体Cを曲げるように配置された曲げデバイス14、及び曲げデバイス14から出てくる曲がった導体Cが上に置かれそれにより超伝導コイルBを作るために一連の巻回が形成される回転テーブル16を含む、曲げ及び巻上げユニット12と、
例えば巻出し及び矯正ユニット10から出てくる導体Cをさらに矯正するように配置された1又は複数の精密矯正デバイス18、洗浄デバイス20、及びサンドブラスト・デバイス22などの、巻出し及び矯正ユニット10と曲げ及び巻上げユニット12との間に設置され且つ曲げ及び巻上げユニット12の上流の導体Cを処理するように配置された、複数の中間デバイスと
を備える。
【0015】
回転テーブル16は、その軸z(垂直軸)の周りで回転可能であるだけでなくその軸に沿って並進可能であるように設置される。しかし、回転テーブル16は、水平面内においては可動ではなく、したがってその軸zの位置は固定される。曲げデバイス14は、巻出し及び矯正ユニット10により曲げデバイス14に供給される矯正された導体Cの長手軸の方向と一致したx方向(以下、長手方向と呼ぶ)に沿って並進可能である。本装置のうちの回転テーブル16の上流に配置される全ての部品、即ち、曲げデバイス14、巻出し及び矯正ユニット10、並びにもしあれば曲げデバイス14と巻出し及び矯正ユニット10との間に介在される中間デバイス18、20、及び22は、水平に配向され且つ長手方向に対して垂直なy方向(以下、横断方向と呼ぶ)に沿って並進可能である。
【0016】
図2は、導体を曲げ且つ巻き上げて超伝導コイルを作るための装置で使用することのできる曲げデバイス14の典型的な実例、より具体的にはいわゆる3本ローラ曲げデバイス、つまり、それぞれ第1のローラ、中間ローラ、及び曲げローラと通常呼ばれる3本のローラ24、26、及び28を備え、これらのローラが、曲げデバイス14を通して供給される導体Cが一方の側の第1のローラ24及び曲げローラ28と反対側の中間ローラ26との間を通過するように設置された曲げデバイスを示す。図2に示された実施例では、曲げデバイス14は、上述の3つのローラの上流及び下流にそれぞれ設置された追加のローラ30及び32を備えるが、これらの追加のローラは省略されてもよい。さらに、曲げデバイス14は、本明細書に示された構成とは異なる構成を有することもできる。
【0017】
次に、2つの巻回(turn;一巻き部分)間の連結部分が、小さい曲げ半径を有する第1の湾曲区間と、第2の直線区間とを含む場合に関して、図3a〜3gを参照しながら、本発明による装置において巻回から巻回への移行段階が実施される方法、より具体的にはコイルBの外側の巻回Sから内側の巻回Sへの移行について説明する。
【0018】
図3aは、主たる一定半径巻き部分の終わりの状態を示す。この巻き部分を作る全過程中、曲げデバイス14は、x方向に沿って移動されず、装置のうちの回転テーブル16の上流に設置された部品(曲げデバイス14が含まれる)は、y方向に沿って移動されず、回転テーブル16は、軸zの周りで(例えば、一定の速度で)回転し始め、導体Cは、巻出し及び矯正ユニット10から曲げデバイス14へとx方向に沿って(例えば、回転テーブル16と同様に一定の速度で)送られる。
【0019】
巻回から巻回への移行段階中、装置のうちの回転テーブル16の上流に設置された部品のy方向に沿った並進運動、及び曲げデバイス14のx方向に沿った並進運動、並びに回転テーブル16のその軸zの周りでの回転運動は、以下で説明するように制御される。
【0020】
x方向に沿った曲げデバイス14の並進運動に関する限り、適用されるのが好ましい運動法則は、以下のものである:
Δx(α)=R・sinα
ここで、αは、移行の開始位置から測定された回転テーブル16の(したがって、回転テーブル16上に形成されているコイルBの)現在の角度位置であり、Rは、回転テーブル16の(即ち、コイルBの)回転の軸zと移行部の第1の区間(湾曲区間)の湾曲の中心との間の距離、即ち、すでに形成された巻回Sの半径と移行部の第1の区間の半径との間の差異である。
【0021】
一定半径の巻き部分が完成するとすぐに、導体Cの長手軸と現時点での移行部の弧との接触要求を満たすように、曲げデバイスが好ましくは上述の運動法則に従ってx方向に移動し始める(図3b及び3c参照)。移行部の湾曲部分を作る過程中、曲げデバイス14のローラの位置は、移行部の湾曲部分の正確な半径を画定するように調整される。さらに、移行部の湾曲部分を作る過程中、装置のうちの回転テーブル16の上流に設置された部品は、内側の巻回Sに対応する(回転テーブル16に対する)径方向位置に向かってy方向に沿って移動される。
【0022】
図3dは、移行部の湾曲部分の終点を示す。この状態では、曲げデバイス14は、x方向に沿ったその最大前進位置に達しているが、装置のうちの回転テーブル16の上流に設置された部品は、1巻きピッチ分y方向に沿って移動されているので、内側の巻回Sに対応するy方向沿いの位置に達している。図3dに示された状態では、回転テーブル16の回転、及び導体Cの前進運動のどちらも、主たる一定半径部分の曲げを始められるようにするためのx方向沿いの正しい位置に曲げデバイス14を戻せるようにするために停止されており、主たる一定半径部分は、先の巻回Sから1巻きピッチ分引いたのと等しい半径を有することになる(図3f参照)。
【0023】
曲げデバイス14をx方向に沿ってそれまでの運動の方向とは反対の方向に移動させられるようにするためには、まず、曲げデバイス14のローラの位置、特に曲げローラ28の位置を、導体Cの矯正された部分に合わせることが必要である。この段階は、図3eに示されている。
【0024】
図3fは、移行部分が完全に作られた状態を表す。この図では、移行部分のうちの湾曲区間はLで示され、直線区間はLで示される。
【0025】
図3gは、すでに作られた内側の巻回Sの第1の一定半径部分を示す。曲げローラ28は(図3eに示された段階の終わりから)内側の巻回Sを形成するのに適した位置に達している。内側の巻回Sの一定半径部分全体にわたって、図3aを参照してすでに説明されたのと同じ考慮事項が適合する。
【0026】
y方向における曲げデバイス14のローラの運動、即ち、導体Cの曲げを生み出し且つ制御する運動に関しては、この運動は通常、曲げデバイス自体を通る導体Cの前進運動に応じて調整され、より具体的には、曲げデバイスから出てくる導体の運動に応じて調整される。この場合、この運動は、相対前進運動、即ち、曲げデバイス自体に対する曲げデバイス14から出てくる導体Cの前進運動となる。移行部の現在の弧をΔtで示し、移行部の半径をrで示すと、以下の式が適用される:
Δt=α・r
【0027】
上述の式がαやΔtなどの「曲げの後」のパラメータのみに言及する一方で、曲げデバイスに対する導体の前進運動が「曲げデバイスから出てくること」を対象とするものであることを、考慮しなければならない。その理由は、この方法では、式は曲げデバイス内での導体の長さの変化に起因する近位誤差の影響を受けないためである。しかし、実際のところ、曲げの後の曲げデバイスに対する導体の前進運動を測定することは、特に移行が半径の変化を伴う場合には、容易ではない。したがって、実際には(移行に関する限り)曲げの前の前進運動を適切なエンコーダ・システムを用いて測定し、それにより比較的短い長さにわたって長さの変化に関する小さな誤差を監視するのは容易であるので、曲げ前の前進運動を使用することが許容される。
【0028】
大サイズのコイルの場合に特に有利な、巻回から巻回への移行部を作るための構造的にあまり複雑でない解決法を提供することに加えて、本発明は、曲げデバイスのローラ間に含まれた導体の部分の弾性に起因する誤差を補償するのに必要とされる位置修正を可能にするという利点を提供する。通常、曲げデバイスから出てくる導体の曲りの中心は、曲げデバイス自体の中間横断面、即ち、曲げデバイスに入って曲げデバイスの中間ローラの軸を通過する導体の長手軸に垂直な面には位置しない。これは、曲げデバイスのローラ間に含まれた導体の部分の弾性成分に起因する。次いで弾性成分は、導体が曲げデバイスから出てくるときに開放される。一般に、曲げデバイスから出てくる導体の曲りの中心の位置は、長手方向xにおいても横断方向yにおいても、前述の中間横断面から大きく離間される。曲げデバイスと回転テーブルとの間に含まれた導体の曲がった部分における弾性応力は、当然ながら望ましくない導体の変形をもたらす可能性があるので、可能な限り消去されなければならないことから、この影響を補償する必要がある。必要とされる補正は、曲げデバイスをx方向及びy方向に沿って適切に移動させることにより、且つ/又は装置のうちの曲げデバイスの上流の部品をy方向に沿って適切に移動させることにより、本発明による装置を用いて行うことができる。
【0029】
当然ながら、本発明の原理に変更を加えないままで、添付の特許請求の範囲で定義される保護の範囲から逸脱することなく、実施例及び構造上の詳細を、単に非限定的な実例として説明され且つ図示されたものに対して大幅に修正することができる。
【符号の説明】
【0030】
10 巻出し及び矯正ユニット、第1の作動ユニット
12 曲げ及び巻上げユニット、第2の作動ユニット
14 曲げデバイス
16 回転テーブル
18 精密矯正デバイス、中間デバイス
20 洗浄デバイス、中間デバイス
22 サンドブラスト・デバイス、中間デバイス
24 第1のローラ
26 中間ローラ
28 曲げローラ
30 追加のローラ
32 追加のローラ
B 超伝導コイル
C 導体
湾曲区間
直線区間
外側の巻回
内側の巻回
x 長手方向
y 横断方向
z 垂直軸
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図3g