(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573462
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】水晶振動子
(51)【国際特許分類】
H03H 9/10 20060101AFI20190902BHJP
H03H 9/19 20060101ALI20190902BHJP
H03H 9/02 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
H03H9/10
H03H9/19 A
H03H9/02 A
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-45678(P2015-45678)
(22)【出願日】2015年3月9日
(65)【公開番号】特開2016-167661(P2016-167661A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237444
【氏名又は名称】リバーエレテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(72)【発明者】
【氏名】山形 佑亮
(72)【発明者】
【氏名】芦沢 英紀
【審査官】
橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−129327(JP,A)
【文献】
特開2010−147666(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/035714(WO,A1)
【文献】
特開2008−236741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/10
H03H 9/02
H03H 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動片及びこの水晶振動片の少なくとも一端を支持する連結片を有し、前記水晶振動片の外周を囲う支持枠からなる平板状の振動体と、
前記支持枠の上下面にそれぞれ密接する封止枠を有して前記振動体を密閉する一対の封止体とを備えた水晶振動子において、
前記一対の封止体には、前記振動体を挟持した際に、前記連結片の少なくとも一部にそれぞれ対向して前記連結片を支持する一対の補強片が設けられていることを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】
基部とこの基部から延びる一対の振動腕部を有する水晶振動片の前記基部の少なくとも一端を支持する連結片を有し、前記水晶振動片の外周を囲う支持枠からなる平板状の振動体と、
前記支持枠の上下面にそれぞれ密接する封止枠を有して前記振動体を挟持する一対の封止体とを備えた水晶振動子において、
前記一対の封止体には、前記振動体を挟持した際に、前記連結片の少なくとも一部に対向して前記連結片を支持する一対の補強片が設けられていることを特徴とする水晶振動子。
【請求項3】
前記連結片は、前記支持枠の一辺から延びて前記基部の一端に連結する第1の連結片と、前記支持枠の一辺と対向する他辺から前記一対の振動腕部の間を延びて前記基部の他端に連結する第2の連結片とを有し、
前記一対の封止体には、前記振動体を挟持した際に、前記第1及び第2の連結片の少なくとも一部に対向して前記第1及び第2の連結片を支持する一対の補強片が設けられている請求項2に記載の水晶振動子。
【請求項4】
前記補強片は、前記連結片に対応した長さと幅を有し、前記一対の封止体が前記振動体を挟持した際には、前記連結片の全体に対向して前記連結片を支持する請求項1乃至3のいずれかに記載の水晶振動子。
【請求項5】
前記補強片は、前記水晶振動片と前記連結片との接続部分を含んで、前記連結片に対向する請求項1乃至4のいずれかに記載の水晶振動子。
【請求項6】
前記一対の補強片の少なくとも一方が、前記連結片の対向する側に当接して支持する請求項1乃至5のいずれかに記載の水晶振動子。
【請求項7】
前記一対の補強片の少なくとも一方が、前記連結片の対向する側に僅かな隙間を有して近接して配置され、
前記僅かな隙間が振動体の支持枠と一対の封止体の封止枠とを接合させるための接合層の厚みに相当するものである請求項1乃至5のいずれかに記載の水晶振動子。
【請求項8】
前記一対の補強片の少なくとも一方が、前記連結片の対向する側に接合されて支持する請求項1乃至5のいずれかに記載の水晶振動子。
【請求項9】
前記連結片は、前記一対の振動腕部が延びる方向と直交する方向で前記振動腕部の基部に連結する請求項2に記載の水晶振動子。
【請求項10】
前記支持枠及び一対の封止枠は、四角形状の外周部と、前記水晶振動片を囲う内周部とを有し、前記内周部が曲面形状に形成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の水晶振動子。
【請求項11】
前記内周部の曲面形状が、ひょうたん形又は卵形である請求項10に記載の水晶振動子。
【請求項12】
前記一対の封止体は、前記水晶振動片の表面及び裏面に対向する面に、金属めっき層又は樹脂塗膜層が形成される請求項1乃至3のいずれかに記載の水晶振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動片が形成される振動体と、この振動体を封止する一対の封止体とからなる水晶振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な水晶振動子は、所定の形状及び振動モードからなる水晶振動片と、この水晶振動片を収容するセラミック製のケース及び前記水晶振動片を封止する金属製の蓋体とによって形成されている。前記水晶振動片は、基端部が前記ケース内に設けられている電極部に導電性の接合剤を介して電気的に接続支持される。
【0003】
一方、前記水晶振動片を水晶ウェハからエッチング等によって形成された振動体と、この振動体を挟持することによって前記水晶振動片を封入する一対の封止体とによって一体形成されるウェハレベルパッケージによって製造された水晶振動子も知られている。
【0004】
特許文献1,2には上記ウェハレベルパッケージによって形成された水晶振動子が開示されている。このウェハレベルパッケージによる水晶振動子は、各種振動モードの水晶振動片及びこの水晶振動片を囲うようにして一端が支持される支持枠とからなる振動体と、前記水晶振動片を封入する一対の封止体とを水晶ウェハからエッチング等によって打ち抜き形成し、前記振動体を一対の封止体で挟み込んで密閉することによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−55632号公報
【特許文献2】特開2014−150324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記ウェハレベルパッケージによって形成される水晶振動子は、一枚の水晶ウェハから一括して大量の水晶振動子を製造できるので、製造工数及び製造コストの低廉化や水晶振動子自体の小型化及び薄型化が図られるといった利点を有したものとなっている。
【0007】
しかしながら、前記振動体及び封止体が薄い水晶ウェハによって形成されているため、外部からの押圧や衝撃に対する強度が十分でないといった問題があった。このような問題を改善する構造として、特許文献2には、封止体側に補強用の柱部を設けた水晶振動子が開示されている。この構造によれば、封止体自体の強度は増すが、振動体における水晶振動片の支持構造に関しては補強効果が及ばない。
【0008】
一方、前記水晶振動片が音叉型の振動モードの場合には、この水晶振動片の一端を前記支持枠に繋げるための連結片の幅が狭いほど振動漏れが少ないことが知られているが、エッチングによって加工するため、均一な幅に形成できない。このため、前記連結片の一部に支持強度の不十分な部分が生じ、製造時における歩留りや耐久性の低下の原因となっていた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、振動体における水晶振動子片の支持を一対の封止体によって補強することで、振動漏れを低減し、安定した振動モードを得ることができる水晶振動子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の水晶振動子は、水晶振動片及びこの水晶振動片の少なくとも一端を支持する連結片を有し、前記水晶振動片の外周を囲う支持枠からなる平板状の振動体と、前記支持枠の上下面にそれぞれ密接する封止枠を有して前記振動体を密閉する一対の封止体とを備えた水晶振動子において、前記一対の封止体には、前記振動体を挟持した際に、前記連結片の少なくとも一部にそれぞれ対向して前記連結片を支持する一対の補強片が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の水晶振動子は、基部とこの基部から延びる一対の振動腕部を有する水晶振動片の前記基部の少なくとも一端を支持する連結片を有し、前記水晶振動片の外周を囲う支持枠からなる平板状の振動体と、前記支持枠の上下面にそれぞれ密接する封止枠を有して前記振動体を挟持する一対の封止体とを備えた水晶振動子において、前記一対の封止体には、前記振動体を挟持した際に、前記連結片の少なくとも一部に対向して前記連結片を支持する一対の補強片が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水晶振動子によれば、水晶振動片の一端を支持枠に支持する連結片が幅狭に形成された場合であっても、一対の封止体に設けられている補強片が前記連結片と対向する位置で支持されるため、前記水晶振動片の支持枠に対する支持強度が増し、安定した振動を得ることができる。
【0013】
また、前記水晶振動片が基部から延びる一対の振動腕部を有した形状の場合であっても同様に、前記基部の一端を支持する連結片が一対の封止体に設けられている補強片と対向する位置で支持されるため、前記一対の振動腕部における振動を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の水晶振動子の分解斜視図である。
【
図3】上記水晶振動子の分解断面図(a)及び完成断面図(b)である。
【
図5】第2実施形態の水晶振動子の展開平面図である。
【
図7】第3実施形態の水晶振動子の展開平面図である。
【
図8】第4実施形態の水晶振動子の展開平面図である。
【
図9】音叉型の水晶振動片の各種支持構造における振動体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の水晶振動子の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示す第1実施形態の水晶振動子11は、振動体12と、この振動体12の上下面を密閉する一対の封止体13,14とからなっており、前記振動体12及び一対の封止体13,14は、水晶ウェハをエッチング及びダイシングすることによって形成されている。
【0016】
前記水晶ウェハは、電気軸をX軸、機械軸をY軸、光軸をZ軸とした水晶原石の直交座標系において、Z軸平面から約1°X軸回転させたカット角で板状に薄くスライスすることによって形成される。そして、この水晶ウェハに対してフォトリソ工程によってマスクパターンを形成し、水晶エッチングを施すことによって、
図2に示すように、基部18と、この基部18から平行に延びる一対の振動腕部19とからなる音叉型の水晶振動片15と、この水晶振動片15の外周を取り囲む四角形状の支持枠16と、この支持枠16の一端と前記基部18の一端とを連結する連結片17とからなる振動体12が形成される。また、一対の封止体13,14も同様に、エッチングによって、四角形状の封止枠21と、この封止枠21の一端から平面方向に突出する補強片22と、前記封止枠21及び補強片22を残して凹設される凹部23が形成される。なお、前記振動体12及び一対の封止体13,14の形状は、微細加工に適したレーザやパウダービームを用いた切断や打ち抜きによって形成することもできる。
【0017】
前記水晶振動片15の振動腕部19は、基部18の一端から所定の間隔を有して平行に延び、表裏面及び側面には極性の異なる励振電極(図示せず)が形成されている。この振動腕部19は、厚みが50〜200μmに形成され、振動周波数に応じて長さ及び幅が設定される。なお、前記励振電極は水晶振動片15の上下面に一様に金属膜を加熱蒸着あるいはスパッタリング法等によって形成し、その上にフォトレジスト膜を塗布したフォトマスクを介してフォトレジスト膜を露光、現像して電極パターンを形成し、金属膜をエッチングすることで形成される。
【0018】
図3に示すように、前記振動体12の支持枠16の上面及び下面に前記一対の封止体13,14の封止枠21を減圧環境下において密着固定することによって、前記水晶振動片15が凹部23内に気密封止される。前記一対の封止体13,14を振動体12に密着する際に、それぞれの封止体13,14の内側に設けられている補強片22が振動体12に設けられている連結片17の上面及び下面に対向した状態で当接されることになる。これによって、一対の振動腕部19が接続される基部18を安定した状態で支持することができる。
【0019】
前記水晶振動片15を支持枠16に支持する連結片17は、幅が狭いほど振動漏れを防止する効果が大きくなるが、振動体12自体が薄い水晶ウェハで形成されているため、この振動体12に形成される連結片17の幅を狭くするには強度的に限界がある。本実施形態では、一対の封止体13,14で密閉する際に、前記連結片17が一対の補強片22によって厚み方向の強度が増すので、その分、幅を狭く形成することが可能となる。また、前記連結片17の上下面には前記水晶振動片15に延びる一対の励振電極パターン(図示せず)が形成されているので、前記補強片22の密着による電気的接続面が増え、電界効率の低下を防止する効果も得られる。
【0020】
前述したように、前記一対の補強片22は、連結片17の上下面あるいはいずれか一方の面に当接することによって、水晶振動片15を安定的に支持することができるが、
図4(a)に示したように、一対の補強片22と連結片17の上下面あるいはいずれか一方の面との間に0.1μm〜数μm程度の僅かな隙間31を有して近接した状態で対向させてもよい。この隙間31は、振動体12の支持枠16と一対の封止体13,14の封止枠21とを接合させるための接合層20の厚みに相当するものである。なお、前記接合層20は、水晶振動片15に形成される励振電極(図示せず)と外部電極(図示せず)との電気的接続に使用される金属膜によって形成されている。このような僅かな隙間31を有して近接させた場合であっても、前記連結片17の動きを規制することができるので、当接した場合と同様の支持効果が得られる。
【0021】
また、
図4(b)に示したように、前記隙間31に前記接合層20を設け、補強片22を連結片17に接合させることもできる。なお、一方の隙間31に接合層20を設け、他方の隙間31はそのままの状態であってもよい。このように、前記補強片22と連結片17とを接合させて一体化することで、さらに支持強度が高められるので、外部からの衝撃に対しても振動体12内の水晶振動片15を安定して支持することができる。
【0022】
図5及び
図6は第2実施形態の水晶振動子における補強片の形成例を示したものである。この実施形態では、基部18と連結片17との接続部分に限定させるように一対の補強片24を設けている。この補強片24は、一対の封止体13,14の凹部23から封止枠21側に突出して形成されている。これによって、一対の振動腕部19による振動の影響を最も受けやすい前記基部18と連結片17との接続部分を補強することができる。なお、
図4に示したように、前記一対の補強片24は、連結片17と当接あるいは近接するように対向する位置であればよく、また、接合層を介して固定してもよい。
【0023】
上記実施形態では、一例として音叉型の水晶振動片について示したが、音叉型以外の厚みすべり振動モードや輪郭振動モード等の水晶振動片であっても、それぞれの水晶振動片に対応した連結片に対応するように、前記補強片を封止体側に設けることで、上記同様の効果を得ることができる。
図7は輪郭振動モードの水晶振動片45によって形成される第3実施形態の水晶振動子41の振動体42及び一対の封止体43,44の構成例を示したものである。前記振動体42における水晶振動片45は、四隅に振動の節点を有し、この各節点から支持枠46の内側角部に向けて延びる連結片47によって支持されている。一方、前記振動体42を挟持する一対の封止体43,44には、それぞれ封止枠48の内側角部から前記連結片47が延びる方向に対応する補強片49が設けられる。このため、前記振動体42を一対の封止体43,44によって挟み込むようにして密着することで、前記各連結片47と対応する各補強片49とが厚み方向に当接あるいは近接した状態で重なり合って、振動する水晶振動片45を安定した状態で支持することができる。
【0024】
また、従来のウェハレベルパッケージで形成された水晶振動子は、上記の水晶振動片15,45の支持強度の問題に加えて、押圧変形や落下等における機械的な強度がセラミックや金属材からなるケース等によって保持されている水晶振動子に比べて弱いといった問題があった。
図8はこの機械的な強度を補強するための構造を備えた第4実施形態の水晶振動子51を示したものである。この水晶振動子51は、第1実施形態の水晶振動片15と同様に、基部18から平行に延びる一対の振動腕部19からなる水晶振動片15及びこの水晶振動片15を支持する支持枠16を有する平板状の振動体25と、前記支持枠16の上面及び下面にそれぞれ密接する封止枠21を有して前記水晶振動片15を密閉する一対の封止体26,27とを備えている。この構成において、前記基部18の一端が前記支持枠21から延びる第1の連結片28を介して支持されると共に、他端が前記支持枠16から前記一対の振動腕部19の間に延びる第2の連結片29を介して支持されたものとなっている。そして、前記一対の封止体26,27には、該水晶振動片15を挟持した際に、前記第1及び第2の連結片28,29の上下面を挟むようにして当接あるいは近接するように対向する一対の補強片30が設けられている。
【0025】
上記構造の水晶振動子51によれば、一対の封止体26,27の中央部を長手方向に沿って延びる補強片30と、前記第1の連結片28及び第2の連結片29とが重なり、厚みを有した状態で水晶振動片15の基部18を対向する二か所を支持することができる。これによって、振動漏れのない安定した振動モードを得ることができる。また、前記振動体25の第1の連結片28及び第2の連結片29と、一対の封止体26,27に設けられている補強片30とによって、水晶振動片15が振動する空間を保持しているので、落下や外部からの衝撃を受けた場合であっても、水晶振動片15が接触することなく、振動不良を防止することができる。
【0026】
次に、
図2(b)に示した第1実施形態と同様の振動体12aを基にした連結片17の最適な配置例について説明する。前記振動体12aは、水晶ウェハからウェットエッチングによって形成されるが、このエッチングによって基部18及び一対の振動腕部19をマスクパターンに沿って打ち抜き加工する際に、
図9(a)に示すように、基部18と振動腕部19との接続部分の内側や連結片17の周囲に異方性の結晶面Eが発生しやすくなる。このような異方性の結晶面Eは、エッチング液の濃度や速度によって不規則に発生するため、一対の振動腕部19との間で形状の不均衡が生じる場合がある。
【0027】
そこで、本実施形態では、
図9(b),(c)に示すように、エッチングに伴う結晶面Eを想定し、この結晶面Eの程度が一対の振動腕部19に対して不均衡とならないように、基部18と支持枠16とを繋ぐ連結片17を前記振動腕部19と直交する方向(X軸方向)に設けた。
図9(b)は基部18を支持枠16の一端から延びる1本に連結片17aによって片持ち支持したものである。このような片持ち支持する場合は、支持強度が必要となるため、連結片17aの幅を広く設定している。
図9(c)は(a)の連結片17に加えて、基部18のX軸方向の両端からそれぞれ外側に向けて延びる一対の連結片17bを設けることによって、基部18を三方向で支持したものである。これによって、異方性の結晶面Eが複数発生する場合があるが、基部18と一対の振動腕部19の接続部における結晶面による形状は略均等になり、左右の振動腕部の振動の不均衡による周波数ずれを防止することができる。
【0028】
図10は第5実施形態の水晶振動子であって、形状の異なる支持枠62,72を有する振動体61,71の平面形状を示したものである。この振動体61,71は、支持枠62,72がそれぞれ四角形状の外周部63,73と、水晶振動片15を囲う内周部64,74とを有し、前記内周部64,74を曲面形成することによって、前記水晶振動片15を封入するスペース65,75を規制するものである。
図10(a)は水晶振動片15の上端側及び下端側のスペースに余裕を持たせる一方、水晶振動片15の中央側のスペース65をすぼめたひょうたん形に形成したものであり、
図10(b)は水晶振動片15の中央部との間隔に余裕を持たせ、水晶振動片15の上端側及び下端側に向けて間隔を狭くした卵形に形成したものである。なお、前記振動体61,71を挟持する一対の封止体の封止枠に対しても、同様な対応する曲面形状に形成される。
【0029】
上記
図10(a),(b)に示した実施形態では、いずれも支持枠62,72の内周部64,74によって、水晶振動片15を囲うスペース65,75を第1実施形態の振動体12に比べて狭くすることができる。これによって、特に、支持枠62,72の四隅の面積が広く確保することができるので、水晶振動子が受ける外部からの衝撃に対する変形や破壊を有効に防止することができ、安定した振動モードを維持することができる。また、前記支持枠と重なる一対の封止枠との密接面が広がることで、接合強度が増し、気密封止をより確実に行うことができる。
【0030】
上記
図10では、一例として音叉型の水晶振動片について示したが、音叉型以外に厚みすべり振動モードや輪郭振動モード等の水晶振動片であっても、その水晶振動片の収容スペースに合わせて、支持枠及び一対の封止枠を形成することによって、水晶振動子全体の強度補強を行うことができる。
【0031】
また、上記各実施形態における一対の封止体自体に補強処理を行うこともできる。例えば、
図1に示した第1実施形態の水晶振動子11の場合、それぞれの封止体13,14の凹部23の底面に金属めっき層や樹脂塗膜層を形成することで、さらなる補強効果を得ることができる。
【0032】
以上説明したように、上記各実施形態の水晶振動子によれば、水晶ウェハから形成された振動体及び一対の封止体との三層構造において、振動体の水晶振動片の連結片と対向して支持することができる補強片を一対の封止体に設けたことで、水晶振動片の支持をより確実にすることができる。また、前記振動体の支持枠及び一対の封止体の封止枠の形状を設定することで、外部からの押圧や衝撃等に対する耐性を高めることができる。さらに、前記水晶振動片の連結片を一対の振動腕部と直交する方向で設けたことによって、エッチングする際の加工形状を均一にすることができ、水晶振動片による安定した振動モードを得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
E 結晶面
11 水晶振動子
12 振動体
13,14 封止体
15 水晶振動片
16 支持枠
17 連結片
18 基部
19 振動腕部
20 接合層
21 封止枠
22 補強片
23 凹部
24 補強片
25 振動体
26,27 封止体
28 第1の連結片
29 第2の連結片
30 補強片
31 隙間
41 水晶振動子
42 振動体
43,44 封止体
45 水晶振動片
46 支持枠
47 連結片
48 封止枠
49 補強片
51 水晶振動子
61,71 振動体
62,72 支持枠
63,73 外周部
64,74 内周部
65,75 スペース