(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るニッケル水素二次電池(以下、単に電池と称する)2を、図面を参照して説明する。
【0017】
本発明が適用される電池2としては特に限定されないが、例えば、
図1に示すAAサイズの円筒型の電池2に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0018】
図1に示すように、電池2は、容器として、上端が開口した有底円筒形状をなす外装缶10を備えている。外装缶10は導電性を有し、その底壁35は負極端子として機能する。外装缶10の開口には、封口体11が固定されている。この封口体11は、蓋板14及び正極端子20を含み、外装缶10を封口するとともに正極端子20を提供する。蓋板14は、導電性を有する円板形状の部材である。外装缶10の開口内には、蓋板14及びこの蓋板14を囲むリング形状の絶縁パッキン12が配置され、絶縁パッキン12は外装缶10の開口縁37をかしめ加工することにより外装缶10の開口縁37に固定されている。即ち、蓋板14及び絶縁パッキン12は互いに協働して外装缶10の開口を気密に閉塞している。
【0019】
ここで、蓋板14は中央に中央貫通孔16を有し、そして、蓋板14の外面上には中央貫通孔16を塞ぐゴム製の弁体18が配置されている。更に、蓋板14の外面上には、弁体18を覆うようにしてフランジ付き円筒形状をなす金属製の正極端子20が電気的に接続されている。この正極端子20は弁体18を蓋板14に向けて押圧している。なお、正極端子20には、図示しないガス抜き孔が開口されている。
【0020】
通常時、中央貫通孔16は弁体18によって気密に閉じられている。一方、外装缶10内にガスが発生し、その内圧が高まれば、弁体18は内圧によって圧縮され、中央貫通孔16を開き、この結果、外装缶10内から中央貫通孔16及び正極端子20のガス抜き孔を介して外部にガスが放出される。つまり、中央貫通孔16、弁体18及び正極端子20は電池のための安全弁を形成している。
【0021】
外装缶10には、アルカリ電解液(図示せず)とともに電極群22が収容されている。この電極群22は、それぞれ帯状の正極24、負極26及びセパレータ28からなり、これらは正極24と負極26との間にセパレータ28が挟み込まれた状態で渦巻状に巻回されている。即ち、セパレータ28を介して正極24及び負極26が互いに重ね合わされている。電極群22の最外周は負極26の一部(最外周部)により形成され、外装缶10の内周壁と接触している。即ち、負極26と外装缶10とは互いに電気的に接続されている。
【0022】
そして、外装缶10内には、電極群22と蓋板14との間に正極リード30が配置されている。詳しくは、正極リード30は、その一端が正極24に接続され、その他端が蓋板14に接続されている。従って、正極端子20と正極24とは、正極リード30及び蓋板14を介して互いに電気的に接続されている。なお、蓋板14と電極群22との間には円形の上部絶縁部材32が配置され、正極リード30は上部絶縁部材32に設けられたスリット39を通して延びている。また、電極群22と外装缶10の底部との間にも円形の下部絶縁部材34が配置されている。
【0023】
更に、外装缶10内には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)が注入されている。注入されたアルカリ電解液の大部分は電極群22に保持されており、正極24と負極26との間での充放電反応を進行させる。このアルカリ電解液としては、NaOHを溶質の主体として含むアルカリ電解液を用いることが好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム水溶液を用いる。本発明においては、アルカリ電解液の溶質は、NaOHが主体として含まれていればよく、NaOHが単独で含まれる態様であっても、NaOHに加え、例えば、KOH及びLiOHのうちの少なくとも一方を含んでいる態様であってもよい。ここで、アルカリ電解液の溶質としてKOHやLiOHも含む場合、NaOHの量は、これらKOHやLiOHの量よりも多くする。このようなNaOHを主体とするアルカリ電解液を用いた電池は、自己放電が抑制される。
【0024】
セパレータ28の材料としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したものを用いることができる。具体的には、スルホン化処理が施されてスルホン基が付与されたポリオレフィン繊維からなる不織布を用いることが好ましい。ここで、スルホン基は、硫酸又は発煙硫酸等の硫酸基を含む酸を用いて不織布を処理することにより付与される。このようにセパレータにスルホン化処理を施すと、親水性が付与されるだけではなく電池の自己放電を抑制する効果を発揮する。
【0025】
正極24は、多孔質構造をなし多数の空孔を有する導電性の正極基材と、前記した空孔内及び前記正極基材の表面に保持された正極合剤とからなる。
【0026】
このような正極基材としては、例えば、ニッケルめっきが施された網状、スポンジ状若しくは繊維状の金属体、あるいは、発泡ニッケル(ニッケルフォーム)を用いることができる。
【0027】
正極合剤は、正極活物質粒子、導電材、正極添加剤及び結着剤を含む。この結着剤は、正極活物質粒子、導電材及び正極添加剤を結着させると同時に正極合剤を正極基材に結着させる働きをなす。ここで、結着剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ディスパージョン、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)ディスパージョンなどを用いることができる。
【0028】
正極活物質粒子は、水酸化ニッケル粒子又は高次水酸化ニッケル粒子である。なお、これら水酸化ニッケル粒子には、亜鉛、マグネシウム及びコバルトのうちの少なくとも一種を固溶させることが好ましい。
【0029】
導電材としては、例えば、コバルト酸化物(CoO)やコバルト水酸化物(Co(OH)
2)などのコバルト化合物及びコバルト(Co)から選択された1種又は2種以上を用いることができる。この導電材は、必要に応じて正極合剤に添加されるものであり、添加される形態としては、粉末の形態のほか、正極活物質の表面を覆う被覆の形態で正極合剤に含まれていてもよい。
【0030】
正極添加剤は、正極の特性を改善するために、必要に応じ適宜選択されたものが添加される。主な正極添加剤としては、例えば、酸化イットリウムや酸化亜鉛が挙げられる。
【0031】
正極24は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、上記したようにして得られた正極活物質粒子からなる正極活物質粉末、導電材、正極添加剤、水及び結着剤を含む正極合剤スラリーを調製する。得られた正極合剤スラリーは、例えばニッケルフォームに充填され、乾燥させられる。乾燥後、水酸化ニッケル粒子等が充填されたニッケルフォームは、ロール圧延されてから裁断される。これにより、正極合剤を保持した正極24が作製される。
【0032】
次に、負極26について説明する。
負極26は、帯状をなす導電性の負極芯体を有し、この負極芯体に負極合剤が保持されている。
【0033】
負極芯体は、貫通孔が分布されたシート状の金属材からなり、例えば、パンチングメタルシートを用いることができる。負極合剤は、負極芯体の貫通孔内に充填されるばかりでなく、負極芯体の両面上にも層状にして保持されている。
【0034】
負極合剤は、水素吸蔵合金の粒子からなる水素吸蔵合金粉末、導電材及び結着剤を含む。なお、必要に応じて負極添加剤を加えても構わない。ここで、水素吸蔵合金は、負極活物質である水素を吸蔵及び放出可能な合金である。上記した結着剤は水素吸蔵合金の粒子及び導電材を互いに結着させると同時に負極合剤を負極芯体に結着させる働きをなす。ここで、結着剤としては親水性若しくは疎水性のポリマー等を用いることができ、導電材としては、カーボンブラック、黒鉛、ニッケル粉等を用いることができる。
【0035】
水素吸蔵合金粉末を構成する水素吸蔵合金としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、希土類元素、Mg及びNiを含む希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金が用いられる。この希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金としては、具体的には、以下に示す一般式(I)で表される組成を有している水素吸蔵合金を用いることが好ましい。
【0036】
Ln
1−xMg
xNi
y−zT
z・・・(I)
ただし、一般式(I)中、Lnは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ca、Sr、Sc、Y、Ti、Zr及びHfから選ばれる少なくとも1種の元素、Tは、Mn、Co、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Fe、Al、Ga、Zn、Sn、In、Cu、Si、P及びBから選ばれる少なくとも1種の元素、添字x、y、zは、それぞれ、0<x<0.03、3.1≦y≦3.8、0≦z≦0.50で示される関係を満たしている。
【0037】
また、本発明に係る水素吸蔵合金は、Lnとして選ばれた元素にSmが含まれる場合、Lnの成分中のSmの比率を20質量%以上とすることが好ましい。
【0038】
NiとTの合計値を表す添字yの値は、3.1未満では水素吸蔵合金の水素吸蔵量が減少し、3.8を上回ると電池の寿命特性を劣化させるため、3.1≦y≦3.8の
関係を満たすことが好ましい。
【0039】
更に、電池のサイクル寿命特性を良好にするために、一般式(I)中のTとしてAlを選択することが好ましい。ここで、Tの元素としてのAlの量を示す添字zの値は0.17以上とすることが好ましい。一方、Alの量は多くなりすぎると水素吸蔵合金の水素吸蔵量を減少させるため、zの値は0.50以下とすることが好ましく、より好ましくは0.30以下とする。
【0040】
次に、上記した水素吸蔵合金粒子は、例えば、以下のようにして得られる。
まず、所定の組成となるよう金属原材料を計量して混合し、この混合物を不活性ガス雰囲気中にて、例えば高周波誘導溶解炉で溶解した後、冷却してインゴットにする。得られたインゴットには、不活性ガス雰囲気中にて900〜1200℃に加熱し5〜24時間保持する熱処理を施す。この後、室温まで冷却したインゴットを機械的に粉砕することにより、水素吸蔵合金の粒子の集合体からなる水素吸蔵合金粉末が得られる。このとき、粉砕方法の条件を調整して水素吸蔵合金粉末の粒径分布が以下のような態様となるようにする。すなわち、水素吸蔵合金の粒子の平均粒径をMとし、Mの1/2の粒径をPとし、Mの1/3の粒径をQとしたとき、粒径がP以下である水素吸蔵合金粒子の含有量が水素吸蔵合金粉末の全体の20質量%未満であり、粒径がQ以下である水素吸蔵合金粒子の含有量が水素吸蔵合金粉末の全体の10質量%未満とする。
【0041】
このように、平均粒径Mの1/2の粒径P以下の粒子の含有量を水素吸蔵合金粉末の全体の20質量%未満とするとともに、平均粒径Mの1/3の粒径Q以下の粒子の含有量を水素吸蔵合金粉末の全体の10質量%未満とすると、水素吸蔵合金粉末の粒径分布としては、粒径が相対的に小さい粒子の量が少ない粒径分布となる。このような態様の粒径分布の水素吸蔵合金粉末を負極材料として用いると、得られる電池においては、長期間放置された後に使用され、再度充電され回復した後の作動電圧の低下が抑制される。
【0042】
ここで、粒径分布及び平均粒径について説明する。まず粒径分布としては、例えば、ある粒径以下の粒子の存在割合を質量基準で示した積算分布が用いられる。次いで、この積算分布において水素吸蔵合金粉末をある値の粒径から2つに分けたとき、大きい側の質量と小さい側の質量とが等量となる粒径、すなわち質量の積算が50%となる粒径を平均粒径Mとする。そして、本発明においては、平均粒径Mの1/2の粒径P以下の粒子の質量の積算は20%未満、つまり、粒径P以下の粒子は水素吸蔵合金粉末の全体の20質量%未満とするとともに、平均粒径Mの1/3の粒径Q以下の粒子の質量の積算は10%未満、つまり、粒径Q以下の粒子は水素吸蔵合金粉末の全体の10質量%未満とする。なお、本発明において、水素吸蔵合金粉末の積算分布でのある粒径以下の粒子における質量基準の積算(%)と、ある粒径以下の粒子の水素吸蔵合金粉末全体に対する質量%とは、同じ意味を示すものとなる。
【0043】
ここで、水素吸蔵合金のインゴットの粉砕方法としては、例えば、以下に示すような2段階に分けて粉砕する方法を用いることが好ましい。すなわち、まず、水素吸蔵合金のインゴットに第1段階の粉砕を施し、この第1段階で得られた粒子のうち所定の粒径よりも小さい粒径の粒子からなる粉末を一旦系外へ取り出して保存する。そして、所定の粒径よりも大きい粒径の粒子に第2段階の粉砕を行う。その後、第2段階の粉砕により得られた粉末に、保存しておいた第1段階の粉末を加える。なお、この第2段階目の粉砕では、最終的に第1段階目で得られた粉末を加えることにより所望の粒径分布となるように調整して粉砕を行う。ここで、第1段階で所定の粒径よりも小さい粒径の粒子を取り出さずに粉砕を続けると、斯かる粒子はより細かく粉砕され、結果的に小径粒子が増加する。このように小径粒子が増えると、所望の粒径分布の粉末を得るために小径粒子の含有量を減らすために最終的に小径粒子を除去しなければならず原材料の工業的なロスが増える。これに対し、上記したような2段階に分けて粉砕を行う方法の場合、原材料の工業的なロスを発生させずに所望の粒径分布となる水素吸蔵合金粉末を簡便に得ることができ好適である。
【0044】
また、負極26は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、水素吸蔵合金粉末、導電材、結着剤及び水を混練して負極合剤スラリーを調製する。なお、必要に応じて負極添加剤を更に添加しても構わない。得られた負極合剤スラリーは負極芯体に塗着され、乾燥させられる。乾燥後、水素吸蔵合金粒子等が付着した負極芯体はロール圧延及び裁断が施され、これにより負極26が作製される。
【0045】
以上のようにして作製された正極24及び負極26は、セパレータ28を介在させた状態で、渦巻き状に巻回され、これにより電極群22が形成される。
【0046】
このようにして得られた電極群22は、外装缶10内に収容される。引き続き、当該外装缶10内にはアルカリ電解液が所定量注入される。
【0047】
その後、電極群22及びアルカリ電解液を収容した外装缶10は、正極端子20を備えた蓋板14により封口され、本発明に係る電池2が得られる。得られた電池2は、初期活性化処理が施され、使用可能状態とされる。
【0048】
[実施例]
1.電池の製造
(実施例1)
【0049】
(1)正極の作製
ニッケルに対して、亜鉛3質量%、マグネシウム0.4質量%、コバルト1質量%となるように、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム及び硫酸コバルトを計量し、これらを、アンモニウムイオンを含む1Nの水酸化ナトリウム水溶液に加え、混合水溶液を調製した。得られた混合水溶液を攪拌しながら、この混合水溶液に10Nの水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加して反応させ、ここでの反応中、pHを13〜14に安定させて、水酸化ニッケルを主体とし、亜鉛、マグネシウム及びコバルトを固溶した水酸化ニッケルからなるベース粒子を生成させた。
【0050】
次に、得られたベース粒子をアンモニア水溶液中に投入し、ここへ硫酸コバルト水溶液を加えて反応させた。ここでの反応中、pHを9〜10に維持した。この反応により、ベース粒子の表面に厚さが0.1μmの水酸化コバルトの層を備えた中間体粒子を得た。更に、この中間体粒子を80℃の環境下にて酸素を含む高温空気中に対流させ、12Nの水酸化ナトリウム水溶液を噴霧して、45分間の加熱処理を施した。これにより、上記した中間体粒子の表面の水酸化コバルトが、導電性の高いオキシ水酸化コバルトとなるとともに、オキシ水酸化コバルトの層中にナトリウムが取り込まれ、ナトリウムを含有したコバルト化合物からなる導電層が形成される。その後、斯かるオキシ水酸化コバルトの層を備えた中間体粒子を濾取し、水洗いしたのち、60℃で乾燥させた。このようにして、ベース粒子の表面にナトリウムを含有したオキシ水酸化コバルトからなる導電層を有した正極活物質粒子を得た。なお、この正極活物質粒子におけるベース粒子は、ニッケルの価数の平均値が2よりも大きい高次水酸化ニッケル粒子である。
【0051】
得られた水酸化ニッケル粒子を10倍の量の純水で3回洗浄した後、脱水、乾燥した。
【0052】
次に、上記したように作製した水酸化ニッケル粒子からなる正極活物質粉末100質量部に、水酸化コバルトの粉末1.0質量部を混合し、更に、0.5質量部の酸化亜鉛、0.5質量部の酸化イットリウム、40質量部のHPCディスバージョン液を混合して正極合剤スラリーを調製し、この正極合剤スラリーを正極基材としてのシート状のニッケルフォームに充填した。正極合剤を保持したニッケルフォームを乾燥後、ロール圧延した。正極合剤を保持したニッケルフォームは、圧延加工後に所定形状に裁断された。これによりAAサイズ用の正極24が得られた。
【0053】
(2)水素吸蔵合金及び負極の作製
先ず、25質量%のLa及び75質量%のCeを含む希土類成分を調製した。得られた希土類成分、Ni、Co、Mn及びAlを計量して、これらがモル比で次の(II)式の割合となる混合物を調製した。
希土類成分:Ni:Co:Mn:Al=1.00:4.00:0.50:0.25:0.25・・・(II)
【0054】
得られた混合物は、アルゴンガス雰囲気中にて高周波誘導溶解炉で溶解され、その溶湯が鋳型に流し込まれた後、室温まで冷却され水素吸蔵合金のインゴットとされた。次いで、このインゴットに熱処理を施した。この熱処理の条件は、前記インゴットをアルゴンガス雰囲気中にて温度1000℃に加熱して10時間保持するというものである。そして、この熱処理の後、水素吸蔵合金のインゴットを室温(25℃)まで冷却した。ここで、このインゴットより採取したサンプルにつき、高周波プラズマ分光分析法(ICP)によって組成分析を行った。その結果、水素吸蔵合金の組成は、(La
0.25Ce
0.75)Ni
4.00Co
0.50Mn
0.25Al
0.25であった。得られた水素吸蔵合金の組成を表1に示した。
【0055】
次に、上記した熱処理後の水素吸蔵合金のインゴットをアルゴンガス雰囲気中で粉砕機により機械的に粉砕して水素吸蔵合金粒子からなる粉末を得た。ここで、本実施例においては、得られる水素吸蔵合金粉末の企図される粒径分布は以下の通りである。すなわち、質量基準による積算が50%にあたる平均粒径Mを70μm、Mの1/2に相当する粒径Pを35μm、Mの1/3に相当する粒径Qを23.3μmとし、粒径P以下の粒子の質量基準の積算が14%、粒径Q以下の粒子の質量基準の積算が4%となるのが企図される粒径分布である。
【0056】
上記のような粒径分布の水素吸蔵合金粉末を得るべく、本実施例では、以下の条件で粉砕を行った。まず、第1段階の粉砕を行い、第1粉末を得た。得られた第1粉末から粒径が25μm以下の小径粒子を取り出し、この小径粒子からなる小径粉末を所定の容器に収容して保存した。次に、第1粉末の残りにつき第2段階の粉砕を行い、第2粉末を得た。その後、第2粉末に、第1段階で取り出しておいた小径粉末を合わせ、水素吸蔵合金粉末を得た。なお、この粉砕の条件を粉砕条件1とする。
【0057】
以上のようにして得られた水素吸蔵合金粉末について、レーザー回折・散乱式粒径分布測定装置(装置名:Microtrac社製SRA−150)により粒径分布を測定した。その結果、質量基準による積算が50%にあたる平均粒径が70μm、粒径35μmの粒子の質量基準の積算が14%、粒径23.3μmの粒子の積算が4%となっており、狙い通りの粒径分布が得られていることを確認することができた。得られた水素吸蔵合金粉末の粒径分布を表2に示した。
【0058】
次いで、得られた水素吸蔵合金粉末100質量部に対して、ポリアクリル酸ナトリウム0.4質量部、カルボキシメチルセルロース0.1質量部、スチレンブタジエン共重合体2.5質量部、カーボンブラック1.0質量部、および水30質量部を添加して混練し、負極合剤スラリーを調製した。
【0059】
この負極合剤スラリーを負極芯体としての鉄製の孔あき板の両面に均等、且つ、厚さが一定となるように塗布した。なお、この孔あき板は45μmの厚みを有し、その表面にはニッケルめっきが施されている。
【0060】
スラリーの乾燥後、水素吸蔵合金の粉末等を含む負極合剤を保持した孔あき板を更にロール圧延して体積当たりの合金量を高めた後、裁断し、水素吸蔵合金を含むAAサイズ用の負極26を作成した。なお、負極1枚あたりの合金量は10.0gであった。
【0061】
(3)ニッケル水素二次電池の組み立て
得られた正極24及び負極26をこれらの間にセパレータ28を挟んだ状態で渦巻状に巻回し、電極群22を作製した。ここでの電極群22の作製に使用したセパレータ28はスルホン化処理が施されたポリプロピレン繊維製不織布から成り、その厚みは0.1mm(目付量53g/m
2)であった。
【0062】
一方、KOH、NaOH及びLiOHを含有した30質量%の水酸化ナトリウム水溶液からなるアルカリ電解液を準備した。
【0063】
次いで、有底円筒形状の外装缶10内に上記した電極群22を収納するとともに、上記したアルカリ電解液を2.2g注入した。この後、封口体11で外装缶10の開口を塞ぎ、公称容量2500mAhのAAサイズのニッケル水素二次電池2を組み立てた。
【0064】
(4)初期活性化処理
得られた電池2に対し、温度25℃の環境下にて、0.1Cの電流で16時間の充電を行った後に、0.2Cの電流で電池電圧が0.5Vになるまで放電させる初期活性化処理を2回繰り返した。このようにして、電池2を使用可能状態とした。
【0065】
(実施例2)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.25Sm
0.75)
0.90Mg
0.10Ni
3.25Al
0.25としたこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を作製した。
【0066】
(実施例3)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.25Sm
0.75)
0.90Mg
0.10Ni
3.25Al
0.25とし、以下に示す粉砕条件2で粉砕を
行ったこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を作製した。
【0067】
ここで、粉砕条件2について説明する。粉砕条件2では、まず、水素吸蔵合金のインゴットに対し、第1段階の粉砕を行い、第1粉末を得た。得られた第1粉末から粒径が45μm以下の小径粒子を取り出し、この小径粒子からなる小径粉末を所定の容器に収容して保存した。次に、第1粉末の残りにつき第2段階の粉砕を行い、第2粉末を得た。その後、第2粉末に、第1段階で取り出しておいた小径粉末を合わせ、水素吸蔵合金粉末を得た。
【0068】
(実施例4)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.25Sm
0.75)
0.97Mg
0.03Ni
3.25Al
0.25としたこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を作製した。
【0069】
(実施例5)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.25Sm
0.75)
0.97Mg
0.03Ni
3.25Al
0.25とし、粉砕条件2を採用して粉砕を行ったこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を作製した。
【0070】
(実施例6)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.25Sm
0.75)
0.98Mg
0.02Ni
3.25Al
0.25としたこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を作製した。
【0071】
(実施例7)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.25Sm
0.75)
0.98Mg
0.02Ni
3.25Al
0.25とし、粉砕条件2を採用して粉砕を行ったこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を作製した。
【0072】
(実施例8)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.25Sm
0.75)
0.99Mg
0.01Ni
3.25Al
0.25としたこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を作製した。
【0073】
(実施例9)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.25Sm
0.75)
0.99Mg
0.01Ni
3.25Al
0.25とし、粉砕条件2を採用して粉砕を行ったこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を作製した。
【0074】
(実施例10)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.25Sm
0.75)
0.99Mg
0.01Ni
3.25Al
0.25とし、企図される粒径分布を、質量基準による積算が50%にあたる平均粒径Mを120μm、Mの1/2に相当する粒径Pを60μm、Mの1/3に相当する粒径Qを40μmとし、粒径P以下の粒子の質量基準の積算が14%、粒径Q以下の粒子の質量基準の積算が4%となる粒径分布とし、以下に示す粉砕条件3で粉砕を
行ったこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を作製した。ここで、粉砕条件3について説明する。粉砕条件3では、まず、水素吸蔵合金のインゴットに対し、第1段階の粉砕を行い、第1粉末を得た。得られた第1粉末から60μm以下の小径粒子を取り出し、この小径粒子からなる小径粉末を所定の容器に収容して保存した。次に、第1粉末の残りにつき第2段階の粉砕を行い、第2粉末を得た。その後、第2粉末に、第1段階で取り出しておいた小径粉末を合わせ、水素吸蔵合金粉末を得た。
【0075】
(実施例11)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.25Sm
0.75)
0.99Mg
0.01Ni
3.25Al
0.25とし、企図される粒径分布を、質量基準による積算が50%にあたる平均粒径Mを35μm、Mの1/2に相当する粒径Pを17.5μm、Mの1/3に相当する粒径Qを11.7μmと規定し、粒径P以下の粒子の質量基準の積算が14%、粒径Q以下の粒子の質量基準の積算が4%となる粒径分布とし、以下に示す粉砕条件4で粉砕を行ったこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を作製した。ここで、粉砕条件4について説明する。粉砕条件4では、まず、水素吸蔵合金のインゴットに対し、第1段階の粉砕を行い、第1粉末を得た。得られた第1粉末から17μm以下の小径粒子を取り出し、この小径粒子からなる小径粉末を所定の容器に収容して保存した。次に、第1粉末の残りにつき第2段階の粉砕を行い、第2粉末を得た。その後、第2粉末に、第1段階で取り出しておいた小径粉末を合わせ、水素吸蔵合金粉末を得た。
【0076】
(比較例1)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.25Ce
0.75)Ni
4.00Co
0.50Mn
0.25Al
0.25とし、企図される粒径分布を、質量基準による積算が50%にあたる平均粒径Mを70μm、Mの1/2に相当する粒径Pを35μm、Mの1/3に相当する粒径Qを23.3μmとし、粒径P以下の粒子の質量基準の積算が20%、粒径Q以下の粒子の質量基準の積算が10%となる粒径分布とし、以下に示す粉砕条件5で粉砕を
行ったこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を作製した。ここで、粉砕条件5について説明する。粉砕条件5では、まず、水素吸蔵合金のインゴットに対し、第1段階の粉砕を行い、第1粉末を得た。得られた第1粉末から15μm以下の小径粒子を取り出し、この小径粒子からなる小径粉末を所定の容器に収容して保存した。次に、第1粉末の残りにつき第2段階の粉砕を行い、第2粉末を得た。その後、第2粉末に、第1段階で取り出しておいた小径粉末を合わせ、水素吸蔵合金粉末を得た。
【0077】
(比較例2)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.25Ce
0.75)Ni
4.00Co
0.50Mn
0.25Al
0.25とし、企図される粒径分布を、質量基準による積算が50%にあたる平均粒径Mを70μm、Mの1/2に相当する粒径Pを35μm、Mの1/3に相当する粒径Qを23.3μmとし、粒径P以下の粒子の質量基準の積算が18%、粒径Q以下の粒子の質量基準の積算が10%となる粒径分布とし、以下に示す粉砕条件6で粉砕を
行ったこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を作製した。ここで、粉砕条件6について説明する。粉砕条件6では、まず、水素吸蔵合金のインゴットに対し、第1段階の粉砕を行い、第1粉末を得た。得られた第1粉末から18μm以下の小径粒子を取り出し、この小径粒子からなる小径粉末を所定の容器に収容して保存した。次に、第1粉末の残りにつき第2段階の粉砕を行い、第2粉末を得た。その後、第2粉末に、第1段階で取り出しておいた小径粉末を合わせ、水素吸蔵合金粉末を得た。
【0078】
(比較例3)
水素吸蔵合金の組成を(La
0.25Ce
0.75)Ni
4.00Co
0.50Mn
0.25Al
0.25とし、企図される粒径分布を、質量基準による積算が50%にあたる平均粒径Mを70μm、Mの1/2に相当する粒径Pを35μm、Mの1/3に相当する粒径Qを23.3μmとし、粒径P以下の粒子の質量基準の積算が20%、粒径Q以下の粒子の質量基準の積算が8%となる粒径分布とし、以下に示す粉砕条件7で粉砕を
行ったこと以外は、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を作製した。ここで、粉砕条件7について説明する。粉砕条件7では、まず、水素吸蔵合金のインゴットに対し、第1段階の粉砕を行い、第1粉末を得た。得られた第1粉末から20μm以下の小径粒子を取り出し、この小径粒子からなる小径粉末を所定の容器に収容して保存した。次に、第1粉末の残りにつき第2段階の粉砕を行い、第2粉末を得た。その後、第2粉末に、第1段階で取り出しておいた小径粉末を合わせ、水素吸蔵合金粉末を得た。
【0079】
2.ニッケル水素二次電池の評価
初期活性化処理済みの実施例1〜11及び比較例1〜3の電池に、以下に示すような手順で充放電試験を行った。
【0080】
まず、各電池を25℃の環境下に置き、1.0Cの電流で1時間充電を行った。その後、1.0Cの電流で電池電圧が0.8Vに到達するまで放電を行った。このときの放電時間の中間の時点での電圧(初期作動電圧)を測定した。ここで、比較例1の電池の初期作動電圧を基準値として0mVとし、各電池につき、この基準値との差を求め、その値を各電池の初期作動電圧Dとした。その結果を表3に示した。
【0081】
次いで、各電池を25℃の環境下に置き、1.0Cの電流で1時間充電を行った。その後、これら電池を60℃の恒温槽内に1ヶ月間放置した。60℃で1ヶ月間放置した後の電池を恒温槽から取り出し、25℃の環境下で1.0Cの電流で電池電圧が0.8Vに到達するまで放電した。次いで、25℃の環境下で再度1.0Cの電流で1時間充電した。その後、1.0Cの電流で電池電圧が0.8Vになるまで放電を行った。このときの放電時間の中間の時点での電圧(回復後作動電圧)を測定した。ここで、比較例1の電池の初期作動電圧を基準値として0mVとし、各電池につき、この基準値との差を求め、その値を各電池の回復後作動電圧Fとした。その結果を表3に示した。
【0082】
また、各電池につき、以下の(III)式より、回復後作動電圧低下量を求めた。この結果を回復後作動電圧低下量として表3に示した。この回復後作動電圧低下量の値が小さいほど作動電圧の低下が抑制されていることを示す。
回復後作動電圧低下量(mV)=初期作動電圧D−回復後作動電圧F・・・(III)
【0083】
更に、各電池を25℃の環境下で1.0Cの電流で1時間充電した後、−10℃の環境下に置き、1.0Cの電流で電池電圧が0.8Vになるまで放電した。このときの各電池の放電容量を測定した。そして、比較例1の電池の放電容量を100とし、各電池の放電容量と比較例1の電池の放電容量との比を求め、その結果を低温放電特性比として表3に示した。この低温放電特性比の値が大きいほど低温でも良好に放電することができる、つまり、低温放電特性に優れることを示す。
【0087】
3.考察
(1)水素吸蔵合金粉末の粒径分布の態様において、比較例1は、実施例1に比べて、粒径がP以下の粒子及び粒径がQ以下の粒子が多く含まれている。このような比較例1では、回復後作動電圧低下量が大きく、回復後の電池の作動電圧が大きく低下している。
【0088】
(2)これに対し、粒径がP以下の粒子の積算が14%、粒径がQ以下の粒子の積算が8%である実施例1は、回復後の作動電圧低下量が比較例1に比べて抑制されていることがわかる。
【0089】
(3)実施例2と実施例3、実施例4と実施例5、実施例6と実施例7、及び、実施例8と実施例9の結果から、水素吸蔵合金中に含まれるMgの量が少ないほど、所望の粒径分布を得ることが容易であることがわかる。特に、Mgが0.03未満では所望の粒径分布を得ることが容易である。これは、Mgの量が少ないほど水素吸蔵合金の硬度が高くなるので、斯かる合金の粒子は、第2段階の粉砕で必要以上に細かく粉砕されることが抑制される。このため、小径粒子の量は大幅には増えないため、狙い通りの粒径分布の粉末が得られるものと考えられる。
【0090】
(4)実施例9、10、11の結果から以下のことがわかる。実施例9、10、11は、水素吸蔵合金粉末の粒径分布は同じであるが、水素吸蔵合金粒子の粒径の絶対値が異なっている。これら実施例9、10、11の回復後作動電圧低下量は、10〜12mVで、ほぼ同じであり、回復後の作動電圧の低下は十分抑制されている。このことから、回復後の作動電圧の抑制効果には、水素吸蔵合金粒子の粒径の絶対値の影響は少なく、相対的な水素吸蔵合金粉末の粒径分布の態様が影響しており重要であることがわかる。ただし、水素吸蔵合金粒子の粒径があまり大きいと、水素吸蔵合金粒子がセパレータを突き破って短絡するリスクが増加し、逆に水素吸蔵合金粒子の粒径があまり小さいと水素吸蔵合金の腐食が進みやすく、電池の寿命特性が低下するリスクが増加する。
【0091】
(5)実施例1、比較例1、2、3の結果から以下のことがわかる。水素吸蔵合金粉末の粒径分布において、粒径がP以下の粒子の積算が20%未満及び粒径がQ以下の粒子の積算が10%未満の両方の要件を満たしている実施例1に比べ、これらの要件の一方又は両方を満たしていない比較例1、2、3は、回復後作動電圧低下量が大きい。このことから、回復後の作動電圧の低下を抑制するためには、粒径がP以下の粒子の積算が20%未満及び粒径がQ以下の粒子の積算が10%未満の両方の要件を満たす必要があることがわかる。
【0092】
(6)粒径の小さい水素吸蔵合金粒子の含有量が減ると、反応面積である水素吸蔵合金の表面積が減少するため、電池の低温放電特性が低下する。これは、希土類−Ni系の水素吸蔵合金を用いた場合に顕著であり、実施例1が回復後の作動電圧の低下が抑制されてはいるものの、低温放電特性があまり改善されていないことから明らかである。このように、回復後の作動電圧の低下抑制を図るために粒径分布を調整して、粒径がP以下の粒子の積算を20%未満及び粒径がQ以下の粒子の積算を10%未満とすることが有効であるが、それによる低温放電特性の低下という弊害を抑制するために、水素吸蔵合金として希土類−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を使用することが有効である。このことは、希土類−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を使用している実施例2〜実施例11が、回復後の作動電圧低下を抑制していることと、低温放電特性を向上させていることとを両立させていることから明らかである。
【0093】
(7)本発明では、水素吸蔵合金粉末の粒径分布を調整するという技術的思想、つまり、水素吸蔵合金粒子の平均粒径をMとし、Mの1/2の粒径をPとし、Mの1/3の粒径をQとした場合、粒径がP以下である水素吸蔵合金粒子の含有量が水素吸蔵合金粉末の全体の20質量%未満であり、粒径がQ以下である水素吸蔵合金粒子の含有量が水素吸蔵合金粉末の全体の10質量%未満であるような粒径分布とするという技術的思想により、長期間放置後に回復した後でも作動電圧の低下が抑制されるニッケル水素二次電池を提供することができ、その工業的価値は極めて高い。
【0094】
なお、本発明は、上記した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能であり、例えば、ニッケル水素二次電池は、角形電池であってもよく、機械的な構造は格別限定されることはない。