【文献】
松田裕貴他1名,スマートフォン搭載照度センサの集合知による網羅的な街灯情報収集システムの開発,情報処理学会論文誌(ジャーナル),日本,情報処理学会,2014年 2月15日,Vol.55 No.2,第750-760頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ナビゲーション装置では、夜間衛星写真から道路の明るさデータを得ているが、上記特許文献1の
図6に示されるような粗い精度の夜間衛星写真を用いる場合、道路の正確な明るさデータを得ることは難しい。すなわち、歩行経路上の環境を知るために上記特許文献1に開示された技術を用いたとしても、歩行経路上の明るさの実情を詳細に把握することは難しい。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、歩行経路上の環境のより正確な状態を表示することができる歩行環境表示システム、データ計測鞄、歩行環境表示方法及び歩行環境地図を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の歩行環境表示システムは、所定の歩行経路上の環境に関する歩行環境データを取得する取得手段と、取得手段によって取得された歩行環境データに基づいて、歩行経路の安全性を示す歩行環境安全性情報を算出する算出手段と、算出手段によって算出された歩行環境安全性情報が示す歩行経路の安全性を視覚化して地図上に表示する表示手段と、を備える。
【0007】
このような歩行環境表示システムによれば、取得手段により、歩行環境データが取得され、算出手段により、取得された歩行環境データに基づいて歩行環境安全性情報が算出され、表示手段により、算出された歩行環境安全性情報が示す歩行経路の安全性が、視覚化して地図上に表示される。かかる構成を採れば、所定の歩行経路上の環境に関する歩行環境データに基づいて算出された歩行経路の安全性が表示されるため、歩行経路上の環境のより正確な状態を表示することができる。例えば、歩行経路上の環境の実情を示した正確な歩行環境データを用いることで、歩行経路上の環境の実情に即したより正確な状態を表示することができる。また、歩行経路の安全性が視覚化して地図上に表示されるため、歩行経路の安全性を視覚的に分かり易く表示することができる。
【0008】
また、本発明の歩行環境表示システムにおいて、歩行環境データは、一つ以上の所定の向きの照度を含むこととしてもよい。かかる構成を採れば、所定の歩行経路上における所定の向きの照度に基づいて算出された歩行経路の安全性、例えば歩行経路上の明るさを表示することができる。これにより、例えば、ユーザは、自宅から最寄り駅までの歩行経路上の正確な明るさを知ることができ、夜間等の安全性を正確に把握することができる。
【0009】
また、本発明の歩行環境表示システムにおいて、歩行環境データは、通行人量、夜間営業店舗位置、道路巾、ガードレール有無、歩道有無、街路灯数、及び防犯カメラ数の何れか一つ以上をさらに含むこととしてもよい。かかる構成を採れば、歩行経路における安全性に関する歩行環境データをさらに含むことで、歩行経路上の安全性を表示することができる。これにより、例えば、ユーザは、自宅から最寄り駅までの歩行経路上の安全性を把握することができる。
【0010】
また、本発明の歩行環境表示システムにおいて、取得手段は、所定の歩行経路上の2種類以上の歩行環境データを取得し、算出手段は、取得手段によって取得された2種類以上の歩行環境データに基づいて歩行環境安全性情報を算出することとしてもよい。かかる構成を採れば、所定の歩行経路上の2種類以上の歩行環境データが加味された歩行経路の安全性が表示されるため、より正確な状態を表示することができる。
【0011】
また、本発明の歩行環境表示システムにおいて、歩行環境データは、データ計測者が所定の歩行経路を歩行中に取得したデータを含むこととしてもよい。かかる構成を採れば、データ計測者が所定の歩行経路を実際に歩行した際に取得したデータ、すなわち、歩行経路上の環境の実情を示した正確な歩行環境データを用いることができるため、歩行経路上の環境の実情に即したより正確な状態を表示することができる。
【0012】
また、本発明の歩行環境表示システムにおいて、歩行環境データは、所定の向きの照度を含み、算出手段は、所定の歩行経路の総歩行時間に対する、照度が所定の基準値を上回った又は下回った時間の比率を歩行環境安全性情報として算出することとしてもよい。かかる構成を採れば、所定の歩行経路に関する安全性を比率により表示することができる。これにより、例えば、ユーザは、自宅から最寄り駅までの歩行経路についての安全性を容易に把握することができる。また例えば、ユーザは、自宅から最寄り駅までの複数の歩行経路に対してそれぞれの安全性を容易に把握することができると共に、それぞれの安全性を比較することで、最適な歩行経路を選択することができる。
【0013】
また、本発明の歩行環境表示システムにおいて、歩行環境データは、鉛直面照度であり、所定の基準値は、0.5lx以上、20lx以下の範囲から指定した値である、としてもよい。鉛直面照度は、人の顔を識別するのに適しており、0.5lx以上、20lx以下の範囲は、所定距離離れた位置から人の顔を識別できるレベルであるため、歩行経路上の第三者の識別に関する歩行環境データを含むことで、歩行経路上の第三者の識別に関する安全性を表示することができる。これにより、例えば、ユーザは、自宅から最寄り駅までの歩行経路上の第三者の識別に関する安全性を把握することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明のデータ計測鞄は、上述の本発明の歩行環境表示システムにおいて、データ計測者が鉛直面照度及び水平面照度である歩行環境データを計測するためのデータ計測鞄であって、ショルダーストラップ又は持ち手を有し、鉛直面照度と水平面照度とを計測する照度計が取り付けられた鞄である。かかる構成を採れば、データ計測者は、例えば、データ計測鞄を肩に掛けたまま、又は手に持ったまま所定の歩行経路を歩行することで、所定の歩行経路における照度を容易に計測することができる。また、ショルダーストラップ又は持ち手があるため、データ計測者は、体の向きを変えた場合でも鞄の方向、すなわち照度測定方向を維持しやすい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の歩行環境表示方法は、歩行環境表示システムにより実行される歩行環境表示方法であって、所定の歩行経路上の環境に関する歩行環境データを取得する取得ステップと、取得ステップにおいて取得された歩行環境データに基づいて、歩行経路の安全性を示す歩行環境安全性情報を算出する算出ステップと、算出ステップにおいて算出された歩行環境安全性情報が示す歩行経路の安全性を視覚化して地図上に表示する表示ステップと、を含む。歩行環境表示方法は、上述の歩行環境表示システムと発明のカテゴリが異なるだけで、実質的に同一の発明であり、同様の作用及び効果を奏する。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の歩行環境地図は、上述の歩行環境表示方法によって歩行経路の安全性が表示された地図である。かかる構成を採れば、歩行経路上の環境のより正確な状態を表示することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、歩行経路上の環境のより正確な状態を表示することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面とともに本発明による歩行環境表示システム、データ計測鞄、歩行環境表示方法及び歩行環境地図の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る歩行環境表示システムの機能ブロック図である。歩行環境表示システム1は、所定の歩行経路の安全性を視覚化して地図上に表示するシステムである。
図1に示す通り、歩行環境表示システム1は、取得部10(取得手段)、算出部11(算出手段)、及び表示部12(表示手段)を含んで構成される。
【0021】
歩行環境表示システム1は、CPU等のハードウェアから構成されているものである。
図2は、歩行環境表示システム1のハードウェア構成の一例を示す図である。
図1に示される歩行環境表示システム1は、物理的には、
図2に示すように、CPU100、主記憶装置であるRAM101及びROM102、ディスプレイ等の入出力装置103、通信モジュール104、及び補助記憶装置105などを含むコンピュータシステムとして構成されている。
【0022】
図1に示す歩行環境表示システム1の各機能ブロックの機能は、
図2に示すCPU100、RAM101等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU100の制御のもとで入出力装置103、通信モジュール104、及び補助記憶装置105を動作させるとともに、RAM101におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0023】
以下の実施形態では、主に、歩行環境表示システム1を利用して、所定の歩行経路上の照度(明るさ)に基づいた歩行経路の安全性の状態を地図上に表示する例について説明する。
図3は、ある居住建物Mと、当該居住建物Mの最寄り駅である駅Sと、居住建物M及び駅S間の歩行経路(道路、歩道など)を含む地図の一例を示す図である。本実施形態では、
図3に示す駅Sから居住建物Mまでの、居住者の通勤等の経路(夜間の帰り道)である歩行経路上の照度に基づいた歩行経路の安全性の状態を地図上に表示する例について説明する。
図3に示す通り、歩行経路として、ルートR1及びルートR2が含まれ、それぞれのルート上の照度に基づいて歩行経路の安全性の状態を地図上に表示する例について説明する。なお、以降では、ルートR1及びルートR2を総称してルートRと呼ぶ。
【0024】
以下、
図1に示す歩行環境表示システム1の各機能ブロックについて説明する。
【0025】
取得部10は、所定の歩行経路上の環境に関する歩行環境データを取得する。取得部10は、所定の歩行経路上の2種類以上の歩行環境データを取得してもよい。また、歩行環境データは、一つ以上の所定の向きの照度を含んでもよい。例えば、歩行環境データは、鉛直面照度を含んでもよいし、水平面照度を含んでもよいし、鉛直面照度及び水平面照度の両方を含んでもよい。また、歩行環境データは、データ計測者が所定の歩行経路を歩行中に取得したデータを含んでもよい。取得部10は、取得した歩行環境データを算出部11及び表示部12に出力する。
【0026】
以下では、
図3に示すルートR上の照度に関する歩行環境データを取得する具体例について説明する。ルートR上の照度に関する歩行環境データは、データ計測者がルートR上を歩行中に取得したデータとする。より具体的には、データ計測者は、鉛直面照度及び水平面照度である歩行環境データを計測するためのデータ計測器具であるデータ計測鞄2を持ってルートR上を歩行することで、歩行環境データを計測する。データ計測器具として鞄、特に通勤の際に通常使用が想定されるアタッシュケースのような鞄を採用することで、周囲の人から怪しまれずに歩行環境データを計測することができる。データ計測者は、歩行環境データを計測したい所定の時間帯、例えば夜間にデータ計測鞄2を持ってルートR上を歩行することで、歩行環境データを計測する。
図4は、ショルダーストラップ20を有し、鉛直面照度を計測する鉛直面照度計VLと、水平面照度を計測する水平面照度計HLとが取り付けられたデータ計測鞄2の側面の一例を示す図である。
【0027】
図4に示す通り、データ計測鞄2は、上面側にショルダーストラップ20を有する。データ計測者は、ショルダーストラップ20を肩に掛けて、データ計測鞄2をほぼ水平に保ったまま歩行することで、歩行環境データを計測することができる。また、データ計測鞄2は、ショルダーストラップ20の代替として、持ち手21(不図示)を有してもよい。この場合も同様に、データ計測者は、持ち手21を手で持ち、データ計測鞄2をほぼ水平に保ったまま歩行することで、歩行環境データを計測することができる。
【0028】
また、
図4に示す通り、データ計測鞄2には、図面に向かって右側の進行方向の側面(進行方向に直角な面)に鉛直面照度計VLが取り付けられ(例えば、歩行経路の進行方向からの照度を計測可能)、上面に水平面照度計HLが取り付けられている(例えば、道路面から高さ0.8m程度の照度を計測可能)。すなわち、データ計測鞄2の二方向に照度計が取り付けられている。なお、データ計測鞄2に、例えば、鉛直面照度計VLが取り付けられた面に直交する側面に別の鉛直面照度計を取り付ける(例えば、歩行経路の側方の建物側からの照度を計測可能)等、三方向以上に照度計を取り付けてもよい。データ計測器具としてデータ計測鞄2を採用することで、複数方向に照度計を容易に取り付けることができる。なお、データ計測鞄2には、その他に、鉛直面照度計VL及び水平面照度計HLの照度計測の開始や終了を制御する装置や、計測結果のデータを記録すると共に外部装置に出力することが可能な装置等が含まれている。
【0029】
鉛直面照度計VL及び水平面照度計HLは、データ計測者によって照度計測の開始が指示されると、例えば1秒間隔で時刻と照度(鉛直面照度及び水平面照度)とを記録する。データ計測者は、照度計測の開始を指示すると、データ計測鞄2を持って(携行して)ルートR上をできる限り略一定速度で歩行し、照度に関する歩行環境データを計測する。そして、ルートRの終端に到達すると、データ計測者は、照度計測の終了を指示することで、計測を終了する。このように、略一定速度で歩行することで、1秒間隔で記録された照度のそれぞれが地図上のどの位置を歩行していた時のものかが計測後に容易に把握できる。すなわち、GPS(Global Positioning System)等の位置情報を把握するための器具をデータ計測鞄2にさらに取り付ける必要が無く、簡易な測定器具のみで歩行環境データを計測することができる。なお、データ計測鞄2にさらにGPS等の位置情報を把握するための器具を取り付け、照度のそれぞれが計測された位置をより正確に記録する構成としてもよい。
【0030】
データ計測者は、データ計測鞄2により歩行環境データを計測後に、データ計測鞄2に含まれる計測結果が記録された装置を歩行環境表示システム1にネットワーク等を介して接続する。これにより、歩行環境表示システム1の取得部10は、ルートR上の照度に関する歩行環境データを取得する。
【0031】
図5は、データ計測鞄2によって計測され、取得部10によって取得された、時系列に沿った鉛直面照度と水平面照度とのデータ例を示すテーブル図である。
図5に示すテーブル図の通り、駅Sから居住建物MまでのルートR上の鉛直面照度(単位はルクスlx)及び水平面照度(単位はルクスlx)が1秒間隔で記録されている。また、各時刻における地図上の位置を示す情報も含まれている。この位置の情報は、データ計測鞄2に取り付けられたGPSに基づいて自動的にデータ計測鞄2又は歩行環境表示システム1が設定してもよいし、データ計測者や歩行環境表示システム1のユーザが手動で設定してもよい。
【0032】
算出部11は、取得部10によって取得(入力)された歩行環境データに基づいて、歩行経路の安全性を示す歩行環境安全性情報を算出する。算出部11は、算出した歩行環境安全性情報を表示部12に出力する。
【0033】
算出部11は、例えば、歩行環境データである照度を対数へ変換した照度指標を歩行環境安全性情報として算出してもよいし、変換した照度指標に基づいて後述の各種算出をさらに行うことで最終的な歩行環境安全性情報を算出してもよい。このように、夜間の歩行経路上の照度を対数へ変換することで、歩行経路上の明るさの程度(安全性)を人間の感覚的に分かり易い単位にすることができる。
【0034】
算出部11は、例えば、所定の歩行経路の総歩行時間に対する、照度が所定の基準値を上回った時間の比率(歩行環境良好度)又は下回った時間の比率(歩行環境劣悪度)を歩行環境安全性情報として算出してもよい。所定の基準値は、例えば、0.5lx以上、20lx以下の範囲から指定した値である。例えば、算出部11は、所定の歩行経路の総歩行時間に対する、鉛直面照度が所定の基準値である1lxを下回った時間の比率である「くらがり率」を歩行環境安全性情報として算出する。鉛直面照度における1lxは、防犯灯照度基準クラスAであり、4m先の人の顔の概要がわかるレベルである。本実施形態では、1lx未満を「くらがり」と呼ぶ。
【0035】
なお、本実施例においては、くらがり率を算出する際の照度として、顔の概要が分かるかどうかの判定の際に好適な鉛直面照度を用いたが、その他にも、照度基準として一般的な水平面照度を用いてもよい。
【0036】
算出部11は、取得部10によって取得された2種類以上の歩行環境データに基づいて歩行環境安全性情報を算出してもよい。例えば、算出部11は、歩行環境データである各時刻における鉛直面照度と水平面照度とについて、鉛直面照度と水平面照度との平均である平均照度を算出し、各時刻における平均照度を記録した情報を歩行環境安全性情報として算出してもよい。また例えば、算出部11は、歩行環境データである鉛直面照度と水平面照度との平均値とに対して、推奨ルートとしての適否を判定するための基準値を設けて、平均値がその基準値よりも悪い値が測定されるルートRは、推奨ルートから外してもよい。また例えば、算出部11は、鉛直面照度と水平面照度とのそれぞれに基準値を設けて、少なくとも一方が基準値よりも悪い値が測定されるルートRは、推奨ルートから外してもよい。
【0037】
表示部12は、算出部11によって算出(入力)された歩行環境安全性情報が示す歩行経路の安全性を視覚化して地図上に表示する。
【0038】
例えば、表示部12は、算出部11によって算出された歩行環境安全性情報であるくらがり率を視覚化して地図上に表示する。
図6は、くらがり率が視覚化されて表示された地図である歩行環境地
図3の一例を示す図である。
図6に示す歩行環境地
図3では、ルートR1についてはくらがり率が14%であることが示されており、ルートR2についてはくらがり率が27%であることが示されている。この場合、くらがり率の低いルートR1が、より歩行環境が良好な推奨ルートとなる。
【0039】
また例えば、表示部12は、算出部11によって算出された歩行環境安全性情報である照度の状態をグラフ化して地図上に表示する。より具体的には、ルートR上に沿って、所定の基準値である1lxを境に色分けした棒グラフを地図上に表示する。
図7は、色分けした棒グラフが表示された地図である歩行環境地
図3の一例を示す図である。
図7に示す歩行環境地
図3では、ルートR1及びR2に沿って、ルートR1及びR2から所定の範囲内に、棒グラフが表示されている。棒グラフのうち、黒塗りの領域に対応するルートR上の経路が1lx未満であることを示し、それ以外の領域に対応するルートR上の経路が1lx以上であることを示している。
図7に示す歩行環境地
図3から、ルートR2よりもルートR1の方がくらがり区間が多いことが視覚的に容易に把握することができると共に、具体的にルートR上のどの区間がくらがりであるかも容易に把握することができる。
【0040】
また例えば、表示部12は、複数の基準値を境に色分けしたグラフを地図上に表示してもよい。
図8は、複数の基準値として、0.2lx、1lx、10lxを境に異なる4色で層状に色分けした棒グラフがルートRに沿って表示された歩行環境地
図3の一例を示す図である。
図8に示す歩行環境地
図3では、ルートR1及びR2に沿って、棒グラフが表示されている。グラフのうち、1層目(対象の歩行経路に一番近い層)の色の領域に対応するルートR上の経路が0.2lx未満であることを示し、2層目の色の領域に対応するルートR上の経路が0.2lx以上かつ1lx未満であることを示し、3層目の色の領域に対応するルートR上の経路が1lx以上かつ10lx未満であることを示し、4層目(対象の歩行経路から一番遠い層)の色の領域に対応するルートR上の経路が10lx以上であることを示している。すなわち、グラフのうち、層が薄い領域(棒が低い領域)は暗い領域を示し、層が厚い領域(棒が高い領域)は明るい領域を示している。
図8に示す歩行環境地
図3から、ルートR2よりもルートR1の方がくらがり区間が多いこと、又はルートR1よりもルートR2の方が明るい区間が多いことが視覚的に容易に把握することができると共に、具体的にルートR上のどの区間がくらがりであるか又は明るいかも容易に把握することができる。
【0041】
その他に、表示部12は、横軸に歩行時間、縦軸に照度を取った折れ線グラフを作成し、
図7に示す例のようにルートRに沿って表示してもよい。また例えば、表示部12は、各ルートRの距離を算出し、最短ルートであるルートRをその旨がわかるような表示としてもよい。また例えば、表示部12は、複数のルートRのうち、最短ルートよりも歩行環境良好度が優れた推奨ルートについてその旨がわかるような表示としてもよい。これらの表示がなされた最短ルートと推奨ルートとについて、さらに上述のグラフが各ルートに沿って表示された場合、ユーザは最短ルートと推奨ルートとの双方の歩行経路の安全性を容易に把握することができる。
【0042】
[変形例]
以下、本実施形態に係る歩行環境表示システム1の変形例について説明する。
【0043】
歩行環境データは、通行人量、夜間営業店舗位置、道路巾、ガードレール有無、歩道有無、街路灯数、及び防犯カメラ数の何れか一つ以上をさらに含んでもよい。
【0044】
歩行環境データが通行人量を含む場合について説明する。データ計測者は、ルートRを帰宅する向きとは逆向きに歩行して、すれ違った人の数及び位置を歩行環境データとして記録する。記録する際、男女別に記録してもよい。取得部10は、歩行環境データを取得し、算出部11及び表示部12に出力する。表示部12は、入力された歩行環境データに基づいて、
図9に示すような、ルートR上ですれ違った男女に対応するアイコンを地図上のすれ違った位置に配置した歩行環境地
図3を表示する。また、算出部11は、入力された歩行環境データに基づいて、まずは、節点(歩行経路の交差部や曲がり部等)により、歩行経路を節点間歩行経路に分節し、次に、所定の時間帯において「すれ違った人の数÷節点間歩行経路の距離=通行人量係数」を歩行環境安全性情報として算出し、表示部12に出力する。表示部12は、入力された歩行環境安全性情報に基づいて、通行人量の多少を視覚情報として地図上に表示する。
【0045】
歩行環境データが街路灯数を含む場合について説明する。データ計測者は、歩行経路における街路灯(商店街用、住宅街用)の数及び位置を歩行環境データとして記録する。取得部10は、歩行環境データを取得し、算出部11及び表示部12に出力する。表示部12は、入力された歩行環境データに基づいて、ルートR上に街路灯の数を表示するか、又は
図9と同様に、ルートR上における街路灯に対応するアイコンを地図上の当該位置に配置して表示する。また、算出部11は、入力された歩行環境データに基づいて、まずは、節点により、歩行経路を節点間歩行経路に分節し、次に、「街路灯数÷節点間歩行経路の距離=街路灯係数」を歩行環境安全性情報として算出し、表示部12に出力する。表示部12は、入力された歩行環境安全性情報に基づいて、街路灯数の多少を視覚情報として地図上に表示する。
【0046】
歩行環境データが防犯カメラ数を含む場合について説明する。データ計測者は、歩行経路における防犯カメラの数及び位置を歩行環境データとして記録する。取得部10は、歩行環境データを取得し、算出部11及び表示部12に出力する。表示部12は、入力された歩行環境データに基づいて、ルートR上に防犯カメラの数を表示するか、又は
図9と同様に、ルートR上における防犯カメラに対応するアイコンを地図上の当該位置に配置して表示する。また、算出部11は、入力された歩行環境データに基づいて、まずは、節点により、歩行経路を節点間歩行経路に分節し、次に、「防犯カメラ数÷節点間歩行経路の距離=防犯カメラ係数」を歩行環境安全性情報として算出し、表示部12に出力する。表示部12は、入力された歩行環境安全性情報に基づいて、防犯カメラ数の多少を視覚情報として地図上に表示する。
【0047】
歩行環境データが道路巾を含む場合について説明する。データ計測者は、歩行経路における位置及び当該位置での道路巾を歩行環境データとして記録する。取得部10は、歩行環境データを取得し、算出部11及び表示部12に出力する。表示部12は、入力された歩行環境データに基づいて、ルートR上に道路巾を表示する。また、算出部11は、入力された歩行環境データに基づいて、道路巾4m未満=0.9、道路巾4m以上〜10m未満=1.0、道路巾10m以上=1.1として、道路巾係数を設定する。そして、算出部11は、「照度指標(照度を対数変換した値)」×「道路巾係数」を歩行環境安全性情報として算出する。例えば、道路巾が広い場合、道路巾が狭い場合に比べて、人通りや車の交通量が多く安全性が高いことを示す。表示部12は、算出部11によって設定された基準値に基づいたグラフ等を視覚情報として地図上に表示する。
【0048】
歩行環境データが夜間営業店舗位置を含む場合について説明する。データ計測者は、歩行経路における夜間営業店舗位置を歩行環境データとして記録する。取得部10は、歩行環境データを取得し、算出部11及び表示部12に出力する。表示部12は、入力された歩行環境データに基づいて、
図9と同様に、ルートR上における夜間営業店舗に対応するアイコンを地図上の当該位置に配置して表示する。その際、表示部12は、店舗名称を表示してもよい。また、表示部12は、ユーザによって予め歩行する時間帯が選択されると、その時間帯に開店している店舗のみを地図上に表示する。また、表示部12は、ユーザによって予め寄りたい店舗が指定されると、当該店舗を通ることを条件として、推奨ルートを選択する。また、算出部11は、入力された歩行環境データに基づいて、まずは、節点により、歩行経路を節点間歩行経路に分節し、次に、「夜間営業店舗数÷節点間歩行経路の距離=夜間営業店舗係数」を歩行環境安全性情報として算出し、表示部12に出力する。表示部12は、入力された歩行環境安全性情報に基づいて、夜間営業店舗数の多少を視覚情報として地図上に表示する。
【0049】
歩行環境データがガードレール有無を含む場合について説明する。データ計測者は、歩行経路におけるガードレール有無及び位置を歩行環境データとして記録する。取得部10は、歩行環境データを取得し、算出部11及び表示部12に出力する。表示部12は、入力された歩行環境データに基づいて、ルートR上にガードレール有無を表示するか、又は
図9と同様に、ルートR上におけるガードレールに対応するアイコンを地図上の当該位置に配置して表示する。また、算出部11は、入力された歩行環境データに基づいて、ガードレール無し=1.0、ガードレール有り=1.1として、ガードレール係数を設定する。そして、算出部11は、「照度指標(照度を対数変換した値)」×「ガードレール係数」を歩行環境安全性情報として算出する。例えば、ガードレール有りである場合、ガードレール無しである場合に比べて、オートバイ等を使用したひったくり等に対して安全性が高いことを示す。表示部12は、算出部11によって設定された基準値に基づいたグラフ等を視覚情報として地図上に表示する。
【0050】
歩行環境データが歩道有無を含む場合については、上述のガードレール有無と同様である。なお、算出部11は、歩道無し=1.0、歩道有り(1.5m未満)=1.1、歩道有り(1.5m以上)=1.2として、歩道係数を設定する。そして、算出部11は、「照度指標(照度を対数変換した値)」×「歩道係数」を歩行環境安全性情報として算出する。
【0051】
続いて、
図10に示すフローチャート図を用いて、本実施形態に係る歩行環境表示システム1により実行される歩行環境表示方法の処理について説明する。
【0052】
まず、取得部10より、歩行環境データが取得される(ステップS1、取得ステップ)。次に、算出部11により、S1にて取得された歩行環境データに基づいて、歩行環境安全性情報が算出される(ステップS2、算出ステップ)。次に、表示部12により、S2にて算出された歩行環境安全性情報が示す歩行経路の安全性が、視覚化されて地図上に表示される(ステップS3、表示ステップ)。
【0053】
なお、
図6〜8に示す歩行環境地
図3は、上述のS1〜S3に示す歩行環境表示方法によって表示された地図である。歩行環境地
図3は、例えば、女性向けの賃貸集合住宅内の掲示板等に掲示してもよい。これにより、賃貸集合住宅の入居者は、入居者以外の第三者には見られない場所に掲示された歩行環境地
図3により、駅からの帰宅経路の安全性を容易に確認することができる。
【0054】
次に、本実施形態のように構成された歩行環境表示システム1の作用効果について説明する。
【0055】
本実施形態の歩行環境表示システム1によれば、取得部10により、歩行環境データが取得され、算出部11により、取得された歩行環境データに基づいて歩行環境安全性情報が算出され、表示部12により、算出された歩行環境安全性情報が示す歩行経路の安全性が、視覚化して地図上に表示される。かかる構成を採れば、所定の歩行経路上の環境に関する歩行環境データに基づいて算出された歩行経路の安全性が表示されるため、歩行経路上の環境のより正確な状態を表示することができる。例えば、歩行経路上の環境の実情を示した正確な歩行環境データを用いることで、歩行経路上の環境の実情に即したより正確な状態を表示することができる。また、歩行経路の安全性が視覚化して地図上に表示されるため、歩行経路の安全性を視覚的に分かり易く表示することができる。
【0056】
また、本実施形態の歩行環境表示システム1によれば、歩行環境データは、一つ以上の所定の向きの照度を含むこととしてもよい。かかる構成を採れば、所定の歩行経路上における所定の向きの照度に基づいて算出された歩行経路の安全性、例えば歩行経路上の明るさを表示することができる。これにより、例えば、ユーザは、自宅から最寄り駅までの歩行経路上の正確な明るさを知ることができ、夜間等の安全性を正確に把握することができる。
【0057】
また、本実施形態の歩行環境表示システム1によれば、歩行環境データは、通行人量、夜間営業店舗位置、道路巾、ガードレール有無、歩道有無、街路灯数、及び防犯カメラ数の何れか一つ以上をさらに含むこととしてもよい。かかる構成を採れば、歩行経路における安全性に関する歩行環境データをさらに含むことで、歩行経路上の安全性を表示することができる。これにより、例えば、ユーザは、自宅から最寄り駅までの歩行経路上の安全性を把握することができる。
【0058】
また、本実施形態の歩行環境表示システム1によれば、取得部10は、所定の歩行経路上の2種類以上の歩行環境データを取得し、算出部11は、取得部10によって取得された2種類以上の歩行環境データに基づいて歩行環境安全性情報を算出することとしてもよい。かかる構成を採れば、所定の歩行経路上の2種類以上の歩行環境データが加味された歩行経路の安全性が表示されるため、より正確な状態を表示することができる。
【0059】
また、本実施形態の歩行環境表示システム1によれば、歩行環境データは、データ計測者が所定の歩行経路を歩行中に取得したデータを含むこととしてもよい。かかる構成を採れば、データ計測者が所定の歩行経路を実際に歩行した際に取得したデータ、すなわち、歩行経路上の環境の実情を示した正確な歩行環境データを用いることができるため、歩行経路上の環境の実情に即したより正確な状態を表示することができる。
【0060】
また、本実施形態の歩行環境表示システム1によれば、歩行環境データは、所定の向きの照度を含み、算出部11は、所定の歩行経路の総歩行時間に対する、照度が所定の基準値を上回った又は下回った時間の比率を歩行環境安全性情報として算出することとしてもよい。かかる構成を採れば、所定の歩行経路に関する安全性を比率により表示することができる。これにより、例えば、ユーザは、自宅から最寄り駅までの歩行経路についての安全性を容易に把握することができる。また例えば、ユーザは、自宅から最寄り駅までの複数の歩行経路に対してそれぞれの安全性を容易に把握することができると共に、それぞれの安全性を比較することで、最適な歩行経路を選択することができる。
【0061】
また、本実施形態の歩行環境表示システム1によれば、歩行環境データは、鉛直面照度であり、所定の基準値は、0.5lx以上、20lx以下の範囲から指定した値である、としてもよい。鉛直面照度は、人の顔を識別するのに適しており、0.5lx以上、20lx以下の範囲は、所定距離離れた位置から人の顔を識別できるレベルであるため、歩行経路上の第三者の識別に関する歩行環境データを含むことで、歩行経路上の第三者の識別に関する安全性を表示することができる。これにより、例えば、ユーザは、自宅から最寄り駅までの歩行経路上の第三者の識別に関する安全性を把握することができる。
【0062】
また、本実施形態のデータ計測鞄2は、歩行環境表示システム1において、データ計測者が鉛直面照度及び水平面照度である歩行環境データを計測するためのデータ計測鞄であって、ショルダーストラップ又は持ち手を有し、鉛直面照度と水平面照度とを計測する照度計が取り付けられた鞄である。かかる構成を採れば、データ計測者は、例えば、データ計測鞄2を肩に掛けたまま、又は手に持ったまま所定の歩行経路を歩行することで、所定の歩行経路における照度を容易に計測することができる。また、ショルダーストラップ又は持ち手があるため、データ計測者は、体の向きを変えた場合でも鞄の方向、すなわち照度測定方向を維持しやすい。
【0063】
また、本実施形態の歩行環境地
図3は、上述の歩行環境表示方法によって歩行経路の安全性が表示された地図である。かかる構成を採れば、歩行経路上の環境のより正確な状態を表示することができる。