特許第6573468号(P6573468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573468
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】斜面安定化工法用の支圧部材
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20190902BHJP
   E02D 5/80 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   E02D17/20 106
   E02D5/80 Z
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-74002(P2015-74002)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-194205(P2016-194205A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2018年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090549
【弁理士】
【氏名又は名称】加川 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】笠原 啓
(72)【発明者】
【氏名】副田 尚輝
(72)【発明者】
【氏名】橋本 徹
(72)【発明者】
【氏名】黒川 貴大
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−147774(JP,A)
【文献】 特開2005−207113(JP,A)
【文献】 特開2013−185342(JP,A)
【文献】 特開2005−226304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
E02D 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜面に設置されたアンカ一部材の地上部分に取り付けられた斜面安定化工法用の支圧部材であって、
前記支圧部材は、地表面に設置されて前記アンカ一部材に生じた引張力の反力を地表面に伝達するための受圧部材と、前記受圧部材の上側で前記アンカ一部材の頭部に取り付けられて前記受圧部材に前記アンカ一部材の引張力を伝達する伝達部材とを備え、
前記受圧部材は、中央に設けた開口と、前記開口の周囲に、地表面に設置した際に地表面と接する面状部とを有し、
前記伝達部材は、アンカー部材の頭部を挿通させて前記アンカ一部材の反力を受けるアンカ一反力受け部と、前記アンカ一反力受け部の周囲に設けられて、一部が前記受圧部材の上に載る支圧力伝達部とを有し、
前記支圧力伝達部は、面状セル構造としたセル構造部と、このセル構造部と前記アンカ一反力受け部との間を繋ぐ複数の伝達リブ部とを有し、
前記受圧部材の輪郭が角部を面取りした面取り角部を持つ略三角形状をなしており、前記伝達部材の輪郭が同じく角部を面取りした面取り角部を持つ略三角形状をなしており、前記伝達リブ部が、前記面取り角部に向かう第1伝達リブ部と、略三角形状の辺の中央に向かう第2伝達リブ部とからなることを特徴とする斜面安定化工法用の支圧部材。
【請求項2】
前記伝達部材の輪郭が受圧部材の輪郭より小さいことを特徴とする請求項1記載の斜面安定化工法用の支圧部材。
【請求項3】
前記セル構造部は、前記アンカ一反力受け部に直接繋がる内側環状部と、前記伝達部材の輪郭を形成する外側環状部と、前記外側環状部と内側環状部との間で環状をなす中間環状部と、外側環状部と中間環状部との間及び中間環状部と内側環状部との間を連結する周方向に間隔をあけて設けられた繋ぎ部とを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の斜面安定化工法用の支圧部材。
【請求項4】
前記外側環状部と内側環状部との間に、互いに径を異にする複数の中間環状部が存在し、隣接する中間環状部間を連結する周方向に間隔をあけて設けられた繋ぎ部を備えていることを特徴とする請求項3記載の斜面安定化工法用の支圧部材。
【請求項5】
前記伝達部材の輪郭が、前記略三角形状の辺の中央において平面視半径方向外方に凸の形状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の斜面安定化工法用の支圧部材。
【請求項6】
前記受圧部材の前記開口は、前記伝達部材の支圧力伝達部における前記セル構造部の中間環状部の内縁の輪郭より大であることを特徴とする請求項3に記載の斜面安定化工法用の支圧部材。
【請求項7】
斜面に設置されたアンカ一部材の地上部分に取り付けられた斜面安定化工法用の支圧部材であって、
前記支圧部材は、地表面に設置されて前記アンカ一部材に生じた引張力の反力を地表面に伝達するための受圧部材と、前記受圧部材の上側で前記アンカ一部材の頭部に取り付けられて前記受圧部材に前記アンカ一部材の引張力を伝達する伝達部材とを備え、
前記受圧部材は、中央に設けた開口と、前記開口の周囲に、地表面に設置した際に地表面と接する面状部とを有し、
前記伝達部材は、アンカー部材の頭部を挿通させて前記アンカ一部材の反力を受けるアンカ一反力受け部と、前記アンカ一反力受け部の周囲に設けられて、一部が前記受圧部材の上に載る支圧力伝達部とを有し、
前記支圧力伝達部は、面状セル構造としたセル構造部と、このセル構造部と前記アンカ一反力受け部との間を繋ぐ複数の伝達リブ部とを有し、
前記伝達部材のセル構造部の裏面に周方向に間隔をあけてずれ防止用の突起を形成し、前記受圧部材に前記突起が少なくとも周方向に係合する係合部を設けたことを特徴とする斜面安定化工法用の支圧部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アンカ一部材と支圧部材とを用いて施工する斜面安定化工法に用いる支圧部材に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の斜面安定化工法は、図9(イ)、(ロ)に示すように、斜面に設置されたアンカ一部材51の地上部分に支圧部材52が取り付けられた支圧ユニット53を斜面に間隔をあけて多数配置し、隣接する支圧ユニット53の地上部間を相互にワイヤロープ54等の線条体で連結して施工する(特許文献1、2)。
【0003】
この種の斜面安定化工法における従来の支圧部材52は鋼製であり、図10(イ)、(ロ)に示すように、アンカー挿通孔56aを有し下面が地表面に接する底板56と、底板56の中心部に固定された筒体部57と、底板56の上面と筒体部57の外周面との間を繋ぐように両者に固定された補強リブ58と、筒体部57の上端に固定された座金プレート59とからなる。補強リブ58にはワイヤロープ54を通すワイヤロープ挿通孔58aをあけている。
【0004】
この斜面安定化工法を施工する場合、斜面にロックボルト等のアンカー部材51を間隔をあけて多数設置し、各アンカー部材51の頭部にそれぞれ筒体部57を通して支圧部材52を被せ、座金プレート59から突出したアンカー部材51にナット60を螺合させ締着することで、支圧板と地山をなじませる。斜面に対する支圧力の発生は、斜面が崩壊しようと動き始めたときに、地山の変形にともなってアンカー部材51が微小変形し抵抗力が発現することで、アンカー部材51に引張力が発生し、その反力を受ける支圧部材52が斜面を押圧することで、斜面に対する支圧力が発生する。
次いで、隣接する支圧ユニット53の地上部間を相互にワイヤロープ54で連結する。図示例ではワイヤロープ54を、隣接する3つの支圧ユニット53の間に三角形をなす態様で引き回し、ターンバックル61で緊張力を与えている。ワイヤロープ54は、補強リブ58にあけたワイヤロープ挿通孔58aを通し、筒状体57の外周を巡らせて引き回している。
【0005】
ところで、コンクリート製の支圧部材を用いた斜面安定化工法として、図11に示すものがある(特許文献3)。この斜面安定化工法の支圧部材(受圧部材)72も、アンカー部材(引張り部材)71の地上突出端に装着されて、アンカー部材71の緊張力を斜面に伝達するものであるが、この支圧部材72は分割体73と分割体74との上下に二分割され、両分割体73、74の重なり面にワイヤ用の挟持溝73a、74aを設けて、この挟持溝73a、74aによりワイヤ75を挟み込むようにしたものである。アンカー部材71は、両分割体73、74のアンカー挿通孔(透明孔)73b、74bを挿通して突出し、上端部のねじ部にナット77が螺合される。
この支圧部材72によれば、ワイヤ75が上下の分割体73、74の挟持溝73a、74aで挟持されるので、ワイヤ75が支圧部材72から外れてしまうことがないというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−111761
【特許文献2】特開2011−185860
【特許文献3】特開2000−303478
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9図10に示したような斜面安定化工法は、斜面に自生する樹木を伐採することなく施工できるので、自然斜面に施工される場合が多く、したがって、資材の運搬及び施工に車両や重機を使用できない場合が多い。このため、従来、施工現場への資材の運搬及び現場施工を人力で行うことができるように、特に支圧部材の重量を人力で運搬及び施工できる程度に抑えている。
【0008】
ところで、すべり面の深さが深くなり、想定される斜面崩壊の規模が大きくなると、設置されたアンカー部材に作用する荷重(引張力)も大となり、その荷重に応じた強度の高い支圧部材が必要となる。また、支圧部材は、設置する地盤の許容支持力に応じた大きさの底面積を有する必要があり、アンカー部材に作用する荷重が大となれば必然的に支圧部材の底面積を大きくせざるを得ない。さらに、斜面安定化区域内に配置される支圧部材相互間の間隔が広い場合においても、同様に支圧部材の底面積を大きくする必要がある。
しかし、支圧部材の底面積を大きくしかつ強度を確保しようとすれば、必然的に重量も増えてしまうため、傾斜面である施工現場で行う作業、すなわち、人力での運搬やアンカー部材頭部への取り付けの作業が困難なものとなる。
そこで、アンカー部材に作用する大きな荷重に対応可能であることと、人力で運搬や施工が可能であることとを両立させることが望まれる。
【0009】
本発明は上記背景のもとでなされたもので、アンカー部材と支圧部材とを用いて施工する斜面安定化工法において、アンカー部材に作用する大きな荷重に対応可能であることと、人力での運搬や施工が可能であることとを両立させることができる支圧部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する請求項1の発明は、斜面に設置されたアンカ一部材の地上部分に取り付けられた斜面安定化工法用の支圧部材であって、
前記支圧部材は、地表面に設置されて前記アンカ一部材に生じた引張力の反力を地表面に伝達するための受圧部材と、前記受圧部材の上側で前記アンカ一部材の頭部に取り付けられて前記受圧部材に前記アンカ一部材の引張力を伝達する伝達部材とを備え、
前記受圧部材は、中央に設けた開口と、前記開口の周囲に、地表面に設置した際に地表面と接する面状部とを有し、
前記伝達部材は、アンカー部材の頭部を挿通させて前記アンカ一部材の反力を受けるアンカ一反力受け部と、前記アンカ一反力受け部の周囲に設けられて、一部が前記受圧部材の上に載る支圧力伝達部とを有し、
前記支圧力伝達部は、面状セル構造としたセル構造部と、このセル構造部と前記アンカ一反力受け部との間を繋ぐ複数の伝達リブ部とを有し、
前記受圧部材の輪郭が角部を面取りした面取り角部を持つ略三角形状をなしており、前記伝達部材の輪郭が同じく角部を面取りした面取り角部を持つ略三角形状をなしており、前記伝達リブ部が、前記面取り角部に向かう第1伝達リブ部と、略三角形状の辺の中央に向かう第2伝達リブ部とからなることを特徴とする。
【0011】
請求項2は、請求項1の斜面安定化工法用の支圧部材において、前記伝達部材の輪郭が受圧部材の輪郭より小さいことを特徴とする。
【0012】
請求項3は、請求項1又は2の斜面安定化工法用の支圧部材において、前記セル構造部は、前記アンカー反力受け部に直接繋がる内側環状部と、前記伝達部材の輪郭を形成する外側環状部と、前記外側環状部と内側環状部との間で環状をなす中間環状部と、外側環状部と中間環状部との間及び中間環状部と内側環状部との間を連結する周方向に間隔をあけて設けられた繋ぎ部とを備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項4は、請求項3の斜面安定化工法用の支圧部材において、前記外側環状部と内側環状部との間に、互いに径を異にする複数の中間環状部が存在し、隣接する中間環状部間を連結する周方向に間隔をあけて設けられた繋ぎ部を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の斜面安定化工法用の支圧部材において、前記伝達部材の輪郭が、前記略三角形状の辺の中央において平面視半径方向外方に凸の形状であることを特徴とする。
【0016】
請求項は、請求項3の斜面安定化工法用の支圧部材において、前記受圧部材の前記開口は、前記伝達部材の支圧力伝達部における前記セル構造部の中間環状部の内縁の輪郭より大であることを特徴とする。
【0017】
請求項7は、斜面に設置されたアンカ一部材の地上部分に取り付けられた斜面安定化工法用の支圧部材であって、前記支圧部材は、地表面に設置されて前記アンカ一部材に生じた引張力の反力を地表面に伝達するための受圧部材と、前記受圧部材の上側で前記アンカ一部材の頭部に取り付けられて前記受圧部材に前記アンカ一部材の引張力を伝達する伝達部材とを備え、
前記受圧部材は、中央に設けた開口と、前記開口の周囲に、地表面に設置した際に地表面と接する面状部とを有し、前記伝達部材は、アンカー部材の頭部を挿通させて前記アン一部材の反力を受けるアンカ一反力受け部と、前記アンカ一反力受け部の周囲に設けられて、一部が前記受圧部材の上に載る支圧力伝達部とを有し、前記支圧力伝達部は、面状セル構造としたセル構造部と、このセル構造部と前記アンカ一反力受け部との間を繋ぐ複数の伝達リブ部とを有し、前記伝達部材のセル構造部の裏面に周方向に間隔をあけてずれ防止用の突起を形成し、前記受圧部材に前記突起が少なくとも周方向に係合する係合部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の支圧部材によれば、斜面に設置されたアンカ一部材に生じた引張力の反力を地表面に伝達するための受圧部材と、受圧部材の上側でアンカ一部材の頭部に取り付けられて受圧部材にアンカ一部材の反力を伝達する伝達部材とに二分割し、受圧部材の中央部に開口を設ける構成としており、開口の存在によって押圧しない地表面を、面状部によって押圧する地表面で囲んで分離させているので、開口を設けずに地表面を押圧する場合とほぼ同等の効果を得ることができ、受圧部材としての機能を損なわずに受圧部材の重量を軽減することができる。また、伝達部材の重量の多くの部分を占める支圧力伝達部について面状セル構造としたセル構造部を有する構成としているので、伝達部材の重量を、必要な強度を損なわずに軽減することができる。
【0019】
このように、アンカー部材に作用する大きな荷重に対応可能であることと、人力で運搬や施工が可能であることとを両立させることができる。
したがって、資材の運搬や施工に車両や重機を使用できない斜面で施工することが多いこの種の斜面安定化工法の適用範囲を、すべり面の深さが深い斜面にまで広げることができる。
【0020】
請求項3および請求項4の支圧部材によれば、セル構造部が、内側環状部と外側環状部と中間環状部とを有し、外側と中間との間、中間と内側との間のそれぞれ環状部間を繋ぎ部とで連結する構造なので、伝達部材の剛性を確保しつつ開口により重量が軽減されるとともに、アンカー部材の反力を受圧部材の全体に分散して伝達させ受圧部材の変形を抑えることができる。
したがって、伝達部材としての強度を確保しつつ重量を軽減することが可能である。
また、環状部を手で握ることが可能となるため、人力での運搬や施工を容易に行うことができる。
さらに、それぞれの環状部間に生じた開口から斜面の植物が自生することが可能となるため、自然斜面の景観を損ねることを防止することができる。
【0021】
また、伝達部材の輪郭(支圧力伝達部のセル構造部の輪郭)が受圧部材の輪郭に合わせた略三角形状であり、伝達リブ部(支圧力伝達部の伝達リブ部)が、面取り角部に向かう第1伝達リブ部と、略三角形状の辺の中央に向かう第2伝達リブ部とからなる構成としているので、重量軽減を効果的に図りながら、アンカー部材の反力を複数の伝達リブ部によって受圧部材の全体に伝達させることができ受圧部材の変形を抑えることができる。
また、請求項のように、略三角形状をなす伝達部材の辺(支圧力伝達部のセル構造部の辺部分)の中央を平面視半径方向外方に凸の形状とすることで、受圧部材の略三角形状の輪郭の辺の中央付近の面積が大きくなり、その部分の受圧部材に伝達される力を大きくすることが可能となるため、アンカー部材の反力によって生じる受圧部材の略三角形状の輪郭の辺の中央付近の変形を抑えることができる。
したがって、伝達部材の重量増加を抑えながら、アンカー部材の反力による受圧部材の変形を抑えることができる。
【0022】
請求項のように、受圧部材の開口を伝達部材のセル構造部の中間環状部の内縁の輪郭より大とした構造は、伝達部材によって伝達されるアンカー部材の反力を確実に受け止めながら、受圧部材の重量軽減を図る上で効果的である。
【0023】
請求項によれば、支圧部材を二分割したことに伴う、受圧部材と伝達部材との位置合わせ作業のしにくさを、簡単な構造で解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例の支圧部材の斜視図である
図2図1の支圧部材を受圧部材と伝達部材とに分解して示した分解斜視図である
図3】上記支圧部材における伝達部材を示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のA矢視図である。
図4】(イ)は 図3(イ)のB矢視図、(ロ)は図3(イ)のC−C断面図である(但し、伝達リブ部分はハッチングしていない)。
図5】上記支圧部材における受圧部材を示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は(イ)のD-D断面図である。
図6】(イ)は上記支圧部材を用いて斜面安定化工法を施工した斜面の一部を示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は縦断面図である。
図7図6(イ)における1箇所の支圧部材部分の詳細を示すもので、図8のE−E断面で示した図である。
図8図6(ロ)における1箇所の支圧部材部分の詳細を示す図である(但し、キャップを被せた図)。
図9】従来の支圧部材を用いて斜面安定化工法を施工した斜面の一部の示すもので、(イ)は平面図、(ロ)は縦断面図である。
図10】(イ)は図9(イ)における1箇所の支圧部材部分の詳細図、(ロ)は図9(ロ)の1箇所の支圧部材部分の詳細図である。
図11】従来のコンクリート製の支圧部材を用いて斜面安定化工法を施工する場合に、支圧部材を2分割した例を示すもので、(イ)は支圧部材部分の断面図、(ロ)は(イ)の支圧部材の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の斜面安定化工法用の支圧部材を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0026】
本発明の支圧部材は、例えば図6(イ)、(ロ)に示すように、斜面に設置されたアンカ一部材1の地上部分に支圧部材2が取り付けられた支圧ユニット3を、隣接する支圧ユニット地上部間を相互にワイヤロープ4等の線条体で連結する斜面安定化工法用の支圧部材2である。
そして、本発明の支圧部材は、斜面に設置されたアンカー部材に作用する荷重(引張力)が大きい場合に対応可能にしたものであり、基本的には支圧部材の底面積を従来の支圧部材の底面積より大とし、かつ強度を大とする。
以下に説明する実施例の支圧部材2は、図9図10で説明した従来の支圧部材52の対応可能なすべり面深さhが3m以内であったものが、対応可能なすべり面深さH(図6(ロ))を例えば3m〜5mまで深くすることを可能にしている。なお、図6(ロ)、図9(ロ)、図10(ロ)において、20aは不動層、20bは不安定層、20cはすべり面である。
【0027】
図1に本発明の一実施例の支圧部材2を斜視図で示し、図2にその分解斜視図を示す。この支圧部材2は、斜面に設置された前記アンカ一部材1に生じた引張力の反力を地表面に伝達するための受圧部材6と、前記受圧部材6の上側で前記アンカ一部材の頭部1に取り付けられて前記受圧部材6に前記アンカ一部材1の反力を伝達する伝達部材7とに分割されている。本実施例の受圧部材6は鋼板製で重量が14.1kg、伝達部材7は鋳鉄製で重量が14.8kgである。このように、個々の部材6、7はいずれも人力で運搬可能な重量である。
図3(イ)に前記伝達部材7の平面図、図3(ロ)に図3(イ)のA矢視図、図4(イ)に図3(イ)のB矢視図、図4(ロ)に図3(イ)のC−C断面図を示す。図5(イ)に受圧部材6の平面図、図5(ロ)に図5(イ)のD−D断面図を示す。
【0028】
前記受圧部材6は、図5に示すように、中央に設けた開口6aの周囲に、地表面に設置した際に地表面と接する面状部6bを有する。開口6aの内縁の3カ所に、後述する伝達部材7の突起12fが係合する係合部としての凹所6cを形成している。なお、この開口6aは、アンカー部材1を挿通させるものであることは勿論であるが、軽量化を図るために顕著に大きな開口としている。図示例では、伝達部材7の後述するセル構造部12の中間環状部12cの内縁の輪郭より大としている(後述する図7参照)。
また、本実施例の受圧部材6は、角部が大きく面取りされて辺状とも見える面取り角部6dを持つ平面視略三角形状をなす輪郭を有する。
【0029】
前記伝達部材7は、図3に示すように、アンカ一部材1の反力を受けるアンカ一反力受け部10と、前記アンカ一反力受け部10の周囲に設けられて、一部が前記受圧部材6の上に載る支圧力伝達部11を有している。
前記アンカ一反力受け部10は、アンカー部材1の頭部を挿通させる筒体部8と、この筒体部8の上端の天板部9とを有し、天板部9にアンカー挿通孔9aをあけている。
前記支圧力伝達部11は、前記受圧部材6の前記面状部6bに一部が接するセル構造部12と、このセル構造部12と前記アンカ一反力受け部10の筒体部8との間を繋ぐ複数の伝達リブ部13とを有している。セル構造部12の輪郭(伝達部材7の輪郭)は、図7に示す通り受圧部材6の輪郭より小さい。
本実施例の支圧力伝達部11のセル構造部12は、前記筒体部8に直接繋がる内側環状部12aと、前記支圧力伝達部11のセル構造部12の輪郭(伝達部材7の輪郭)を形成する外側環状部12bと、前記外側環状部12bと前記内側環状部12aとの間で環状をなす中間環状部12cと、外側環状部12bと中間環状部12cとの間及び中間環状部12cと内側環状部12aとの間を連結する周方向に間隔をあけて設けられた繋ぎ部12dとを備えている。
なお、セル構造部12の面状セル構造の態様は、本実施例のような環状部を有するものに限らず、面状体に不規則に開口が形成されているものでもよい。
【0030】
また、本実施例の支圧力伝達部11のセル構造部12の輪郭は、前記面取り角部6dを持つ略三角形状の受圧部材6の輪郭に対応させて、受圧部材6の輪郭より小サイズの、同じく角部を面取りした面取り角部12eを持つ略三角形状をなしている。さらに、略三角形状をなすセル構造部12の三方の辺部分12gが平面視半径方向外方に凸の形状をなしている。
さらに、伝達リブ部13は前記セル構造部12の輪郭に対応させている。すなわち、伝達リブ部13として、セル構造部12の前記面取り角部12eに向かう第1伝達リブ部13aと、略三角形状の辺12gの中央に向かう第2伝達リブ部13bとを設けている。伝達リブ部13の筒体部8に繋がる部分の下部にワイヤロープ4を通すための切欠き(ワイヤロープ挿通孔)13cを設けている。
また、セル構造部12の裏面に、受圧部材6の開口6aの内縁に形成した前記凹所(係合部)6cに嵌って係合するずれ防止用の突起12fを設けている。突起12fが凹所6cに係合することで、伝達部材7が受圧部材6に対して回転方向にずれることは防止される。
【0031】
上述の支圧部材2を用いた斜面安定化工法の施工を図6図8を参照して説明する。
まず、斜面にアンカー部材1を間隔をあけて多数設置する。
次いで、受圧部材6を、その開口6aを各アンカー部材1の頭部に挿通させて地表面に置く。次いで、伝達部材7を、そのアンカ一反力受け部10の天板部9のアンカー挿通孔9aをアンカー部材1の頭部に挿通させて、受圧部材6の上に載せる。この場合、受圧部材6の開口6aの中心をアンカー部材1に位置合わせし、開口6a内縁に形成した3カ所の凹所6cに伝達部材7のずれ防止用の各突起12fが係合するようにして載せる。次いで、ワッシャ(球面ワッシャ)15を介在させてナット(球面ナット)16をアンカー部材1のねじ部1aに螺合させ、締着する。これにより、アンカー部材1に引張力が発生し、その反力を伝達部材7のアンカ一反力受け部10が受け、支圧力伝達部11を介して受圧部材6に伝達し、この受圧部材6が地表面を押圧することで、斜面に対する支圧力が発生する。
次いで、内部にオイルを充填したキャップ17を被せ、ワッシャ15の外周ねじ部にて取り付ける。
次いで、隣接する支圧ユニット3の支圧部材2間を相互にワイヤロープ4で連結する。図示例ではワイヤロープ4を、隣接する3つの支圧部材2の間に三角形をなす態様で引き回しターンバックル18で緊張力を与えている。ワイヤロープ4は、伝達部材7の伝達リブ部13(第1伝達リブ部13a、第2伝達リブ部13b)にあけたワイヤロープ挿通孔13cを通し、筒体部8の外周を巡らせて引き回している。
【0032】
上述の支圧部材2における鋼板製の受圧部材6の板厚は6mmである。実施例の伝達部材7は鋳鉄製であり各部の肉厚の設定に自由度があるので、アンカー部材1の反力を受圧部材6に伝達可能な強度を持たせることと、極力軽量化を図ることとをバランスよく満たすように設定している。
また、セル構造部12における伝達リブ13a、13bの下端と繋がっている箇所の近傍は他の部分より若干肉厚を厚くしている。その他、伝達部材7の各部、特に支圧力伝達部11は、細部に亘って、強度を確保しながら極力重量が軽減されるような形状、厚みに設定している。
伝達部材7の図3(ロ)に示した高さA=85mmである。従来の支圧部材52の図10(ロ)における高さA’(底板56の厚み6mmを除いた高さ)=91mmである。なお、図3(ロ)には受圧部材6を併せて記載している。
【0033】
上記のような各部に寸法を持つ受圧部材6及び伝達部材7の重量は、前述した通りそれぞれ人力で運搬可能な14.1kg、14.8kgである。このように、この実施例の支圧部材2は、斜面に設置されたアンカ一部材1に生じた引張力の反力を地表面に伝達するための受圧部材6と、この受圧部材6の上側でアンカ一部材1の頭部に取り付けられて受圧部材6にアンカ一部材1の反力を伝達する伝達部材7とに二分割し、受圧部材6の中央部に受圧部材6としての機能を損なわずに大きな開口6aを設ける構成としており、開口6aの存在によって押圧しない地表面部を、面状部6bによって押圧する地表面で囲んで分離させているので、開口を設けずに押圧した場合とほぼ同等の効果を得ることができ、受圧部材6としての機能を損なわずに受圧部材6の重量を軽減することが可能となっている。また、伝達部材6の重量の多くの部分を占める支圧力伝達部11について面状セル構造としたセル構造部12を有する構成としているので、伝達部材7の重量を、必要な強度を損なわずに軽減することが可能となっている。
【0034】
このように、アンカー部材1に作用する大きな荷重に対応可能であることと、人力で運搬や施工が可能であることとを両立させることが実現されている。
したがって、資材の運搬や施工に車両や重機を使用できない斜面で施工することが多いこの種の斜面安定化工法の適用範囲を、すべり面の深さが深い斜面にまで広げることができる。前述の通り、従来の支圧部材52の対応可能なすべり面深さhが3m以内であったものを、対応可能なすべり面深さH(図6(ロ))を例えば3m〜5mまで深くすることが可能となる。
また、すべり面深さが従来程度(h)である場合には、斜面に設置するアンカー部材間隔を従来のアンカー部材間隔2mより広げることが可能である。
本実施例では、セル構造部12が、内側環状部12aと外側環状部12bと中間環状部12cとを有し、外側と中間との間、中間と内側との間のそれぞれ環状部間を繋ぎ部12dとで連結する構造なので、伝達部材7の剛性を確保しつつ開口により重量が軽減されるとともに、アンカー部材1に生じた引張力の反力を受圧部材6の全体に分散して伝達させ受圧部材6の変形を抑えることができる。
したがって、伝達部材7としての強度を確保しつつ効果的に重量軽減することが可能となっている。
また、環状部を手で握ることが可能となるため、人力での運搬や施工を容易に行うことができる。
さらに、それぞれの環状部間に生じた開口から斜面の植物が自生することが可能となるため、自然斜面の景観が損ねることを防止することができる。
本実施例では、伝達部材7の輪郭(支圧力伝達部11のセル構造部12の輪郭)が受圧部材6の輪郭に合わせた略三角形状であり、伝達リブ部13(支圧力伝達部11の伝達リブ部13)が、面取り角部に向かう第1伝達リブ部13aと、略三角形状の辺の中央に向かう第2伝達リブ部13bとからなる構成としているので、重量軽減を効果的に図りながら、アンカー部材1に生じた引張力の反力を複数の伝達リブ部13によって受圧部材6の全体に分散して伝達させることができ、また、受圧部材6の変形を抑えることができる。
また、略三角形状をなす伝達部材7の辺(支圧力伝達部のセル構造部の辺部分)の中央を平面視半径方向外方に凸の形状としているので、受圧部材6の略三角形状の輪郭の辺の中央付近の面積が大きくなり、その部分の受圧部材6に伝達される力を大きくすることが可能となるため、アンカー部材1の反力によって生じる受圧部材6の略三角形状の輪郭の辺の中央付近の変形を抑えることができる。
したがって、伝達部材7の重量増加を極力抑えながら、アンカー部材の反力による受圧部材6の変形を抑えることができる。
【0035】
上述の実施例では、中間環状部が1つであるが、前記中間環状部12cと内側環状部12aとの間に例えば第2の中間環状部を設けて、中間環状部12cと前記第2の中間環状部との間に繋ぎ部を設けかつ第2の中間環状部と内側環状部12aとの間に繋ぎ部を設けることも可能である。この場合、中間環状部12cと前記第2の中間環状部との間、および第2の中間環状部と内側環状部12aとの間がそれぞれ面状セル構造をなしてその全体がセル構造部となる。さらには、中間環状部を3つ以上設けることも考えられる。
【0036】
上記実施例の受圧部材6、伝達部材7の重量はそれぞれ14.1kg、14.8kgであるが、人力で運搬・施工可能な範囲であれば、さらに重く、例えば20kg程度とすることも考えられる。但し、15kg以下であることが好適である。
また、受圧部材の輪郭形状は、実施例のような略三角形状に限らず、四角形や円形、その他の形状とすることができる。なお、伝達部材の輪郭形状は受圧部材の輪郭形状に合わせて、適切な形状とする。
【0037】
実施例のセル構造部12は、内側環状部12aおよび中間環状部12cが円形状であるが、円形以外の環形状とすることができる。
また、実施例では、アンカー部材1を斜面に直角に設置(貫入)しているが、斜面に対して角度を付けて設置する場合もある。
実施例では伝達部材を鋳鉄製としたが、鋼製や樹脂製とすることも可能である。また、実施例では鋼製である受圧部材を鋳鉄製や樹脂製とすることも可能である。
また、実施例のワイヤロープは鋼製であるが、材質は特に限定されない。
【符号の説明】
【0038】
1 アンカ一部材
1a ねじ部
2 支圧部材
3 支圧ユニット
4 ワイヤロープ(線条体)
6 受圧部材
6a 開口
6b 面状部
6c 凹所(係合部)
6d 面取り角部
7 伝達部材
8 筒体部
9 天板部
9a アンカー挿通孔
10 アンカ一反力受け部
11 支圧力伝達部
12 セル構造部
12a 内側環状部
12b 外側環状部
12c 中間環状部
12d 繋ぎ部
12e 面取り角部
12f 突起
12g 辺部分
13 伝達リブ部
13a 第1伝達リブ部
13b 第2伝達リブ部
13c 切欠き(ワイヤロープ挿通孔)
15 ワッシャ(球面ワッシャ)
16 ナット(球面ナット)
17 キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11