【実施例1】
【0026】
本発明の支圧部材は、例えば
図6(イ)、(ロ)に示すように、斜面に設置されたアンカ一部材1の地上部分に支圧部材2が取り付けられた支圧ユニット3を、隣接する支圧ユニット地上部間を相互にワイヤロープ4等の線条体で連結する斜面安定化工法用の支圧部材2である。
そして、本発明の支圧部材は、斜面に設置されたアンカー部材に作用する荷重(引張力)が大きい場合に対応可能にしたものであり、基本的には支圧部材の底面積を従来の支圧部材の底面積より大とし、かつ強度を大とする。
以下に説明する実施例の支圧部材2は、
図9、
図10で説明した従来の支圧部材52の対応可能なすべり面深さhが3m以内であったものが、対応可能なすべり面深さH(
図6(ロ))を例えば3m〜5mまで深くすることを可能にしている。なお、
図6(ロ)、
図9(ロ)、
図10(ロ)において、20aは不動層、20bは不安定層、20cはすべり面である。
【0027】
図1に本発明の一実施例の支圧部材2を斜視図で示し、
図2にその分解斜視図を示す。この支圧部材2は、斜面に設置された前記アンカ一部材1に生じた引張力の反力を地表面に伝達するための受圧部材6と、前記受圧部材6の上側で前記アンカ一部材の頭部1に取り付けられて前記受圧部材6に前記アンカ一部材1の反力を伝達する伝達部材7とに分割されている。本実施例の受圧部材6は鋼板製で重量が14.1kg、伝達部材7は鋳鉄製で重量が14.8kgである。このように、個々の部材6、7はいずれも人力で運搬可能な重量である。
図3(イ)に前記伝達部材7の平面図、
図3(ロ)に
図3(イ)のA矢視図、
図4(イ)に
図3(イ)のB矢視図、
図4(ロ)に
図3(イ)のC−C断面図を示す。
図5(イ)に受圧部材6の平面図、
図5(ロ)に
図5(イ)のD−D断面図を示す。
【0028】
前記受圧部材6は、
図5に示すように、中央に設けた開口6aの周囲に、地表面に設置した際に地表面と接する面状部6bを有する。開口6aの内縁の3カ所に、後述する伝達部材7の突起12fが係合する係合部としての凹所6cを形成している。なお、この開口6aは、アンカー部材1を挿通させるものであることは勿論であるが、軽量化を図るために顕著に大きな開口としている。図示例では、伝達部材7の後述するセル構造部12の中間環状部12cの内縁の輪郭より大としている(後述する
図7参照)。
また、本実施例の受圧部材6は、角部が大きく面取りされて辺状とも見える面取り角部6dを持つ平面視略三角形状をなす輪郭を有する。
【0029】
前記伝達部材7は、
図3に示すように、アンカ一部材1の反力を受けるアンカ一反力受け部10と、前記アンカ一反力受け部10の周囲に設けられて、一部が前記受圧部材6の上に載る支圧力伝達部11を有している。
前記アンカ一反力受け部10は、アンカー部材1の頭部を挿通させる筒体部8と、この筒体部8の上端の天板部9とを有し、天板部9にアンカー挿通孔9aをあけている。
前記支圧力伝達部11は、前記受圧部材6の前記面状部6bに一部が接するセル構造部12と、このセル構造部12と前記アンカ一反力受け部10の筒体部8との間を繋ぐ複数の伝達リブ部13とを有している。セル構造部12の輪郭(伝達部材7の輪郭)は、
図7に示す通り受圧部材6の輪郭より小さい。
本実施例の支圧力伝達部11のセル構造部12は、前記筒体部8に直接繋がる内側環状部12aと、前記支圧力伝達部11のセル構造部12の輪郭(伝達部材7の輪郭)を形成する外側環状部12bと、前記外側環状部12bと前記内側環状部12aとの間で環状をなす中間環状部12cと、外側環状部12bと中間環状部12cとの間及び中間環状部12cと内側環状部12aとの間を連結する周方向に間隔をあけて設けられた繋ぎ部12dとを備えている。
なお、セル構造部12の面状セル構造の態様は、本実施例のような環状部を有するものに限らず、面状体に不規則に開口が形成されているものでもよい。
【0030】
また、本実施例の支圧力伝達部11のセル構造部12の輪郭は、前記面取り角部6dを持つ略三角形状の受圧部材6の輪郭に対応させて、受圧部材6の輪郭より小サイズの、同じく角部を面取りした面取り角部12eを持つ略三角形状をなしている。さらに、略三角形状をなすセル構造部12の三方の辺部分12gが平面視半径方向外方に凸の形状をなしている。
さらに、伝達リブ部13は前記セル構造部12の輪郭に対応させている。すなわち、伝達リブ部13として、セル構造部12の前記面取り角部12eに向かう第1伝達リブ部13aと、略三角形状の辺12gの中央に向かう第2伝達リブ部13bとを設けている。伝達リブ部13の筒体部8に繋がる部分の下部にワイヤロープ4を通すための切欠き(ワイヤロープ挿通孔)13cを設けている。
また、セル構造部12の裏面に、受圧部材6の開口6aの内縁に形成した前記凹所(係合部)6cに嵌って係合するずれ防止用の突起12fを設けている。突起12fが凹所6cに係合することで、伝達部材7が受圧部材6に対して回転方向にずれることは防止される。
【0031】
上述の支圧部材2を用いた斜面安定化工法の施工を
図6〜
図8を参照して説明する。
まず、斜面にアンカー部材1を間隔をあけて多数設置する。
次いで、受圧部材6を、その開口6aを各アンカー部材1の頭部に挿通させて地表面に置く。次いで、伝達部材7を、そのアンカ一反力受け部10の天板部9のアンカー挿通孔9aをアンカー部材1の頭部に挿通させて、受圧部材6の上に載せる。この場合、受圧部材6の開口6aの中心をアンカー部材1に位置合わせし、開口6a内縁に形成した3カ所の凹所6cに伝達部材7のずれ防止用の各突起12fが係合するようにして載せる。次いで、ワッシャ(球面ワッシャ)15を介在させてナット(球面ナット)16をアンカー部材1のねじ部1aに螺合させ、締着する。これにより、アンカー部材1に引張力が発生し、その反力を伝達部材7のアンカ一反力受け部10が受け、支圧力伝達部11を介して受圧部材6に伝達し、この受圧部材6が地表面を押圧することで、斜面に対する支圧力が発生する。
次いで、内部にオイルを充填したキャップ17を被せ、ワッシャ15の外周ねじ部にて取り付ける。
次いで、隣接する支圧ユニット3の支圧部材2間を相互にワイヤロープ4で連結する。図示例ではワイヤロープ4を、隣接する3つの支圧部材2の間に三角形をなす態様で引き回しターンバックル18で緊張力を与えている。ワイヤロープ4は、伝達部材7の伝達リブ部13(第1伝達リブ部13a、第2伝達リブ部13b)にあけたワイヤロープ挿通孔13cを通し、筒体部8の外周を巡らせて引き回している。
【0032】
上述の支圧部材2における鋼板製の受圧部材6の板厚は6mmである。実施例の伝達部材7は鋳鉄製であり各部の肉厚の設定に自由度があるので、アンカー部材1の反力を受圧部材6に伝達可能な強度を持たせることと、極力軽量化を図ることとをバランスよく満たすように設定している。
また、セル構造部12における伝達リブ13a、13bの下端と繋がっている箇所の近傍は他の部分より若干肉厚を厚くしている。その他、伝達部材7の各部、特に支圧力伝達部11は、細部に亘って、強度を確保しながら極力重量が軽減されるような形状、厚みに設定している。
伝達部材7の
図3(ロ)に示した高さA=85mmである。従来の支圧部材52の
図10(ロ)における高さA’(底板56の厚み6mmを除いた高さ)=91mmである。なお、
図3(ロ)には受圧部材6を併せて記載している。
【0033】
上記のような各部に寸法を持つ受圧部材6及び伝達部材7の重量は、前述した通りそれぞれ人力で運搬可能な14.1kg、14.8kgである。このように、この実施例の支圧部材2は、斜面に設置されたアンカ一部材1に生じた引張力の反力を地表面に伝達するための受圧部材6と、この受圧部材6の上側でアンカ一部材1の頭部に取り付けられて受圧部材6にアンカ一部材1の反力を伝達する伝達部材7とに二分割し、受圧部材6の中央部に受圧部材6としての機能を損なわずに大きな開口6aを設ける構成としており、開口6aの存在によって押圧しない地表面部を、面状部6bによって押圧する地表面で囲んで分離させているので、開口を設けずに押圧した場合とほぼ同等の効果を得ることができ、受圧部材6としての機能を損なわずに受圧部材6の重量を軽減することが可能となっている。また、伝達部材6の重量の多くの部分を占める支圧力伝達部11について面状セル構造としたセル構造部12を有する構成としているので、伝達部材7の重量を、必要な強度を損なわずに軽減することが可能となっている。
【0034】
このように、アンカー部材1に作用する大きな荷重に対応可能であることと、人力で運搬や施工が可能であることとを両立させることが実現されている。
したがって、資材の運搬や施工に車両や重機を使用できない斜面で施工することが多いこの種の斜面安定化工法の適用範囲を、すべり面の深さが深い斜面にまで広げることができる。前述の通り、従来の支圧部材52の対応可能なすべり面深さhが3m以内であったものを、対応可能なすべり面深さH(
図6(ロ))を例えば3m〜5mまで深くすることが可能となる。
また、すべり面深さが従来程度(h)である場合には、斜面に設置するアンカー部材間隔を従来のアンカー部材間隔2mより広げることが可能である。
本実施例では、セル構造部12が、内側環状部12aと外側環状部12bと中間環状部12cとを有し、外側と中間との間、中間と内側との間のそれぞれ環状部間を繋ぎ部12dとで連結する構造なので、伝達部材7の剛性を確保しつつ開口により重量が軽減されるとともに、アンカー部材1に生じた引張力の反力を受圧部材6の全体に分散して伝達させ受圧部材6の変形を抑えることができる。
したがって、伝達部材7としての強度を確保しつつ効果的に重量軽減することが可能となっている。
また、環状部を手で握ることが可能となるため、人力での運搬や施工を容易に行うことができる。
さらに、それぞれの環状部間に生じた開口から斜面の植物が自生することが可能となるため、自然斜面の景観が損ねることを防止することができる。
本実施例では、伝達部材7の輪郭(支圧力伝達部11のセル構造部12の輪郭)が受圧部材6の輪郭に合わせた略三角形状であり、伝達リブ部13(支圧力伝達部11の伝達リブ部13)が、面取り角部に向かう第1伝達リブ部13aと、略三角形状の辺の中央に向かう第2伝達リブ部13bとからなる構成としているので、重量軽減を効果的に図りながら、アンカー部材1に生じた引張力の反力を複数の伝達リブ部13によって受圧部材6の全体に分散して伝達させることができ、また、受圧部材6の変形を抑えることができる。
また、略三角形状をなす伝達部材7の辺(支圧力伝達部のセル構造部の辺部分)の中央を平面視半径方向外方に凸の形状としているので、受圧部材6の略三角形状の輪郭の辺の中央付近の面積が大きくなり、その部分の受圧部材6に伝達される力を大きくすることが可能となるため、アンカー部材1の反力によって生じる受圧部材6の略三角形状の輪郭の辺の中央付近の変形を抑えることができる。
したがって、伝達部材7の重量増加を極力抑えながら、アンカー部材の反力による受圧部材6の変形を抑えることができる。
【0035】
上述の実施例では、中間環状部が1つであるが、前記中間環状部12cと内側環状部12aとの間に例えば第2の中間環状部を設けて、中間環状部12cと前記第2の中間環状部との間に繋ぎ部を設けかつ第2の中間環状部と内側環状部12aとの間に繋ぎ部を設けることも可能である。この場合、中間環状部12cと前記第2の中間環状部との間、および第2の中間環状部と内側環状部12aとの間がそれぞれ面状セル構造をなしてその全体がセル構造部となる。さらには、中間環状部を3つ以上設けることも考えられる。
【0036】
上記実施例の受圧部材6、伝達部材7の重量はそれぞれ14.1kg、14.8kgであるが、人力で運搬・施工可能な範囲であれば、さらに重く、例えば20kg程度とすることも考えられる。但し、15kg以下であることが好適である。
また、受圧部材の輪郭形状は、実施例のような略三角形状に限らず、四角形や円形、その他の形状とすることができる。なお、伝達部材の輪郭形状は受圧部材の輪郭形状に合わせて、適切な形状とする。
【0037】
実施例のセル構造部12は、内側環状部12aおよび中間環状部12cが円形状であるが、円形以外の環形状とすることができる。
また、実施例では、アンカー部材1を斜面に直角に設置(貫入)しているが、斜面に対して角度を付けて設置する場合もある。
実施例では伝達部材を鋳鉄製としたが、鋼製や樹脂製とすることも可能である。また、実施例では鋼製である受圧部材を鋳鉄製や樹脂製とすることも可能である。
また、実施例のワイヤロープは鋼製であるが、材質は特に限定されない。