特許第6573473号(P6573473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573473
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】動力分割歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/36 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   F16H1/36
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-82315(P2015-82315)
(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公開番号】特開2015-203501(P2015-203501A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年11月22日
(31)【優先権主張番号】10 2014 005 517.5
(32)【優先日】2014年4月15日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598113922
【氏名又は名称】レンク・アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト・ピンネカンプ
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102004036005(DE,A1)
【文献】 特表2001−525044(JP,A)
【文献】 米国特許第06220984(US,B1)
【文献】 独国特許出願公開第102010041474(DE,A1)
【文献】 国際公開第99/032801(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支承されている駆動側の軸(11)であって、当該駆動側の軸に駆動歯部(12)が成形されている駆動側の軸と、
回転可能に支承されている被動側の軸(13)であって、当該被動側の軸に被動歯部(14)が成形されている被動側の軸と、
第一の数の第一の遊星軸(15)であって、当該第一の遊星軸(15)の個々の遊星軸に、それぞれ第一の遊星歯部(17)が成形されており、軸方向にずらされた状態で第二の遊星歯部(18)が成形されている第一の数の第一の遊星軸と、
第二の数の第二の遊星軸(16)であって、当該第二の遊星軸(16)の個々の遊星軸に、それぞれ第三の遊星歯部(21)が成形されており、軸方向にずらされた状態で第四の遊星歯部(22)が成形されている、第二の数の第二の遊星軸と、
を有する動力分割歯車装置(10)であり、
前記第一の遊星軸(15)の前記第一の遊星歯部(17)は、前記駆動歯部(12)と噛み合っており、前記第二の遊星軸(16)の前記第四の遊星歯部(22)は、前記被動歯部(14)と噛み合っており、
前記第一の遊星軸(15)の前記第二の遊星歯部(18)は前記第二の遊星軸(16)の前記第三の遊星歯部(21)と噛み合っており、
前記第一の遊星軸(15)は不均一な角度分割によって円周にわたって配分されており、
前記第二の遊星(16)は均一な角度分割によって円周にわたって配分されており、
前記第二の遊星軸(16)は周方向においてそれぞれ、互いに比較的大きな角度間隔で設けられている二つの隣接する第一の遊星軸(15)の間に配置されている、動力分割歯車装置。
【請求項2】
第一の遊星軸(15)の前記第一の数は第二の遊星軸(16)の前記第二の数よりも大きく、第一の遊星軸(15)の前記第一の数は偶数であり、第二の遊星軸(16)の前記第二の数は偶数または奇数であることを特徴とする、請求項1に記載の動力分割歯車装置。
【請求項3】
前記第一の遊星軸(15)は不均一な角度分割によって円周にわたって配分されており、それにより前記第一の遊星軸(15)のうちの一つが均一な角度分割の位置に対して正のオフセット角の分だけずらされていることと、前記第一の遊星軸(15)のうちの一つが均一な角度分割の位置に対して負のオフセット角の分だけずらされていることが交互に行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の動力分割歯車装置。
【請求項4】
前記オフセット角Δαの値に関して式1°≦ Δα≦k*360°/N1が該当し、当該式においてN1は第一の遊星軸の前記第一の数であり、kは増倍定数であることを特徴とする、請求項3に記載の動力分割歯車装置。
【請求項5】
前記増倍定数kの値は0.4であることを特徴とする請求項4に記載の動力分割歯車装置。
【請求項6】
前記オフセット角Δαの値に関して式ku*360°/N1≦ Δα≦ko*360°/N1が該当し、当該式においてN1は第一の遊星軸の前記第一の数であり、kuおよびkoは増倍定数であることを特徴とする、請求項3に記載の動力分割歯車装置。
【請求項7】
前記増倍定数のkuの値は0.05であり、前記増倍定数のkoの値は0.3であることを特徴とする、請求項6に記載の動力分割歯車装置。
【請求項8】
個々の第二の遊星軸(16)は周方向においてそれぞれ、互いに比較的大きな角度間隔で設けられている二つの第一の遊星軸(15)の間の中心に配置されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の動力分割歯車装置。
【請求項9】
第一の遊星軸(15)の前記第一の数は第二の遊星軸(16)の前記第二の数の2倍の大きさであることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の動力分割歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動力分割歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から特に風力発電所において用いられる動力分割歯車装置が知られている。特許文献1から知られている動力分割歯車装置は、回転可能に支承されるとともに駆動歯部を有する駆動側の軸と、回転可能に支承されるとともに被動歯部を有する被動側の軸とを有しており、被動側の軸は駆動側の軸に対して同軸的に配置されている。当該動力分割歯車装置はさらに、複数の第一の遊星軸と、複数の第二の遊星軸とを有しており、前記第一の遊星軸の個々の遊星軸に、それぞれ第一の遊星歯部が成形されており、軸方向にずらされた状態で第二の遊星歯部が成形されており、前記第二の遊星軸の個々の遊星軸に、それぞれ第三の遊星歯部が成形されており、軸方向にずらされた状態で第四の遊星歯部が成形されている。特許文献1によれば第一の遊星軸の第一の遊星歯部は駆動側の軸の駆動歯部と噛み合っており、第二の遊星軸の第三の遊星歯部は第一の遊星軸の第二の遊星歯部と噛み合っている。特許文献1の動力分割歯車装置は全体で4個の第一の遊星軸を有しており、当該第一の遊星軸の第一の遊星歯部は、駆動側の軸の駆動歯部と噛み合っている。このような動力分割歯車装置によりすでに、大きな動力が高い変速比で伝達され得る。しかしながら変速比がさらに増大すると、動力分割歯車装置に対する構成空間が増大する結果となり、それにより、従来技術から知られている動力分割歯車装置に対する変速比の増大は、直接的には可能でない。
【0003】
従って、構成空間がスペースの点で最適化された状態で、変速比の増大を可能にする動力分割歯車装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102010041474号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の点に鑑み、本発明は新式の動力分割歯車装置を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は請求項1に記載の動力分割歯車装置によって解決される。本発明に係る動力分割歯車装置では、第一の遊星軸の第一の遊星歯部は駆動歯部と噛み合っており、第二の遊星軸の第四の遊星歯部は、被動歯部と噛み合っており、第一の遊星軸の第二の遊星歯部は第二の遊星軸の第三の遊星歯部と噛み合っており、第一の遊星軸は不均一な角度分割によって円周にわたって配分されている。第一の遊星軸に対する不均一な角度分割により、第一の遊星軸と第二の遊星軸の位置はスペースの点で最適化された状態で選択され得る。特に構成空間がスペースの点で最適化された状態で、全体的に高い変速比が提供され得る。
【0007】
有利な発展的構成によれば、第一の遊星軸は不均一な角度分割によって円周にわたって配分されており、それにより第一の遊星軸のうちの一つが均一な角度分割の位置に対して正のオフセット角の分だけずらされていることと、第一の遊星軸のうちの一つが均一な角度分割の位置に対して負のオフセット角の分だけずらされていることが交互に行われ、これにより隣接する第一の遊星軸は交互に、比較的大きな角度間隔と比較的小さな角度間隔を有している。第二の遊星軸であって、当該第二の遊星軸の数は好適に第一の遊星軸の半分に相当する第二の遊星軸は、周方向においてそれぞれ、二つの第一の遊星軸の間に、比較的大きな角度間隔を有して設けられている。当該構成は、できる限り小さな構成空間で、全体的に高い変速比を確保するために特に好適である。
【0008】
オフセット角Δαの値に関しては好適に以下の式、すなわちΔα:1°≦Δα≦k360°/N1が当てはまる。当該式においてN1は第一の遊星軸の第一の数であり、kは増倍定数であり、0.3≦k≦0.5である。オフセット角の値に関しては特に以下の式、すなわちΔα:ku360°/N1≦Δα≦ko360°/N1が当てはまり、当該式においてN1は第一の遊星軸の第一の数であり、kuおよびkoは増倍定数であり、kuは0.05であり、koは0.3である。オフセット角に対するこれらの設計は特に好適である。
【0009】
本発明の好適な発展的構成は従属請求項と、以下の詳細な説明に記載されている。本発明の実施の形態を図面に基づいてより詳しく説明するが、本発明は当該実施の形態に限定されるものではない。図面に示されるのは以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る動力分割歯車装置の概略的な軸方向断面を示す図である。
図2図1の動力分割歯車装置の被動側端部を概略的かつ斜視的に示す図である。
図3図1の動力分割歯車装置の駆動側端部を概略的かつ斜視的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、特に風力発電所において応用するための動力分割歯車装置に関する。図1から図3は本発明に係る動力分割歯車装置10の一の実施の形態を示している。動力分割歯車装置10は回転可能に支承されている駆動側の軸11であって、当該駆動側の軸に駆動歯部12が成形されている駆動側の軸を有しており、当該実施の形態において駆動歯部12は輪歯車25の内歯として形成されている。図1図2の動力分割歯車装置10はさらに、回転可能に支承されている被動側の軸13であって、当該被動側の軸に被動歯部14が成形されている被動側の軸を有しており、図1の実施の形態において被動歯部14は太陽歯車26の外歯として形成されている。
【0012】
動力分割歯車装置10はさらに複数の第一の遊星軸15と、複数の第二の遊星軸16とを有している。第一の遊星軸15の個々の遊星軸に、それぞれ第一の遊星歯部17が成形されており、軸方向にずらされた状態で第二の遊星歯部18が成形されており、当該実施の形態において第一の遊星軸15の第一の遊星歯部17は、第一の遊星歯車19によって提供され、軸方向にずらされた第二の遊星歯部18は軸方向にずらされた第二の遊星歯車20によって提供される。第二の遊星軸16の個々の遊星軸は、第三の遊星歯部21と第四の遊星歯部22とを有しており、当該第四の遊星歯部は個々の第三の遊星歯部21に対して軸方向にずらされており、第二の遊星軸16の個々の第三の遊星歯部21は図に示す実施の形態において、第三の遊星歯車23によって提供されており、第二の遊星軸16の第四の遊星歯部22は、第二の遊星軸の軸方向にずらされた第四の遊星歯車24によって提供されている。
【0013】
第一の遊星歯車19によって提供されている、第一の遊星軸15の第一の遊星歯部17は駆動歯部12と噛み合っており、当該駆動歯部は上述の通り、平歯であり、実施されている形態では輪歯車25の内歯である。
【0014】
第四の遊星歯車24によって提供されている、第二の遊星軸16の第四の遊星歯部22は被動歯部14と噛み合っており、当該被動歯部は太陽歯車26の外歯として形成されている。
【0015】
さらに第二の遊星歯車20によって提供されている、第一の遊星軸15の第二の遊星歯部18と、第三の遊星歯車23によって提供されている第二の遊星軸16の第三の遊星歯部21は互いに噛み合っている。
【0016】
第一の遊星軸15は不均一な角度分割によって円周にわたって配分されており、第二の遊星軸16は好適に、1°より小さい許容誤差を除いて均一な角度分割によって円周にわたって配分されている。これにより動力分割歯車装置の全体的な変速比が所望のように高い状態で、遊星軸15,16もしくは遊星歯車の最適な構成が可能であり、それにより最適化された構成空間において動力分割歯車装置10の全体的に高い変速比が提供され得る。
【0017】
第一の遊星軸15の第一の数は偶数であるとともに、第二の遊星軸16の第二の数よりも大きい。第二の遊星軸16の第二の数は偶数または奇数である。図に示す実施の形態において動力分割歯車装置10は、6個の第一の遊星軸15と3個の第二の遊星軸16を含んでいる。しかしながら図1から図3において示されている第一の遊星軸15と第二の遊星軸16の数は純粋に例示的な性質を有している。図1から図3において示されているものとは異なり、動力分割歯車装置10が、8個の第一の遊星軸15と4個の第二の遊星軸16を有することも可能である。第一の遊星軸15と第二の遊星軸16の他の数も可能であるが、第一の遊星軸15の数は偶数であるとともに、第二の遊星軸16の数は好ましくは第一の遊星軸15の数の半分に相当する。
【0018】
第一の遊星軸15は不均一な角度分割によって円周にわたって配分されており、それにより第一の遊星軸15のうちの一つが均一な角度分割の位置に対して正のオフセット角+Δαの分だけずらされていることと、第一の遊星軸15のうちの一つが均一な角度分割の位置に対して負のオフセット角−Δαの分だけずらされていることが交互に行われる。このとき正のオフセット角は、個々の第一の遊星軸15の時計回りの方向におけるずれに相当し、負のオフセット角は、個々の第一の遊星軸15の時計回りの方向と逆のずれに相当する。
【0019】
このように第一の遊星軸15を、正のオフセット角の分だけ、および負のオフセット角の分だけ、時計回りの方向に、および時計回りの方向と反対に交互にずらすことにより、図3から分かるように、比較的大きな角度間隔β1を有して互いに隣接して配置される第一の遊星軸15の対と、比較的小さな角度間隔β2を有して互いに隣接して配置される第一の遊星軸15の対が交互に成立する。従って角β1,β2は以下の式、すなわちβ1=β+Δα,β2=β−Δαのように計算される。当該式においてβ=360°/N1であり、N1は第一の遊星軸15の第一の数である。
【0020】
オフセット角Δαの値については式1°≦Δα≦k360°/N1が当てはまり、当該式においてN1は第一の遊星軸の第一の数であり、kは増倍定数である。当該増倍定数kは好ましくは0.4である。
【0021】
Δαについては特に式ku360°/N1≦Δα≦ko360°/N1が該当し、当該式においてN1は第一の遊星軸の第一の数であり、kuおよびkoは増倍定数であり、kuは0.05であり、koは0.3である。
【0022】
周方向において、好適に均一な角度分割によって円周にわたって配分されている第二の遊星軸16は好適に、比較的大きな角度間隔β1を有する二つの第一の遊星軸19の間に設けられており、特に好ましくは比較的大きな角度間隔β1を有するそれぞれ二つの第一の遊星軸15の間の中心に設けられている。
【符号の説明】
【0023】
10 動力分割歯車装置
11 駆動側の軸
12 駆動歯部
13 被動側の軸
14 被動歯部
15 第一の遊星軸
16 第二の遊星軸
17 第一の遊星歯部
18 第二の遊星歯部
19 第一の遊星歯車
20 第二の遊星歯車
21 第三の遊星歯部
22 第四の遊星歯部
23 第三の遊星歯車
24 第四の遊星歯車
25 輪歯車
26 太陽歯車
図1
図2
図3