【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年11月28日 株式会社技研製作所赤岡実証場内高架構造物の構築方法の実証試験,平成26年12月17日 株式会社技研製作所高知本社内設置動画公開,平成27年3月22日 TBS「夢の扉+」テレビ放送
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記杭圧入工程において、杭を支持する笠状部材をその中央の開口に杭が挿入される態様で配置して、当該笠状部材が当該杭に固定された状態で当該杭の圧入作業の少なくとも一部を実施することで当該笠状部材の少なくとも下端部を地盤表層に押し込み、その後、前記笠状部材に支持された杭まで上部構造構材を架け渡す前記走行領域拡張工程を実施する請求項1又は請求項2に記載の高架構造物の構築方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0012】
〔第1実施形態〕
図1から
図7を参照して本発明の第1実施形態につき説明する。
図1に第1実施形態の構築方法による高架構造物の構築風景を示す。
図2には、高架構造物の基本要素である鋼管杭P(P11−P13、P21,22,P31,P32)、杭頭ブロックH、梁ブロックMを構築される配置で示す。
図3に、1本の鋼管杭Pと、その杭頭に結合される杭頭ブロックHと、その杭頭ブロックに結合される梁ブロックM(M‐m,M‐f)を示す。
【0013】
杭頭ブロックHは、鋼管杭Pの杭頭に載って当該杭頭に結合される。
図4、
図5に示すように杭頭ブロックHは、鋼管杭Pの杭頭に対して下方に移動することで互いに水平方向に離脱不能に嵌合するオスメス嵌合により結合する。具体的には、
図4に示すように杭頭ブロックHに下方に開口する凹部H11が設けられ、凹部H11が鋼管杭Pの杭頭に外嵌めされるオスメス嵌合により結合する。又は、
図5に示すように杭頭ブロックHに下方に突出する凸部H12が設けられ、凸部H12が鋼管杭Pの杭頭に内嵌めされるオスメス嵌合により結合する。凹部H11、凸部H12の周面には、杭頭ブロックHの中心軸を鋼管杭Pの中心軸に案内するためのテーパーが付けられている。
【0014】
図3に示すように本実施形態においては、1つの杭頭ブロックHに対し4つの梁ブロックMを結合可能である。杭頭ブロックHの外周部には、梁ブロックMの基端部を結合するための嵌合部H2が形成されている。
図3に示すように1つの杭頭ブロックHは、1つの梁ブロックMを結合するための嵌合部H2を、杭の中心軸周りに分散配置するように複数有する。本実施形態では、1つの杭頭ブロックHは、1つの梁ブロックMを結合するための嵌合部H2を、杭の中心軸周りの四方に配置するように4つ有する。
【0015】
嵌合部H2は、オス型で、杭頭ブロックHの外周部に径方向外方に突出形成され、これに嵌合するメス型の嵌合部M2が梁ブロックMの基端部に形成されている。
図1,
図2及び
図6(a)に示すように梁ブロックMは、隣り合う2つの杭頭に結合された杭頭ブロックH,Hの間に渡して架設される。本実施形態では、1梁間に2つが直列に連結される。1梁間における梁ブロックM,Mの先端部同士も、オスメス嵌合である。第1種(メス‐オス型)の梁ブロックM‐mの先端部にオス型の嵌合部M1が形成されている。第2種(メス‐メス型)の梁ブロックM‐fの先端部には、メス型の嵌合部M3が形成されている。
【0016】
図6(b)(c)に杭頭ブロックHと梁ブロックMとのオスメス嵌合部を示すA−A断面図を示す。
図6(c)に示すように杭頭ブロックHの嵌合部H2は、上位置ほど幅が狭くなるようにテーパーが付けられている。
図6(b)に示すようにこれに対応したテーパーが梁ブロックMの嵌合部M2に付けられている。したがって、杭頭ブロックHと梁ブロックMとは、杭頭ブロックHに対して梁ブロックMを下方に相対移動することで互いに嵌合し、その嵌合がテーパー嵌合であるため、精度よく強固に結合する。
また、
図2,
図3及び
図6(a)に示すように、嵌合部H2は外端ほど幅が広く形成され、これに対応して嵌合部M2は奥ほど幅が広く形成されている。したがって、杭頭ブロックHと梁ブロックMとは、杭頭ブロックHに対して梁ブロックMを下方に相対移動することで互いに水平方向に離脱不能に嵌合するオスメス嵌合により結合する。
【0017】
図6(d)(e)に第1種の梁ブロックM‐mと第2種の梁ブロックM‐fとのオスメス嵌合部を示すB−B断面図を示す。
図6(d)に示すように第1種の梁ブロックM‐mの嵌合部M1は、上位置ほど幅が広くなるようにテーパーが付けられている。
図6(e)に示すようにこれに対応したテーパーが第2種の梁ブロックM‐fの嵌合部M3に付けられている。したがって、1梁間における第1種の梁ブロックM‐mと第2種の梁ブロックM‐fの先端部同士は、上下方向に相対移動することで互いに嵌合し、その嵌合がテーパー嵌合であるため、精度よく強固に結合する。
また、
図2,
図3及び
図6(a)に示すように、嵌合部M1は外端ほど幅が広く形成され、これに対応して嵌合部M3は奥ほど幅が広く形成されている。したがって、1梁間における第1種の梁ブロックM‐mと第2種の梁ブロックM‐fの先端部同士は、上下方向に相対移動することで互いに水平方向に離脱不能に嵌合するオスメス嵌合により結合する。本実施形態では、第2種の梁ブロックM‐fを下受け側として構成しているため、第2種の梁ブロックM‐fに対して第1種の梁ブロックM‐mを下方に相対移動することでこの両者が互いに嵌合する。
【0018】
本実施形態においては、
図1,
図2に示すように、鋼管杭Pの支持力補強構造として笠Kを適用する。
図7に詳細を示した。
笠状部材Kは、笠本体部Kbの上部に固定装置Kaが構成されたもので、中央の開口に鋼管杭Pが挿入される態様で配置され、固定装置Kaによって鋼管杭Pに固定されるとともに、笠本体部Kbは鋼管杭Pの周りに笠状に開いた構造を形成する。
図1に示すように、鋼管杭Pに固定された笠状部材Kの少なくとも下端部が地盤表層に押し込まれることで笠状部材Kにより地盤表層を押し固めて圧密し、笠状部材Kとその圧密された地盤表層とが接続され、これにより鋼管杭Pに対する縦荷重、横荷重に対し高い支持力が発揮される。
図7に示すように、笠状部材Kは、周方向に複数に分割されたパーツを連結した構造である。
図7には笠状部材Kが周方向に3分割された構造を、
図1,2には笠状部材Kが周方向に2分割された構造を例として描いたが、分割数は任意である。分割されたパーツは互いにボルト等の締結具で締結され、笠状部材Kの上端部には円筒状の固定用カラーK1が構成される。固定用カラーK1の分割縁部K3,K3は、径方向外方に張り出すように形成されており、互いに面と面が対向配置され、そこに取り付けられたシリンダ装置K2によって締め付けられたり解放されたりすることが可能とされている。なお、分割縁部K3,K3は笠本体部Kbまで連続しており、そこにボルト等の締結具が設定される。シリンダ装置K2は、各分割部に設けられており、上方から延設された圧油配管K4が分配器K5で分配され接続されており、遠隔操作が可能とされている。シリンダ装置K2によって締め付けることによって、固定用カラーK1の内径が縮径変形し、鋼管杭Pの外周面を締め付けて笠状部材Kと鋼管杭Pとが固定される。シリンダ装置K2を解放することで、笠状部材Kを鋼管杭Pに対して上下動可能にできる。
杭頭ブロックHを鋼管杭Pに固定するために、以上の固定用カラーK1とシリンダ装置K2を備えた固定装置Kaを適用してもよい。例えば、固定装置Ka(笠状部材Kから笠本体部Kbを排したもの)を、杭頭ブロックHの下端に連結して設ける構成を実施できる。この場合、固定装置Kaが鋼管杭Pに固定されれば、固定装置Kaに連結された杭頭ブロックHも上下動しないように固定される。他の構成例としては、杭頭ブロックHを笠状部材Kと同様に周方向に複数に分割した構成として、杭頭ブロックHの下端部に固定装置Kaと同様の固定装置を構成することである。
以上、笠状部材Kの全体が周方向に複数に分割された構成を説明したが、笠本体部を周方向に分割せず一体に形成し、これを固定装置Kaに連結した構成を実施することもできる。
固定装置Kaと、周方向に分割されず一体に形成した笠本体部又は杭頭ブロックHとの連結は、固定装置Kaの固定用カラーK1の縮径拡径変形を拘束しない形態とすることが好ましい。そのための構造として次の構造を提示することができる。すなわち、笠本体部であれば上端部から上方に突出する突起部を設け、杭頭ブロックHであれば下端部から下方に突出する突起部を設け、かかる突起部及び分割縁部K3,K3にシリンダ装置K2のピストンロッドを挿通する孔を設け、かかる突起部を分割縁部K3,K3の間に挟み、分割縁部K3,K3とともにシリンダ装置K2のピストンロッドを挿通して連結する構造である。
図5(b)に示すように笠本体部Kb内に鋼管杭Pが挿入される円筒部材K6を固定し、固定用カラーK1及び円筒部材K6によって鋼管杭Pを笠状部材Kの中心軸とほぼ同軸に保持することによって、笠状部材Kが揺動しないように笠状部材Kを鋼管杭Pに安定して固定することできる。これにより施工後は、笠状部材Kによる鋼管杭Pの支持力を高められる。
さらに、円筒部材K6に結合したフランジ部材K7によって、鋼管杭Pの周囲であって笠本体部Kb内の空間を上下に仕切ることにより、笠状部材Kによって地盤表層を押し固める作用が効果的に発揮される。
円筒部材K6及びフランジ部材K7を笠本体部Kbに結合することで、笠状部材Kの剛性が高められ、笠状部材Kによって地盤表層を押し固める際の押圧力、及び笠状部材Kによる鋼管杭Pの支持力を高められる。
【0019】
次に、高架構造物の構築方法につき説明する。
本工法に使用される作業車両Eは、クレーンE5と圧入機とがベースマシンE0に付設されてなる複合作業車両である。圧入機は、走行手段E1を含むベースマシンE0(作業機械を含まない車両部)にフレーム部E2を介して支持されて構成される。作業車両Eは、走行手段E1から水平方向に張り出したフレーム部E2を有する。フレーム部E2は長尺な部材で走行手段E1から水平方向に離れるように長く延び出している。フレーム部E2の基端部が走行手段E1のシャーシ部に一体的に連結されている。フレーム部E2の先端側には、昇降されるチャック装置E3が据え付けられている。チャック装置E3は、鋼管杭Pを把持する機能、さらに把持した鋼管杭Pを回転させる機能を有する。さらに詳しくは、チャック装置E3は、昇降機構を介してマストE4に支持されており、マストE4は、前後方向へのスライド移動を可能にするスライドベースを介してフレーム部E2に支持されている。作業車両Eは、クレーンE5及びオペレーション室E6を含む上部を、下部の走行手段E1に対して旋回させる機能を有する。
【0020】
高架構造物を構成する資材は、運搬車両Fによって施工現場に運搬される。
作業手順としては、まず、作業車両Eのチャック装置E3により鋼管杭Pを把持し、鋼管杭Pを地盤に回転圧入する。作業車両Eの重量を、鋼管杭Pの圧入時の反力として利用し、鋼管杭Pをチャック装置E3で把持して走行手段E1による走行面の外方領域の下方に位置する地盤に回転圧入する。
図1に示す場面では、既設の本高架構造物の杭頭ブロックH及び梁ブロックMの上に架け渡され、敷設された床版部材Gの上面が走行面を構成する。本高架構造物の施工開始時には、他の構造によって走行領域が確保される。
【0021】
鋼管杭Pの上端を規定レベルまで打ち下げたら、一旦チャック装置E3を退避させ、鋼管杭Pが笠状部材Kに挿入される態様で笠状部材KをクレーンE5で地表面まで降ろし、笠状部材Kの埋入深さ相当分だけ鋼管杭Pを引き抜いたところで固定装置Kaを締めて笠状部材Kを鋼管杭Pに固定し、再び鋼管杭Pの上端を規定レベルまで回転圧入により打ち下げることで同時に笠状部材Kを回転圧入して笠状部材Kの少なくとも下端部を地盤表層に押し込む。このように鋼管杭Pを支持する笠状部材Kをその中央の開口に鋼管杭Pが挿入される態様で配置して、笠状部材Kが鋼管杭Pに固定された状態で鋼管杭Pの圧入作業の少なくとも一部を実施することで笠状部材Kの少なくとも下端部を地盤表層に押し込む。
以上のようにして笠状部材K及び鋼管杭Pの圧入は完了し、チャック装置E3を退避させる。
次に、必要な梁ブロックMが結合した杭頭ブロックHをクレーンE5で吊るして鋼管杭Pの上方に運び、杭頭ブロックHを下降させて鋼管杭Pの杭頭に結合する。
例えば
図2に示される鋼管杭P11−P13、P21,22,P31,P32のうち最先に打ち込まれるものが鋼管杭P11だとする。
鋼管杭P11を打ち込んで、その杭頭に必要な梁ブロックMが結合した杭頭ブロックHを結合する。
その後、
図2に示すX方向について鋼管杭P11に隣接する位置に、鋼管杭P12を打ち込む。鋼管杭P12の杭頭に、必要な梁ブロックMが結合した杭頭ブロックHをクレーンE5で吊るして鋼管杭P12の上方に運び、杭頭ブロックHを下降させて鋼管杭P12の杭頭に結合する。その際、下降する梁ブロックM‐mの先端部を、先に鋼管杭P11の杭頭に施工した梁ブロックM‐fの先端部に嵌合させ結合させる。したがって、打ち込まれる杭の間隔距離と、梁ブロックM‐m、梁ブロックM‐fを介して連結される2つの杭頭ブロックH,Hの中心軸間距離とが所定の許容差内で一致するように設計され、施工される。
同様にして、X方向について鋼管杭P12に隣接する位置に、鋼管杭P13を打ち込み、梁ブロックM及び杭頭ブロックHを施工していく。
【0022】
他方、X方向に直交するY方向について鋼管杭P11に隣接する位置に、鋼管杭P21を打ち込む。鋼管杭P21の杭頭に、必要な梁ブロックMが結合した杭頭ブロックHをクレーンE5で吊るして鋼管杭P21の上方に運び、杭頭ブロックHを下降させて鋼管杭P21の杭頭に結合する。その際、下降する梁ブロックM‐mの先端部を、先に鋼管杭P11の杭頭に施工した梁ブロックM‐fの先端部に嵌合させ結合させる。
同様にして、Y方向について鋼管杭P21に隣接する位置に、鋼管杭P31を打ち込み、梁ブロックM及び杭頭ブロックHを施工していく。
鋼管杭P22の杭頭に結合する杭頭ブロックHに結合した2つの梁ブロックM‐m,M‐mは下降しながら、先に鋼管杭P12,P21の杭頭にそれぞれ施工した梁ブロックM‐f,M‐fの先端部に嵌合する。
なお、各々の鋼管杭Pに、上述したように笠状部材Kを適用する。
【0023】
以上のようにして、X方向及びこれに直交するY方向に、鋼管杭P、杭頭ブロックH及び梁ブロックMによる高架構造物を拡張する。
その拡張方法として具体的には、地盤に圧入した鋼管杭Pに杭頭ブロックH及び梁ブロックMを施工し、その上へ床版部材Gを渡して敷設することで作業車両Eの走行領域を拡張する走行領域拡張工程を実施する。すなわち、杭頭ブロックH、梁ブロックM及び床版部材Gを主とした上部構造構材を鋼管杭Pまで架け渡すことにより、走行領域を拡張する。次に、先の走行領域拡張工程により拡張した走行領域上に作業車両Eを進行させて、走行領域の外方領域の下方に位置する地盤に鋼管杭Pを作業車両Eの圧入機により圧入する杭圧入工程を実施する。
上記の走行領域拡張工程と上記の杭圧入工程とを所定回数交互に繰り返すことにより計画領域に高架構造物を構築する。
床版部材Gの上面に舗装Iを施す。
杭頭ブロックHと梁ブロックMとに分かれるため、
図1に示すように運搬車両Fに杭頭ブロックH及び梁ブロックMを積載することが容易であるとともに、さらに床版部材Gを積載するスペースを確保することが容易であり、運搬車両Fによって本高架構造物の拡張に必要な杭頭ブロックH、梁ブロックM及び床版部材Gを互いに過不足ない組数で施工現場に供給することができ、効率的である。
【0024】
(変形その他)
以下に、以上の実施形態に対する変形や、本発明の実施に際する補足事項を記載する。
【0025】
上記実施形態においては、杭頭ブロックH、梁ブロックMがそれぞれ分離された状態で施工現場に運搬され、杭頭ブロックHに必要な梁ブロックMをオスメス嵌合により結合する作業を行ってから、互いに結合した杭頭ブロックH及び梁ブロックMをクレーンに吊るす。
可搬寸法に収まる場合には、杭頭ブロックHと梁ブロックMとを一体に形成されたユニットとして工場で製造し、施工現場に運搬してもよい。この場合、杭頭ブロックHと梁ブロックMとは一体に形成されたユニットとされ、梁ブロックMは、隣り合うユニットとユニットが接続する位置の1梁間に2つが直列に連結され、当該1梁間における梁ブロックM,Mの先端部同士は、上下方向に相対移動することで互いに水平方向に離脱不能に嵌合するオスメス嵌合により結合する形態を実施できる。
【0026】
上記実施形態においては、作業効率を考慮して杭頭ブロックHに必要な梁ブロックMをオスメス嵌合により結合する作業を行ってから、互いに結合した杭頭ブロックH及び梁ブロックMをクレーンに吊るしたが、先に杭頭ブロックHをクレーンに吊るして下降させることで杭頭に結合させ、後に、梁ブロックMをクレーンに吊るして下降させることで杭頭ブロックHに結合することもできる。
また、先に梁ブロックMを杭頭ブロックHに結合してから、ともにクレーンに吊るして下降させることで杭頭ブロックHを杭頭に結合させた後に、他の梁ブロックMを追加的に杭頭ブロックHに結合させることもできる。すなわち、他の梁ブロックMをクレーンに吊るして下降させることで、既に杭頭及び先の梁ブロックMに結合した杭頭ブロックHの空嵌合部H2に結合することもできる。上記実施形態においては、1つの杭頭ブロックHに4つまで梁ブロックMを結合可能であるので、先の梁ブロックMが3つまでの場合は、追加して梁ブロックMを杭頭ブロックHに結合させることができる。
【0027】
上記実施形態において四方に連結する杭頭ブロックには、4つの梁ブロックが結合される。計画領域の側縁に配置される杭頭ブロックには3つの梁ブロックを結合することとしてもよいし、4つの梁ブロックを結合することとしてもよい。計画領域の角に配置される杭頭ブロックには2つの梁ブロックを結合することとしてもよいし、3つ又は4つの梁ブロックを結合することとしてもよい。他の梁ブロックに結合しない梁ブロックは、片持ち梁として利用できる。
【0028】
上記実施形態においては、縦横(X方向とY方向)に拡張する場合を説明したが、杭を一列にのみ並ぶように施工してもよい。その場合、拡張方向に梁ブロックが連結されるが、拡張方向に直交する方向に上述した片持ち梁としての梁ブロックを杭頭ブロックに結合してもよい。隣接する片持ち梁間に床版部材を架設することができる。
【0029】
作業車両Eによって鋼管杭Pを圧入する際の反力を増加する方法として、作業車両Eにウエイトを取り付ける方法や、既設の杭頭ブロックHにフックなどの連結具を用いて作業車両Eの浮き上がりを防止するように連結する方法を実施できる。後者の場合、杭頭ブロックHを上述した固定装置Kaを用いて鋼管杭Pに固定することをも実施する。これにより、作業車両Eから鋼管杭Pまでが強固に連結した状態となり、高い反力が得られる。
【0030】
上記実施形態においては、1梁間に2つの梁ブロックが直列に連結されたが、1梁間に1つの梁ブロックを架設してもよい。この場合、両端に嵌合部M2を有する梁ブロックを構成し、隣接する二つの杭頭ブロックH,Hの各嵌合部H2,H2に結合させる作業工程を実施する。先に二つの杭頭ブロックH,Hを杭頭に結合させ、後に、両端に嵌合部M2を有する梁ブロックを下降させることによって行うことができる。
【0031】
上述したオスメス嵌合におけるオス・メスは適宜入れ替えた構造を実施してもよいことはもちろんである。
上記実施形態においては、1つの杭頭ブロックHに4つまで梁ブロックMを結合可能である構成を実施したが、1つの杭頭ブロックHに結合可能な梁ブロックは適宜変更可能である。
【0032】
〔第2実施形態の装置概要〕
次に、
図8から
図12を参照して本発明の第2実施形態に係る装置構成の概要につき説明する。
杭圧入装置10は、
図8(a)(b)に示すように、走行可能なベースマシン1に取り付けられ、その先端2aがベースマシン1から水平方向に張り出しているフレーム部2と、フレーム部2の先端2a側に据え付けられた昇降機構16によって昇降されるチャック装置15と、を備えている。
【0033】
このベースマシン1は、杭Pを埋入する位置にフレーム部2の先端2aを近付けることができる地点に移動して、その杭Pの埋入位置に対し杭圧入装置10のチャック装置15を配置することを可能にする。
なお、例えば、フレーム部2がベースマシン1に着脱可能になっており、作業現場に応じてクレーンやバックホーなどの作業機に付け替えて杭圧入装置10を使用する場合、ベースマシン1は、フレーム部2を介して杭圧入装置10が取り付けられている移動用機器と見なすことができる。
【0034】
フレーム部2は、例えば、鋼板や鋼材を溶接あるいはボルトなどによって一体化した長尺なステージ状の工作物であり、ベースマシン1の底部に取り付けられている。このフレーム部2は、ベースマシン1と地面との間の下部空間を通じて延在しており、その両端がベースマシン1から水平方向に離間した配置となる長さを有している。
【0035】
また、フレーム部2には、ベースマシン1の姿勢を安定させる姿勢安定器であるアウトリガー3が複数(本実施形態では4つ)設けられている。
アウトリガー3は、フレーム部2が延在する方向に沿ってベースマシン1を挟む位置に設けられており、ベースマシン1の前方に2つのアウトリガー3a、後方に2つのアウトリガー3bが配設されている。
そして、杭Pを埋入するためにベースマシン1が移動した地点でアウトリガー3を作動させることで、フレーム部2及びベースマシン1が水平な姿勢を保ち、杭圧入装置10の施工姿勢を安定させるようになっている。特に、フレーム部2がベースマシン1の前後に亘り、ベースマシン1の全長よりも長いサイズを有しているので、そのベースマシン1の前後でアウトリガー3を作動させることで、杭圧入装置10の施工姿勢をより一層安定させることができる。
【0036】
このフレーム部2の先端2a側には、フレーム部2に固定されたサドル12と、サドル12に対して前後動可能なスライドベース13と、スライドベース13上で左右に旋回可能なリーダーマスト14と、リーダーマスト14の前面に昇降可能に取り付けられたチャック装置15と、リーダーマスト14に対してチャック装置15を昇降駆動する油圧シリンダである昇降機構16が設けられている。
【0037】
スライドベース13は、サドル12に対し前後に移動してチャック装置15を水平方向に移動させることにより、チャック装置15で把持した杭Pを圧入する位置を調整する機能を有している。
リーダーマスト14は、スライドベース13に対し左右に旋回してチャック装置15の向きを変えることにより、チャック装置15で把持した杭Pを圧入する位置を調整する機能を有している。
【0038】
チャック装置15は、その背面側がリーダーマスト14の前面側に昇降可能に嵌合した状態とされるとともに、リーダーマスト14とチャック装置15に接続された昇降機構16により昇降駆動されるようになっている。
そして、チャック装置15が把持した杭Pを地盤Gに圧入する際、チャック装置15の昇降範囲は所定のストローク長に限られているので、杭Pを把持してチャック装置15を下降させることと、杭Pを離してチャック装置15を上昇させることを繰り返すようになっている。これにより、チャック装置15が昇降する1ストローク分ずつ杭Pを圧入することが繰り返され、チャック装置15の昇降範囲より深く杭Pを地盤Gに圧入することが可能になっている。
同様に、杭Pを把持してチャック装置15を上昇させることと、杭Pを離してチャック装置15を下降させることを繰り返して、杭Pを地中から引き抜くことが可能になっている。
【0039】
この杭圧入装置10が、例えば、港湾の岸壁から離れた水底の地盤Gに杭Pを圧入する場合、
図8(a)に示すように、ベースマシン1が所定の作業地点に移動し、フレーム部2の先端2aを杭Pの埋入位置側に向けて水平方向に張り出し、杭Pの埋入位置の上方にチャック装置15を配置する。
そして、杭圧入装置10は、ベースマシン1及びこれに付設されるクレーンの重量を反力として利用し、チャック装置15で把持した杭Pを地盤Gに圧入することができる。
【0040】
また、チャック装置15で把持した杭Pの上部に第1のウエイト部材4を取り付けて、杭Pを地盤Gに圧入することもできる。この場合、第1のウエイト部材4の重量が杭Pを押し下げる方向に作用し、杭Pの圧入時の補助力となるので、より容易に杭Pを圧入することが可能になる。なお、第1のウエイト部材4aは、チャックフレームなどチャック装置15の一部に取り付け可能な構造のものであってもよい。チャック装置15に第1のウエイト部材4aを取り付けることでも、第1のウエイト部材4aの重量が杭Pを押し下げる方向に作用し、杭Pの圧入時の補助力となる。
また、ベースマシン1を挟んでチャック装置15の反対側のフレーム部2上に第2のウエイト部材5を載置して、杭Pを地盤Gに圧入することもできる。この場合、ベースマシン1の重量に加えて第2のウエイト部材5の重量を反力として利用し、チャック装置15で把持した杭Pを地盤Gから引き抜くことが可能になる。
この第1のウエイト部材4と第2のウエイト部材5は、地盤Gの硬度や作業現場の状況に応じて使い分け、何れか一方を使用したり両方を使用したりすることができる。勿論、第1のウエイト部材4と第2のウエイト部材5の両方を使用しないで圧入施工することもできる。なお、第2のウエイト部材5を使用しない場合、フレーム部2は前端のみがベースマシン1から水平方向に離間した配置となる長さを有していればよい。
【0041】
ここで、杭圧入装置10による杭Pの圧入施工時のモーメントのバランスについて説明する。なお、第1のウエイト部材4と第2のウエイト部材5を使用しない場合のバランスを例に説明する。
図8(a)に示すように、ベースマシン1の重心から後方のアウトリガー3bまでの水平方向の距離がL1、ベースマシン1の重心からチャック装置15が把持する杭Pの中心までの水平方向の距離がL2であって、ベースマシン1の重量がW1、杭Pの圧入力がW2(下向きのW2)であるとき、杭圧入におけるモーメントのバランスに関し、下記の式(1)が成立する。
W1×L1>W2×L2 ・・・(1)
また、
図8(a)に示すように、ベースマシン1の重心から前方のアウトリガー3aまでの水平方向の距離がL3、チャック装置15が把持する杭Pの中心から前方のアウトリガー3aまでの水平方向の距離がL4であって、ベースマシン1の重量がW1、杭Pの引抜力がW2(上向きのW2)であるとき、杭引抜におけるモーメントのバランスに関し、下記の式(2)が成立する。
W1×L3>W2×L4 ・・・(2)
【0042】
このように、本実施形態の杭圧入装置10は、既設の杭列が無いために従来技術の杭圧入機では圧入施工が困難であった岸壁や高架構造物上の走行領域から離れた位置にも、杭Pの圧入施工を好適に行うことができる。
特に、杭圧入装置10はベースマシン1によって移動可能な装置であり、フレーム部2の先端2aに据え付けられているチャック装置15を杭Pの圧入位置の上方に配するように岸壁側の陸地や高架構造物上の走行領域を移動することができるので、速やかに適切な作業地点に移動して杭Pの圧入施工を行うことができる。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、
図9(a)(b)に示すように、杭圧入装置10のフレーム部2に固定機構としてのフック6を備える構成の装置であってもよい。
ここでは、岸壁から圧入した既設の杭P上に橋梁支持部Tを介して橋梁Hを架け渡し、その橋梁H上を走行させて所定地点にベースマシン1を設置した際に使用するフック6を例に説明する。なお、橋梁支持部Tと橋梁Hはベースマシン1を設置し、走行領域を与える基台としての機能を有している。
フック6は、
図10に示すように、フレーム部2に回動可能に配設されている。
このフック6を回動させて、フック6の先端部を橋梁支持部Tの下面に係止することで、橋梁支持部Tを介してフレーム部2を既設杭Pに固定することができる。
こうしてフック6によってフレーム部2を既設杭Pに固定し、フレーム部2と既設杭Pを一体化すれば、杭圧入装置10は既設杭Pからも反力をとるようにして、好適に杭Pの圧入施工を行うことができる。
【0044】
また、例えば、
図11(a)(b)に示すように、杭圧入装置10のフレーム部2に固定機構としてのクランプ7を備える構成の装置であってもよい。
ここでは、岸壁から圧入した既設の杭P上に橋梁支持部Tを介して橋梁Hを架け渡し、その橋梁H上を走行させて所定地点にベースマシン1を設置した際に使用するクランプ7を例に説明する。なお、橋梁支持部Tと橋梁Hはベースマシン1を設置し、走行領域を与える基台としての機能を有している。
クランプ7は、
図12に示すように、図示しない油圧シリンダの駆動により作動する爪部7aを備えており、橋梁支持部Tの上面に設けられている固定用突起Sを挟持可能にフレーム部2に配設されている。
このクランプ7を作動させて、橋梁支持部Tの固定用突起Sを挟持することで、橋梁支持部Tを介してフレーム部2を既設杭Pに固定することができる。
こうしてクランプ7によってフレーム部2を既設杭Pに固定し、フレーム部2と既設杭Pを一体化すれば、杭圧入装置10は既設杭Pからも反力をとるようにして、好適に杭Pの圧入施工を行うことができる。
【0045】
〔第3実施形態の装置概要〕
次に、
図13を参照して本発明の第3実施形態に係る装置構成の概要につき説明する。
なお、上記第2実施形態と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
【0046】
杭圧入装置20は、
図13に示すように、ベースマシン1に取り付けられたフレーム部2と、フレーム部2の先端2a側に設けられた固定板2bに据え付けられた杭圧入機20aと、を備えている。
杭圧入機20aは、フレーム部2の固定板2bの上端側を挟んで保持する複数のクランプ装置11…を有するサドル12と、サドル12に対して前後動可能なスライドベース13と、スライドベース13上で左右に旋回可能なリーダーマスト14と、リーダーマスト14の前面に昇降可能に取り付けられたチャック装置15と、リーダーマスト14に対してチャック装置15を昇降駆動する油圧シリンダである昇降機構16と、を備えている。
つまり、この実施形態2の杭圧入装置20は、既存の杭圧入機20a(例えば特許文献1の杭圧入機)をフレーム部2の先端2a側に据え付けた構成の装置である。なお、固定板2bは、既存の杭圧入機20aのクランプ装置11で挟持することができ、フレーム部2上の杭圧入機20aを支持することが可能な構造を有している。
このような杭圧入装置20であっても、岸壁から離れた位置に杭Pの圧入施工を好適に行うことができる。
【0047】
以上のように、杭圧入装置(10,20)は、杭Pの圧入施工を好適に行うことができる優れた装置である。
【0048】
〔第2、第3実施形態の高架構造物の拡張手順〕
次に、以上説明した杭圧入装置10(又は20)を用いた高架構造物の構築方法を作業手順に沿って説明する。
図8又は
図13に示すように、本高架構造物に対する他の構造の一例である岸壁側の陸地を初期の走行領域としてベースマシン1を走行させて杭圧入装置10(又は20)を杭圧入位置に配置する。
次に、上記の杭圧入装置10(又は20)によって
図8又は
図13に示す地盤Gに杭Pを圧入する。
上記第1実施形態と同様に笠状部材を適用する場合は、笠状部材を上記第1実施形態と同様の手順で施工した後に、杭Pの杭頭に橋梁支持部Tをベースマシン1に付設のクレーンで下降させて結合し、適宜同クレーンを用いて橋梁支持部Tまで橋梁Hを架け渡すことで、岸壁側の陸地(初期の走行領域)から杭Pまで上部構造構材を架け渡して、ベースマシン1の走行領域を拡張する走行領域拡張工程を実施する。
図12に示すように橋梁支持部Tの上面に上方に突出する凸部T1を設け、橋梁Hの底面板材に設けた孔に嵌め入れて組み立てることで、迅速容易に精度よく組み立てることができ、相対的配置を維持できる。
さらに
図11(b)に示すように挟持締結具Rによって、橋梁支持部Tと橋梁Hとを互いに固定する。図示したものに拘わらず挟持締結具Rは、橋梁支持部Tの上面板材と橋梁Hの底面板材とを挟持するように適用することが好ましい。
走行領域拡張工程により拡張した走行領域にベースマシン1を進行させて、走行領域の外方領域の下方に位置する地盤Gに杭Pを杭圧入装置10(又は20)により圧入する杭圧入工程と実施する。
上記の走行領域拡張工程と上記の杭圧入工程とを所定回数交互に繰り返すことにより計画領域に高架構造物を構築する。
数回繰り返すと
図9又は
図11に示すような岸壁側の陸地(初期の走行領域)からベースマシン1が相当距離離れ、既に複数本杭Pが間隔隔てて圧入された状況となる。
上記第1実施形態と同様に、橋梁Hの上面に必要な舗装を施す。
【0049】
上記第2、第3実施形態で説明した杭圧入装置やベースマシン、杭圧入・引抜きの技術は、上記第1実施形態にそのまま適用できる。
上記第1実施形態で説明した笠状部材とその施工技術は、上記第2、第3実施形態にそのまま適用でき、上記第1実施形態で説明した固定装置Kaは、上記第2実施形態で説明した橋梁支持部Tの杭Pに対する固定に適用できる。
上述した杭頭ブロックHや橋梁支持部Tなどの杭頭に載って当該杭頭に結合される結合物に関しても、上述した固定装置(Ka)を適用することで、杭頭に結合する高さを調整することができる。すなわち、その上下方向の嵌め合いしろの範囲で高さ調整した後、固定装置で固定することで、杭頭に結合する高さを調整することができる。