【実施例】
【0040】
実施例により、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0041】
<実施例1>
純水67.5質量部に、酸化亜鉛粒子(テイカ社製、製品名:MZ−500)30質量部と、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤(花王社製、製品名:ポイズ532A)2.5質量部を加え、0.65mm径のジルコニアビーズ4.3kgとともに、横型連続式湿式媒体攪拌ミル(シンマルエンタープライゼス社製、製品名:ダイノーミルKDL−PILOT A型)で3時間循環攪拌(攪拌速度:周速10m/秒、流速:5L/min)し、酸化亜鉛粒子の分散液(酸化亜鉛の分散径:約0.2μm)を得た。
【0042】
次に、酸化亜鉛粒子の分散液20質量部を、シリカゾル(日本化学工業社製、製品名:シリカドール30S、分散媒:水、シリカの平均一次粒子径9nm)30質量部と混合し、ゾル液Aを得た。このゾル液Aの固形分中の酸化亜鉛粒子の含有率は20質量%であった。次に、2−プロパノール100mlをビーカーに入れ、これを撹拌しながら、ゾル液Aをビーカーに入った2−プロパノールへ1gずつ滴下した。ゾル液Aの滴下によりフレーク形状の凝集体が生じた。
【0043】
デカンテーションによって、2−プロパノールから凝集体を分離し、分離した凝集体を120℃の真空乾燥器内で乾燥させた後、500℃で7時間焼成した。このようにして、内部に酸化亜鉛粒子を含有するフレーク形状の多孔質シリカ粒子B1(平均厚み:0.8μm、平均粒子径:20μm、酸化亜鉛含有率:約20質量%)を得た。ここで、平均粒子径は、レーザー回折式粒度計を用いて測定した粒度分布の体積累積50%に相当する粒径(D50)である。この多孔質シリカ粒子B1の細孔分布を窒素吸着法により測定したところ、多孔質シリカ粒子B1は、20nmにピークを有する細孔径分布を有していた。
【0044】
ポリメチルシルセスキオキサン(小西化学工業社製、製品名:SR−13)のエタノール溶液(ポリメチルシルセスキオキサン濃度:20質量%)に多孔質シリカ粒子B1を加え、この溶液を撹拌しながらこの溶液を加熱し、溶媒であるエタノールを除去した。その後、ポリメチルシルセスキオキサンで被覆された多孔質シリカ粒子B1を取り出した。このようにして、実施例1に係る酸化亜鉛含有複合粒子を得た。実施例1に係る酸化亜鉛含有複合粒子におけるポリメチルシルセスキオキサンの被覆層の質量は、酸化亜鉛含有複合粒子の全体の質量の20%であった。
【0045】
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、実施例1に係る酸化亜鉛含有複合粒子を、酸化亜鉛含有複合粒子の濃度が10質量%となるように添加して撹拌し、クエン酸水溶液中に酸化亜鉛含有複合粒子を分散させた。このとき、実施例1に係る酸化亜鉛含有複合粒子は、クエン酸水容液において均一に分散した。実施例1に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させてから1時間経過後の水溶液のpHは約3であったが、それ以降、水溶液のpHはほとんど変化しなかった。このため、実施例1に係る酸化亜鉛含有複合粒子の多孔質シリカ粒子の内部に含有されている酸化亜鉛から亜鉛イオンはほとんど溶出しなかったと考えられる。
【0046】
<実施例2>
溶媒としてのイソプロピルアルコール65.9g、メチルトリエトキシシラン(エボニック社製、製品名:Dynasylan MTES)29.5g、加水分解の水及び加水分解の触媒としての0.01N硝酸4.6gを混合して、30℃に保温しながら1時間攪拌して、メチルトリエトキシシランを加水分解及び脱水縮合させ、コーティング液Cを得た。コーティング液Cに多孔質シリカ粒子B1を加え、コーティング液Cを撹拌しながらコーティング液Cを加熱し、コーティング液Cから溶媒を除去した。その後、メチルトリエトキシシランの加水分解脱水縮合物であるポリメチルシルセスキオキサンで被覆された多孔質シリカ粒子B1を取り出した。このようにして、実施例2に係る酸化亜鉛含有複合粒子を得た。実施例2に係る酸化亜鉛含有複合粒子におけるポリメチルシルセスキオキサンの被覆層の質量は、酸化亜鉛含有複合粒子の全体の質量の10%であった。
【0047】
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、実施例2に係る酸化亜鉛含有複合粒子を、酸化亜鉛含有複合粒子の濃度が10質量%となるように添加して撹拌し、クエン酸水溶液中に酸化亜鉛含有複合粒子を分散させた。このとき、実施例2に係る酸化亜鉛含有複合粒子は、クエン酸水容液において均一に分散した。実施例2に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させてから1時間経過後の水溶液のpHは約3であったが、それ以降水溶液のpHはほとんど変化しなかった。
【0048】
<実施例3>
噴霧乾燥装置(藤崎電機社製、製品名:MDL−050L)において、ゾル液Aを用いて噴霧乾燥を行った。噴霧乾燥における乾燥炉の温度は約65℃に調整した。このようにして、内部に酸化亜鉛粒子を含有する、球形状の多孔質シリカ粒子B2(平均粒子径:5μm、酸化亜鉛含有率:約20質量%)を得た。ここで、平均粒子径は、レーザー回折式粒度計を用いて測定した粒度分布の体積累積50%に相当する粒径(D50)である。この多孔質シリカ粒子B2の細孔分布を窒素吸着法により測定したところ、多孔質シリカ粒子B2は、約3nmにピークを有する細孔径分布を有していた。
【0049】
ポリメチルシルセスキオキサン(小西化学工業社製、製品名:SR−13)のエタノール溶液(ポリメチルシルセスキオキサン濃度:20質量%)に多孔質シリカ粒子B2を加え、この溶液を撹拌しながらこの溶液を加熱し、溶媒であるエタノールを除去した。その後、ポリメチルシルセスキオキサンで被覆された多孔質シリカ粒子B2を取り出した。このようにして、実施例3に係る酸化亜鉛含有複合粒子を得た。実施例3に係る酸化亜鉛含有複合粒子におけるポリメチルシルセスキオキサンの被覆層の質量は、酸化亜鉛含有複合粒子の全体の質量の20%であった。
【0050】
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、実施例3に係る酸化亜鉛含有複合粒子を、酸化亜鉛含有複合粒子の濃度が10質量%となるように添加して撹拌し、クエン酸水溶液中に酸化亜鉛含有複合粒子を分散させた。このとき、実施例3に係る酸化亜鉛含有複合粒子は、クエン酸水容液において均一に分散した。実施例3に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させてから1時間経過後の水溶液のpHは約3であったが、それ以降、水溶液のpHはほとんど変化しなかった。
【0051】
<実施例4>
溶媒としてのイソプロピルアルコール65.9g、メチルトリエトキシシラン(エボニック社製、製品名:Dynasylan MTES)29.5g、加水分解の水及び加水分解の触媒としての0.01N硝酸4.6gを混合して、30℃に保温しながら1時間攪拌して、メチルトリエトキシシランを加水分解及び脱水縮合させ、コーティング液Dを得た。コーティング液Dに多孔質シリカ粒子B2を加え、コーティング液Dを撹拌しながらコーティング液Dを加熱し、溶媒を除去した。その後、メチルトリエトキシシランの加水分解脱水縮合物であるポリメチルシルセスキオキサンで被覆された多孔質シリカ粒子B2を取り出した。このようにして、実施例4に係る酸化亜鉛含有複合粒子を作製した。実施例4に係る酸化亜鉛含有複合粒子におけるポリメチルシルセスキオキサンの被覆層の質量は、酸化亜鉛含有複合粒子の全体の質量の10%であった。
【0052】
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、実施例4に係る酸化亜鉛含有複合粒子を、酸化亜鉛含有複合粒子の濃度が10質量%となるように添加して撹拌し、クエン酸水溶液中に酸化亜鉛含有複合粒子を分散させた。このとき、実施例4に係る酸化亜鉛含有複合粒子は、クエン酸水容液において均一に分散した。実施例4に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させてから1時間経過後の水溶液のpHは約3であったが、それ以降水溶液のpHはほとんど変化しなかった。
【0053】
<実施例5>
溶媒としてのイソプロピルアルコール69.9g、エチルトリエトキシシラン(東京化成工業社製)26.3g、加水分解の水及び加水分解触媒としての0.01N硝酸3.8gを混合して、30℃に保温しながら1時間攪拌して、エチルトリエトキシシランを加水分解及び脱水縮合させ、コーティング液Eを得た。コーティング液Dに代えて、コーティング液Eを使用した以外は、実施例4と同様にして、実施例5に係る酸化亜鉛含有複合粒子を作製した。実施例5に係る酸化亜鉛含有複合粒子におけるポリエチルシルセスキオキサンの被覆層の質量は、酸化亜鉛含有複合粒子の全体の質量の10%であった。
【0054】
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、実施例5に係る酸化亜鉛含有複合粒子を、酸化亜鉛含有複合粒子の濃度が10質量%となるように添加して撹拌し、クエン酸水溶液中に酸化亜鉛含有複合粒子を分散させた。このとき、実施例5に係る酸化亜鉛含有複合粒子は、クエン酸水容液において均一に分散した。実施例5に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させてから1時間経過後の水溶液のpHは約3であったが、それ以降、水溶液のpHはほとんど変化しなかった。
【0055】
<実施例6>
溶媒としてのイソプロピルアルコール72.7g、プロピルトリエトキシシラン(エボニック社製、製品名:Dynasylan PTEO)24.1g、加水分解の水及び加水分解触媒としての0.01N硝酸3.2gを混合して、30℃に保温しながら1時間攪拌して、プロピルトリエトキシシランを加水分解及び脱水縮合させ、コーティング液Fを得た。コーティング液Dに代えて、コーティング液Fを使用した以外は、実施例4と同様にして、実施例6に係る酸化亜鉛含有複合粒子を作製した。実施例6に係る酸化亜鉛含有複合粒子におけるポリプロピルシルセスキオキサンの被覆層の質量は、酸化亜鉛含有複合粒子の全体の質量の10%であった。
【0056】
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、実施例6に係る酸化亜鉛含有複合粒子を、酸化亜鉛含有複合粒子の濃度が10質量%となるように添加して撹拌し、クエン酸水溶液中に酸化亜鉛含有複合粒子を分散させた。このとき、実施例6に係る酸化亜鉛含有複合粒子は、クエン酸水容液において均一に分散した。実施例6に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させてから1時間経過後の水溶液のpHは約3であったが、それ以降、水溶液のpHはほとんど変化しなかった。
【0057】
<実施例7>
溶媒としてのイソプロピルアルコール79.6g、オクチルトリエトキシシラン(エボニック社製、製品名:Dynasylan OCTEO)18.6g、加水分解の水及び加水分解の触媒としての0.01N硝酸1.9gを混合して、30℃に保温しながら1時間攪拌して、オクチルトリエトキシシランを加水分解及び脱水縮合させ、コーティング液Gを得た。コーティング液Dに代えて、コーティング液Gを使用した以外は、実施例4と同様にして、実施例7に係る酸化亜鉛含有複合粒子を作製した。実施例7に係る酸化亜鉛含有複合粒子におけるポリオクチルシルセスキオキサンの被覆層の質量は、酸化亜鉛含有複合粒子の全体の質量の10%であった。
【0058】
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、実施例7に係る酸化亜鉛含有複合粒子を、酸化亜鉛含有複合粒子の濃度が10質量%となるように添加して撹拌し、クエン酸水溶液中に実施例7に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させた。このとき、実施例7に係る酸化亜鉛含有複合粒子は、クエン酸水容液において均一に分散した。実施例7に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させてから1時間経過後の水溶液のpHは約3であったが、それ以降、水溶液のpHはほとんど変化しなかった。
【0059】
<比較例1>
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、被覆層を有しない多孔質シリカ粒子B1を、多孔質シリカ粒子B1の濃度が10質量%となるように添加して撹拌した。被覆層を有しない多孔質シリカ粒子B1をクエン酸水溶液に添加してから1分以内に水溶液のpHは6以上に変化した。酸化亜鉛から亜鉛イオンが溶出したものと考えられる。
【0060】
<比較例2>
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、被覆層を有しない多孔質シリカ粒子B2を、多孔質シリカ粒子B2の濃度が10質量%となるように添加して撹拌した。被覆層を有しない多孔質シリカ粒子B2をクエン酸水溶液に添加してから1分以内に水溶液のpHは6以上に変化した。
【0061】
<比較例3>
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、酸化亜鉛(テイカ社製、製品名:MZ−500)を、酸化亜鉛の濃度が10質量%になるように添加して攪拌した。酸化亜鉛をクエン酸水溶液に添加してから1分以内に水溶液のpHは6以上に変化した。
【0062】
<比較例4>
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、オクチルトリエトキシシラン処理済み酸化亜鉛(テイカ社製、製品名:MZX−508OTS)を添加したが、クエン酸水溶液の液面に浮かんで、激しく攪拌してもクエン酸水溶液に分散しなかった。