特許第6573482号(P6573482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573482酸化亜鉛含有複合粒子、酸化亜鉛含有複合粒子の製造方法、紫外線遮蔽用組成物、及び化粧料
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  • 特許6573482-酸化亜鉛含有複合粒子、酸化亜鉛含有複合粒子の製造方法、紫外線遮蔽用組成物、及び化粧料 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573482
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】酸化亜鉛含有複合粒子、酸化亜鉛含有複合粒子の製造方法、紫外線遮蔽用組成物、及び化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/27 20060101AFI20190902BHJP
   C01G 9/02 20060101ALI20190902BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   A61K8/27
   C01G9/02 Z
   A61Q17/00
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-108048(P2015-108048)
(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公開番号】特開2016-222554(P2016-222554A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000215800
【氏名又は名称】テイカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】下川 幸正
(72)【発明者】
【氏名】堂下 和宏
(72)【発明者】
【氏名】山地 幸一
(72)【発明者】
【氏名】山下 淳
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−094917(JP,A)
【文献】 特開平02−017932(JP,A)
【文献】 特開2014−122306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00−23/08
A61Q 17/00
C01G 9/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質シリカ粒子と、
前記多孔質シリカ粒子の内部に含有されている酸化亜鉛粒子と、
前記多孔質シリカ粒子を被覆し、ポリシルセスキオキサンを含有する被覆層と、を備え
た、
酸化亜鉛含有複合粒子。
【請求項2】
酸化亜鉛含有複合粒子を製造する方法であって、
前記酸化亜鉛含有複合粒子は、
多孔質シリカ粒子と、
前記多孔質シリカ粒子の内部に含有されている酸化亜鉛粒子と、
前記多孔質シリカ粒子を被覆し、ポリシルセスキオキサンを含有する被覆層と、を備え、
前記ポリシルセスキオキサンを、三官能性アルコキシシランを加水分解及び脱水縮合することによって形成する、
方法
【請求項3】
前記ポリシルセスキオキサンは、炭素数が16以下のアルキル基がケイ素原子に結合しているポリシルセスキオキサンである、請求項1に記載の酸化亜鉛含有複合粒子。
【請求項4】
前記ポリシルセスキオキサンは、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリエチルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、及びポリオクチルシルセスキオキサンからなる群から選ばれる1つ以上のポリシルセスキオキサンを含む、請求項1に記載の酸化亜鉛含有複合粒子。
【請求項5】
前記多孔質シリカ粒子は、フレーク形状である、請求項1、3、及び4のいずれか1項に記載の酸化亜鉛含有複合粒子。
【請求項6】
前記多孔質シリカ粒子は、球形状である、請求項1、3、及び4のいずれか1項に記載の酸化亜鉛含有複合粒子。
【請求項7】
前記多孔質シリカ粒子の、窒素吸着法で測定した細孔径分布が、2nm〜50nmの範囲にピークを有する、請求項1、3〜6のいずれか1項に記載の酸化亜鉛含有複合粒子。
【請求項8】
前記酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、10nm〜1000nmである、請求項1、3〜7のいずれか1項に記載の酸化亜鉛含有複合粒子。
【請求項9】
請求項1、3〜8のいずれか1項に記載の酸化亜鉛含有複合粒子を含む、紫外線遮蔽用組成物。
【請求項10】
請求項1、3〜8のいずれか1項に記載の酸化亜鉛含有複合粒子を含む、化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛含有複合粒子、紫外線遮蔽用組成物、及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化亜鉛(ZnO)は、例えば、UV−A(波長320nm〜400nmの紫外線)遮蔽剤として化粧料に配合されている。両性元素である亜鉛の酸化物である酸化亜鉛は、酸性溶液及び塩基性溶液のいずれにも容易に溶解し、中性付近の水にさえ微量ながら溶解する。酸化亜鉛から亜鉛イオンが溶出することによって、酸化亜鉛が配合されている化粧料などの製品の一部の特性が損なわれる可能性がある。このため、酸化亜鉛の溶出を抑制するために、様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、所定のポリオレフィン系樹脂及び酸化亜鉛を含む化粧料用複合粒子が記載されている。
【0004】
特許文献2には、酸化亜鉛の粒子の表面にチタニアを含む被覆を有し、その被覆の上にシリカを含む被覆を有する、表面が被覆された酸化亜鉛が記載されている。
【0005】
特許文献3には、水性媒液中で亜鉛化合物を中和剤と反応させて酸化亜鉛粒子を得る工程と、得られた酸化亜鉛粒子を気相中で加熱操作をすることなく、水性媒液中でその粒子表面にシリカなどの無機化合物の被覆を行う工程とを含む、表面被覆した酸化亜鉛の製造方法が記載されている。
【0006】
特許文献4には、酸化亜鉛粉体を所定のアクリルシリコーン樹脂の溶液に分散させた後、揮発性のアルカリ物質及び所定のアルコキシシランを添加し、アルコキシシランを加水分解して得られる、撥水性微粒子シリカ被覆酸化亜鉛粉体が記載されている。
【0007】
特許文献5及び6には、カルボキシビニルポリマーと2価又は3価の金属イオンとを反応させて得られた沈降性物質からなる被覆層を有する被覆酸化亜鉛粒子が記載されている。
【0008】
特許文献7には、酸化亜鉛粉体と、亜鉛イオンと結合して該亜鉛イオンを水に不溶化するジペプチドとを含有している酸化亜鉛複合粉体が記載されている。
【0009】
特許文献8には、酸化亜鉛と第1の樹脂とを含有する芯材部と、該芯材部の表面に形成され第1の樹脂と同一組成または異なる組成の第2の樹脂からなる被覆膜とを備えた紫外線遮蔽複合粒子が記載されている。
【0010】
特許文献9には、平均粒子径が1nm以上かつ50nm以下である酸化亜鉛粒子の表面を所定の酸化ケイ素被膜により被覆している酸化ケイ素被覆酸化亜鉛が記載されている。
【0011】
また、酸化亜鉛からの亜鉛イオンの溶出の抑制については言及されていないが、特許文献10には、平均粒子径5〜100nmの酸化亜鉛微粒子を基材とし、該基材に対して15〜40質量%のシリカを被覆しているシリカ被覆酸化亜鉛微粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−219437号公報
【特許文献2】特開2008−94917号公報
【特許文献3】特開2008−273760号公報
【特許文献4】特開2009−23981号公報
【特許文献5】特開2011−102291号公報
【特許文献6】特開2012−207039号公報
【特許文献7】特開2014−43376号公報
【特許文献8】特開2014−84448号公報
【特許文献9】特開2015−6976号公報
【特許文献10】特開2007−016111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献2及び3に記載の技術では表面が被覆された酸化亜鉛の耐酸性について検討されているものの、酸化亜鉛を含む複合粒子の耐酸性に関する検討は十分であるとは言い難く、新規な観点から耐酸性を有する酸化亜鉛含有複合粒子を案出する余地がある。そこで、本発明は、高い耐酸性を有する新規な酸化亜鉛含有複合粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、
多孔質シリカ粒子と、
前記多孔質シリカ粒子の内部に含有されている酸化亜鉛粒子と、
前記多孔質シリカ粒子を被覆し、ポリシルセスキオキサンを含有する被覆層と、を備えた、
酸化亜鉛含有複合粒子を提供する。
【0015】
また、本発明は、
上記の酸化亜鉛含有複合粒子を含む、紫外線遮蔽用組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、
上記の酸化亜鉛含有複合粒子を含む、化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0017】
上記の酸化物亜鉛含有複合粒子は、ポリシルセスキオキサンを含有する被覆層で多孔質シリカ粒子が被覆されているので、高い耐酸性を有する。また、高い耐酸性を有する酸化物亜鉛含有複合粒子を含む、紫外線遮蔽用組成物又は化粧料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る酸化亜鉛含有複合粒子の構造を概念的に説明する断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は、本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
図1に示すように、酸化亜鉛含有複合粒子1は、多孔質シリカ粒子10と、酸化亜鉛粒子20と、被覆層30とを備えている。酸化亜鉛粒子20は、多孔質シリカ粒子10の内部に含有されている。被覆層30は、多孔質シリカ粒子10を被覆しており、ポリシルセスキオキサンを含有する。
【0021】
被覆層30に含まれるポリシルセスキオキサンは、例えば、三官能性アルコキシシランを加水分解及び脱水縮合することにより形成されている。
【0022】
例えば、酸化亜鉛含有複合粒子1の表面近傍に酸性の水溶液が存在する場合に、被覆層30は、多孔質シリカ粒子10の多孔質構造とも相まって、多孔質シリカ粒子10の内部に含有されている酸化亜鉛粒子20に水が接触することを防止する。被覆層30に、ポリシルセスキオキサンが含まれていることにより、多孔質シリカ粒子10の内部の細孔内に水が入り込むことを有利に抑制できる。これにより、酸化亜鉛粒子20から亜鉛イオンが溶出することが防止されるので、酸化亜鉛含有複合粒子1が高い耐酸性を有する。また、被覆層30には、ポリシルセスキオキサンが含まれていることにより、被覆層30の撥水性は、酸化亜鉛含有複合粒子1が酸性の水溶液に均一に分散できる程度に調整されている。すなわち、被覆層30は、酸化亜鉛含有複合粒子1が酸性の水溶液に均一に分散できる程度の表面エネルギーを有する。このため、被覆層30の有する撥水性によって酸化亜鉛粒子20に水が接触することを防止することと、酸化亜鉛含有複合粒子1を酸性の水溶液に均一に分散させることとを両立できる。
【0023】
被覆層30に含まれるポリシルセスキオキサンは、例えば、炭素数が16以下のアルキル基がケイ素原子に結合しているポリシルセスキオキサンである。この場合、酸化亜鉛含有複合粒子1は、より確実に高い耐酸性を有し、より確実に酸性の水溶液に均一に分散する。アルキル基は、直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよい。
【0024】
被覆層30に含まれるポリシルセスキオキサンは、望ましくは、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリエチルシルセスキオキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン、及びポリオクチルシルセスキオキサンからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリシルセスキオキサンを含む。ポリメチルシルセスキオキサンは、1つのケイ素原子に1つのメチル基が結合している基本構成単位を有するポリシロキサンである。ポリエチルシルセスキオキサンは、1つのケイ素原子に1つのエチル基が結合している基本構成単位を有するポリシロキサンである。ポリプロピルシルセスキオキサンは、1つのケイ素原子に1つの1−プロピル基又は1つの2−プロピル基が結合している基本構成単位を有するポリシロキサンである。ポリオクチルシルセスキオキサンは、1つのケイ素原子に1つのオクチル基が結合している基本構成単位を有するポリシロキサンである。オクチル基は直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよい。この場合、酸化亜鉛含有複合粒子1は、より確実に高い耐酸性を有し、より確実に酸性の水溶液に均一に分散する。
【0025】
被覆層30に含まれるポリシルセスキオキサンの重量平均分子量は、例えば、500〜100,000である。ここで、ポリシルセスキオキサンの重量平均分子量は、標準ポリスチレンを標準ポリマーとして用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
【0026】
被覆層30の質量は、例えば、酸化亜鉛含有複合粒子1の質量の10%〜80%である。これにより、被覆層30が多孔質シリカ粒子を適切に保護できるので、酸化亜鉛含有複合粒子1は、より確実に高い耐酸性を有し、より確実に酸性の水溶液に均一に分散する。
【0027】
多孔質シリカ粒子10の形状は、特に限定されないが、例えば、多孔質シリカ粒子10はフレーク形状である。ここで、「フレーク形状」とは、主面を平面又は曲面とみなすことができる板状の形状であって、その厚みに対する主面の直径の比が2以上である形状を意味する。主面の直径とは、その主面の面積に等しい円の直径を意味する。多孔質シリカ粒子10がフレーク形状である場合、多孔質シリカ粒子10の主面の最大径は、例えば5μm〜100μmであり、多孔質シリカ粒子10の厚みは、例えば0.2μm〜2μmである。多孔質シリカ粒子10がフレーク形状であることにより、酸化亜鉛含有複合粒子1が配合される製品の用途に応じて、その製品に所望の特性を付与できる。
【0028】
多孔質シリカ粒子10の形状は、球形状であってもよい。ここで、「球形状」とは、多孔質シリカ粒子10の最小径に対する最大径の比が1〜1.5の範囲内にある塊状の形状を意味する。多孔質シリカ粒子10が球形状である場合、多孔質シリカ粒子10の平均粒子径は、例えば1μm〜100μmである。多孔質シリカ粒子10が球形状であることにより、酸化亜鉛含有複合粒子1が配合される製品の用途に応じて、その製品に所望の特性を付与できる。ここで、多孔質シリカ粒子10の平均粒子径は、レーザー回折式粒度計を用いて測定した粒度分布の体積累計50%に相当する粒子径を意味する。
【0029】
多孔質シリカ粒子10は、例えば、直径2〜50nmのメソ孔を有するメソポーラスな多孔質構造を有する。多孔質シリカ粒子10の、窒素吸着法で測定した細孔径分布は、望ましくは、2nm〜50nmの範囲にピークを有する。これにより、酸化亜鉛20粒子を多孔質シリカ粒子10の内部に適切に保持できるとともに、多孔質シリカ粒子10の内部に水が入り込むことを適切に抑制できる。
【0030】
酸化亜鉛粒子20の平均粒子径(平均一次粒子径)は、多孔質シリカ粒子10の最小径又は厚みより小さい限り特に制限されないが、例えば10nm〜1000nmである。この場合、酸化亜鉛粒子20が、多孔質シリカ粒子10の内部に適切に保持されやすい。このため、酸化亜鉛含有複合粒子1の表面近傍に酸性の水溶液が存在する場合に、酸化亜鉛粒子20から、亜鉛イオンが溶出することが抑制される。ここで、酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度計を用いて測定した粒度分布の体積累計50%に相当する粒子径を意味する。
【0031】
酸化亜鉛はUV−A遮蔽剤として作用するので、酸化亜鉛含有複合粒子1を用いて、酸化亜鉛含有複合粒子1を含む、紫外線遮蔽用組成物を提供できる。
【0032】
また、酸化亜鉛含有複合粒子1を用いて、酸化亜鉛含有複合粒子1を含む、化粧料を提供できる。この化粧料は、酸化亜鉛含有複合粒子1を含むことにより、UV−A遮蔽の特性を有する。化粧料は、例えば、カルボキシルビニルポリマーを含むO/W型の水系の化粧料である。この場合、カルボキシルビニルポリマーによって、化粧料の粘度を所望の範囲に調整できる。
【0033】
例えば、水相に粘度調整剤としてカルボキシビニルポリマーが添加されているO/W型の水系の化粧料に酸化亜鉛が配合されると、溶出した亜鉛イオンとカルボキシビニルポリマーとの相互作用により系の粘度が低下する可能性がある。このため、水系の化粧品に酸化亜鉛を配合することができない場合が多い。しかし、酸化亜鉛含有複合粒子1は高い耐酸性を有する。このため、カルボキシビニルポリマーが添加されているO/W型の水系の化粧料に酸化亜鉛含有複合粒子1を配合しても、酸化亜鉛粒子20からの亜鉛イオンの溶出が防止され、亜鉛イオンとカルボキシビニルポリマーとの相互作用も防止される。従って、酸化亜鉛含有複合粒子1を用いれば、化粧料において、粘度調整剤であるカルボキシビニルポリマーと酸化亜鉛とを亜鉛イオンが溶出されることなく良好に共存させることができる。このように、カルボキシビニルポリマーが添加されているO/W型の水系の化粧料に酸化亜鉛含有複合粒子1を配合でき、化粧料に所望の粘度を付与できるとともに、UV−A遮蔽という特性を長期間にわたって維持できる。
【0034】
本発明に係る酸化亜鉛含有複合粒子の表面には、界面活性剤などの両親媒性物質又はポリエーテル基を有するシラン化合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、又はポリビニルピロリドンなどの親水性高分子が付着又は吸着されていてもよい。これにより、酸化亜鉛含有複合粒子の水への分散性が調整される。
【0035】
次に、酸化亜鉛含有複合粒子1の製造方法の一例について説明する。まず、内部に酸化亜鉛粒子を含有する、フレーク形状を有する多孔質シリカ粒子の作製方法の一例について説明する。分散質としてシリカコロイド粒子を含み、分散媒として水を含むシリカゾルを準備する。シリカゾルのpHは例えば7以上である。シリカゾルにおけるシリカコロイド粒子の平均一次粒子径は、例えば、5nm〜500nmである。このシリカゾルに酸化亜鉛粒子を添加して分散させる。このとき、酸化亜鉛粒子の粉体がシリカゾルに直接加えられてもよいが、望ましくは、予め湿式ビーズミルなどを用いて調製された酸化亜鉛粒子の分散液をシリカゾルと混合して攪拌することによって、シリカゾルに酸化亜鉛粒子を分散させる。次に、酸化亜鉛粒子が分散されたシリカゾルを所定の有機溶媒を含む液に供給する。有機溶媒としては、例えば、20℃における比誘電率が30以下である、水と混和するプロトン性溶媒、又は、20℃における比誘電率が40以下である、水と混和する非プロトン性溶媒を用いることができる。酸化亜鉛粒子が分散されたシリカゾルを、例えば液滴の状態で所定の有機溶媒を含む液に供給する。このとき、所定の有機溶媒を含む液を攪拌しながら、酸化亜鉛粒子が分散されたシリカゾルを供給することが望ましい。これにより、所定の有機溶媒を含む液の中に、シリカコロイド粒子のフレーク形状の凝集体が生成される。このとき、凝集体の内部に酸化亜鉛粒子が取り込まれて分散している。
【0036】
次に、所定の有機溶媒を含む液から凝集体を分離する。凝集体の分離は、遠心分離、濾過、及びデカンテーションなどの公知の手法を用いて行うことができる。分離した凝集体は、必要に応じて洗浄し、乾燥させる。例えば40℃〜250℃、望ましくは50℃〜200℃の雰囲気で凝集体を乾燥させる。乾燥により、凝集体がゲル化する。これにより、生成されたフレーク形状の凝集体を構成するシリカコロイド粒子同士の結着強度が高まる。ゲル化した凝集体を必要に応じて焼成することにより、不要な有機物の除去や細孔の制御を行う。この焼成は、例えば、300℃〜800℃の範囲で行われる。これにより、シリカと酸化亜鉛との反応による酸化亜鉛の結晶性の低下が抑制され、かつ、酸化亜鉛のUV−Aを遮蔽する特性が維持される。凝集体の焼成温度が300℃より低いと、焼成の効果が小さく、凝集体の焼成温度が800℃より高いと、酸化亜鉛のUV−Aを遮蔽する特性が損なわれる可能性がある。焼成の効果が高く、かつ、酸化亜鉛のUV−Aを遮蔽する特性をより良く維持する観点から、凝集体の焼成は、望ましくは400℃〜600℃の範囲で行われる。これにより、内部に酸化亜鉛粒子を含有する、フレーク形状の多孔質シリカ粒子が得られる。
【0037】
また、酸化亜鉛粒子が分散されたシリカゾルを、所定の有機溶媒を含む液に代えて、所定の電解質水溶液に供給してもよい。このとき、電解質水溶液を攪拌しながら酸化亜鉛粒子が分散されたシリカゾルを供給することが望ましい。電解質水溶液としては、水100重量部に対して0.3重量部以上の電解質が添加された水溶液を用いることができる。また、電解質水溶液としては、例えば、NaCl、CaCl2、CH3COONa、NaNO3、KCl、(CH3COO)2Mg・4H2O、及びKNO3から選ばれる少なくとも1つの電解質の水溶液を用いることができる。これにより、シリカコロイド粒子のフレーク形状の凝集体が電解質水溶液中に生成される。このとき、凝集体の内部に酸化亜鉛粒子が取り込まれて分散している。望ましくは、凝集体の生成後、かつ、凝集体を電解質水溶液から分離する前に、電解質水溶液を加熱する。例えば、電解質水溶液が沸騰するように電解質水溶液を加熱する。これにより、凝集体を構成するシリカコロイド粒子の結着強度が増加する。このようにしても、内部に酸化亜鉛粒子を含有する、フレーク形状の多孔質シリカ粒子が得られる。凝集体は、必要に応じて焼成される。シリカと酸化亜鉛との反応による酸化亜鉛の結晶性の低下が抑制され、かつ、酸化亜鉛がUV−Aを遮蔽する特性が維持される観点から、凝集体の焼成は、例えば300℃〜800℃の範囲で行われ、望ましくは400℃〜600℃の範囲で行われる。
【0038】
次に、内部に酸化亜鉛粒子を含有する、球形状の多孔質シリカ粒子の作製方法の一例について説明する。まず、分散質としてシリカコロイド粒子を含み、分散媒として水を含むシリカゾルを準備する。シリカゾルにおけるシリカコロイド粒子の平均一次粒子径は、例えば、5nm〜500nmである。このシリカゾルに酸化亜鉛粒子を添加して分散させる。このとき、酸化亜鉛粒子の粉体がシリカゾルに直接加えられてもよいが、望ましくは、予め湿式ビーズミルなどを用いて調製された酸化亜鉛粒子の分散液をシリカゾルと混合して攪拌することによって、シリカゾルに酸化亜鉛粒子を分散させる。次に、酸化亜鉛粒子が分散されたシリカゾルを用いて噴霧乾燥を行う。このようにして、内部に酸化亜鉛粒子を含有する、球形状の多孔質シリカ粒子が得られる。噴霧乾燥における乾燥炉の温度は、例えば、50℃〜200℃である。また、噴霧条件は、例えば、得られる球形状の多孔質シリカ粒子の平均粒子径が1μm〜100μmになるように調整される。噴霧乾燥により得られた粒子は、必要に応じて、300℃〜800℃の範囲で焼成する。シリカと酸化亜鉛との反応による酸化亜鉛の結晶性の低下を抑制し、酸化亜鉛がUV−Aを遮蔽する特性を維持し、焼成による有機物の除去又は細孔の制御の効果を有効に発揮させるために、噴霧乾燥により得られた粒子の焼成は、望ましくは400℃〜600℃の範囲で行われる。
【0039】
このようにして得られた、内部に酸化亜鉛粒子を含有する、フレーク形状又は球形状の多孔質シリカ粒子を、ポリシルセスキオキサンを含有する溶液又は三官能性アルコキシシランを予め加水分解及び脱水縮合して調製した溶液に加える。次に、この溶液を撹拌しながら溶液を加熱して溶液中に含まれる溶媒を除去する。このようにして、ポリシルセスキオキサンを含む被覆層が多孔質シリカ粒子を被覆し、本発明に係る酸化亜鉛含有複合粒子を製造することができる。
【実施例】
【0040】
実施例により、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0041】
<実施例1>
純水67.5質量部に、酸化亜鉛粒子(テイカ社製、製品名:MZ−500)30質量部と、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤(花王社製、製品名:ポイズ532A)2.5質量部を加え、0.65mm径のジルコニアビーズ4.3kgとともに、横型連続式湿式媒体攪拌ミル(シンマルエンタープライゼス社製、製品名:ダイノーミルKDL−PILOT A型)で3時間循環攪拌(攪拌速度:周速10m/秒、流速:5L/min)し、酸化亜鉛粒子の分散液(酸化亜鉛の分散径:約0.2μm)を得た。
【0042】
次に、酸化亜鉛粒子の分散液20質量部を、シリカゾル(日本化学工業社製、製品名:シリカドール30S、分散媒:水、シリカの平均一次粒子径9nm)30質量部と混合し、ゾル液Aを得た。このゾル液Aの固形分中の酸化亜鉛粒子の含有率は20質量%であった。次に、2−プロパノール100mlをビーカーに入れ、これを撹拌しながら、ゾル液Aをビーカーに入った2−プロパノールへ1gずつ滴下した。ゾル液Aの滴下によりフレーク形状の凝集体が生じた。
【0043】
デカンテーションによって、2−プロパノールから凝集体を分離し、分離した凝集体を120℃の真空乾燥器内で乾燥させた後、500℃で7時間焼成した。このようにして、内部に酸化亜鉛粒子を含有するフレーク形状の多孔質シリカ粒子B1(平均厚み:0.8μm、平均粒子径:20μm、酸化亜鉛含有率:約20質量%)を得た。ここで、平均粒子径は、レーザー回折式粒度計を用いて測定した粒度分布の体積累積50%に相当する粒径(D50)である。この多孔質シリカ粒子B1の細孔分布を窒素吸着法により測定したところ、多孔質シリカ粒子B1は、20nmにピークを有する細孔径分布を有していた。
【0044】
ポリメチルシルセスキオキサン(小西化学工業社製、製品名:SR−13)のエタノール溶液(ポリメチルシルセスキオキサン濃度:20質量%)に多孔質シリカ粒子B1を加え、この溶液を撹拌しながらこの溶液を加熱し、溶媒であるエタノールを除去した。その後、ポリメチルシルセスキオキサンで被覆された多孔質シリカ粒子B1を取り出した。このようにして、実施例1に係る酸化亜鉛含有複合粒子を得た。実施例1に係る酸化亜鉛含有複合粒子におけるポリメチルシルセスキオキサンの被覆層の質量は、酸化亜鉛含有複合粒子の全体の質量の20%であった。
【0045】
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、実施例1に係る酸化亜鉛含有複合粒子を、酸化亜鉛含有複合粒子の濃度が10質量%となるように添加して撹拌し、クエン酸水溶液中に酸化亜鉛含有複合粒子を分散させた。このとき、実施例1に係る酸化亜鉛含有複合粒子は、クエン酸水容液において均一に分散した。実施例1に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させてから1時間経過後の水溶液のpHは約3であったが、それ以降、水溶液のpHはほとんど変化しなかった。このため、実施例1に係る酸化亜鉛含有複合粒子の多孔質シリカ粒子の内部に含有されている酸化亜鉛から亜鉛イオンはほとんど溶出しなかったと考えられる。
【0046】
<実施例2>
溶媒としてのイソプロピルアルコール65.9g、メチルトリエトキシシラン(エボニック社製、製品名:Dynasylan MTES)29.5g、加水分解の水及び加水分解の触媒としての0.01N硝酸4.6gを混合して、30℃に保温しながら1時間攪拌して、メチルトリエトキシシランを加水分解及び脱水縮合させ、コーティング液Cを得た。コーティング液Cに多孔質シリカ粒子B1を加え、コーティング液Cを撹拌しながらコーティング液Cを加熱し、コーティング液Cから溶媒を除去した。その後、メチルトリエトキシシランの加水分解脱水縮合物であるポリメチルシルセスキオキサンで被覆された多孔質シリカ粒子B1を取り出した。このようにして、実施例2に係る酸化亜鉛含有複合粒子を得た。実施例2に係る酸化亜鉛含有複合粒子におけるポリメチルシルセスキオキサンの被覆層の質量は、酸化亜鉛含有複合粒子の全体の質量の10%であった。
【0047】
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、実施例2に係る酸化亜鉛含有複合粒子を、酸化亜鉛含有複合粒子の濃度が10質量%となるように添加して撹拌し、クエン酸水溶液中に酸化亜鉛含有複合粒子を分散させた。このとき、実施例2に係る酸化亜鉛含有複合粒子は、クエン酸水容液において均一に分散した。実施例2に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させてから1時間経過後の水溶液のpHは約3であったが、それ以降水溶液のpHはほとんど変化しなかった。
【0048】
<実施例3>
噴霧乾燥装置(藤崎電機社製、製品名:MDL−050L)において、ゾル液Aを用いて噴霧乾燥を行った。噴霧乾燥における乾燥炉の温度は約65℃に調整した。このようにして、内部に酸化亜鉛粒子を含有する、球形状の多孔質シリカ粒子B2(平均粒子径:5μm、酸化亜鉛含有率:約20質量%)を得た。ここで、平均粒子径は、レーザー回折式粒度計を用いて測定した粒度分布の体積累積50%に相当する粒径(D50)である。この多孔質シリカ粒子B2の細孔分布を窒素吸着法により測定したところ、多孔質シリカ粒子B2は、約3nmにピークを有する細孔径分布を有していた。
【0049】
ポリメチルシルセスキオキサン(小西化学工業社製、製品名:SR−13)のエタノール溶液(ポリメチルシルセスキオキサン濃度:20質量%)に多孔質シリカ粒子B2を加え、この溶液を撹拌しながらこの溶液を加熱し、溶媒であるエタノールを除去した。その後、ポリメチルシルセスキオキサンで被覆された多孔質シリカ粒子B2を取り出した。このようにして、実施例3に係る酸化亜鉛含有複合粒子を得た。実施例3に係る酸化亜鉛含有複合粒子におけるポリメチルシルセスキオキサンの被覆層の質量は、酸化亜鉛含有複合粒子の全体の質量の20%であった。
【0050】
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、実施例3に係る酸化亜鉛含有複合粒子を、酸化亜鉛含有複合粒子の濃度が10質量%となるように添加して撹拌し、クエン酸水溶液中に酸化亜鉛含有複合粒子を分散させた。このとき、実施例3に係る酸化亜鉛含有複合粒子は、クエン酸水容液において均一に分散した。実施例3に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させてから1時間経過後の水溶液のpHは約3であったが、それ以降、水溶液のpHはほとんど変化しなかった。
【0051】
<実施例4>
溶媒としてのイソプロピルアルコール65.9g、メチルトリエトキシシラン(エボニック社製、製品名:Dynasylan MTES)29.5g、加水分解の水及び加水分解の触媒としての0.01N硝酸4.6gを混合して、30℃に保温しながら1時間攪拌して、メチルトリエトキシシランを加水分解及び脱水縮合させ、コーティング液Dを得た。コーティング液Dに多孔質シリカ粒子B2を加え、コーティング液Dを撹拌しながらコーティング液Dを加熱し、溶媒を除去した。その後、メチルトリエトキシシランの加水分解脱水縮合物であるポリメチルシルセスキオキサンで被覆された多孔質シリカ粒子B2を取り出した。このようにして、実施例4に係る酸化亜鉛含有複合粒子を作製した。実施例4に係る酸化亜鉛含有複合粒子におけるポリメチルシルセスキオキサンの被覆層の質量は、酸化亜鉛含有複合粒子の全体の質量の10%であった。
【0052】
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、実施例4に係る酸化亜鉛含有複合粒子を、酸化亜鉛含有複合粒子の濃度が10質量%となるように添加して撹拌し、クエン酸水溶液中に酸化亜鉛含有複合粒子を分散させた。このとき、実施例4に係る酸化亜鉛含有複合粒子は、クエン酸水容液において均一に分散した。実施例4に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させてから1時間経過後の水溶液のpHは約3であったが、それ以降水溶液のpHはほとんど変化しなかった。
【0053】
<実施例5>
溶媒としてのイソプロピルアルコール69.9g、エチルトリエトキシシラン(東京化成工業社製)26.3g、加水分解の水及び加水分解触媒としての0.01N硝酸3.8gを混合して、30℃に保温しながら1時間攪拌して、エチルトリエトキシシランを加水分解及び脱水縮合させ、コーティング液Eを得た。コーティング液Dに代えて、コーティング液Eを使用した以外は、実施例4と同様にして、実施例5に係る酸化亜鉛含有複合粒子を作製した。実施例5に係る酸化亜鉛含有複合粒子におけるポリエチルシルセスキオキサンの被覆層の質量は、酸化亜鉛含有複合粒子の全体の質量の10%であった。
【0054】
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、実施例5に係る酸化亜鉛含有複合粒子を、酸化亜鉛含有複合粒子の濃度が10質量%となるように添加して撹拌し、クエン酸水溶液中に酸化亜鉛含有複合粒子を分散させた。このとき、実施例5に係る酸化亜鉛含有複合粒子は、クエン酸水容液において均一に分散した。実施例5に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させてから1時間経過後の水溶液のpHは約3であったが、それ以降、水溶液のpHはほとんど変化しなかった。
【0055】
<実施例6>
溶媒としてのイソプロピルアルコール72.7g、プロピルトリエトキシシラン(エボニック社製、製品名:Dynasylan PTEO)24.1g、加水分解の水及び加水分解触媒としての0.01N硝酸3.2gを混合して、30℃に保温しながら1時間攪拌して、プロピルトリエトキシシランを加水分解及び脱水縮合させ、コーティング液Fを得た。コーティング液Dに代えて、コーティング液Fを使用した以外は、実施例4と同様にして、実施例6に係る酸化亜鉛含有複合粒子を作製した。実施例6に係る酸化亜鉛含有複合粒子におけるポリプロピルシルセスキオキサンの被覆層の質量は、酸化亜鉛含有複合粒子の全体の質量の10%であった。
【0056】
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、実施例6に係る酸化亜鉛含有複合粒子を、酸化亜鉛含有複合粒子の濃度が10質量%となるように添加して撹拌し、クエン酸水溶液中に酸化亜鉛含有複合粒子を分散させた。このとき、実施例6に係る酸化亜鉛含有複合粒子は、クエン酸水容液において均一に分散した。実施例6に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させてから1時間経過後の水溶液のpHは約3であったが、それ以降、水溶液のpHはほとんど変化しなかった。
【0057】
<実施例7>
溶媒としてのイソプロピルアルコール79.6g、オクチルトリエトキシシラン(エボニック社製、製品名:Dynasylan OCTEO)18.6g、加水分解の水及び加水分解の触媒としての0.01N硝酸1.9gを混合して、30℃に保温しながら1時間攪拌して、オクチルトリエトキシシランを加水分解及び脱水縮合させ、コーティング液Gを得た。コーティング液Dに代えて、コーティング液Gを使用した以外は、実施例4と同様にして、実施例7に係る酸化亜鉛含有複合粒子を作製した。実施例7に係る酸化亜鉛含有複合粒子におけるポリオクチルシルセスキオキサンの被覆層の質量は、酸化亜鉛含有複合粒子の全体の質量の10%であった。
【0058】
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、実施例7に係る酸化亜鉛含有複合粒子を、酸化亜鉛含有複合粒子の濃度が10質量%となるように添加して撹拌し、クエン酸水溶液中に実施例7に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させた。このとき、実施例7に係る酸化亜鉛含有複合粒子は、クエン酸水容液において均一に分散した。実施例7に係る酸化亜鉛含有複合粒子を分散させてから1時間経過後の水溶液のpHは約3であったが、それ以降、水溶液のpHはほとんど変化しなかった。
【0059】
<比較例1>
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、被覆層を有しない多孔質シリカ粒子B1を、多孔質シリカ粒子B1の濃度が10質量%となるように添加して撹拌した。被覆層を有しない多孔質シリカ粒子B1をクエン酸水溶液に添加してから1分以内に水溶液のpHは6以上に変化した。酸化亜鉛から亜鉛イオンが溶出したものと考えられる。
【0060】
<比較例2>
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、被覆層を有しない多孔質シリカ粒子B2を、多孔質シリカ粒子B2の濃度が10質量%となるように添加して撹拌した。被覆層を有しない多孔質シリカ粒子B2をクエン酸水溶液に添加してから1分以内に水溶液のpHは6以上に変化した。
【0061】
<比較例3>
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、酸化亜鉛(テイカ社製、製品名:MZ−500)を、酸化亜鉛の濃度が10質量%になるように添加して攪拌した。酸化亜鉛をクエン酸水溶液に添加してから1分以内に水溶液のpHは6以上に変化した。
【0062】
<比較例4>
pHが2.5であるクエン酸水溶液に、オクチルトリエトキシシラン処理済み酸化亜鉛(テイカ社製、製品名:MZX−508OTS)を添加したが、クエン酸水溶液の液面に浮かんで、激しく攪拌してもクエン酸水溶液に分散しなかった。
【符号の説明】
【0063】
1 酸化亜鉛含有複合粒子
10 多孔質シリカ粒子
20 酸化亜鉛粒子
30 被覆層
図1