(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0008】
本発明の第1実施形態は、基材、プライマー層及び放射線で硬化した粘着剤層をこの順に備える粘着シートであって、上記プライマー層は、ポリオキシアルキレンポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートとを構成成分とした網目状ポリウレタンを含有しており、このポリオキシアルキレンポリオールは、ポリオキシプロピレンポリオール及び/又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールである、粘着シートである。
【0009】
基材は、プライマー層と粘着剤層とを担持する支持体であり、その全体形状は、例えばフィルム状、ロール状とすることができる。基材は、孔や凹凸が存在しない平面形状のものの他、適用対象や用途に対応して、繊維形状のもの、メッシュ状のもの、孔が形成されているもの、エンボス等の凹凸が表面に形成されているものなどが利用可能である。基材を構成する素材としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニルが挙げられ、ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0010】
プライマー層に含まれる網目状ポリウレタンは、ポリウレタンが架橋した構造を有している。この架橋構造は、ポリウレタンを構成するポリオール及び/又はポリイソシアネートとして多官能(分岐型)の材料を用いて得ることができる。
【0011】
網目状ポリウレタンを構成するポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオールである、ポリオキシプロピレンポリオール及び/又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールを含む。このポリオキシアルキレンポリオールは、水酸基を2以上有する高分子ポリオールである。ここで、高分子ポリオールとは、分子量(数平均分子量)が150以上であるポリオールをいう。このポリオールは、このポリオキシアルキレンポリオールを含む限りにおいて他のポリオールを含んでいてもよい。
【0012】
ポリオキシプロピレンポリオール及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールの数平均分子量は、500〜15000であることが好ましく、1000〜10000であることがより好ましく、1500〜5000であることがさらに好ましい。
【0013】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン単位の含有量は、全体の質量に対して、80以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、50以下であることがさらに好ましい。すなわち、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールにおいて、オキシエチレン単位の質量に対するオキシプロピレン単位の質量は、0.25以上であることが好ましく、0.66以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましい。オキシエチレン単位の質量に対するオキシプロピレン単位の質量を0.25以上にすることで、粘着シートのピール強度がより向上し、高温保存後の投錨性もより向上する。
【0014】
ポリオキシプロピレンポリオール及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールは、2〜6官能とすることができる。ここで、2〜6官能とは、1分子中に2〜6の水酸基を有することをいう。これらのポリオキシアルキレンポリオールは、好ましくは2〜3官能であり、2官能のものだけを用いることもできる。また、2官能ポリオキシアルキレンポリオールと3官能ポリオキシアルキレンポリオールとの混合物とすることもできる。なお、分子形状は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0015】
ポリオキシプロピレンポリオール及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールの水酸基当量は、250〜7500g/eqであることが好ましく、500〜5000g/eqであることがより好ましく、750〜2000g/eqであることが更に好ましい。
【0016】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールは、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。ブロック共重合体である場合、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン(POE−POP−POE)、又は、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン(POP−POE−POP)の構造を有する3元ブロック共重合体が好ましい。反応性を高くすることが可能であることから、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールはPOE−POP−POEがより好ましい。
【0017】
他のポリオールとしては、3官能以上の低分子ポリオールが挙げられる。ここで低分子ポリオールとは分子量(数平均分子量)が150未満であるポリオールをいう。3官能以上の低分子ポリオールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの3官能低分子ポリオールが好ましい。
【0018】
3官能以上の低分子ポリオールを用いる場合、3官能以上の低分子ポリオールの水酸基当量(ポリオキシアルキレンポリオールが3官能ポリオキシアルキレンポリオールを含む場合は、3官能ポリオキシアルキレンポリオールとの合計の水酸基当量)は、用いるポリオールの水酸基当量の合計に対して、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。ここで、水酸基当量とは、低分子ポリオールの分子量を水酸基の数で除した値である。また、水酸基当量は、以下の式にしたがい、水酸基価から算出することができる。なお、水酸基価とは、JIS K1557−1:2007にしたがって得られる値であり、例えば、低分子ポリオール1g中の水酸基と当量の水酸化カリウム(分子量56)のミリグラム(mg)数を意味する。
(水酸基当量)=(低分子ポリオールの分子量)/{(水酸基価)/56×17}
3官能以上の低分子ポリオールの水酸基当量の合計が50%以下にすることで、架橋密度が高くなりすぎないようにでき、プライマー層が硬くなりすぎることが防止される。
【0019】
網目状ポリウレタンは、上述したポリオールとポリイソシアネートとの反応で得ることができる。ポリオールとして2官能のものだけを用いる場合は、ポリイソシアネートとしては3官能以上のポリイソシアネートを用いることが好ましい。ポリオールとして3官能のものが含まれている場合、ポリイソシアネートとして、2官能のポリイソシアネートのみを用いてもよく、2官能のポリイソシアネートと3官能以上のポリイソシアネートとの組み合わせ、又は3官能以上のポリイソシアネートのみを用いることができる。なお、3官能以上のポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基が3以上あることを意味する。
【0020】
2官能のポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。3官能以上のイソシアネートとしては、トリイソシアネート、テトライソシアネートが挙げられるが、プライマー層に適度な柔軟性を与える観点から、トリイソシアネート(3官能のポリイソシアネート)が好ましい。トリイソシアネートとしては、トリオール1分子にジイソシアネートを3分子付加反応させた付加型トリイソシアネートや、ジイソシアネートの三量体であるイソシアヌレート変性体が挙げられる。
【0021】
付加型トリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン3分子付加体が挙げられ(コロネートL(東ソー製)として提供される。)、イソシアヌレート変性体としては、2,4−トリレンジイソシアネート3分子のイソシアヌレート変性体が挙げられる。
【0022】
ポリイソシアネートとしては、得られるポリウレタンが網目状となる限りにおいて上記以外のポリイソシアネート、例えば、脂肪族系ポリイソシアネート、芳香族系ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートを用いることができる。
【0023】
本実施形態において、網目状ポリウレタンは、上記ポリオキシアルキレンポリオール、3官能のポリイソシアネート及び3官能の低分子ポリオールを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0024】
網目状ポリウレタンは、水酸基当量に対するイソシアネート当量の比(NCO/OH比)を0.6〜1.4、0.7〜1.3、または、0.8〜1.2になるように反応させて得てもよい。なお、イソシアネート当量とは、ポリイソシアネートの分子量をイソシアネート基の数で除した値である。
【0025】
本実施形態に係る粘着シートは、例えば、以下の方法により製造することができる。すなわち、ポリオキシアルキレンポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートとを構成成分とした網目状ポリウレタンを含有するプライマー組成物を調製し、このプライマー組成物を基材に展延し、基材表面上にプライマー層を形成する。この場合、加熱を施してもよい。そして、プライマー層上に放射線で硬化可能な粘着剤を展延し、放射線を照射することにより硬化させ粘着シートを得る。
【0026】
なお、このような方法で製造することで、放射線照射により粘着剤からラジカルが発生し、プライマー層を構成する成分と反応するため、優れたアンカー効果が発揮される。本実施形態の粘着シートにおいては、基材の材質がポリウレタンである場合に、特に優れたアンカー効果を発揮する。
【0027】
第1実施形態の粘着シートは、放射線で硬化した粘着剤層を備えているが、放射線とは、電子線、ガンマ線などのエネルギー線量の大きい放射線(電離放射線)をいい、紫外線等の非電離放射線は含まない。粘着剤層を形成する粘着剤としては、シリコーン系粘着剤(例えば、ポリオルガノシロキサンにMQレジン等のシリコーン系粘着付与剤を添加したもの)、アクリル系粘着剤等が挙げられる。本実施形態においては、シリコーン系粘着剤が特に有効である。
【0028】
粘着剤層は、放射線で硬化する前の段階で、粘着性を発揮する程度に高分子量である粘着剤からなっていてもよく、放射線照射により初めて高分子量化して粘着性を発揮するような素材を用いてもよい。後者の場合、粘着剤層は、放射線硬化前にモノマー状態やオリゴマー状態であり、放射線照射により分子鎖の伸長や架橋等が生じる。
【0029】
放射線で硬化した粘着剤層をプライマー層上に設ける場合、電子線硬化させた粘着剤層をプライマー層上に積層する方法や、プライマー層上に粘着剤層を積層した後に、全体に電子線を照射して粘着剤を硬化させる方法がある。後者の方法を採用すると、放射線照射により粘着剤からラジカルが発生し、プライマー層を構成する成分と反応することにより、優れたアンカー効果を発揮することから、後者の方法を採用することが好ましい。
【0030】
本実施形態に係る粘着シートは、基材の材質がポリウレタンである場合に、より優れたアンカー効果を発揮する。
【0031】
本発明の第2実施形態は、第1実施形態において、基材とプライマー層との間に、窒素含有基を有する(メタ)アクリルポリマーを含有する第2プライマー層をさらに備える、粘着シートである。なお、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレート等類似の表現においても同様である。
【0032】
第2実施形態において、第1実施形態と共通する構成については、定義や好適例などは全て同様である。
【0033】
第2プライマー層に含まれる、窒素含有基を有する(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをモノマー単位として有する高分子であり、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。ここで窒素含有基とは、窒素原子を含む官能基であり、この官能基は親水性官能基であり得る。窒素含有基としては、例えば、アミノ基、アミド基及びイミド基が挙げられる。窒素含有基は、アミノ基及びアミド基のように置換が可能な場合、例えば、炭素数が1〜22のアルキル基で置換されていてもよい。このアルキル基は、ポリオキシアルキレン基、ポリアミノアルキレン基等でさらに置換されていてもよく、このアルキレン基は、例えば、炭素数が2〜4のアルキレン基であり得る。なお、窒素含有基は、オニウム塩等の塩を形成していてもよい。
【0034】
窒素含有基は(メタ)アクリルポリマーのいずれの位置に存在していてもよい。(メタ)アクリルポリマーを構成するモノマー単位で説明すると、アミノ基及びアミド基の場合は、(メタ)アクリロイル基に直接結合するか、(メタ)アクリロイル基に結合した基(例えばアルキルオキシ基)に結合して存在し得る。窒素含有基がイミド基である場合は、窒素含有基はモノマー単位の非末端部分に存在し、このようなモノマーは、例えば、環状酸無水物にアミノアルキルアルコールを反応させて得られるヒドロキシアルキルイミドに、(メタ)アクリル酸を反応させて得ることができる。
【0035】
窒素含有基を有する(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量は、5000〜1000000であってもよく、10000〜100000であってもよい。また、アミン水素当量は、300〜2000(g・solid/eq)であってもよい。
【0036】
窒素含有基を有する(メタ)アクリルポリマーは、アミノ基を有する(メタ)アクリレートポリマーであることが好ましい。このアミノ基を有する(メタ)アクリレートポリマーは、アミノ基を有する(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリル酸エステルとをモノマー単位として有する共重合体であってもよい。なお、モノマー単位であるアミノ基を有する(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリロイル基に結合したアルキルオキシ基にアミノ基が結合した形状であること、すなわちアミノアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0037】
窒素含有基を有する(メタ)アクリレートポリマーとしては、以下の一般式(1)の構造を有するものが挙げられる。
【化1】
式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立にメチル基又は水素原子、R
3は炭素数1〜22のアルキル基、R
4は炭素数2〜4のアルキレン基、xは1〜2000、yは1〜2000、nは1〜100の数字を表す。R
3は炭素数1〜18のアルキル基であってもよく、R
4は炭素数2のアルキレン基であってもよい。xは50〜1500、yは50〜1500がよく、x及びyは合計で100〜1500になるような数であってもよい。
【0038】
第2プライマー層において、窒素含有基を有する(メタ)アクリルポリマーの含有量は、第2プライマー層の全質量基準で、50質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。
【0039】
第2プライマー層に含まれる窒素含有基を有する(メタ)アクリルポリマーとしては、第1実施形態におけるプライマー層に含まれるものと同様のポリマーを使用でき、なかでも一般式(1)の構造を有するポリマーが好ましい。
【0040】
本実施形態に係る粘着シートは、窒素含有基を有する(メタ)アクリルポリマーを含有する第2プライマー組成物を基材に展延し(必要により加熱)、基材表面上に第2プライマー層を形成し、その後、この第2プライマー層上に、第1実施形態と同様に、プライマー層を形成し、放射線を照射することにより硬化させて得ることができる。
【0041】
本実施形態に係る粘着シートは、例えば、以下の方法により製造することができる。すなわち、基材の表面に窒素含有基を有する(メタ)アクリルポリマーを含有する組成物を展延し、第2プライマー層を形成させる。次に、ポリオキシアルキレンポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートとを構成成分とした網目状ポリウレタンを含有するプライマー組成物を調製し、このプライマー組成物を基材上の第2プライマー層にさらに展延し、第2プライマー層上にプライマー層を形成する。この場合、加熱を施してもよい。そして、プライマー層上に放射線で硬化可能な粘着剤を展延し、放射線を照射することにより硬化させ粘着シートを得る。得られた粘着シートは、さらに剥離ライナーを備えていてもよい(他の実施形態においても同様である。)。
【0042】
本実施形態に係る粘着シートは、基材の材質がポリエステル、ポリ塩化ビニルである場合に、より優れたアンカー効果を発揮する。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例及び比較例を示しながら、本発明を更に詳細に説明する。
【0044】
試験例1
<プライマー組成物P1〜P5の調製>
表1に記載の割合で、ポリオキシアルキレンポリオール1〜5のいずれかのメチルエチルケトン溶液に、3官能の低分子ポリオール1、ポリイソシアネート1を順次添加した後、充分に混合してポリウレタン組成物を調製し、それぞれプライマー組成物P1〜P5として用いた。プライマー組成物P1〜P5を調製するにあたり、ポリウレタンの濃度が15質量%となるように、メチルエチルケトンの量を調整した。なお、表1中のポリマーポリオール1〜5及び3官能の低分子ポリオール1の量は水酸基当量数で示し、ポリイソシアネート1の量はイソシアネート当量数で示した。
【0045】
【表1】
【0046】
3官能のポリイソシアネート1:コロネートL(商品名,日本ポリウレタン工業株式会社製)を用いた。コロネートLは、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の酢酸エチル溶液であり、そのイソシアネート当量は、311.11g/eqである。
ポリオキシアルキレンポリオール1:CM−294(商品名,株式会社ADEKA社製)を用いた。CM−294は、数平均分子量が約2900g/モルであるトリブロックコポリマーであり、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の比が40:60であり、その水酸基当量は1450g/eqである。
ポリオキシアルキレンポリオール2:プロノン#202B(商品名,日油株式会社)を用いた。プロノン#202Bは、数平均分子量が約2400g/モルであるトリブロックコポリマーであり、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の比が20:80であり、その水酸基当量は1200g/eqである。
ポリオキシアルキレンポリオール3:プルロニックL−61(商品名,株式会社ADEKA社製)を用いた。プルロニックL−61は、数平均分子量が約2000g/モルであるトリブロックコポリマーであり、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の比が10:90であり、その水酸基当量は1000g/eqである。
ポリオキシアルキレンポリオール4:ポリエーテルP−3000(商品名,株式会社ADEKA社製)を用いた。ポリエーテルP−3000は、数平均分子量が3030g/モルであるポリオキシプロピレンポリオールであり、その水酸基当量は1516.5g/eqである。
ポリオキシアルキレンポリオール5:ポリセリンDCB−1000(商品名,日油株式会社)を用いた。ポリセリンDCB−1000は、数平均分子量が約1000g/モルであるランダムコポリマーであり、オキシテトラメチレン単位とオキシプロピレン単位の比が45:55であり、その水酸基当量は500g/eqである。
3官能の低分子ポリオール1:トリメチロールプロパンとグリセリンの混合物(質量比は1:1)を用いた。混合物の水酸基当量は36.41g/eqである。
【0047】
<粘着シートの調製>
(1)基材の調製
シリコーン処理ポリエチレンテレフタレートキャリアフィルムにポリウレタン(商品名:エスタン58309,Lubrizol社製)を厚さが15μmとなるように押し出し積層させた。
(2)基材へのプライマーのコーティング
上記基材のポリウレタン側の表面に、プライマー組成物P1〜P5のいずれかをワイヤーバー(株式会社丸協技研、ワイヤーバー#5)を用いて展延し、オーブンで110℃、2分間加熱することにより、基材表面をプライマー層でコーティングした。
(3)粘着剤組成物の調製
シラノール末端ポリジメチルシロキサン(商品名:ワッカーエラストマー350N、Wacker chemie AG社製)100質量部に対し、粘着付与剤としてMQ樹脂(商品名:MQ803TF,Wacker Chemie AG社製)60質量部を加え、シリコーン系粘着剤組成物を調製した。
(4)粘着シートの調製
上記プライマー組成物でコーティングされたポリウレタン製の基材の該プライマー上に、またはプライマーで処理されていないポリウレタン製の基材上に、ナイフコーターを用いて粘着剤層の厚さが50μmになるように、上記シリコーン系粘着剤組成物を展延した。展延されたシリコーン系粘着剤組成物に対して、電子線発生装置CB300を用いて、加速電圧(180keV)の条件で電子線(60KGy)を照射することにより、すぐに粘着剤組成物を硬化し、実施例1〜4、比較例1〜4の粘着シートをそれぞれ作製した。
【0048】
得られた実施例1〜4、比較例1〜4の粘着シートと、プライマー組成物P1〜P5との関係は、表2に記載したとおりである。
【0049】
【表2】
【0050】
<投錨性試験>
得られた粘着シートの基材の表面に、両面粘着テープ(商品名:ST−416,3M社製)を用いてステンレスプレートを固定させ、フルオロシリコーンライナーを粘着剤層から剥離した後、露出された粘着剤層の表面に、幅1インチのシリコーンテープ(商品名:8403、3M社製)を固定させて積層体を得た。次に、2kgのローラーを用いて、得られた積層体の各層を充分に圧着させた。続いて、圧着された積層体をそれぞれ下記保存条件1〜3で保存した後、上記シリコーンテープを180°の角度、30cm/分の速度で剥離した時のピール強度(N/インチ)及び外観検査について評価した。
保存条件1:温度23℃、7日間
保存条件2:温度70℃(オーブン使用)、7日間
保存条件3:温度65℃(オーブン使用)、相対湿度80%RH、7日間
【0051】
ピール強度の結果を表3に示し、外観検査の結果を表4に示す。なお、表4中、「A」とは、基材と粘着剤層とがきれいに分離された、すなわち、粘着剤層と基材、粘着剤層とプライマー層、又は、プライマー層と基材のいずれかの投錨性が不充分であったことを意味する。「B」とは、シリコーンテープと粘着剤層とがきれいに分離されたことを意味する。「C」とは、粘着剤層が粘着力を維持した状態で割け、シリコーンテープと基材の両側に粘着剤層が分離したことを意味する。また、表4の数値は、当該試験において、基材と粘着剤層との接面全体の面積を10とした場合に、A、B又はCの状態となった面積の比率を意味する。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
実施例1〜4の粘着シートは、保存条件1〜3のいずれの条件で保存した後においても、充分な投錨性を示した。一方、比較例1〜4の粘着シートでは、基材と粘着剤層が分離する場合が多く、投錨性が不充分であった。
【0055】
試験例2
<プライマー組成物の調製>
プライマー組成物として、試験例1に記載したプライマー組成物P1,P3及びP4を使用した。
【0056】
<第2プライマー組成物の調製>
第2プライマー組成物として、ポリメントNK−350(商品名、株式会社日本触媒製)を希釈して使用した。市販のポリメントNK−350は、固形分30%のトルエン溶液であり、本実施例では、ポリメントNK−350をトルエン/IPA(7:3)の混合溶媒で、固形分10%になるように希釈して使用した。
【0057】
<粘着シートの調製>
(1)基材への第2プライマー層のコーティング
ポリエチレンテレフタレート又は可塑化ポリ塩化ビニル製の基材の表面に、第2プライマー組成物をワイヤーバー(株式会社丸協技研、ワイヤーバー#5)を用いて展延し、オーブンで110℃、2分間加熱することにより、基材表面を第2プライマー層でコーティングした。
(2)基材へのプライマー層のコーティング
(1)で得られた基材のプライマー層上に、プライマー組成物P1,P3及びP4のいずれかをワイヤーバー(株式会社丸協技研、ワイヤーバー#5)を用いて展延し、オーブンで110℃、2分間加熱することにより、第2プライマー層上にプライマーが積層された基材を調製した。
(3)粘着剤組成物の調製
シラノール末端ポリジメチルシロキサン(商品名:ワッカーエラストマー350N、Wacker chemie AG社製)100質量部に対し、粘着付与剤としてMQ樹脂(商品名:MQ803TF,Wacker Chemie AG社製)60質量部を加え、シリコーン系粘着剤組成物を調製した。
(4)粘着シートの調製
(2)で得られた基材のプライマー層上に、ナイフコーターを用いて粘着剤層の厚さが50μmになるように、上記シリコーン系粘着剤組成物を展延した。展延されたシリコーン系粘着剤組成物に対して、電子線発生装置CB300を用いて、加速電圧(180keV)の条件で電子線(60KGy)を照射することにより、すぐに粘着剤組成物を硬化し、実施例5〜8の粘着シートをそれぞれ作製した。なお、比較例5及び6の基材には、プライマー層及び第2プライマー層を有しない基材を使用し、比較例7の基材には、第2プライマー層のみをコーティングさせた基材を用いた。
【0058】
得られた実施例5〜8、比較例5〜7の粘着シートと、プライマー組成物P1、P3及びP4との関係は、表5に記載したとおりである。
【0059】
【表5】
【0060】
<投錨性試験>
得られた粘着シートの基材の表面に、両面粘着テープ(商品名:ST−416,3M社製)を用いてステンレスプレートを固定させ、フルオロシリコーンライナーを粘着剤層から剥離した後、露出された粘着剤層の表面に、幅1インチのシリコーンテープ(商品名:8403、3M社製)を固定させて積層体を得た。次に、2kgのローラーを用いて、得られた積層体の各層を充分に圧着させた。続いて、圧着された積層体をそれぞれ下記保存条件1〜3で保存した後、上記シリコーンテープを180°の角度、30cm/分の速度で剥離した時のピール強度(N/インチ)及び外観検査について評価した。
保存条件1:温度23℃、7日間
保存条件2:温度70℃(オーブン使用)、7日間
保存条件3:温度65℃(オーブン使用)、相対湿度80%RH、7日間
【0061】
ピール強度の結果を表6に示し、外観検査の結果を表7に示す。なお、表7中、「A」とは、基材と粘着剤層とがきれいに分離された、すなわち、粘着剤層と基材、粘着剤層とプライマー層、又は、プライマー層と基材のいずれかの投錨性が不充分であったことを意味する。「B」とは、シリコーンテープと粘着剤層とがきれいに分離されたことを意味する。「C」とは、粘着剤層が割け、シリコーンテープと基材の両側に粘着剤層の一部が分離したことを意味する。また、表7の数値は、当該試験において、基材と粘着剤層との接面全体の面積を10とした場合に、A、B又はCの状態となった面積の比率を意味する。
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】
実施例5〜8の粘着シートは、保存条件1〜3のいずれの条件で保存した後においても、充分な投錨性を示した。一方、比較例5〜7の粘着シートでは、基材と粘着剤層が分離する場合が多く、投錨性が不充分であった。