特許第6573488号(P6573488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573488
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】暖房システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20060101AFI20190902BHJP
   F24D 7/00 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   F24D3/00 J
   F24D7/00 F
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-114906(P2015-114906)
(22)【出願日】2015年6月5日
(65)【公開番号】特開2017-3144(P2017-3144A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 将浩
(72)【発明者】
【氏名】所 寿洋
(72)【発明者】
【氏名】小川 純一
(72)【発明者】
【氏名】山田 武史
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−108642(JP,A)
【文献】 特開2011−027368(JP,A)
【文献】 特開2004−205138(JP,A)
【文献】 特開2014−109411(JP,A)
【文献】 特開2000−028185(JP,A)
【文献】 特開2015−090241(JP,A)
【文献】 特開2013−217596(JP,A)
【文献】 特開2011−043321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/00
F24D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常運転モードと、前記通常運転モードよりも急速に暖房するホットダッシュ運転モードとを備えている暖房システムであって、
熱媒体を加熱するガス熱源機と、
熱媒体を加熱するヒートポンプと、
前記ガス熱源機および/または前記ヒートポンプによって加熱された熱媒体の熱によって暖房対象を暖房する暖房機と、
制御手段を備えており、
前記制御手段は、前記ホットダッシュ運転モードにおいて、少なくとも前記ガス熱源機によって熱媒体を加熱する第1の運転態様で暖房を行い、その後に前記ホットダッシュ運転モードにおいて、前記ヒートポンプによって熱媒体を加熱する第2の運転態様で暖房を行うように、前記ガス熱源機および前記ヒートポンプを制御するように構成されており、
前記制御手段は、前記ホットダッシュ運転モードにおいて、暖房対象の暖房負荷の大きさに基づいて、前記第1の運転態様から前記第2の運転態様に切り換えるタイミングを決定するように構成されている、暖房システム。
【請求項2】
暖房対象の温度を検知する温度検知手段を更に備えており、
前記制御手段が、前記温度検知手段によって検知された温度に基づいて単位時間あたりの温度上昇量を演算し、演算した単位時間あたりの前記温度上昇量に基づいて暖房対象の暖房負荷の大きさを判断するように構成されている、請求項1に記載の暖房システム。
【請求項3】
前記制御手段が、前記第2の運転態様において、前記温度検知手段によって検知された温度に基づいて前記ヒートポンプを制御する、請求項2に記載の暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている暖房システムは、熱媒体を加熱するヒートポンプと、ヒートポンプによって加熱された熱媒体の熱によって暖房対象を暖房する暖房機を備えている。また、特許文献1の暖房システムは、通常運転モードと、通常運転モードよりも急速で暖房するホットダッシュ運転モードを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−085662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の暖房システムでは、ヒートポンプによって熱媒体を加熱している。ヒートポンプによって熱媒体を加熱する場合、加熱の立ち上がりに時間がかかるので、暖房対象の温度が上昇するときの温度上昇率が低くなるという問題があった。さらに、ヒートポンプによって単位時間あたりに熱媒体に供給される熱量が小さい場合、暖房対象の温度が上昇するときの温度上昇率がさらに低くなるという問題があった。特にホットダッシュ運転モードでは暖房対象の温度を急速に高めることが要求されているので、暖房対象の温度上昇率が低くなることは問題であった。
【0005】
暖房対象の温度を急速に高めるためには、ヒートポンプに代えてガス熱源機によって熱媒体を加熱する方法が考えられる。ガス熱源機によって熱媒体を加熱する場合、加熱の立ち上がりが早いため、暖房対象の温度を急速に高めることができる。さらに、単位時間あたりに熱媒体に供給される熱量がさらに大きいガス熱源機を用いると、暖房対象の温度をさらに急速に高めることができる。しかしながら、ガス熱源機ではヒートポンプよりもエネルギー効率が低いという問題があった。
【0006】
そこで本明細書は、エネルギー効率の低下を可能な限り抑制しつつ、暖房対象の温度を急速に高めることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示する暖房システムは、通常運転モードと、通常運転モードよりも急速に暖房するホットダッシュ運転モードとを備えている。この暖房システムは、熱媒体を加熱するガス熱源機と、熱媒体を加熱するヒートポンプと、ガス熱源機および/またはヒートポンプによって加熱された熱媒体の熱によって暖房対象を暖房する暖房機と、制御手段を備えている。制御手段は、ホットダッシュ運転モードにおいて、少なくともガス熱源機によって熱媒体を加熱する第1の運転態様で暖房を行い、その後にホットダッシュ運転モードにおいて、ヒートポンプによって熱媒体を加熱する第2の運転態様で暖房を行うように、ガス熱源機およびヒートポンプを制御するように構成されている。また、制御手段は、ホットダッシュ運転モードにおいて、暖房対象の暖房負荷の大きさに基づいて、第1の運転態様から第2の運転態様に切り換えるタイミングを決定するように構成されている。
【0008】
上記の暖房システムでは、ホットダッシュ運転モードにおいて、始めから終わりまでヒートポンプのみ(第2の運転態様)によって熱媒体を加熱するのではなく、最初にガス熱源機(第1の運転態様)によって熱媒体を加熱している。ガス熱源機によって熱媒体を加熱する場合、加熱の立ち上がりが早く、単位時間あたりに熱媒体に供給される熱量が大きい。そのため、暖房対象を暖房するときに最初にガス熱源機によって熱媒体を加熱することによって、最初の段階で暖房対象の温度を急速に高めることができる。また、ガス熱源機によって熱媒体を加熱し続けるのではなく、ガス熱源機の後にヒートポンプによって熱媒体を加熱している。ヒートポンプによって熱媒体を加熱する場合、ガス熱源機の場合よりもエネルギー効率が高くなる。始めから終わりまでガス熱源機によって熱媒体を加熱し続けるとエネルギー効率が低下するが、ガス熱源機の後にヒートポンプによって熱媒体を加熱することによって、エネルギー効率の低下を抑制できる。
【0009】
また、暖房対象を暖房するとき、暖房対象の暖房負荷が大きい場合は暖房対象の温度が高くなり難く、一方、暖房対象の暖房負荷が小さい場合は暖房対象の温度が高くなり易い。そこで、上記の暖房システムでは、暖房対象の暖房負荷の大きさに基づいて第1の運転態様から第2の運転態様に切り換えるタイミングを決定している。このような構成によれば、暖房対象の暖房負荷が大きい場合は、第1の運転態様から第2の運転態様に切り換えるタイミングを遅くすることができる。これによって、暖房対象の温度が高くなり難くい場合は、熱量が大きいガス熱源機によって熱媒体を加熱する時間(第1の運転態様の時間)を長くすることができる。その結果、暖房対象の温度が高くなり難くい場合であっても、熱量が大きいガス熱源機によって熱媒体を加熱する割合を大きくできるので、暖房対象の温度を急速に高めることができる。また、その後は第1の運転態様から第2の運転態様に切り換えてヒートポンプによって熱媒体を加熱するので、エネルギー効率の低下を抑制できる。
【0010】
一方、暖房対象の暖房負荷が小さい場合は、第1の運転態様から第2の運転態様に切り換えるタイミングを早くすることができる。これによって、暖房対象の温度が高くなり易い場合は、熱量が大きいガス熱源機によって熱媒体を加熱する時間(第1の運転態様の時間)を短くすることができる。暖房対象の温度が高くなり易い場合は、熱量が大きいガス熱源機によって熱媒体を加熱すると暖房対象の温度が急速に高まる。そこで、ガス熱源機によって熱媒体を加熱する割合を小さくして、ヒートポンプによって熱媒体を加熱する第2の運転態様の割合を大きくする。その結果、エネルギー効率の低下を可能な限り抑制しつつ、暖房対象の温度を急速に高めることができる。
【0011】
上記の暖房システムは、暖房対象の温度を検知する温度検知手段を更に備えていてもよい。また、制御手段が、温度検知手段によって検知された温度に基づいて単位時間あたりの温度上昇量を演算し、演算した単位時間あたりの温度上昇量に基づいて暖房対象の暖房負荷の大きさを判断するように構成されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、暖房対象の暖房負荷の大きさを正確に判断することができ、それに基づいて第1の運転態様から第2の運転態様に切り換えることができる。
【0013】
また、上記の暖房システムにおいて、制御手段は、第2の運転態様において、温度検知手段によって検知された温度に基づいてヒートポンプを制御してもよい。
【0014】
この構成によれば、暖房対象の温度に基づいてヒートポンプを制御できるので、暖房運転におけるムダを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例に係る暖房システムを模式的に示す図である。
図2】暖房運転時に制御装置が実行する処理を示すフローチャートである。
図3】ホットダッシュ運転モードにおいて制御装置が実行する処理を示すフローチャートである。
図4】暖房運転時における水と居室の温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、本実施例に係る暖房システム2は、ヒートポンプ系統106と、暖房系統108と、制御装置100とを備えている。
【0017】
ヒートポンプ系統106は、ヒートポンプ50を備える。ヒートポンプ50は、冷媒(例えば、フロンガスR410A等)を循環させるための冷媒循環路52と、熱交換器(蒸発器)54と、ファン56と、圧縮器62と、流体熱交換器(凝縮器)58と、膨張弁60とを備えている。冷媒循環路52は、流体熱交換器58内を通過している。また、熱交換器54と、圧縮器62と、膨張弁60とは、冷媒循環路52内に組み込まれている。このような構成を備えるヒートポンプ50を作動させることにより、流体熱交換器58を通過する冷媒循環路52内に高温高圧の冷媒を送り込むことができる。
【0018】
暖房系統108は、シスターン70と、暖房用水循環路71と、ガス熱源機82と、6個の暖房機76a、76b、76c、76d、76e、76fと、を備えている。以下では、暖房機76a〜76fを単に暖房機76と呼ぶ場合がある。暖房用水循環路71は、暖房往路72と、暖房復路84と、調整弁90と、熱回収路88と、バイパス路94と、循環流路96と、を備えている。暖房用水循環路71は、シスターン70内の水を循環させるための水路である。暖房用水循環路71内の水は、ガス熱源機82および/またはヒートポンプ50によって加熱される。
【0019】
シスターン70は、上部が開放されている容器であり、内部に熱媒体である水を貯留している。シスターン70には、循環流路96の下流端と、暖房往路72の上流端とが接続されている。シスターン70内には、循環流路96から水が流入する。シスターン70内の水は、暖房往路72に導入される。
【0020】
暖房往路72は、上流端がシスターン70に接続され、下流端が6本に分岐して各暖房機76a〜76fの往き口に接続されている。暖房往路72には、循環ポンプ74が介装されている。循環ポンプ74は、暖房往路72内の水を下流側に送り出すポンプである。作動する暖房機76の数に応じて、暖房用水循環路71内を循環する水の流量が変化する。即ち、循環ポンプ74の単位時間当たりの回転数が一定であっても、作動する暖房機76の数が増加すると、暖房往路72の抵抗が減少して、暖房用水循環路71内を循環する水の流量が増加する。暖房機76a〜76fより上流側の暖房往路72には、ガス熱源機82が介装されている。ガス熱源機82は、ガスを燃焼した熱によって暖房往路72内の水を加熱する。ガス熱源機82は、ヒートポンプ50よりも、暖房用水循環路71内を循環する水を加熱する能力が高い。言い換えると、ガス熱源機82は、ヒートポンプ50よりも、単位時間当りに水に供給される熱量が大きい。ガス熱源機82によって水を加熱する場合、ヒートポンプ50によって水を加熱する場合よりも加熱の立ち上がりが早い。ガス熱源機82で加熱された水は、各暖房機76a〜76fに供給される。また、暖房往路72のガス熱源機82の下流側には、サーミスタ78が介装されている。サーミスタ78は、ガス熱源機82を通過した後の暖房往路72内の水の温度を検知する。
【0021】
各暖房機76a〜76fは、暖房往路72から供給される水の熱を利用して、居室20を暖房する端末である。各暖房機76a〜76fは、いずれも、互いに並列に配置されている。作動している各暖房機76a〜76fには、暖房往路72から水が供給される。一方、停止している(作動していない)各暖房機76a〜76fには、暖房往路72から水が供給されない。暖房往路72から供給される水は、暖房に利用されると、熱を奪われ、比較的低温の水となる。暖房に利用された後の比較的低温の水は、暖房復路84に導入される。
【0022】
暖房機76は、居室20に設置されている。例えば、暖房機76は、居室20の床の下に設置されている。暖房機76が作動すると、居室20が暖房される。居室20には、サーミスタ21が設置されている。サーミスタ21は、居室20内の温度を検知する。
【0023】
暖房復路84は、上流端が6本に分岐して各暖房機76a〜76fの戻り口に接続され、下流端が調整弁90を介してバイパス路94の上流端及び熱回収路88の上流端に接続されている。暖房復路84には、サーミスタ86が介装されている。サーミスタ86は、暖房復路84内の水の温度(即ち、流体熱交換器58に送り込まれる水の温度)を検知する。
【0024】
熱回収路88は、上流端が調整弁90を介してバイパス路94の上流端及び暖房復路84の下流端に接続され、下流端がバイパス路94の下流端及び循環流路96の上流端に接続されている。熱回収路88は、流体熱交換器58を通過している。そのため、ヒートポンプ50を作動させると、熱回収路88内の水が流体熱交換器58で加熱される。熱回収路88の流体熱交換器58の下流側には、サーミスタ92が介装されている。サーミスタ92は、流体熱交換器58を通過した後の熱回収路88内の水の温度を検知する。
【0025】
バイパス路94は、上流端が調整弁90を介して暖房復路84の下流端及び熱回収路88の上流端に接続され、下流端が熱回収路88の下流端及び循環流路96の上流端に接続されている。即ち、バイパス路94は、流体熱交換器58の上流側と下流側とをバイパスする。
【0026】
調整弁90は、暖房復路84の下流端と、熱回収路88の上流端と、バイパス路94の上流端との接続部分に取り付けられている。調整弁90は、その開度を変化させることによって、熱回収路88を通過する水の流量(流体熱交換器58を通過する水の流量)と、バイパス路94を通過する水の流量との割合を変化させることができる。本実施例の調整弁90には、例えば三方弁が用いられる。調整弁90は、作動する暖房機76の数に応じて開度を変化させることができる。本実施例では、全ての暖房機76を使用する場合について説明する。また、暖房用水循環路71を循環する水の全量が熱回収路88(流体熱交換器58)を通過し、バイパス路94を全く通過しない場合について説明する。
【0027】
循環流路96は、上流端が熱回収路88の下流端及びバイパス路94の下流端に接続され、下流端がシスターン70に接続されている。循環流路96には、サーミスタ98が介装されている。サーミスタ98は、循環流路96内の水の温度を検知する。
【0028】
制御装置100は、ヒートポンプ系統106、及び、暖房系統108と電気的に接続されており、各構成要素の動作を制御する。
【0029】
次に、本実施例の暖房システム2の動作について説明する。
【0030】
(暖房運転)
暖房運転は、暖房機76を作動させて居室20(暖房対象の一例)を暖房する運転である。図2は、暖房運転時に制御装置100が実行する処理を示すフローチャートである。
【0031】
ユーザによって暖房運転の実行が指示されると、図2のS10では、制御装置100は、まず、暖房設定温度を認識する。暖房設定温度は、ユーザが居室20の温度として要求している温度である。暖房設定温度は、多段階のレベルに区分されている。多段階のレベルは、例えば制御装置100に電気的に接続されているリモコン等の入力装置から入力される。
【0032】
続くS11では、制御装置100は、調整弁90の開度を調整する。本実施例では、制御装置100は、暖房用水循環路71を循環する水の全量が熱回収路88(流体熱交換器58)を通過し、バイパス路94を水が通過しないように調整弁90の開度を調整する。これにより、シスターン70内の水が、シスターン70から、暖房往路72、暖房機76、暖房復路84、熱回収路88、及び、循環流路96をこの順で通過してシスターン70に戻る経路が形成される。
【0033】
続くS12では、制御装置100は、所定の回転数で循環ポンプ74を作動させる。循環ポンプ74を作動させることにより、上記の経路内を水が循環する。
【0034】
続くS13では、制御装置100は、ヒートポンプ50を作動させる。ヒートポンプ50が作動することにより、流体熱交換器58を通過する冷媒循環路52内の冷媒が、高温高圧の気体状態になる。また、暖房用水循環路71を循環する水が流体熱交換器58を通過する際に、冷媒循環路52内の冷媒の熱によって加熱される。ヒートポンプ50によって加熱された水は、暖房機76に供給される。暖房機76は、供給された水の熱を利用して、居室20を暖房する。ヒートポンプ50のみによって水を加熱するだけでは、加熱の立ち上がりに時間がかかり、単位時間あたりに水に供給される熱量が小さいので、居室20の温度が上昇するときの温度上昇率が低くなる。
【0035】
そこで、続くS14では、制御装置100は、ホットダッシュ運転モードを開始する。ホットダッシュ運転モードは、後述の通常運転モードよりも居室20を急速に暖房する運転である。図3は、ホットダッシュ運転モードにおいて制御装置100が実行する処理を示すフローチャートである。
【0036】
(ホットダッシュ運転モード)
ホットダッシュ運転モードにおいて、S21では、まず、制御装置100は、ガス熱源機82を作動させる。これにより、暖房往路72を通過する水が、ガス熱源機82によって加熱される。ガス熱源機82は、サーミスタ78によって検知される水の温度が第1の温度(例えば72℃)になるように水を加熱する(図4参照)。ガス熱源機82によって加熱された水は、暖房機76に供給される。暖房機76は、供給された水の熱を利用して、居室20を暖房する。S13とS21によって、暖房用水循環路71を循環する水が、ガス熱源機82およびヒートポンプ50によって加熱される(第1の運転態様)。
【0037】
続くS22では、制御装置100は、ガス熱源機82を作動させてから第1の所定時間(例えば3分)が経過したか否かを判断する。第1の所定時間が経過している場合、制御装置100はS22でYesと判断して、S23に進む。一方、第1の所定時間が経過していない場合、制御装置100はS22でNoと判断して、そのまま待機する。
【0038】
S23では、制御装置100は、サーミスタ21によって検知された温度に基づいて、単位時間あたりの温度上昇量を演算する。サーミスタ21は、居室20の温度を継続的に検知している。したがって、居室20の温度の単位時間あたりの上昇量(すなわち、温度上昇率ΔT)が演算される。
【0039】
制御装置100は、居室20の温度の単位時間あたりの上昇量(すなわち、温度上昇率ΔT)によって、居室20の暖房負荷を判断する。温度上昇率ΔTが大きい場合、居室20は暖まり易いので、居室20の暖房負荷が小さいと判断できる。一方、温度上昇率ΔTが小さい場合、居室20は暖まり難いので、居室20の暖房負荷が大きいと判断できる。
【0040】
S24では、制御装置100は、演算された温度上昇率ΔT(単位時間あたりの温度上昇量)が、第1の温度上昇率T1(例えば0.5℃/min)以上であるか否かを判断する。演算された温度上昇率ΔTが第1の温度上昇率T1以上である場合、制御装置100はS24でYesと判断して、S25に進む。この場合、温度上昇率ΔTが比較的大きいので、制御装置100は、居室20の暖房負荷が比較的小さいと判断できる。一方、演算された温度上昇率ΔTが第1の温度上昇率T1以上でない(第1の温度上昇率T1未満である)場合、制御装置100はS24でNoと判断して、S41に進む。この場合、温度上昇率ΔTが比較的小さいので、制御装置100は、居室20の暖房負荷が比較的大きいと判断できる。
【0041】
S25では、制御装置100は、ガス熱源機82を作動させてから第2の所定時間(例えば5分)が経過したか否かを判断する。第2の所定時間が経過している場合、制御装置100はS25でYesと判断して、S26に進む。一方、第2の所定時間が経過していない場合、制御装置100はS25でNoと判断して、そのまま待機する。
【0042】
S41では、制御装置100は、演算された温度上昇率ΔT(単位時間あたりの温度上昇量)が、第2の温度上昇率T2(例えば0.2℃/min)以上であるか否かを判断する。第2の温度上昇率T2は、第1の温度上昇率T1より小さい値である。演算された温度上昇率ΔTが第2の温度上昇率T2以上である場合、制御装置100はS41でYesと判断して、S42に進む。一方、演算された温度上昇率ΔTが第2の温度上昇率T2以上でない(第2の温度上昇率T2未満である)場合、制御装置100はS41でNoと判断して、S51に進む。S41では、制御装置100は、S25と同様に、温度上昇率ΔTに基づいて居室20の暖房負荷の大きさを判断できる。
【0043】
S42では、制御装置100は、ガス熱源機82を作動させてから第3の所定時間(例えば10分)が経過したか否かを判断する。第3の所定時間(10分)は、第2の所定時間(5分)より長い時間である。第3の所定時間が経過している場合、制御装置100はS42でYesと判断して、S26に進む。一方、第3の所定時間が経過していない場合、制御装置100はS42でNoと判断して、そのまま待機する。
【0044】
S51では、制御装置100は、ガス熱源機82を作動させてから第4の所定時間(例えば15分)が経過したか否かを判断する。第4の所定時間(15分)は、第3の所定時間(10分)より長い時間である。第4の所定時間が経過している場合、制御装置100はS51でYesと判断して、S26に進む。一方、第4の所定時間が経過していない場合、制御装置100はS51でNoと判断して、そのまま待機する。
【0045】
S26では、制御装置100は、ガス熱源機82を停止させる。これにより、暖房往路72を通過する水が、ガス熱源機82によって加熱されなくなる。よって、暖房用水循環路71を循環する水は、ヒートポンプ50のみによって加熱される(第2の運転態様)。
【0046】
上記のS24、S25、S41、S42、S51、S26では、制御装置100は、温度上昇率ΔT(居室20の温度の単位時間あたりの上昇量)に基づいて居室20の暖房負荷の大きさを判断し、居室20の暖房負荷の大きさに基づいて第1の運転態様から第2の運転態様に切り換えるタイミングを決定している。
【0047】
S26でガス熱源機82が停止した後、続くS27では、制御装置100は、ヒートポンプ50を制御する。制御装置100の制御によって、ヒートポンプ50は、サーミスタ92によって検知される水の温度が第2の温度(例えば60℃)となるように水を加熱する(図4参照)。第2の温度(60℃)は、第1の温度(72℃)より低い温度である。ヒートポンプ50によって加熱された水は、暖房機76に供給される。暖房機76は、供給された水の熱を利用して、居室20を暖房する。
【0048】
続くS28では、制御装置100は、サーミスタ21の検知温度が暖房設定温度−α(例えば−2℃)以上であるか否かを判断する。サーミスタ21の検知温度が暖房設定温度−α以上である場合、制御装置100はS28でYesと判断して、S29に進む。一方、サーミスタ21の検知温度が暖房設定温度−α以上でない(暖房設定温度−α未満である)場合、制御装置100はS28でNoと判断して、そのまま待機する。
【0049】
S29では、制御装置100は、ヒートポンプ50を制御する。制御装置100の制御によって、ヒートポンプ50は、サーミスタ92によって検知される水の温度が第3の温度(例えば50℃)となるように水を加熱する(図4参照)。第3の温度(50℃)は、第2の温度(60℃)より低い温度である。ヒートポンプ50によって加熱された水は、暖房機76に供給される。暖房機76は、供給された水の熱を利用して、居室20を暖房する。
【0050】
続くS30では、制御装置100は、サーミスタ21の検知温度が暖房設定温度−β(例えば−1℃)以上であるか否かを判断する。β(1℃)は、α(2℃)より小さい値である。サーミスタ21の検知温度が暖房設定温度−β以上である場合、制御装置100はS30でYesと判断して、S31に進む。一方、サーミスタ21の検知温度が暖房設定温度−β以上でない(暖房設定温度−β未満である)場合、制御装置100はS30でNoと判断して、そのまま待機する。
【0051】
S31では、制御装置100は、ヒートポンプ50を制御する。制御装置100の制御によって、ヒートポンプ50は、サーミスタ92によって検知される水の温度が第4の温度(例えば40℃)となるように水を加熱する(図4参照)。第4の温度(40℃)は、第3の温度(50℃)より低い温度である。ヒートポンプ50によって加熱された水は、暖房機76に供給される。暖房機76は、供給された水の熱を利用して、居室20を暖房する。
【0052】
続くS32では、制御装置100は、ガス熱源機82を作動させてから第5の所定時間(例えば30分)が経過したか否かを判断する。第5の所定時間が経過している場合、制御装置100はS32でYesと判断して、ホットダッシュ運転モードを終了する。一方、第5の所定時間が経過していない場合、制御装置100はS32でNoと判断して、そのまま待機する。
【0053】
ホットダッシュ運転モードが終了すると、図2のS15に示すように、制御装置100は、通常運転モードを開始する。通常運転モードは、ホットダッシュ運転モードよりも緩慢に居室20を暖房する運転である。通常運転モードでは、制御装置100は、ヒートポンプ50で水を加熱しながら、予め設定されているデューティ比に基づいて暖房機76への水の供給を制御する。通常運転モードでは、暖房負荷に対してヒートポンプ50の熱量が不足する場合は、その不足分をガス熱源機82によって加熱してもよい。その後、暖房運転の終了が指示されると、通常運転モードが終了する。
【0054】
以上、本実施例の暖房システム2の構成及び運転内容について説明した。以上の説明から明らかなように、本実施例の暖房システム2は、図1に示すように、水(熱媒体の一例)を加熱するガス熱源機82と、水を加熱するヒートポンプ50と、ガス熱源機82および/またはヒートポンプ50によって加熱された水の熱によって居室20(暖房対象の一例)を暖房する暖房機76と、制御装置100を備えている。また、暖房システム2は、図2示すように、通常運転モードと、通常運転モードよりも急速に暖房するホットダッシュ運転モードとを備えている。制御装置100は、ホットダッシュ運転モードにおいて、最初にガス熱源機82によって水を加熱する第1の運転態様で暖房を行い、その後にヒートポンプ50のみによって水を加熱する第2の運転態様で暖房を行うように、ガス熱源機82およびヒートポンプ50を制御するように構成されている。また、制御装置100は、ホットダッシュ運転モードにおいて、居室20の暖房負荷の大きさに基づいて、第1の運転態様から第2の運転態様に切り換えるタイミングを決定するように構成されている。
【0055】
このような構成によれば、ホットダッシュ運転モードにおいて、ヒートポンプ50のみによって水を加熱するのではなく、最初にガス熱源機82によって水を加熱している。ガス熱源機82によって水を加熱すると、加熱の立ち上がりが速く、単位時間あたりに水に供給される熱量が大きくなるので、水の温度を急速に高めることができ、その熱によって居室20を急速に暖房することができる。また、上記の構成によれば、ガス熱源機82によって水を加熱し続けることなく、暖房負荷の大きさに基づいて、ガス熱源機82の後にヒートポンプ50のみによって水を加熱している。ヒートポンプ50によって水を加熱すると、ガス熱源機82によって水を加熱するよりもエネルギー効率が高くなる。よって、ガス熱源機82によって水を加熱する第1の運転態様を続けるとエネルギー効率が低下するが、途中でヒートポンプ50のみによって水を加熱する第2の運転態様に切り換えるので、エネルギー効率の低下を抑制できる。
【0056】
また、上記の構成では、居室20の暖房負荷の大きさに基づいて第1の運転態様から第2の運転態様に切り換えるタイミングを決定している。したがって、例えば居室20の暖房負荷が大きい場合は、ガス熱源機82からヒートポンプ50に切り換えるタイミングを遅くすることができる。これによって、居室20の温度が高くなり難い場合は、熱量が大きいガス熱源機82によって水を加熱する割合を大きくすることができ、居室20の温度を急速に高めることができる。また、ガス熱源機82からヒートポンプ50に切り換えることによって、エネルギー効率の低下を抑制できる。一方、居室20の暖房負荷が小さい場合は、ガス熱源機82からヒートポンプ50に切り換えるタイミングを早くすることができる。この場合は、居室20の温度が高くなり易いので、熱量が大きいガス熱源機82によって水を加熱すると居室20の温度を急速に高まる。そこで、ガス熱源機82によって水を加熱する割合を小さくすることによって、エネルギー効率の低下を可能な限り抑制しつつ、暖房対象の温度を急速に高めることができる。
このように、上記の構成によれば、ホットダッシュ運転モードにおいて、ガス熱源機82によって水を加熱する第1の運転態様で暖房を行い、その後にヒートポンプ50によって水を加熱する第2の運転態様で暖房を行う。また、ホットダッシュ運転モードにおいて、居室20の暖房負荷の大きさに基づいて、第1の運転態様から第2の運転態様に切り換えるタイミングを決定している。このように、第1の運転態様と第2の運転態様を使い分けることによって、エネルギー効率の低下を可能な限り抑制しつつ、暖房対象の温度を急速に高めることができる。
【0057】
また、上記の実施例では、居室20の温度を検知するサーミスタ21を更に備えており、制御装置100が、サーミスタ21によって検知された温度に基づいて単位時間あたりの温度上昇量を演算し、それに基づいて居室20の暖房負荷の大きさを判断している。この構成によれば、居室20の暖房負荷の大きさを正確に判断することができ、それに基づいてガス熱源機82からヒートポンプ50に切り換えることができる。
【0058】
また、上記の実施例では、制御装置100が、第2の運転態様において、サーミスタ21によって検知された温度に基づいてヒートポンプ50を制御している。この構成によれば、居室20の温度に基づいてヒートポンプ50を制御できるので、居室20を暖房するときに適切な温度で暖房することができ、暖房運転におけるムダを少なくすることができる。
【0059】
以上、一実施例について説明したが、具体的な態様は上記実施例に限定されるものではない。上記の実施例では、暖房対象の暖房負荷の大きさを判断する構成の一例として居室20の温度を検知する構成について説明したが、暖房対象の暖房負荷の大きさを判断する構成はこれに限定されるものではない。例えば、暖房対象の暖房負荷の大きさを判断する構成の他の一例としては床の温度を検知する構成が挙げられる。床を暖房することによって、その床が設置されている居室を暖房する。この構成では、制御装置100は、検知された床の温度に基づいて床の温度上昇率を演算し、床の温度上昇率に基づいて暖房対象の暖房負荷の大きさを判断する。床の温度を検知するときは、床の複数の箇所にサーミスタを配置し、所定時間毎に床の温度を検知して、複数のサーミスタによって床全体の平均温度を検知する。床の温度と居室の温度は相関している。
【0060】
また、上記の実施例では、第1の運転態様において、ガス熱源機82とヒートポンプ50によって水を加熱していたが、この構成に限定されるものではない。他の実施例では、第1の運転態様において、ガス熱源機82のみによって水を加熱してもよい。そして、第2の運転態様において、1段階でヒートポンプ50のみによって水を加熱してもよい。
【0061】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0062】
2 :暖房システム
20 :居室
21 :サーミスタ
50 :ヒートポンプ
52 :冷媒循環路
54 :熱交換器
56 :ファン
58 :流体熱交換器
60 :膨張弁
62 :圧縮器
70 :シスターン
71 :暖房用水循環路
72 :暖房往路
74 :循環ポンプ
76 :暖房機
78 :サーミスタ
82 :ガス熱源機
84 :暖房復路
86 :サーミスタ
88 :熱回収路
90 :調整弁
92 :サーミスタ
94 :バイパス路
96 :循環流路
98 :サーミスタ
100 :制御装置
106 :ヒートポンプ系統
108 :暖房系統
図1
図2
図3
図4