【実施例1】
【0014】
図1〜
図9を用いて第1実施例を説明する。
図1は、作業支援システム1の全体概要を示す説明図である。作業支援システム1は、作業現場3で使用する作業装置21の構成(機能を含む)を決定し、さらにその動作も決定する。
【0015】
組立・保管所2は、少なくとも一つの作業装置21を組み立てたり、組立済の作業装置21を保管する場所である。
図1の例では、組立・保管所2に、複数の作業装置21(1)〜21(n)が予め組み立てられた状態で保管されている。組立・保管所2は、作業支援システム1や作業現場3の近くに設けてもよいし、作業支援システム1や作業現場3から離れた場所に設けてもよい。
【0016】
作業現場3は、上述のように例えば発電所、トンネル、港湾、空港、商業施設、工場などの各種建築物である。作業現場3は、完成状態でもよいし、建築途中の未完成状態でもよいし、自然災害などで破損した状態でもよい。
【0017】
作業現場3は、作業対象の物体31Aと、作業対象以外の物体31Bとを含む。作業対象であるか否かを区別しない場合、物体31と呼ぶ。物体31には、例えば、梁、壁、床、天井、窓枠などの構造物や、パイプ、タンク、各種設備などの設備がある。作業現場3がどのような物体31を含むかは、その作業現場3の目的や性質などで決まる。各物体31は、或る作業では作業対象となり、他の作業では作業対象とならない。つまり、作業の進捗状況等に応じて、同じ物体31が作業対象となったりならなかったりする。
【0018】
作業現場3は、その構成が既知の場合と、未知の場合とがある。例えば、設備の入替や新設備の導入、旧設備の廃棄などの生じていない通常の場合は、作業現場3の構成は既知である。通常時では、作業現場3は、その設計データ通りの構成を有している。
【0019】
これに対し、作業現場3の構成が変更されており、その構成変更が設計データに反映されていないような場合は、異常な場合である。例えば、設備が入れ替わったり、新設備が導入されたり、旧設備が廃棄されたり、設備の配置レイアウトが変更されたりした場合であって、かつそれらの変更が設計データに反映されていない場合は、異常時である。さらには、地震や事故などで作業現場3が損傷した場合も、異常時である。
【0020】
本実施例の作業支援システム1は、後述のように、作業現場3の異常時には、作業周辺環境を認識するためのセンサ群4を作業現場3へ投入して、異常の発生している作業現場3の状況を把握する。そして、作業支援システム1は、作業周辺環境に応じた構成を有する作業装置21を選択し、その動作も決定する。
【0021】
作業支援システム1は、例えば、マイクロプロセッサ、主メモリ、補助記憶装置、入出力回路、通信インターフェースなどを有するコンピュータを用いて構成される。作業支援システム1は、一つのコンピュータから構成してもよいし、複数のコンピュータを連携させることで構成してもよい。マイクロプロセッサは、所定のコンピュータプログラムをメモリに読み込んで実行することで、後述する各機能11〜14を実現する。
【0022】
作業支援システム1の機能は、作業装置準備部10Aと作業装置制御部10Bとに大別できる。作業装置準備部10Aは、作業現場3へ投入する作業装置21を用意する機能である。作業装置制御部10Bは、作業装置21の動作を決定し、その作業装置21へ制御信号を送って作動させる機能である。
【0023】
作業装置準備部10Aは、例えば、作業周辺環境認識部11と、作業装置構成決定部12を含む。作業周辺環境認識部11は、作業現場3において作業装置21が作業する領域の環境と、作業装置21が作業領域に至るまでの経路の付近の環境を認識する。作業周辺環境認識部11は、作業現場3に投入された環境認識センサ4からの信号と、データベース15に格納されている設計データD11や作業内容D12(いずれも
図4で後述)とに基づいて、作業周辺環境を認識する。
【0024】
作業装置構成決定部12は、作業周辺環境認識部11による認識結果や作業内容に基づいて、作業現場3へ投入すべき作業装置21の構成を決定する。例えば、作業内容が作業対象物体31Aの切断や溶接などの加工作業である場合、作業装置構成決定部12は、その作業内容に応じたツールを持つモジュール22を選択する。作業内容が作業現場3の特定箇所での計測である場合、作業装置構成決定部12は、計測対象の物理量を観測するためのセンサを持つモジュール22を選択する。
【0025】
さらに、作業対象領域への移動経路が複数回折れ曲がっている場合、作業装置構成決定部12は、移動経路の折れ曲がり回数に応じた間接を持つようにモジュール23,24を複数選択する。このように、作業装置構成決定部12は、作業周辺環境の認識結果として得られる三次元構造物マップや作業内容に応じて、作業装置21が備えるべき構成(機能を含む)を決定することができる。
【0026】
作業装置制御部10Bは、例えば、作業装置構成認識部13と、装置動作生成部14を備えている。作業装置構成認識部13は、組立・保管所2に保管されている作業装置21のうち、作業装置構成決定部12の決定した構成を備えている作業装置21の構成や状態を検査する。
【0027】
作業装置構成認識部13は、保管されている複数の作業装置21(1)〜21(n)のうち作業装置構成決定部12により決定された構成(機能を含む。以下同様)を満たす作業装置21、または、作業装置構成決定部12により決定された構成に従って新たに組み立てられた作業装置21の、構成および状態を確認する。作業装置構成認識部13は、検査対象の(認識対象の)作業装置21が、作業装置構成決定部12で決定された構成を備えているか、各装置モジュール22,23,24は正常に動作するかを検査する。
【0028】
装置動作生成部14は、作業装置構成認識部13により検査済の作業装置21の動作を生成する。動作には、例えば、制御方式および制御量がある。すなわち、装置動作生成部14は、複数の装置モジュールを連結してなる機構モデル(作業装置21)をどのように動かせば、作業対象領域で所望の作業を行うことができるかを、計算する。装置動作生成部14の生成した動作は、制御信号として作業装置21へ送られる。作業装置21は、作業支援システム1からの制御信号に従って作動する。例えば、作業装置21が持つ複数の関節(連結部24)の回動量や角度、トルクなどを調整することで、作業装置21の先端のツールモジュール22の位置や作動方向などを制御することができる。
【0029】
作業支援システム1は、ユーザインターフェース部5を備える。ユーザインターフェース部5は、ユーザが情報を入力するための情報入力装置と、ユーザへ情報を出力するための情報出力装置とを含む。
【0030】
情報入力装置は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、手動スイッチ、操作コントローラ、音声入力装置等から構成される。情報出力装置は、例えば、ディスプレイ、ランプ、音声合成装置、プリンタ等から構成される。ユーザインターフェース部5は、作業支援システム1の近傍に設けることもできるし、作業現場3に設けることもできるし、組立・保管所2に設けることもできる。ユーザインターフェース部5は、一つに限らず複数設けることもできる。
【0031】
図2は、本実施例を作業現場3としての原子炉30に適用した説明図である。
図2には、原子炉における作業システムの概略が示されている。
【0032】
原子炉30には、例えば、シュラウド32、上部格子板33、炉心支持板34、およびシュラウドサポート35等の構造物が設置されており、PLR(Primary Loop Re-circulation System:一次冷却材再循環系)配管36等の配管が接続されている。原子炉30は、冷却水39で満たされている。原子炉30の上部には、作業スペースであるオペレーションフロア37がある。オペレーションフロア37の上方には、燃料交換装置38が設けられている。
【0033】
図2に示す原子炉内作業システムは、例えば、作業支援システム1、作業装置21、ユーザインターフェース部5を備える。作業装置21は、原子炉30内の構造物の保全作業(切断、撤去、据付、溶接等)や、計測作業などに用いられる。作業装置21は、本実施例では複数関節を有するマニピュレータとして構成されるが、これに限定されない。作業装置21は、ケーブル25を介して作業支援システム1に接続されている。
【0034】
ユーザインターフェース部5は、ユーザMと作業支援システム1が情報を交換するための装置である。ユーザMは、例えば作業員である。ユーザインターフェース部5の情報出力装置には、作業装置21の有するカメラや作業装置21の周辺に設置されたカメラ(いずれも不図示)で撮影した画像の全部または一部を、そのままでまたは加工して表示することができる。ユーザインターフェース部5には、作業装置21の位置や姿勢、作業装置21の作業領域の状況などを画像として映すことができる。さらに、ユーザMは、ユーザインターフェース部5の操作機能を用いて、作業装置21を操作することができる。
【0035】
原子炉30内の構造物の保全作業を行う場合、燃料交換装置38上のユーザMは、原子炉30内に作業装置21を投入し、この作業装置21の位置や姿勢をユーザインターフェース部5で確認しつつ操作する。
【0036】
図3は、作業装置21の構成例を示す説明図である。作業装置21は、機器構成モジュール23A、23B、23Cと、ツールモジュール22とを備える。機器構成モジュール23A〜23Cとツールモジュール22は、「装置モジュール」の例である。
【0037】
機器構成モジュール23Aと機器構成モジュール23Bの間は、モジュール連結部24Aにより連結されている。機器構成モジュール23Bと機器構成モジュール23Cの間は、他のモジュール連結部24Bで接続されている。
【0038】
なお、機器構成モジュール23A〜23Cとツールモジュール22とは、予め機能別、寸法別に複数準備されており、それらの接続部は共通構造である。機器構成モジュールやツールモジュールの詳細構成については、作業内容や、作業場所の情報を把握するための周辺環境認識処理の結果に基づいて決定される(後述)。以下、機器構成モジュール23A〜23Cを機器構成モジュール23と呼ぶ場合がある。
【0039】
図4は、作業装置準備部10Aの構成を中心に示す機能ブロック図である。作業装置準備部10Aには、環境認識センサ4からの信号が入力される。環境認識センサ4は、例えば、カメラ41、レーザセンサ42、音響センサ43のいずれか一つまたは複数を含んで構成されており、作業装置21が作業する周辺環境の構造物の状態(寸法、距離等)を計測する。
【0040】
環境認識センサ4に含まれる各センサ41〜43の信号は、作業周辺環境認識部11へ取り込まれる。作業周辺環境認識部11は、画像信号取得部111、レーザセンサ信号取得部112、音響センサ信号取得部113、画像処理部114、構造物形状データ算出部115を備える。
【0041】
画像信号取得部111は、カメラ41からの画像信号を取得する。カメラ41は、動画像を撮影できるビデオカメラである。ビデオカメラに代えて、静止画像を連続的に複数枚撮影できるカメラを用いてもよい。レーザセンサ信号取得部112は、レーザセンサ42からの信号を取得する。音響センサ信号取得部113は、音響センサ43からの信号を取得する。
【0042】
画像信号取得部111の取得した画像信号は、画像処理部114へ入力される。レーザセンサ信号取得部112の取得したレーザセンサ信号と音響センサ信号取得部113の取得した音響センサ信号とは、構造物形状データ算出部115へ入力される。
【0043】
画像処理部114は、画像信号を解析して作業周辺環境の画像を生成する。構造物形状データ算出部115は、レーザセンサ信号および音響センサ信号を解析して、作業周辺環境に存在する構造物の形状データを算出する。構造物形状データ算出部115は、画像信号も一緒に解析することで、構造物形状データを算出してもよい。
【0044】
作業周辺環境認識部11は、画像処理部114の画像処理結果と、構造物形状データ算出部115の算出結果と、作業現場の構造を示す構造物設計データD11とに基づいて、作業周辺環境を認識する。このように作業周辺環境認識部11は、作業装置21が作業する作業領域と作業装置21が作業領域へ到達するまでの移動経路とを、三次元構造物マップとして認識する。すなわち、作業周辺環境認識部11は、作業対象物体31Aまでの移動経路上に、どのような形状の構造物(物体31B)がどのような状態(角度など)で存在しており、作業対象物体31Aの存在する領域の空間(作業空間)はどのような形状をしているか等を認識する。
【0045】
作業周辺環境認識部11の認識結果は、作業装置構成決定部12へ入力される。作業装置構成決定部12は、画像処理部114の処理結果と構造物形状データ算出部115で算出された作業周辺環境の構造物形状データと、構造物設計データD11と、作業内容D12と、付属情報D13とをもとに、作業装置21の装置構成を決定する。作業装置構成決定部12は、作業装置21に必要な機器構成モジュールの種類D21、モジュール数D22、モジュール連結構成D23を含む出力データを生成する。
【0046】
ここで作業内容D12とは、作業装置21で実行する予定の作業内容を示す。作業内容D12は、ユーザがユーザインターフェース部5を介して入力することができる。付属情報D13は、例えば、作業装置21を構成する際の制約条件や、作業装置21を使用する作業環境についての制約条件を含む。作業装置21を構成する際の制約条件には、例えば、利用可能な機器構成モジュールやツールモジュールの種類や数がある。作業環境についての制約条件には、例えば、作業場所の温度、湿度、放射線量等を含む。
【0047】
図5は、機器構成モジュール23および作業装置制御部10Bの機能構成を示す機能ブロック図である。
【0048】
まず最初に、作業装置準備部10Aの出力データD21〜D23に基づいて、組立・保管所2に保管されている複数の作業装置21の中から、作業周辺環境の認識結果に応じて決定された構成に合致する作業装置21が選択される。または、組立・保管所2の作業員は、作業装置準備部10Aの出力データD21〜D23に従って、機器構成モジュール23やツールモジュール22を組み立てることで、必要な構成を有する作業装置21を組み立てる。本実施例では、作業装置準備部10Aの決定した通りの作業装置21を作業現場へ投入する前に、正常に動作するかなどを検査する。
【0049】
機器構成モジュール23は、例えば、信号伝送部231、電力伝送部232、状態認識部233、アクチュエータ234、センサ235を備える。ツールモジュール22も、機器構成モジュール23と同様の構成を有するが、図示は省略する。以下では、モジュールとして機器構成モジュール23を中心に説明する。
【0050】
信号伝送部231は、作業装置制御部10Bとの間で信号を送受信する。信号伝送部231は、作業装置制御部10Bの信号送受信部16に接続されており、作業装置制御部10Bからアクチュエータ234を制御するための制御信号を受信したり、センサ235のセンサ信号を作業装置制御部10Bへ送信したりする。
【0051】
電力伝送部232は、作業装置制御部10Bから電力を受け取る。電力伝送部232は、作業装置制御部10Bの電力供給部17に接続されており、電力供給部17から受け取った電力をモジュール23内の電力消費部(アクチュエータ234やセンサ235等)に供給する。
【0052】
状態認識部233は、モジュール23の接続状況や状態を検知して出力する。状態認識部233は、作業装置制御部10Bの作業装置構成認識部13に接続されている。状態認識部233は、例えば、モジュール23の異常の有無、当該モジュール23と他のモジュールとの接続状況等を検知して、作業装置構成認識部13へ出力する。なお、状態認識部233で検出する情報は、モジュール23に関わる電流、電圧、通信量、温度、放射線量等であり、作業内容と作業場所に応じて選択可能である。隣接する他のモジュールからの信号が途絶えているような場合、隣接する他のモジュールとの間に断線が生じていることを検知することができる。
【0053】
アクチュエータ234は、例えば、電動モータ、液圧モータ、液圧シリンダ、ソレノイド、電磁バルブ、液圧バルブ等である。センサ235は、例えば、カメラ、マイクロフォン、温度センサ、角度センサ、電流センサ、電圧センサ、周波数センサ、放射線センサ、通信量カウンタ等である。
【0054】
ツールモジュール22の場合、アクチュエータ234は加工装置の一部であり、センサ235は計測装置の一部である。
【0055】
作業装置制御部10Bは、
図1で述べた作業装置構成認識部13および装置動作生成部14のほかに、信号送受信部16と電力供給部17を備える。信号送受信部16は、作業装置21を構成する各モジュール23と信号を送受信する。電力供給部17は、各モジュール23へ電力を供給する。作業装置構成認識部13は、各モジュール23の接続状況や状態を認識する。
【0056】
装置動作生成部14は、後述する作業周辺環境の認識処理で決定されたモジュール構成や制御方式を読み込んで判定し、制御方式に従う制御量を算出する。
【0057】
図6は、作業装置を準備する処理の内容を示すPAD図である。本処理は、作業装置準備部10Aにより実行される。
【0058】
作業装置準備部10Aの作業周辺環境認識部11は、環境認識センサ4からのセンサ信号(例えば画像信号、レーザセンサ信号、音響センサ信号)と、構造物設計データD11、作業内容D12、付属情報D13とを取り込む(S11)。
【0059】
作業周辺環境認識部11は、ステップS12の環境状態認識処理において、カメラ41からの画像信号を処理し(S13)、画像マップを算出する(S14)。
【0060】
詳しくは、作業周辺環境認識部11は、ステップS13において、動画像を時間毎の静止画像へ分解して、時刻(t−1)の画像と時刻(t)の画像との間で同一特徴量を算出する。作業周辺環境認識部11は、ステップS14において、ステップS13で算出した特徴量の画像上での移動量から、予め設定した原点座標に対する相対位置を算出することで画像マップを生成する。
【0061】
作業周辺環境認識部11は、ステップS15の構造物形状算出処理において、距離データを算出する処理(S16)、断面形状を算出する処理(S17)、三次元構造物の形状を算出する処理(S18)を実行する。
【0062】
詳しくは、作業周辺環境認識部11は、ステップS16において、レーザセンサ42または音響センサ43のうち少なくともいずれか一方の信号を、走査角毎の距離データへ換算する。そして、作業周辺環境認識部11は、ステップS17において、ステップS16で算出した走査角毎の距離データを、センサ座標系での二次元平面座標へ変換する。さらに、作業周辺環境認識部11は、ステップS18において、ステップS17で算出した点群データを、予め設定した原点座標に対する位置座標へ変換することで、三次元構造物の形状を算出する。
【0063】
ここで、ステップS16において、レーザセンサ42または音響センサ43のいずれかにより、センサから計測対象までの相対距離Mとセンサ中心軸からの角度θ(走査角度)とが算出される。そこで、ステップS17では、式(1)および式(2)を解くことで、ステップS16で算出したデータから、センサ投影面上において構造物の表面(外形)が位置する座標値L(xL,yL)を算出する。
【0064】
xL=M(n)・cos{θ(n)}・・・式(1)
【0065】
yL=M(n)・sin{θ(n)}・・・式(2)
【0066】
作業周辺環境認識部11は、ステップS19の装置構成決定処理において、アクセスルートを生成する処理(S20)、作業装置21に要求されるスペックを算出する処理(S21)、モジュール構造を決定する処理(S22)を実行する。
【0067】
詳しくは、作業周辺環境認識部11は、ステップS20において、ステップS15で算出した三次元構造物形状データをもとに、作業装置21が出発地点から目標地点である作業領域に到達するまでのアクセスルート(移動経路)を決定する。作業周辺環境認識部11は、ステップS21において、作業装置21の寸法、ペイロード、機能等のスペックを算出する。作業周辺環境認識部11は、ステップS22において、ステップS22の算出結果に基づいて、用意されたモジュール群の中から必要なモジュールの種類および個数、モジュールの連結方法を決定する。
【0068】
作業周辺環境認識部11は、ステップS22での結果を出力データとしてまとめ(S23)、その出力データを作業支援システム内の記憶装置へ保存し(S24)、作業装置準備処理を終了する。
【0069】
図7は、作業装置を制御する作業装置制御処理の内容を示すPAD図である。本処理は、作業装置制御部10Bにより実行される。
【0070】
作業装置制御部10Bは、作業装置準備部10Aからの出力データと、作業装置21を構成する各モジュールから出力された状態信号とを読み込む(S31)。作業装置制御部10Bは、ステップS32の装置構成認識処理において、モジュール状態を確認する処理(S33)と、モジュール間の連結状態を確認する処理(S34)を実行する。
【0071】
詳しくは、作業装置制御部10Bは、ステップS33において、各モジュールの状態認識部233で検出した情報から、そのモジュールに異常があるか否かを判断する。作業装置制御部10Bは、ステップS34において、作業装置準備部10Aからの出力データD21〜D23の通りに、モジュールが連結されているかを判断する。
【0072】
作業装置制御部10Bは、ステップS35の制御方式構築処理において、制御方式を選択する処理(S36)、制御モジュールを決定する処理(S37)、制御モジュールを再構成する処理(S38)を実行する。
【0073】
詳しくは、作業装置制御部10Bは、作業装置21の制御方式を選択した後(S36)、作業支援システム1内の記憶部に予め格納されている制御モジュール(ソフトウェア)の中から、必要な制御モジュールを選択して決定する(S37)。そして、作業装置制御部10Bは、例えば、各制御モジュールの入出力変数を調整したり、各制御パラメータを調整したりして、決定した複数の制御モジュールを一つの制御モジュールとして再構成する(S38)。
【0074】
作業装置制御部10Bは、ステップS39の装置動作生成処理において、各モジュールからの状態信号を取得する処理(S40)と、制御量を算出する処理(S41)とを実行する。
【0075】
詳しくは、作業装置制御部10Bは、ステップS40において、作業装置21を構成する各モジュールから、駆動に関わる状態量を取得する。駆動に関わる状態量は、例えば、各モジュールに内蔵されたエンコーダやポテンショメータ等の角度検出器により検知することができる。ステップS40では、角度検出器に代えて、あるいは角度検出器に加えて、他のセンサからの信号を取得してもよい。
【0076】
作業装置制御部10Bは、ステップS41において、作業装置21のツールモジュール22の先端部の現在位置および姿勢から、ユーザMがユーザインターフェース部5を介して入力した目標値に移動するための制御量を算出する。
【0077】
作業装置制御部10Bは、ステップS41で算出したツールモジュール22の先端部の制御量を、各機器構成モジュール23の駆動部の制御量へ換算する(S42)。そして、作業装置制御部10Bは、ステップS42で算出した各制御量を作業支援システム1内の記憶装置へ保存すると共に、作業装置21の各モジュール23へ送信して、本処理を終了する(S43)。
【0078】
図8および
図9は、ユーザインターフェース部5が提供する画面の例を示す。
図8に示す画面G1は、作業開始前に実施する作業周辺環境認識処理の結果から、作業装置21のモジュール構成を決定するためのモード(装置構成決定モード)で使用する。
【0079】
画面G1は、入力データを取り込むための入力部GP11と、作業周辺環境認識処理の結果を三次元仮想空間上で再現して表示する結果表示部GP12と、作業周辺環境認識処理の結果をデータとして出力する出力部GP13とを有する。
【0080】
結果表示部GP12は、作業周辺環境の構造物形状情報のみを表示する環境認識結果確認画面(図中左側)と、作業周辺環境認識処理の結果として出力されたモジュールおよびその構成を確認するための装置構成確認画面(図中右側)とを含む。
【0081】
図9に示す画面G2は、作業装置21を操作する作業装置制御モードで使用する。
図9の画面G2は、
図8の画面G1で出力された情報を入力する入力部GP21と、装置構成および装置動作状況を表示する結果表示部GP22と、各モジュールへ送信する制御信号と各モジュールから受信する状態信号を出力する出力部GP23とを有する。
【0082】
なお、
図8および
図9で示した画面G1,G2は、一つの例示であって、図示した構成の画面に限定されない。
【0083】
このように構成される本実施例は、作業開始前に、作業現場としての原子炉30における作業周辺環境を認識して、作業周辺環境に適した作業装置21の構成を判断し、さらに複数のモジュール22,23から組み立てられる作業装置21の制御方式および制御量を算出する。したがって、本実施例によれば、作業現場で使用する作業装置21のハードウェア構成と作業装置制御部10Bのソフトウェア構成とを、作業周辺環境に応じて再構成することができる。この結果、設備の入替や新設、廃棄、事故や災害などで作業現場の作業周辺環境が変化した場合でも、変化した作業周辺環境に適した作業装置21を速やかに準備して作業現場へ投入することができる。これにより、作業支援システム1の信頼性および使い勝手が向上する。