(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、冷媒回収の対象となる冷凍機器として家庭用の空調装置を述べるが、これは説明のための例示であって、フロン系冷媒を用いる冷凍機器であれば、本発明が適用できる。例えば、パッケージ型の空調装置、業務用の冷凍ショーケース、チラー、ターボ冷凍機等であってもよい。以下では、冷媒の種類としてR22,R410A等を述べるが、これは説明のための例示であって、他のフロン系冷媒であっても構わない。以下で述べる凝縮圧、凝縮温度等は、説明のための例示であって、冷媒回収装置を含む冷媒回収システムの仕様に応じて適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、冷媒回収システム10の構成図である。冷媒回収システム10は、家庭用の空調装置20と、冷媒回収装置60と、冷媒回収容器100と、これらの間を接続する複数の管路とで構成される。冷媒回収システム10は、冷凍機器である家庭用の空調装置20に用いられている冷媒を、冷媒回収装置60を用いて、冷媒回収容器100に回収するシステムである。
【0020】
ここでは、一例として、家庭用の空調装置20に用いられる冷媒の種類をR410Aとし、冷媒回収装置60の仕様はR410A回収用であり、冷媒回収容器100の仕様はR410A回収用とする。R410Aは、ハイドロフルオンカーボン(HFC)系のHFC32/125(50/50)冷媒である。
【0021】
R410Aの60℃における飽和圧力は、ゲージ圧で3.8MPaである。ゲージ圧は、絶対圧力を大気圧基準で示すもので、(ゲージ圧力=絶対圧力−大気圧)である。飽和圧力は、ガス状の冷媒の飽和蒸気圧であり、ガス状から液状へ変化するときの凝縮圧である。以下では、特に断らない限り、圧力はゲージ圧で示す。R410A回収用仕様の冷媒回収装置60における高圧遮断スイッチの遮断動作圧力は、3.0MPaに設定される。R410A回収用の冷媒回収容器100の仕様は、耐圧が5.0MPaのFC3ボンベを用い、可溶栓の溶融温度は約60℃である。冷媒回収容器100の仕様の種類等の詳細については後述する。
【0022】
図1において、家庭用の空調装置20は、冷媒の圧縮と凝縮と蒸発の循環によって冷凍サイクルを行い、家庭の室内を冷房する冷凍機器である。以下では、家庭用の空調装置20を単に空調装置20と呼ぶ。空調装置20は、室外機22と室内機24とを備え、圧縮機30と凝縮器32とを室外機22に、蒸発器40を室内機24に含む。室外機22は、凝縮器32を外気との間で熱交換させるためのファン34と、凝縮器32の吐出側に設けられる受液器36と、圧縮機30の吸入側に設けられるアキュムレータ44とを含む。室内機24は、蒸発器40を室内空気との間で熱交換させるためのファン42を含む。室外機22と室内機24を結ぶ2つの管路の一方側に高圧側のサービスポート50が、他方側に低圧側のサービスポート52が設けられる。サービスポート50,52は三方弁で、空調装置20の通常動作時には室外機22と室内機24の間で冷媒を受け渡しする方向に弁が開き、冷媒回収時には、冷媒回収装置60に接続される回収管路に向けて冷媒が流れるように弁が開く。
【0023】
ゲージマニホールド54は、サービスポート50,52と冷媒回収装置60とを結ぶ管路の途中に設けられる冷媒マニホールドで、高圧側の圧力計と低圧側の圧力計が設けられる。回収作業者は、圧力計の指示値を見ながら、サービスポート50,52と冷媒回収装置60との間の遮断または接続を行う。空調装置20にはガス状の冷媒の他に液状の冷媒が存在することがあるが、大量の液状の冷媒の回収には、周知のプッシュプル回収方法を用いて、液状の冷媒を直接的に冷媒回収容器100に送ることができる。あるいは、液状の冷媒があまり多くないときは、特許文献2で開示されている方法を用いて、ガス状の冷媒にして回収してもよい。以下では、空調装置20からガス状の冷媒を回収するものとする。
【0024】
冷媒回収装置60は、冷媒吸入側ポート62と、冷媒吐出側ポート64と、その間に配置される回収部66と、冷媒回収装置60の各要素の動作を全体として制御する制御装置94とを含んで構成される。
【0025】
冷媒吸入側ポート62は、ゲージマニホールド54を介して、空調装置20の低圧側のサービスポート52と接続されるガス状の冷媒を受け取る三方弁である。この三方弁は、通常の冷媒回収作業中には、受け取ったガス状の冷媒を回収部66の圧縮機68に送り込む方向に設定される。
【0026】
冷媒吐出側ポート64は、冷媒回収容器100に接続され、回収部66の凝縮器82によって凝縮された冷媒を回収冷媒として吐出する開閉弁である。この開閉弁は、一方側ポートが凝縮器82の出力側に接続され、他方側ポートが冷媒回収容器100に接続され、冷媒回収作業中には開状態に設定される。
【0027】
回収部66は、空調装置20の室外機22の構成に似て、圧縮機68と凝縮器82とを含んで構成される。圧縮機68は、ピストン・シリンダ機構と、ピストンをシリンダに沿って往復運動させる回転機構とを備えた気体圧縮ポンプである。圧縮機68の吸入口と冷媒吸入側ポート62との間の管路110は、低圧ガス状の冷媒が流れる管路で、圧縮機68の吐出口と三方弁80との間の管路112は、圧縮後の高圧ガス状の冷媒が流れる管路である。管路110に設けられる監視圧力計70は、圧縮機68の吸入側のガス状の冷媒の圧力を表示する。管路112に設けられる監視圧力計72は、圧縮機68の吐出側のガス状の冷媒の圧力を表示する。
【0028】
高圧遮断スイッチ74は、圧縮機68による圧縮が過度にならないように、高圧ガス状の冷媒の圧力が所定圧力を超えると、回収動作を遮断する安全スイッチである。回収動作の遮断は、冷媒回収装置60の動作電源を遮断し、圧縮機68の動作を停止させる等で行うことができる。冷媒回収装置60はR410A回収用仕様であるので、高圧遮断スイッチ74は、3.0MPaで遮断動作を行うように設定される。換言すれば、圧縮機68は、高圧ガス状の冷媒の圧力が3.0MPa以内の範囲で制御装置94によってその動作が制御される。
【0029】
三方弁80は、圧縮機68と凝縮器82との間に設けられ、冷媒回収中には、圧縮機68からの高圧ガス状の冷媒を凝縮器82側に送り込む方向に設定される。
【0030】
第1圧力センサ90は、圧縮機68によって圧縮された状態のガス状の冷媒の圧力を検出する圧力計である。第1圧力センサ90は、高圧遮断スイッチ74の下流側であって三方弁80のすぐ上流側に設けられ、凝縮器82に送られるガス状の冷媒の圧力を検出する。検出結果は、適当な信号線を介して制御装置94に伝送される。
【0031】
凝縮器82は、圧縮機68によって圧縮された高圧高温のガス状の冷媒をファン84で熱交換し、同じ圧力下で凝縮温度以下にして、ガス状の冷媒を液状の冷媒に凝縮させる放熱器である。ガス状から液状への変化は、同じ圧力下で徐々に生じる。
図1では、完全にガス状の冷媒の状態を白地の管路112のままとし、完全に液状の冷媒となった状態を密な破線の管路116で示し、その中間のガス状の冷媒と液状の冷媒とが混じった二相流を疎な破線の管路114で示した。
【0032】
温度センサ92は、凝縮器82においてガス状の冷媒と液状の冷媒とが混じった二相流の温度を検出する温度計である。二相流は、同じ圧力下、同じ温度下で徐々にガス状から液状に移る。つまり、ガス状から液状への凝縮は、同じ圧力下、同じ温度下で生じる。この温度は凝縮温度であるが、温度センサ92は、この凝縮温度を検出する。検出結果は、適当な信号線を介して制御装置94に伝送される。
【0033】
冷媒吐出側ポート64からは、完全に液状の冷媒である回収冷媒117が冷媒回収管路106に吐出される。なお、冷媒吐出側ポート64から冷媒吸入側ポート62への逆流を防止するために、逆止弁86が設けられる。
【0034】
図2は、冷媒吸入側ポート62から冷媒吐出側ポート64までの間の冷媒の状態変化を示す図である。
図2の横軸は、単位質量あたりのエンタルピーである比エンタルピーhで、縦軸は、圧力pである。特性線130は、ガス状の冷媒についての飽和蒸気線で、特性線132は液状の冷媒についての飽和液線である。飽和蒸気線と飽和液線の境界は臨界点134である。特性線130と特性線132とで囲まれた領域は、ガス状の冷媒と液状の冷媒が共存する二相流の領域である。
図2において、動作点A,B,C,Dを結ぶ線は、冷凍装置における冷凍サイクルを圧力pと比エンタルピーhの関係で示すもので、p−h線図と呼ばれる。p−h線図は、冷媒の種類によって異なり、p−h線図が分かれば、その冷媒の種類が特定できる。空調装置20の冷凍サイクルは、この動作点A,B,C,Dを結ぶ線で示されるが、冷媒回収装置60の動作は、動作点Aから動作点Cまでである。
【0035】
動作点Aは、冷媒吸入側ポート62における冷媒の状態で、低圧のガス状の冷媒である。動作点Aから動作点Bの間の状態変化は、圧縮機68による断熱圧縮である。この状態変化は、熱の出入りが無く内部エネルギは変わらないが圧力と体積の変化によって比エンタルピーが増加するので、等エントロピー線に沿ってp−h特性が変化する。したがって、動作点Bでは、高圧高温のガス状の冷媒となる。第1圧力センサ90は、動作点Bにおける圧力140を検出する。
【0036】
動作点Bから動作点Cの間の状態変化は、凝縮器82による凝縮である。動作点Bは、三方弁80におけるガス状の冷媒の状態を示し、動作点Cは冷媒吐出側ポート64における液状の冷媒の状態を示す。凝縮は、ファン84による冷却によりガスから液への相変化による凝縮熱を放熱するので比エンタルピーが減少する。相変化による圧力変化はないので、凝縮過程において冷媒の圧力に変化はなく一定値である。つまり、動作点Bから動作点Cの間の動作線は等圧線である。
【0037】
動作点Eは、凝縮の等圧線と飽和蒸気線との交点である。動作点Eにおける圧力は飽和蒸気圧である。動作点Bから動作点Eの間は、凝縮器82の入口付近であるが、冷媒は過熱ガス状態の高温ガスである。
【0038】
動作点Eから動作点Fの間は、凝縮器82の入口から出口にかけての区間に相当し、冷媒の状態は徐々に変化して、ガス状の部分に液状の部分を含む湿りガスとなる。ガス状の冷媒と液状の冷媒は、互いに混じって流れる二相流である。温度は凝縮温度で一定である。つまり、動作点Eから動作点Fの間は、圧力は一定の凝縮圧で、温度は一定の凝縮温度である。温度センサ92は、この二相流における凝縮温度142を検出する。
【0039】
動作点Fは、凝縮の等圧線と飽和液線との交点である。動作点Fにおいて冷媒はすべて液状の冷媒となる。動作点Fから動作点Cの間は、ファン84の冷却能力に引きずられ液状の冷媒の温度が凝縮温度よりもさらに低下する。動作点Cは凝縮器82の出口で、冷媒吐出側ポート64の位置である。冷媒は、過冷却状態の液状冷媒である。
【0040】
以上が、冷媒回収装置60の冷媒吸入側ポート62から冷媒吐出側ポート64の間の冷媒の変化の説明である。なお、空調装置20では、凝縮器32の過冷却状態の液状の冷媒は、膨張弁38によって急激に減圧される。膨張過程では比エンタルピーは一定で、等エンタルピー線に沿って圧力が低下する。動作点Cから動作点Gの間は液状の冷媒で温度は一定のままである。動作点Cは膨張の等エンタルピー線と飽和液線との交点である。ファン42による冷却によって、動作点Cから液状の冷媒がガス状の冷媒に変化する蒸発が始まる。動作点Gから動作点Dの間は、液状の冷媒とガス状の冷媒が混じっている状態である。減圧が所定の低圧となると、一定圧の下での蒸発が進行し、蒸発熱に見合って比エンタルピーが減少する。動作点Hで、冷媒は全てガス状の冷媒となる。そして動作点Aにおいて、圧縮機30に供給される。このようにして、空調装置20において冷凍サイクルが行われる。
【0041】
図1に戻り、制御装置94は、冷媒回収装置60の圧縮機68、凝縮器82、冷媒吸入側ポート62、冷媒吐出側ポート64、三方弁80、ファン84、高圧遮断スイッチ74、第1圧力センサ90、温度センサ92等の各要素の動作を全体として制御する。かかる制御装置94は、適当なコンピュータ等で構成できる。制御装置94は、冷媒回収の動作を制御する回収制御部96と、回収冷媒に関する情報を出力する冷媒情報出力部98とを含んで構成される。
【0042】
冷媒情報出力部98は、第1圧力センサ90の検出値と、温度センサ92の検出値とから、冷媒回収装置60における回収冷媒の種類を判別し、判別した回収冷媒の種類を出力する。
図2で述べたように、第1圧力センサ90は、動作点Bにおける圧力140を検出する。圧力140は凝縮における一定圧力で、動作点Eから動作点Fにおける凝縮圧と同じである。温度センサ92は、
図2の動作点Eから動作点Fの間においてガス状の冷媒と液状の冷媒が混じって流れる二相流における凝縮温度142を検出する。(凝縮圧、凝縮温度)の組合せは、冷媒の種類によって定まる。第1圧力センサ90の検出値を冷媒の凝縮圧とし、温度センサ92の検出値を冷媒の凝縮温度として、冷媒の種類を判別し、これを回収冷媒の種類とする。
【0043】
判別した回収冷媒の種類は、表示装置に出力される。好ましくは、検出された凝縮圧と凝縮温度も合わせて出力されることがよい。表示装置としては、液晶ディスプレイ、プリンタ等を用いることができる。一例を挙げると、「回収冷媒の種類:R410A、凝縮圧:2.3MPa、凝縮温度:40℃」等と表示される。
【0044】
図1において、冷媒回収装置60の冷媒吐出側ポート64と冷媒回収容器100との間を接続する管路は、回収冷媒117が流れる冷媒回収管路106である。冷媒回収容器100は、ボンベ102と、ボンベ102の上部に設けられるボンベ側ポート104と、ボンベ側ポート104に設けられる可溶栓108と、フロートセンサ109とを含んで構成される。
【0045】
ボンベ102は、所定の耐圧試験を合格した高圧ボンベである。
図3にボンベ102の種類と、耐圧と、充填すべき冷媒種類との関係を示す。
図2に示すように、耐圧の仕様が3種類あり、それに対応して、FC1,FC2,FC3の3種類のボンベがある。
図1の場合、R410Aの冷媒対応のFC3ボンベが用いられる。
図1には、ボンベ102の内部に充填された冷媒120が示されている。フロートセンサ109は、冷媒120の液面の監視装置である。フロートセンサ109は、冷媒120の液面が所定の液面高さを超えることを検出し、その結果を冷媒回収装置60に伝送する。
【0046】
ボンベ側ポート104は、冷媒回収管路106が接続される液側ポートと、ボンベ102内の冷媒を吐出するための吐出側ポートと、それぞれのポートを開閉するバルブとが設けられる。
【0047】
可溶栓108は、冷媒回収容器100の容器安全弁で、冷媒回収容器100が所定の温度を超える高温になったときに、ボンベ102の内部の冷媒を外部に放出させる。可溶栓108は、ボンベ側ポート104のボンベ102側の根元部分に設けられ、予め定めた所定温度を超えると溶融する合金で作られた栓である。所定温度の一例は、60℃(+0℃〜−4℃)である。
【0048】
可溶栓108が溶融する一例は、冷媒回収装置60における凝縮圧がその冷媒の60℃における飽和圧力以上になっているときである。このときには、冷媒回収管路106を経てボンベ102の内部に充填されたときに、冷媒が飽和圧力で気化する。そのときの温度が60℃を超えると可溶栓108が溶融し、冷媒が外部に噴き出す。冷媒回収装置60は、高圧遮断スイッチ74によって凝縮圧が一定値を超えないように安全保護がされるが、冷媒回収装置60の仕様と冷媒回収容器100の仕様の組合せが不適切であると、冷媒回収装置60における凝縮圧がその冷媒の60℃における飽和圧力以上になることが生じる。
【0049】
図4に、主な冷媒の60℃における飽和圧力を示す。
図1の例では、回収冷媒がR410Aである。R410Aの60℃における飽和圧力は3.8MPaである。冷媒回収装置60は、R410A対応仕様であるので、高圧遮断スイッチ74が作動する所定の圧力は3.0MPaに設定され、圧縮機68によって圧縮された後の圧力は3.0MPa未満に制限される。したがって、回収冷媒117の凝縮圧は3.0MPa未満となり、回収冷媒117が冷媒回収容器100に充填されても、R410Aの60℃における飽和圧力である3.8MPa未満となり、可溶栓108は溶融しない。
【0050】
上記構成の作用、特に制御装置94の冷媒情報出力部98の機能について、さらに詳細に説明する。
【0051】
冷媒回収を行うとき、回収作業者は、空調装置20の使用冷媒の種類を調べ、
図3、
図4またはそれに相当する仕様一覧等を参照し、空調装置20の使用冷媒の種類に適合する仕様を有する冷媒回収装置60と、冷媒回収容器100とを準備する。
図1の例は、空調装置20の使用冷媒がR410Aであるので、
図3を参照してFC3ボンベの冷媒回収容器100を準備する。また、
図4を参照して、R410Aの60℃における飽和圧力以下で作動する高圧遮断スイッチ74を有する冷媒回収装置60を準備する。
【0052】
そして、空調装置20のサービスポート50,52とゲージマニホールド54の間を管路で接続し、ゲージマニホールド54と冷媒回収装置60の冷媒吸入側ポート62との間を管路で接続する。また、冷媒回収装置60の冷媒吐出側ポート64と冷媒回収容器100のボンベ側ポート104との間を冷媒回収管路106で接続する。空調装置20と冷媒回収装置60と冷媒回収容器100の間が管路で接続されたことが確認された後、所定の冷媒回収作業標準書等の手順に従って回収作業が進められる。
【0053】
冷媒回収装置60の制御装置94において、冷媒情報出力部98は、第1圧力センサ90と温度センサ92のそれぞれの検出値を取得し、その結果から回収冷媒117の種類を判別して、図示しない表示装置に出力する。第1圧力センサ90の検出値は回収冷媒117の凝縮圧であり、温度センサ92の検出値は回収冷媒117の凝縮温度である。制御装置94は、予め
図3に示す冷媒の全てについて、それぞれの凝縮圧と凝縮温度の関連を示すデータを記憶したメモリを保有し、(凝縮圧、凝縮温度)の組合せを検索キーとして検索してその結果を回収冷媒117の種類として自動的に出力する。これに代えて、主たる冷媒についてのみ、それぞれの(凝縮圧、凝縮温度)の組合せとの関連を示すデータを記憶したメモリを保有するものとしてもよい。例えば、家庭用の空調装置20に使用される代表的冷媒が3種類とすれば、その3種類についてのデータのみを記憶したメモリを用い、これに該当しない(凝縮圧、凝縮温度)の組合せのときは、「該当冷媒なし」と出力するものとしてよい。
図1の例では、「回収冷媒は、R410Aです。」と自動的に出力される。
【0054】
実施の形態として、回収冷媒117の種類の判別用メモリを保有せず、(凝縮圧、凝縮温度)のデータをそのまま出力してもよい。この場合には、回収作業者がそのデータを見て、回収冷媒117が冷媒回収容器100の仕様に合うかどうかを判断する。
【0055】
上記では、空調装置20の使用冷媒の種類に適合する仕様を有する冷媒回収装置60と、冷媒回収容器100を準備できたものとしたが、事情によっては、空調装置20の使用冷媒の種類に適合する仕様を有する冷媒回収装置60と、冷媒回収容器100を準備できないことがある。一例として、空調装置20の使用冷媒がR22である場合を述べる。
図3を参照すると、ボンベ102としては、FC1,FC2,FC3のいずれも使用可能である。
図4を参照すると、R22の60℃における飽和圧力は2.4MPaであるので、冷媒回収装置60は、安全を見て約2Mpa以下で作動する高圧遮断スイッチ74を有する仕様のものが好ましい。
【0056】
ここで、
図1で説明した3Mpaで作動する高圧遮断スイッチ74を有する仕様の冷媒回収装置60と、FC3ボンベを有する冷媒回収容器100しか準備できなかったとする。従来では、回収作業者は、使用冷媒がR22の空調装置20と、3.0Mpaで作動する高圧遮断スイッチ74を有する仕様の冷媒回収装置60と、FC3ボンベを有する冷媒回収容器100を接続し、細心の注意を払いながら慎重に回収作業を進めることになる。すなわち、冷媒回収装置60の監視圧力計70,72が表示する圧力を注意深く見ながら圧縮機68の動作を監視する。そして、監視圧力計72の表示値が、R22の60℃における飽和圧力である2.4MPa超さないようにする。安全側を考えると、監視圧力計72の表示値が約2MPaに近くなった時点で、冷媒回収装置60において圧縮機68の動作を停止させる。このように、従来では、回収作業者による細心の注意の下で回収作業が進められている。
【0057】
図1の構成では、第1圧力センサ90と、温度センサ92を備えるので、仮に、空調装置20の使用冷媒がR22であるにもかかわらず、R410Aであると誤った場合でも、冷媒情報出力部98が「回収冷媒はR22です。」と出力する。回収作業者は、この出力の表示によって、回収冷媒がR22であることを知るので、例えば、直ちに冷媒吐出側ポート64を閉じ、冷媒回収容器100のボンベ側ポート104を閉じ、冷媒回収装置60の動作を停止させる等の措置を取ることができる。このように、
図1の構成によれば、従来において回収作業者が冷媒の種類について細心の注意を払ってもなお生じ得る誤りの場合でも、適切な措置をとることができ、冷媒回収容器100の損傷等を事前に防止できる。
【0058】
上記では、冷媒回収装置60に第1圧力センサ90と温度センサ92を内蔵させ、それらが検出する(凝縮圧、凝縮温度)の組合せに基づいて回収冷媒117の種類を判別するものとした。その目的の1つは、冷媒回収装置60の仕様と冷媒回収容器100の仕様からみて、回収冷媒117を冷媒回収容器100に充填したときに可溶栓108が溶融することを防止することである。
図5は、回収冷媒117の凝縮圧に基づいて、回収冷媒117が冷媒回収容器100の仕様に適合するか否かの情報を出力できる冷媒回収装置150を含む冷媒回収システム12の構成を示す図である。
【0059】
図5の冷媒回収装置150が
図1の冷媒回収装置60と相違するのは、第1圧力センサ90、温度センサ92が共に内蔵されず、代わりに冷媒回収装置150の外側に配置される冷媒回収管路106に第2圧力センサ152が設けられ、制御装置94に想定冷媒設定部154が設けられることである。
【0060】
第2圧力センサ152は、冷媒回収装置150の外側に配置される冷媒回収管路106に外付けで取り付けられ、冷媒回収管路106内部の回収冷媒117の圧力を検出する圧力計である。回収冷媒117の圧力は凝縮圧である。検出された回収冷媒117の凝縮圧は、適当な信号線を介して制御装置94に伝送される。
【0061】
想定冷媒設定部154は、回収を想定している冷媒の種類を設定する。例えば、図示しないキーボードが制御装置94に接続され、回収作業者がキーボードを操作して回収を想定している冷媒の種類名を入力し、その入力データを制御装置94が取得して、回収を想定している冷媒の種類に設定する。
【0062】
冷媒情報出力部98は、予め
図3に示す冷媒の全てについて、冷媒回収容器に設けられる可溶栓が溶融する所定温度の下における飽和圧力との関連を示すデータを記憶したメモリを有する。そこで、想定冷媒設定部154によって設定された冷媒の種類を検索キーとしてメモリを検索し、その冷媒の所定温度における飽和圧力を取得する。これに代えて、
図4に示すような、主たる冷媒についての(所定温度=60℃)における飽和圧力のデータを記憶したメモリを保有するものとしてもよい。取得した結果を用いて、冷媒情報出力部98は、回収を想定している冷媒の所定温度における飽和圧力よりも回収冷媒117の圧力が高圧のときは、冷媒回収容器100の可溶栓108を溶
融するので、回収冷媒117の圧力が冷媒回収容器の仕様に不適合とする情報を出力する。
【0063】
一例を挙げると、回収を想定している冷媒の種類をR22とする。R22の60℃における飽和圧力は、
図4により2.4MPaである。回収冷媒117の凝縮圧が2.5MPaであると、回収を想定している冷媒の所定温度における飽和圧力よりも回収冷媒117の圧力が高圧であり、冷媒回収容器100の可溶栓108を溶
融する。このようなことは、冷媒回収装置150がR410Aに適合する仕様であって、高圧遮断スイッチ74の遮断動作圧力が3.0MPaのとき等に生じ得る。この場合、回収冷媒117の圧力が冷媒回収容器の仕様に不適合とする情報が出力される。
【0064】
出力された情報は表示装置に表示される。回収作業者は、この出力の表示によって、回収冷媒117の凝縮圧が高すぎることを知るので、例えば、直ちに冷媒吐出側ポート64を閉じ、冷媒回収容器100のボンベ側ポート104を閉じ、冷媒回収装置60の動作を停止させる等の措置を取ることができる。
【0065】
また、表示装置に表示する以外に、ランプ点灯等で出力してもよい。例えば、回収冷媒117の圧力が、回収を想定している冷媒の所定温度における飽和圧力未満のときに「正常」ランプを点灯し、回収を想定している冷媒の所定温度における飽和圧力以上のときに「警報」ランプを点灯する。ランプ点灯に代えて、文字点灯出力、音声出力等を用いてもよい。また、これらの出力手段を併用してもよい。
【0066】
図1の冷媒回収システム10、
図5の冷媒回収システム12は、冷媒回収容器100のボンベ102が空の状態である場合である。冷媒回収を行うときに準備した冷媒回収容器100に既に何らかの冷媒が充填されている場合があるとき、既に充填されている冷媒と回収冷媒117が異なることがあると、1つのボンベ102は、異種冷媒が混合されることになるので好ましくない。
【0067】
図6は、空調装置20の冷媒の種類が冷媒回収容器100に既に充填されている冷媒の種類と一致するか否かについての情報を出力できる冷媒回収装置160を含む冷媒回収システム14を示す図である。
図6において冷媒170は、空調装置20の使用冷媒であり、冷媒172は、冷媒回収容器100に既に充填されている冷媒である。
【0068】
図6の冷媒回収装置160は、
図1の冷媒回収装置60に、冷媒判別センサ部162を設けたものである。冷媒判別センサ部162は、冷媒170の種類を判別する第1冷媒センサ164と、冷媒172の種類を判別する第2冷媒センサ166を含む。第1冷媒センサ164と第2冷媒センサ164は、赤外線方式または熱検出方式を用いることでリークした冷媒の種類を判別するリークセンサとして市販されているものを用いることができる。冷媒判別センサ部162に切替手段を設けて、第1冷媒センサ164と第2冷媒センサ164を1つのセンサで兼用するものとしてもよい。
【0069】
第1冷媒センサ164によって冷媒170の種類を検出するには、冷媒吸入側ポート62を閉状態として、ゲージマニホールド54と管路110との間を遮断する。第2冷媒センサ166によって冷媒172の種類を検出するには、冷媒吐出側ポート64を閉状態として、冷媒回収管路106と逆止弁86との間を遮断する。なお、冷媒回収容器100のボンベ側ポート104の液側ポートは開放する。
【0070】
制御装置94の冷媒情報出力部98は、冷媒判別センサ部162の検出結果に基づいて、冷媒170の種類が冷媒172の種類と一致するか否かについての情報を出力する。出力された情報は表示装置に表示される。回収作業者は、この出力の表示によって、回収しようとする冷媒170と、既に冷媒回収容器100に充填されている冷媒172が一致するか否かを知るので、一致していないときは、例えば、直ちに冷媒吐出側ポート64を閉じ、冷媒回収容器100のボンベ側ポート104を閉じ、冷媒回収装置60の動作を停止させる等の措置を取ることができる。
【0071】
また、表示装置に表示する以外に、ランプ点灯等で出力してもよい。例えば、冷媒170と冷媒172が一致するときは「正常」ランプを点灯し、一致しないときは「警報」ランプを点灯する。ランプ点灯に代えて、文字点灯出力、音声出力等を用いてもよい。また、これらの出力手段を併用してもよい。
【0072】
冷媒判別センサ部162を
図5の冷媒回収装置150に設けるものとすることができる。このように、冷媒判別センサ部162を設けることで、冷媒回収容器100における異種冷媒混合を防止することができる。