(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573528
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】車両用充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20190902BHJP
H02J 9/00 20060101ALI20190902BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20190902BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20190902BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20190902BHJP
B60L 53/53 20190101ALI20190902BHJP
B60L 53/62 20190101ALI20190902BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H02J9/00 120
H02J7/00 P
H02J7/34 G
H02J7/10 H
H02J7/00 303C
B60L53/53
B60L53/62
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-211391(P2015-211391)
(22)【出願日】2015年10月28日
(65)【公開番号】特開2017-85763(P2017-85763A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】松尾 昌幸
【審査官】
大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/118187(WO,A1)
【文献】
特開2013−143895(JP,A)
【文献】
特開2014−108008(JP,A)
【文献】
特開2012−095465(JP,A)
【文献】
特開2001−008380(JP,A)
【文献】
特開2015−084643(JP,A)
【文献】
特開2012−050291(JP,A)
【文献】
特開2013−255318(JP,A)
【文献】
特開2013−251961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
H02J 9/00
H02J 9/06
B60L 1/00−3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統の停電時に充電スタンドに電力を供給するバッテリと、バッテリから出力される電圧を変圧する変圧器と、バッテリから出力される電流を測定する第1測定機器と、この第1測定機器が測定した電流値を充電スタンドへ通信する通信機器とを備え、充電スタンドは通信された電流値に応じて車両に供給可能な電流値を制御し、バッテリの電力容量の範囲内で充電を継続する機能を備えることを特徴とする車両用充電システム。
【請求項2】
前記バッテリは、系統の停電時に充電スタンド以外の重要負荷にも電力を供給するものであり、重要負荷に流れる電流値を測定する第2測定機器を備え、第1測定機器が測定した電流値と第2測定機器が測定した電流値との差が充電スタンドの最小必要電流値を下回る場合には、充電スタンドへの給電を停止することを特徴とする請求項1に記載の車両用充電システム。
【請求項3】
前記変圧器と前記通信機器を、中継盤の内部に収納したことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統が停電した際にもバッテリから車両への充電を継続することができる車両用充電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用充電システムは電力系統から供給された電力により車両(電気自動車)に充電を行なうシステムである。しかし特許文献1に示されるように、太陽光発電装置とバッテリとを組み込み、電力系統が停電した際にも車両への充電を継続することができるようにした車両用充電システムが提案されている。
【0003】
しかし、車両用充電スタンドが使用できる電圧は200Vであるのに対してバッテリから出力される電圧は一般的に100Vである。このため専用のバッテリを用いない限り、EV、PHV等の電気自動車を充電することができないという問題があった。
【0004】
また100Vで充電可能な電気自動車も存在するが、バッテリの電気容量は一般的に1.5kW程度であるため、最大で3.2kW(200V×16A)の電力を消費する車両用充電スタンドに接続すると、バッテリが停止してしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−97803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、電力系統が停電した際にも、バッテリを停止させることなく、車両への充電を継続することができる車両用充電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明の車両用充電システムは、系統の停電時に充電スタンドに電力を供給するバッテリと、バッテリから出力される電圧を変圧する変圧器と、バッテリから出力される電流を測定する第1測定機器と、この第1測定機器が測定した電流値を充電スタンドへ通信する通信機器とを備え、充電スタンドは通信された電流値に応じて車両に供給可能な電流値を制御し、バッテリの電力容量の範囲内で充電を継続する機能を備えることを特徴とするものである。
【0008】
なお請求項2の発明の車両用充電システムは、請求項1の発明において、前記バッテリは系統の停電時に充電スタンド以外の重要負荷にも電力を供給するものであり、重要負荷に流れる電流値を測定する第2測定機器を備え、第1測定機器が測定した電流値と第2測定機器が測定した電流値との差が充電スタンドの最小必要電流値を下回る場合には、充電スタンドへの給電を停止することを特徴とするものである。
【0009】
また請求項3の発明の車両用充電システムは、請求項1または2の発明において、前記変圧器と前記通信機器を、中継盤の内部に収納したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用充電システムによれば、出力電圧が100Vである一般的なバッテリを用いて充電スタンドへの給電ができるので、電力系統が停電した際にも車両への充電を継続することができる。しかも充電スタンドは通信された電流値に応じて車両に供給可能な電流値を制御し、バッテリの電力容量の範囲内で充電を継続するので、バッテリが破損するおそれもない。
【0011】
請求項2の発明によれば、停電時にバッテリから充電スタンド以外の重要負荷への電力供給が可能であるとともに、バッテリの残量が低下してきたときなどには車両の充電よりも重要負荷への給電を優先して行なうので、重要負荷への給電を継続することができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、変圧器と通信機器を中継盤の内部に収納したので、この中継盤を増設することにより、既設の充電スタンドにも容易に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】第2の実施形態の変形例を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の車両用充電システムの第1の実施形態を示す回路構成図であり、1は車両への充電を行なうための充電スタンド、2は系統停電時に充電スタンド1に給電するためのバッテリである。バッテリ2は出力電圧が100Vである一般的なバッテリであるため、バッテリ2の出力電圧は変圧器3によって200Vに変圧されたうえ、充電スタンド1に供給される。
【0015】
なお、通常時にはバッテリ2は分電盤6を介して系統より充電され、高負荷時に放電する機能を持たせることができ、低コストの深夜電力を利用して充電し、昼間の電力ピークシフトを可能とする。しかし以下に述べるように、停電時にはパワーコンディショナ5を介して太陽光発電装置から充電し、充電スタンド1に給電する。
【0016】
この実施形態ではバッテリ2にはパワーコンディショナ5を介して太陽光パネル4が接続されており、電力系統が停電した際にも充電スタンド1に対して継続的な給電が可能となっている。実施形態ではこれらのパワーコンディショナ5、バッテリ2等は分電盤6に常時接続されているが、系統の停電発生時だけに接続されるものであってもよい。なおバッテリ2は一定値以上の残量を確保しつつ、充放電を繰り返すものであってもよい。
【0017】
図1中に破線で示すように、平常時には分電盤6から充電スタンド1への給電が行われ、充電スタンド1は従来と同様に車両(電気自動車)への充電を行なう。しかし電力系統が停電した場合には、
図1中に実線で示すように、バッテリ2から変圧器3を介して充電スタンド1への給電が行われる。
【0018】
バッテリ2の出力側には、バッテリ2から充電スタンド1に流れる電流を測定する第1測定機器7と、この第1測定機器7が測定した電流値を充電スタンド1へ通信する通信機器8とが設けられている。電流の測定はCTやホール素子等の公知の電流測定手段を用いて行なうことができる。なおバッテリ2の電力容量を予め通信機器8に設定しておくこともできる。
【0019】
充電スタンド1は、通信機器8から通信された電流値に応じてCPLT信号のデューティ比を制御し、車両に供給可能な電流値を制御する。CPLT信号は従来から車両と充電スタンド1との交信に用いられ、充電の開始や停止を制御する信号であるが、パルス信号のデューティ比を変化させることによって、充電電力の制御も可能である。本発明ではこのCPLT信号のデューティ比を変化させて車両への充電電流を制御し、バッテリ2の電力容量の範囲内で充電を継続するようにする。このため平常時よりも充電速度は低下するが、バッテリ2を停止させることなく車両への充電を継続することができる。
【0020】
図2は本発明の車両用充電システムの第2の実施形態を示す回路構成図である。この第2の実施形態では、バッテリ2は系統の停電時に充電スタンド1以外の重要負荷9にも電力を供給する。また、重要負荷9に流れる電流値を測定する第2測定機器10が接続されている。何を重要負荷9とするかは、分電盤のユーザが自由に設定することができるが、例えば非常灯や冷蔵庫などである。
【0021】
この第2の実施形態においては、
図3に示すように、重要負荷として別の分電盤6aを接続することもできる。この分電盤6aには、重要負荷が集中的に接続されている。またこの分電盤6aに流れる電流値を測定する第2測定機器10が接続されている。通常時には分電盤6から別の分電盤6aに電気を供給するが、停電などの非常時にはバッテリ2から別の分電盤6aに電気を供給する。
【0022】
この第2測定機器10により測定された重要負荷9に通電される電流値は、第1測定機器7により測定された電流値とともに、通信機器8に入力される。通信機器8は、第1測定機器7が測定した電流値と第2測定機器10が測定した電流値との差を演算する。第1測定機器7が測定した電流値はバッテリ2からの全出力を意味し、第2測定機器10が測定した電流値は重要負荷9への出力を意味する。従ってその差は、充電スタンド1への供給可能な電力となるが、充電スタンド1には最小必要電流値が定められており、その最小必要電流値以下では充電できない。
【0023】
このため、第1測定機器7が測定した電流値と第2測定機器10が測定した電流値との差が充電スタンド1の最小必要電流値を下回る場合には、通信機器8は充電スタンド1への給電を停止し、負荷優先モードに入る。このためバッテリ2は重要負荷9に対してのみ給電を行なう。しかし、第1測定機器7が測定した電流値と第2測定機器10が測定した電流値との差が充電スタンド1の最小必要電流値よりも大きい場合には、充電スタンド1の最小必要電流値以上での充電を行なうものとする。
【0024】
以上に説明した第1及び第2の実施形態では、変圧器3や通信機器8の設置場所は特定されるものではない。しかし
図4に示す第3の実施形態では、これらを中継盤11の筐体内部に収納した。このため、既設設備に中継盤11を付加するとともに、第1測定機器7や第2測定機器10を接続するだけで、容易に本発明の車両用充電システムを構築することができる利点がある。
【0025】
以上に説明したように、本発明によれば、電力系統が停電した際にも、過負荷によってバッテリ7を破損することなく、車両への充電を継続することができる。充電された車両は移動に利用できることは勿論、電源が必要とされる場所まで走行して、車載電池から負荷への給電を行なうことも可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 充電スタンド
2 バッテリ
3 変圧器
4 太陽光パネル
5 パワーコンディショナ
6 分電盤
6a 別の分電盤
7 第1測定機器
8 通信機器
9 重要負荷
10 第2測定機器
11 中継盤