(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573534
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】電動作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20190902BHJP
B60K 1/02 20060101ALI20190902BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20190902BHJP
A01D 34/64 20060101ALN20190902BHJP
B60L 15/20 20060101ALN20190902BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60K1/02
H01M2/10 S
!A01D34/64 A
!B60L15/20 S
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-224090(P2015-224090)
(22)【出願日】2015年11月16日
(65)【公開番号】特開2017-88096(P2017-88096A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊東 寛和
(72)【発明者】
【氏名】小池 和生
(72)【発明者】
【氏名】萬治 寧大
【審査官】
中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−123751(JP,A)
【文献】
特開2008−168869(JP,A)
【文献】
特開2011−218951(JP,A)
【文献】
実開昭56−143919(JP,U)
【文献】
特開2009−248708(JP,A)
【文献】
実開平06−020124(JP,U)
【文献】
特開平09−065747(JP,A)
【文献】
米国特許第04589249(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/02 − 1/04
H01M 2/10
B60L 15/00 − 15/42
A01D 34/64 − 34/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体横断方向に間隔をあけて車体前後方向に延びた左フレーム及び右フレームと、
前記左フレームの前記車体横断方向外側に配置された左後輪と、前記右フレームの前記車体横断方向外側に配置された右後輪とからなる後輪ユニットと、
前記左後輪と前記右後輪との間に配置され、前端部が前記後輪ユニットの車軸心より前方に位置するバッテリパックと、
前記バッテリパックの上方で前記左後輪の周辺に配置されるとともに、前記バッテリパックから給電されて前記左後輪に回転動力を伝達する左モータと、
前記バッテリパックの上方で前記右後輪の周辺に配置されるとともに、前記バッテリパックから給電されて前記右後輪に回転動力を伝達する右モータと、を備え、
前記バッテリパックが、前側直方体部と、前記前側直方体部に対して上方にずれた後側直方体部とから構成され、前記バッテリパックの上面と下面とに段差を有する段差立体形状である電動作業車両。
【請求項2】
前記バッテリパックの重心が、平面視において、前記車体前後方向及び前記車体横断方向で前記左後輪と前記右後輪とによって規定される後輪区画内に入っている請求項1に記載の電動作業車両。
【請求項3】
前記後側直方体部の最低地上高さは、前記前側直方体部の最低地上高さより高い請求項1または2に記載の電動作業車両。
【請求項4】
前記バッテリパックの後端は前記車体前後方向で前記後輪ユニットより後方に位置しているとともに、前記バッテリパックの後端の最低地上高さは、後車軸ケースの最低地上高さより高い請求項1から3のいずれか一項に記載の電動作業車両。
【請求項5】
前記車体横断方向で前記左フレームの外側に配置された左前輪と、前記車体横断方向で前記右フレームの外側に配置された右前輪とからなる前輪ユニットが備えられ、前記前輪ユニットと前記後輪ユニットとの間にモーアユニットが配置されている請求項1から4のいずれか一項に記載の電動作業車両。
【請求項6】
前記バッテリパックの前記前端部の前に前記モーアユニットに動力を供給する作業用モータが配置されている請求項5に記載の電動作業車両。
【請求項7】
前記車体横断方向で前記左フレームの外側に左トランスミッションケースが配置され、前記左トランスミッションケースは前記左モータの出力軸から前記左後輪の車軸に回転動力を伝達する左トランスミッションを収納しており、
前記車体横断方向で前記右フレームの外側に右トランスミッションケースが配置され、前記右トランスミッションケースは前記右モータの出力軸から前記右後輪の車軸に回転動力を伝達する右トランスミッションを収納している請求項1から6のいずれか一項に記載の電動作業車両。
【請求項8】
前記左トランスミッションケースは、前記車体前後方向に沿って前記左フレームと連結しており、前記右トランスミッションケースは、前記車体前後方向に沿って前記右フレームと連結している請求項7に記載の電動作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパックから給電される左モータと右モータを備え、左モータによって左後輪を駆動し、右モータによって右後輪を駆動することで、作業走行する電動作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、左右一対の後輪が左右一対のモータによってそれぞれ独立して駆動される芝刈機が開示されている。左右一対の後輪はその間にわたって延びている後車軸ケースによって支持されている。後車軸ケースの中央部からギヤケースが後車軸ケースの延び方向に対して直角に延びており、さらにギヤケースの先端部から左側に左側モータ、右側に右側モータが車体横断方向に延びるように装備されている。各モータの回転動力は、ギヤケースに内装された動力伝達機構を通じて後車軸ケースに内装されている車軸に伝達される。特許文献1の
図2から明らかなように、車体横断方向で直線状に延びている左右一対のモータと、車体横断方向で直線状に延びている後車軸ケースとが、それぞれの中央部で、車体前後方向に延びたギヤケースによって連結されている。したがって、モータから後輪へ動力を伝達する機構を内装するケース構造は、かなり複雑な形状であり、コスト高の要因となる。さらに、左右一対のモータが車体フレームの内側に配置され、左右一対のモータの間にバッテリが配置されるので、大形のバッテリが利用できないという問題点がある。
【0003】
特許文献2には、左後輪を駆動する左モータと右後輪を駆動する右モータが、それぞれフレームの外側に取り付けられ、左モータと右モータとの間にエンジンとバッテリが配置された、ハイブリッド式の芝刈機が開示されている。この左モータ及び右モータは、ホイールモータであり、後輪軸心とモータ回転軸心とが一致している。この構造では、大きな重量を有するエンジンとバッテリパックが後輪軸心より後方に位置することにより、後輪軸心に関する重量バランスが悪くなる。しかしながら、左モータ及び右モータの重心が実質的に後輪軸心上にあるため、左モータ及び右モータはこの重量バランスの悪化を改善することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/015171号(
図1、
図2)
【特許文献2】特開2008−168869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記実情に鑑みて、左後輪を駆動する左モータと右後輪を駆動する右モータとを備えた電動作業車両において、車体バランスの改善と、十分なバッテリスペースの確保とが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電動作業車両は、車体横断方向に間隔をあけて車体前後方向に延びた左フレーム及び右フレームと、前記左フレームの前記車体横断方向外側に配置された左後輪と、前記右フレームの前記車体横断方向外側に配置された右後輪とからなる後輪ユニットと、前記左後輪と前記右後輪との間に配置され、前端部が前記後輪ユニットの車軸心より前方に位置するバッテリパックと、前記バッテリパックの上方で前記左後輪の周辺に配置されるとともに、前記バッテリパックから給電されて前記左後輪に回転動力を伝達する左モータと、前記バッテリパックの上方で前記右後輪の周辺に配置されるとともに、前記バッテリパックから給電されて前記右後輪に回転動力を伝達する右モータを備え
、
前記バッテリパックが、前側直方体部と、前記前側直方体部に対して上方にずれた後側直方体部とから構成され、前記バッテリパックの上面と下面とに段差を有する段差立体形状である。
【0007】
この構成によれば、バッテリパックの前端部を後輪車軸よりさらに前方に位置させていることから、バッテリパックが長尺化してその後端部が後方に位置しても、バッテリパックの重心が側面視で後輪車軸から大きく外れないので、バッテリパックの重量が車体の車体バランスに与える悪影響は低減される。また、左モータと右モータとをバッテリパックの上方に配置することで、バッテリパックの上方空間が有効利用され、車体の全長を抑制して、コンパクト化が可能となる。
さらに、車体の安定性の観点からは、重量物であるバッテリパックは低く配置することが望ましい。しかしながら、バッテリパックの対地高さが低い場合、バッテリパックの後端部が、悪路走行や登坂走行の際に地面と接触する不都合が生じる。この不都合を解消するとともに、バッテリパックのできるだけ低い重心を確保するためには、バッテリパックの前部分の地上高さは低くし、バッテリパックの後部分の地上高さは高くすることが望ましい。このため、本発明では、前記バッテリパックが、前側直方体部と前記前側直方体部に対して上方にずれた後側直方体部とから構成され、前記バッテリパックの上面と下面とに段差を有する段差立体形状として形成されている。
【0008】
その際、バッテリパックの重心が、平面視において、車体前後方向及び車体横断方向で前記左後輪と前記右後輪とによって規定される後輪区画内に入るように、バッテリパックが配置されると、バッテリパックが車体の安定性に与える悪影響はほとんど無視できる。ここでいう後輪区画とは、後輪の軸心である後車軸心を中心として、車体前後方向で後輪径を一辺の長さとし、左後輪と右後輪との間隔を他辺の長さとする長方形である。より好ましいのは、バッテリパックの重心が、車体前後方向中心線上で、かつ車体前後方向で後車軸心から後輪の半径の長さ内に入っていることである。これにより、バッテリパックの重量が、車体の安定性に貢献する。
【0009】
特に、悪路走行や登坂走行の際における地面との接触を抑制するためには、前記バッテリパックの後端は前記車体前後方向で前記後輪ユニットより後方に位置しているとともに、前記バッテリパックの後端の
最低地上高さは、後車軸ケースの
最低地上高さより高くなるように構成することが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】電動作業車両に搭載されるバッテリパックと後輪との関係を模式的に示す側面図である。
【
図2】電動作業車両に搭載されるバッテリパックと後輪との関係を模式的に示す平面図である。
【
図3】電動作業車両の実施形態の1つである乗用型電動草刈機の側面図である。
【
図5】車体フレームと、バッテリパックと、後輪ユニットの駆動機構とを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に関係する電動作業車両の具体的な実施形態を説明する前に、
図1と
図2とを用いて、電動作業車両に搭載されるバッテリパックの配置を説明する。なお、この明細書において、車体前後方向は、車体の走行方向に沿って水平方向に延びる車体中心軸(車体長手軸とも称する)の方向であり、車体横断方向(単に横方向とも称する)とは、車体中心軸に直交して水平方向に延びる方向である。「前(前方)」は車体前後方向で前進側を意味し、「後(後方)」は車体前後方向で後進側を意味する。「左(左側)」は、車体前進方向を向いて左を意味し、「右(右側)」は、車体前進方向を向いて右を意味する。
【0012】
この電動作業車両は、車体横断方向に間隔をあけて車体前後方向に延びた左フレーム21と右フレーム22と、左フレーム21と右フレーム22とを接続する少なくとも1つのクロスビーム23とを含む車体フレーム20を備えている。前輪ユニット11を構成する左前輪11Lと右前輪11Rとは、車体フレーム20の前部に配置されている。後輪ユニット12を構成する左後輪12Lと右後輪12Rとは、車体フレーム20の中央より後側に配置されている。以下において、特に区別する必要がない場合には、左前輪11Lと右前輪11Rとはその総称として前輪ユニット11なる語句が使用され、左後輪12Lと右後輪12Rとはその総称として後輪ユニット12なる語句が使用される。後車軸心Prは車体横断方向に延びている。
【0013】
バッテリパック6は、左フレーム21と右フレーム22との間で、車体フレーム20の後半領域に配置されており、側方視で、バッテリパック6の前端部が後車軸心Prより前方、ほぼ後輪ユニット12の前端付近に位置している。バッテリパック6の後端は、ほぼ車体フレーム20の後端に位置している。
図2から明らかなように、バッテリパック6は、左フレーム21と右フレーム22との間にほぼぴったりと収まる幅を有し、等幅で車体前後方向に延びている。また、バッテリパック6の前半部は、後輪ユニット12の車軸空間に入り込んでいる。特に好ましいバッテリパック6の配置は、バッテリパック6の重心が、車体前後方向中心線上で、後輪ユニット12の前端と後端との間の領域内、つまり車体前後方向で後車軸心から後輪の半径の長さ内に入っていることである。これにより、バッテリパック6の重量が、車体バランスを悪くしない。
【0014】
さらに、このバッテリパック6は、直方体の前半部に対して後半部が上下方向で上側にずれた形状を有する。つまり、バッテリパック6は、前側直方体部6Fと後側直方体部6Bとから構成された立体形状であり、後側直方体部6Bが前側直方体部6Fに対して上方に突き出している。つまり、バッテリパック6の上面及び下面には、上向きの段差が形成されている。したがって、バッテリパック6の後半部分の対地高さHbは、バッテリパック6の前半部分の対地高さHfより高くなっている。
図1で示された例では、バッテリパック6の前半部分の対地高さHfは、後輪ユニット12の後車軸ケース31の下端の対地高さとほぼ同じである。バッテリパック6の後半部分の対地高さHbは、後車軸ケース31の対地高さより高く、後車軸心Prの対地高さとほぼ同じである。バッテリパック6を支持している部分の車体フレーム20の最低対地高さは、バッテリパック6の最低対地高さにほぼ一致している。バッテリパック6の前半部分の対地高さHfが、低く設定されていることで、バッテリパック6の重心が低くなり、走行安定性が良好となる。また、バッテリパック6の後半部分の対地高さHbが高く設定されていることで、登坂走行時や悪路走行時に、バッテリパック6または車体フレーム20の後端が地面や石に接触する可能性が低い。
【0015】
図2に示すように、左後輪12Lに回転動力を伝達する左モータ4Lは、バッテリパックの前半部分である前側直方体部6Fの上方で左後輪12Lの周辺に配置されている。右後輪12Rに回転動力を伝達する右モータ4Rは、バッテリパックの前半部分である前側直方体部6Fの上方で右後輪12Rの周辺に配置されている。左モータ4Lと右後輪12Rとは左右対称の位置に配置されており、左モータ4Lと左後車軸ケース31Lとは、左トランスミッションケース30Lで連結され、右モータ4Rと右後車軸ケース31Rとは、右トランスミッションケース30Rで連結されている。なお、左トランスミッションケース30Lは左フレーム21の外側に配置され、右トランスミッションケース30Rは右フレーム22の外側に配置されている。左モータ4Lと右モータ4Rとは、モータ4と総称される。左トランスミッションケース30Lと右トランスミッションケース30Rとは、トランスミッションケース30と総称される。左後車軸ケース31Lと右後車軸ケース31Rとは、後車軸ケース31と総称される。モータ4の上方には、運転座席16が配置され、空間が有効に利用されている。
【0016】
さらなる空間の有効利用のため、
図1及び
図2で例示されたバッテリパック6では、バッテリパック6の前側直方体部6Fは、その右上部と左上部が欠如されたような形態で、車体前後方向に延びる凸状の中央部6Fcが作り出されている。このことから、中央部6Fcの左右には、空間が生まれる。前側直方体部6Fの中央部6Fcの左側の空間に左モータ4Lが入り込むとともに、中央部6Fcの右側の空間に右モータ4Rが入り込んでいる。
【0017】
次に、図面を用いて、電動作業車両の具体的な実施形態の1つを説明する。
図3は、電動作業車両の一例である乗用電動草刈機の側面図であり、
図4は乗用電動草刈機の平面図である。
【0018】
図3と
図4に示されているように、乗用電動草刈機(以下単に草刈機と称する)は、車体10を備えており、車体10は、左前輪11Lと右前輪11Rとからなるキャスタタイプの前輪ユニット11と、回転駆動される左後輪12Lと右後輪12Rとからなる後輪ユニット12とによって対地支持されている。車体10は、ベースフレームとして車体フレーム20を有している。車体フレーム20は、左フレーム21と、右フレーム22と、左フレーム21と右フレーム22を連結するクロスビーム23とからなる。前輪ユニット11と後輪ユニット12との間で、モーアユニット13がリンク機構14を介し車体フレーム20から吊り下げられている。モーアユニット13には、ブレード伝動機構131と、このブレード伝動機構131によって回転するブレード132が備えられている。車体10の車体前後方向中央領域に運転座席16が配置されている。バッテリパック6の基本構造と車体フレーム20における基本配置は、
図1と
図2とを用いて説明した内容が採用されている。
【0019】
図5は、車体フレーム20と、バッテリパック6と、後輪ユニット12の駆動機構とを示す斜視図である。後輪ユニット12に回転動力を供給する駆動機構は、モータ4とトランスミッションケース30と、後車軸ケース31とを備えている。
図5に示されているように、左フレーム21及び右フレーム22は、中間領域から上下に分岐し後領域で再び連結している。つまり、左フレーム21は、後半分領域で、上フレーム部21aと下フレーム部21bとを含んでいる。同様に、右フレーム22は、後半分領域で、上フレーム部22aと下フレーム部22bとを含んでいる。側面視で、左フレーム21の上フレーム部21aと下フレーム部21bとの間の領域に左トランスミッションケース30Lが配置され、右フレーム22の上フレーム部22aと下フレーム部22bとの間の領域に右トランスミッションケース30Rが配置されている。左トランスミッションケース30Lには左後車軸ケース31Lがつながっており、この左後車軸ケース31Lに左後輪12Lが支持されている。右トランスミッションケース30Rには右後車軸ケース31Rがつながっており、この右後車軸ケース31Rに右後輪12Rが支持されている。左後車軸ケース31Lは、左後輪12Lの左後車軸41を内装して軸受け支持する筒状体であり、その外形は円錐台形状である。同様に、右後車軸ケース31Rは、右後輪12Rの右後車軸42を内装して軸受け支持する筒状体であり、その外形は円錐台形状である。バッテリパック6は、バッテリパック6の重心が、平面視において、車体前後方向中心線上にほぼ位置しており、かつ後車軸心Prから前側および後側で後輪半径の長さ内に入るように配置されている。
【0020】
左トランスミッションケース30Lは、左後車軸ケース31Lの中心軸心でもある後車軸心Prに直交するように左後車軸ケース31Lから車体前後方向前方に延びた中空体であり、その内部にギヤ伝動機構からなる左トランスミッションが内装されている。左トランスミッションケース30Lの動力入力部32fに左モータ4Lの装着面が形成されている。同様に、右後車軸ケース31Rの中心軸心でもある後車軸心Prに直交するように右後車軸ケース31Rから車体前後方向前方に延びた中空体であり、その内部にギヤ伝動機構からなる右トランスミッションが内装されている。ギヤ伝動機構は、一般的には、入力動力を減速するが、増速であってもよいし、増減速なしでもよい。右トランスミッションの動力入力部32fに右モータ4Rの装着面が形成されている。この実施形態では、左トランスミッションケース30Lと左後車軸ケース31Lとは一体的に構成され、右トランスミッションケース30Rと右後車軸ケース31Rとは一体的に構成されている。なお、左トランスミッション及び右トランスミッションとして、ギヤ伝動機構に代えて、チェーン電動機構や伝動軸機構などを採用してもよい。
【0021】
左モータ4Lと右モータ4Rとに対する変速操作は、運転座席16の両側に配置された、左右一対の変速レバー18(
図3及び
図4参照)によって行われる。変速レバー18を前後中立位置に保持すると対応するモータ4は停止状態となり、変速レバー18を中立位置から前方に操作することで対応するモータ4が正転駆動して前進変速が実現し、後方に操作することで対応するモータ4が後転駆動して後進変速が実現する。左右一対の変速レバー18の独立した操作により、左モータ4Lと右モータ4Rとはそれぞれ独立して可変速駆動制御される。例えば、左右一対の変速レバー18が中立位置から前方向でほぼ同一操作量で操作されると、左後輪12Lと右後輪12Rの両方がほぼ同じ速度で駆動され、車体10が直進前進する。左右一対の変速レバー18が中立位置から後方向でほぼ同一操作量で操作されると、左後輪12Lと右後輪12Rとがほぼ同じ速度で後進方向に駆動され、車体10が直進後進する。さらに、左右一対の変速レバー18が互いに異なる操作量で操作されると、左後輪12Lと右後輪12Rとが異なる速度で駆動され、車体10が旋回する。その際、左後輪12Lと右後輪12Rのいずれか一方を零速に近い低速にさせ、他方を高速で前進側あるいは後進側に操作することで小回り旋回させることができる。さらには、左後輪12Lと右後輪12Rとを互いに逆方向に駆動することで、車体10を後輪ユニット12のほぼ中央部を旋回中心としてスピンターンさせることもできる。
【0022】
以下、
図5、
図6、
図7、
図8を用いて、バッテリパック6を説明する。バッテリパック6は、バッテリケース60に収納された複数のバッテリモジュール6Aを備えている。なお、
図1と
図2とを用いたバッテリパック6の説明では、バッテリケース60とバッテリモジュール6Aとを一体化したものとしてバッテリパック6を取り扱っており、バッテリパック6の前半分が前側直方体部6Fと定義され、バッテリパック6の後半分が後側直方体部6Bと定義されていた。さらに、前側直方体部6Fの上半分には、凸状の中央部6Fcが形成され、その中央部6Fcの左側の空間に左モータ4Lが配置され、中央部6Fcの右側の空間に右モータ4Rが入り込んでいる。このような配置構造は、この実施形態でも採用されている。但し、ここでのバッテリパック6の説明では、本来別体であるバッテリケース60とバッテリモジュール6Aとは、それぞれの構造が別個に説明される。
【0023】
バッテリケース60は、上下2つ割れの成形品であり、上ケース60aと、下ケース60bとからなる。しかしながら、内部構造の説明を容易にするため、バッテリケース60を、前ケース部61と、後ケース部62とに区分けして説明する。
【0024】
前ケース部61は、直方体から、左上部と右上方を凹ませることで、凸状の中央部611が上部に形成された立体である。言い換えると、中央部611の機体横断方向で両側には、左モータ4Lと右モータ4Rとが入り込むモータ収納空間が形成されるように、機体横断方向の長さが短くなっている。後ケース部62は、前ケース部61と前後方向で接続した直方体である。前ケース部61と後ケース部62とは、後ケース部62が上方にずれた姿勢で接続しており、バッテリケース60は、前側と後側とで上下の段差をもった立体形状である。なお、中央部611は、前ケース部61と後ケース部62との接続領域で左右及び上方に拡大した拡大部612を有しており、この拡大部612においてその内部空間が拡張されている。
【0025】
後ケース部62は、前ケース部61と同じ横幅(車体横断方向長さ)を有する直方体形状である。後ケース部62は、前ケース部61に対して上方にずれており、これにより、バッテリケース60は、前ケース部61と後ケース部62との間で段差を有する段差立方体形状となっている。
【0026】
図7と
図8とに示すように、上ケース60aと下ケース60bとに分割されるバッテリケース60の内部には、前ケース部61と後ケース部62とにわたって内部を上下に二分する水平仕切り壁63が設けられている。この水平仕切り壁63によって、前ケース部61の内部は上側の第1空間S1と下側の第2空間S2とに区分けされ、後ケース部62の内部は上側の第3空間S3と下側の第4空間S4とに区分けされる。水平仕切り壁63は板材であり、折り曲げ加工を通じてバッテリケース60と同様な上下段差を有するように成形され、第2空間S2と第3空間S3と第4空間S4とがほぼ同一な形状及び体積となっている。第1空間S1は、幅と高さが他の空間より小さくなっている。第1空間S1と第3空間S3との間には垂直仕切り壁64が設けられている。
【0027】
第2空間S2と第3空間S3と第4空間S4のそれぞれには、同じ仕様のバッテリモジュール6Aが収納されている。
図8に示すように、バッテリモジュール6Aは縦寸法と横寸法とに比べて高さが低い長方体である。このバッテリモジュール6Aの内部に、多数のバッテリセル6aが収納されている。
【0028】
第1空間S1には、バッテリモジュール6Aと外部とを接続する電力線に設けられたリレーやフューズなどからなる電装ユニット68が収納される。垂直仕切り壁64には、第1空間S1の空気を吸引して第3空間S3に送り込む循環ファン69が装着されている。循環ファン69の電気系は電装ユニット68に組み込まれている。水平仕切り壁63はその前端63aと前ケース部61との間に前端隙間G1が形成されており、その後端63bと後ケース部62との間に後端隙間G2が形成されている。さらに、バッテリケース60は、その内部空間に外部から草や塵が入り込まない程度、または、内部空間と外部との間での空気流通が抑制される程度の密閉構造を有する。これにより、バッテリケース60の内部には、循環ファン69から出て、第3空間S3、第4空間S4、第2空間S2を通り抜けて第1空間S1に達し、循環ファン69に戻る循環空気流路(
図7において矢印で示されている)が形成される。この循環空気流路を流れる循環空気によって、バッテリケース60の4つの空間の温度が均等化される。また、電装ユニット68は、そのような循環空気によって冷却される。この冷却効果を高めるため、部分的にしか図示されていないが、バッテリケース60の壁面にはフィン60fが形成されている。フィン60fはバッテリケース60の内壁面または外壁面あるいはその両方に形成可能である。
【0029】
前ケース部61の上壁には、電装ユニット68の保守点検のための開口が設けられており、通常は、蓋613によって閉鎖されている。
【0030】
図3に示すように、この実施形態では、作業装置としてのモーアユニット13に動力を与える作業用モータ4Wがモーアユニット13の後部に配置され、作業用モータ4Wからの動力がベルトを介してブレード伝動機構131に伝達される。これに代えて、バッテリパック6の前側に、作業用モータ4Wを配置することできる。その際には、作業用モータ4Wからの出力軸と中継軸とを含むPTO軸が車体前後方向で前方に延設され、このPTO軸を介して作業用モータ4Wからの動力がモーアユニット13のブレード伝動機構131に伝達される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、左モータと右モータとに給電するバッテリを搭載し、左モータによって左後輪が駆動されるとともに、右モータによって右後輪が駆動される電動作業車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
4 :モータ
4L :左モータ
4R :右モータ
10 :車体
11 :前輪ユニット
12L :左後輪
12R :右後輪
13 :モーアユニット
14 :リンク機構
16 :運転座席
18 :変速レバー
20 :車体フレーム
21 :左フレーム
22 :右フレーム
30L :左トランスミッションケース
30R :右トランスミッションケース
31L :左後車軸ケース
31R :右後車軸ケース
41 :左後車軸
42 :右後車軸
6 :バッテリパック
6B :後側直方体部
6F :前側直方体部
6Fc :中央部
6A :バッテリモジュール
6a :バッテリセル
60 :バッテリケース
60a :上ケース
60b :下ケース
60f :フィン
611 :中央部
612 :拡大部
613 :蓋
61 :前ケース部
62 :後ケース部
63 :水平仕切り壁
64 :垂直仕切り壁
68 :電装ユニット
69 :循環ファン