特許第6573542号(P6573542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573542
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/38 20060101AFI20190902BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   G01N1/38
   G01N35/02 D
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-244843(P2015-244843)
(22)【出願日】2015年12月16日
(65)【公開番号】特開2017-110989(P2017-110989A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 崇志
【審査官】 永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−302928(JP,A)
【文献】 国際公開第00/021651(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/38
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌機構を有する自動分析装置であって、
前記撹拌機構は、
装置本体に対して固定された固定部材と、
前記固定部材に取り付けられたモータと、
前記モータの駆動軸上に設けられた駆動側ヘリカルギアと、
前記モータの駆動軸に対して中心軸を平行に保った状態で前記固定部材に設けられた軸受と、
前記軸受に対して一方側から陥入自在に支持される円柱形状の支持部材と、
前記支持部材の端部に当該支持部材に対して同軸で固定され、前記軸受に対して当該支持部材を陥入させた状態で前記駆動側ヘリカルギアに対して嵌合される従動側ヘリカルギアと、
前記支持部材において前記従動側ヘリカルギアが設けられた端部とは逆側の端部から当該支持部材に対して同軸で延設された撹拌棒とを備え、
前記軸受は、同軸上に複数配置され、前記支持部材の陥入側に配置された軸受の内径は、他方側に配置された軸受の内径よりも大きく、
前記支持部材は、前記複数の軸受の内径に対応する各径の円柱形状部分を有し、当該各円柱形状部分において当該複数の軸受で支持される
自動分析装置。
【請求項2】
前記固定部材は、前記複数の軸受が内設された中空部を有し、
前記複数の軸受のうち、最も径が大きい軸受を除く他の軸受は、当該軸受の内壁と前記中空部の内壁とを面一とした状態で当該中空部の内壁に埋め込まれている
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記軸受は、転がり軸受であり、
前記支持部材は、前記軸受に陥入された状態で当該軸受の内輪上に載置されるフランジを有する
請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記従動側ヘリカルギアの回転軸上に、当該従動側ヘリカルギアから突出する持ち手が設けられた
請求項1〜の何れか1項に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関し、特には分析対象となる検体を含む試料溶液を撹拌するための撹拌機構を有する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、所定量で反応容器内に分注された検体と試薬との混合溶液を、反応容器内において撹拌するための撹拌機構を備えている。撹拌機構としては、例えば混合溶液を撹拌する板状の撹拌子と、これを支持する円柱状の支持体と、撹拌子を振動駆動する振動駆動部と、撹拌子を回転駆動する回転駆動部とを備えたものが開示されている。この構成において回転駆動部は、支持体に回転軸が連結されたモータ及びこのモータを駆動する駆動回路を備えている。モータは、撹拌アーム上に支持され、下方に配置された支持体の上面及び底面の中心を通る中心軸上に回転軸が位置するように配置されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
以上のような撹拌機構は、回転駆動部を備えたことにより、混合溶液の量が所定の量以下である場合には撹拌子を回転させることで、反応容器内の混合溶液を上方に飛散させることなく短時間で均一に撹拌できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−21944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述した撹拌機構は、撹拌子を支持する円柱状の支持体の中心軸に対してモータの回転軸が位置する構成であるため、板状の撹拌子のたがつきを抑えることが難しい。したがって、撹拌子の回転速度に限界があり、短時間で十分な撹拌を行うことができず、この結果、再現性の高い高精度な分析を行うことが困難であった。
【0006】
そこで本発明は、撹拌棒を高速回転させることが可能で、これにより再現性の高い精度良好な分析を行うことが可能な自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明は、撹拌機構を有する自動分析装置であって、前記撹拌機構は、装置本体に対して固定された固定部材と、前記固定部材に取り付けられたモータと、前記モータの駆動軸上に設けられた駆動側ヘリカルギアと、前記モータの駆動軸に対して中心軸を平行に保った状態で前記固定部材に設けられた軸受と、前記軸受に対して一方側から陥入自在に支持される円柱形状の支持部材と、前記支持部材の端部に当該支持部材に対して同軸で固定され、前記軸受に対して当該支持部材を陥入させた状態で前記駆動側ヘリカルギアに対して嵌合される従動側ヘリカルギアと、前記支持部材において前記従動側ヘリカルギアが設けられた端部とは逆側の端部から当該支持部材に対して同軸で延設された撹拌棒とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動分析装置によれば、撹拌棒を高速回転させることが可能で、これにより再現性の高い高精度な分析を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る自動分析装置の撹拌機構の斜視図である。
図2図1の撹拌機構の要部断面図(その1)である。
図3図1の撹拌機構の要部断面図(その2)である。
図4】実施形態に係る自動分析装置を示す概略構成図である。
図5】実施形態に係る自動分析装置における撹拌機構の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の自動分析装置に設けられる撹拌機構の実施形態、およびこの撹拌機構を備えた本発明の自動分析装置の構成を図面に基づいてこの順に説明する。
【0011】
≪撹拌機構の構成≫
図1は、実施形態に係る自動分析装置の撹拌機構100の斜視図である。また図2図1に示す撹拌機構100の要部断面図(その1)であり、撹拌動作を実施する場合の断面面に相当する。さらに図3図1に示す撹拌機構100の要部断面図(そに2)であり、一部を取り外してメンテナンスを実施する場合の断面図に相当する。
【0012】
これらの図に示す撹拌機構100は、自動分析装置に設けられるものであって、自動分析装置の装置本体に固定される固定部30と、固定部30に対して着脱自在な着脱部50とを有している。固定部30は、固定部材31、モータ32、駆動側ヘリカルギア33、図2および図3のみに示す複数の軸受(ここでは大径軸受34と小径軸受35)、さらには図1のみに示すカバー部材36およびセンサー部材37を備えている。また着脱部50は、支持部材51、従動側ヘリカルギア52、撹拌棒53、および持ち手54を備えている。これらの各構成要素の詳細は次の通りである。
【0013】
<固定部材31(固定部30)>
固定部材31は、装置本体に対して撹拌機構100を固定するための部材であり、例えば撹拌機構100を駆動させるための駆動機構200(図2および図3参照)を介して装置本体に固定されている。このような固定部材31は、駆動機構200から延設されたハウジング部材であって、モータ32を保持するためのモータ保持中空部31aと、大径軸受34および小径軸受35を保持するための軸受中空部31b(図3参照)とが設けられている。
【0014】
このうちモータ保持中空部31aは、モータ32の駆動軸φを垂直に保って上方向に突出させる状態で、モータ32をその筐体部分において支持する。
【0015】
一方、軸受中空部31bは、固定部材31に対して、モータ32の駆動軸φと平行に穿設された貫通孔状の空間部分である。この軸受中空部31bは、上方側の開口端側を着脱部50の陥入側とし、複数の軸受(ここでは大径軸受34および小径軸受35)を、上方から内径が大きい順に配置した状態で、同軸上に保って内設している。
【0016】
また軸受中空部31bは、大径軸受34および小径軸受35を内設した状態で、大径軸受34と小径軸受35との間においては、小径軸受35の内径部分が最も小さな内径となるように構成されている。このような軸受中空部31bは、例えばモータ32の駆動軸φと平行な1本の軸を中心軸φ3とし、その内径が上側から下方に向かって狭くなるように構成されている。
【0017】
さらに軸受中空部31bは、最も径が大きく最も上方に配置されている大径軸受34を除く他の軸受(ここでは小径軸受35)を、軸受中空部31bの内壁31sに埋め込む状態で保持する。そして、図3に示すように、小径軸受35の直上に位置する軸受中空部31bの内壁31sは、小径軸受35の内壁35sと面一となるように構成されている。
【0018】
以上により、軸受中空部31bの内壁が、上方から着脱部50を陥入する際のガイドとなり、軸受中空部31bの内壁で引っかかりを生じることなく、着脱部50を陥入させることが可能な構成となっている。なお、大径軸受34および小径軸受35を内設した軸受中空部31bは、図示したように段階的に内径が狭くなっていても良いし、一部に傾斜面を有してもよい。
【0019】
また、以降説明するこれらの大径軸受34および小径軸受35が、ボールベアリングのような転がり軸受である場合、軸受中空部31bは、最も径が大きく最も上方に配置されている大径軸受34を、少なくともその内輪34bが上方に露出する状態で保持する。
【0020】
<モータ32(固定部30)>
モータ32は、固定部材31のモータ保持中空部31aに挿入され、駆動軸φを垂直に保って上方向に突出させた状態で、固定部材31に対して固定されている。ここで用いるモータ32は、例えば1500rpm程度の高速回転が可能なものを好ましく用いることができる。
【0021】
ここでの図示は省略したが、モータ32は、制御部を備えており、撹拌動作を実施する場合には、以降に説明する従動側ヘリカルギア52に加わるスラスト荷重が、大径軸受34および小径軸受35の方向に向くスラスト荷重tPとなるように駆動が制御される。
【0022】
<駆動側ヘリカルギア33(固定部30)>
駆動側ヘリカルギア33は、着脱部50の従動側ヘリカルギア52と嵌合して用いられる平行軸の歯車である。この駆動側ヘリカルギア33は、モータ32の駆動軸φに対して回転軸を一致させた状態でモータ32の駆動軸φ上に設けられ、モータ32の駆動によって駆動側ヘリカルギア33が水平面内において回転する構成となっている。
【0023】
<大径軸受34および小径軸受35(固定部30)>
大径軸受34および小径軸受35は、モータ32の駆動軸φに対して中心軸φ3を平行に保った状態で、固定部材31の軸受中空部31bに内設されたものである。これらの大径軸受34および小径軸受35は、軸受中空部31bの構成の説明でも述べたように、モータ32の駆動軸φと平行な1本の軸を中心軸φ3とし、軸受中空部31b内に上方から内径が大きい順に配置されている。図示した例では、上方側が、支持部材51を有する着脱部50の陥入側であり、この陥入側に配置された大径軸受34の内径は、他方側に配置された小径軸受35の内径よりも大きい。このような関係は、3つ以上の軸受を設けた場合であっても同様である。
【0024】
またこれらの大径軸受34および小径軸受35のうち、最も径が大きく最も上方に配置されている大径軸受34を除く他の軸受(ここでは小径軸受35)は、軸受中空部31bの内壁31sに埋め込まれた状態で保持されている。そして、図3に示すように、小径軸受35の内壁35sは、小径軸受35の直上に位置する軸受中空部31bの内壁31sと面一となるように構成されている。
【0025】
これにより、小径軸受35において引っかかりを生じることなく、大径軸受34および小径軸受35が内設された軸受中空部31b内に、着脱部50を陥入させることが可能な構成となっている。
【0026】
以上のような大径軸受34および小径軸受35は、例えば図示したボールベアリングのような転がり軸受であることが好ましい。この場合、大径軸受34は、軸受中空部31bにおいて固定部材31に固定された外輪34a、その内側に配置された内輪34b、外輪34aと内輪34bとの間に挟持されたボール34cとで構成される。同様に小径軸受35は、軸受中空部31bにおいて固定部材31に固定された外輪35a、その内側に配置された内輪35b、外輪35aと内輪35bとの間に挟持されたボール35cとで構成される。
【0027】
またこの場合、最も径が大きく最も上方に配置されている大径軸受34は、内輪34bの上面が固定部材31から上方に露出する状態で固定部材31に対して固定されていることとする。
【0028】
<カバー部材36(固定部30)>
図1に示すカバー部材36は、次に説明するセンサー部材37を保持するためのものであって、固定部材31に取り付けられている。このカバー部材36は、固定部材31との間に、駆動側ヘリカルギア33と、次に説明する着脱部50の従動側ヘリカルギア52および持ち手54とを収容する。またこのカバー部材36は、例えばヒンジを用いて固定部材31に対して連結され、固定部材31との間の収容空間を開閉自在としている。
【0029】
以上のようなカバー部材は、固定部材31との間の収容空間を閉じた状態において、センサー部材37が駆動側ヘリカルギア33に対向配置される構成であればよく、必ずしも駆動側ヘリカルギア33に対する従動側ヘリカルギア52の抜けを防止するための機能を有している必要はない。
【0030】
<センサー部材37(固定部30)>
図1に示すセンサー部材37は、モータ32の回転速度を制御するためのものであり、カバー部材36の収納空間側、すなわち固定部材31側に設けられている。このセンサー部材37は、例えば、カバー部材36を閉じた状態で、駆動側ヘリカルギア33に対向する位置に設けられたホール素子を利用したエンコーダである。
【0031】
<支持部材51(着脱部50)>
図2および図3に示すように、支持部材51は、大径軸受34および小径軸受35が内設された固定部材31の軸受中空部31bに対して、着脱部50を陥入させた状態において、大径軸受34および小径軸受35に支持される部材である。このような支持部材51は、大径軸受34および小径軸受35の内径に対応する各径の円柱形状部分を同軸上に配置した構成であり、大径軸受34の内径に対応する円柱形状部分が最も大きな径の円柱形状部分となっている。これにより、支持部材51は、径が小さい円柱形状側を先端側とし、この先端側から軸受中空部31b内に自在に嵌入されるものとなっている。またこのような支持部材51は、各径の円柱形状部分において大径軸受34および小径軸受35で支持される。
【0032】
また支持部材51は、軸受中空部31bに内設された大径軸受34および小径軸受35に支持された状態で、大径軸受34の内輪34b上に載置されるフランジ部51fを有する。これにより、大径軸受34の内輪34bがフランジ部51fで下方向に押圧され、外輪34aと内輪34bに対して各ボール34cが密着するため、支持部材51の芯出しを確実とすることができる。
【0033】
<従動側ヘリカルギア52(着脱部50)>
従動側ヘリカルギア52は、固定部30の駆動側ヘリカルギア33と嵌合して用いられる平行軸の歯車である。この従動側ヘリカルギア52は、支持部材51のフランジ部51f側の端部に、支持部材51に対して同軸で固定され、軸受中空部31bに内設された大径軸受34および小径軸受35に対して支持部材51を陥入して支持させた状態で、駆動側ヘリカルギア33に対して嵌合される。
【0034】
これにより、モータ32の駆動により、駆動側ヘリカルギア33が水平面内において回転すると、その回転が従動側ヘリカルギア52に伝達され、1本の軸を回転軸φ5として従動側ヘリカルギア52と支持部材51とが一体に回転する構成となっている。この際、回転軸φ5は、大径軸受34および小径軸受35を設けた軸受中空部31bの中心軸φ3と一致し、モータ32の駆動軸φと平行に保たれる。
【0035】
<撹拌棒53(着脱部50)>
撹拌棒53は、ここでの図示を省略した反応容器内に挿入され、反応容器内に分注された検体と試薬との混合溶液を撹拌するためのものである。この撹拌棒53は、支持部材51における従動側ヘリカルギア52とは逆側の先端部から、支持部材51に対して同軸で回転軸φ5上に延設されている。このような撹拌棒53は、回転軸φ5を中心にして回転することにより、混合溶液を撹拌できる形状を有していれば良く、例えば平板の板状材や、図示したように板状材をひねったスクリュー形状を有している。
【0036】
<持ち手54(着脱部50)>
持ち手54は、固定部30に対して着脱部50を着脱する際に握持される部分であり、従動側ヘリカルギア52の回転軸φ5上に設けられたものである。このような持ち手54は、従動側ヘリカルギア52の回転軸φ5と同軸に設けられた円柱形状であることが好ましい。これにより、回転軸φ5を中心とした着脱部50の回転に対する持ち手54の影響を排除することができる。
【0037】
<撹拌機構の効果>
以上のような構成の撹拌機構100は、駆動側ヘリカルギア33に嵌合する従動側ヘリカルギア52の回転軸φ5上に撹拌棒53を延設した構成である。これにより、図示した例においては、駆動側ヘリカルギア33を上面から見て反時計回りに回転させると、これに追従して従動側ヘリカルギア52が回転すると共に、従動側ヘリカルギア52には回転軸φ5の方向にスラスト荷重が発生する。そこで、撹拌動作を実施する際には、大径軸受34および小径軸受35側に向くスラスト荷重tPを発生させる回転方向でモータ32を駆動させることにより、大径軸受34および小径軸受35側に向かっても回転軸φ5に沿って着脱部50を押し付けることができる。これにより撹拌動作時に着脱部50の回転軸φ5ががたつくことがない。また、撹拌動作時のギア抜けや着脱部50のがたつきを考慮する必要がないため、これらを防止するための機構を設けることに伴う着脱部50の傾きもない。
【0038】
したがって、着脱部50に設けた撹拌棒53の回転速度の高速化を図り、撹拌効率を向上させることが可能になる。また、着脱部50のがたつきや傾きが防止されることにより、撹拌棒53のスクリュー形状の大径化を図ることが可能であり、これによっても撹拌効率の向上を図ることが可能である。
【0039】
また撹拌機構100は、従動側ヘリカルギア52と撹拌棒53との間の支持部材51を、開口系が異なる大径軸受34および小径軸受35で支持する構成である。これによっても、着脱部50のがたつきや傾きをより確実に防止することが可能である。また上述した撹拌動作時には、大径軸受34の内輪34bが、支持部材51のフランジ部51fによって大径軸受34および小径軸受35側に押圧され、外輪34aと内輪34bとの間のボール34cの位置が固定されるため、支持部材51の芯出しを確実とすることができる。また、大きさが異なる大径軸受34と小径軸受35とによって支持部材51を同軸上で支持する構成であるため、着脱部50の回転速度が最高回転数に達するまでの共振点を分散することができ、これによっても、着脱部50のがたつきや傾きを防止することが可能である。
【0040】
しかも上述したとおり、撹拌機構100は、撹拌動作時のギア抜けや着脱部50のがたつきを防止するための機構を設ける必要がない。このため、構成を単純化することができ、かつメンテナンスに際して着脱部50を固定部30から抜き出して交換する場合の作業性の向上を図ることもできる。さらに、撹拌動作時とは逆向きにモータ32を駆動させることにより、スラスト荷重tPとは逆方向のスラスト荷重が着脱部50に加わるため、着脱部50を固定部30から取り出し易くすることも可能である。
【0041】
≪自動分析装置の全体構成≫
図4は、本発明の実施形態に係る自動分析装置の一例を示す概略構成図である。この図に示す自動分析装置1は、血液や尿などの検体に含まれる生体成分を分析する生化学分析装置であり、先の実施形態で説明した構成の撹拌機構を備えたものである。
【0042】
この自動分析装置1は、軸方向の一端(図1での上側)が開口した略円筒状をなす容器状に形成されたサンプルターンテーブル2、希釈ターンテーブル3、第1試薬ターンテーブル4、第2試薬ターンテーブル5、および反応ターンテーブル6を備える。また自動分析装置1は、希釈撹拌装置11、希釈洗浄装置12、第1反応撹拌装置13、第2反応撹拌装置14、多波長光度計15、および反応容器洗浄装置16を備える。さらに自動分析装置1は、サンプル希釈ピペット21、サンプリングピペット22、第1試薬ピペット23、第2試薬ピペット24を備えている。
【0043】
本実施形態の自動分析装置1は、以上の構成要素のうち、希釈撹拌装置11、第1反応撹拌装置13、および第2反応撹拌装置14に、上述した撹拌機構が設けられている。以下、自動分析装置1を構成する各部材の詳細を説明する。
【0044】
<サンプルターンテーブル2>
サンプルターンテーブル2は、その周縁に沿って複数の検体容器P2を複数列で保持し、保持した希釈容器P3を円周の双方向に搬送する構成である。サンプルターンテーブル2に保持される各検体容器P2は、測定対象となる被測定検体および精度管理用のコントロール検体(精度管理試料)が貯留されたものである。サンプルターンテーブル2には、これらの各種の被測定検体が、所定の位置に保持される構成となっている。尚、サンプルターンテーブル2には、検体容器P2の他にも希釈液が貯留される希釈液容器が収容されてもよい。
【0045】
<希釈ターンテーブル3>
希釈ターンテーブル3は、その周縁に沿って複数の希釈容器P3を保持し、保持した希釈容器P3を円周の双方向に搬送する構成である。希釈ターンテーブル3に保持される希釈容器P3には、サンプルターンテーブル2に配置された検体容器P2から吸引され、希釈された被測定検体(以下、「希釈検体」という。)が注入される。
【0046】
<第1試薬ターンテーブル4および第2試薬ターンテーブル5>
第1試薬ターンテーブル4および第2試薬ターンテーブル5は、各周縁に沿って複数の第1試薬容器P4,P5を保持し、それぞれ保持した第1試薬容器P4および第2試薬容器P5を円周の双方向に搬送する構成である。第1試薬ターンテーブル4に保持される複数の第1試薬容器P4には、試薬ボトルから第1試薬が分注される。第2試薬ターンテーブル5に保持される第2試薬容器P5には、試薬ボトルから第2試薬が分注される。
【0047】
<反応ターンテーブル6>
反応ターンテーブル6は、希釈ターンテーブル3と、第1試薬ターンテーブル4と、第2試薬ターンテーブル5との間に配置される。この反応ターンテーブル6は、その周縁に沿って複数の反応容器P6を保持し、保持した反応容器P6を円周の双方向に搬送する構成である。反応ターンテーブル6に保持される反応容器P6には、希釈ターンテーブル3の希釈容器P3からサンプリングした希釈検体と、第1試薬ターンテーブル4の第1試薬容器P4からサンプリングした第1試薬、または第2試薬ターンテーブル5の第2試薬容器P5からサンプリングした第2試薬とが、それぞれ所定量で分注される。そして、この反応容器P6内において、希釈検体と、第1試薬または第2試薬とが撹拌され、反応が行われる。
【0048】
反応ターンテーブル6は、不図示の恒温槽により、反応容器P6の温度を常時一定に保持するように構成されている。
【0049】
<希釈撹拌装置11>
希釈撹拌装置11は、希釈ターンテーブル3の周囲に配置されている。希釈撹拌装置11は、希釈容器P3内において被測定検体と希釈液を撹拌する。この希釈撹拌装置11として、上述した実施形態の撹拌機構、および撹拌機構を駆動するための駆動機構が用いられる。図5Aおよび図5Bに示すように、この希釈撹拌装置11は、装置本体に対して固定された駆動機構200と、駆動機構200に対して固定された撹拌機構100とで構成されている。駆動機構200は、希釈ターンテーブル3の所定位置において撹拌機構100を移動させ、これによって希釈ターンテーブル3の所定位置に保持された希釈容器P3内の溶液(希釈検体)内に、撹拌棒53を自在に挿入する。そして、撹拌棒53が希釈容器P3内の溶液(希釈検体)内に挿入された状態で、撹拌棒53を回転させて溶液(希釈検体)を撹拌する。
【0050】
<希釈洗浄装置12>
希釈洗浄装置12は、希釈ターンテーブル3の周囲に配置されている。希釈洗浄装置12は、以降に説明するサンプリングピペット22によって希釈検体が吸引された後の希釈容器P3を洗浄する装置である。
【0051】
<第1反応撹拌装置13および第2反応撹拌装置14>
第1反応撹拌装置13および第2反応撹拌装置14は、反応ターンテーブル6の周囲に配置されている。第1反応撹拌装置13および第2反応撹拌装置14は、反応ターンテーブル6に保持された反応容器P6内において、希釈検体と、第1試薬または第2試薬とを撹拌する。このような第1反応撹拌装置13および第2反応撹拌装置14として、上述した実施形態の撹拌機構、および撹拌機構を駆動するための駆動機構が用いられる。図5Aおよび図5Bに示すように、これらの第1反応撹拌装置13および第2反応撹拌装置14は、装置本体に対して固定された駆動機構200と、駆動機構200に対して固定された撹拌機構100とで構成されている。駆動機構200は、反応ターンテーブル6の所定位置において撹拌機構100を移動させ、これによって反応ターンテーブル6の所定位置に保持された反応容器P6内において、希釈検体と第1試薬または第2試薬とを撹拌し、これらの反応を進める。
【0052】
<多波長光度計15>
多波長光度計15は、計測部であり、反応ターンテーブル6の周囲における反応ターンテーブル6の外壁と対向するように配置されている。多波長光度計15は、反応容器P6内において第1薬液および第2薬液と反応した希釈検体に対して光学的測定を行ない、検体中の様々な成分の量を「吸光度」という数値データとして出力し、希釈検体の反応状態を検出するものである。
【0053】
<反応容器洗浄装置16>
反応容器洗浄装置16は、検査が終了した反応容器P6内を洗浄する装置である。この反応容器洗浄装置16は、複数の反応容器洗浄ノズルを有している。複数の反応容器洗浄ノズルは、希釈容器洗浄ノズルと同様に、不図示の廃液ポンプと、不図示の洗剤ポンプに接続されている。
【0054】
<サンプル希釈ピペット21>
サンプル希釈ピペット21は、サンプルターンテーブル2と希釈ターンテーブル3の周囲に配置される。サンプル希釈ピペット21は、不図示の希釈ピペット駆動機構により、サンプルターンテーブル2の検体容器P2内に先端部を挿入して、希釈液が充填されたピペットの先端から、空気溜りを介して所定量の被測定検体を吸引する。そして、サンプル希釈ピペット21は、希釈ターンテーブル3の希釈容器P3内に先端部を挿入し、吸引した被測定検体と、サンプル希釈ピペット21自体から供給される所定量の希釈液(例えば、生理食塩水)とを希釈容器P3内に吐出する。その結果、希釈容器P3内で、被測定検体が所定倍数の濃度に希釈される。その後、サンプル希釈ピペット21は、洗浄装置によって洗浄される。
【0055】
<サンプリングピペット22>
サンプリングピペット22は、希釈ターンテーブル3と反応ターンテーブル6の間に配置されている。サンプリングピペット22は、不図示のサンプリングピペット駆動機構により、希釈ターンテーブル3の希釈容器P3内に先端部を挿入して、希釈液が充填されたピペットの先端から、空気溜りを介して所定量の希釈検体を吸引する。そして、サンプリングピペット22は、吸引した希釈検体を反応ターンテーブル6の反応容器P6内に吐出して、反応容器P6に希釈検体を注入する。
【0056】
<第1試薬ピペット23>
第1試薬ピペット23は、反応ターンテーブル6と第1試薬ターンテーブル4の間に配置されている。第1試薬ピペット23は、不図示の第1試薬ピペット駆動機構により、
第1試薬ターンテーブル4の第1試薬容器P4内に先端部を挿入して、希釈液が充填されたピペットの先端から、空気溜りを介して所定量の第1試薬を吸引する。そして、第1試薬ピペット23は、吸引した第1試薬を反応ターンテーブル6の反応容器P6内に吐出する。
【0057】
<第2試薬ピペット24>
第2試薬ピペット24は、反応ターンテーブル6と第2試薬ターンテーブル5の間に配置されている。第2試薬ピペット24は、不図示の第2試薬ピペット駆動機構により、
第2試薬ターンテーブル5の第2試薬容器P5内に先端部を挿入して、希釈液が充填されたピペットの先端から、空気溜りを介して所定量の第2試薬を吸引する。そして、第2試薬ピペット24は、吸引した第2試薬を反応ターンテーブル6の反応容器P6内に吐出する。
【0058】
<自動分析装置1の効果>
以上のように構成された自動分析装置1は、希釈撹拌装置11、第1反応撹拌装置13、および第2反応撹拌装置14に、上述した実施形態の撹拌機構を用いている。これにより、希釈容器P3内においての被測定検体と希釈液との撹拌、および反応容器P6内においての希釈検体と第1試薬または第2試薬との撹拌を、高速かつ光度な位置決め精度で実施することができる。この結果、特に反応容器P6内においての希釈検体と第1試薬または第2試薬との反応を高速で確実に進めることができ、再現性の高い精度良好な分析を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0059】
1…自動分析装置
31…固定部材
31b…軸受中空部
31s…内壁(軸受中空部)
32…モータ
φ…駆動軸
33…駆動側ヘリカルギア
35…軸受
35b…内輪(軸受)
35s…内壁(軸受)
φ3…中心軸(軸受)
51…支持部材
51f…フランジ(支持部材)
φ5…回転軸(支持部材を含む着脱部)
52…従動側ヘリカルギア
53…撹拌棒
54…持ち手
100…撹拌機構
図1
図2
図3
図4
図5