特許第6573543号(P6573543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

<>
  • 特許6573543-スクリュ圧縮機 図000002
  • 特許6573543-スクリュ圧縮機 図000003
  • 特許6573543-スクリュ圧縮機 図000004
  • 特許6573543-スクリュ圧縮機 図000005
  • 特許6573543-スクリュ圧縮機 図000006
  • 特許6573543-スクリュ圧縮機 図000007
  • 特許6573543-スクリュ圧縮機 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573543
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】スクリュ圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 23/00 20060101AFI20190902BHJP
   F04C 18/16 20060101ALI20190902BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   F04C23/00 C
   F04C18/16 A
   F04C29/00 B
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-246281(P2015-246281)
(22)【出願日】2015年12月17日
(65)【公開番号】特開2017-110587(P2017-110587A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】矢野 宜男
(72)【発明者】
【氏名】宮武 利幸
(72)【発明者】
【氏名】菊池 政寛
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−053009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/00
F04C 18/16
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュロータにより流体を圧縮する第1段圧縮機本体および第2段圧縮機本体と、
前記第1段圧縮機本体および前記第2段圧縮機本体を駆動する電動機と、
前記第1段圧縮機本体および前記第2段圧縮機本体と前記電動機とに接続され、前記電動機の駆動力を前記スクリュロータに伝達し、前記第1段圧縮機本体を取り付ける第1取付穴および前記第2段圧縮機本体を取り付ける第2取付穴を有し、前記第1取付穴および前記第2取付穴の両方を囲む環状リブが設けられている歯車箱と
を備える、スクリュ圧縮機。
【請求項2】
前記環状リブは、
前記第1取付穴の周囲に設けられた部分である第1リブ領域と、
前記第2取付穴の周囲に設けられた部分である第2リブ領域と、
前記第1リブ領域と前記第2リブ領域との間の領域である第3リブ領域とを備え、
前記第1リブ領域を構成する第1リブ部の間の上下方向の最大間隔が第1間隔であり、
前記第2リブ領域を構成する第2リブ部の間の上下方向の最大間隔が第2間隔であり、
前記第3リブ領域を構成する第3リブ部の間の上下方向の最大間隔が第3間隔であり、
前記第3間隔は、前記第1間隔以下であり、かつ、前記第2間隔以下であり、
前記第3リブ部の上側のリブである中央上側リブは、前記第1取付穴の中心と前記第2取付穴の中心とを結んだ仮想中心線よりも上側に配置され、
前記第3リブ部の下側のリブである中央下側リブは、前記仮想中心線よりも下側に配置されている、請求項1に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項3】
前記中央上側リブと前記中央下側リブの間の前記歯車箱の板厚は、前記歯車箱の他の部分の板厚の平均値よりも厚い、請求項2に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項4】
前記第1リブ部と前記中央上側リブとの接続部と、前記第1リブ部と前記中央下側リブとの接続部とを接続する第4リブ部と、
前記第2リブ部と前記中央上側リブとの接続部と、前記第2リブ部と前記中央下側リブとの接続部とを接続する第5リブ部と
を備える、請求項2または請求項3に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項5】
前記第1取付穴の外周と、前記第1リブ部または前記第4リブ部とを接続する第6リブ部を備える、請求項4に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項6】
前記第2取付穴の外周と、前記第2リブ部または前記第5リブ部とを接続する第7リブ部を備える、請求項4または請求項5に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項7】
前記中央上側リブと前記中央下側リブとの間に、前記中央上側リブまたは前記中央下側リブに沿って延びる、もしくは前記中央上側リブと前記中央下側リブとが成す角度の範囲内で前記中央下側リブに沿って延びる第8リブ部を備える、請求項2から請求項6のいずれか1項に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項8】
前記第1リブ部の一部が前記歯車箱の側壁と一体となっている、請求項2から請求項7のいずれか1項に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項9】
前記第1リブ部と前記歯車箱の側壁とを接続する第9リブ部を備える、請求項2から請求項7のいずれか1項に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項10】
前記第2リブ部の一部が前記歯車箱の側壁と一体となっている、請求項2から請求項9のいずれか1項に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項11】
前記第2リブ部と前記歯車箱の側壁とを接続する第10リブ部を備える、請求項2から請求項9のいずれか1項に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項12】
前記第1リブ部の一部、前記第2リブ部の一部、または前記中央上側リブの一部が前記歯車箱の天板と一体となっている、請求項2から請求項11のいずれか1項に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項13】
前記第1リブ部、前記第2リブ部、または前記中央上側リブと前記歯車箱の天板とを接続する第11リブ部を備える、請求項2から請求項12のいずれか1項に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項14】
前記歯車箱の板厚の平均値よりも前記環状リブの高さが大きい、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のスクリュ圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュ圧縮機は、工場等での高圧エアーの供給源として使用されるものとしてよく知られている。スクリュ圧縮機は、モータと、歯車箱と、圧縮機本体とを備える。モータからの動力は、歯車箱内の歯車を介して圧縮機本体に伝達される。伝達された動力により、圧縮機本体内のスクリュロータが回転され、空気等の流体を圧縮する。このときスクリュロータは、軸受で両端部を軸支された状態で高速回転する。そのため、軸受は壊れ難い設計が要求され、軸受部の振動はできる限り小さいことが好ましい。
【0003】
また、圧縮機本体および歯車箱は、複数の固有振動数を有する。固有振動数と圧縮機本体の回転数が一致すると、共振現象が起こり、圧縮機本体の軸受部の振動が増大する。この振動増大を防止するためには、固有振動数を圧縮機本体の回転数範囲外とすることが好ましい。しかし、複数の固有振動数の全てを圧縮機本体の回転数範囲から外すことは現実的に不可能である。そのため、外すことが不可能な固有振動数に関しては、共振時の振動をできるだけ小さくするように設計することが好ましい。
【0004】
例えば特許文献1には、歯車箱(結合ピース)の構造により歯車箱が伝達する振動を低減させる圧縮機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−318159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の圧縮機では、固有振動モードは詳細に検討されておらず、効率的な振動低減は実現されていない。
【0007】
本発明は、スクリュ圧縮機の振動を効率的に低減させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、スクリュ圧縮機の振動に関する種々の実験や解析の結果、複数の固有振動モードのうち振動が顕著となる固有振動モード(以降、特定固有振動モードという)を特定した。具体的には、特定固有振動モードは、第1段圧縮機本体および第2段圧縮機本体が近接と離反を繰り返す水平方向の振動モードである。本発明はかかる新たな知見に基づくものである。
【0009】
本発明は、スクリュロータにより流体を圧縮する第1段圧縮機本体および第2段圧縮機本体と、前記第1段圧縮機本体および前記第2段圧縮機本体を駆動する電動機と、前記第1段圧縮機本体および前記第2段圧縮機本体と前記電動機とに接続され、前記電動機の駆動力を前記スクリュロータに伝達し、前記第1段圧縮機本体を取り付ける第1取付穴および前記第2段圧縮機本体を取り付ける第2取付穴を有し、前記第1取付穴および前記第2取付穴の両方を囲む環状リブが設けられている歯車箱とを備えるスクリュ圧縮機を提供する。
【0010】
上記構成によれば、特定固有振動モードの振動を効率的に低減させることができる。具体的には、歯車箱の第1取付穴および第2取付穴の周辺に環状リブを設け、特定固有振動モードに対する剛性を向上させることで、スクリュ圧縮機を低振動化でき、壊れ難くできる。
【0011】
前記環状リブは、前記第1取付穴の周囲に設けられた部分である第1リブ領域と、
前記第2取付穴の周囲に設けられた部分である第2リブ領域と、前記第1リブ領域と前記第2リブ領域の間の領域である第3リブ領域とを備え、前記第1リブ領域を構成する第1リブ部の間の上下方向の最大間隔が第1間隔であり、前記第2リブ領域を構成する第2リブ部の間の上下方向の最大間隔が第2間隔であり、前記第3リブ領域を構成する第3リブ部の間の上下方向の最大間隔が第3間隔であり、前記第3間隔は、前記第1間隔以下であり、かつ、前記第2間隔以下であり、前記第3リブ部の上側のリブである中央上側リブは、前記第1取付穴の中心と前記第2取付穴の中心とを結んだ仮想中心線よりも上側に配置され、前記第3リブ部の下側のリブである中央下側リブは、前記仮想中心線よりも下側に配置されていることが好ましい。
【0012】
前記第3間隔が、前記第1間隔以下であり、かつ、前記第2間隔以下であることで、第3リブ部の特定固有振動モードに対する剛性を向上させることができ、特定固有振動モードの振動を抑制できる。第3間隔が広い場合と狭い場合を比べると、狭い場合の方が特定固有振動モードに対する剛性が向上するためである。また、中央上側リブが前記仮想中心線よりも上側に配置され、中央下側リブが前記仮想中心線よりも下側に配置されることで、上下方向のリブ配置のバランスをとることができ、歯車箱の第1段圧縮機本体および第2段圧縮機本体の取付面におけるねじれを抑制できる。なお、取付穴の中心とは、取付穴に均一密度の質量体を充填した際の質量体の重心位置を意味する。
【0013】
前記中央上側リブと前記中央下側リブの間の前記歯車箱の板厚は、前記歯車箱の他の部分の板厚の平均値よりも厚いことが好ましい。
【0014】
中央上側リブと中央下側リブの間の歯車箱の部分は、特定固有振動モードの振動において、他の歯車箱の部分に比べて変形量が大きいため、この部分の板厚を増すことで特定固有振動モードに対する剛性を向上でき、特定固有振動モードの振動を抑制できる。
【0015】
前記第1リブ部と前記中央上側リブとの接続部と、前記第1リブ部と前記中央下側リブとの接続部とを接続する第4リブ部と、前記第2リブ部と前記中央上側リブとの接続部と、前記第2リブ部と前記中央下側リブとの接続部とを接続する第5リブ部とを備えることが好ましい。
【0016】
第4リブ部および第5リブ部を設けることで、第1取付穴および第2取付穴の周囲の剛性を向上させ、特定固有振動モードに対する剛性を向上させると共に、第1段圧縮機本体および第2段圧縮機本体の取付面におけるねじれに対する剛性も向上できる。従って、特定固有振動モードの振動およびねじれの両方を抑制できる。
【0017】
前記第1取付穴の外周と、前記第1リブ部または前記第4リブ部とを接続する第6リブ部を備えることが好ましい。また、前記第2取付穴の外周と、前記第2リブ部または前記第5リブ部とを接続する第7リブ部を備えることが好ましい。
【0018】
第6リブ部および第7リブ部を設けることで、第1取付穴および第2取付穴の周囲の剛性および第1段圧縮機本体および第2段圧縮機本体の取付面におけるねじれに対する剛性を向上できる。従って、特定固有振動モードの振動およびねじれの両方を抑制できる。
【0019】
前記中央上側リブと前記中央下側リブとの間に、前記中央上側リブまたは前記中央下側リブに沿って延びる、もしくは前記中央上側リブと前記中央下側リブとが成す角度の範囲内で前記中央下側リブに沿って延びる第8リブ部を備えることが好ましい。
【0020】
第8リブ部を設けることで、特定固有振動モードに対する剛性を向上させることができ、特定固有振動モードの振動を抑制できる。
【0021】
前記第1リブ部の一部が前記歯車箱の側壁と一体となっていてもよい。また、前記第2リブ部の一部が前記歯車箱の側壁と一体となっていてもよい。また、前記第1リブ部の一部、前記第2リブ部の一部、または前記中央上側リブの一部が前記歯車箱の天板と一体となっていてもよい。
【0022】
第1リブ部の一部および第2リブ部の一部が歯車箱の側壁と一体となっていることで、第1リブ部および第2リブ部の剛性を向上させることができる。また、環状リブの上側部分の一部を歯車箱の天板と一体化することで、環状リブの上側部分の剛性を向上でき、特定固有振動モードに対する剛性を向上させることができる。従って、特定固有振動モードの振動およびねじれの両方を抑制できる。
【0023】
前記第1リブ部と前記歯車箱の側壁とを接続する第9リブ部を備えてもよい。また、前記第2リブ部と前記歯車箱の側壁とを接続する第10リブ部を備えてもよい。また、前記第1リブ部、前記第2リブ部、または前記中央上側リブと前記歯車箱の天板とを接続する第11リブ部を備えてもよい。
【0024】
第9リブ部および第10リブ部を設けることで、第1リブ部および第2リブ部を歯車箱の側壁と接続し、第1リブ部および第2リブ部の剛性を向上させることができる。また、第11リブ部を設けることで、第1リブ部、第2リブ部、および第3リブ部の少なくとも一つを歯車箱の天板と接続し、環状リブの剛性を向上させることができる。従って、特定固有振動モードの振動およびねじれの両方を抑制できる。
【0025】
前記歯車箱の板厚の平均値よりも前記環状リブの高さが大きいことが好ましい。
【0026】
具体的にリブの高さを一定以上に規定することで剛性の向上が具体的に実現できると共に、リブの高さの最小値を規定することで最低限の剛性を確保できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、スクリュ圧縮機において、歯車箱の第1取付穴および第2取付穴の周辺に環状リブを設け、特定固有振動モードに対する剛性を向上させることで、振動を効率的に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態に係るスクリュ圧縮機の平面図。
図2図1のスクリュ圧縮機の側面図。
図3図1のスクリュ圧縮機の特定固有振動モードを示す模式図。
図4図1のスクリュ圧縮機のIV−IV線に沿った断面図。
図5図4の第8リブ部の変形例を示す断面図。
図6図4のスクリュ圧縮機のVI−VI線に沿った断面図。
図7】本発明の第2実施形態に係るスクリュ圧縮機の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1および図2を参照すると、本実施形態に係るスクリュ圧縮機2は、第1段圧縮機本体4と、第2段圧縮機本体6と、モータ(電動機)8と、歯車箱10とを備える。
【0031】
第1段圧縮機本体4および第2段圧縮機本体6は、歯車箱10に取り付けられており、内部に雌雄一対のスクリュロータ(図示せず)をそれぞれ備える。スクリュロータは、歯車箱10内に配置された歯車(図示せず)を介してモータ8から駆動力を受けて駆動される。第1段圧縮機本体4の吐出口および第2段圧縮機本体6の吸気口は図示しない配管で流体的に接続されている。空気は、第1段圧縮機本体4で吸気されて圧縮され、第2段圧縮機本体6に供給され、第2段圧縮機本体6でさらに圧縮された後、吐出される。
【0032】
モータ8は、歯車箱10に取り付けられた状態で支持部材12および防振ゴム14aを介して床面に設置されている。モータ8は、上述のように第1段圧縮機本体4および第2段圧縮機本体6を駆動する。
【0033】
歯車箱10は、前壁10a、後壁10b、2つの側壁10c,10c、底板10d、および天板10eで閉じられた箱である。後壁10bには、モータ8を取り付けるためのモータ取付穴(図示せず)が設けられている。前壁10aには、第1段圧縮機本体4を取り付けるための第1取付穴10fおよび第2段圧縮機本体6を取り付けるための第2取付穴10gが設けられている(図4参照)。歯車箱10は、底板10dの下に2つの防振ゴム14b取り付けられた状態で床面に設置されている。
【0034】
通常、歯車箱10に取り付けられた第1段圧縮機本体4および第2段圧縮機本体6にモータ8から駆動力が伝達されると、第1段圧縮機本体4および第2段圧縮機本体6は複数の固有振動モードをもって振動する。複数の固有振動モードの中には、スクリュ圧縮機2に対して特に負担のかかるモードが存在する。そのような負担のかかるモードの振動を低減させることは耐久性向上のために好ましい。
【0035】
本発明者は、種々の実験や解析の結果、複数の固有振動モードのうち振動が顕著となる固有振動モード(以降、特定固有振動モードという)を特定した。具体的には図3に示すように、特定固有振動モードは、第1段圧縮機本体4および第2段圧縮機本体6が近接と離反を繰り返す水平方向の振動モードである(矢印A参照)。本発明はかかる新たな知見に基づくものである。
【0036】
図4を参照すると、本実施形態に係るスクリュ圧縮機2では、特定固有振動モード(図3参照)の振動を抑制するため、歯車箱10の前壁10aの内面に、効率的な配置でリブを設けている。以降、リブの配置の詳細について説明する。
【0037】
歯車箱10の前壁10aの内面において、第1取付穴10fおよび第2取付穴10gの周囲には、これらを囲む環状リブ20が設けられている。環状リブ20の幅は前壁10aの板厚の平均値程度あり、高さは前壁10aの板厚の平均値よりも大きい程度である。環状リブ20の形状は、特に限定されず、第1取付穴10fおよび第2取付穴10gを囲んでいればよいが、第1取付穴10fおよび第2取付穴10gの付近に形成することが好ましい。
【0038】
上記構成によれば、特定固有振動モードの振動を効率的に低減させることができる。具体的には、歯車箱10の第1取付穴10fおよび第2取付穴10gの周辺に環状リブ20を設け、特定固有振動モードに対する剛性を向上させているため、スクリュ圧縮機2を低振動化でき、壊れ難くできる。また、具体的に環状リブ20の高さを一定以上に規定することで剛性の向上が具体的に実現できると共に、環状リブ20の高さの最小値(前壁10aの板厚の平均値)を規定することで最低限の剛性を確保できる。
【0039】
環状リブ20は、第1リブ領域20aと、第2リブ領域20bと、第3リブ領域20cとに分けられる。第1リブ領域20aは、第1取付穴10fの周囲に設けられた部分であり、第1リブ部21によって構成されている。第2リブ領域20bは、第2取付穴10gの周囲に設けられた部分であり、第2リブ部22によって構成されている。第3リブ領域20cは、第1リブ領域20aと第2リブ領域20bとの間の領域であり、第3リブ部23によって構成されている。第1リブ部21間の上下に最も広い部位の間隔を第1間隔d1とし、第2リブ部22間の上下に最も広い部位の間隔を第2間隔d2とし、第3リブ部23間の上下に最も広い部位の間隔を第3間隔d3とすると、本実施形態では、第3間隔d3は第1間隔d1以下でありかつ第2間隔d2以下である。即ち、第3間隔d3が最も狭く、環状リブ20は中央部が窄められた形状である。
【0040】
また、第1取付穴10fの中心G1と第2取付穴10gの中心G2とを結んだ仮想中心線Lcを設定する。その場合、第3リブ部23の上側のリブである中央上側リブ23aは仮想中心線Lcよりも上側に配置され、第3リブ部23の下側のリブである中央下側リブ23bは仮想中心線Lcよりも下側に配置されている。即ち、中央上側リブ23aと中央下側リブ23bの間に仮想中心線Lcが配置されるように構成されている。本実施形態では、中央上側リブ23aと中央下側リブ23bが平行に形成されている。
【0041】
第3間隔d3が他の間隔d1,d2と比べて狭いことで、第3リブ部23の特定固有振動モードに対する剛性を向上させることができ、特定固有振動モードの振動を抑制できる。第3間隔d3が広い場合と狭い場合を比べると、狭い場合の方が特定固有振動モードに対する剛性が向上するためである。また、中央上側リブ23aが仮想中心線Lcよりも上側に配置され、中央下側リブ23bが仮想中心線Lcよりも下側に配置されることで、上下方向のリブ配置のバランスをとることができ、歯車箱10の前壁10aにおけるねじれを抑制できる。
【0042】
図6を参照すると、中央上側リブ23aと中央下側リブ23bの間の歯車箱10の前壁10aの板厚T1は、歯車箱10の他の部分の板厚の平均値Taよりも厚く形成されている。前壁10aの当該部分の板厚T1を厚くするためには、別の板状部材で当て板をしてもよい。本実施形態では、前壁10aの当該部分の板厚T1はそれ以外の部分の板厚の平均値Taと比較して1.2倍から2.0倍程度厚く形成されているが、数値は限定されない。
【0043】
中央上側リブ23aと中央下側リブ23bの間の歯車箱10の前壁10aの部分は、特定固有振動モードの振動において、他の歯車箱10の前壁10aの部分に比べて変形量が大きいため、この部分の板厚を増すことで特定固有振動モードに対する剛性を向上でき、特定固有振動モードの振動を抑制できる。
【0044】
図4および図6に併せて示すように、歯車箱10の前壁10aの内面には、第1リブ部21および中央上側リブ23aの接続部と、第1リブ部21および中央下側リブ23bの接続部とを接続する第4リブ部24が設けられている。また、第2リブ部22および中央上側リブ23aの接続部と、第2リブ部22および中央下側リブ23bの接続部とを接続する第5リブ部25が設けられている。
【0045】
第4リブ部24および第5リブ部25を設けることで、第1取付穴10fおよび第2取付穴10gの周囲の剛性を向上させ、特定固有振動モードに対する剛性を向上させると共に、前壁10aにおけるねじれに対する剛性も向上できる。従って、特定固有振動モードの振動およびねじれの両方を抑制できる。
【0046】
また、歯車箱10の前壁10aの内面には、第1取付穴10fの外周と第1リブ部21とを接続する第6リブ部26が設けられている。さらに、第2取付穴10gの外周と、第2リブ部22とを接続する第7リブ部27が設けられている。本実施形態では、第6リブ部26は2本設けられ、第7リブ部27は1本設けられているが、それらの数は特に限定されない。また、第6リブ部26は第1取付穴10fの外周と第4リブ部24とを接続してもよく、第7リブ部27は第2取付穴10gの外周と第5リブ部25とを接続してもよい。
【0047】
第6リブ部26および第7リブ部27を設けることで、第1取付穴10fおよび第2取付穴10gの周囲の剛性および前壁10aにおけるねじれに対する剛性を向上できる。従って、特定固有振動モードの振動およびねじれの両方を抑制できる。
【0048】
また、歯車箱10の前壁10aの内面には、中央上側リブ23aと中央下側リブ23bとの間に、中央上側リブ23aおよび中央下側リブ23bに沿って延びる第8リブ部28が設けられている。本実施形態では、中央上側リブ23aおよび中央下側リブ23bが平行に形成されているため、第8リブ部28はこれらの両方に沿って延びている。しかし、図5に示すように、中央上側リブ23aおよび中央下側リブ23bが平行に形成されていない場合、破線で示すように中央上側リブ23aおよび中央下側リブ23bの少なくとも一方に沿って第8リブ部28が延びていればよい。或いは、第8リブ部28は、中央下側リブ23bに対して、中央上側リブ23aと中央下側リブ23bとで成す角度θとの間の角度で、第8リブ部28が延びていてもよい。
【0049】
第8リブ部28を設けることで、特定固有振動モードに対する剛性を向上させることができ、特定固有振動モードの振動を抑制できる。
【0050】
また、歯車箱10の前壁10aの内面には、第1リブ部21と歯車箱10の側壁10cとを接続する第9リブ部29が設けられている。さらに、歯車箱10には、第2リブ部22と歯車箱10の側壁10cとを接続する第10リブ部30が設けられている。本実施形態では、第9リブ部29は1本設けられ、第10リブ部30は2本設けられているが、それらの数は特に限定されない。また、リブの長さを短く形成するため、第9リブ部29は、図4において第1リブ部21の左側部分と歯車箱10の側壁10cとを接続することが好ましい。同様に、第10リブ部30は、図4において第2リブ部22の右側部分と歯車箱10の側壁10cとを接続することが好ましい。
【0051】
また、歯車箱10には、第1リブ部21、第2リブ部22、および中央上側リブ23aと歯車箱10の天板10eとをそれぞれ接続する3つの第11リブ部31が設けられている。本実施形態では、第11リブ部31は、3つ設けられているが、その数は限定されず、第1リブ部21、第2リブ部22、および中央上側リブ23aの少なくとも一つと歯車箱10の天板10eとを接続していればよい。
【0052】
第9リブ部29および第10リブ部30を設けることで、第1リブ部21および第2リブ部22を歯車箱10の側壁10cと接続し、第1リブ部21および第2リブ部22の剛性を向上させることができる。また、第11リブ部31を設けることで、第1リブ部21、第2リブ部22、および第3リブ部23の少なくとも一つを歯車箱10の天板10eと接続し、環状リブ20の剛性を向上させることができる。従って、特定固有振動モードの振動およびねじれの両方を抑制できる。
【0053】
(第2実施形態)
図7に示す第2実施形態のスクリュ圧縮機2では、第1リブ部21の一部および第2リブ部22の一部が歯車箱10の天板10eおよび側壁10cと一体化されている。本実施形態は、この点を除いて図4の第1実施形態と実質的に同様である。従って、図1から図6に示した構成と同様の部分については説明を省略する。
【0054】
本実施形態では、第1実施形態の第9から第11リブ部29〜31(図4参照)が省略され、第1リブ部21の一部および第2リブ部22の一部が歯車箱10の天板10eおよび側壁10cと一体化されている。本実施形態の変形例として第3リブ部23の一部が歯車箱10の天板10eと一体化されていてもよい。
【0055】
第1リブ部21の一部および第2リブ部22の一部が歯車箱10の側壁10cと一体となっていることで、第1リブ部21および第2リブ部22の剛性を向上させることができる。また、環状リブ20の上側部分の一部を歯車箱10の天板10eと一体化することで、環状リブ20の上側部分の剛性を向上でき、特定固有振動モードに対する剛性を向上させることができる。従って、特定固有振動モードの振動およびねじれの両方を抑制できる。
【符号の説明】
【0056】
2 スクリュ圧縮機
4 第1段圧縮機本体
6 第2段圧縮機本体
8 モータ(電動機)
10 歯車箱
10a 前壁
10b 後壁
10c 側壁
10d 底板
10e 天板
10f 第1取付穴
10g 第2取付穴
12 支持部材
14a,14b 防振ゴム
20 環状リブ
20a 第1リブ領域
20b 第2リブ領域
20c 第3リブ領域
21 第1リブ部
22 第2リブ部
23 第3リブ部
23a 中央上側リブ
23b 中央下側リブ
24 第4リブ部
25 第5リブ部
26 第6リブ部
27 第7リブ部
28 第8リブ部
29 第9リブ部
30 第10リブ部
31 第11リブ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7