特許第6573576号(P6573576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573576メタマテリアルを用いた受動的な放射乾式冷却モジュール/システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573576
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】メタマテリアルを用いた受動的な放射乾式冷却モジュール/システム
(51)【国際特許分類】
   F25D 31/00 20060101AFI20190902BHJP
   F28F 3/00 20060101ALI20190902BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20190902BHJP
   F25B 23/00 20060101ALI20190902BHJP
   F25D 9/00 20060101ALN20190902BHJP
【FI】
   F25D31/00
   F28F3/00 311
   F28F21/08 A
   F25B23/00 Z
   !F25D9/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-103849(P2016-103849)
(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-3255(P2017-3255A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2019年5月20日
(31)【優先権主張番号】14/740,051
(32)【優先日】2015年6月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター・リウ
(72)【発明者】
【氏名】バーナード・ディー・カッセ
(72)【発明者】
【氏名】アーミン・アール・ヴォルケル
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0131023(US,A1)
【文献】 特開昭58−83168(JP,A)
【文献】 特開平7−55178(JP,A)
【文献】 特開2005−83600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00 〜 49/04
F25D 1/00 〜 31/00
F28D 1/00 〜 21/00
F28F 1/00 〜 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受動的な放射冷却システムであって、
第1の表面の上に配置される複数のメタマテリアルナノ構造を有する金属シートと;
前記金属シートの第1の表面の上に取り付けられる反射層と;
冷却剤が、前記金属シートの第2の表面に対して流れることによって、熱エネルギーが、前記冷却剤から、前記金属シートを通り、前記複数のメタマテリアルナノ構造へと伝わるように、前記金属シートの下に配置され、前記冷却剤が通るように構成された溝構造とを備え、
前記複数のメタマテリアルナノ構造が、超黒色メタマテリアルに由来するパターンに整列し、8μm〜13μmの範囲の波長を有する放射エネルギーを放出するように構成され、
前記反射層が、入射日射を反射し、前記放射エネルギーを伝達するように構成され、 前記複数のメタマテリアルナノ構造が、前記金属シートの上部表面に配置されたテーパー形状のナノ細孔の配列を含み、
それぞれの前記テーパー形状のナノ細孔の公称幅は、1ミクロンより小さい、
受動的な放射冷却システム。
【請求項2】
前記複数のメタマテリアルナノ構造が、さらに、16μm〜28μmの範囲の波長を有する前記放射エネルギーを発生させるように構成される、請求項1に記載の受動的な放射冷却システム。
【請求項3】
前記金属シートは、第1の金属を含み、めっきされた金属層は、前記金属シートの上向きの表面と、それぞれの前記テーパー形状のナノ細孔の内側に配置され、前記めっきされた金属層は、前記第1の金属とは異なる第2の金属を含む、請求項に記載の受動的な放射冷却システム。
【請求項4】
前記金属シートが、アルミニウムを含み、前記めっきされた金属層が、ニッケル(Ni)、銅(Cu)および金(Ag)の1つ以上を含む、請求項に記載の受動的な放射冷却システム。
【請求項5】
受動的な放射冷却システムであって、
複数のモジュールを含み、それぞれのモジュールが、
金属シートと、前記金属シートの第1の表面の上にある超黒色メタマテリアルに由来するパターンに整列した複数のメタマテリアルナノ構造とを有し、前記複数のメタマテリアルナノ構造は、8μm〜13μmの範囲の波長を有する放射エネルギーを放出するように構成された、超黒色エミッタと;
エミッタ層の第1の表面に取り付けられ、入射日射を反射するように構成される反射層と;
前記金属シートのエミッタ層の下に配置され、入口と出口の間を冷却剤が流れるように構成され、熱エネルギーが、冷却剤から、前記金属シートを通り、前記複数のメタマテリアルナノ構造へと伝わる、溝構造と;
前記冷却剤が前記複数のモジュールを通って流れるように構成された流れ制御システムとを備え、
前記金属シートが、アルミニウム系の層と、アルミニウム系の層の上に配置された酸化アルミニウム層とを含み、
前記複数のメタマテリアルナノ構造が、前記酸化アルミニウム層内に完全に規定されたテーパー形状のナノ細孔の配列を含み、
前記超黒色エミッタは、前記酸化アルミニウム層と、それぞれの前記テーパー形状のナノ細孔の内側に完全に配置されためっきされた金属層をさらに含み、
前記めっきされた金属層が、ニッケル(Ni)、銅(Cu)および金(Ag)の1つ以上を含む、
受動的な放射冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式冷却システムに関し、特に、発電所のための規模を調整可能な受動的な放射冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大きな冷却システムは、発電に重要な役割を果たす。ほとんどの発電所は、熱源(例えば、核反応器のコア、気体/石炭/油炉、または太陽光集光器)を用い、冷却剤(典型的には水)を、加熱された気体状態(例えば、蒸気)に変換し、次いで、加熱された気体状の冷却剤を発電機(すなわち、機械的な力を電力に変換する回転する機械)に通すことによって発電する。発電機を出る冷却剤を熱源に戻すことができる前に、冷却剤は、その気体状態から液体状態へと完全に再変換されなければならず、典型的には、冷却剤から十分な熱を放出し、冷却剤の温度がその沸点より低くなることを含む。大きな発電所で大容積の冷却剤が使用されるため、この冷却機能は、典型的には、発電機に残る冷却剤を、発電所の外側に配置された大きな冷却システムに圧送することによって行われ、それによって、冷却剤からの熱は、周囲の環境へと無害な状態で放出される。冷却剤が発電所に戻る前に、冷却剤が液体状態へと完全に再変換されないと、発電所の効率が顕著に下がる。従って、大きな冷却システムは、発電に重要な役割を果たす。
【0003】
冷却システムは、水を消費する湿式冷却システム(すなわち、望ましい冷却力を達成するために蒸発に依存する)と、水を消費することなく熱を取り去る対流または放射を利用する乾式冷却システムの2種類の一般的な分類に分けることができる。一般的にいうと、従来の技術に基づく乾式冷却システムは、同量の冷却力を発生することができる匹敵する湿式冷却システムよりも顕著に大きな領域を占有し、高い動作費用を必要とするだろう。従って、ほとんどの大きな発電所、特に、従来の乾式冷却が実行不可能な高温高湿の気候帯にある発電所は、全体として大量の水(すなわち、1日あたり数百億ガロンの水)を消費する湿式冷却システムを利用する。すなわち、水が豊富にあり、安価な場合、湿式冷却システムは、従来の技術に基づく乾式冷却システムよりも建築および動作を顕著に安価に行うことができる。しかし、(例えば、干ばつに起因して)水供給の削減を経験する1つ以上の乾燥地域では、湿式冷却システムの使用は、発電所で使用するために貴重な水資源を居住地域または農業地域から転用することが必然となる場合には問題となり得る。
【0004】
放射冷却は、放射エネルギーによって放熱が達成される乾式冷却の一形態である。すべての物体は、常に放射エネルギーを放出し、吸収し、正味のエネルギーの流れが外に向かっているとき、放射冷却を受けるが、正味のエネルギーの流れが内に向かっているときは、熱を得る。例えば、建築物の受動的な放射冷却(すなわち、電力を消費することなく、例えば、冷却ファンを回すことなく達成される放射冷却)は、快晴からの長波長の放射が、建築物の屋根から放射される長波長の赤外線放射よりも少ないとき、典型的には、夜間に起こる。逆に、昼間は、建築物の屋根に向かう太陽光の放射は、放出される長波長の赤外線放射より多いため、空に向かう正味の流れが存在する。
【0005】
単純化した用語において、放射表面の冷却力Pcoolingは、放射される電力Pradから、空気からの大気中の熱放射から吸収される電力Patm、日射照度Psunおよび伝導と対流の影響Pconを引いたものと等しい。
cooling = Prad − Patm − Psun − Pcon (式1)
実際の設定において、Patmは、周囲温度によって決定され、Psunは、1日の時間帯、雲量などによって変動し、夜間はゼロであり、Pconは、冷却機の構造的詳細によって決定される。式1から、昼間にPcoolingを最大にするには、表面の放射率を上げることによってPradを増加させ、Psunの影響を最小化し(例えば、広帯域反射部の利用による)、伝導性熱源から冷却機を保護することによって対流および伝導の影響Pconを軽減することを伴う。合わせた非放射性熱係数が6.9W/mKであると仮定すると、式1から、昼間の実際の最低目標Prad値55W/m、夜間100W/mが得られ、この値は、周囲より5℃低い温度に下がることに相当する。
【0006】
従って、理想的な高性能の受動的な放射冷却機は、以下の3つの条件を満足する受動的な放射冷却デバイスであると定義することができる。第1に、太陽光の少なくとも94%(可視光および近赤外線の波長のほとんど)を反射し、冷却パネルが熱くなるのを防ぎ,これによりPsunが最小になる。第2に、大気の透明窓(例えば、8〜13μm(優勢な窓)、16〜25μmなど)で1単位に近い放射率を示し、これらの窓の外側では放出がゼロである。これにより、大気が不透明である波長でパネルは強く放出せず、従って、Patmが最小になる。第3に、デバイスは環境から密封され、さもなければさらなる熱負荷に寄与する対流が最低限になり、従って、Pconvが最小になる。周囲温度未満の温度で動作するため、デバイス上部での対流は、この場合には有害である。要するに、理想的な高性能の受動的な放射冷却機は、直射日光にさらされた場合であっても、周囲温度より低い温度まで「自己冷却する」ことができる設計された構造であり、その冷却力を達成するために、電力の投入または材料の相変化を必要としない。
【0007】
現在、理想的な高性能の受動的な放射冷却機を規定する3つの条件を満たす受動的な放射冷却技術は、商業的に入手することができない。既存の放射冷却箔は、それほど高価ではないものもあるが、現在、日光のない状態での動作に限定されている(すなわち、ほとんどは夜間での動作)。現在の当該技術分野の状況は、昼間の受動的な放射冷却を達成し、複雑でスペクトル選択性のエミッタ材料を必要とする、反射部の上にエミッタが存在する構造を利用することを試みているが、高価すぎて、従来の電力による冷却手法に代わる商業的に実現可能な代替法を与えることができない。さらに、商業的または他の様式で、高温または高湿の地域に設置された大きな発電所のための乾式冷却を与えるために簡単に規模を変えることができる受動的な放射冷却技術は存在しない(すなわち、ゼロである)。すなわち、発電所の乾式冷却のための挑戦は、容易に製造することができ、非常に大きな面積(例えば、1km)まで低コストでスケールアップすることができるフォトニック構造を設計することである。
【0008】
必要とされるのは、高温高湿の気候帯または削減された水供給を経験している他の地域に置かれており、従来の乾式冷却が依然として実現不可能であり、および/または発電所の湿式冷却システムによって必要とされる顕著な水消費を支えるのに十分な水を利用することができない発電所のための、費用対効果が高い乾式冷却を与えることができ、規模を調整することが可能な高性能の受動的な(すなわち、電力/電気の投入を必要としない)放射冷却システムである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、熱エネルギー(熱)が、冷却剤から金属シートを通り、シート上部表面に配置されたメタマテリアルナノ構造に移動するように、溝構造によって冷却剤(例えば、冷却水)が金属シートの底部表面に対して流れる低コストで高性能の受動的な放射冷却システムに関する。メタマテリアルナノ構造(すなわち、調整された光学特性を有するように波長未満で設計された構造)が、金属シートの上部(第1の)表面の上の超黒色メタマテリアルに由来するパターンに整列しており、主要な大気の透明窓(すなわち、8μm〜13μmの範囲および/または16μm〜28μmの範囲の波長を有する)で少なくとも放射エネルギーを放出するように構成される。日中および夜間の受動的な放射冷却を容易にするために、反射層は、入射日射を反射する(すなわち、放出される放射エネルギーが、主に液体冷却剤から変換された熱エネルギーであるように、金属シートを遮蔽するか、または覆う)ように構成されたメタマテリアルナノ構造の上に配置され、反射層は、さらに、放出されるATW放射エネルギーを伝達するように構成される(すなわち、メタマテリアルナノ構造から放出されるATW放射エネルギーが、冷たい付近の空間に伝達するために反射層を通過する)。この配置を用いることで、受動的な放射冷却システムは、高温高湿の気候帯または削減された水供給を経験している地域に置かれており、従来の乾式冷却が依然として実現不可能であり、および/または発電所の湿式冷却システムによって必要とされる顕著な水消費を支えるのに十分な水を利用することができない発電所によって利用可能な高性能の乾式冷却を与える。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、冷却システムに利用される3層(すなわち、溝−金属シート/エミッタ−反射部)の配置は、他の既存の従来手法で達成可能なコストよりも顕著に安いコストで乾式冷却を容易にする。金属シートは、製造時および動作時のコストを減らす目的に役立つ。第1に、低コストで高スループットの製造プロセス(例えば、陽極酸化および無電解めっき)の使用を容易にすることによって、必要なメタマテリアルによって改良された超黒色パターンを作成するために、潜在的に低コストの媒体を与える(例えば、アルミニウム箔を用いて実施される場合)。第2に、金属シートは、冷却剤から、メタマテリアルによって改良された超黒色材料への高効率の熱伝導体として働き、そのため、冷却システムによって占められる合計面積を潜在的に減らし、第3に、金属シートは、冷却剤が、メタマテリアルによって改良された超黒色材料および/または反射層を汚し、放出および/または放射による移動を妨げてしまうのを防ぐ、信頼性が高く、耐久性が良い防水バリアを与える。次に、金属シートの上部表面の上に反射層を取り付けると、反射部の上にエミッタがある配置が作られ、これも製造コストが安い。この配置は、市販のソーラー鏡面膜を用い、反射層を実装するのが容易であるため、反射部の上にエミッタがある従来の構造で必要な複雑かつ高価な材料を避けることができるからである。最後に、金属シートの底部表面を利用し、溝構造の上側壁を与えることで(すなわち、冷却剤が溝構造を通って流れるにつれて、冷却剤が、金属シートの底部表面に接触する)、溝構造が単純なものとなり、溝構造に関連する材料コストが最低限となり、全体的な製造コストがさらに安くなる。
【0011】
別の態様によれば、高性能の受動的な放射冷却は、得られた超黒色エミッタが、1単位に近い放射率でATW放射エネルギーを放出するように構成されるように、超黒色メタマテリアルに由来するパターンに整列したメタマテリアルナノ構造によって達成され、さらに、放出されるATW放射エネルギーを通過させつつ、入射日射の少なくとも94%(すなわち、2μm以下の周波数を有する日射)を反射することができる材料を用いて反射層を実施することによって達成される。代替的な実施形態において、超黒色エミッタは、ナノ細孔、または他の針状、樹状物状または多孔性の粗い表面、カーボンナノチューブの密集物、または他の黒色膜(例えば、黒色のクロム、黒色のケイ素、黒色の銅、ニッケルリン(NiP)アロイ)を含むいくつかのメタマテリアルナノ構造のいずれかを用いて実施される。反射層が超黒色エミッタの上に配置され、ほとんどすべての入射日射を反射するため、超黒色エミッタは、日中は反射層によって日光から遮蔽され(隠され)、そのため、優れた受動的な放射冷却力を示す受動的な放射冷却システムを与える。式1(上述)の熱平衡式を解くことによって誘導される正味の冷却力の概算に基づく予備実験の結果は、本発明に従って作られる低コストの受動的な放射冷却パネルが、日中および夜間にそれぞれ75W/mおよび130W/mに近い正味の冷却力を与え、初期段階の試作品は、広範囲の日中にアルミニウム基材を周囲温度より6℃冷却することを示し、このことは、日中の放射冷却のための記録性能であると考えられる。
【0012】
現時点で好ましい実施形態によれば、超黒色エミッタは、金属シートの上に配置されたテーパー形状のナノ細孔の配列を含み、それぞれのテーパー形状のナノ細孔は、上部表面に配置された開放した上側末端と、閉じた下側末端と、開放した上側末端と閉じた下側末端との間に延びる実質的に円錐形の側壁を有する穴状の空洞である。一実施形態において、開放した上側末端は、円錐形の壁の直径が、それぞれのテーパー形状のナノ細孔内部で小さくなるように、時間経過に伴って陽極酸化中に印加される電圧を上げることによって、開放した上側末端は、閉じた下側末端より大きな直径を有し、時間経過に伴って印加される電圧を下げることによって、逆テーパーが作られる。適切なサイズを有する(例えば、100nm〜1μmの範囲の公称幅を有する)このようなテーパー形状のナノ細孔の使用によって、テーパー形状の構造は、屈折率(グレーテッドインデックス媒体)をなめらかに効果的に変動させ、フレネルの反射を防ぐため、高い放射率でATW放射エネルギーを放出することができる優れた超黒色材料の製造を容易にする。具体的な実施形態によれば、それぞれの受動的な放射冷却パネルのエミッタ層は、めっきされた金属層の一部が、テーパー形状のナノ細孔それぞれの内側に配置されるように、ベース(第1の)金属材料と、第1の金属(ベース金属層)の上部表面に配置されるめっきされた(第2の)金属層の両方を含む。インピーダンス整合に加え、このような金属コーティングされたテーパー形状のナノ細孔は、超黒色材料の内側の光も散乱させ、このことは、顕著にATW放射エネルギーの放出に寄与する。これに加えて、金属の屈折率の大きな虚数部分は、この材料の内側の光を弱めることに寄与し、低い反射率が得られ、物理的にこの表面はきわめて暗い外観となる。例示的な実施形態において、ベース金属層は、アルミニウムを用いて実施され、めっきされた(第2の)金属層は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)および金(Ag)のうち1つ以上を含む。現時点で好ましい実施形態において、金属めっきされたテーパー形状のナノ細孔は、多孔性アルミナ(酸化アルミニウム)層がアルミニウムシートの上に生成し、自己生成した六角形に充填されたナノ細孔の配列を含むようにアルミニウムシート(金属シート)を酸で陽極酸化する改変された陽極の酸化アルミニウム(AAO)自己組織化テンプレート技術を用いて製造され、アルミナ層の生成は、望ましいテーパーを作成するために、印加される電圧を変えることによって制御される。このAAO方法は、高スループットであり、ボトムアップであり、波長未満の(例えば、50nm未満)の非常に高いアスペクト比(1:1000)を有するテーパー形状のナノ細孔を製造するための低コストの製造方法を提供する。受動的な放射冷却は、本質的に大きな領域(すなわち、大発電所用途で1平方キロメートル以上)を覆うモジュールを必要とするため、受動的な放射冷却パネルを開発するための主な技術的、経済的課題は、高い費用対効果でパネルを大量生産する能力にある。次に、めっきされた金属層(例えば、Ni、CuまたはAg)は、めっき金属がテーパー形状のナノ細孔の内側に作られるような適切なめっきプロセス(例えば、無電解めっき)によって、アルミナ(酸化アルミニウム)層の上に作られる。インピーダンス整合に加え、ニッケル/銅/金の金属めっきは、テーパー形状のナノ細孔の内側の光を散乱させるのに役立ち、このことは、顕著にATW放射エネルギーの放出に寄与する。これに加えて、ニッケル/銅/金の金属めっきの屈折率の大きな虚数部分は、テーパー形状のナノ細孔の内側の光を弱めることに寄与し、低い反射率が得られ、物理的にこの表面はきわめて暗い外観となる。従って、アルミニウム系のテーパー形状のナノ細孔と、ニッケル/銅/金の金属めっきとを組み合わせると、高い放射率でATW放射エネルギーを発生させることができる優れた超黒色エミッタの製造が容易になる。さらに、本明細書に記載する新規の改良されたAAO自己組織化テンプレート技術を用いてテーパー形状のナノ細孔を作成し、次いで、アルミナの上に第2の金属(例えば、Ni、CuまたはAg)を無電解めっきすることによって、費用対効果の高いロールツーロール大量生産製造技術を用い、受動的な放射冷却システムの低コストの大量生産を容易にする様式で、優れた超黒色材料が高い効率で製造される。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、それぞれのモジュールの上側反射層は、0〜2μmの範囲の波長を有する入射日射を反射し(すなわち、0.8以上の反射率を示し)、ATW放射エネルギー、例えば、8μm〜13μmの範囲の波長を有するATW放出エネルギーを伝達する/通過する(すなわち、0.2以下の反射率を示す)ように全体として構成される複数の部分層を含む、分布したBragg反射器を含む。ある実施形態において、太陽光の集光(CSP)コレクタに現時点で使用される市販のソーラー鏡面膜(例えば、セントポール、ミネソタ、米国の3M Corporationまたはアーバダ、コロラド、米国のReflecTech,Inc.によって製造されるソーラー膜)は、望ましいスペクトルに十分に近いスペクトル特徴を示し、例えば、任意要素の介在する接着剤層によってエミッタ層の上部表面に高い費用対効果で固定されてもよい。広帯域の放射エネルギーのATW部分のみを選択的に伝達する反射層を必要とする他の実施形態において、特注の反射層が必要な場合がある。
【0014】
本発明の現時点で好ましい実施形態によれば、溝構造は、開放した上部を有する箱形の枠を全体として生成するように構成された下側壁と隆起した周囲壁とを有し、溝構造が超黒色エミッタに動作可能に取り付けられるとき、金属プレートによって覆われる(密封される)(すなわち、金属プレートの底部表面と、下側壁の上向きの表面と、周囲壁の下向きの表面が、「熱交換経路」と本明細書で呼ばれる実質的に閉じられた領域を囲む/規定する)。溝構造を通る冷却剤の流れを容易にするために、この箱形の枠の一端に入口が規定され、出口は、反対側の末端に規定され、それによって、冷却剤は、入口を通って溝構造に入り、熱交換経路を通り、出口を通って溝構造を出る。金属プレートの底部表面が熱交換経路の上部表面を形成するため、冷却剤は、熱交換経路を通るにつれて、必然的に金属シート表面に対して流れ(すなわち、これと接触し)、それによって、超黒色エミッタへの熱移動が容易になる。箱形の枠の下側壁または周囲側壁のいずれかに任意要素のバッフルが取り付けられ、超黒色エミッタへの熱移動を促進するために、熱交換経路を通過するにつれて狭い経路断面に沿って冷却剤が流れるように構成される。代替的な実施形態において、例えば、波形の金属シートを用い、低コストの溝構造が実施される。
【0015】
本発明の別の実施形態によれば、メタマテリアルによって改良された受動的な放射冷却システムは、発電所(または他の物体)のための規模を調整可能な乾式冷却を容易にするように構成されたモジュラーユニット(モジュール)および関連する流れ制御システムを利用する。それぞれのモジュールは、関連する超黒色エミッタユニット(すなわち、所定のサイズ(例えば、1m)を有する金属シート、その上に上述のようなメタマテリアルナノ構造を有する)を含む実質的に同一の形状の(例えば、四角形または長方形の)構造を有し、エミッタユニットを覆うような大きさおよび形状の反射層部分(これも上に述べている)と、エミッタユニットの下側に実質的に完全に合うような大きさおよび形状の溝構造とを有する(すなわち、エミッタユニットが、溝構造を通って流れる冷却剤と、反射層との間にある)。複数のモジュールの直列接続を容易にし、直線的に整列したモジュール列群を作成するために、それぞれの溝構造は、片方の端に入口を有し、反対側の端に出口を有し、(例えば、介在するパイプセクションによって)簡単に接続するように配置されており、あるモジュールの出口を通って出ていく冷却剤が、同じ列群の隣接するモジュールの入口に入る。現実的な実施形態において、所与の流量の冷却剤の温度を所与の目標温度まで下げるために経済的に規模を調整する(選択的に構築する)ことが可能な乾式冷却を容易にするために、流れ制御システムは、冷却すべき物体(例えば、発電所)から、直列接続されたモジュールの1つ以上の列群へと加熱された冷却剤を供給するための1つ以上の流入パイプと、そのモジュールから冷却すべき物体へと、冷却された冷却剤を戻すための1つ以上の流出パイプと、片方または両方のパイプに動作可能に接続され、モジュールを通る冷却剤を所定の速度で偏らせる(流れさせる)ために最適な圧力を加えることによって流体の流れを生成するように構成されたポンプとを備える。すなわち、受動的な放射冷却システムは、それぞれの列群で、冷却剤が流入パイプと流出パイプの間を連続的に流れなければならない直列接続するモジュールの数を調整することによって、目標とする温度低下を達成するように簡単に規模を調整することができる(すなわち、それぞれのモジュールが、単位量の放熱を与え、全放熱、従って、流入パイプから流出パイプへと流れる冷却剤の温度低下は、それぞれの所与の列群で冷却剤が流れるモジュールの数に比例する)。これに加えて、受動的な放射冷却システムは、流入パイプと流出パイプの間に十分な数の列群を並列に接続することによって、所与の流量について、この目標とする温度低下を達成するように規模を調整することができる。従って、本発明は、従来の乾式冷却が非現実的な高温高湿気候帯、制限された水供給を経験する地域、発電所の湿式冷却システムをサポートするのに必要な十分な水を利用することができない地域でさえ、任意の大きさの発電所のための費用対効果が高い乾式冷却を与えるために規模を調整することができる高性能の受動的な放射冷却システムを提供する。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態によれば、物体を乾式冷却するための方法は、冷却剤が物体に戻る前に、冷却剤が、金属シートの底部表面に対して流れるように、物体と、形成された熱交換経路との間に冷却剤を循環させることと、金属シートの上部表面にある超黒色メタマテリアルに由来するパターンに配置されたメタマテリアルナノ構造によって、冷却剤からの熱エネルギーを放出することとを含み、メタマテリアルナノ構造は、熱エネルギーを、1つ以上の大気の透明窓内の波長を有する放射エネルギーに変換するように構成され、次いで、日射反射層を通って冷たい付近の空間に伝達される。冷却剤からの熱エネルギーを、大気の透明窓の放射エネルギーに変換し、次いで、反射層を通って伝達することによって、本発明は、従来の乾式冷却が非現実的である高温高湿の気候帯、制限された水供給を経験し、発電所の湿式冷却システムをサポートするのに必要な十分な水を利用することができない地域の発電所のための乾式冷却を提供することができる高性能の受動的な放射冷却システムを提供する。
【0017】
本発明のこれらの特徴、態様および利点および他の特徴、態様および利点は、以下の記載、添付の特許請求の範囲および添付の図面に関してよりよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の例示的な実施形態にかかる単純化された受動的な放射冷却システムの上側斜視図である。
図2図2は、動作中の図1のシステムを示す単純化された図である。
図3図3は、本発明の具体的な実施形態にかかる改変されたAAO自己組織化技術を用いて作られた、金属めっきされたテーパー形状のナノ細孔を含む超黒色材料を示す断面側面図である。
図4図4は、図3のエミッタ層に利用されるエミッタ層の例示的な光学特性を示す図である。
図5図5は、図1の受動的な放射冷却システムに利用される上側反射層の光学特性を示す図である。
図6図6は、本発明の別の例示的な実施形態にかかる受動的な放射冷却システムによって利用される溝構造を示す上側斜視図である。
図7図7は、本発明の別の例示的な実施形態にかかる流入パイプと流出パイプの間に接続された4個のモジュールを備える例示的な列群を示す上側斜視図である。
図8図8は、本発明の別の例示的な実施形態にかかる流入パイプと流出パイプの間に並列に接続された複数の列群を示す上側斜視図である。
図9図9は、本発明の別の例示的な実施形態にかかる溝構造を示す上側斜視図である。
図10図10は、動作中の図9の溝構造の一部を示す単純化された断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、受動的な反射冷却の改善に関する。以下の記載は、特定の用途およびその要求事項という観点で与えられるように、当業者が本発明を製造し、使用することができるように提示される。本明細書で使用される場合、「上側」、「上向きの」、「下側」、「下向きの」、「上部」および「底部」のような向きを表す用語は、記載の目的のために相対的な位置を与えることを意図しており、必ずしも、参照の絶対的な構造を示すことを意図していない。好ましい実施形態に対する種々の改変は、当業者には明らかであろう。本明細書に定義される一般的な原理が、他の実施形態に適用されてもよい。従って、本発明は、示され、記載される特定の実施形態に限定することを意図しておらず、本明細書に開示される原理および新規の特徴と一致する最も広い範囲が与えられることを意図している。
【0020】
図1は、本発明の一般化された実施形態にかかる例示的な単純化された受動的な放射冷却システム300を示す斜視図であり、図2は、システム300の一部をさらに詳細に示す部分的に分解された断面側面図である。
【0021】
図1の上側部分を参照すると、受動的な放射冷却システム300の主要な要素は、溝構造210と反射層120の間に配置された超黒色エミッタ110を備えている。以下にさらに詳細に説明するように、超黒色エミッタ110は、一般的に、底部表面111とこれに対向する上部(第1の)表面112とを有する金属シート113を含む。溝構造210は、冷却剤(例えば、冷却水)301を金属シート113の底部表面111に対し、全体に流れを方向付けるのに役立ち、図2に示すように、熱エネルギーTE(熱)は、冷却剤301から金属シート113を通ってメタマテリアルナノ構造118に伝達される。超黒色エミッタ110も、金属シート113の上部表面112の上にある超黒色メタマテリアルに由来するパターン117に配置されたメタマテリアルナノ構造118を含み、メタマテリアルナノ構造118は、冷却剤301からの熱エネルギーTEを大気の透明窓(ATW)の放射エネルギーRE−ATW(すなわち、少なくとも、8μm〜約13μmの主要なATW範囲、および場合により、16μm〜28μmの第2のATW範囲の波長を有する赤外線放射エネルギー)に変換する様式で製造され、次いで、放射エネルギーRE−ATWが、上部表面112から放出される(すなわち、溝構造210から上側に)。図2に示されるように、反射層120は、2つの機能を果たす。第1に、さもなければ超黒色エミッタ110に適用され得る少なくとも94%の入射日射ISRを反射することによって超黒色エミッタ110を遮蔽する(図2に示されるように)。第2に、反射層120は、放射エネルギーRE−ATWを伝達する(すなわち、放射エネルギーRE−ATWが、反射層120を通り、図3に示されるように、放射エネルギーRE−ATWは、地球の大気を通過し、冷たい付近の空間CNSに伝達される)。
【0022】
一実施形態において、システム300の主な要素は、本明細書でモジュール200と呼ばれるモジュール化されたユニットを用いて実施される。この場合に、複数のモジュールは、典型的には、以下に記載される様式で並列および/または直列に接続し、所与の体積の流速の冷却剤について、目標となる温度低下を達成するための規模調整能を与える。可能な代替的な実施形態において、本明細書に与えられるものと同様の特徴を有する1個の特注の構造を、複数のモジュール200の代わりに用いてもよい。
【0023】
図1の上側部分を参照し、一実施形態において、超黒色エミッタ110および反射層120は、溝構造210に接続する前に、積層された2層パネル100として製造される。パネル100は、以下に示される超黒色エミッタ110および反射層120の具体的な詳細を用いて組み立ててられてもよいが、パネル100は、共有する同時係属中の米国特許出願第14/740009号、表題METAMATERIALS−ENHANCED PASSIVE RADIATIVE COOLING PANELに記載される任意のさらなる特徴および代替的な材料の組み合わせも含んでいてもよい。
【0024】
上述の主な要素に加え、システム300は、冷却すべき物体(例えば、発電所、図示せず)と上述の主な要素との間を、所与の容積の冷却剤301を所与の流速で循環させるように機能する流れ制御システム305も備えており、それによって、冷却剤の温度は、主な要素を通過するにつれて、目標となる温度量まで低下する(目標となる温度低下)。図1に示される例示的な実施形態において、流れ制御システム305は、流入パイプ310を備え、これを通り、加熱された冷却剤301が、物体から溝構造210へと流れ、流出パイプ320を備え、これを通り、冷却された冷却剤301は、溝構造210から物体へと戻り、流入パイプ310と流出パイプ320の片方または両方に動作可能に接続し、溝構造210を流れる冷却剤の所望の流れを生成するように構成された任意要素のポンプ330を備える。以下に示されるように、流れ制御システム305は、冷却剤301の必要な体積および流速を容易にするための既知の技術を用い、規模を調整可能であり、一般的に、冷却すべき物体のサイズおよび種類に従って変わる。同様に、システム300の主な要素(すなわち、1つ以上の超黒色エミッタ110、1つ以上の反射層120、1つ以上の溝構造210)は、複数のモジュール200の直列/並列の接続によって、または、モジュール200と類似する特徴をそれぞれ有する1つ以上の特注の大きさの主な要素集合体を提供することによって、目標となる温度低下を達成し、必要な体積および流速の冷却剤301を収容するように規模を調整可能である。
【0025】
図2は、昼間の動作中のシステム300を示す(すなわち、入射日射ISRは、太陽によって、反射層120の上側表面122に向かう)。現実的な設定において、パネル100は、エミッタ層110の底部表面111が、地表に面し(すなわち、下向きであり)、反射層120の上部表面122が空(すなわち、上側)に面するように、水平面に揃えられている。図2の下側部分を参照すると、エミッタ層110は、底部表面111および対向する上部表面112を有するベース材料層113を含み、上部表面112は、反射層120の下側(下向きの)表面121に面する。記述の目的のために、図2において、エミッタ層110が、反射層120から分割されているものとして示されており、上部表面112は、典型的には、下側表面121と接していることを注記しておく。次いで、放射エネルギーRE−ATWは、上側表面122から、地球表面からの下側大気を通り、冷たい付近の空間CNSに伝達される。すなわち、放射エネルギー部分RE−ATWが、1つ以上の大気の透明窓に関連する周波数を有するため、地球の大気を通り、吸収、再放出されることなく(すなわち、パネル100の上の大気を熱することなく)、空間へと直接通っていき、それによって、システム300は、昼間の時間であっても、正味の冷却効果を達成する。
【0026】
代替的な実施形態によれば、超黒色エミッタ110は、任意のいくつかの種類のメタマテリアルナノ構造を用いて実施される。図2に示される一般化された実施形態において、メタマテリアルナノ構造118は、ナノ細孔、カーボンナノチューブの密集物、ナノ構造のコーティング(例えば、黒色のケイ素)、ニッケルリン(NiP)アロイ、または超黒色材料を製造するために知られている他の構造を含んでいてもよい象徴的な様式で示される。図3に示される現時点で好ましい実施形態において、エミッタ層110Aは、ベース材料層(金属シート)113Aの上に作られた金属めっきされたテーパー形状のナノ細孔118Aを含み、ベース材料層(金属シート)113Aは、アルミニウム層114Aと、アルミニウム層114Aの上に配置された酸化アルミニウム層115Aとを有し、テーパー形状のナノ細孔118Aは、酸化アルミニウム層115A内に完全に規定される。エミッタ層110Aは、改変された陽極の酸化アルミニウム(AAO)自己組織化テンプレート技術を用いて製造され、アルミニウム層114Aが酸で陽極酸化され、その上に多孔性アルミナ(酸化アルミニウム)層115Aを生成し、アルミナ層115Aが、テーパー形状のナノ細孔の自己生成した六角形に充填された配列を含む。陽極酸化中に処理パラメータを徐々に変えることによって、テーパー形状のナノ細孔118Aは、アルミナ生成プロセス中に全体的に製造される。この方法によって作られるそれぞれのテーパー形状のナノ細孔118Aのピッチおよび直径(公称幅WNOM)は、一部には、陽極酸化電圧および処理条件に依存し、目標となる光学特性によって決定される。ATW放射エネルギーを発生させるために、テーパー形状のナノ細孔118Aの公称幅WNOMは、典型的には、100nm〜1ミクロンの範囲である。それぞれのナノ細孔の高さは、陽極酸化時間によって制御される。このAAO方法は、高スループットであり、ボトムアップであり、波長未満の(例えば、50nm未満)の非常に高いアスペクト比(1:1000)を有するテーパー形状のナノ細孔を製造するための低コストの製造方法である。受動的な放射冷却は、現実的な用途(例えば、発電所での乾式冷却)を行うとき、本質的に大きな領域(すなわち、平方キロメートル)のパネルを必要とするため、受動的な放射冷却パネルを開発するための主な技術的、経済的課題は、高い費用対効果でパネルを大量生産する能力にある。AAO自己組織化テンプレート技術を用いてテーパー形状のナノ細孔118Aを作成し、次いで、上述の様式でアルミナ層115Aの上に第2の金属116A(例えば、Ni、CuまたはAg)を無電解めっきすることによってエミッタ層110Aを作成することによって、費用対効果の高いロールツーロール大量生産製造技術を用い、モジュールの低コストの大量生産を容易にする様式で、優れた金属コーティングされたテーパー形状のナノ細孔が高い効率で製造される。図4の点線は、有限要素法(FEM)のシミュレーションを用いて作られた放射率値を示し、超黒色エミッタ110Aが、8μm〜13μmの大気の透明窓で1単位に近い放射率を示すことを示す。パネル100Aの製造に関するさらなる詳細は、共有する同時係属中の米国特許出願第14/740032号、表題PRODUCING RADIATIVE COOLING PANELS AND MODULESに与えられる。
【0027】
図2を再び参照すると、反射層120は、上向きの表面122に向かう入射日射ISRを反射しつつ、同時に、エミッタ層110から上向きに放出される少なくとも放射エネルギー部分RE−ATWが通過して伝達する(すなわち、下向きの表面121から上向きの表面122へと通過する)ように、エミッタ110を日射から遮蔽するように機能する。一実施形態において、反射層120は、入射日射ISRの少なくとも94%を反射するように構成される。好ましい実施形態において、反射層120は、全体として入射日射を反射し、図5に示されるグラフに示されるものと同様の特徴を有するATW放射エネルギーを伝達するように構成された複数の部分層125を含む分布したBragg反射器を備える。すなわち、好ましい実施形態において、反射層120は、0.8以上の反射率値で0〜2μmの範囲の波長を有する入射日射ISRの反射率を示し、ATWエネルギー部分RE−ATWを効果的に伝達/通過させる(すなわち、8〜13μmの主要なATWの少なくとも放射エネルギーについて0.2以下の反射率を示す)。ある実施形態において、太陽光の集光(CSP)コレクタに現時点で使用される市販のソーラー鏡面膜(例えば、セントポール、ミネソタ、米国の3M Corporationまたはアーバダ、コロラド、米国のReflecTech,Inc.によって製造されるソーラー膜)は、望ましいスペクトルに十分に近いスペクトル特徴を示し、例えば、任意要素の介在する接着剤層によってエミッタ層110の上部表面112に高い費用対効果で固定されてもよい。ATW放射エネルギーのみを選択的に伝達する反射層を必要とする他の実施形態において、特注の反射層が必要な場合がある。
【0028】
図1の中央部分を参照すると、溝構造210は、開放した上部214を有する箱形の枠を全体として生成するように構成された下側壁211と隆起した周囲壁212とを有する。図2に示されるように、溝構造210を超黒色エミッタ110に動作可能に取り付けたとき、開放した上部は、金属プレート113によって覆われる(密封される)。熱交換経路217は、金属プレート113の底部表面111、下側壁211の上向きの表面、周囲壁212の内向きの表面によって規定される(すなわち、これに囲まれる実質的に中空の領域である)。溝構造210を通る冷却剤の流れを容易にするために、この箱形の枠の一端に入口215が規定され、出口216は、反対側の末端に規定される。動作中、冷却剤301は、入口215を通って溝構造210に入り、熱交換経路217を通り、出口216を通って溝構造210を出る。金属プレート113の底部表面111が、熱交換経路217の上側表面を形成するため、冷却剤301は、熱交換経路217を通るにつれて、必然的に底部表面111に対して流れ(すなわち、これと接触し)、それによって、超黒色エミッタ110への熱移動が容易になり、それによって、放射エネルギーRE−ATWへの変換が容易になる。
【0029】
図6は、任意要素のバッフル218Aが、熱交換経路217Bの内側に取り付けられ(例えば、下側壁211Aまたは周囲側壁212Aのいずれかに接続する)、超黒色エミッタ(図示せず)の熱交換を促進するために、熱交換経路217Aを通るにつれて、冷却剤301が狭い経路断面に沿って流れを方向付けるように構成される(図6の点線の矢印によって示されるように)、本発明の代替的な実施形態にかかる溝構造210Bを示す斜視図である。
【0030】
上述のように、現時点で好ましい実施形態において、本発明の受動的な放射冷却システムは、所与の冷却剤の体積および流速のための目標とする冷却剤の温度低下を達成するために直列に接続可能な複数のモジュラーユニット(モジュール)を用いて実施される。図1は、1個のモジュール200を用い、このモジュールに基づくシステムを単純化された形態で示し、流れ制御システム305は、流入パイプ310を利用し、加熱された冷却剤301を物体(例えば、発電所)からモジュール200へと伝達し(伝導し)、流出パイプ320を利用し、物体に戻すために、冷却された冷却剤301を伝達し、流入パイプ310および流出パイプ320の片方または両方に動作可能に接続し、モジュール200を通る冷却剤の所望の流速を生成するように構成された任意要素のポンプ330を備える。図1の単純化された配置に示されるように、流入パイプ310は、入口215に動作可能に接続し、溝構造210の壁(例えば、周囲側壁212)を規定し、モジュール200への入口として働き、それによって、冷却剤301が熱交換経路217内を流れる。同様に、出口216は、流出パイプ320に動作可能に接続し、モジュール200を出る冷却剤301が、熱交換経路217から流出パイプ320へと流れる。所与の「標準的な」サイズ(例えば、単位被覆面積が1mのパネル100を有し、体積が1リットルの熱交換経路217を有する)を有するモジュール200を製造することによって、所与の物体(例えば、発電所)のための十分な冷却力を与えるのに必要なモジュール200の数および配置は、目標となる冷却剤の温度低下および冷却剤の体積/流速のために簡単に決定することができる。従って、流入パイプ310と流出パイプ320の間の冷却剤301の温度差は、それぞれのモジュール200の正味の冷却力、合計被覆面積、水圧の幾何形状およびサイズ、流体の流速、水温、伝導損に依存して変わる。流入パイプ310と流出パイプ320を適切な大きさにし、図7および図8を参照しつつ以下に記載されるような様式で所与の標準的なサイズの十分な数のモジュール200を接続することによって、モジュールに由来するシステム300は、冷却剤の体積/流速のために目標となる温度低下を達成するのに十分な冷却力を与えるように簡単に規模を変えることができる。試作品を用いた予備実験の結果に基づき、8℃の水温低下が利用可能であると考えられる。1kmを覆う(全放射冷却力が〜10MW)モジュールを備え、典型的な閉じたループの流速が10gal/minのシステムを用い、それぞれのモジュールは、水流の適切な並列での分布について約30gal/minを処理し、パネルあたり1psi未満の圧力低下を生じる。このことは、水力が約1.3MWのポンプの使用に相当し、水力が500MWの発電所で0.5%未満の増加を表す。これは、冷水の温度を下げることによって簡単に相殺され、約3%の正味の発電所の効率上昇が得られる。
【0031】
図7は、目標となる温度低下を達成するために、複数のモジュールをどのように直列に接続するかを示す単純化された例示的な受動的な放射冷却システム300Cを示す。それぞれのモジュール200C−1〜200C−4は、図1を参照しつつ上に記載した様式で構成される(例えば、モジュール200C−1は、超黒色エミッタ110Cを備え、反射層120Cは、関連する溝構造210C−1の上に配置される)。例示の目的のために、システム300Cは、流入パイプ310Cと流出パイプ320Cの間を直列に動作可能に接続された4個のモジュール200C−1、200C−2、200C−3および200C−4で構成される列群を含み(例えば、モジュール200C−1の出口が、介在する短いパイプ(図示せず)によって隣接するモジュール200C−2の入口に接続する)、点線の矢印によって示されるように、冷却剤301が、流入パイプ310Cからモジュール200C−1の入口へと流れ、モジュール200C−1の溝構造210C−1を通ってモジュール200C−2の入口に向かい、溝構造210C−2を通ってモジュール200C−3の入口に向かい、溝構造210C−3を通ってモジュール200C−4の入口に向かい、溝構造210C−4を通って流出パイプ320Cに向かって流れる。冷却剤301が、溝構造210C−1〜210C−4を通って連続的に流れるにつれて、それぞれのモジュール200C−1〜200C−4が、冷却剤301からの関連する単位量の熱を放出し、放出される熱の合計量と、冷却剤301の温度低下は、直列接続されたモジュールの数に比例する。すなわち、所与の流速について目標となる大きな温度低下を達成するために、さらなるモジュール(すなわち、4個より多い)を、図7に示される列群に加えてもよい。従って、受動的な放射冷却システム300Cは、流入パイプ310Cと流出パイプ320Cの間を冷却剤301が連続して流れなければならない直列接続したモジュールの数を調節することによって、簡単に規模を調整可能であり、目標となる温度低下を達成する。
【0032】
図8は、上述のいずれかの実施形態に従ってそれぞれ構成された複数のモジュール200Dが、動作可能に接続し、複数の直列接続した列群を形成し、この列群が流入パイプ310Dと流出パイプ320Dの間に並列接続され、冷却剤301が、同時に、流入パイプ310Dから、それぞれの列群を通って流出パイプ320Dに流れる(すなわち、点線の矢印によって示されるように)、別の部分的な例示的な受動的な放射冷却システム300Dを示す。それぞれの列群は、処理することができる冷却剤301の体積が有限であるため、必要な冷却剤の流れの体積が、1個の列群の能力を超える場合、図8に示されるように、複数の列群を並列で利用し、必要な冷却力を与える。すなわち、受動的な放射冷却システム300Dは、規模を調整可能であり、所与の流れの体積について、流入パイプ310Dと流出パイプ320Dの間に十分な数の列群を並列に接続することによって、目標となる温度低下を達成する。複数のモジュールを図8に示されるような配列に簡単に接続する能力によって、本発明の受動的な放射冷却システムが、経済的に実行可能なものとなり、近い将来に発電所の冷却のための水供給の制限を経験する危険性がある地域で、すばやく配置可能である。提案された技術は、従来の乾式冷却が非現実的な高温高湿気候帯の発電所の部位のための乾式冷却も可能である。正味の影響は、米国で2013年に作られた電気の13.9クワッドを観察することによって十分に示され、この発電能力の90%は、冷却を必要とする熱電プロセスに基づく。平均変換効率が35%であると仮定すると、この数は、消費される主なエネルギーの約35.7クワッドにふくれあがる。システム300Dと同様の様式で構成された受動的な放射冷却システム(図8)は、発電の主なエネルギーの1クワッドと、湿式冷却に必要な1日あたり数百億ガロンの水を節約する能力を有する。このことは、米国内での冷却水の制限の動作上および経済上の影響を軽減し、熱環境の悪い影響を減らすのに直接的に役立つだろう。
【0033】
本発明を、特定の具体的な実施形態に関して記載してきたが、本発明の特徴を他の実施形態にも適用することができ、そのすべてが本発明の範囲に含まれることを意図していることは当業者には明らかであろう。例えば、製造コストをさらに最小限にするために、上述の箱形の溝構造の代わりに、他の種類の溝構造を使用してもよい。図9および図10は、安価な(例えば、金属の)波形シート211Eによって作られた溝構造210Eを含む、モジュール200Eを示す分解された斜視図および部分的な断面側面図である。具体的に、図9は、上に示されるいずれかの例に従って作られた超黒色エミッタ110Eおよび反射層120Eと、超黒色エミッタ110Eに接続する直前の波形シート211Eを示す(すなわち、垂直の点線の矢印によって示されるように)。図10に示されるように、モジュール200Eの組立が終了した後、溝構造210Eが、平行に隆起した縁212Eに沿って、金属シート113Eの底部表面111Eに接続し(例えば、接着剤または他の方法で動作可能に固定される)、平行な熱交換経路217Eは、波形シート211Eの上向きの表面と金属シート113Eの底部表面111Eの間に規定される。さらに、本明細書に記載される乾式冷却方法は、冷却剤が、物体に戻る前に金属シートの片側に対して流れる限り、また、金属シートの反対側の表面にある超黒色メタマテリアルに由来するパターンに配置されたメタマテリアルナノ構造によって、冷却剤からの熱が大気の透明窓の放射エネルギーの形態で放出され、放射エネルギーが、日射反射層を通り、冷たい付近の空間に伝達される限り、上に記載した構造以外の構造を用いる精神で、実施されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10