特許第6573582号(P6573582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573582
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   B66B31/00 E
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-129200(P2016-129200)
(22)【出願日】2016年6月29日
(65)【公開番号】特開2018-2363(P2018-2363A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏光
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−135087(JP,A)
【文献】 特開2002−140901(JP,A)
【文献】 特開2015−173451(JP,A)
【文献】 特開平06−072685(JP,A)
【文献】 特開2009−203039(JP,A)
【文献】 特開2015−113206(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0180133(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00─31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結された複数のステップと、前記ステップの裏側に配置されたステップ下照明とを備え、前記ステップを駆動装置により移動させて乗客を搬送する乗客コンベアであって、
前記ステップと前記ステップ下照明との間に配置された板材と、
前記板材を前記ステップと前記ステップ下照明との間に保持するブラケットであって、複数の前記ステップを案内する枠体に固定されたブラケットと、を備え、
前記板材は、前記ステップの移動方向に沿って交互に配置された前記ステップ下照明の光を通過させる光通過部と、前記ステップ下照明の光を遮る遮光部とを備えていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
請求項1記載の乗客コンベアであって
記光通過部は前記板材に形成された複数のスリットから成り、前記遮光部は隣り合う前記スリット間に形成された前記板材の構成部分から成ることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項3】
請求項に記載の乗客コンベアであって、
前記ステップの移動方向に沿う前記板材の長さ寸法は、前記ステップの移動方向に沿う前記ステップ下照明の長さ寸法に対応する長さ寸法から成ることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項4】
請求項1に記載の乗客コンベアであって、
前記光通過部及び前記遮光部の数は、前記ステップ下照明から照射される光の点滅速度を考慮して設定されていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項5】
請求項1に記載の乗客コンベアであって
記光通過部は前記板材に形成された複数の丸穴または角穴から成り、前記遮光部は隣り合う前記丸穴間または前記角穴間に形成された前記板材の構成部分から成ることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項6】
無端状に連結された複数のステップと、前記ステップの裏側に配置されたステップ下照明とを備え、前記ステップを駆動装置により移動させて乗客を搬送する乗客コンベアであって、
前記ステップと前記ステップ下照明との間であって、当該ステップ下照明の上面に配置された透明のシート体を備えており、
前記透明のシート体は、前記ステップの移動方向に沿って交互に配置された、前記ステップ下照明の光を通過させる光通過部と、前記ステップ下照明の光を遮る遮光部と、を備え、
前記遮光部は前記透明のシート体に形成された複数の黒色部から成り、前記光通過部は隣り合う前記黒色部間に形成された前記透明のシート体の構成部分から成ることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項7】
無端状に連結された複数のステップと、前記ステップの裏側に配置されたステップ下照明とを備え、前記ステップを駆動装置により移動させて乗客を搬送する乗客コンベアであって、
前記ステップ下照明は、上面を形成する透明部材を備えており、
前記透明部材は、前記ステップの移動方向に沿って交互に配置された、前記ステップ下照明の光を通過させる光通過部と、前記ステップ下照明の光を遮る遮光部と、を備え、
前記遮光部は前記透明部材に形成された複数の黒色部から成り、前記光通過部は隣り合う前記黒色部間に形成された前記透明部材の構成部分から成ることを特徴とする乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステップの照明を備えたエスカレーターや動く歩道等の乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、傾斜型乗客コンベア、及び水平型乗客コンベアは、建築構造物に設置された主枠(枠体とも言う)の中にステップ鎖にて無端状に連結された複数のステップを配置し、主枠乗り口側に設置された駆動装置から駆動鎖へと動力を伝達し、主枠乗り口側に設置された駆動スプロケットを介してステップ鎖に動力を伝達することによりステップを駆動している。
【0003】
このような乗客コンベアに設置される照明類には、欄干下照明、ステップ下照明、足元照明等がある。これらは、乗降部周辺やステップ周辺を明るくしたり、ステップの噛み合い部や境界を判別できようにしたりして、安全に乗客が乗降できるようにするためのものである。
【0004】
前述の足元照明は、乗降部において移動手すりの入り込み口近傍に配置され、乗降床からステップに、あるいはステップから乗降床へと足を乗せ変える箇所の周辺を明るく照らすものである。一般にこの照明は、白色系の色調であることが多い。
【0005】
また、ステップ下照明は、乗降部においてステップの下方に配置され、乗降時におけるステップの境界を分かりやすくするためのものである。ステップ下照明はステップ境界部からその光が見えるようにして、ステップ間の境界部に足を乗せる可能性が低くなるように乗客を誘導する。このようなステップ下照明は一般に、緑色系の色調を連続点灯させたものが多いが、色調を変化させて特定の効果を得られるようにしたものもある。この種の従来技術が特許文献1に開示されている。この従来技術は、ステップの裏側に、ステップの幅方向に異なる色調の照明が配置されたステップ下照明を設け、通過するステップのタイミングに合わせて1つ、または複数のステップ毎にステップを照射する光の色調を変化させて乗客を特定のステップに誘導し、これにより乗客コンベア全体の混雑の軽減を図ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−113206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで一般に、点滅している照明は注意喚起の印象を与えるものであり、ステップ下照明の光を点滅させれば安全性を向上させることができる。ここで、ステップ下照明にLED等の光源を採用し、電気的にステップ下照明の光を点滅させることは技術的には可能である。しかしながら、特に既設の乗客コンベアにあってステップ下照明の光を点滅可能とするためには、新たな制御機能を追加したり、点滅制御に対応可能な光源に変更する必要があり、設置コストが高くなる課題があった。なお、前述した特許文献1に記載された従来技術は、照明の色調を変化させるものであり、本発明とは技術思想が基本的に異なるものである。
【0008】
上記課題を達成するために、本発明の目的は、電気的な特別な制御を要することなく、比較的容易に既存のステップ下照明の光を点滅させることができる乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明に係る乗客コンベアは、無端状に連結された複数のステップと、前記ステップの裏側に配置されたステップ下照明とを備え、前記ステップを駆動装置により移動させて乗客を搬送する乗客コンベアであって、前記ステップと前記ステップ下照明との間に配置された板材と、前記板材を前記ステップと前記ステップ下照明との間に保持するブラケットであって、複数の前記ステップを案内する枠体に固定されたブラケットと、を備え、前記板材は、前記ステップの移動方向に沿って交互に配置された前記ステップ下照明の光を通過させる光通過部と、前記ステップ下照明の光を遮る遮光部とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る乗客コンベアは、電気的な特別な制御を要することなく、比較的容易にステップ下照明の光を点滅させることができ、設置コストを安くすることができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る乗客コンベアの一実施形態が適用される既設の傾斜型乗客コンベアの全体構成を示す側面図である。
図2図1に示す傾斜型乗客コンベアに備えられた既設のステップ下照明を示す側面図である。
図3図1のA方向から見た要部平面図である。
図4図2に対応させて描いた本実施形態の要部側面図である。
図5図3に対応させて描いた本実施形態の要部平面図である。
図6】本実施形態に備えられたステップ下照明及び板部材を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る乗客コンベアの実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、エスカレーターに代表される傾斜型乗客コンベアについて説明するが、動く歩道に代表される水平型乗客コンベアに適用してもよい。また、本実施形態は、既設の乗客コンベアに本発明を適用するという流れで説明する。
【0013】
[既設の乗客コンベアの説明]
図1に示すように、建築構造物に据え付けられた既設の傾斜型乗客コンベア1は、建築構造物に設置された上部水平枠2Aと下部水平枠2Bと中間傾斜枠2Cとから成る枠体2と、この枠体2に案内されて上下階間を移動循環する複数のステップ3とを有する。また、上部水平枠2Aに設置され、ステップ3を駆動する駆動装置4と、水平面を考慮したときのステップ3の移動方向と直交する左右方向、すなわち幅方向の両側に位置する枠体2の部分に立設された欄干5とを有する。
【0014】
複数のステップ3は、幅方向の両側を左右一対の無端状のステップ鎖6に連結されることにより互いに無端状に連結されている。これら左右のステップ鎖6は、上部水平枠2A内に軸支された駆動スプロケット7と下部水平枠2B内に軸支された従動スプロケット8との間に巻き掛けられている。
【0015】
駆動装置4は、電動機9と、この電動機9の回転を減速する減速機10と、減速機10の出力軸に設けられた動力伝達スプロケット11と、この動力伝達スプロケット11の動力を駆動スプロケット7に伝える駆動鎖12と、減速機10の入力軸側に設けられた制動装置13とを備えている。また、駆動装置4は、制御装置14から出力される各種制御信号によって駆動制御される。欄干5は、その周縁にステップ3と同期して駆動される無端状の移動手すり15を案内している。
【0016】
このように構成される既設の傾斜型乗客コンベア1では、乗り口の床下から現われるステップ3の周辺に光を照射するステップ周辺照明が設けられている。ステップ周辺照明としては、ステップ3の裏側に配置されたステップ下照明16がある。
【0017】
[既設のステップ下照明の説明]
図2及び図3に示すように、ステップ下照明16は、上部及び下部のステップ乗降部近傍、かつステップ3の下方に位置しており、例えばステップ3の移動方向に沿う方向に所定の長さ寸法を有し、ステップ3の幅方向に単数もしくは複数本並列配置されている。例えば図3に示すように、2本並列に配置してある。乗降部近傍のステップ3の下方に配置されたこれらのステップ下照明16から上方に向けて光16Cを照射することにより、隣り合うステップ3の隙間から光16Cが見えるようになっている。
【0018】
[本実施形態の説明]
本実施形態に係る乗客コンベアの基本構成は、前述した図1図3に示したものと同等である。以下にあっては、本実施形態の特徴とするステップ下照明16の近傍部分の構成を中心に説明する。
【0019】
本実施形態は、ステップ3とステップ下照明16との間に設けられており、ステップ3の移動方向に沿って交互に配置されたステップ下照明16の光を通過させる光通過部と、ステップ下照明16の光を遮る遮光部とを備えている。
【0020】
すなわち図4図6に示すように、ステップ3とステップ下照明16との間、例えばステップ下照明16の上面に配置された剛性を有する板材17を備えており、前述の光通過部は板材17に形成された複数のスリット17aから成り、前述の遮光部は隣り合うスリット17a間に形成された板材17の構成部分17bから成っている。
【0021】
ステップ3の移動方向に沿う板材17の長さ寸法は、ステップ3の移動方向に沿うステップ下照明16の長さ寸法に対応する長さ寸法に、例えばステップ下照明16の長さ寸法よりもわずかに長い寸法に設定してある。
【0022】
板材17は、ステップ3の幅方向に2本設けたステップ下照明16に対応させて、ステップ3の幅方向に2本設けてある。これらの板材17は図1に示した枠体2に固定した図示しないブラケットによって保持されている。
【0023】
図4に示したように、ステップ下照明16から上方に向けて照射された光16Cは、その一部が板材17のスリット17aを通り抜けてさらに上方のステップ3方向へ向かい、他の一部はスリット17a間に形成された板材17の構成部分17bに遮られる。この状態でステップ3がステップ下照明16の上方を通過すると、ステップ3上の乗客には隣り合うステップ3の隙間から見えるステップ下照明16の光16Cが点滅しているように見える。すなわちステップ下照明16の光16Cが板材17によって見かけ上点滅している状態となる。
【0024】
板材17のスリット17aの数は、ステップ下照明16の点滅速度を考慮して設定されている。ステップ3の移動方向に沿う一定長さの板材17に対して、スリット17aの数を増やすと光16Cの点滅速度を速くすることができ、その数を減らすと光16Cの点滅速度を遅くすることができる。
【0025】
以上のように構成した本実施形態に係る傾斜型乗客コンベア1によれば、ステップ下照明16の上面に配置した板材17が、ステップ3の移動方向に沿って交互に光通過部を形成するスリット17aと、遮光部を形成する構成部分17bとを有することにより、電気的な特別な制御を要することなく、比較的容易に既存のステップ下照明16の光を点滅させることができ、設置コストを安くすることができる。これにより乗降時における乗客のステップ3に対する視認性を向上させることができ、傾斜型乗客コンベア1のさらなる安全性の確保に貢献する。
【0026】
以上、本実施形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら本発明の乗客コンベアは、前述した実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載した要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形例が可能である。
【0027】
例えば、前述した実施形態では、板材17をステップ下照明16の上面に取り付けたが、本発明はこれに限られるものではなく、ステップ3とステップ下照明16との間にあって、板材17がステップ下照明16から離隔して配置された構成であってもよい。
【0028】
また、前述した実施形態では、ステップ3とステップ下照明16との間に配置された板材17に細長状のスリット17aが設けられているが、本発明は、このようなスリット17aを設けることには限定されない。板材17に形成される光通過部が複数の丸穴または複数の角穴から成り、遮光部が隣り合う丸穴間または角穴間に形成された板材17の構成部分17bから成る構成であってもよい。
【0029】
また、ステップ3とステップ下照明16との間、例えばステップ下照明16の上面に、板材17に代えて透明のシート体を備え、遮光部はシート体に塗布形成された複数の黒色部から成り、光通過部は隣り合う黒色部間に形成されたシート体の構成部分から成るようにしてもよい。
【0030】
また、ステップ下照明16は、上面を形成する透明部材を備えた構成とし、遮光部はその透明部材に塗布形成された複数の黒色部から成り、遮光部は隣り合う黒色部間に形成された透明部材の構成部分から成るようにしてもよい。
【0031】
なお、前述した実施形態は既設の傾斜型乗客コンベア1に適用したものであるが、本発明は新設の乗客コンベアでもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0032】
1・・傾斜型乗客コンベア、2・・枠体、2A・・上部水平枠、2B・・下部水平枠、2C・・中間傾斜枠、3・・ステップ、4・・駆動装置、14・・制御装置、16・・ステップ下照明、16C・・光、17・・板材、17a・・スリット(光通過部)、17b・・構成部分(遮光部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6