特許第6573590号(P6573590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573590改良された染色特性を有するポリエステル組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573590
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】改良された染色特性を有するポリエステル組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/668 20060101AFI20190902BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20190902BHJP
   D01F 6/84 20060101ALI20190902BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20190902BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   C08G63/668
   C08L67/00
   D01F6/84 301C
   D03D15/00 A
   D02G3/04
【請求項の数】36
【外国語出願】
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-177308(P2016-177308)
(22)【出願日】2016年9月12日
(65)【公開番号】特開2017-95680(P2017-95680A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年4月13日
(31)【優先権主張番号】62/217,268
(32)【優先日】2015年9月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/324,467
(32)【優先日】2016年4月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/258,308
(32)【優先日】2016年9月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/258,338
(32)【優先日】2016年9月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516274346
【氏名又は名称】パークデール・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・アルトン・アッシャー・ジュニア
【審査官】 水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭46−008708(JP,B1)
【文献】 特開昭56−158325(JP,A)
【文献】 特開2006−063215(JP,A)
【文献】 特表2004−533553(JP,A)
【文献】 特公昭43−004545(JP,B1)
【文献】 特開平04−300322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00−64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡織繊維のための組成物であって、
テレフタル酸とジメチルテレフタレートとからなる群より選択される少なくとも一種、並びにエチレングリコールを含むポリエステル前駆体;
組成物の量を基にして、4.5〜5.5質量%のアジピン酸;
組成物の量を基にして、630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトール;
組成物の量を基にして、3.4〜4.2質量%のポリエチレングリコール;並びに
組成物の量を基にして、任意に2質量%未満のジエチレングリコール(DEG)
の溶融液を含み、
前記溶融液は、285°F(140.6℃)〜295°F(146.1℃)の温度に維持されている組成物。
【請求項2】
ポリエステルコポリマーの溶融液であって、ポリエステルコポリマーが0.58〜0.82の固有粘度を有し、そして
テレフタル酸とジメチルテレフタレートとからなる群より選択される少なくとも一種から誘導される繰返単位;
エチレングリコールから誘導される繰返単位;
ポリエステルコポリマーの量を基にして、4.5〜5.5質量%の、アジピン酸から誘導される繰返単位;
ポリエステルコポリマーの量を基にして、630〜770ppmの、ペンタエリトリトールから誘導される繰返単位;
ポリエステルコポリマーの量を基にして、3.4〜4.2質量%の、ポリエチレングリコールから誘導される繰返単位;並びに
ポリエステルコポリマーの量を基にして、任意に2質量%未満のジエチレングリコール(DEG)から誘導される繰返単位;
を含有する、
ポリエステルコポリマーの溶融液。
【請求項3】
固有粘度が0.75である、請求項2に記載のポリエステルコポリマーの溶融液。
【請求項4】
ポリエステルコポリマーを含むテクスチャードフィラメントであって、該ポリエステルコポリマーが、
テレフタル酸とジメチルテレフタレートとからなる群より選択される少なくとも一種から誘導される繰返単位;
エチレングリコールから誘導される繰返単位;
ポリエステルコポリマーの量を基にして、4.5〜5.5質量%の、アジピン酸から誘導される繰返単位;
ポリエステルコポリマーの量を基にして、630〜770ppmの、ペンタエリトリトールから誘導される繰返単位;
ポリエステルコポリマーの量を基にして、3.4〜4.2質量%の、ポリエチレングリコールから誘導される繰返単位;並びに
ポリエステルコポリマーの量を基にして、任意に2質量%未満のジエチレングリコール(DEG)から誘導される繰返単位
を含み、
大気圧及び212°F(100℃)未満の温度で反応染料を受容し保持する
テクスチャードフィラメント。
【請求項5】
紡織繊維のためのポリエステルコポリマーであって、ポリエステルコポリマーは、
テレフタル酸とジメチルテレフタレートとからなる群より選択される少なくとも一種から誘導される繰返単位;
エチレングリコールから誘導される繰返単位;
ポリエステルコポリマーの量を基にして、4.5〜5.5質量%のアジピン酸から誘導される繰返単位;
ポリエステルコポリマーの量を基にして、630〜770ppmのペンタエリトリトールから誘導される繰返単位;そして
ポリエステルコポリマーの量を基にして、3.4〜4.2質量%のポリエチレングリコールから誘導される繰返単位
ポリエステルコポリマーの量を基にして、任意に2質量%未満の量のジエチレングリコール(DEG)から誘導される繰返単位
を含むポリエステルコポリマー。
【請求項6】
ポリエステルコポリマーの量を基にして0質量%より多く2質量%未満の量のジエチレングリコール(DEG)から誘導される繰返単位を含有する、請求項5に記載のポリエステルコポリマー。
【請求項7】
前記ペンタエリトリトールから誘導される繰返単位がポリエステルコポリマーの量を基にして700ppmの量で存在する、請求項に記載のポリエステルコポリマー。
【請求項8】
前記アジピン酸から誘導される繰返単位がポリエステルコポリマーの量を基にして5質量%の量で存在する、請求項に記載のポリエステルコポリマー。
【請求項9】
前記ポリエチレングリコールから誘導される繰返単位がポリエステルコポリマーの量を基にして3.8質量%の量で存在する、請求項5に記載のポリエステルコポリマー。
【請求項10】
前記ポリエチレングリコールが400グラム/モルの分子量を有する、請求項9に記載のポリエステルコポリマー。
【請求項11】
ポリエステルコポリマーフィラメントの紡糸法であって、
テレフタル酸と、エチレングリコールと、4.5〜5.5質量%のアジピン酸と、630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトールと、そして3.4〜4.2質量%のポリエチレングリコールと、任意に2質量%未満のジエチレングリコール(DEG)を285°F(140.6℃)〜295°F(146.1℃)の温度で重合して、
0.58〜0.82の固有粘度を有するポリエステルコポリマー溶融液を製造し(比例量はポリエステルコポリマーの量に基づく);そして
得られたポリエステルコポリマー溶融液を紡糸してフィラメントにする
工程を含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法によって製造されたフィラメントをテクスチャード加工することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
テクスチャードフィラメントをステープルファイバーに切断することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ポリエステルステープルを綿と共に紡糸して混紡糸を形成することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
混紡糸を染色することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
糸を反応染料を用いて大気圧で染色することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項14に記載の糸から布帛を形成することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
請求項17に記載の布帛を染色することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
布帛を反応染料を用いて大気圧で染色することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項18に記載の染色布帛から衣服を形成することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
請求項15に記載の糸から布帛を形成することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
請求項17に記載の布帛から衣服を形成することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
テレフタル酸と、エチレングリコールと、ポリエステルコポリマーの量を基にして、5質量%のアジピン酸と、700ppmのペンタエリトリトールと、3.8質量%のPEGと、任意に2質量%未満のジエチレングリコール(DEG)とを285°F(140.6℃)〜295°F(146.1℃)の温度で重合して、0.75の固有粘度を有するポリエステルコポリマーを製造することを含む、請求項11に記載の紡糸法。
【請求項24】
糸の着色法であって、
綿とテクスチャードポリエステルコポリマーステープルから混紡された糸を染色し;
ここで、前記糸は20〜80質量%の綿を含み;そして
テクスチャードポリエステルコポリマーステープルは、ポリエステルコポリマーからなり、ポリエステルコポリマーは、
テレフタル酸とジメチルテレフタレートとからなる群より選択される少なくとも一種から誘導される繰返単位、エチレングリコールから誘導される繰返単位、ポリエステルコポリマーの量を基にして4.5〜5.5質量%のアジピン酸から誘導される繰返単位、ポリエステルコポリマーの量を基にして630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトールから誘導される繰返単位、ポリエステルコポリマーの量を基にして3.4〜4.2質量%のポリエチレングリコールから誘導される繰返単位、及びポリエステルコポリマーの量を基にして、任意に2質量%未満のジエチレングリコール(DEG)から誘導される繰返単位の組成を有する;そして
大気圧及び212°F(100℃)未満の温度で染色工程を実施する
ことを含む方法。
【請求項25】
糸を編んで布帛にすることをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
編んだ布帛から衣服を形成することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
糸を織って布帛にすることをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
織った布帛から衣服を形成することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
糸を染色することを含み、
テクスチャードポリエステルコポリマーステープルが、ポリエステルコポリマーからなり、ポリエステルコポリマーがポリエステルコポリマーの量を基にして5質量%のアジピン酸から誘導される繰返単位、ポリエステルコポリマーの量を基にして700百万分率(ppm)のペンタエリトリトールから誘導される繰返単位、ポリエステルコポリマーの量を基にして3.8質量%のポリエチレングリコールから誘導される繰返単位、及びポリエステルコポリマーの量を基にして任意に2質量%未満のジエチレングリコールから誘導される繰返単位を含む組成を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
反応染料で糸を染色することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
分散染料で糸を染色することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
混紡糸であって、
20〜80質量%の綿と;そして
テクスチャードポリエステルコポリマーステープル(その残り部分として)とを含み、
ここで、テクスチャードポリエステルコポリマーステープルはポリエステルコポリマーからなり、ポリエステルコポリマーは、テレフタル酸とジメチルテレフタレートとからなる群より選択される少なくとも一種から誘導される繰返単位;エチレングリコールから誘導される繰返単位;ポリエステルコポリマーの量を基にして4.5〜5.5質量%のアジピン酸から誘導される繰返単位;ポリエステルコポリマーの量を基にして630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトールから誘導される繰返単位;ポリエステルコポリマーの量を基にして3.4〜4.2質量%のポリエチレングリコールから誘導される繰返単位;及びポリエステルコポリマーの量を基にして任意に2質量%未満のジエチレングリコールから誘導される繰返単位を含む組成を有する混紡糸。
【請求項33】
反応染料をさらに含み、耐変色性である、請求項32に記載の混合糸。
【請求項34】
織物布帛であって、
スパンデックスと;そして
ポリエステルコポリマーフィラメントと
を含み、ポリエステルコポリマーフィラメントはポリエステルコポリマーからなり、ポリエステルコポリマーは、
テレフタル酸とジメチルテレフタレートとからなる群より選択される少なくとも一種から誘導される繰返単位;
エチレングリコールから誘導される繰返単位;
ポリエステルコポリマーの量を基にして4.5〜5.5質量%のアジピン酸から誘導される繰返単位;
ポリエステルコポリマーの量を基にして630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトールから誘導される繰返単位;
ポリエステルコポリマーの量を基にして3.4〜4.2質量%のポリエチレングリコールから誘導される繰返単位;並びに
ポリエステルコポリマーの量を基にして、任意に2質量%未満のジエチレングリコール(DEG)から誘導される繰返単位を含む、
織物布帛。
【請求項35】
請求項34に記載の染色された編んだ織物布帛。
【請求項36】
請求項34に記載の染色された織った織物布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、合成フィラメントに適切なポリエステルコポリマー組成物、及びそのような組成物から製造できる繊維及び布帛に関する。特に、本発明は、より典型的にはポリエステルよりも綿に好適な条件下で綿と共に混紡及び染色できる繊維を製造するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]フィラメント、繊維、そして布帛の製造に合成組成物を使用することは良く確立されている。従って、そのように確立された組成物の改良は特に有益である。そうした改良は、当然ながら、そのような組成物から製造されるフィラメント、繊維、布帛、及び商品(非常に多くの場合、衣類)の所望特性を増強する場合に、とりわけ価値がある。
【0003】
[0003]遡ると、衣服は、典型的には、糸から織られたか又は編まれた布帛で作られる。一方、糸は、最も一般的には、良く知られ良く確立された紡糸法を用いて繋ぎ合わせた個々の繊維から形成される。
【0004】
[0004]天然繊維(最も一般的には綿と羊毛)は、糸、布帛、及び衣服に望ましい特性をもたらす特徴を有している。例えば、羊毛は(数ある利点の中でも)、優れた熱的性質を有し、濡れても断熱性を保つ。しかしながら、正しく扱われなければ、羊毛は研磨性がありうるので、長期間皮膚と接触していると不快に感じる。綿は、快適で通気性の良い布帛であるが、濡れるとその断熱性を失いうる。綿、羊毛、及びその他の天然繊維の更なる利点は当該技術分野で一般的によく理解されている。
【0005】
[0005]同様に、合成繊維も天然繊維より主観的に良好ないくつかの性質を有する。そのうちのいくつかは(特にポリエステルの場合)、強さ、耐久性、及び“記憶”などであろう。
【0006】
[0006]従って、最終的に繊維、糸及び布帛として使用するための合成組成物を製造又は設計又は開発するに際しての目標の一つは、合成繊維の好適な性質をうまく利用しつつ、天然繊維の望ましい性質になるべく適合させる、又は場合によってはそれに改良を加えることである(例えば、羊毛の断熱性と低研磨性;綿の快適性と濡れた場合の良好な熱的性質など)。
【0007】
[0007]被服産業においては、所望色の衣服を製造する能力は基本的目標である。しかしながら、天然及び合成繊維の性質ならびにそれらの基本的な化学組成のゆえに、色は何らかの種類の染色法によって得ることが必要となる。状況によって、繊維製品は、繊維、フィラメント、糸、布帛、又はさらには衣服として染色できる。さらに、多くの場合、消費者は、衣服を洗濯機で何回も洗濯及び乾燥できることを期待しているので、随伴する目標は、そのような繰り返しの洗濯機洗濯及び乾燥に耐えながら、なお所望の色の大部分又はすべてを維持できる衣服を得ることである。関連目標としては、耐光堅牢度(典型的には日光への暴露に関して)及び(別の例としてスポーツウェアを使用する場合)汗に暴露された場合の色安定性などが挙げられる。
【0008】
[0008]基本的に、衣服の色とその寿命との関係は、基本となる繊維の化学組成及び適切な染料組成物の化学組成に基づく。当該技術分野ではよく理解されている通り、染料は、“基質への適用中のある時点で分子分散され、また、ある程度の永続性も示す着色剤”と技術的に定義される。Tortora,FAIRCHILD’S DICTIONARY OF TEXTILES,第7版,2009年 Fairchild Publications。
【0009】
[0009]染料は、典型的には、天然(例えば植物由来)又は合成(例えば、典型的には有機化学の原理及び技術を用いて他の組成物から開発)のいずれかに分類される。
[0010]繊維の染色特性は、繊維が形成される組成物に基づく。所望の性質は“可染性”と呼ばれ、“染料を受容する繊維の能力”と定義される(上記Tortora)。
【0010】
[0011]衣服の製造においては、合成繊維と天然繊維を、所望の性質を備えた完成衣服を生み出す割合で混紡することも一般的である。いくつかの理由で、綿とポリエステルの混紡は長く人気を博している。それに基づくと、綿-ポリエステル混紡を染色するための組成物及び方法は、これまでも今も望ましい成果である。しかしながら、2種類の異なる繊維の性質は実際的な問題を提起する。例えば、綿は、約150°F(約65.6℃)の温度で綿基質に首尾よく添加できる“反応染料”で都合よく染色できる。
【0011】
[0012]他方、ポリエステル(すなわちテレフタル酸とエチレングリコールの縮合エステル化とその後の重合から形成されたポリマー)の性質は、ポリエステルを“分散染料”、すなわち水中に懸濁した着色剤の小粒子で染色することを必要とする。
【0012】
[0013]分散染料によるポリエステルの着色は、著しく高い温度を必要とする。典型的には250°F(約121.1℃)より高く、しばしばおよそ270°F(約132.2℃)以上である。多くの場合、ポリエステルの染色を成功させるため、又はポリエステルの染色に必要な温度に到達させるために、高圧(すなわち大気圧より高い圧力)も必要とされる。
【0013】
[0014]更なる比較因子として、綿の染色は、染料溶液又は組成物のpH(典型的には塩基性環境)によって推進される傾向にあるが、ポリエステルの染色は、温度によって推進される傾向にあり、従来、“担体”又は“均染剤”と一般的に呼ばれる補助化学薬品の添加及び性能を必要とする。経済学的観点からは、分散染料(必要とされる条件のために、“高エネルギー”染料と呼ばれることもある)は、反応染料より高価で、比較ベースで5〜10倍にもなることがある。
【0014】
[0015]染色組成物及び染色条件の相違のために、綿とポリエステルは別個に染色されるのが慣行である。
[0016]一部の従来法において、綿-ポリエステルの混紡布帛は二つの別個の工程で染色される。第一の工程で、布帛は、ポリエステルに染料を受容させるために、わずかに酸性の浴中、約270°F以上の温度で(例えば分散染料を用いて)染色される。次に、部分的に染色された布帛を精練し、又は濯ぎ、その後、塩基性pH及び約150°Fの温度で、綿に適切な染料(例えば直接染料又は反応染料)で染色する。多くの綿染料はポリエステルの染色温度で劣化するので、二つの工程を一つにすることはできない。
【0015】
[0017]対処せねばならない別の因子として、高い染色温度は、綿-ポリエステルの布帛及び衣服に含まれていることが多いスパンデックスのようなストレッチ繊維の弾性を劣化させやすいということがある。一部の種類のスパンデックスは、高い染色温度(例えば270°F)に耐えることができるが、本質的に同じ最終用途の性質を有するが、そのような高温で染色した場合に劣化しやすい種類のスパンデックスよりも、その分高価である。
【0016】
[0018]さらに別の因子として、(例えば衣服の)知覚色は、光の相互作用と、光が示す材料と、その結果としてのヒトの目の知覚との組合せである。織物の染色に関して、染料の色は染料分子中の官能基に基づく。言い方を変えれば、織物の異なる色は、異なる組成を有する染料分子に応じている。しかしながら、すべての染料の色(すなわち基本分子)が、天然繊維又は合成繊維、糸、及び衣服に対して同じように働くわけではない。従って、繊維、糸、混紡、又は布帛は、ある種の染料の色は比較的素直に受容するが、同じ条件下で他の染料の色は拒絶する(大なり小なりの程度で)。
【0017】
[0019]さらに、ポリマー溶融液の性質を制御又は調整するために添加剤が使用されることが多いが、そのような添加剤の特徴は、染色特性又は紡糸特性又はその両方を変化させやすい。
【0018】
[0020]別の因子として、合成繊維(もちろんポリエステルを含む)は、典型的には、出発材料を重合し、その後ポリマーの溶融液を紡糸口金と呼ばれる装置の小開口部から押し出す(“紡糸”と呼ばれる工程)ことによって製造される。合成及び天然繊維の分野の熟練者であれば、“紡糸”という用語は、二つの全く異なる方法を言うのに使用されていることはすぐに分かるであろう。一つの意味において(古来)、紡糸とは、個々の繊維を撚り合わせて糸にする工程のことを言う。合成繊維の製造においては、溶融液からフィラメントを押し出して固化ポリマーフィラメントにすることも“紡糸”と呼ばれる。違いは文脈において通常明らかである。典型的には、押し出されたフィラメントの固化は、注意深く制御された空気流を押出フィラメントに対して当てる急冷工程を用いて促進又は前進される。
【0019】
[0021]しかしながら、このようにして溶融及び紡糸できる組成物に求められる性質は、良好な染色特性をもたらす性質とは無関係であるか、又は組み合わせると不都合でありうる。紡糸のために適正な粘度をもたらす組成物の特徴は、良好な染色特性をもたらす性質とは全く無関係、場合によっては正反対でありうる。従って、紡糸性を改良するためにポリマー、コポリマー又はコポリマーブレンドの組成を設計又は調整することは、あまり望ましくない又はさらには容認できない染色特性をもたらしうる。
【0020】
[0022]例えば、適切に“紡糸”するために、溶融ポリマーは、紡糸口金の部分で凝集性の(すなわち分離しない)液体フィラメントを製造するための押出を可能にする一定の流動性(粘度)を持っていなければならないが、低すぎて(“水様性”)その意図する目的のための紡糸工程を制御できない粘度は避けねばならない。ポリマー溶融液の粘度は、温度、重合度、及びその他のポリマーの性質に比例するので、紡糸温度も適切でなければならない。言い方を変えれば、溶融ポリマーは、指示温度で性能発揮できなければならない。
【0021】
[0023]合成繊維及びそれらの製造の文脈において、“溶融粘度”という用語は、何らかの所与の条件下における変形又は流れに対する溶融ポリマーの抵抗率(比抵抗)のことを言う。“固有粘度”という用語は、ポリマーの平均分子量に正比例する特徴を記載するのに使用される。固有粘度は、濃度0に外挿されたポリマー溶液(溶媒中)の粘度を基に算出される。従って、固有粘度は溶融粘度に影響を及ぼす特徴であるが、溶融粘度は、他の因子、特に溶融液の温度を含む他の因子にも関連する。
【0022】
[0024]さらに別の因子として、合成繊維は元はフィラメントなので、完成品の糸、布帛、又は衣服に望ましいその他の性質を獲得するために、切断及びテクスチャード加工されねばならない(この通りの順序でなくても構わない)。大部分の場合、テクスチャード加工の工程は、合成フィラメント又は繊維を機械的又は熱的に成形して、一直線の押出フィラメント以外の形状にすることを必要とする。従って、ポリエステルをテクスチャード加工する必要性は、重合、紡糸、又は染色を増強する性質にも影響を及ぼすはずの、そしておそらくはそれに競合しうる別の性質の組を付け加えることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
[0025]このように、単一工程で綿と共に染色できる繊維を製造できるポリマー組成物を求める需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
[0026]一側面において、本発明は、紡織繊維のための利益を有する組成物である。この側面において、本発明は、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、及びエチレングリコールからなる群から選ばれるポリエステル前駆体と;溶融液から製造されたフィラメント及び繊維に、大気圧で、綿と同様に受容される染料を付与するのに足る量のアジピン酸と;溶融液から製造された繊維と綿との混紡糸に耐ピリング性を付与するのに足る量のペンタエリトリトールと;そして溶融液から押出フィラメントを製造するために必要な弾性を溶融液に付与するのに足る量のポリエチレングリコールとの溶融液である。前記溶融液は、約285°F(約140.6℃)〜295°F(約146.1℃)の温度、及び約0.58〜0.82の固有粘度に維持される。
【0025】
[0027]別の側面において、本発明は、紡織繊維のための利益を有するコポリマー組成物である。この側面において、本発明は、ポリエステルコポリマーと、コポリマーの量を基にして約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸と、コポリマーの量を基にして約630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトールと、そしてコポリマーの量を基にして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコールとを含む。
【0026】
[0028]別の側面において、本発明は、ポリエステルコポリマーフィラメントの紡糸法である。当該方法は、テレフタル酸と、エチレングリコールと、約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸と、約630〜770ppmのペンタエリトリトールと、そして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコールとを重合して、2パーセント未満のDEGを有し、約0.58〜0.82の固有粘度及び約285°F〜295°Fの温度であるコポリマー溶融液を製造し(比例量は重合コポリマーの量に基づく)、次いで得られたポリエステルコポリマー溶融液を紡糸してフィラメントにする工程を含む。
【0027】
[0029]別の側面において、本発明は、綿とテクスチャードポリエステルコポリマーステープルから混紡された糸(糸は約20〜80重量パーセントの綿である)の着色法である。テクスチャードポリエステルステープルは、ポリエステルコポリマーの量を基にして約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸、ポリエステルコポリマーの量を基にして約630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトール、ポリエステルコポリマーの量を基にして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコール、及びポリエステルコポリマーの量を基にして2パーセント未満のジエチレングリコールという組成を有する。染色工程は、大気圧及び212°F(100℃)未満の温度で実施される。
【0028】
[0030]別の側面において、本発明は混紡糸である。この糸は、約20〜80重量パーセントの綿と、その残り部分としてテクスチャードポリエステルコポリマーを含有する。テクスチャードポリエステルステープルは、ポリエステルコポリマーの量を基にして約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸、ポリエステルコポリマーの量を基にして約630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトール、ポリエステルコポリマーの量を基にして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコール、及びポリエステルコポリマーの量を基にして2パーセント未満のジエチレングリコールという組成を有する。
【0029】
[0031]本発明の上記及びその他の目的及び利点、ならびにそれらが達成される様式は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】[0032]図1は、対照布帛か又は本発明による繊維を用いて編んだ布帛のいずれかを示すカラー写真である。写真は、表3及び4に数値表記されたデータに対応する。
図2】[0032]図2は、対照布帛か又は本発明による繊維を用いて編んだ布帛のいずれかを示すカラー写真である。写真は、表3及び4に数値表記されたデータに対応する。
図3】[0032]図3は、対照布帛か又は本発明による繊維を用いて編んだ布帛のいずれかを示すカラー写真である。写真は、表3及び4に数値表記されたデータに対応する。
図4】[0032]図4は、対照布帛か又は本発明による繊維を用いて編んだ布帛のいずれかを示すカラー写真である。写真は、表3及び4に数値表記されたデータに対応する。
図5】[0032]図5は、対照布帛か又は本発明による繊維を用いて編んだ布帛のいずれかを示すカラー写真である。写真は、表3及び4に数値表記されたデータに対応する。
図6】[0032]図6は、対照布帛か又は本発明による繊維を用いて編んだ布帛のいずれかを示すカラー写真である。写真は、表3及び4に数値表記されたデータに対応する。
図7】[0033]図7は、光に暴露された布帛の部分と陰になった部分との間の差を示す図6の拡大抜出し部分である。
図8】[0034]図8は、図1〜6のサンプルとは異なる均染剤を用いた場合の対照布帛と本発明から製造された布帛の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[0035]本明細書中に示されている通り、本発明の目標は、単一工程で綿と共に染色できるポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)に基づく繊維を製造することである。
[0036]当該技術分野では周知の通り、綿は、典型的には、約150°F(約65.6℃)の温度(すなわち水の沸点よりはるかに下)及び大気圧で、反応染料又は直接染料で染色される。ポリエステルは、典型的には(及び必然的に)分散染料で染色される。これは、かなり高温(ほとんどの場合250°F(約121.1℃)より上)を必要とし、従って染料分散液をポリエステルに浸透させるための加圧設備(大気圧より高い条件)も必要としうる。綿の染色はpHに敏感な傾向にあるが、ポリエステルは、典型的には、染料が基質材料全体に移動するのを補助する役割を果たす担体又は均染剤(例えば脂肪酸誘導体)と呼ばれる添加剤を必要とする。
【0032】
[0037]織物の分野では、“テクスチャード加工”及び“クリンプ加工”などの用語は広義にも具体的にも使用されている。最も広義には、テクスチャード加工及びクリンプ加工は、合成フィラメント、ステープルファイバー、又は糸を、機械処理、熱処理、又はその両方で処理して、未処理のフィラメント、ステープル、又は糸よりも体積を増大させる工程のことを言う同義語として使用される。狭義では、クリンプ加工という用語は、フィラメント、繊維又は糸に二次元の鋸歯延伸を生み出すことを言うのに使用されるが、テクスチャード加工という用語は、ループ又はカールを生み出す処理のことを言うのに使用される。意味は一般的に文脈で明らかである。明細書及び特許請求の範囲において、“テクスチャ”という語は広い意味で使用され、フィラメント、ステープルファイバー、又は糸に所望の効果を生じるためのすべての可能性を含むものとする。
【0033】
[0038]2014年3月26日に出願された、同一出願人による仮出願第61970569号に、反応染料で着色できるポリエステルを製造するために、増量された(従来の配合と比べて)アジピン酸及びジエチレングリコール(“DEG”)を含む組成物が記載されている。しかしながら、該組成物を用いた更なる研究で、'569号の組成物は多数の色を受容できるが、ある種の色を受容しないことが見出された。その一例は、Huntsman Textile Effects社(ノースカロライナ州シャーロット;ジョージア州ドールトン;テキサス州ウッドランズ)のNOVACRON(登録商標)紫染料の一つである。そこで、何らかの特定理論によって制限されることなく、61970569号に示された配合物のタイプ中の成分を除外又は抑えるために、一連の比較試験を実施した。経験的に、これらの試験から、ジエチレングリコールの量が多いと、紫染料を受容可能な量で取り込めないことが示された。
【0034】
[0039]そこで、本発明によれば、約2%を超える割合のジエチレングリコールが存在すると、綿ポリエステル混紡を、綿に好適な条件下で、ある種の染料色素で染色するのに問題を招くことが思いがけず分かった。
【0035】
[0040]追加の試験組成物とその後の染色及び耐変色性試験に基づき、本発明は、61970569号又はその他の試みよりも広範囲の色にわたって、はるかに良好な結果で綿と共に染色されるポリエステルコポリマーを提供する。改良されたコポリマーは、約4.5〜5.5%の量のアジピン酸と;約630〜770ppmの量のペンタエリトリトールと;約3.4〜4.2%のポリエチレングリコールとを配合し、一方でジエチレングリコール(テレフタル酸とエチレングリコールのエステル化の定副産物)の量を2%未満に維持することによって製造できる。これらの各量はすべて完成コポリマー中のそれらの割合に基づく。
【0036】
[0041]これまでで最も有用な組成物には、アジピン酸が約5%、ペンタエリトリトールが約700ppm、及びポリエチレングリコールが約3.8%存在する。
[0042]高レベルの(相対的)ペンタエリトリトールは、重合反応の反応性を増大する。従って、従来の予想では、この反応性を抑えるために低温の溶融液が必要とされる。しかしながら、本発明では、ペンタエリトリトールと反応性の増大が、ポリマーの固有粘度及び溶融液の全体的粘度を増大させてもよい。従来、フィラメント、ひいてはステープルファイバーに使用されるポリエステルの固有粘度は、約0.52〜0.65に維持される。低粘性の溶融液は“水様性”すぎる傾向にあり、過度に高粘性の溶融液は紡糸口金からの押出(紡糸)中に分離する傾向にある。
【0037】
[0043]本発明では、固有粘度は著しく増大することが許容され、特に約0.58〜0.82に達してもよい(例えば0.75)。従来のコポリマーが低い固有粘度で運転される傾向にあることを考えると、本発明の高い固有粘度は直観に反している。
【0038】
[0044]従来、低い固有粘度のポリマー適切に紡糸及び急冷するためには、紡糸温度を低くする。これに対し、本発明の組成物は、モノマーから製造されるポリエステルにとってはより慣用的な温度で紡糸することが許される(例えば高重合器(high polymerizer)で280°〜290°F(約137.8〜143.3℃))。
【0039】
[0045]従って、4.5〜5.5パーセントのポリエチレングリコールを有するコポリマーの紡糸温度は従来約280°Fに下げられるが、本発明では、紡糸は従来のポリエステルモノマーと同じ温度、例えば285〜290°F(約140.6〜143.3℃)で実施される。
【0040】
[0046]添加されたペンタエリトリトールは得られるフィラメントの引張強さを低減するが、本発明では、この特徴は、そのフィラメントから製造されるステープルが綿と混紡される場合、ピリングを低減する傾向にあるため有益である。
【0041】
[0047]一般に織物、特にポリエステル繊維及びポリエステルと綿との混紡に精通した者には公知の通り、“ピリング”という用語は、布帛の表面が摩擦された場合(通常の摩耗や引裂を含む)に起こりうる繊維の望ましくない小さなもつれ(“毛玉(繊維塊)”)を言うのに使用される。綿-ポリエステル混紡では、ピリングは、ポリエステルの強さゆえに、ポリエステル繊維から形成された毛玉が布帛からちぎれ落ちることを、綿繊維の毛玉と同じくらい簡単に妨げる傾向にあるので、より目立つ。ピリングは、ASTM D3512(“Standard Test Method for Pilling Resistance and Other Related Surface Changes of Textile Fabrics”)、例えばランダムタンブル試験;又はAATCC試験法124−2014(“Smoothness Appearance of Fabrics after Repeated Home Laundering”)を用いて試験できる。
【0042】
[0048]表1に、本発明にとって最も有益な組成物を確認する目的で開発された幾つかの比較組成物を示す。表1は8つの実験のシリーズを含み、そのそれぞれは、ポリマーの1000g(1Kg)バッチを製造するために設計された。これらのバッチは、1キログラムのNCCATT反応器で製造され、その後、フィラメントを実験室規模の押出機で紡糸した。これらの出発材料は、290°F(約143.3℃)の温度で標的固有粘度が0.620に達するまで重合された。
【0043】
[0049]表1に示されているように、出発材料は、適切な触媒と少なくとも一つの光学的増白剤、蛍光増白剤を含んでいた。蛍光増白剤は当該技術分野では一般的によく理解されており、紫外線(例えば360〜380ナノメートルの領域)を吸収し、より長波長の、スペクトル可視部の青紫色可視光を再放出することによって機能する。そのような組成物は、当業者であれば必要以上の実験なしに選ぶことができ、選択された増白剤は、完成品のコポリマー、繊維、又は布帛の所望の性質に望ましくない影響を与えることなく提供される。出発材料は、少量の酸化アンチモン(0.35g)、0.02gの10%リン酸、及び水酸化テトラメチルアンモニウム(水中5%溶液0.160g)も含む。
【0044】
[0050]表1−コポリマーの1000グラムバッチの製造
【0045】
【表1】
【0046】
[0051]表1の組成物から形成された布帛は、以下の一般的に慣用の方法で染色できる。染色される布帛を所望の助剤(例えば均染剤及び塩)を含んでいてもよい水溶液に入れ、温度を約25分間かけて室温から染色温度(例えば約150°F(約65.6℃)より高いが、沸点未満)に上げながら、平衡化させる。次に、温度を一般に一定に維持しながら、約15分間かけて染料を加え(約10:1の浴比(liquor ratio)で)、その後、温度を約30分間約195°F(90.6℃)に上げ、染料を移動させる。次に、温度を約10分間かけて約158°F(70℃)に下げ、そこで約35分間維持して染料を定着させる。
【0047】
[0052]次に、染色された布帛を約10分間、約122°F(約50℃)で濯ぐ(全体的な状況に応じておそらくは2回以上濯ぐ)。次いで、布帛を約10分間、約160°F(約71.1℃)で、典型的には弱酢酸(例えば1%以下)を用いて中和する。次に、布帛は、水の硬度及び意図する色合いに応じて、石鹸で10分間、1回又は2回、約200°F(約93.3℃)で洗うこともできる。
【0048】
[0053]次に、布帛を熱水(約160°F)、次いで冷水でそれぞれ約10分間濯ぐ。所望であれば又は必要であれば(例えば、染料の色合い又はその他の因子に応じて)、布帛を定着剤(例えば、一例としてポリマー性第四アンモニウム化合物)及び柔軟剤で処理することもできる。
【0049】
[0054]これらの組成物のうち、PD11は、260〜270°F(約126.7〜132.2℃)の高エネルギー染料を受容するであろうが、205°F(約96.1℃)の低エネルギー染料は受容しないだろう。しかしながら、PD12とPD13は、繊維全体に低エネルギー染料を受容するようである。低エネルギー染料で適切に染色できる能力は、高エネルギー染料は反応染料より比例的に高価(時に10倍)なので、著しい経費節減を提供する。
【0050】
[0055]本発明は、何らかの特定理論に制限されないが、アジピン酸は染料に受容性を、ペンタエリトリトールは耐ピリング性を、そしてポリエチレングリコールは溶融液をフィラメントに紡糸するための弾性を提供すると仮定することができる。
【0051】
[0056]従って、一側面において、本発明は、組成物:ポリエステル、アジピン酸、ペンタエリトリトール、ポリエチレングリコール、又は少量のジエチレングリコールであることは理解されるであろう。そして、組成物は、重合溶融液、その溶融液から製造されたポリエステルコポリマーフィラメント、又はその組成物から製造されたテクスチャードフィラメントと理解することができる。
【0052】
[0057]テクスチャード加工は当該技術分野において良く理解されているので、これまでのところ、本発明の組成物は、従来の工程を用いてテクスチャード加工できる(例えば、撚りの位置にある間にヒートセットする)フィラメントを製造するということを指摘する以外は別段詳細に記載しない。
【0053】
[0058]本発明の組成物の側面には、フィラメント(典型的にはテクスチャード加工されたフィラメント)から切断されたステープルファイバー、糸、特に綿と本発明のポリエステルコポリマーとの混紡、染色糸、布帛、染色布帛、及び衣服の製造も含まれる。
【0054】
[0059]さらに、染色工程は、混紡糸、混紡糸から形成された布帛、又はさらには混紡糸から形成された衣服に対して実施できることは理解されるであろう。
[0060]方法の文脈において、本発明は、テレフタル酸、エチレングリコール、約4.5〜5%の量のアジピン酸、約630〜770ppmの量のペンタエリトリトール、約3.4〜4.2%の量のポリエチレングリコール、及び2%未満のジエチレングリコールの装入材料を重合する工程を含む。これらの量は、完成コポリマーの全重量と比較した成分の重量パーセンテージとして表されている。
【0055】
[0061]装入材料は、約0.68〜0.82の固有粘度及び約285〜295°F(約140.6〜146.1℃)の温度で運転される(又はそれに達するまで)。溶融液はそれ以外は従来の方法でフィラメントに紡糸される。
【0056】
[0062]当該方法によって製造されたフィラメントは、テクスチャード加工され、ステープルファイバーに切断され、綿との混紡糸に紡糸され(典型的には5〜95重量%の範囲の綿と)、そして糸として染色することができる。あるいは、混紡糸を織るか又は編むかして布帛にした後、染色し、次いで衣服に形成することもできる。状況によっては染色工程を衣服に対して実施することもあるが、糸を染色するのがおそらく最も一般的である。
【0057】
[0063]しかしながら、当業者であれば、フィラメントは、糸(“フィラメント糸”)としても使用できる、すなわちステープルに切断せずに又は別の繊維(例えば綿)と混紡せずに使用できることも理解されるであろう。そのようなフィラメント糸は、スポーツウェア業界で特に有益である。特に、本発明によるフィラメント糸は、所望のスパンデックス特性をすべて維持しながら、発明的染色温度(約205°F(約96.1℃))で染色できるスパンデックスを使用する機会を提供する。背景の項で述べたように、高温で染色できるスパンデックスの種類は入手可能であるが、コストが高い上に、スポーツウェアの目的にふさわしい何ら対応するストレッチ又はリカバリー利益もない。
【0058】
[0064]ポリ-綿混紡は様々な割合で製造、販売、及び使用されているので、本明細書中には可能な広範囲(5〜95%の綿)が示されている。それでも、本発明は綿の割合が高い混紡にも確かに利益を提供するが、本発明はポリエステルの割合が大きい(50%以上)ポリ-綿混紡に特に利益を提供することは理解されるであろう。
【0059】
[0065]方法の工程において組成物に関して前述したように、これまでで最良の結果は、約5%のアジピン酸、約700ppmのペンタエリトリトール、及び約3.8%のポリエチレングリコールで得られている(すべてコポリマー組成物の全重量に基づく)。
【0060】
[0066]別の側面において、本発明は、綿と、本明細書中に記載の組成物を原料とするテクスチャードポリエステルステープルとから形成された混紡糸の染色法と見なすこともできる。従って、染色工程は、約5〜95重量パーセントの綿と、組成物及びフィラメントの製造法に関して述べた一定量のアジピン酸、ペンタエリトリトール、ポリエチレングリコール、及びジエチレングリコールを含むポリエステルとを含む糸に対して実施される。
【0061】
[0067]別の側面において、本発明は、約5〜95重量パーセントの綿と、残り部分としてテクスチャードポリエステルとを含有する混紡糸そのものである。テクスチャードポリエステルは、他の態様に関して記載した組成を有する。完全を期すために述べると、これらは、約4.5〜5.5%のアジピン酸(例えば5%)、630〜770ppmのペンタエリトリトール(例えば700ppm)、約3.4〜4.2%のポリエチレングリコール(例えば3.8%)、及び2%未満のジエチレングリコール副産物である。繰り返すが、これらの量は完成コポリマーの重量に基づく。
【0062】
[0068]他の態様と同様に、糸は染色でき、布帛及び衣服に形成されるが、染色は、綿をポリエステルとは別に染色する従来の工程とは対照的に、混紡に対して実施される。
[0069]従って、本発明を使用すると、混紡布帛は単一の染料を用いて首尾よく染色できる。あるいは、2種類の染料が好適な場合、本発明は、両染料を単一の浴中に維持することを可能にするので、ポリエステルのための分散染色工程と綿のための直接染色工程との間の従来の濯ぎ又は精練工程が排除される。転じて、本発明は、使用される水も生成する廃水も少ないという利益を提供する。
【0063】
[0070]生産又は連続規模で、本発明は、当業者には極めて馴染み深い工程において形成及び使用されることが期待される。そこで、予測例として、テレフタル酸とエチレングリコールを約1:1〜1.2:1(TA対EG)のモル比で混合してペースト(又はスラリー)にする。次に、このペーストを、大気圧より高い圧力及び250℃より高い温度(典型的には260〜280℃)下にある一次エステル化装置(“PE”)に移す。組成物はエステル化されたモノマーを形成する(通常約90パーセントのエステル化を示す)。次に、この生成物を二次エステル化装置に移す。その時点でペンタエリトリトール及びアジピン酸を添加できる。二次エステル化装置の圧力は一次エステル化装置より低いが、温度はわずかに高く(例えば270〜275℃)、エステル化は(例えば)約94%に達する。
【0064】
[0071]次に、エステル化された組成物を低重合器に移す。所望であれば、ペンタエリトリトール及びアジピン酸を交互に二次エステル化装置と低重合器との間で添加できる。低重合器は、水蒸気(重合は縮合反応である)を除去するために約275〜280℃の温度及び真空下で運転され、モノマーは約75〜100の重合度に達する。次に、組成物を高重合器に移す。そこでは重合は、はるかに高い数字、典型的には、およそ20,000単位に達する。
【0065】
[0072]高重合器は、典型的には、標準的なPETポリマーの場合、約270〜310℃の温度で運転され、285〜290℃が特に代表的である。ポリエチレングリコールを含有する従来のコポリマーは、通常、この範囲の下の方の温度、例えば約280℃で運転される。しかしながら、本発明では、温度は、標準範囲内の高い方(例えば285〜290℃)に維持できるが、固有粘度は約0.58〜0.82に達してもよい(多くの状況において約0.75が好適である)。
【0066】
[0073]固有粘度は、典型的には、適切な溶媒中に溶解されたポリマーのサンプルを用いて細管粘度計で測定される。代替として、ポリマーを溶媒中に溶解する工程なしに固有粘度を直接測定できる機器も利用できる。本明細書中に記載されている固有粘度は、例えばASTM D5225(“Standard Test Method for Measuring Solution Viscosity of Polymers with a Differential Viscometer”)又は、容認可能な許容誤差範囲内の同じ結果をもたらす任意の試験又は機器を用いて測定又は確認できる。
【0067】
[0074]本発明に関し(そして多くの場合、一般的に)、耐変色性は、糸、布帛、又は衣服に対する様々な種類の影響下における、染色された色の退色又はブリード(色泣き)に対する抵抗性を表す。水、光、摩擦、洗濯、及び汗への暴露が典型的である。耐変色性試験は、材料の性質を有用かつ再現可能な様式で確認しようとするものである。
【0068】
[0075]典型的な試験では(AATCC Test Method 61−2013;Colorfastness to Laundering:Accelerated)、洗剤溶液及び5種類の典型的な手洗い又は家庭洗濯の摩耗作用(塩素を使う又は使わない)に由来する布帛の色落ち及び表面変化を1回の45分間試験で大まかに見積もる。サンプルを、5種類の手洗い又は家庭洗濯の代表的な変色をもたらすと予想される温度、洗剤溶液、漂白及び摩耗作用の条件に暴露する。標準試験は、Society of Dyers and Colorists(SDC; www.sdc.org.uk;2015年7月24日アクセス)及び国際標準化機構(ISO; www.iso.org;2015年7月24日アクセス)によっても開発されている。
【0069】
[0076]耐光堅牢度(すなわち、光への暴露下での耐変色性)も、高エネルギーキセノンフェードメーター(退色試験機)を用い、規定された放射強度サイクル時間(明と暗)及び温度条件下で実施できる。AATCC Test Method 169−2009,“Weather Resistance of Textiles:Xenon Lamp Exposure”は適切な試験である。
【0070】
[0077]得られた色の差は、標準化グレースケール及びグレースケール試験法を用いて評価できる(例えば、ASTM D2616−12;“Standard Test Method for Evaluation of Visual Color Difference With a Gray Scale”)。
【0071】
[0078]表2
【0072】
【表2】
【0073】
[0079]表2に、対照布帛及び本発明により製造された布帛についてのランダムタンブルピリング(“RTP”)と家庭洗濯(“HL”)試験の結果を示す。表2に示されているように、表1のPD13の配合を本発明の合成成分の代表として使用した。試験は、ASTM RTP及びASTM D3512 HL(http://www.astm.org/Standards/D3512.htm;2016年3月3日アクセス)を用いて実施した。試験は購読料を支払って利用できるが、一般的に、サンプル布帛と標準布帛との間に適用される標準化摩擦作用からなる。特定回数の摩擦が行われた後、サンプルを試験して、できたピル(繊維塊)の数を決定する。布帛は、摩擦動作を実施するために長方形ブロックの上に置かれる。
【0074】
[0080]表2の中の20/1は、英国式の綿番手である(“綿番手システム”Tortora、上記)。一部の布帛は、カード綿(carded cotton)と合成ステープルファイバー(オープンエンド紡績糸)の50/50混紡で、合成繊維の方は、本発明(PD13)か又はDupont AKRA対照(DuPont−Akra Polyester,LLC社、Charlotte,NC 28210,USA)のいずれかであった。他の布帛は、本発明による100%ステープルか又は(対照用の)Dupont AKRAポリエステル100%から形成されたものであった。Dupont社の製品安全データシート(MSDS No.DU005415)によれば、組成物はポリエチレンテレフタレート(Charlie Alpha Sierra number 25038−59−9)で、紡糸仕上剤として約0.2〜3%の滑沢剤と5%未満の二酸化チタンを含みうる。
【0075】
[0081]第3及び第4のカラムは、目視検査前の試験時間と、各時間の布帛の等級付け(業界では数値が高いほど良い)を表す。
[0082]家庭洗濯試験によれば、対照と本発明は、視覚的観点から同等と判定されたか、又は一例においては対照の方がわずかに良好であった。それでも、確かに主観的な判断ではあるが、本発明はすべての実用的目的に関して対照と商業的に同等である上に、本明細書中に記載の他の利益も提供する。
【0076】
[0083]図3〜6の混紡布帛は、資源もエネルギーも著しく節約する一浴二段染色法を用いて染色された。そのような染色法では、水及び分散染料(ポリエステル用)及び反応染料(綿用)がすべて一緒に添加されて染料溶液を形成する。第一段階では、弱酸(典型的には酢酸)を加えてpHを約5.5〜6.5にする。次に、混合物を約205°F(約96.1℃)の温度、すなわち発明的ポリエステルは染色されるが標準的なポリエステルは染色されない温度に加熱する。
【0077】
[0084]同一浴中の第二段階で(これは標準的なポリエステルでは不可能)、塩と苛性アルカリ(すなわち、塩基、典型的には水酸化ナトリウム、NaOH)を同じ浴に加え、綿の反応染料を活性化し、pHを塩基側(例えば約8)にする。
【0078】
[0085]この一浴二段法は、ポリエステルの染色工程後に染料容器(“ポット”)を空にして綿の染色工程のために入れ替えるという必要性を回避する。最低限でも、これは相当な時間節約を提供し、反復染色工程にとっては累積的に有利となる。第二に、浴の温度を綿の染色工程もポリエステルの染色工程も同じにできるので、加熱が少なくてすみ、再加熱に要する時間も少なくてすむ。結果は、単一染浴から得られた完全染色混紡布帛である。
【0079】
[0086]表3
【0080】
【表3-1】
【0081】
【表3-2】
【0082】
[0087]表3及び4は次のように最も良く解釈される。表中のサンプル布帛は、図1〜6それぞれの左上隅のロット番号に対応している(例えば、図1の“101315A”)。一覧表:
【0083】
【数1】
【0084】
[0088]写真を明確にする一助とするために、図1〜6の各々において、以下の参照数字は以下の結果と対応する。10−2A 洗濯;11−3A 洗濯;12−乾燥色移り(dry crock);13−濡れ色移り(wet crock);14−冷水ブリード;15−酸性汗;16−アルカリ性汗;17−20時間の耐光堅牢度;18−40時間の耐光堅牢度;21 酸性汗耐光堅牢度;22 アルカリ性汗耐光堅牢度;23−(図3〜6の混紡布帛の場合)綿を除去後(典型的には硫酸HSOで“焼却”することにより)の布帛の色のサンプル。
【0085】
[0089]表3は、図1〜6に示されている6種類の異なる布帛のそれぞれについての試験結果を示した6個のサブテーブルの集合体である。つまり、第一のサブ部分には、101315Aの20時間の耐光堅牢度試験(ISO 105 A05)、次に40時間の耐光堅牢度試験、次に20時間の酸性汗試験、次にアルカリ性汗試験についての結果が示されている。
【0086】
[0090]表3の第二のサブ部分は図2(101315B)に対応し;その後、図3(101415);図4(101515);図5(101615);及び図6(102215)に対応している。
【0087】
[0091]それぞれの場合において、dEF等級付けはISO 105−A05下で計算される。一般に、ISO 105−A05は、試験標本の色変化を対照標本の色変化と比較して評価するための機器試験で、その後、機器測定値をグレースケール評定に変換する一連の計算を行う。
【0088】
[0092]耐光堅牢度試験は国際標準化機構(International Standards Organization)専有のものであるが、購読料を支払えば公的に入手可能である(すなわち機密ではない)。一般に、明度(L)、彩度(C)及び色相HABに関する色座標を対照及び試験標本について測定し、その差を計算して、試験プロトコルの一部を形成する等式を用いることにより、dEFグレースケール評定に変換する。
【0089】
[0093]表4
【0090】
【表4】
【0091】
[0094]表4に5種類の試験についての同様の結果をまとめた。すなわち、2A 洗濯堅牢度(AATCC 61 CAN/CGSB & ISO 105−C06 Test No BIM)、3A 洗濯堅牢度(AATCC 61 CAN/CGSB & ISO 105−C06 Test No BIM)、冷水ブリード(25℃の水中に規定時間の間布帛を浸漬する)、酸性汗堅牢度:(ISO 105−E04 )、及びアルカリ性汗堅牢度(ISO 105−E04)。
【0092】
[0095]サンプル布帛(図1〜6に対応する)は、5個のサブテーブルのそれぞれについて見出し行として掲載されている。これに対し、縦列(カラム)は、酢酸セルロース(CA)、綿(CO)、ポリエステル(PES)、ナイロン(PA)、アクリル(PAC)、及び羊毛(WO)を表している。これらは、図1〜6の写真の対応部分の試験片の布帛である。結果は、布帛が本発明とこれらのその他の種類の繊維のいずれか一つ又は複数との混紡で形成された場合、布帛の色安定性の可能性を示している。
【0093】
[0096]写真が(布帛)に関して優れた結果を示しているのと同様に、表4の比較試験もその結果を裏付けている。数値は、ISO−C06から得られたものである。
[0097]本発明の性質を確認及び比較するために使用される又は使用可能なその他の試験は、下記の一つ又は複数を含む。
【0094】
[0098]AATCC 61は、American Association of Textile Chemists and Colorists(リサーチ・トライアングル・パーク、米国ノースカロライナ州)によって開発された試験である。試験の詳細はAATCC.org/test/methods/test-method-61/(2016年3月3日アクセス)にて、協会から入手可能である。
【0095】
[0099]試験は、頻繁な洗濯に耐えることが期待される織物の洗濯に関する耐変色性を評価するものである。試験標本は、変色が5種類の手洗い又は家庭洗濯で起きるのと同様になるような温度、洗剤溶液、漂白及び摩耗作用の適切な条件下で試験される。
【0096】
[0100]収縮試験はAATCC 135である。これも、その詳細については専有であるが、一般的に、布帛のサンプル部分に特定の測定距離で印をつけ、その布帛を予め決められた様式で洗濯し(乾燥を含む)、次いで印をつけた部分を再測定して収縮の量を決定することからなる。
【0097】
[0101]色移り(crocking)(AATCC_)は、摩擦によって一つのサンプル布帛から別の布帛へ移る色の量を決定するために使用される。試験されるサンプル布帛をクロックメーター(摩擦染色堅牢度試験機)に固定し、白色の試験布に対して擦る。試験は、乾燥した試験布と濡れた試験布の両方で実施する。試験布に移った色の量は、AATCCの色移りスケール(chromatic transference scale)との比較によって査定する。試験の詳細はAATCCの専有であるが、公的に入手可能であり、当業者には良く理解されている。
【0098】
[0102]布帛は、AATCC歪み(skewing, skew, skewness)試験法179でも試験された。この試験もAATCC専有のものであるが、公的に入手でき、当該技術分野では良く理解されている。この試験は、家庭洗濯で通常使用される反復自動洗濯手順を模倣した試験に付した場合の織った布帛及び編んだ布帛における歪みの変化、又は衣服の捩れを判定する。試験は、測定結果を得るために特定の洗濯及び乾燥手順を規定している。歪み試験は、ある程度、布帛の糸又は横目が、それらの意図された設計及び製作設計から変形する程度の指標となる。
【0099】
[0103]クリーニング店及び家庭での湯を使った洗濯(hot laundering)に関する耐変色性も、ISO試験番号105−C06を用いて判定できる。正確な試験装置、材料及び試薬ならびに手順は、国際標準化機構の専有であるが(ウェブアドレス)、これも公的に入手可能であり(購読料又は個人購入費)、当業者には良く理解されている。
【0100】
[0104]関連試験は、耐汗堅牢度(ISO 105−E04)、耐水堅牢度(ISO 105−E01);及び耐光堅牢度(ISO 105−B02)を扱っている。
[0105]一般に、耐汗性試験は、汗を模倣した2種類の標準溶液を用いて実施されるが、一つはわずかに酸性(例えばpH5.5)及び一つはわずかに塩基性(例えばpH8.0)である。
【0101】
[0106]試験される布帛のサンプルを、その他は同一の非染色布帛と直接接触させておく(多くの場合それらを共に縫い合わせることにより)。次に、この複合サンプルを酸性又は塩基性溶液中に約30分間浸漬した後、わずかな加圧下、高めた温度(例えば35〜39℃)で約4時間維持する。
【0102】
[0107]相補的試験(酸又は塩基)は全く同じ様式で実施される。次に、複合サンプルを白色布から分離して乾燥させ、試験サンプルの色の変化と白色布の色染みを標準化グレースケールに対して比較すればよい。
【0103】
[0108]図8に、図1〜6のサンプル用に選ばれたものとは異なる均染剤を用いて染色された布帛(対照及び本発明)で実施されたサブグループ試験の結果を示す。
[0109]図8に6種類の異なる布帛が示され(そして番号付けられ)ている。上列に沿って、1% Univadine DLSを用いて染色されたDacron(25);1% Univadine DLSを用いて染色された本発明(26);1% Univadine DFMで染色されたDacron(27);1% Univadine DFMで染色された本発明(30);10% Univadine DFMで染色されたDacron(31);及び10% Univadine DFMで染色された本発明(32)である。Univadine均染剤は、Huntsman Textile Effects社 3400 Westinghouse Boulevard Charlotte,NC 28273 USA から入手できる。
【0104】
[0110]中列に、6枚の非染色Dacronサンプルを基にした染料残留の結果を示す。このそれぞれは、染色工程後に染浴に入れたものである。元の布帛(25〜27及び30〜32)が染料を効率的に取込み損ねた程度の結果が第二列に示されている。これに基づくと、着色の少ない結果ほど、薄色(又はさらには主色)の着色を伴う結果よりも良好である。
【0105】
[0111]従って、これらは残留染料の取込みを示す。対応関係は、25と33;26と34;27と35;30と36;31と37;そして32と40である。
[0112]試験シート33、35及び37はすべて明らかな色を示し、Dacronサンプル25、27及び31の染色後に残留染料が残っていたことを示している。試験シート34、36及び40は本質的に白色で、本発明の布帛サンプル26、30及び32がそれぞれ染料の取込みにはるかに成功していることを示している。
【0106】
[0113]図8の下列は、同じ比較目的のために同じ布帛で実施された耐光堅牢度試験の結果を示している。この列では、関係はいずれの場合にも、本発明の組成物から形成された布帛の方がDacron標準よりも優れた結果をもたらしている。
【0107】
[0114]本明細書において、本発明の好適な態様を示してきた。特定の用語が使用されているが、それらは一般的及び説明的意味において使用されているに過ぎず、制限を目的としたものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲において定義されている。
【0108】
[発明の態様]
1.紡織繊維のための利益を有する組成物であって、溶融液:
テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、及びエチレングリコールからなる群から選ばれるポリエステル前駆体と;
前記溶融液から製造されたフィラメント及び繊維に、大気圧で、綿と同様に受容される染料を付与するのに足る量のアジピン酸と;
前記溶融液から製造された繊維と綿との混紡糸に耐ピリング性を付与するのに足る量のペンタエリトリトールと;
溶融液から押出フィラメントを製造するために必要な弾性を前記溶融液に付与するのに足る量のポリエチレングリコールと
の溶融液を含み、
前記溶融液は、約285°F(約140.6℃)〜295°F(約146.1℃)の温度、及び約0.58〜0.82の固有粘度に維持される組成物。
【0109】
2.2パーセント未満のジエチレングリコール(DEG)を含有する、1記載の重合溶融液。
3.固有粘度が0.75である、1記載の重合溶融液。
【0110】
4.1記載の溶融液から製造されたポリエステルコポリマーフィラメント。
5.4記載のフィラメントから製造されたテクスチャードフィラメント。
6.大気圧及び212°F(100℃)未満の温度で反応染料を受容し保持する、5記載のテクスチャードフィラメント。
【0111】
7.5記載のテクスチャードフィラメントから切断されたステープルファイバー。
8.綿繊維と7記載のステープルファイバーとの混紡。
9.8記載の混紡繊維から形成された糸。
【0112】
10.9記載の染色糸。
11.反応染料を含む、10記載の染色糸。
12.9記載の染色糸から形成された布帛。
【0113】
13.8記載の糸から形成された布帛。
14.13記載の染色布帛。
15.12記載の布帛から形成された衣服。
【0114】
16.14記載の布帛から形成された衣服。
17.紡織繊維のための利益を有するコポリマー組成物であって、前記組成物は、
ポリエステルコポリマーと;
コポリマーの量を基にして約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸と;
コポリマーの量を基にして約630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトールと;そして
コポリマーの量を基にして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコールとを含む組成物。
【0115】
18.コポリマーの量を基にして2パーセント未満の量のジエチレングリコール(DEG)を含有する、請求項17に記載の組成物。
19.前記ペンタエリトリトールがコポリマーの量を基にして約700ppmの量で存在する、請求項18に記載の組成物。
【0116】
20.前記アジピン酸がコポリマーの量を基にして約5パーセントの量で存在する、請求項18に記載の組成物。
21.前記ポリエチレングリコールがコポリマーの量を基にして約3.8パーセントの量で存在する、請求項17に記載の組成物。
【0117】
22.前記ポリエチレングリコールが約400グラム/モルの分子量を有する、21記載の組成物。
23.17記載の溶融液から製造されたポリエステルコポリマーフィラメント。
【0118】
24.23記載のフィラメントから製造されたテクスチャードフィラメント。
25.24記載のテクスチャードフィラメントから切断されたステープルファイバー。
26.綿繊維と25記載のステープルファイバーとの混紡。
【0119】
27.26記載の混紡繊維から形成された糸。
28.27記載の染色糸。
29.27記載の糸から形成された布帛。
【0120】
30.28記載の染色糸から形成された布帛。
31.29記載の布帛から形成された衣服。
32.31記載の染色衣服。
【0121】
33.30記載の布帛から形成された衣服。
34.ポリエステルコポリマーフィラメントの紡糸法であって、
テレフタル酸と、エチレングリコールと、約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸と、約630〜770ppmのペンタエリトリトールと、そして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコールとを重合して、2パーセント未満のDEGを有し;
約0.58〜0.82の固有粘度及び約285°F(約140.6℃)〜295°F(約146.1℃)の温度であるコポリマー溶融液を製造し(比例量は重合コポリマーの量に基づく);そして
得られたポリエステルコポリマー溶融液を紡糸してフィラメントにする
工程を含む方法。
【0122】
35.34記載の方法によって製造されたフィラメントをテクスチャード加工することをさらに含む、34記載の方法。
36.テクスチャードフィラメントをステープルファイバーに切断することをさらに含む、35記載の方法。
【0123】
37.ポリエステルステープルを綿と共に紡糸して混紡糸を形成することをさらに含む、36記載の方法。
38.混紡糸を染色することをさらに含む、37記載の方法。
【0124】
39.糸を反応染料を用いて大気圧で染色することをさらに含む、38記載の方法。
40.37記載の糸から布帛を形成することをさらに含む、37記載の方法。
41.40記載の布帛を染色することをさらに含む、40記載の方法。
【0125】
42.布帛を反応染料を用いて大気圧で染色することをさらに含む、41記載の方法。
43.41記載の染色布帛から衣服を形成することをさらに含む、41記載の方法。
44.38記載の糸から布帛を形成することをさらに含む、38記載の方法。
【0126】
45.40記載の布帛から衣服を形成することをさらに含む、40記載の方法。
46.テレフタル酸と、エチレングリコールと、5%のアジピン酸と、そしてペンタエリトリトールとを重合して、約3.8パーセントのPEG、2パーセント未満のDEG、約0.75の固有粘度及び約285°F(約140.6℃)〜295°F(約146.1℃)の温度を有するコポリマー溶融液を製造することを含む、34記載の紡糸法。
【0127】
47.46記載の方法によって製造されたフィラメント。
48.47記載のフィラメントから製造されたテクスチャードステープルファイバー。
49.綿と、46記載の組成物から製造された押出フィラメントから形成されたテクスチャードステープルとから混紡された糸。
【0128】
50.49記載の混紡糸から形成された布帛。
51.糸の着色法であって、
綿とテクスチャードポリエステルコポリマーステープルから混紡された糸を染色し;
ここで、前記糸は約20〜80重量パーセントの綿であり;そして
テクスチャードポリエステルステープルは、ポリエステルコポリマーの量を基にして約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸、ポリエステルコポリマーの量を基にして約630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトール、ポリエステルコポリマーの量を基にして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコール、及びポリエステルコポリマーの量を基にして2パーセント未満のジエチレングリコールという組成を有する;そして
大気圧及び212°F(100℃)未満の温度で染色工程を実施する
ことを含む方法。
【0129】
52.糸を編んで布帛にすることをさらに含む、51記載の方法。
53.編んだ布帛から衣服を形成することを含む、52記載の方法。
54.糸を織って布帛にすることをさらに含む、51記載の方法。
【0130】
55.織った布帛から衣服を形成することを含む、52記載の方法。
56.ポリエステルステープルが、ポリエステルコポリマーの量を基にして約5パーセントのアジピン酸、ポリエステルコポリマーの量を基にして約700百万分率(ppm)のペンタエリトリトール、ポリエステルコポリマーの量を基にして約3.8パーセントのポリエチレングリコール、及びポリエステルコポリマーの量を基にして2パーセント未満のジエチレングリコールという組成を有する糸を染色することを含む、51記載の方法。
【0131】
57.反応染料で糸を染色することを含む、51記載の方法。
58.分散染料で糸を染色することを含む、51記載の方法。
59.混紡糸であって、
約20〜80重量パーセントの綿と;そして
テクスチャードポリエステルコポリマー(その残り部分として)とを含み、
ここで、テクスチャードポリエステルステープルは、ポリエステルコポリマーの量を基にして約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸、ポリエステルコポリマーの量を基にして約630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトール、ポリエステルコポリマーの量を基にして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコール、及びポリエステルコポリマーの量を基にして2パーセント未満のジエチレングリコールという組成を有する混紡糸。
【0132】
60.反応染料をさらに含む、59記載の耐変色性の糸。
61.59記載の糸から形成された布帛。
62.織った布帛及び編んだ布帛からなる群から選ばれる、61記載の布帛。
【0133】
63.60記載の耐変色性の糸から形成された布帛。
64.織った布帛及び編んだ布帛からなる群から選ばれる、63記載の布帛。
65.59記載の混紡糸と反応染料とを含む耐変色性の布帛。
【0134】
66.59記載の混紡糸から形成された衣服。
67.織物布帛であって、
スパンデックスと;そして
ポリエステルコポリマーフィラメントと
を含み、前記コポリマー組成物は、
ポリエステルコポリマーと;
コポリマーの量を基にして約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸と;
コポリマーの量を基にして約630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトールと;そして
コポリマーの量を基にして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコールと
を含む織物布帛。
【0135】
68.68記載の染色された編んだ布帛。
69.68記載の染色された織った布帛。
A1.紡織繊維のための利益を有する組成物であって、溶融液:
テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、及びエチレングリコールからなる群から選ばれるポリエステル前駆体と;
前記溶融液から製造されたフィラメント及び繊維に、大気圧で、綿と同様に受容される染料を付与するのに足る量のアジピン酸と;
前記溶融液から製造された繊維と綿との混紡糸に耐ピリング性を付与するのに足る量のペンタエリトリトールと;
溶融液から押出フィラメントを製造するために必要な弾性を前記溶融液に付与するのに足る量のポリエチレングリコールと
の溶融液を含み、
前記溶融液は、約285°F(約140.6℃)〜295°F(約146.1℃)の温度、及び約0.58〜0.82の固有粘度に維持される組成物。
【0136】
A2.2パーセント未満のジエチレングリコール(DEG)を含有する、A1記載の重合溶融液。
A3.固有粘度が0.75である、A1記載の重合溶融液。
【0137】
A4.A1記載の溶融液から製造されたポリエステルコポリマーフィラメント。
A5.染色糸であって、
綿繊維と;そして
A4記載のフィラメントから製造されたテクスチャードフィラメントから切断されたステープルファイバーと
の混紡から形成された染色糸。
【0138】
A6.紡織繊維のための利益を有するコポリマー組成物であって、前記組成物は、
ポリエステルコポリマーと;
コポリマーの量を基にして約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸と;
コポリマーの量を基にして約630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトールと;そして
コポリマーの量を基にして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコールとを含む組成物。
【0139】
A7.コポリマーの量を基にして2パーセント未満の量のジエチレングリコール(DEG)を含有する、A6記載の組成物。
A8.前記ペンタエリトリトールがコポリマーの量を基にして約700ppmの量で存在する、A7記載の組成物。
【0140】
A9.前記アジピン酸がコポリマーの量を基にして約5パーセントの量で存在する、A7記載の組成物。
A10.前記ポリエチレングリコールがコポリマーの量を基にして約3.8パーセントの量で存在する、A6記載の組成物。
【0141】
A11.前記ポリエチレングリコールが約400グラム/モルの分子量を有する、A10記載の組成物。
A12.織物布帛であって、
スパンデックスと;そして
A6記載のポリエステルコポリマーフィラメントと
を含む織物布帛。
【0142】
A13.A12記載の染色された編んだ布帛。
A14.A13記載の染色された織った布帛。
A15.ポリエステルコポリマーフィラメントであって、
ポリエステルコポリマーの量を基にして約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸と、ポリエステルコポリマーの量を基にして約630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトールと、ポリエステルコポリマーの量を基にして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコールと、そしてポリエステルコポリマーの量を基にして2パーセント未満のジエチレングリコールとの組成物を含むポリエステルコポリマーフィラメント。
【0143】
A16.A15記載のフィラメントから製造されたテクスチャードフィラメント。
A17.大気圧及び212°F(100℃)未満の温度で反応染料を受容し保持する、A16記載のテクスチャードフィラメント。
【0144】
A18.A16記載のテクスチャードフィラメントから切断されたステープルファイバー。
A19.綿繊維とA18記載のステープルファイバーとの混紡。
【0145】
A20.混紡糸であって、
約20〜80重量パーセントの綿と;そして
A18記載のテクスチャードポリエステルコポリマーステープルファイバーと
を含む混紡糸。
【0146】
A21.反応染料をさらに含む、A20記載の耐変色性の糸。
A22.A20記載の糸から形成された布帛。
A23.織った布帛及び編んだ布帛からなる群から選ばれる、A22記載の布帛。
【0147】
A24.A21記載の耐変色性の糸から形成される布帛。
A25.織った布帛及び編んだ布帛からなる群から選ばれる、A24記載の布帛。
A26.A20記載の混紡糸と反応染料とを含む耐変色性の布帛。
【0148】
A27.A20記載の混紡糸から形成された衣服。
B1.ポリエステルコポリマーフィラメントの紡糸法であって、
テレフタル酸と、エチレングリコールと、約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸と、約630〜770ppmのペンタエリトリトールと、そして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコールとを重合して、2パーセント未満のDEGを有し;
約0.58〜0.82の固有粘度及び約285°F(約140.6℃)〜295°F(約146.1℃)の温度であるコポリマー溶融液を製造し(比例量は重合コポリマーの量に基づく);そして
得られたポリエステルコポリマー溶融液を紡糸してフィラメントにする
工程を含む方法。
【0149】
B2.B1記載の方法によって製造されたフィラメントをテクスチャード加工することをさらに含む方法。
B3.テクスチャードフィラメントをステープルファイバーに切断することをさらに含む、B2記載の方法。
【0150】
B4.ポリエステルステープルを綿と共に紡糸して混紡糸を形成することをさらに含む、B3記載の方法。
B5.混紡糸を染色することをさらに含む、B4記載の方法。
【0151】
B6.糸を反応染料を用いて大気圧で染色することをさらに含む、B5記載の方法。
B7.B4記載の糸から布帛を形成することをさらに含む、B4記載の方法。
B8.B7記載の布帛を染色することをさらに含む、B7記載の方法。
【0152】
B9.布帛を反応染料を用いて大気圧で染色することをさらに含む、B8記載の方法。
B10.B8記載の染色布帛から衣服を形成することをさらに含む、B8記載の方法。
B11.B5記載の糸から布帛を形成することをさらに含む、B5記載の方法。
【0153】
B12.B7記載の布帛から衣服を形成することをさらに含む、B7記載の方法。
B13.テレフタル酸と、エチレングリコールと、5%のアジピン酸と、そしてペンタエリトリトールとを重合して、約3.8パーセントのPEG、2パーセント未満のDEG、約0.75の固有粘度及び約285°F(約140.6℃)〜295°F(約146.1℃)の温度を有するコポリマー溶融液を製造することを含む、B1記載の紡糸法。
【0154】
B14.B13記載の方法によって製造されたフィラメント。
B15.B14記載のフィラメントから製造されたテクスチャードステープルファイバー。
【0155】
B16.綿と、B13記載の組成物から製造された押出フィラメントから形成されたテクスチャードステープルとから混紡された糸。
B17.B16記載の混紡糸から形成された布帛。
【0156】
B18.糸の着色法であって、
綿とテクスチャードポリエステルコポリマーステープルから混紡された糸を染色し;
ここで、前記糸は約20〜80重量パーセントの綿であり;そして
テクスチャードポリエステルステープルは、ポリエステルコポリマーの量を基にして約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸、ポリエステルコポリマーの量を基にして約630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトール、ポリエステルコポリマーの量を基にして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコール、及びポリエステルコポリマーの量を基にして2パーセント未満のジエチレングリコールという組成を有する;そして
大気圧及び212°F(100℃)未満の温度で染色工程を実施する
ことを含む方法。
【0157】
B19.糸を編んで布帛にすることをさらに含む、B18記載の方法。
B20.編んだ布帛から衣服を形成することを含む、B19記載の方法。
B21.糸を織って布帛にすることをさらに含む、B18記載の方法。
【0158】
B22.織った布帛から衣服を形成することを含む、B19記載の方法。
B23.ポリエステルステープルが、ポリエステルコポリマーの量を基にして約5パーセントのアジピン酸、ポリエステルコポリマーの量を基にして約700百万分率(ppm)のペンタエリトリトール、ポリエステルコポリマーの量を基にして約3.8パーセントのポリエチレングリコール、及びポリエステルコポリマーの量を基にして2パーセント未満のジエチレングリコールという組成を有する糸を染色することを含む、B18記載の方法。
【0159】
B24.反応染料で糸を染色することを含む、B18記載の方法。
B25.分散染料で糸を染色することを含む、B18記載の方法。
C1.紡織繊維のための利益を有するコポリマー組成物であって、前記組成物は、
ポリエステルコポリマーと;
コポリマーの量を基にして約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸と;
コポリマーの量を基にして約630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトールと;そして
コポリマーの量を基にして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコールとを含む組成物。
【0160】
C2.コポリマーの量を基にして2パーセント未満の量のジエチレングリコール(DEG)を含有する、C1記載の組成物。
C3.前記ペンタエリトリトールがコポリマーの量を基にして約700ppmの量で存在する、C2記載の組成物。
【0161】
C4.前記アジピン酸がコポリマーの量を基にして約5パーセントの量で存在する、C2記載の組成物。
C5.前記ポリエチレングリコールがコポリマーの量を基にして約3.8パーセントの量で存在し;そして
前記ポリエチレングリコールが約400グラム/モルの分子量を有する、C1記載の組成物。
【0162】
C6.溶融液が、約285°F(約140.6℃)〜295°F(約146.1℃)の温度、及び約0.58〜0.82の固有粘度に維持される、C1記載の組成物の溶融液から製造されたポリエステルコポリマーフィラメント。
【0163】
C7.C6記載のフィラメントから製造されたテクスチャードフィラメント。
C8.綿繊維とC7記載のテクスチャードフィラメントから切断されたステープルファイバーとの混紡から形成された糸。
【0164】
C9.ポリエステルコポリマーフィラメントの紡糸法であって、
テレフタル酸と、エチレングリコールと、約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸と、約630〜770ppmのペンタエリトリトールと、そして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコールとを重合して、2パーセント未満のDEGを有し;
約0.58〜0.82の固有粘度及び約285°F(約140.6℃)〜295°F(約146.1℃)の温度であるコポリマー溶融液を製造し(比例量は重合コポリマーの量に基づく);そして
得られたポリエステルコポリマー溶融液を紡糸してフィラメントにする
工程を含む方法。
【0165】
C10.フィラメントをテクスチャード加工し;
テクスチャードフィラメントをステープルファイバーに切断し;そして
ポリエステルステープルを綿と共に紡糸して混紡糸を形成する
ことをさらに含む、C9記載の方法。
【0166】
C11.混紡糸を染色することをさらに含む、C10記載の方法。
C12.テレフタル酸と、エチレングリコールと、5%のアジピン酸と、そしてペンタエリトリトールとを重合して、約3.8パーセントのPEG、2パーセント未満のDEG、約0.75の固有粘度及び約285°F(約140.6℃)〜295°F(約146.1℃)の温度を有するコポリマー溶融液を製造することを含む、C9記載の紡糸法。
【0167】
C13.糸の着色法であって、
染色工程を大気圧及び212°F(100℃)未満の温度で実施することによってC10記載の糸を染色することを含む方法。
【0168】
C14.ポリエステルステープルが、ポリエステルコポリマーの量を基にして約5パーセントのアジピン酸、ポリエステルコポリマーの量を基にして約700百万分率(ppm)のペンタエリトリトール、ポリエステルコポリマーの量を基にして約3.8パーセントのポリエチレングリコール、及びポリエステルコポリマーの量を基にして2パーセント未満のジエチレングリコールという組成を有する糸を染色することを含む、C13記載の方法。
【0169】
C15.織物布帛であって、
スパンデックスと;そして
ポリエステルコポリマーフィラメントと
を含み、
前記コポリマー組成物は、
ポリエステルコポリマーと;
コポリマーの量を基にして約4.5〜5.5パーセントのアジピン酸と;
コポリマーの量を基にして約630〜770百万分率(ppm)のペンタエリトリトールと;そして
コポリマーの量を基にして約3.4〜4.2パーセントのポリエチレングリコールとを含む織物布帛。
【符号の説明】
【0170】
10 2A 洗濯
11 3A 洗濯
12 乾燥色移り
13 濡れ色移り
14 冷水ブリード
15 酸性汗
16 アルカリ性汗
17 20時間の耐光堅牢度
18 40時間の耐光堅牢度
21 酸性汗耐光堅牢度
22 アルカリ性汗耐光堅牢度
23 (図3〜6の混紡布帛の場合)綿を除去後(典型的には硫酸HSOで“焼却”することにより)の布帛の色のサンプル
25 1% Univadine DLSを用いて染色されたDacron
26 1% Univadine DLSを用いて染色された本発明
27 1% Univadine DFMで染色されたDacron
30 1% Univadine DFMで染色された本発明
31 10% Univadine DFMで染色されたDacron
32 10% Univadine DFMで染色された本発明
33 残留染料取込み 25と対応
34 残留染料取込み 26と対応
35 残留染料取込み 27と対応
36 残留染料取込み 30と対応
37 残留染料取込み 31と対応
40 残留染料取込み 32と対応
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8