特許第6573601号(P6573601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573601
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】アンチエイジング用皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20190902BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20190902BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   A61K8/60
   A61K8/67
   A61Q19/08
   A61K31/7076
   A61K47/22
   A61K47/18
【請求項の数】5
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-513776(P2016-513776)
(86)(22)【出願日】2015年4月13日
(86)【国際出願番号】JP2015061373
(87)【国際公開番号】WO2015159854
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2018年3月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-82524(P2014-82524)
(32)【優先日】2014年4月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】397077760
【氏名又は名称】株式会社林原
(74)【代理人】
【識別番号】100108486
【弁理士】
【氏名又は名称】須磨 光夫
(72)【発明者】
【氏名】河野 恵三
(72)【発明者】
【氏名】宮田 聡美
(72)【発明者】
【氏名】花谷 利春
(72)【発明者】
【氏名】福田 惠温
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/158904(WO,A1)
【文献】 特開2004−067576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K38/00−38/58
A61P1/00−43/00
A61K31/00−31/327
A61K31/33−33/44
A61K 9/00−9/72
A61K47/00−47/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE
/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩から選ばれる1種又は2種以上と、エチレンジアミン四酢酸及び/又はエピガロカテキンガレートを含有する皮膚外用剤であって、該アデノシンN1−オキシド5´−リン酸の類縁体がアデノシンN1−オキシド、3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシド及び5´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドから選ばれる1種又は2種以上である、アンチエイジング用皮膚外用剤。
【請求項2】
アスコルビン酸2−グルコシドをさらに含有する請求項記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
皮膚バリア機能亢進剤としての請求項1又は2記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
抗シワ剤としての請求項1又は2記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
抗シミ剤としての請求項1又は2記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンチエイジング用皮膚外用剤に関し、詳細には、有効成分として、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩から選ばれる1種又は2種以上を含有するアンチエイジング用皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
いつまでも若々しくありたいという思いは人類共通の普遍的な願いであるが、年齢を重ねるに連れてヒトの皮膚にシワ、小ジワ、弛み、シミなどの変化が現れるのは人類が長きにわたって経験してきたところであり、加齢にともない皮膚も老化し、皮膚にシワ、小ジワ、弛み、シミなどの外観上の変化が現れることは、いわば自然の摂理であって、不可避なことであると考えられていた。
【0003】
ところが、近年、ヒトの皮膚の構造やその新陳代謝のメカニズムなどに関する研究が進むにつれて、加齢にともないヒトの皮膚にシワ、小ジワ、弛み、シミなどの変化が現れる原因や機構が徐々に明らかになりつつある。すなわち、よく知られているとおり、皮膚は、外側の薄い表皮(上皮組織)とその下層の厚い真皮(結合組織)とから構成されており、表皮は、体の最外層として、外界から生体を保護するとともに内部の水分や栄養分が外界に漏出するのを防ぎ、一方、真皮は、主に線維芽細胞、膠原線維(コラーゲン)、弾性繊維(エラスチン)、プロテオグリカンなどが複合的に三次元状に広がった構造を持つ結合組織であって、皮膚に強度、伸展性及び弾力性をもたらす役割を担っているが、加齢とともに皮膚における皮脂や水分の量が減少すると、皮膚表面の角質層の保湿力が失われ、乾燥などによる小ジワや肌のかさつきが生じやすくなるといわれている。
【0004】
また、ヒトの表皮は、外側から「角質層(角層)」、「顆粒層」、「有棘層」、「基底層」により構成され、基底層で生まれた表皮細胞(ケラチノサイト)が順次外側へ移動して角質層となり、最終的に剥がれ落ちることとなる。より詳細には、ケラチノサイトが表皮の一番内側にある基底層で増殖し、分化し、上層に押し上げられ、最終的に表皮の一番外側に位置する角質層(角層)となり、垢となって脱落してゆく。このケラチノサイトの増殖、移動、分化、脱落の一連の過程をターンオーバーといい、ケラチノサイトが一定のサイクルで新しく生まれ変わっていくことにより、皮膚の恒常性が保たれているが、加齢に伴い肌のターンオーバー速度が遅くなり、その結果、シワや弛みや肌荒れが生じるといわれている。肌のターンオーバー速度は、ヒトの体の部位によって異なるものの、概ね、健康な10代のヒトの肌のターンオーバーは約20日といわれ、20代で約28日となり、30代では約40日、40代で20代の約2倍の約55日となり、50代では約75日になるといわれている(非特許文献1)。
【0005】
上記のとおり、加齢に伴う肌のターンオーバー速度の遅れは、シワ、弛みや肌荒れをもたらすといわれていることから、これら肌症状が気になり始める30歳前後から50歳前の年齢層を含む、いわゆるプレエイジング世代の肌にあっては、そのターンオーバー速度を20代の正常な肌のターンオーバー速度に戻すことは困難であるとしても、何らかの手段により、加齢に伴なうターンオーバー速度の遅れを取り戻すことができれば、シワや弛みや肌荒れを効果的に改善できることとなる(特許文献1)。この観点から、ケラチノサイトの増殖、移動、分化、脱落の一連の過程の少なくとも一過程を促進することによりターンオーバー速度を高めることができると考えられる。しかし、未だ、実用的な解決手段は提供されていない。
【0006】
角質層は、角質細胞が幾重にも重なって構成された層であり、角質細胞の最外層には、角質細胞の内部を守るコーニファイドエンベロープと呼ばれる、インボルクリンなどの様々の蛋白質から構成された強固な膜が存在する。前記コーニファイドエンベロープは、皮膚におけるバリア機能において重要な役割を果たしている。皮膚におけるバリア機能が低下すると、紫外線、特に真皮にまで到達する長波長の紫外線A波により、真皮に存在するコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などがダメージを受ける。また、皮膚におけるバリア機能が低下すると、皮膚が乾燥して保湿力が低下したり、皮脂の過剰分泌が促されて大人ニキビを誘発したり、ターンオーバーの乱れをきたすことも知られている。加齢にともない、皮膚におけるバリア機能が低下し、これにより、皮膚のシワ、小ジワ、弛み、シミなどが惹起される(特許文献2及び3を参照)。
【0007】
皮膚におけるバリア機能とは、皮膚における、いわゆる1次バリアと言われる皮脂膜の機能と対比される、2次バリアと言われる角質層の機能、つまり、生体外から生体内への異物の侵入や、生体内から生体外への過剰な水分放出を防止する機能、及び、角質層に隣接する表皮顆粒層に存在するタイトジャンクションと呼ばれる細胞間接着構造体による、生体の内と外とを仕切る機能である。
【0008】
また、加齢によって真皮における線維芽細胞やヒアルロン酸が減少したり、コラーゲンの切断やエラスチンの変性が起こると、シワが形成されたり、皮膚の弾性が低下して弛みや肌荒れが起こるといわれている。コラーゲンの線維を支える役割を持つ線維であるエラスチンは、肌にハリや弾力を与える役割をしており、エラスチンの減少はしわや弛みの形成につながる(非特許文献2)。また、コラーゲンを分解するマトリックスメタロプロテアーゼ−1は、シワの原因であることが知られている(非特許文献3)。
【0009】
また、エンドセリン−1は、メラノサイトの活性化や増殖を促進する物質であり、シミの原因であることが知られている。さらに、メラノサイトから表皮細胞に排出されたメラニンが表皮細胞からスムーズに排出されないことが肌への色素沈着(シミ)や肌のくすみの原因となるとの知見もある(非特許文献4)。
【0010】
これらの研究成果や知見に基づき、現在では、加齢にともないヒトの皮膚にシワ、小ジワ、弛み、シミなどの変化が現れるのを科学的な見地から合理的に予防又は改善する、いわゆるアンチエイジング用の皮膚外用剤が多数提案(例えば、特許文献4乃至10を参照)されるに至り、人類は、いつまでも若々しくありたいという思いの実現に一歩ずつ近づきつつある。しかしながら、現在提案されているアンチエイジング用の皮膚外用剤は多数の可能性の中のごく一部の可能性を追求し、実現しているに過ぎず、アンチエイジング効果が奏される別異のメカニズムや、使い勝手の良さ、さらには製造の容易性といった観点も含め、より多方面の角度から新たなアンチエイジング用の皮膚外用剤を提供することが依然として望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012−056857号公報
【特許文献2】特開2004−091376号公報
【特許文献3】特開2008−007411号公報
【特許文献4】再公表特許第WO2007/011066号公報
【特許文献5】特開2007−291102号公報
【特許文献6】特開2008−169196号公報
【特許文献7】特開2008−255020号公報
【特許文献8】特開2008−260721号公報
【特許文献9】特開2009−040690号公報
【特許文献10】特開2009−249306号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Farage等(編者)、『テキストブック・オブ・エイジング・スキン(Textbook of Aging Skin)』、Springer社発行、2010年
【非特許文献2】小倉等、『日本化粧品技術者会誌』、第44巻第4号、278乃至284頁、2010年
【非特許文献3】Fisher等、『アメリカン・ジャーナル・オブ・パソロジー(American Journal of Pathology)』、第174巻第1号、101乃至114頁、2009年
【非特許文献4】Gilchrest等、『フォトケミストリー・アンド・フォトバイオロジー(Photochemistry and Photobiology)』、第63巻第1号、1乃至10頁、1996年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来技術の現状に鑑みて成されたもので、加齢にともない現れるヒトの皮膚のシワ、小ジワ、弛み、シミなどの変化を予防又は改善するための、新規なアンチエイジング用皮膚外用剤を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究努力を重ねた結果、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩が、優れたアンチエイジング効果、すなわち、ターンオーバー改善、皮膚におけるバリア機能の維持又は亢進、皮膚におけるフィラグリン蛋白の発現増強、皮膚におけるエラスチンの産生促進、皮膚におけるマトリックスメタロプロテアーゼ−1の産生抑制、又は、皮膚におけるエンドセリン−1の産生抑制効果を奏することにより、加齢にともなう皮膚のシワ、小ジワ、弛み、シミなどを予防又は改善するアンチエイジング効果を発揮することを見出して、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、本発明は、上記課題を、有効成分としてアデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩から選ばれる1種又は2種以上を含有するアンチエイジング用皮膚外用剤を提供することによって解決するものである。
【0016】
また、本発明者らは、アスコルビン酸2−グルコシド、エピガロカテキンガレート及び/又はエチレンジアミン四酢酸との併用により、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩の奏するアンチエイジング効果が有意に強化されることを見出した。
【発明の効果】
【0017】
本発明のアンチエイジング用皮膚外用剤によれば、皮膚のターンオーバーを改善し、皮膚におけるバリア機能を維持又は亢進し、皮膚におけるフィラグリン蛋白の発現を増強し、皮膚におけるエラスチンの産生を維持又は亢進し、皮膚におけるマトリックスメタロプロテアーゼ−1の産生を抑制し、又は、皮膚におけるエンドセリン−1の産生を抑制することができるので、加齢にともなう皮膚のシワ、小ジワ、弛み、シミなどを効果的に予防又は改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の皮膚外用剤は、有効成分として、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩を含有してなる。斯かるアデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩は、その由来を問わず、天然物から精製したものでもよく、化学的に合成したものであってもよい。本発明でいうアデノシンN1−オキシド5´−リン酸の類縁体とは、例えば、アデノシンN1−オキシドや3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシド、5´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシド、アデノシンN1−オキシド5´−二リン酸、アデノシンN1−オキシド5´−三リン酸などを挙げることができる。また、本発明でいうアデノシンN1−オキシド5´−リン酸の塩とは、例えば、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムやアデノシンN1−オキシド5´−リン酸カリウムなどを挙げることができる。作用効果の点では、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、アデノシンN1−オキシド、3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシド及び5´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドが望ましく、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、アデノシンN1−オキシド及び3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドがより望ましく、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸及びアデノシンN1−オキシドが特に望ましい。また、光安定性や溶解度の点で、アデノシンN1−オキシドよりもアデノシンN1−オキシド5´−リン酸が望ましい。アデノシンN1−オキシド5´−リン酸の塩は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸として作用するので、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸とその塩は同等の効果を奏するが、溶解度の点で、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸よりもアデノシンN1−オキシド5´−リン酸の塩が望ましい。これらの化合物は、製造原料由来の成分や合成過程で生じる副生成物を含んでいてもよく、通常は、固形物換算で、純度95質量%以上が望ましく、98質量%以上がより望ましく、99質量%以上が特に望ましい。(特に断らない限り、本明細書では質量%を単に「%」と表記する。)
【0019】
以下、本発明の皮膚外用剤について具体的に説明する。
【0020】
通常、本発明の皮膚外用剤の場合、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩から選ばれる1種又は2種以上の配合割合は、一般に、皮膚外用剤の総質量に対して、0.001乃至10.0%が望ましく、0.01乃至1.0%がより望ましい。これらの配合量が皮膚外用剤の全質量に対して0.001%未満では、上記有効成分による作用が十分に発揮されない場合がある。逆に、10.0%を超えると、使用量に比例した効果が得られないので、好ましくない場合がある。
【0021】
本発明で用いるアデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩は、それ自体で、ターンオーバー改善作用、皮膚におけるバリア機能の維持又は亢進作用、皮膚におけるフィラグリン蛋白の発現の増強、皮膚におけるエラスチン産生の維持又は亢進、皮膚におけるマトリックスメタロプロテアーゼ−1の産生抑制、又は、皮膚におけるエンドセリン−1の産生抑制作用を発揮するので、それ単独で本発明の皮膚外用組成物の有効成分として有利に利用できる。また、他の成分との併用も随意である。
【0022】
アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩の奏するアンチエイジング効果は、アスコルビン酸2−グルコシド、エピガロカテキンガレート及び/又はエチレンジアミン四酢酸との併用により有意に強化されるので、これらも本発明の皮膚外用組成物の成分として有利に利用できる。
【0023】
なお、本発明で言うターンオーバー改善とは、「角質層(角層)」、「顆粒層」、「有棘層」及び「基底層」から構成されるヒトの表皮の元となる表皮細胞(ケラチノサイト)の増殖、移動、分化、脱落の一連の過程(ターンオーバー)を健全な状態に保つことを意味する。より具体的には、加齢に伴い長くなる肌のターンオーバー周期を短くすることを意味する。
【0024】
本発明のアデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩を有効成分として含有してなる皮膚外用剤によれば、ケラチノサイトの分化を促進し、トランスグルタミナーゼ活性を増強することにより、コーニファイドエンベロープの産生を促進し、皮膚のターンオーバーが改善されるので、加齢にともなう皮膚のシワ、小ジワ、弛み、シミなどを効果的に予防又は改善することができる。また、斯かる皮膚外用剤は、皮膚のタイトジャンクション機能を強化し、皮膚バリア機能が維持又は亢進され、水分放出を抑制するので、加齢にともなう皮膚の小ジワ、弛みなどを効果的に予防又は改善することができる。さらに、本発明の皮膚外用剤は、肌にハリや弾力を与えるエラスチンの産生を促進し、シワの原因となるマトリックスメタロプロテアーゼ−1の産生を抑制することができるので、シワ、弛みなどを効果的に予防又は改善することができる。加えて、本発明の皮膚外用剤は、エンドセリン−1の産生を抑制することができるので、シミなどを効果的に予防又は改善することができる。
【0025】
また、本発明の皮膚外用剤には、その具体的な形態に応じて公知の成分を配合することができる。すなわち、皮膚外用剤の形態の場合には、通常、皮膚外用剤に用いられ得る成分の1種又は2種以上を、本発明の所期の効果を損なわない範囲で配合することができる。例えば、油成分、界面活性剤、防腐剤(抗菌剤)、香料、美白剤、保湿剤、増粘剤、抗酸化剤、キレート剤、紫外線吸収・散乱剤、ビタミン類、アミノ酸類、抗炎症剤、血行促進剤、海藻抽出物、収斂剤、抗シワ剤、細胞賦活剤、抗老化防止剤、育毛・発毛剤、経皮吸収促進剤、水、アルコール類、水溶性高分子、pH調整剤、発泡剤、粉体、医薬品・医薬部外品・化粧品・食品用の添加剤、医薬用・医薬部外品用の有効成分などを適宜配合して、常法により皮膚外用剤を製造すればよい。
【0026】
具体的には、油成分としては、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ油、椿油、ヤシ油、木ロウ、ホホバ油、グレープシード油、アボガド油などの植物油脂類、ミンク油、卵黄油などの動物油脂類、蜜ロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウなどのロウ類、流動パラフィン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、ワセリンなどの炭化水素類、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などの天然及び合成脂肪酸類、セタノール、ステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、カプリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロールなどの天然及び合成高級アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、コレステロールオレートなどのエステル類などを例示することができる。
【0027】
界面活性剤としては、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキセチレンソルビタン、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリエチレングリコールアルキレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリコールジエーテル、ラウロイルジエタノールアマイド、脂肪酸イソプロパノールアマイド、マルチトールヒドロキシ脂肪酸エーテル、アルキル化多糖、アルキルグルコシド、シュガーエステルなどの非イオン性界面活性剤、親油型グリセリンモノステアレート、自己乳化型グリセリンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート、ポリグリセリンアルキレート、ソルビタンモノオレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン化ステロール、ポリオキシエチレン化ラノリン、ポリオキシエチレン化蜜ロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などのノニオン界面活性剤、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、セチル硫酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、パルミチン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルリン酸ナトリウム、N−アシルグルタミン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル、ロート油、リニアドデシルベンゼン硫酸、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油マレイン酸、アシルメチルタウリンなどのアニオン界面活性剤、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイドなどのカチオン界面活性剤、塩酸アルキルアミノエチルグリシン液、レシチンなどの両性界面活性剤などを例示することができる。
【0028】
防腐剤(抗菌剤)としては、安息香酸及びその塩類、サリチル酸及びその塩類、ソルビン酸及びその塩類、デヒドロ酢酸及びその塩類、パラオキシ安息香酸アルキルエステルをはじめとするパラオキシ安息香酸エステル、2,4,4´−トリクロロ−2´−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4´−トリクロロカルバニリド、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、ヒノキチオール、レゾルシン、エタノール、1,3−ブチレングリコール、感光素201号などを例示することができる。
【0029】
香料としては、ベンズアルデヒド、ベンジルベンゾエート、フェニル酢酸、サンダロール、オイゲノール、リリアール、リラール、リナロール、2−メチル−3−(4−メチルフェニル)−プロパナール、ムスクケトン、シンナミックアルデヒド、ベルトフィックス、メチルイオノン、ゲラニルホーメート、イソEスーパー、γ−ウンデカラクトン、ヘキシルサリシレート、シス−3−ヘキセニルサリシレート、メチルジヒドロジャスモネート、テトラヒドロフルフリル3−メルカプトプロピオネート、コバノール、バニリン、バニラール、ゼラニウムオイル、ペニロイヤルオイル、バーチオイル、アルモイゼオイルなどを例示することができる。
【0030】
美白剤としては、アスコルビン酸やその誘導体及びそれらの塩類、アルコキシサリチル酸類及びその塩類、ハイドロキノンやその配糖体などのハイドロキノンの誘導体、トラネキサム酸やその誘導体及びそれらの塩類、レゾルシンの誘導体、コウジ酸やその誘導体及びそれらの塩類、エラグ酸やリノール酸及びそれらの塩類、カミツレ抽出物、テトラヒドロクルクミノイド、藍草抽出物などを挙げることができる。
【0031】
保湿剤としては、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、イソプレングリコールなどの多価アルコール類、グルコース、マルトース、トレハロース、トレハロースの糖質誘導体、デキストリン、サイクロデキストリン、国際公開WO 02/10361号明細書で開示したサイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する環状四糖、特開平2005−95148号公報に記載したサイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する環状四糖などの糖類、アミノ酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウムなどの天然保湿成分、グリコーゲン、ローカストビーンガム、キシログルカン、クインスシード、カラギーナン、ペクチン、マンナン、カードラン、サクシノグルカン、ガラクタン、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ムコイチン硫酸、ケラト硫酸、キチン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸などのムコ多糖類やこれらムコ多糖類の加水分解物、シルクやコラーゲンなどの蛋白質・ペプチドやこれらの加水分解物などの水溶性高分子物質、これらの塩類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルシロキサンなどのシリコン類、乳酸菌・ビフィズス菌などの培養上清などを例示することができる。
【0032】
増粘剤としては、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウム、マルメロ種子抽出物、アラビアガム、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、グアガム、デキストラン、トラガントガム、デンプン、プルラン、キチン、キトサン、寒天、セルロース、などの天然高分子物質、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、可溶性デンプン、カチオン化セルロース、カルボキシメチルキチンなどの半合成高分子物質、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルアルコール・酢酸ビニル共重合体などの合成高分子物質などを例示することができる。
【0033】
抗酸化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、ビタミンE、カテキン類、フラボノイド類やこれらの誘導体などを例示することができる。
【0034】
キレート剤としては、エデト酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩、ピロリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、クエン酸、酒石酸、グルコン酸などを例示することができる。
【0035】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、ニトリロトリエタノール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、リン酸水素カリウムなどを例示することができる。
【0036】
紫外線吸収・散乱剤としては、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、3−(4´−メチルベンジリデン)−d−カンファー、3−ベンジリデン−d,1−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2,2´−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−5´−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4´−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、オクチルジメチルパラアミノベンゾエート、エチルヘキシルパラメトキシサイナメート、酸化チタン、カオリン、タルクなどを例示することができる。
【0037】
ビタミン類としては、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB1及びその誘導体、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体などのビタミンB類、アスコルビン酸及びその誘導体、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテートなどのビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ビタミンF、ビタミンK、ビタミンP及びその誘導体、ビタミンU、フェルラ酸、γ−オリザノール、α−リポ酸、オロット酸、コエンザイムQ10などやそれらの誘導体などを例示することができ、それらの塩類であってもよい。
【0038】
アミノ酸類としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、タウリン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リジン、カルニチン、シトルリン及びそれらの誘導体などを例示することができ、それらの塩類であってもよい。
【0039】
本発明の皮膚外用剤を使用する場合の形態に特に限定はなく、例えば水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、固形スティック系、水−油2層系、水−油−粉末3層系など、種々の形態で本発明の皮膚外用剤を適用することが可能である。また、その具体的な剤形にも特に限定はなく、医薬品、医薬部外品、化粧品などの薬事法上の区別に拘束されるものでもない。本発明の皮膚外用剤は、医薬品、医薬部外品又は化粧品として、皮膚、口唇や頭皮などの外皮及び口腔内に適用されるものをいい、具体的には、軟膏、クリーム、乳液、ローション、エッセンス、ゼリー、ジェル、パック、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、マスク、マスカラ、アイライナー、育毛剤、リップスティック(口紅)、リップグロス、ファンデーション、頬紅、アイシャドウ、パウダー、マニキュア、石鹸、ボディーソープ、浴用剤、粉歯磨、潤性歯磨、練歯磨、水歯磨、薬用歯磨、口中清涼剤、口中清涼フィルム、マウスウオッシュ、うがい薬などを例示することができる。
【0040】
以下、本発明につき実験により説明する。
【0041】
<実験1:アデノシンN1−オキシド5´−リン酸及びその類縁体の正常ヒト表皮角化細胞のターンオーバーに及ぼす影響>
ケラチノサイトの増殖、移動、分化、脱落の一連の過程をターンオーバーといい、ケラチノサイトが一定のサイクルで新しく生まれ変わっていくことにより、皮膚の恒常性が保たれているが、加齢に伴い肌のターンオーバー速度が遅くなり、その結果、シワや弛みや肌荒れが生じるといわれている。それ故、ケラチノサイトの分化を誘導すれば、ターンオーバー速度が速くなり、シワや弛みや肌荒れを改善することができると考えられる。このため、本実験では、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸及びその類縁体のターンオーバー促進作用を、ケラチノサイトの分化誘導作用、コーニファイドエンベロープ産生促進作用及びトランスグルタミナーゼ活性増強作用を指標として評価した。なお、実験は、「Hasegawa等、『Lipids』、第46巻第6号、529乃至535頁、2011年」及び「Sturniolo等、『The Journal of Biological Chemistry』、第278巻第48号、48066乃至48073頁、2003年」に準じて行った。
【0042】
<実験1−1:ケラチノサイトの分化に対する影響>
12ウェルプレートに、増殖因子含有ケラチノサイト用培地(商品名「EpiLife」,ライフテクノロジーズ社製)で2.5×10個/mlの濃度に調製した正常ヒト表皮角化細胞を1ml添加し、細胞がウェルの底面の半分程度を占める状態まで培養した。その後、培地を増殖因子不含ケラチノサイト用培地に交換して2日間培養し、さらに、培地を、表1に記載の被験物質を表1に示す各濃度で添加した増殖因子不含ケラチノサイト用培地にそれぞれ交換して3日間培養した。なお、被験物質を添加しない以外は同様にして培養したものを対照とした。顕微鏡下にて細胞形態の観察を行い、以下の基準に従いケラチノサイト分化誘導能を評価した。
スコア0:変化なし
スコア1:扁平形態を示す細胞数が全体の50%以下
スコア2:扁平形態を示す細胞数が全体の50%以上
スコア3:細胞のほぼ全てが不規則な形態をとり,一部光沢のある細胞も認められる
スコアが大きいほど、細胞の分化が促進されたことを意味する。実験は3回行い、その平均スコアを求めた。ケラチノサイトの分化誘導に対するアデノシンN1−オキシド5´−リン酸類縁体の作用を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から明らかなように、被験物質を添加しない対照では正常ヒト表皮角化細胞の形態に変化がみられなかったのに対して、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム及びアデノシンN1−オキシドでは、10μMの濃度において形態変化が認められ、20〜40μMでは扁平な細胞がさらに脱核して小さくなり、細胞は不規則な形態をとるようになり、中には光沢のある細胞も認められ、分化が進行していた。3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシド及び5´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドでは、それぞれ40〜80μM及び200〜400μMの濃度において形態変化が認められ、それぞれ160μM及び800μMでは扁平な細胞がさらに脱核して小さくなり、細胞は不規則な形態をとるようになり、中には光沢のある細胞も認められ、分化が進行していた。一方、アデノシンでは、400μMの濃度において、3´−α−グルコシルアデノシン及び5´−α−グルコシルアデノシンでは、800μMの濃度においても形態変化は認められなかった。
【0045】
試験した濃度範囲において、ケラチノサイトの分化促進は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム、アデノシンN1−オキシド、3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシド及び5´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドのいずれにおいても認められ、その効果は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム及びアデノシンN1−オキシドがより強いことが判明した。これらの結果は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩が、ケラチノサイトの分化を促進することから、ターンオーバー改善剤として有用であることを物語っている。
【0046】
<実験1−2:コーニファイドエンベロープの産生に及ぼす影響>
コーニファイドエンベロープは、皮膚におけるバリア機能において重要な役割を果たしている。皮膚におけるバリア機能が低下すると、皮膚のシワ、小ジワ、弛み、シミなどが惹起される。このため、本実験では、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸及びその類縁体のコーニファイドエンベロープの形成に及ぼす影響を調べた。なお、実験は、「Hasegawa等、『Lipids』、第46巻第6号、529乃至535頁、2011年」に準じて行った。
【0047】
表2に記載の被験物質を表2に示す各濃度で添加した以外は、実験1−1と同様に正常ヒト表皮角化細胞を培養した。培養した正常ヒト表皮角化細胞をリン酸緩衝生理食塩水で1回洗浄した後、リン酸緩衝生理食塩水を0.5ml加えてプレートに付着している細胞をかき取った。得られた細胞懸濁液に、1/4液量の10%ラウリル硫酸ナトリウム溶液を加えて攪拌し、−80℃で凍結した。解凍後、遠心分離(12000×g,15分)を行い、回収した細胞残渣を2%ラウリル硫酸ナトリウム含有リン酸緩衝生理食塩水で1回洗浄した後、さらに遠心分離(12000×g,15分)を行い、回収した細胞残渣を2%ラウリル硫酸ナトリウム及び20mMジチオトレイトール含有リン酸緩衝生理食塩水に懸濁した。この細胞残渣懸濁液を沸騰水浴中で1時間煮沸した後、310nmの吸光度を測定してコーニファイドエンベロープ産生量とした。被験物質を添加しない以外は同様に処理したものを対照とし、その同じく310nmの吸光度を100%として、下記計算式に基づき、コーニファイドエンベロープ産生量を相対評価した。
計算式:コーニファイドエンベロープ産生量(相対値%)=(被験物質添加サンプルの吸光度/対照の吸光度)×100
【0048】
実験は3回行い、対照に対してダネットの多重比較検定を行なった。危険率p<0.01を有意差ありとし、*で示した。ケラチノサイトの分化に伴うコーニファイドエンベロープの産生に対するアデノシンN1−オキシド5´−リン酸類縁体の作用を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2から明らかなように、被験物質を添加しない対照と比較して、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム及びアデノシンN1−オキシドでは、25μMの濃度においてコーニファイドエンベロープ産生量が約180%まで向上し、有意なコーニファイドエンベロープ産生促進作用が認められた。また、3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドでは、200μMの濃度において有意なコーニファイドエンベロープ産生促進作用が認められた。5´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドでは、600μMの濃度において有意なコーニファイドエンベロープ産生促進作用が認められた。アデノシン5´−リン酸では、400μMの濃度においてコーニファイドエンベロープの産生を促進する傾向が認められた。一方、アデノシン及び3´−α−グルコシルアデノシンでは、それぞれ400μM及び800μMの濃度においてもコーニファイドエンベロープ産生促進作用は認められなかった。
【0051】
試験した濃度において、コーニファイドエンベロープの産生促進は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム、アデノシンN1−オキシド、3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシド及び5´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドに認められ、その効果は、アデノシンN1−オキシド、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム及び3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドがより強く、アデノシンN1−オキシド及びアデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムが最も強いことが判明した。これらの結果は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩が、コーニファイドエンベロープの形成を促進するため、ターンオーバー改善剤として有用であることを物語っている。
【0052】
<実験1−3:トランスグルタミナーゼ活性に及ぼす影響>
トランスグルタミナーゼは蛋白質の架橋を触媒する酵素であり、コーニファイドエンベロープの形成に関与している。それ故、トランスグルタミナーゼ活性を増強することにより、コーニファイドエンベロープの形成が促進されるので、皮膚のシワ、小ジワ、弛み、シミなどを予防又は改善することができる。このため、本実験では、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸及びその類縁体のトランスグルタミナーゼ活性に及ぼす影響を調べた。なお、実験は、「Sturniolo等、『The Journal of Biological Chemistry』、第278巻第48号、48066乃至48073頁、2003年」に準じて行った。
【0053】
表3に記載の被験物質を表3に示す各濃度で添加した以外は、実験1−1と同様に正常ヒト表皮角化細胞を培養した。培養した正常ヒト表皮角化細胞に対して、100μMのフルオレセインカダベリンを添加して4時間静置した。その後、リン酸緩衝生理食塩水にて細胞を1回洗浄し、さらに、冷メタノールにて10分間処理して細胞を固定した。冷メタノールで3回細胞を洗浄した後、リン酸緩衝生理食塩水を添加した。トランスグルタミナーゼにより細胞に取り込まれたフルオレセインカダベリンを、セルイメージングステーション(モレキュラープローブス社製)を用いて解析し、その蛍光強度をトランスグルタミナーゼ活性とした。被験物質を添加しない以外は同様に処理したものを対照とし、その蛍光強度を100%として、下記計算式に基づき、トランスグルタミナーゼ活性を相対評価した。
計算式:トランスグルタミナーゼ活性(相対値%)=(被験物質添加サンプルの蛍光強度/対照の蛍光強度)×100
【0054】
実験は3回行い、対照に対してダネットの多重比較検定を行なった。危険率p<0.01を有意差ありとし、*で示した。コーニファイドエンベロープ産生に関与するトランスグルタミナーゼ活性に対するアデノシンN1−オキシド5´−リン酸類縁体の作用を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3から明らかなように、被験物質を添加しない対照と比較して、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム及びアデノシンN1−オキシドでは、20μMの濃度においてトランスグルタミナーゼ活性がそれぞれ約570%及び約630%まで向上し、有意なトランスグルタミナーゼ活性増強作用が認められた。また、5´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドでは、400μMの濃度において有意なトランスグルタミナーゼ活性増強作用が認められた。3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドでは、100μMの濃度においてトランスグルタミナーゼ活性増強作用は認められなかったが、5´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドでは、400μMの濃度で効果が認められたため、3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドについても、より高濃度での使用では効果が認められると考えられる。アデノシン、アデノシン5´−リン酸、3´−α−グルコシルアデノシン及び5´−α−グルコシルアデノシンでは、400μMの濃度においてトランスグルタミナーゼ活性増強作用は認められなかった。
【0057】
試験した濃度において、トランスグルタミナーゼ活性の増強は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム、アデノシンN1−オキシド及び5´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドに認められ、その効果は、アデノシンN1−オキシド及びアデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムがより強いことが判明した。これらの結果は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩が、トランスグルタミナーゼ活性を増強する作用を有し、ターンオーバー改善剤として有用であることを物語っている。
【0058】
<実験2:アデノシンN1−オキシド5´−リン酸及びその類縁体のヒト上皮様細胞癌由来細胞に対するタイトジャンクション機能強化作用に及ぼす影響>
タイトジャンクションは、生体外から生体内への異物の侵入や生体内から生体外への過剰な水分放出を防止する機能を有する。それ故、タイトジャンクション機能が強化されることにより、皮膚バリア機能の亢進や保湿につながると考えられる。このため、本実験では、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸及びその類縁体のタイトジャンクションに及ぼす影響を調べた。なお、実験は、「Suzuki及びHara、『Journal of Nutrition』、第139巻第5号、965乃至974頁、2009年」に準じて行った。
【0059】
表4に記載の被験物質を表4に示す各濃度で添加した培地で1×10個/mlの濃度に調製したヒト上皮様細胞癌由来A−431細胞を、12ウェルインサートカップにそれぞれ2mlずつ添加し、細胞をウェルの底面全体を占める状態まで培養した。培養液量をインサートカップの内側と外側それぞれ2mLに合わせ、水面の変化がないことを確認し、インサートカップの内側に透過物のモデルとして蛍光色素であるルシファーイエロー(ライフテクノロジーズ)を終濃度100μMになるよう添加した。その後、インサートカップの内側と外側それぞれの培養液中のルシファーイエローの蛍光強度を測定し、下記計算式により、インサートカップの内側と外側の蛍光強度の和に対する外側の蛍光強度の割合を求め、ルシファーイエローの透過率とした。
計算式:ルシファーイエローの透過率(%)={インサートカップの外側の吸光度/(インサートカップの内側の吸光度+インサートカップの外側の吸光度)}×100
被験物質を添加しない以外は同様に処理したものを対照とし、そのルシファーイエローの透過率を100%として、下記計算式に基づき、タイトジャンクション機能の強化による透過率の減少を相対評価した。
計算式:ルシファーイエローの相対透過率(相対値%)=(被験物質添加サンプルの透過率/対照の透過率)×100
【0060】
実験は3回行い、対照に対してダネットの多重比較検定を行なった。危険率p<0.01を有意差ありとし、*で示した。ヒト上皮様細胞癌由来細胞のタイトジャンクション機能に対するアデノシンN1−オキシド5´−リン酸類縁体の作用を表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
表4から明らかなように、被験物質を添加しない対照と比較して、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムでは、20μMの濃度においてルシファーイエロー透過率が約60%に減少し、有意なタイトジャンクション機能強化作用が認められた。また、アデノシンN1−オキシドでは、10〜20μMの濃度において有意なタイトジャンクション機能強化作用が認められた。さらに、アデノシンでは、200〜400μMの濃度において有意なタイトジャンクション機能強化作用が認められた。しかし、3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシド、5´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシド、アデノシン5´−リン酸、3´−α−グルコシルアデノシン及び5´−α−グルコシルアデノシンでは、200〜400μMの濃度においてタイトジャンクション機能強化作用は認められなかった。
【0063】
試験した濃度範囲において、タイトジャンクション機能強化作用は、効果の点から、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム、アデノシンN1−オキシド及びアデノシンが望ましく、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム及びアデノシンN1−オキシドがより望ましいといえる。これらの結果は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム及びアデノシンN1−オキシドが、タイトジャンクション機能の強化作用を有することから、皮膚バリア機能亢進剤及び保湿剤として有用であることを物語っている。
【0064】
<実験3:アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムの正常ヒト表皮角化細胞におけるフィラグリン蛋白発現増強作用>
皮膚におけるバリア機能の形成や、水分保持に重要な役割を果たしている蛋白質の1つにフィラグリンが知られている。フィラグリンは、プロフィラグリンとして表皮で産生され、これが分解されることでフィラグリンとなり、皮膚のバリア機能を担っている。またフィラグリンは、さらに分解を受けて天然の保湿因子としても作用する。さらには、近年、フィラグリンの発現低下とアトピー性皮膚炎との関連性が指摘されている(「Osawa等『Allergology International』、第60巻第1号1乃至9頁、2011年」)。そこで本実験では、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムの正常ヒト表皮角化細胞におけるフィラグリン蛋白発現増強作用を調べた。なお実験は、「Otsuka等、『The Journal of Allergy and Clinical Immunology』、第133巻第1号139乃至146頁、2014年」に準じて行った。
【0065】
6ウェルプレートにおいて、増殖因子含有ケラチノサイト用培地(商品名「EpiLife」,KURABO社製)で5×10個/ウェルの濃度に播種した正常ヒト表皮角化細胞を、37℃で4日間培養した。4日目で細胞がウェルの80%を占めるようになったところで、2μM、5μM、10μMになるようにアデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムを添加したEpiLife培地と2日おきに培地交換しながら、さらに4日間培養することによりフィラグリンの発現を誘導した。アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムに代えて0.5mMになるように塩化カルシウムを添加したEpilife培地を用いた以外は同様にして正常ヒト表皮角化細胞を培養して陽性対照とした。4日間培養後に、細胞をダルベッコ−リン酸緩衝生理食塩水にて洗浄し、蛋白分解酵素阻害剤を含むSDSサンプル緩衝液(62.5mM Tris−HCl pH6.8、2%SDS、10%グリセロール、50mM DTT)を0.1mL添加し、セルスクレーパーを用いて細胞を回収した。回収した細胞を、10分間煮沸した後超音波破砕し、Pierce BCA Protein Assay Kit(ThermoFisher Scientific社製)にて蛋白定量を行った。サンプルの一定量(100μg/lane)を定法によりSDS−ポリアクリルアミド電気泳動に供し、その後PVDF膜に転写した。
【0066】
PVDF転写膜をブロックエース(DS Pharma Biomedical社製)を用いてブロッキングした後、1次抗体としてマウス抗フィラグリン抗体(AKH1,Santa Cruz社製、200倍希釈)あるいはマウス抗アクチン抗体(MAB1501、Chemicon International社製、20,000倍希釈)を反応させ、次いで2次抗体としてHRP標識抗マウスイムノグロブリン抗体(P0447、Dako社製、2,000倍希釈)を反応させた。反応後、ECL Plus Western Blotting Detection System(GE Healthcare社製)を用いて、化学発光用フィルムHyperfilm ECL(GE Healthcare社製)上にバンドを検出した。検出されたバンドは、画像解析ソフト「Image J」により解析し数値化した。
【0067】
データは被験物質を添加しないものを対照とし、そのフィラグリン/アクチンのバンドの強度比を100%として、フィラグリン/アクチンのバンドの強度比の上昇率でフィラグリン蛋白の発現量を相対評価した。正常ヒト表皮角化細胞におけるフィラグリン蛋白の発現に及ぼすアデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムの作用を表5に示した。
【0068】
【表5】
【0069】
表5から明らかなように、被験物質を添加しない対照と比較して、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムでは、添加濃度依存的にフィラグリン蛋白の発現量が上昇し、10μMでは308%と陽性対照の0.5mMの塩化カルシウムと同等レベルの発現上昇作用が認められた。これらの結果は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムによるタイトジャンクション機能強化作用の一部はフィラグリン蛋白の発現増強作用を介したものであり、本物質が皮膚バリア機能亢進剤及び保湿剤として有用であることを物語っている。
【0070】
さらに、近年、皮膚バリア機能が低下することにより外来の異物が皮膚を介して侵入し、その結果として外来アレルゲンに対する感作が成立しやすくなることがアトピー性皮膚炎の発症に繋がっていることが指摘されている。この実験結果は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムがフィラグリン蛋白の発現増強作用を介して、アトピー性皮膚炎発症の防止にも繋がることを示すものである。
【0071】
<実験4:アデノシンN1−オキシド5´−リン酸類縁体の正常ヒト皮膚線維芽細胞に対するエラスチン産生促進作用に及ぼす影響>
コラーゲンの線維を支える役割を持つ線維であるエラスチンは、肌にハリや弾力を与える役割をしており、エラスチンの変性が起こると、皮膚の弾性が低下してシワや弛みの形成につながる。それ故、エラスチンの産生を促進することにより、シワや弛みを予防又は改善することができる。このため、本実験では、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸及びその類縁体のエラスチン産生に及ぼす影響を調べた。なお、実験は、「Syedain及びTranquillo、『Journal of Biomechanics』、第44巻第5号、848乃至855頁、2011年」に準じて行った。
【0072】
10%ウシ胎児血清含有ダルベッコ変法イーグル培地を用いて3×10個/mlの濃度に調製した正常ヒト皮膚線維芽細胞を、24ウェルプレートにそれぞれ0.5mL添加し、1日培養した。細胞をダルベッコ−リン酸緩衝生理食塩水で洗浄後、表5に記載の被験物質を表5に示す各濃度で添加したダルベッコ変法イーグル培地でさらに2日間培養することによりエラスチン合成を誘導した。その後、培養上清は回収し、細胞を1mLのダルベッコ−リン酸緩衝生理食塩水で洗浄後、0.1mLの0.25%トリプシン及びエチレンジアミン四酢酸を添加し37℃で2分間処理して細胞をプレートから剥離した。プレートに0.5mLのダルベッコ−リン酸緩衝生理食塩水を加え、得られた細胞懸濁液を1.5mLチューブに回収し、遠心分離(3,000×g,5分)して剥離した細胞を回収した。エラスチンの定量は、エラスチン比色定量キット(バイオカラー社製)を用いて行った。先に回収した培養上清を用いて細胞を懸濁し、0.16mLの1M シュウ酸(キット試薬)を添加し100℃で1時間反応させてエラスチンを可溶化した。0.66mLのエラスチン沈殿剤(キット試薬)を添加して15分間転倒混和し、遠心分離(10,000×g,10分)して蛋白質を沈殿させた。沈殿に0.5mLの染色剤(キット試薬)を添加して90分間転倒混和し、遠心分離(10,000×g,10分)して色素が結合した沈殿を回収した。その後、0.25mLの色素分離剤(キット試薬)を添加して1時間転倒混和し、490nmの吸光度を測定してウェル当たりのエラスチン量を算出した。検量線はキット付属品を用いて作成した。被験物質を添加しない以外は同様に処理したものを対照とし、その同じく490nmの吸光度を100%として、下記計算式に基づき、エラスチン産生量を相対評価した。
計算式:エラスチン産生量(相対値%)=(被験物質添加サンプルの吸光度/対照の吸光度)×100
【0073】
また、同条件での細胞増殖を確認するため、10%ウシ胎児血清含有ダルベッコ変法イーグル培地を用いて2.5×10個/mlの濃度に調製した正常ヒト皮膚線維芽細胞を、96ウェルマイクロプレートにそれぞれ0.1mL添加し、1日培養した。ダルベッコ−リン酸緩衝生理食塩水で洗浄後、表5に記載の被験物質を表5に示す各濃度で添加したダルベッコ変法イーグル培地培地で2日間培養した。上清除去後、培地で10倍希釈したアラマーブルーを0.2mL添加し、37℃で2時間反応させて、蛍光強度(励起波長544nm,蛍光波長590nm)を測定し、被験物質を添加しない以外は同様に処理した対照の蛍光強度を100%として被験物質添加時の細胞数の変化率を求めた。
【0074】
実験は3回行い、対照に対してダネットの多重比較検定を行なった。危険率p<0.01を有意差ありとし、*で示した。正常ヒト皮膚線維芽細胞のエラスチン産生に対するアデノシンN1−オキシド5´−リン酸類縁体の作用を表6に示す。
【0075】
【表6】
【0076】
表6から明らかなように、被験物質を添加しない対照と比較して、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム及びアデノシンN1−オキシドでは、10μMの濃度においてエラスチン産生量が約120%に向上し、有意なエラスチン産生増強作用が認められた。また、アデノシン5´−リン酸では、10〜40μMの濃度においてエラスチン産生を増強する傾向があり、100μMの濃度においては、有意なエラスチン産生増強作用が認められた。なお、本実験系では細胞増殖に影響はみられなかった。
【0077】
試験した濃度範囲において、エラスチン産生促進作用は、効果の点から、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム、アデノシンN1−オキシド及びアデノシン5´−リン酸が望ましく、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム及びアデノシンN1−オキシドがより望ましいといえる。これらの結果は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム及びその類縁体であるアデノシンN1−オキシドが、エラスチン産生を促進する作用を有することから、抗シワ剤として有用であることを物語っている。
【0078】
<実験5:アデノシンN1−オキシド5´−リン酸及びその類縁体の正常ヒト皮膚線維芽細胞に対するマトリックスメタロプロテアーゼ−1産生抑制作用に及ぼす影響>
コラーゲンはマトリックスメタロプロテアーゼ−1によって分解され、コラーゲンが分解されると、シワが形成されたり、皮膚の弾性が低下して弛みが起こるといわれている。それ故、マトリックスメタロプロテアーゼ−1の産生を抑制することにより、シワや弛みを予防又は改善することができる。本実験では、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸及びその類縁体のマトリックスメタロプロテアーゼ−1産生に及ぼす影響を調べた。なお、実験は、「Fuller等、『Journal of Cosmetic Dermatology』、第5巻第1号、30乃至38頁、2006年」に準じて行った。
【0079】
10%ウシ胎児血清含有ダルベッコ変法イーグル培地を用いて2.5×10個/mlの濃度に調製した正常ヒト皮膚線維芽細胞を、96ウェルマイクロプレートにそれぞれ0.1mL添加し、ウェルの底面全体を占める状態まで培養した。次いで、培地を無血清培地に交換して24時間培養し、表6に記載の被験物質を表6に示す各濃度で添加してさらに24時間培養した。その後、ヒトIL−1βを終濃度1ng/mlとなるように添加し、さらに24時間培養した。そして、培養上清中のマトリックスメタロプロテアーゼ−1を特異的ELISAキット(R&Dシステムス社製)を用いて検出し、テトラメチルベンジジンで発色させた後、450nmの吸光度を測定した。被験物質を添加しない以外は同様に処理したものを対照とし、対照における培養上清中のマトリックスメタロプロテアーゼ−1を100%として、下記計算式により、マトリックスメタロプロテアーゼ−1産生量を相対評価した。
計算式:マトリックスメタロプロテアーゼ−1産生量(相対値%)=(被験物質添加サンプルの吸光度/対照の吸光度)×100
また、細胞数は細胞数測定キット(染色法)にて測定し、対照を100%として被験物質添加時の細胞数の変化率を求めた。
【0080】
実験は3回行い、対照に対してダネットの多重比較検定を行なった。危険率p<0.01を有意差ありとし、*で示した。正常ヒト皮膚線維芽細胞のマトリックスメタロプロテアーゼ−1産生量に対するアデノシンN1−オキシド5´−リン酸類縁体の作用を表7に示す。
【0081】
【表7】
【0082】
表7から明らかなように、被験物質を添加しない対照と比較して、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムでは、10〜20μMの濃度においてマトリックスメタロプロテアーゼ−1産生量が約80〜30%に減少し、濃度依存的且つ有意な産生抑制作用が認められた。アデノシンN1−オキシドでは、5〜20μMの濃度において同様の産生抑制作用が認められた。また、3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシド及び5´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドでは、200〜800μMの濃度において、濃度依存的且つ有意な産生抑制作用が認められ、その効果は5´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドよりも3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドの方が強かった。アデノシン、アデノシン5´−リン酸、3´−α−グルコシルアデノシン及び5´−α−グルコシルアデノシンでは、有意なマトリックスメタロプロテアーゼ−1産生抑制作用は認められなかった。
【0083】
試験した濃度範囲において、マトリックスメタロプロテアーゼ−1産生抑制作用は、効果の点から、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム、アデノシンN1−オキシド、3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシド及び5´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドが望ましく、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム及びアデノシンN1−オキシドがより望ましいといえる。これらの結果は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩が、マトリックスメタロプロテアーゼ−1の産生を抑制する作用を有しており、抗シワ剤として有用であることを物語っている。
【0084】
<実験6:アデノシンN1−オキシド5´−リン酸及びその類縁体の正常ヒト表皮角化細胞に対するエンドセリン−1産生抑制作用に及ぼす影響>
エンドセリン−1は、メラノサイトの活性化や増殖を促進する物質であり、シミの原因であることが知られている。さらに、メラノサイトから表皮細胞に排出されたメラニンが表皮細胞からスムーズに排出されないことが肌への色素沈着(シミ)や肌のくすみの原因となるとの知見もある。それ故、エンドセリン−1産生を抑制することにより、肌への色素沈着(シミ)や肌のくすみを予防又は改善することができる。このため、本実験では、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸及びその類縁体のエンドセリン−1産生に及ぼす影響を調べた。なお、実験は、「Ishida及びSakaguchi、『Biolog
ical & Pharmaceutical Bulletin』、第30巻第5号、928乃至934頁、2007年」に準じて行った。
【0085】
96ウェルマイクロプレートにおいて、増殖因子含有ケラチノサイト用培地(商品名「EpiLife」,ライフテクノロジーズ社製)を用いて、正常ヒト表皮角化細胞をウェルの底面全体を占める状態まで増殖させた後、培地を増殖因子不含ケラチノサイト用培地に交換してさらに2日間培養した。その後、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムを10、20又は50μMになるよう添加し、6時間静置した。ハンクス緩衝液で洗浄後、紫外線B波を40mJ/cmの強度で細胞に照射し、増殖因子含有ケラチノサイト用培地を加えてさらに24時間培養した。そして、培養上清中のエンドセリン−1を特異的ELISAキット(R&Dシステムス社製)を用いて検出し、テトラメチルベンジジンで発色させた後、450nmの吸光度を測定した。アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムを添加しない以外は同様に処理したものを対照とし、対照における培養上清中のエンドセリン−1産生量を100%として、下記計算式により、エンドセリン−1産生量を相対評価した。
計算式:エンドセリン−1産生量(相対値%)=(被験物質添加サンプルの吸光度/対照の吸光度)×100
また、細胞の増殖はメチレンブルーにて測定し、対照を100%として被験物質添加時の細胞数の変化率を求めた。
【0086】
実験は3回行い、対照に対してダネットの多重比較検定を行なった。危険率p<0.01を有意差ありとし、*で示した。正常ヒト表皮角化細胞のエンドセリン−1産生に対するアデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムの作用を表8に示す。
【0087】
【表8】
【0088】
表8から明らかなように、被験物質を添加しない対照と比較して、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムは、20μMの濃度においてエンドセリン−1の産生を抑制する傾向があり、50μMの濃度においてエンドセリン−1の産生量が約50%に減少し、有意なエンドセリン−1産生抑制作用が認められた。なお、本実験系では細胞増殖に影響はみられなかった。
【0089】
この結果は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸が、エンドセリン−1産生抑制作用を有していることから、抗シミ剤として有用であることを物語っている。
【0090】
<実験7:エピガロカテキンガレートとアデノシンN1−オキシド5´−リン酸の併用がケラチノサイト分化誘導に及ぼす影響>
実験は、それぞれ表8及び表9に記載の被験物質を表8及び表9に示す各濃度で添加した以外は、それぞれ実験1−2及び実験1−3記載の方法に準じて行い、化粧品に抗酸化剤として使用されるエピガロカテキンガレートとの併用によるアデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムのコーニファイドエンベロープ産生促進作用及びトランスグルタミナーゼ活性増強作用への影響を調べた。被験物質を添加しない以外は同様に処理したものを対照とし、それぞれ下記計算式に基づき、対照に対するコーニファイドエンベロープ産生量増加率及びトランスグルタミナーゼ活性増加率を求めた。
計算式:コーニファイドエンベロープ産生量増加率(%)={(被験物質添加サンプルの吸光度/対照の吸光度)×100}−100
計算式:トランスグルタミナーゼ活性増加率(%)={(被験物質添加サンプルの蛍光強度/対照の蛍光強度)×100}−100
それぞれの結果を表9及び表10に示す(効果が認められた組み合わせの増加率を*で示した。)。
【0091】
【表9】
【0092】
【表10】
【0093】
表9及び表10から明らかなように、15μMのアデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムと1.6〜6.5μMのエピガロカテキンガレートとを併用した場合、コーニファイドエンベロープ産生量増加率及びトランスグルタミナーゼ活性増加率のいずれもが、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム及びエピガロカテキンガレートをそれぞれ単独で添加した場合の増加率の単なる和よりも顕著に増加していた。このことから、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムとエピガロカテキンガレートの併用には、コーニファイドエンベロープ産生促進作用及びトランスグルタミナーゼ活性増強作用に対する相乗効果があると判断された。また、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムとエピガロカテキンガレートのモル比は、15μM:6.5μM〜15μM:1.6μMの範囲、すなわち、2.3:1〜9.4:1が望ましいといえる。この結果は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩にエピガロカテキンガレートを配合した組成物が、相乗的にコーニファイドエンベロープの産生及びトランスグルタミナーゼ活性を促進或いは増強することから、抗シミ剤として有用であることを物語っている。
【0094】
<実験8:アデノシンN1−オキシド5´−リン酸とエチレンジアミン四酢酸の併用がタイトジャンクション機能に及ぼす影響>
実験は、表11に記載の被験物質を表11に示す各濃度で添加した以外は、実験2記載の方法に準じて行い、化粧品に保存料として使用されるエチレンジアミン四酢酸との併用によるアデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム塩のタイトジャンクション機能強化作用への影響を調べた。被験物質を添加しない以外は同様に処理したものを対照とし、下記計算式に基づき、対照に対するルシファーイエローの相対透過率の減少率を求めた。
計算式:ルシファーイエローの相対透過率の減少率(%)=100−{(被験物質添加サンプルの透過率/対照の透過率)×100}
結果を表11に示す(効果が認められた組み合わせの減少率を*で示した)。
【0095】
【表11】
【0096】
表11から明らかなように、保存料として化粧品に使用されるエチレンジアミン四酢酸は、それ自体ではタイトジャンクション機能を弱める作用を示したものの、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムとエチレンジアミン四酢酸を併用すると、エチレンジアミン四酢酸のタイトジャンクション機能を弱める作用が大幅に緩和されることが認められた。また、上記の結果は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸とエチレンジアミン四酢酸のモル比が、少なくとも10μM:3mM以上、すなわち、少なくとも1:300以上であれば、エチレンジアミン四酢酸が存在する場合でも、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムを使用することによって、十分なタイトジャンクション機能の強化を図ることができるといえる。この結果は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩にエチレンジアミン四酢酸を配合した組成物が、タイトジャンクション機能強化作用において有意な効果を示すことから、皮膚バリア機能亢進剤及び保湿剤として有用であることを物語っている。
【0097】
<実験9:アスコルビン酸2−グルコシドとアデノシンN1−オキシド5´−リン酸又はその類縁体との併用がマトリックスメタロプロテアーゼ−1産生に及ぼす影響>
実験は、表12に記載の被験物質を表12に示す各濃度で添加した以外は、実験5記載の方法に準じて行い、化粧品に美白剤として使用されるアスコルビン酸2−グルコシドとの併用によるアデノシンN1−オキシド5´−リン酸類縁体の抗シワ作用への影響を調べた。被験物質を添加しない以外は同様に処理したものを対照とし、下記計算式に基づき、対照に対するマトリックスメタロプロテアーゼ−1産生量減少率を求めた。
計算式:マトリックスメタロプロテアーゼ−1産生量減少率(%)=100−{(被験物質添加サンプルの吸光度/対照の吸光度)×100}
結果を表12に示す(効果が認められた組み合わせの減少率を*で示した)。
【0098】
【表12】
【0099】
表12から明らかなように、5〜10μMのアデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム又はその類縁体のアデノシンN1−オキシドと200μMのアスコルビン酸2−グルコシドを併用した場合、マトリックスメタロプロテアーゼ−1産生量減少率が、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム、アデノシンN1−オキシド及びアスコルビン酸2−グルコシドをそれぞれ単独で使用した場合の減少率の単なる和よりも顕著に増加していた。このことから、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム又はアデノシンN1−オキシドとアスコルビン酸2−グルコシドの併用には、マトリックスメタロプロテアーゼ−1産生抑制作用に対する相乗効果があると判断された。また、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸又はアデノシンN1−オキシドとアスコルビン酸2−グルコシドのモル比は、5μM:200μM〜10μM:200μM、すなわち、1:40〜1:20が望ましいといえる。この結果は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体又はその塩とアスコルビン酸2−グルコシドを配合した組成物が、相乗的にマトリックスメタロプロテアーゼ−1の産生を抑制することから、抗シワ剤として有用であることを物語っている。
【0100】
<実験10:アデノシンN1−オキシド5´−リン酸及びその類縁体に光が及ぼす影響>
皮膚外用剤は、その使用にあたり光に曝されることが想定されることから、それに含まれる有効成分は、光毒性を示さないことは勿論、光に対して安定であることが望ましい。光毒性とは、化学物質やその混合物の投与後、光に当たった場合に、投与した物質が反応して皮膚の細胞に障害が現れる現象である。本実験では、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸と、その類縁体としてのアデノシンN1−オキシド及び5´−グルコシルアデノシンN1−オキシドの光に対する安定性を測定し比較した。
【0101】
表13に記載の被験物質25mgに対し、各pHに調整したMcIlvain緩衝液をそれぞれに加えて50mlとし、試験本数分の透明ガラススクリュー管瓶(5ml)にそれぞれ2.0mlずつ分注した。蛍光灯下(約4000Lux,温度28℃)において、各被験物質を分注した透明ガラススクリュー管瓶を寝かせた状態で設置した。アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムについては、実験開始時とその8週間後に、アデノシンN1−オキシド及び5´−グルコシルアデノシンN1−オキシドについては、実験開始時とそれから8週間後までの2週間ごとに、被験物質を分注した透明ガラススクリュー管瓶を1本取り出し、HPLCを用いて分析を行った。実験は3回行い、各被験物質の平均残存率を実験開始時のHPLCクロマトグラムにおける被験物質のピーク面積に対する面積比から、下記計算式に基づいて算出した。表13にアデノシンN1−オキシド5´−リン酸及びその類縁体の光に対する安定性を示す。
計算式:被験物質の残存率(%)=(被験物質の各pHにおける一定時間経過後の平均ピーク面積/被験物質の各pHにおける実験開始時の平均ピーク面積)×100
【0102】
【表13】
【0103】
表13から明らかなように、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムでは、実験開始8週間後において、pH4〜9の条件下で残存率が約89〜97%であり、光に対して非常に安定であった。一方、アデノシンN1−オキシドでは、実験開始8週間後において、pH6〜9の条件下で、残存率が約63〜66%であり、pH4〜5の条件下で、残存率が約25%であり、光に対して不安定であった。また、5´−グルコシルアデノシンN1−オキシドでは、実験開始8週間後において、pH6〜9の条件下で、残存率が約24〜34%であり、pH4〜5の条件下で、残存率が約10%であり、光に対して非常に不安定であった。
【0104】
太陽光照射下では、蛍光灯照射下と比較してより早く分解することが予測されるため、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムが、種々のpH条件下において、その類縁体と比較して光に対してより安定であることを示す上記結果は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸が皮膚外用剤の有効成分として、より有用であることを示している。
【0105】
なお、化学物質やその混合物の安全性を評価するための国際的に合意された試験方法であるOECDテストガイドラインの「TG432:In vitro 3T3 NRU光毒性試験」に準じて試験を行った結果、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム、アデノシンN1−オキシド、3´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシド及び5´−α−グルコシルアデノシンN1−オキシドに光毒性は認められなかった。このことから、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸、その類縁体及びその塩を含有する皮膚外用剤は安全であるといえる。
【0106】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術範囲は、これらの実施例により何ら限定的に解釈されるべきものではない。
【実施例1】
【0107】
<化粧水>
(配合処方)
配合成分 (質量%)
(1)グリセリン 4.0
(2)プロピレングリコール 3.0
(3)1,2−ペンタンジオール 0.1
(4)アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム 1.0
(5)ポリオキシエチレン(20モル)オレインアルコール 0.5
(6)ユキノシタエキス 2.0
(7)エタノール 5.0
(8)香料 適量
(9)精製水 残量
【0108】
上記配合処方の成分(1)乃至(4)を精製水(9)に溶解後、成分(5)乃至(8)を混合したものを徐々に添加し混和することにより、化粧水を調製した。本品は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムを配合していることから、皮膚のターンオーバーを促進する優れた化粧水であり、皮膚におけるバリア機能の維持又は亢進作用、エラスチン産生の維持又は亢進作用、抗シワ作用、抗小ジワ作用、抗弛み作用、抗シミ作用にも優れたアンチエイジング用化粧水として有用である。また、1,2−ペンタンジオールを配合しているので、防腐効果及び保湿性に優れた化粧水である。
【実施例2】
【0109】
<乳液>
(配合処方)
配合成分 (質量%)
(1)1,2−へキサンジオール 5.0
(2)オクチルドデカノール 4.0
(3)アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム 0.1
(4)アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原販売、
商品名「AA2G」) 2.0
(5)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.) 1.0
(6)ステアリン酸 0.5
(7)シアバター 2.0
(8)ミツロウ 4.0
(9)パラオキシ安息香酸エステル 0.2
(10)マルメロ種子エキス 5.0
(11)キサンタンガム 0.1
(12)フィチン酸 0.02
(13)ビタミンE 0.01
(14)精製水 残量
【0110】
上記の成分(1)、(3)、(10)、(11)及び精製水(14)を混合し水相とした。次いで、成分(2)、(5)〜(9)、(12)及び(13)を加熱、混合し油相とした。油相に水相を添加し、均一に混合した後、冷却し、成分(4)を加えて均質に混合して乳液を得た。本品は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム及びアスコルビン酸2−グルコシドを配合していることから、皮膚のターンオーバーを促進する優れた乳液であり、皮膚におけるバリア機能の維持又は亢進作用、エラスチン産生の維持又は亢進作用、抗シワ作用、抗小ジワ作用、抗弛み作用、抗シミ作用にも優れたアンチエイジング用乳液として有用である。
【実施例3】
【0111】
<化粧用乳液>
(配合処方)
配合成分 (質量%)
(1)ステアリン酸 2.5
(2)セタノール 1.5
(3)ワセリン 5.0
(4)流動パラフィン 10.0
(5)ポリオキシエチレンオレート 2.0
(6)酢酸トコフェロール 0.5
(7)グリチルリチン酸ジカリウム 0.2
(8)ポリエチレングリコール(1500) 3.0
(9)アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム 0.1
(10)エピガロカテキンガレート 0.5
(11)1,2−ヘキサンジオール 0.1
(12)精製水 残量
【0112】
上記処方に従い、配合成分を常法により混合した後、更に、適量の香料を加えて乳液を製造した。本品は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム及びエピガロカテキンガレートを配合していることから、皮膚のターンオーバーを促進する優れた乳液であり、皮膚におけるバリア機能の維持又は亢進作用、エラスチン産生の維持又は亢進作用、抗シワ作用、抗小ジワ作用、抗弛み作用、抗シミ作用にも優れたアンチエイジング用乳液として有用である。
【実施例4】
【0113】
<化粧用クリーム>
(配合処方)
配合成分 (質量%)
(1)ステアリン酸 5.0
(2)セチルアルコール 5.0
(3)スクワラン 8.0
(4)ワセリン 3.0
(5)グリセロールトリ2−エチルヘキサン酸エステル 7.0
(6)ジプロピレングリコール 6.0
(7)グリセリン 4.0
(8)アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム 0.1
(9)エデト酸二ナトリウム 0.01
(10)プロピレングリコールモノステアリン酸エステル 3.0
(11)ポリオキシエチレン(20)セチルアルコールエーテル 3.0
(12)1,2−ヘキサンジオール 0.2
(13)香料 適量
(14)精製水 残量
【0114】
精製水(14)に成分(6)乃至(9)を加え、60℃に加温し、水相を調製した。別途、成分(1)乃至(5)、(10)乃至(13)を混合し、70℃に加温して油相を調製し、先に調製した水相に添加した。これを常法により乳化してクリームを製造した。本品は、アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムを配合していることから皮膚のターンオーバーを促進する優れたクリームであり、エデト酸二ナトリウム(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム)を配合していることから、安定である。皮膚におけるバリア機能の維持又は亢進作用、エラスチン産生の維持又は亢進作用、抗シワ作用、抗小ジワ作用、抗弛み作用、抗シミ作用にも優れた、べたつきがなく使用感も良好なアンチエイジング用化粧クリームとして有用である。
【実施例5】
【0115】
<美容液>
(配合処方)
配合成分 (質量%)
(1)マルチトール 7.5
(2)アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原販売、
商品名「AA2G」) 2.0
(3)1,2−アルカンジオール 5.0
(4)ポリエチレングリコール1500 1.0
(5)エタノール 5.0
(6)カルボキシビニルポリマー 0.4
(7)ポリアクリル酸ナトリウム 0.1
(8)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.) 1.5
(9)オリーブ油 0.2
(10)アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウム 0.1
(11)水酸化カリウム 適量
(12)香料 適量
(13)精製水 残量
【0116】
上記処方に従い、配合成分を常法により混合し、美容液を調製した。アデノシンN1−オキシド5´−リン酸ナトリウムを配合していることから、本品は、皮膚のターンオーバーを促進する優れた美容液であり、皮膚におけるバリア機能の維持又は亢進作用、エラスチン産生の維持又は亢進作用、抗シワ作用、抗小ジワ作用、抗弛み作用、抗シミ作用にも優れた、皮膚に塗布してもベタ付き感のない、使用感に優れたアンチエイジング用美容液として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上説明したとおり、本発明のアンチエイジング用皮膚外用剤によれば、皮膚のターンオーバーを改善し、皮膚におけるバリア機能を維持又は亢進し、皮膚におけるフィラグリン蛋白の発現を増強し、皮膚におけるエラスチンの産生を維持又は亢進し、皮膚におけるマトリックスメタロプロテアーゼ−1の産生を抑制し、又は、皮膚におけるエンドセリン−1の産生を抑制することができるので、加齢にともなう皮膚のシワ、小ジワ、弛み、シミなどを効果的に予防又は改善することができる。本発明は、斯界に多大の貢献をする誠に意義のある発明である。