特許第6573617号(P6573617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼネラル・エレクトリック・カンパニイの特許一覧

特許6573617容量結合を使用する電気パルス発生システム
<>
  • 特許6573617-容量結合を使用する電気パルス発生システム 図000002
  • 特許6573617-容量結合を使用する電気パルス発生システム 図000003
  • 特許6573617-容量結合を使用する電気パルス発生システム 図000004
  • 特許6573617-容量結合を使用する電気パルス発生システム 図000005
  • 特許6573617-容量結合を使用する電気パルス発生システム 図000006
  • 特許6573617-容量結合を使用する電気パルス発生システム 図000007
  • 特許6573617-容量結合を使用する電気パルス発生システム 図000008
  • 特許6573617-容量結合を使用する電気パルス発生システム 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573617
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】容量結合を使用する電気パルス発生システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/42 20060101AFI20190902BHJP
   A61N 1/00 20060101ALI20190902BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALN20190902BHJP
   G01N 33/49 20060101ALN20190902BHJP
【FI】
   C12M1/42
   A61N1/00
   !C12Q1/02
   !G01N33/49 Z
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-544865(P2016-544865)
(86)(22)【出願日】2014年11月20日
(65)【公表番号】特表2017-505656(P2017-505656A)
(43)【公表日】2017年2月23日
(86)【国際出願番号】US2014066484
(87)【国際公開番号】WO2015108619
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2017年11月6日
(31)【優先権主張番号】14/158,106
(32)【優先日】2014年1月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】カイアファ,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ネキュラエス,ヴァシール・ボダン
(72)【発明者】
【氏名】ガーナー,アレン・ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】トレス,アンドリュー・ソリズ
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−512151(JP,A)
【文献】 特表2007−500501(JP,A)
【文献】 特表2012−508771(JP,A)
【文献】 特表2008−545415(JP,A)
【文献】 特表2013−508066(JP,A)
【文献】 特開2008−237214(JP,A)
【文献】 特表2007−529215(JP,A)
【文献】 特表2003−502048(JP,A)
【文献】 特開平11−018770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−1/42
A61N 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリ(30)と、
ディスプレイ(32)と、
ユーザ入力デバイス(34)と、
試料ホルダー(26)の互いに対向する側面上に配設された第1の電極および第2の電極(16、18)を備える試料ホルダー(26)であって、試料容器を受けるように構成される、試料ホルダー(26)と、
前記第1の電極および前記第2の電極(16、18)にパルスを供給するように構成されたパルス発生回路(12)と、
前記試料ホルダー(26)の外側で前記パルス発生回路(12)と前記第1の電極との間に直列に配設された容量素子(36)と、
前記パルス発生回路(12)を制御するために前記メモリ(30)上に記憶された命令を実行するように構成されたプロセッサ(28)であって、前記パルス発生回路(12)が、前記試料容器に容量結合するように構成される、プロセッサ(28)とを備える、電気パルス発生システム(10)。
【請求項2】
メモリ(30)と、
ディスプレイ(32)と、
ユーザ入力デバイス(34)と、
試料ホルダー(26)の互いに対向する側面上に配設された第1の電極および第2の電極(16、18)を備える試料ホルダー(26)であって、試料容器を受けるように構成される、試料ホルダー(26)と、
前記第1の電極および前記第2の電極(16、18)にパルスを供給するように構成されたパルス発生回路(12)と、
前記パルス発生回路(12)と前記第1の電極との間に直列に配設された容量素子(36)と、
前記パルス発生回路(12)を制御するために前記メモリ(30)上に記憶された命令を実行するように構成されたプロセッサ(28)であって、前記パルス発生回路(12)が、前記試料容器に容量結合するように構成される、プロセッサ(28)とを備え
前記パルス発生回路(12)は、前記容量素子(36)にパルスを供給するように構成される、電気パルス発生システム(10)。
【請求項3】
前記容量素子(36)が、前記パルス発生回路(12)と前記第1の電極との間に配設されたコンデンサ(36)を含む、請求項1または2に記載の電気パルス発生システム(10)。
【請求項4】
前記容量素子(36)が、前記第1の電極と前記試料ホルダー(26)との間に配設されたコンデンサ(36)を含む、請求項に記載の電気パルス発生システム(10)。
【請求項5】
前記パルス発生回路(12)が、前記パルスが前記容量素子(36)を迂回することが可能になる、前記第1および第2の電極(16、18)に結合された前記容量素子(36)と回路とを備える、請求項1乃至4のいずれかに記載の電気パルス発生システム(10)。
【請求項6】
記プロセッサ(28)が、前記パルスが前記容量素子(36)を迂回するかまたは前記パルスが前記容量素子(36)中を流れるように経路指定するかのいずれかが可能となるように前記パルス発生回路(12)を制御するために前記ユーザ入力デバイス(34)から入力を受け取るように構成される、請求項に記載の電気パルス発生システム(10)。
【請求項7】
前記メモリ(30)が、前記パルスの1つまたは複数の特性を指定する命令を含む、請求項1乃至のいずれかに記載の電気パルス発生システム(10)。
【請求項8】
前記プロセッサ(28)が、前記パルスの1つまたは複数の特性を指定する入力を前記ユーザ入力デバイス(34)から受け取るように構成される、請求項1乃至のいずれかに記載の電気パルス発生システム(10)。
【請求項9】
前記パルスが、約1ナノ秒から約100マイクロ秒の間のパルス持続時間を有する、請求項1乃至のいずれかに記載の電気パルス発生システム(10)。
【請求項10】
前記パルスが、0.1kV/cmから350kV/cmの間の電界強度を有する、請求項1乃至のいずれかに記載の電気パルス発生システム(10)。
【請求項11】
前記パルス発生回路(12)が、前記容量素子(36)を使用してバイポーラパルスを前記第1および第2の電極(16、18)に供給するように構成され前記バイポーラパルスが第1及び第2のパルスを含み、前記第1のパルスが、パルス持続時間および第1の電界強度を有し、前記第2のパルスが、前記パルス持続時間および第2の電界強度を有し、前記第1の電界強度および前記第2の電界強度が加法逆元である、請求項1乃至10のいずれかに記載の電気パルス発生システム(10)。
【請求項12】
前記メモリ(30)が、前記第1および第2のパルスの1つまたは複数の特性を指定する命令を記憶する、請求項11に記載の電気パルス発生システム(10)。
【請求項13】
前記プロセッサ(28)が、前記第1および第2のパルスの1つまたは複数の特性を指定する入力を前記ユーザ入力デバイス(34)から受け取るように構成される、請求項1または1に記載の電気パルス発生システム(10)。
【請求項14】
前記容量素子(36)が、直流が前記試料ホルダー(26)内の試料(24)中を流れるのを防止し、バイポーラ衝撃電流が前記試料(24)中を流れるように強制する、請求項1乃至13のいずれかに記載の電気パルス発生システム(10)。
(10)。
【請求項15】
前記試料(24)が血液である、請求項14に記載の電気パルス発生システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に説明する主題は、一般に、細胞療法や他の医療状況の場合など、パルスの形で電気刺激を利用する適用例に関する。
【背景技術】
【0002】
パルスパワーには、治療、生物工学、食品加工、水処理(例えば、浄水)、排ガス処理、オゾン発生、イオン注入など、数多くの工業用途がある。例えば、トランスフェクションは、細胞内へのDNAプラスミドの侵入を容易にするために細胞膜を透過性にするのに使用される医学技術である。電気穿孔法とも呼ばれるこの技術には、典型的には、細胞膜を生存能力を維持しながら透過性にするために十分な強度と持続時間で電気パルスを印加することが伴う。細胞膜が「漏れを起こす」ようにされると、周囲の緩衝液内のDNAが細胞内に入る。ある生体内および生体外血小板活性化法もパルス電気刺激を利用する。
【0003】
しばしば、パルスパワーを採用した医学技術では、パルス発生システムは、試料を刺激されたままに保持する容器(例えば、キュベット)に直接結合される。直接(すなわち、伝導的に)結合されたシステムでは、電気パルスに関連付けられた電流は、直接試料中を流れる。典型的な矩形波パルスは、人がパルス幅、パルス振幅、パルスの数および周波数を調整し得る電気穿孔法に利用される。これには導電材料(すなわち、金属)製の特別な容器を必要とすることがあり、それは高価なことがあり、または生体もしくは生化学標本に適切でない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6897069B1号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
当初特許請求された発明に範囲が相応するある実施形態を以下に要約する。これらの実施形態は特許請求された発明の範囲を限定することが意図されていないが、むしろ、これらの実施形態は、発明の可能な形の概要を提供することだけが意図されている。実際、発明は、以下に記載する実施形態と同様であり得るまたは異なり得る様々な形を包含することができる。
【0006】
第1の実施形態において、電気パルス発生システムは、メモリと、ディスプレイと、ユーザ入力デバイスとを含む。パルス発生システムは、試料を含む容器のいずれかの側面上に配設された第1および第2の電極を含む試料ホルダーも含む。パルス発生システムは、第1および第2の電極にパルスを供給するように構成されたパルス発生回路と、パルス発生回路と第2の電極との間に配設された容量素子とを含む。パルス発生回路は容器に容量結合される。パルス発生システムは、パルス発生回路を制御するためにメモリ上に記憶された命令を実行するように構成されたプロセッサも含む。
【0007】
第2の実施形態において、電気パルス発生システムは、メモリと、ディスプレイと、ユーザ入力デバイスとを含む。パルス発生システムは、試料を含む容器のいずれかの側面上に配設された第1および第2の電極を含む試料ホルダーも含む。パルス発生システムは、第1および第2の電極にパルスを供給するように構成されたパルス発生回路と、パルス発生回路と第2の電極との間に配設された容量素子とを含む。容量素子は電気パルス発生システムの動作の間、取り外し可能であり得るまたは迂回され得る。パルス発生システムは、パルス発生回路が試料に直接結合または容量結合されるかどうかにかかわらず、パルス発生回路を制御するためにメモリ上に記憶された命令を実行するように構成されたプロセッサも含む。
【0008】
第3の実施形態において、方法は患者から血液を採取するステップを含む。1つまたは複数の電気パルスのシーケンスの構成が成長因子放出に関連付けられた所望のパラメータに基づいて指定される。次いで、血液試料または血液試料から得られた多血小板血漿試料が、血液試料または多血小板血漿中に成長因子の放出をトリガするために、容量結合されたパルス発生システムを介して1つまたは複数のパルス電界のシーケンスに暴露される。
【0009】
第4の実施形態において、電気パルス発生システムは、メモリと、ディスプレイと、ユーザ入力デバイスとを含むことができる。電気パルス発生システムは、試料ホルダーの互いに対向する側面上に配設された第1の電極と第2の電極とを含む試料ホルダーを備えることもでき、試料ホルダーは、試料容器を受けるように構成され、パルス発生回路は、第1のパルスおよび第2のパルスを第1および第2の電極に供給するように構成される。第1のパルスは、パルス持続時間と第1の電界強度とを有し、第2のパルスは、パルス持続時間と第2の電界強度とを有する。第1の電界強度および第2の電界強度は、加法逆元である。電気パルス発生システムは、パルス発生回路を制御するためにメモリ上に記憶された命令を実行するように構成されたプロセッサをさらに含むことができる。
【0010】
本発明のこれらのおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明を、図面全体を通して同じ文字が同じ部分を表す添付の図面を参照して読むとき、より良く理解されることになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本方式の実施形態による、容量結合されたパルス発生システムと負荷との回路図である。
図2】本方式の実施形態による、図1のパルス発生システムと負荷との回路図である。
図3】本方式の別の実施形態による、図1のパルス発生システムと負荷との回路図である。
図4】本方式の実施形態による、生体外成長因子放出のための方法を例示する流れ図である。
図5】本方式の実施形態による、負荷に容量結合および直接結合の両方がされたパルス発生システムの回路図である。
図6】活性化されていないPRP、活性化されていない全血試料、およびパルス発生システムに容量結合されたPRP試料中に放出された血小板由来成長因子の量を示すグラフである。
図7】活性化されていないPRP、活性化されていない全血試料、およびパルス発生システムに容量結合されたPRP試料中に放出された血小板由来成長因子の量を示すグラフである。
図8】本明細書に論じる方式を含む様々な方式を使用して様々な血液試料中に放出された血小板由来成長因子の量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本主題の1つまたは複数の具体的な実施形態を以下に説明する。これらの実施形態の簡明な説明を提供するために、実際の実装形態のすべての特徴は、本明細書に説明されていない可能性がある。任意のそのような実際の実装形態の開発において、任意の工学または設計プロジェクトの場合のように、実装形態によって異なり得る、システム関連およびビジネス関連の制約との適合など、開発業者の具体的な目標を達成するために数多くの実装形態特有の判断をしなければならないことを理解されたい。さらに、そのような開発努力は、複雑で時間がかかる可能性があるが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者には設計、製作、および製造の通常の仕事であることを理解されたい。
【0013】
本発明の様々な実施形態の要素を紹介するとき、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」および「前記の(said)」という冠詞は、要素の1つまたは複数があることを意味することが意図されている。「備える(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は、包含的であることが意図されており、列挙された要素以外に追加の要素がある可能性があることを意味することが意図されている。
【0014】
本実施形態は、パルスパワーを採用した適用例のパルス発生システムに関する。具体的には、本明細書に説明する実施形態は、負荷がキュベットまたは他の適切な容器内に配置される生体試料であり得る医療用途に使用されるパルス発生システムに関する。パルス発生システムは、容量結合によって、ならびにいくつかの実施形態では容量結合および直接結合の両方によって、対応する負荷に結合することができる。負荷が容量結合および直接結合の両方によってパルス発生システムに結合することができる場合、操作者は、どのタイプの結合を使用するかを選択することができる。本明細書に説明する実施形態は具体的な医療用途に関するが、単に主題の可能な使用の例にすぎないことを理解されたい。したがって、開示される技術を、例えば、他の治療用途、生物工学、食品加工、水処理(例えば、浄水)、排ガス処理、オゾン発生、およびイオン注入で実装することができる。特に、電気パルスに暴露される試料は、治療、生物工学、食品加工、水処理(例えば、浄水)、排ガス処理、オゾン発生、および/またはイオン注入法で使用される試料でよい。
【0015】
上述を念頭において、図1はパルス発生システム10を例示する。パルス発生システム10は、パルス発生回路12と負荷14とを含むことができる。負荷14は、電極の組(または電極の配列)16と18を含むことができ、電極16と18は、0.01〜35kAの範囲においてなど、大きな電流の量を伝導するように設計することができる。示される実施形態において、電極16と18は、キュベット20の互いに対向する側面上に離間される。すなわち、キュベット20は、電極16と18との間に配設され、電極16と18とによって接触され、電極は接点22を介してパルス発生器に結合される。一実施形態において、キュベット20は、血液試料などの生体または生化学試料24を保持するように構成される。ある実施形態において、キュベット20は試料ホルダー26から処分可能および/または取り外し可能である。したがって、キュベット20の挿入ならびに電極16および18と接点22との接触により、パルス発生器が電気パルスを生じることが可能になり、キュベット20内の試料24はパルスに暴露される。例示される実施形態はキュベット20を示すが、キュベットは試料容器の一例にすぎず、試料を保持するように構成された任意の適切な容器を電極16と18との間に配設することができることを理解されたい。ある実施形態において、キュベット20または対応する試料ホルダーは、電気パルスを伝導することができる。キュベット20は、電極16と18とを相互に分離する。前述の説明は生体試料を保持するキュベットを説明するが、負荷14が、電気パルスに暴露されることから利益を受ける任意の適切な試料と、対応する試料ホルダーとを含むことができることを理解されたい。
【0016】
ある実施形態において、システム10は、適切なコントロールと入力回路とを含むことができ、専用ハウジングで実装することができ、またはコンピュータもしくは他のプロセッサベースのシステムに結合することができる。システム10は、パルス発生回路12を制御するプロセッサ28を含むことができる。システム10の追加の構成要素は、プロセッサ28によって実行される命令を記憶するメモリ30を含むことができる。そのような命令は、プロトコルおよび/またはパルス発生回路12によって発生された電気パルスのパラメータを含むことができる。プロセッサ28は、例えば、汎用シングルまたはマルチチップマイクロプロセッサを含むことができる。さらに、プロセッサ28は、特定用途向けプロセッサまたは回路などの任意の従来の専用プロセッサでよい。メモリ30は、大容量記憶装置、フラッシュメモリデバイス、取り外し可能メモリなどでよい。さらに、ディスプレイ32は、システム10の動作に関連した操作者に指示を与えることができる。システム10は、パルス発生回路12を作動させるためのおよび/または適当なパラメータを選択するためのユーザ入力デバイス34(例えば、キーボード、マウス、タッチスクリーン、トラックボール、携帯用デバイスもしくはコントローラまたはそれらの任意の組み合わせ)を含むことができる。
【0017】
示される実施形態において、システム10は生体外血小板活性化に使用される。例えば、試料は人体から取り出され、血小板濃度(例えば、多血小板血漿)を高めるように処理された血液製剤でよい。他の実施形態において、システム10は生体内技術に使用することができる。したがって、システム10は、負荷内または負荷上に電気パルスを加える、間隔を置いた電極を有するペン型スキャナまたは他の携帯用デバイスとして実装することができる。
【0018】
本明細書に提供されるパルス発生システム10は、専用のデバイス(例えば、血小板活性化のためだけ)として、または本明細書に論じるように、血小板活性化に加えて電気穿孔法などの他の電界暴露用途に使用することができる多目的デバイスとして実装することができることが想定される。さらに、システム10は、1つまたは複数のプロトコルにより電気パルスを発生するように構成することができる。プロトコルは、ユーザ入力によって発生させることができ、および/またはユーザによって選択されるメモリ30内に記憶させることができる。一実施形態において、システム10は、試料24が装填されると活性化を開始するための入力以外の活性化プロトコルへの任意のユーザ入力なしで動作することができる。そのような実施形態において、パルス発生回路12は、所定の電界強度、パルス長、および/または全暴露時間を用いて単一のプロトコルを動作させるためにプロセッサ28の制御下で動作することができる。そのようなプロトコルは、実証的研究または理論的研究によって決定され得る。他の実施形態において、システム10は、電界強度、パルス長、および/または全暴露時間に関連したユーザ入力を受け取るように構成することができる。さらに、システム10は、ユーザ入力および/または記憶されたプロトコル設定により相互に異なり得る、特定のパルス波形を発生するように、または一連のパルスを発生するように構成することができる。
【0019】
システム10によって発生されたパルスは、適用例により、約1ナノ秒から約100マイクロ秒の持続時間と、約0.1kV/cmから350kV/cmの電界強度とを有することができる。電極16と18との間の間隔は、印加電圧と電極ギャップ距離との比と定義される、電界の強度に影響を及ぼすことがある。例えば、キュベットが電極間に1cmのギャップを設ける場合、キュベットを1kVに暴露すると、1kV/cmの電界強度が生じる。システムによって発生されたパルスが少なくとも10kV/cm、50kV/cmなどであり得るが、それらは試料24の破壊電界を超えてはならない。
【0020】
従来のシステムでは、パルス発生システムは、電流が直接パルス発生回路から試料までおよび試料中まで流れるように、対応する負荷に直接結合される。したがって、キュベットは、または一般に試料容器は、導電(すなわち、金属)材料から作製することができるが、それは高価なことがあり、またはその他の場合は試料の性質によりなど望ましくないことがある。さらに、試料は、金属表面との接触により汚染されることになり得る。キュベット20は、電気絶縁破壊(例えば、アーク放電)の可能性を低減するある特性を有することが必要なこともある。
【0021】
試料ホルダー26および示される実施形態においてはキュベット20の要件を低減しまたは除去するために、パルス発生システム10は、負荷14に容量結合することができる。システム10は、図1に例示するように、パルス発生回路12と試料24との間に配設された容量素子36を含むことができる。いくつかの実施形態において、容量素子36は、パルス発生回路12と電極16との間に配設することができる。容量結合されたシステム10において、容量素子36は、直流(DC)が試料24中を流れるのを防止し、バイポーラ衝撃電流が試料中を流れるように強制する。
【0022】
容量素子36は、コンデンサとして働き、試料24に直列に配設される任意の適切な構成要素または材料でよい。例えば、容量素子36は、図2に例示するように、パルス発生回路12の端部に配設されるコンデンサでよい。コンデンサ36は、図3に例示するように、電極16と試料24との間に配設することもできる。例えば、コンデンサ36は、電極16とキュベット内の試料ホルダー26との間に配置されたコンパートメントに取り付けることができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、容量素子36は、キュベット20または一般に試料容器でよい。キュベット20は、キュベットがコンデンサとして働くことが可能になる非導電材料(例えば、石英、プラスチック)製でよい。非導電材料は、導電材料よりも廉価であり、殺菌するのに容易であり、汚染する傾向がない可能性がある。非導電材料はより容易に入手可能でもあり得る。例えば、システム10が血小板活性化に使用される場合、試料ホルダー26は、試料24(すなわち、血液)を採取するのに使用される注射器でよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、容量結合を使用するパルス発生システム10は、バイポーラパルスを発生するように構成することができる。プロセッサ28は、2つの電気パルスを交互に発生できるようにパルス発生回路12を制御することができる。これらの2つの電気パルスは、同じパルス持続時間を有することができる。しかし、電気パルスの振幅は、加法逆元でよい。例えば、第1の電気パルスは50kV/cmの電界強度を有することができ、第2の電気パルスは−50kV/cmの電界強度を有することができる。理解されるように、第1のパルスの極性が第2のパルスの極性の正反対である限り、第1のパルスは正の極性を有することができ、第2のパルスは負の極性を有することができ、またはその逆であることができる。
【0025】
容量結合を使用するパルス発生システムは、試料を電気的に刺激する結果に関連した利益を有することができる。例えば、電気刺激を使用する血小板活性化技術において、成長因子放出率は、容量結合されたパルス発生システムによって発射された電気パルスのタイプによって異なり得る。例えば、電気パルスaにより、成長因子aを直ちに放出することができ、成長因子bを続いて放出することができる。他方、電気パルスbにより、成長因子aの定常放出率を生じることができ、その間、プロセスの途中で成長因子bが放出される。成長因子放出の変動に関連付けられたパルスの特性は、実証的研究によって決定することができる。これらのパルス構成は、メモリ30上に記憶されるプロトコル内に組み込むことができ、あるいは、ユーザ入力によって指定することができる。
【0026】
図4に例示するように、成長因子放出をトリガするための方法40は、システム10と連携して使用することができる。方法40のあるステップは、操作者によって実施することができるが、方法の他のステップはシステム10によって実施することができることを理解されたい。ステップ42において、職員(例えば、医師または看護師)が患者から採血し、血液はステップ44においてPRP試料を作り出すために遠心分離機にかけられる。示される実装形態において、職員は、ステップ46において、放出される成長因子の具体的な量をトリガするためにPRP試料に印加する1つまたは複数のパルスの正しいシーケンスおよび構成を決定する。他の実施形態において、職員は、放出される成長因子の所望のタイプおよび/または所望の放出率に基づいてパルスの正しいシーケンスを決定することができる。ステップ48の間、PRP試料は、1つまたは複数のパルスに暴露され、それによって、ステップ50において成長因子放出がトリガされる。最後に、ステップ52において、成長因子がPRP試料から採取される。
【0027】
ある適用例は、容量結合から利益を得ることができるが、他の適用例は直接結合から利益を得ることができる。したがって、パルス発生システム10は、適用例によって負荷14に容量結合または直接結合することができることが望ましい可能性がある。例えば、上記のように、容量素子36は、電極16と試料ホルダー26との間に配設されたコンデンサでよい。コンデンサ36は、システム10が通常直接結合を使用し、容量結合が所望されるとき、操作者がコンデンサ36を取り付けるように、取り外し可能でよい、同様に、操作者は、直接結合が所望されるとき、導電性試料ホルダー26を使用することができ、容量結合が所望されるとき、非導電性試料ホルダー26を使用することができる。
【0028】
あるいは、パルス発生回路12は、図5に例示するように、電流が直接負荷14に流れる(すなわち、直接結合)ことが可能になる、または電流が負荷14の前に容量素子36中を流れる経路指定にされる(すなわち、容量結合)ことが可能になる回路を含むことができる。例えば、パルス発生回路12は、負荷14への直接結合と、負荷14に直列の容量素子36(例えば、コンデンサ)(すなわち、容量結合)とを並列に含むことができる。プロセッサ28は、電流が直接結合または容量結合のいずれかにより負荷14に流れることが可能になる2つのスイッチ54を制御することができる。スイッチ54は、シリコン制御整流器、電力トランジスタ、リレースイッチ、または任意の他の同様のデバイスなど、導電状態と非導電状態とを選択的に切り替えることができる任意のデバイスでよい。あるいは、プロセッサ28は、アナログまたはデジタルマルチプレクサなど、所望の結合様式に関連付けられた回路を選択することができる他のデバイスを制御することができる。プロセッサ28は、どの結合様式をシステム10が使用すべきかを指定するユーザ入力を受け取ることができる。発生されるパルスの特性を指定するメモリ30上に記憶されたプロトコルは、直接結合を使用するのか、または容量結合を使用するのかを指定することもできる。
【0029】
適用例によっては、直接結合と容量結合との間を交互する負荷14に加えられる一連の電気パルスから利益を得るものもあり得る。そのような構成は、メモリ30上に記憶されるプロトコルに組み込むことができ、またはユーザ入力によって指定することができる。
実施例
血小板活性化の間に成長因子放出の量を制御するステップ
図6は、本明細書に論じるように、容量結合方式とともに電気刺激を使用する、様々なタイプの血液試料中への成長因子放出の量を示す。活性化されていない多血小板血漿(PRP:platelet rich plasma)試料と、活性化されていない全血試料と、容量結合されたパルス発生システムにおける電気刺激により活性化されているPRP試料とを含む試料の結果が示される。PRP試料は、700Vの電圧(3.5kV/cmの電界強度)および30Aの電流を有するバイポーラパルスに暴露された。例示されるように、容量結合されたPRP試料において存在する血小板由来成長因子(PDGF:platelet−derived growth factor)の量は、非活性化されたPRP試料および全血試料の量の約2倍である。
【0030】
図7図6の場合のように同様のタイプの試料中への成長因子放出の量を例示するが、基準値の、非活性化されたPRPおよび全血に比較して、より高い容量結合電圧がより多くの成長因子放出をトリガする。ここで、容量結合されたPRP試料は、1200V(6kV/cmの電界強度)の電圧および60Aの電流を有するバイポーラパルスに暴露された。容量結合されたPRP試料中に放出されたPDGFの量は、非活性化されたPRP試料の量よりも6倍多く、全血試料の量よりも約13倍多かった。図示するように、電気刺激の電圧および電流特性は、パルス発生システムが試料に容量結合されているとき基準値に比較して、放出された成長因子の量に影響する。容量結合されたパルス発生システムの効果をさらに例示するために、図8は、非活性化されたPRP試料、電気刺激に暴露されなかった全血試料、ウシトロンビンで活性化された血液試料、および容量結合されたPRP試料中に放出されたPDGFの量を比較する。
【0031】
開示される実施形態の1つまたは複数は、単独であれ、または組み合わせであれ、様々な適用例にパルスパワーを提供するのに有用である1つまたは複数の技術的効果を提供することができる。ある実施形態により、操作者はパルス発生システムにおける試料ホルダーに非導電材料を使用することが可能になり得る。例えば、容量結合された本パルス発生システムは、注射器または他のプラスチック容器を試料ホルダーとして使用することができる。これらの非導電試料ホルダーは、従来のパルス発生システムに使用される試料ホルダーよりも廉価で、殺菌するのに容易であり、容易に入手可能であり得る。さらに、容量結合された本パルス発生システムを使用して電気的に刺激される試料は、使用されるパルスのタイプによって異なり得る。例えば、血小板活性化のために容量結合された本パルス発生システムのパルスパラメータを変えることにより、放出される成長因子の量を変更することができる。他の実施形態により、操作者はパルス発生システムにおける直接結合または容量結合を使用することが可能にもなり得る。例えば、本パルス発生システムは、電流が直接試料まで流れることが可能になる(すなわち、直接結合)または電流が容量素子中を流れるように再度経路指定することが可能になる(すなわち、容量結合)適切なコントロールとパルス発生回路とを内蔵することができる。本明細書における技術的効果および技術的課題は、例示的であり、限定的ではない。本明細書に説明する実施形態は、他の技術的効果を有することができ、他の技術的課題を解決することができることに留意されたい。
【0032】
本発明のある特徴だけを例示し、本明細書に説明してきたが、多くの修正および変更が当業者には思いつくことであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、すべてのそのような修正および変更を本発明の真の精神内に含まれるものとして包含することが意図されることを理解されたい。
【符号の説明】
【0033】
10 パルス発生システム
12 パルス発生回路
14 負荷
16、18 電極の組(または電極の配列)、電極
20 キュベット
22 接点
24 生体または生化学試料、試料
26 試料ホルダー
28 プロセッサ
30 メモリ
32 ディスプレイ
34 ユーザ入力デバイス
36 容量素子、コンデンサ
40 方法
42、44、46、48、50、52 ステップ
54 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8