特許第6573621号(P6573621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573621ブロック共重合体含有樹脂組成物及びその成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573621
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】ブロック共重合体含有樹脂組成物及びその成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20190902BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20190902BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20190902BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20190902BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   C08L53/02
   C08L101/00
   C08L25/04
   C08F297/04
   C08J5/18CET
【請求項の数】11
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-550401(P2016-550401)
(86)(22)【出願日】2015年9月25日
(86)【国際出願番号】JP2015077130
(87)【国際公開番号】WO2016047762
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2018年5月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-195736(P2014-195736)
(32)【優先日】2014年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大石 真之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 準
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英次
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−049015(JP,A)
【文献】 特開平09−324084(JP,A)
【文献】 特開昭63−000061(JP,A)
【文献】 特表2002−540230(JP,A)
【文献】 特開平04−255707(JP,A)
【文献】 特開2000−026698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00−101/16
C08F297/00−297/04
C08J5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体を含有し、下記(A)〜(E)を満たすことを特徴とし、
(A)共役ジエンの含有比率が、ブロック共重合体全体に対して22質量%〜35質量%である。
(B)ビニル芳香族炭化水素のブロック率が98質量%〜100質量%である。
(C)示差屈折率法でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で得られるMw/Mnが1.3〜3.5である(但し、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)。
(D)示差屈折率法でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で得られるクロマトグラムにて、高分子量成分の面積比が全体の30%〜55%である。
(E)動的粘弾性測定で得られる損失正接(tanδ)が−100℃〜−60℃の温度範囲に一つの極大値(tanδ(max)値)を有し、極大値の温度(tanδピーク温度)より30℃高温のときのtanδ値(tanδ(max+30℃)値)が、極大値の温度におけるtanδ値(tanδ(max)値)に対して0.6以上である。
前記ブロック共重合体が、下記一般式(I)又は(II)で表されるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック構造のいずれか1つ又は両方を含有し、
S−(B−S)n−B−S (I)
(S−(B−S)n−B−S)m−X (II)
(式中、Sはビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエンを単量体単位とする重合体ブロックである。mはカップリング剤残基と結合した高分子鎖の個数を表す1以上の整数であり、nは繰り返し単位の個数を表す1以上の整数である。Xはカップリング剤の残基を表す。)
前記ブロック共重合体が、下記一般式(i)〜(iii)で表されるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック構造を全て含有する、樹脂組成物。
S1−S2−S3−(B−S)n−B−S4 (i)
S2−S3−(B−S)n−B−S4 (ii)
S3−(B−S)n−B−S4 (iii)
(式中、S、S1、S2、S3、S4はビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエンを単量体単位とする重合体ブロックである。nは繰り返し単位の個数を表す1以上の整数である。)
【請求項2】
前記ビニル芳香族炭化水素がスチレンであり、共役ジエンが1,3−ブタジエンである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物と、それ以外の熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物と、それ以外の熱可塑性樹脂との含有比率(質量比)が、10/90〜80/20である、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記それ以外の熱可塑性樹脂が、ポリスチレン系重合体である、請求項又はに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の樹脂組成物を成形した成形体。
【請求項7】
シート、フィルムもしくは射出成形品である、請求項に記載の成形体。
【請求項8】
請求項又はに記載の成形体を二次加工した成形体。
【請求項9】
容器、延伸シートもしくは延伸フィルムである、請求項8に記載の成形体。
【請求項10】
請求項9に記載の延伸シートもしくは延伸フィルムを三次加工した成形体。
【請求項11】
容器である、請求項10に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体を含有する樹脂組成物に関する。更に詳しくは、優れた耐衝撃性を有するシートやフィルムなどの成形体が得られる、ブロック共重合体含有樹脂組成物そのものとしても、各種熱可塑性樹脂との配合用としても有用であるブロック共重合体を含有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなり、ビニル芳香族炭化水素の含有量が比較的高いブロック共重合体を含有する樹脂組成物、とりわけ、スチレンとブタジエンとのブロック共重合体、及び該ブロック共重合体をスチレン系重合体(GPPS)に配合した樹脂組成物は、その成形体が優れた耐衝撃性等の特性を有することから、射出成形用途や、シート、フィルム等の押出成形用途等に幅広く使用されている。そして、これらのブロック共重合体を含有する樹脂組成物は、耐衝撃性等における更なる特性の向上を目指して種々の提案がなされている。
【特許文献1】特開昭52−78260号公報
【特許文献2】特公平2−59164号公報
【特許文献3】特開昭53−286号公報
【特許文献4】特開平7−173232号公報
【特許文献5】特開平5−306313号公報
【特許文献6】特開平7−228646号公報
【特許文献7】特開平4−261458号公報
【特許文献8】特開平11−255851号公報
【特許文献9】特開2004−346259号公報
【特許文献10】国際公開第2004/085504号
【発明の概要】
【0003】
本発明は、耐折強度、引張弾性率、シートインパクトなどの他の特性を低下させずに、特に、高い耐衝撃性を達成可能なシート、フィルム等の成形体を得ることができる、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体を含有する樹脂組成物、及び該樹脂組成物と熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0004】
本発明者らは、上記の課題を達成するべく種々の研究を行った結果、(A)共役ジエンの含有比率、(B)ビニル芳香族炭化水素のブロック率、(C)示差屈折率法でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で得られるMw/Mn、及び(D)ゲルパーミエーションクロマトグラムの高分子量成分の面積比が、それぞれ特定の範囲を有し、かつ(E)動的粘弾性測定で得られる損失正接(tanδ)が−100〜−60℃の温度範囲に一つの極大値(tanδ(max)値)を有し、極大値の温度(tanδピーク温度)より30℃高温のときのtanδ値(tanδ(max+30℃)値)が、極大値の温度におけるtanδ値(tanδ(max)値)に対して特定の範囲の比率を有する、すなわち、(tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値)が0.6以上である樹脂組成物により、上記の課題が達成し得ることを見出し、本発明に至った。
【0005】
特に、本発明のブロック共重合体を含有する樹脂組成物における、上記(E)の動的粘弾性の要件である、0.6以上という範囲は、後記するように、本発明の課題の達成の大きい原因になっているものである。
【0006】
かくして、本発明は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体を含有し、下記(A)〜(E)を満たすことを特徴とする樹脂組成物にある。
(A)共役ジエンの含有比率がブロック共重合体全体に対して22質量%〜35質量%である。
(B)ビニル芳香族炭化水素のブロック率が98質量%〜100質量%である。
(C)示差屈折率法でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で得られるMw/Mnが1.3〜3.5である(但し、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)。
(D)示差屈折率法でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で得られるクロマトグラムにて、高分子量成分の面積比が全体の30%〜55%である。
(E)動的粘弾性測定で得られる損失正接(tanδ)が−100℃〜−60℃の温度範囲に一つの極大値(tanδ(max)値)を有し、極大値の温度(tanδピーク温度)より30℃高温のときのtanδ値(tanδ(max+30℃)値)が、極大値の温度におけるtanδ値(tanδ(max)値)に対して0.6以上である。
【0007】
本発明のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体樹脂組成物、又は該樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を用いることにより、引張弾性率などの他の特性を低下させることなく、高い耐衝撃性を有する、例えば、シート、フィルム等の押出成形や射出成形体を得ることができる。
【0008】
本発明により何故に上記のような効果が得られるかについては必ずしも明らかではない。しかし、後記する実施例と比較例との対比からわかるように、樹脂組成物が、上記(A)〜(E)の要件、特に、上記(E)の動的粘弾性に関する要件を満たすことにより達成されるものと思われる。
【0009】
すなわち、本発明のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体において、上記(E)の要件である、tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値を0.6以上にするためには、ソフトセグメントブロックとハードセグメントブロックを繰り返すことが必要である。ポリマー設計上、各両者のブロックは明瞭に区別されるものの、ソフトセグメントブロックに挟まれたハードセグメントブロックは、ソフトセグメントブロックに取り込まれ、見かけ上ソフトセグメントとして機能すると考えられる。これにより、ブロック共重合体中のソフトセグメントブロックの割合を減らすことなく、共役ジエンの含有比率(質量)を減らすことができ、剛性が向上するものと考えられる。また、ソフトセグメントブロックのみの場合と比較して、低温側のTg(tanδピーク温度)がほとんど変化しないため、見かけ上取り込まれたハードセグメントブロックがソフトセグメントの機能を阻害せずに良好な耐衝撃性が得られるものと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(樹脂組成物)
本発明のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体を含有する樹脂組成物(以下、単に、「樹脂組成物」又は「本発明の樹脂組成物」ともいう。)は、上記(A)〜(E)の要件を満たすことが必要である。ここで使用されるビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。なかでも、スチレンが好ましい。ビニル芳香族炭化水素は、1種のみならず2種以上用いてもよい。
【0011】
また、共役ジエンとしては、1,3‐ブタジエン,2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。なかでも、好ましくは1,3−ブタジエン又はイソプレンが好ましい。共役ジエンは、1種のみならず2種以上用いてもよい。
【0012】
本発明のブロック共重合体を含有する樹脂組成物は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体からなる。ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体は、単独でも2種類以上の混合物でも良く、効果を妨げない範囲で、添加剤や他の樹脂を併用しても良い。
【0013】
本発明のブロック共重合体は、ビニル芳香族炭化水素からなるブロックと、共役ジエンからなるブロックを任意に組み合わせた構造が好ましい。
【0014】
樹脂組成物は、(A)ブロック共重合体中の共役ジエンの含有比率が22質量%〜35質量%であることが必要である。共役ジエンの含有比率が22質量%未満では樹脂組成物の衝撃強度が低下するため好ましくない。一方、共役ジエンの含有比率が35質量%を超える場合には、剛性が低下するため好ましくない。なかでも、共役ジエンの含有比率は、好ましくは23質量%〜32質量%、さらに好ましくは24質量%〜31質量%である。
【0015】
樹脂組成物は、(B)樹脂組成物中に含まれるビニル芳香族炭化水素のブロック率が、98〜100質量%であることが必要である。ここにおける、ビニル芳香族炭化水素のブロック率(質量%)は次のようにして求めたものをいう。
ビニル芳香族炭化水素のブロック率
=(共重合体中にブロック状ホモ重合セグメントとして存在しているビニル芳香族炭化水素の量/共重合体中に含有されているビニル芳香族炭化水素の量)×100
【0016】
本発明において、樹脂組成物中のビニル芳香族炭化水素のブロック率が98%未満では、衝撃強度が低下するため好ましくない。なかでも、ブロック率は、99〜100質量%であることが好ましい。なお、本発明において、上記のブロック率について、上限は100質量%であり、これを超えることはない。
【0017】
樹脂組成物は、(C)示差屈折率法でのGPC測定で得られる分子量分布、すなわち質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が、1.3〜3.5であることが必要である。Mw/Mnが1.3未満では衝撃強度が低下するため好ましくない。一方、Mw/Mnが3.5を超えると剛性が低下するため好ましくない。なかでも、Mw/Mnは、1.3〜3.0であることが好ましく、1.4〜2.5であることがさらに好ましい。
【0018】
樹脂組成物は、(D)示差屈折率法でのGPC測定で得られるクロマトグラムにて、高分子量成分の面積比が全体の30%〜55%であることが必要である。高分子量成分の面積比が30%未満では剛性が低下するため好ましくない。一方、55%を超えると耐衝撃性が低下するため好ましくない。なかでも、高分子量成分の面積比は、30〜54%であることが好ましく、30〜44%であることがさらに好ましい。
【0019】
上記(D)において高分子量成分の面積比とは、GPC測定で得られるクロマトグラムにおいて、全ピーク面積に対する面積比が10%以上の範囲にあるピークの中で、ピークトップ分子量Mpが最大の値を有するピークを特定し、そのピーク面積について、全ピーク面積に対する割合を求めた物である。
【0020】
更に、樹脂組成物は、(E)動的粘弾性測定で得られる損失正接(tanδ)が−100℃〜−60℃の温度範囲に一つの極大値(tanδ(max)値)を有し、極大値の温度(tanδピーク温度)より30℃高温のときのtanδ値(tanδ(max+30℃)値)が、上記極大値の温度におけるtanδ値(tanδ(max)値)に対して0.6以上の比率、すなわち、(tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値)が0.6以上であることが必要である。
【0021】
特に、本発明では、上記の(tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値)は、好ましくは0.65以上、さらに好ましくは0.75以上にせしめることにより、得られる成形体の耐衝撃性と剛性を他の特性を損なうことなく、バランス良く増大せしめることができる。なお、本発明において、上記の(tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値)について上限はなく、大きい方が好ましいが、通常は1未満である。
【0022】
樹脂組成物は、上記(A)〜(E)の要件を満たす、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体であり、分子量の異なる少なくとも2種以上のブロック共重合体を含有することが好ましく、3種以上であることがより好ましい。かかるブロック共重合体の化学構造は、好ましくは、下記一般式(I)及び/又は(II)で表され、分子量の異なる少なくとも2種のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体を含有することが好ましく、3種以上であることがより好ましい。
S−(B−S)n−B−S (I)
(S−(B−S)n−B−S)m−X (II)
【0023】
上記一般式(I)、(II)において、Sはビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエンを単量体単位とする重合体ブロックである。mはカップリング剤残基と結合した高分子鎖の個数を表す。mは1以上の整数であり、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜5である。nは繰り返し単位の個数を表し、1以上の整数である。重合操作の簡便性から、nは1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。Xはカップリング剤の残基を表す。ブロック共重合体がこのような化学構造を有することにより、本発明の樹脂組成物で得られる耐衝撃性及び剛性等の物性バランスが優れるようになる。
【0024】
上記一般式(I)で表されるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック構造を有するブロック共重合体、及び/又は、(II)で表されるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック構造を有するブロック共重合体は、後述する様なアニオン重合で得ることができる。
【0025】
上記一般式(I)、(II)において、Bに挟まれたSの分子量に特に制限はないが、好ましくは600以上、より好ましくは600〜20,000である。分子量が600以下であると、ブロック率測定時にポリブタジエンブロックと区別することができなくなり、ブロック率測定結果に影響を及ぼす可能性が考えられる。つまりBとSの境界は明瞭に区別されなければならず、Bに挟まれたSの重合度は6以上が好ましいと考えられる。また20,000を超えると、一般的なポリスチレンの絡み合い点間分子量(Me)を超えることから、ソフトセグメントブロックBに挟まれたハードセグメントブロックSがソフトセグメントブロックBに取り込まれず、Bに挟まれたSを見かけ上、ソフトセグメントブロックとみなすことができなくなり、衝撃強度などの物性が発現しなくなる可能性が挙げられる。
【0026】
本発明では、一般式(I)で表されるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック構造を有するブロック共重合体、及び/又は、(II)で表されるブロック構造を有するブロック共重合体が、下記一般式(i)〜(iii)で表されるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック構造を全て含有する樹脂組成物であることが好ましい。即ち一般式(I)で表されるブロック共重合体、及び/又は、(II)で表されるブロック共重合体において、末端のポリスチレンブロックSが、S1−S2−S3、S2−S3、およびS3と、異なるブロック鎖長であるブロックポリマーを含む樹脂組成物である事が好ましい。
S1−S2−S3−(B−S)n−B−S4 (i)
S2−S3−(B−S)n−B−S4 (ii)
S3−(B−S)n−B−S4 (iii)
【0027】
上記一般式(i)〜(iii)で表されるブロック構造を全て含有するブロック共重合体は、例えば、一連のアニオン重合反応において、重合開始剤を複数回に分けて添加する等によって得ることができる。重合開始剤を途中で添加した後にモノマーを添加すると、それまでに重合されたポリマー鎖の末端だけでなく、途中で添加した重合開始剤からも、新たなポリマー鎖が合成される。そのため、重合開始剤を添加しさらにモノマーを添加するごとに、異なるブロック鎖であるブロック構造が形成される。例えば、重合中に重合開始剤(例えば、ブチルリチウム等)を3回添加することで、上記一般式(i)〜(iii)で表されるブロック構造を全て含有するブロック共重合体を得ることができる。
【0028】
また、上記一般式(i)〜(iii)で表されるブロック構造を全て含有するブロック共重合体は、一般式(i)〜(iii)のブロック構造をそれぞれ有するブロック共重合体を別々に重合した後、それらを配合して得ることもできる。
【0029】
上記一般式(i)〜(iii)において、S、S1、S2、S3、S4はビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエンを単量体単位とする重合体ブロックである。nは繰り返し単位の個数を表し、1以上の整数である。重合操作の簡便性から、nは1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。ブロック共重合体がこのような化学構造を有することにより、本発明の樹脂組成物で得られる耐衝撃性及び剛性等の物性バランスが優れるようになる。
【0030】
上記一般式(i)〜(iii)の重合時、全使用モノマーがポリマーへ転化後、すなわち上記一般式(i)〜(iii)のS4ブロック作製後、リビング活性末端を水やアルコール等で失活させる前にカップリング剤を添加し、活性末端をカップリングさせた樹脂組成物とすることが好ましい。
これにより、本発明の樹脂組成物で得られる耐衝撃性及び剛性等の物性バランスに影響を及ぼすことはない。
【0031】
(ブロック共重合体の製造方法)
次に、本発明のブロック共重合体の製造について説明する。ブロック共重合体は、有機溶媒中、有機リチウム化合物を重合開始剤としてビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンのモノマーをアニオン重合することにより製造できる。有機溶媒は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、又はエチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素などが使用できる。ブロック共重合体の溶解性の点で、シクロヘキサンが好ましい。
【0032】
有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのような単官能有機リチウム化合物、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムのような多官能有機リチウム化合物等が使用できる。
【0033】
本発明に用いられるビニル芳香族炭化水素および共役ジエンは、前記したものを使用することができ、それぞれ1種又は2種以上を選んで重合に用いることができる。そして、前記の有機リチウム化合物を重合開始剤とするリビングアニオン重合において、重合反応に供したビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンは、ほぼ全量が重合体に転化する。
【0034】
本発明におけるブロック共重合体の分子量は、モノマーの全添加量に対する重合開始剤の添加量により制御できる。ビニル芳香族炭化水素のブロック率は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを重合し、ブロック共重合体を作製する際のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの供給速度やランダム化剤の添加量により制御できる。
【0035】
ランダム化剤は、反応中でルイス塩基として作用する化合物であり、アミン類やエーテル類、チオエーテル類、およびホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸塩、その他にカリウムまたはナトリウムのアルコキシドなどが使用可能である。アミン類としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;環状第三級アミンなどが挙げられる。エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられる。その他に、トリフェニルフォスフィン;ヘキサメチルホスホルアミド;アルキルベンゼンスルホン酸カリウムまたはナトリウム;カリウム、ナトリウム等のブトキシド;などを挙げることができる。好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)である。
【0036】
ランダム化剤は、1種、または複数の種類を使用することができる。その添加濃度としては、原料とするモノマー100質量部あたり0.001質量部〜10質量部とすることが好ましい。添加時期は、重合反応の開始前でも良いし、共重合鎖の重合前でも良い。また必要に応じて追加添加することもできる。
【0037】
全モノマーを添加し、反応が完結した後、リビング活性末端を失活させる前に、カップリング剤を添加しカップリングを実施してもよい。ここでカップリングとは、ポリマー鎖の片末端に位置するリビング活性部位とカップリング剤分子中の反応部位との間に共有結合が生じ、それにより2本以上のポリマー鎖同士が1つのカップリング剤分子を介して結合することをいう。またカップリング剤は、リビング活性部位が攻撃しうる反応部位を1分子当たり2個以上有する化合物である。
【0038】
カップリング剤は、限定されないが、ジメチルジクロロシラン、四塩化ケイ素や1,2−ビス(メチルジクロロシリル)エタン等のクロロシラン系化合物;ジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシランやテトラフェノキシシラン等のアルコキシシラン系化合物;四塩化スズ;ポリハロゲン化炭化水素;カルボン酸エステル;ポリビニル化合物;エポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化油脂;などが挙げられる。好ましくは、エポキシ化油脂、さらに好ましくはエポキシ化大豆油が挙げられる。
【0039】
1分子当たり2個の反応部位を有する二官能性カップリング剤としては、ジメチルジクロロシランやジメチルジメトキシシラン等が挙げられる。1分子当たり3個の反応部位を有する三官能性カップリング剤としては、メチルトリクロロシランやメチルトリメトキシシラン等が挙げられる。1分子当たり4個の反応部位を有する四官能性カップリング剤としては、テトラクロロシランやテトラメトキシシランおよびテトラフェノキシシラン等がある。また、エポキシ化油脂には、1分子当たり3個のエステル基を有する他、3個の長鎖アルキル基側には長鎖アルキル基1個あたり0〜3個のエポキシ基を有することから、多官能性のカップリング剤となる。
【0040】
カップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上の多官能性カップリング剤を併用してもよい。また1種以上の二官能性カップリング剤と1種以上の多官能性カップリング剤との併用も可能である。好ましくは、多官能性カップリング剤を1種単独で用いるのがよい。
【0041】
また、カップリング剤におけるリビング活性部位が攻撃しうる反応部位は、必ずしも完全に反応する必要はなく、一部は反応せずに残ってもよい。さらに全てのリビング活性部位を片末端に持つポリマー鎖がカップリング剤の反応部位と全て反応している必要はなく、反応せずに残ったポリマー鎖が最終的に生成したブロック共重合体に残ってもよい。そして、使用したカップリング剤の反応部位が完全に反応した際に見込まれる分岐数よりも、少ない分岐数を有するブロック共重合体が、最終的に生成したブロック共重合体に混在していても構わないし、リビング活性部位にカップリング剤が置き換わっただけの、片末端にカップリング剤のみが結合したポリマー鎖が最終生成ブロック共重合体に混在していても構わない。むしろ最終生成ブロック共重合体が、使用したカップリング剤の反応サイトが完全に反応した際に見込まれる分岐数に等しい分岐数を持つブロック共重合体、使用したカップリング剤の反応サイトが完全に反応した際に見込まれる分岐数よりも少ない分岐数を有するブロック共重合体、リビング活性部位にカップリング剤が置き換わって結合しただけのポリマー鎖、及びカップリング剤の反応サイトと反応せずに残ったポリマー鎖のいずれか2種以上が混在したものであるほうが、良好な成形加工性を得る点で好ましい。
【0042】
カップリング剤の添加量は、任意でよいが、好ましくは、リビング活性末端に対してカップリング剤の反応部位が化学量論量以上で存在するように設定する。具体的には、カップリング工程前の重合液中に存在するリビング活性末端のモル数に対して1〜2当量の反応部位が存在するようにカップリング剤の添加量を設定するのが好ましい。
【0043】
このようにして得られたブロック共重合体は、水、アルコール、二酸化炭素などの重合停止剤をリビング活性末端が不活性化するのに充分な量を添加することで不活性化できる。得られたブロック共重合体の有機溶媒溶液より共重合体を回収する方法としては、メタノール等の貧溶媒により析出させる方法、加熱ロール等により溶媒を蒸発させて析出させる方法(ドラムドライヤー法)、濃縮器により溶液を濃縮した後にベント式押出機で溶媒を除去する方法、溶液を水に分散させ、水蒸気を吹き込んで溶媒を加熱除去して共重合体を回収する方法(スチームストリッピング法)等、任意の方法が採用できる。
【0044】
(配合樹脂組成物)
上記樹脂組成物は、他の熱可塑性樹脂と配合した樹脂組成物の形態で使用することができる。かかる熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系重合体、ポリフェニレンエーテル系重合体、ポリエチレン系重合体、ポリプロピレン系重合体、ポリブテン系重合体、ポリ塩化ビニル系重合体、ポリ酢酸ビニル系重合体、ポリアミド系重合体、熱可塑性ポリエステル系重合体、ポリアクリレート系重合体、ポリフェノキシ系重合体、ポリフェニレンスルフィド系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアセタール系重合体、ポリブタジエン系重合体、熱可塑性ポリウレタン系重合体、ポリスルフィン系重合体等が挙げられる。好ましい熱可塑性樹脂はポリスチレン系重合体であり、汎用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、メタクリル酸−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などが例示できるが、とりわけ、汎用ポリスチレン(GPPS)が好適である。
【0045】
汎用ポリスチレン(GPPS)に規定はないが、好ましくは、重量平均分子量Mwが180,000〜400,000であり、ホワイトオイルなどの流動パラフィン添加量が0〜4質量%である。
【0046】
本発明の樹脂組成物と熱可塑性樹脂との配合質量比は、ブロック共重合体樹脂組成物/熱可塑性樹脂=10/90〜80/20が好ましく、20/80〜80/20がより好ましく、さらに30/70〜70/30が好ましく、60/40〜40/60が特に好ましい。上記ブロック共重合体組成物の配合質量比が10未満の場合には、樹脂組成物の衝撃強度が低下するため好ましくなく、80を超える場合には、樹脂組成物の剛性が低下するため好ましくない。
【0047】
上記樹脂組成物、又は、該樹脂組成物と熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物には、必要に応じて、さらに各種の添加剤を配合できる。すなわち、樹脂組成物が各種の加熱処理を受ける場合や、その成形品などが酸化性雰囲気や紫外線などの照射下にて使用され、物性が劣化することに対処するため、或いは、使用目的に適した物性をさらに付与するため、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、耐候性向上剤、軟化剤、可塑剤、顔料、鉱油、フィラー、難燃剤などの添加剤を添加できる。
【0048】
安定剤としては、例えば2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートや、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどのフェノール系酸化防止剤、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルフォスファイト、トリスノニルフェニルフォスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ‐フォスファイトなどのリン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0049】
また、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの飽和脂肪酸、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸オクチルなどの脂肪酸エステル;ペンタエリスリトール脂肪酸エステル;さらにエルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドなどの脂肪酸アミド;、エチレンビスステアリン酸アミド;グリセリン−モノ−脂肪酸エステル;グリセリン−ジ−脂肪酸エステル;その他に、ソルビタン−モノ−パルミチン酸エステル、ソルビタン−モノ−ステアリン酸エステルなどのソルビタン脂肪酸エステル;ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどに代表される高級アルコール:耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)などが挙げられる。
【0050】
さらに耐候性向上剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエートなどのサリシレート系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;また、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどのヒンダードアミン型耐候性向上剤;が例として挙げられる。さらに、ホワイトオイルやミネラルオイルなどの流動パラフィン、シリコーンオイル、マイクロクリスタリンワックスなども加えることができる。これらの添加剤は樹脂組成物中、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは0〜3質量%の範囲で使用することが望ましい。
【0051】
この樹脂組成物を得る場合における各成分の混合方法は特に制限はないが、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、Vブレンダー等でドライブレンドしてもよく、更に押出機で溶融してペレット化してもよい。あるいは、各重合体の製造時、重合開始前、重合反応途中、重合体の後処理等の段階で、添加してもよい。
【0052】
(成形体)
上記した樹脂組成物は、従来既知の任意の成形加工方法、例えば、押出成形、射出成形、中空成形などによってシート、フィルムを含む各種形状の押出し成形品、射出成形品、中空成形品、圧空成形品、真空成形品、2軸延伸成形品等極めて多種多様にわたる実用上有用な製品に容易に成形加工できる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0054】
<重合例1>
以下の(1)〜(15)の操作により、スチレンと1,3−ブタジエンのブロック共重合体樹脂組成物を製造した。
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、テトラヒドロフラン(THF)75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液780mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン74.8kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は54℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液790mLを加え60℃に保った。
(5)スチレン15.2kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は64℃まで上昇した。
(6)スチレンが完全に消費された後、重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1,580mLを加え、60℃に保った。
(7)スチレン26.5kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は71℃まで上昇した。
(8)スチレンが完全に消費された後、1,3−ブタジエン14.7kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は83℃まで上昇した。
(9)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に下げ、6.5kgのスチレンを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は82℃まで上昇した。
(10)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を75℃に下げ、1,3−ブタジエン14.6kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は84℃まで上昇した。
(11)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に下げ、6.5kgのスチレンを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は81℃まで上昇した。
(12)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を75℃に下げ、1,3−ブタジエン14.7kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は85℃まで上昇した。
(13)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を70℃に下げ、26.5kgのスチレンを一括添加し、重合を完結させた。
(14)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、ポリブタジエンブロックを持つS−(B−S)−B−S構造の重合体を含む重合液を得た。(上記一般式中、Sはポリスチレンブロックを表し、Bはポリブタジエンブロックを表す。)
(15)この重合液を脱揮して、重合例1のブロック共重合体樹脂組成物を得た。ピークトップ分子量(Mp)は399,000/58,000/45,000であり、面積比は36.2/22.4/41.4(%)であり、Mw/Mnは2.50であった。共役ジエン含有質量比は22.0%であり、ビニル芳香族炭化水素のブロック率は100%であった。tanδピーク温度は−78℃であり、tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値は0.84であった。
上記重合例1について、その要点を表1にまとめて示す。
【0055】
<重合例2〜14>
上記重合例1において、上記(3)、(5)、(7)〜(13)で使用するモノマーの量を調整することでブロック共重合体の組成を決定することができ、上記(2)、(4)、(6)で使用するn−ブチルリチウムの量を調整することで分子量を決定することができる。従って、下記の表1に示した条件以外は、重合例1と同様に実施することにより、重合例2〜14のブロック共重合体樹脂組成物を得た。上記重合例2〜14について、その要点を表1にまとめて示す。
【0056】
<重合例15>
以下の(1)〜(13)の操作により、スチレンと1,3−ブタジエンのブロック共重合体樹脂組成物を製造した。
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、THF75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液780mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン70.8kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は52℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液790mLを加え、60℃に保った。
(5)スチレン15.2kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は64℃まで上昇した。
(6)スチレンが完全に消費された後、重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1,580mLを加え、60℃に保った。
(7)スチレン26.5kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は72℃まで上昇した。
(8)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を65℃に下げ、1,3−ブタジエン16.0kgとスチレン4.3kgを同時に添加した。内温は79℃まで上昇した。
(9)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を65℃に下げ、1,3−ブタジエン16.0kgとスチレン4.4kgを同時に添加した。内温は81℃まで上昇した。
(10)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を65℃に下げ、1,3−ブタジエン16.0kgとスチレン4.3kgを同時に添加した。内温は81℃まで上昇した。
(11)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を75℃に下げ、26.5kgのスチレンを一括添加し、重合を完結させた。
(12)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、スチレンとブタジエンのテーパードブロックを持つS−T−T−T−S構造の重合体を含む重合液を得た。(上記一般式中、Sはポリスチレンブロックを表し、Tはスチレンとブタジエンのテーパードブロックを表す。)
(13)この重合液を脱揮して、重合例15のブロック共重合体樹脂組成物を得た。ピークトップ分子量(Mp)は260,000/89,000/77,000であり、面積比は35.3/22.9/41.8(%)であり、Mw/Mnは1.38であった。共役ジエン含有質量比は24.0%であり、ビニル芳香族炭化水素のブロック率は89%であった。tanδピーク温度は−52℃であり、tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値は0.47であった。
上記重合例15について、その要点を表2にまとめて示す。
【0057】
<重合例16>
以下の(1)〜(16)の操作により、スチレンと1,3−ブタジエンのブロック共重合体樹脂組成物を製造した。
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、テトラヒドロフラン(THF)75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1,450mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン70.8kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は53℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液790mLを加え、60℃に保った。
(5)スチレン15.2kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は64℃まで上昇した。
(6)スチレンが完全に消費された後、重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1,580mLを加え、60℃に保った。
(7)スチレン26.5kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は70℃まで上昇した。
(8)スチレンが完全に消費された後、1,3−ブタジエン16.0kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は82℃まで上昇した。
(9)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に下げ、6.5kgのスチレンを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は82℃まで上昇した。
(10)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を75℃に下げ、1,3−ブタジエン16.0kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は85℃まで上昇した。
(11)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に下げ、6.5kgのスチレンを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は82℃まで上昇した。
(12)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を75℃に下げ、1,3−ブタジエン16.0kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は85℃まで上昇した。
(13)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を70℃に下げ、26.5kgのスチレンを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は82℃まで上昇した。
(14)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を75℃に下げ、カップリング剤として452gのエポキシ化大豆油を3.0kgのシクロヘキサンで希釈して添加し、重合を完結させた。
(15)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、ポリブタジエンブロックを持つ重合体をカップリングした(S−(B−S)−B−S)m−X構造の重合体を含む重合液を得た。(上記一般式中、Sはポリスチレンブロックを表し、Bはポリブタジエンブロックを表し、Xはカップリング剤の残基を表す。)
(16)この重合液を脱揮して、重合例16のブロック共重合体樹脂組成物を得た。カップリング前のピークトップ分子量(Mp)は160,000/51,000/41,000であり、面積比は42.5/19.5/38.0(%)であり、カップリング後のMw/Mnは1.67であった。共役ジエン含有質量比は24.0%であり、ビニル芳香族炭化水素のブロック率は100%であった。tanδピーク温度は−75℃であり、tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値は0.82であった。上記重合例16について、その要点を表3にまとめて示す。
【0058】
<重合例17>
以下の(1)〜(12)の操作により、スチレンと1,3−ブタジエンのブロック共重合体を製造した。
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、テトラヒドロフラン(THF)75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液760mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン5.0kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。
(4)スチレンが完全に消費された後、1,3−ブタジエン3.0kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は82℃まで上昇した。
(5)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に下げ、1.2kgのスチレンを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は81℃まで上昇した。
(6)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に下げ、1,3−ブタジエン3.0kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は82℃まで上昇した。
(7)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に下げ、1.2kgのスチレンを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は81℃まで上昇した。
(8)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に下げ、1,3−ブタジエン3.0kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は82℃まで上昇した。
(9)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を50℃に下げ、91.8kgのスチレンを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は89℃まで上昇した。
(10)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を55℃に下げ、91.8kgのスチレンを一括添加し、重合を完結させた。
(11)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、ポリブタジエンブロックを持つS−(B−S)−B−S構造の重合体を含む重合液を得た。(上記一般式中、Sはポリスチレンブロックを表し、Bはポリブタジエンブロックを表す。)
(12)この重合液を脱揮して、重合例17のブロック共重合体を得た。ピークトップ分子量(Mp)は386,000であり、Mw/Mnは1.10であった。上記重合例17について、その要点を表4にまとめて示す。
【0059】
<重合例18、19>
上記重合例17において、上記(3)〜(10)で使用するモノマーの量を調整することでブロック共重合体の組成を決定することができ、上記(2)で使用するn−ブチルリチウムの量を調整することで分子量を決定することができる。従って、下記の表4に示した条件以外は、重合例17と同様に実施することにより、重合例18、19のブロック共重合体を得た。
上記重合例18、19について、その要点を表4にまとめて示す。
【0060】
<重合例20>
以下の(1)〜(15)の操作により、スチレンと1,3−ブタジエンのブロック共重合体樹脂組成物を製造した。
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、THF75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液890mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン33.8kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は45℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液520mLを加え、60℃に保った。
(5)スチレン15.2kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は64℃まで上昇した。
(6)スチレンが完全に消費された後、重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液890mLを加え、60℃に保った。
(7)スチレン26.5kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は71℃まで上昇した。
(8)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に保ちながら、総量4.1kgのスチレン、および総量16.6kgの1,3−ブタジエンを、それぞれ25kg/h、100kg/hの一定添加速度で両者を同時に添加した。
(9)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に保ちながら、18.0kgのスチレンを加え、スチレンをアニオン重合させた。
(10)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に保ちながら、総量4.1kgのスチレン、および総量16.5kgの1,3−ブタジエンを、それぞれ25kg/h、100kg/hの一定添加速度で両者を同時に添加した。
(11)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に保ちながら、18.0kgのスチレンを加え、スチレンをアニオン重合させた。
(12)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に保ちながら、総量4.1kgのスチレン、および総量16.6kgの1,3−ブタジエンを、それぞれ25kg/h、100kg/hの一定添加速度で両者を同時に添加した。
(13)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を75℃に下げ、26.5kgのスチレンを一括添加し、重合を完結させた。
(14)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、スチレンとブタジエンのランダムブロックを持つS−(R−S)−R−S構造の重合体を含む重合液を得た。(上記一般式中、Sはポリスチレンブロックを表し、Rはスチレンとブタジエンのランダムブロックを表す。)
(15)この重合液を脱揮して、重合例20のブロック共重合体樹脂組成物を得た。ピークトップ分子量(Mp)は191,000/123,000/107,000であり、面積比は32.6/20.8/46.6(%)であり、Mw/Mnは1.30であった。共役ジエン含有質量比は24.9%であり、ビニル芳香族炭化水素のブロック率は95%であった。tanδピーク温度は−65℃であり、tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値は0.74であった。上記重合例20について、その要点を表5にまとめて示す。
【0061】
<重合例21>
以下の(1)〜(11)の操作により、スチレンと1,3−ブタジエンのブロック共重合体樹脂組成物を製造した。
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、THF75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液780mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン70.8kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は52℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液790mLを加え、60℃に保った。
(5)スチレン15.2kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は64℃まで上昇した。
(6)スチレンが完全に消費された後、重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1,580mLを加え、60℃に保った。
(7)スチレン26.5kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は72℃まで上昇した。
(8)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に保ちながら、総量12.2kgのスチレン、および総量48.8kgの1,3−ブタジエンを、それぞれ25kg/h、100kg/hの一定添加速度で両者を同時に添加した。
(9)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を75℃に下げ、26.5kgのスチレンを一括添加し、重合を完結させた。
(10)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、スチレンとブタジエンのランダムブロックを持つS−R−S構造の重合体を含む重合液を得た。(上記一般式中、Sはポリスチレンブロックを表し、Rはスチレンとブタジエンのランダムブロックを表す。)
(11)この重合液を脱揮して、重合例21のブロック共重合体樹脂組成物を得た。ピークトップ分子量(Mp)は283,000/91,000/78,000であり、面積比は39.2/18.8/42.0(%)であり、Mw/Mnは1.52であった。共役ジエン含有質量比は24.4%であり、ビニル芳香族炭化水素のブロック率は95%であった。tanδピーク温度は−65℃であり、tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値は0.47であった。
上記重合例21について、その要点を表6にまとめて示す。
【0062】
<重合例22、23>
上記重合例21において、上記(3)、(5)、(7)〜(9)で使用するモノマーの量を調整することでブロック共重合体の組成を決定することができ、上記(2)、(4)、(6)で使用するn−ブチルリチウムの量を調整することで分子量を決定することができる。従って、下記の表6に示した条件以外は、重合例21と同様に実施することにより、重合例22、23のブロック共重合体樹脂組成物を得た。なお、重合例22、23はポリスチレンブロックとポリブタジエンブロックを持つS−B−S構造のブロック共重合体である。上記式中、Sはポリスチレンブロックを表し、Bはポリブタジエンブロックを表す。上記重合例22、23について、その要点を表6にまとめて示す。
【0063】
<重合例24>
以下の(1)〜(13)の操作により、スチレンと1,3−ブタジエンのブロック共重合体樹脂組成物を製造した。
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、テトラヒドロフラン(THF)75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液780mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン70.8kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は51℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液790mLを加え、60℃に保った。
(5)スチレン15.2kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は64℃まで上昇した。
(6)スチレンが完全に消費された後、重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1,580mLを加え、60℃に保った。
(7)スチレン26.5kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は71℃まで上昇した。
(8)スチレンが完全に消費された後、1,3−ブタジエン24.0kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は86℃まで上昇した。
(9)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に下げ、13.0kgのスチレンを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は85℃まで上昇した。
(10)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を75℃に下げ、1,3−ブタジエン24.0kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は88℃まで上昇した。
(11)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を70℃に下げ、26.5kgのスチレンを一括添加し、重合を完結させた。
(12)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、ポリブタジエンブロックを持つS−(B−S)−B−S構造の重合体を含む重合液を得た。(上記一般式中、Sはポリスチレンブロックを表し、Bはポリブタジエンブロックを表す。)
(13)この重合液を脱揮して、重合例24のブロック共重合体樹脂組成物を得た。ピークトップ分子量(Mp)は394,000/56,000/49,000であり、面積比は35.2/22.5/42.3(%)であり、Mw/Mnは2.16であった。共役ジエン含有質量比は24.0%であり、ビニル芳香族炭化水素のブロック率は100%であった。tanδピーク温度は−75℃であり、tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値は0.79であった。上記重合例24について、その要点を表7にまとめて示す。
【0064】
<重合例25>
以下の(1)〜(17)の操作により、スチレンと1,3−ブタジエンのブロック共重合体樹脂組成物を製造した。
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、テトラヒドロフラン(THF)75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液780mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン70.8kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は52℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液790mLを加え、60℃に保った。
(5)スチレン15.2kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は64℃まで上昇した。
(6)スチレンが完全に消費された後、重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1,580mLを加え、60℃に保った。
(7)スチレン26.5kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は71℃まで上昇した。
(8)スチレンが完全に消費された後、1,3−ブタジエン12.0kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は81℃まで上昇した。
(9)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に下げ、4.3kgのスチレンを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は81℃まで上昇した。
(10)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を75℃に下げ、1,3−ブタジエン12.0kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は83℃まで上昇した。
(11)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に下げ、4.4kgのスチレンを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は82℃まで上昇した。
(12)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を75℃に下げ、1,3−ブタジエン12.0kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は83℃まで上昇した。
(13)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に下げ、4.3kgのスチレンを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は82℃まで上昇した。
(14)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を75℃に下げ、1,3−ブタジエン12.0kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は82℃まで上昇した。
(15)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を75℃に下げ、26.5kgのスチレンを一括添加し、重合を完結させた。
(16)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、ポリブタジエンブロックを持つS−(B−S)−B−S構造の重合体を含む重合液を得た。(上記一般式中、Sはポリスチレンブロックを表し、Bはポリブタジエンブロックを表す。)
(17)この重合液を脱揮して、重合例25のブロック共重合体樹脂組成物を得た。ピークトップ分子量(Mp)は317,000/61,000/47,000であり、面積比は35.8/20.9/43.3(%)であり、Mw/Mnは2.08であった。共役ジエン含有質量比は24.0%であり、ビニル芳香族炭化水素のブロック率は100%であった。tanδピーク温度は−72℃であり、tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値は0.88であった。上記重合例25について、その要点を表8にまとめて示す。
【0065】
<配合例>
<配合例1>
重合例17〜19で得られたブロック共重合体を表9に示した配合比率(質量%)で混ぜ、ブロック共重合体樹脂組成物を製造した。かかるブロック共重合体樹脂組成物を、単軸押出機(田端機械工業社製、HV−40−30、φ40mm)を用い、押出温度200℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練し、ストランド状に押し出し、冷却後、ペレタイザーにてペレット化した。配合例1におけるブロック共重合体樹脂組成物の配合組成、ピークトップ分子量(Mp)、面積比、Mw/Mn、ブロック共重合体樹脂組成物の共役ジエン含有質量比、ビニル芳香族炭化水素のブロック率、tanδピーク温度およびtanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値を表9にまとめて示した。
【0066】
<分子量、分散度Mw/Mnの測定>
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いた。本発明では、特に断りが無い場合、分子量はピークトップ分子量Mpであり、カップリングを実施した場合はカップリング前のMpである。また、分散度は重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnであり、カップリングを実施した場合はカップリング後のMw/Mnである。
GPC装置名:東ソー社製「HLC−8220GPC」
使用カラム:昭和電工社製「ShodexGPCKF−404」を直列に4本接続、カラム温度:40℃、検出方法:示差屈折率法、移動相:テトラヒドロフラン、
サンプル濃度:2質量%
検量線:VARIAN社製標準ポリスチレン(ピークトップ分子量Mp=2,560,000、841,700、280,500、143,400、63,350、31,420、9,920、2,930)を用いて作成した。
【0067】
<樹脂組成物の共役ジエン含有比率(質量)>
上記重合例で使用した全モノマー量に対する1,3−ブタジエン量の使用割合および配合比から、ブロック共重合体樹脂組成物の共役ジエン含有比率をそれぞれ算出した。
【0068】
<樹脂組成物におけるスチレンのブロック率>
核磁気共鳴(NMR)を用いてH−NMRを測定し、算出した。ポリスチレンの芳香族環に付加したプロトン5つの内、オルト位に付加した2つのプロトンとして帰属される6.2〜6.8ppmのピーク強度積分値から、プロトン5つに換算した値をブロック状スチレン量Wとした。
また、パラ位とメタ位に付加した3つのプロトンとして帰属される6.8〜7.6ppmのピーク強度の積分値を含む、6.2〜7.6ppmのピーク強度の積分値から重クロロホルムのピーク強度の積分値を除算した値を全スチレン量(全ビニル芳香族炭化水素量)W0とした。
かかるW、W0を下記の定義式に代入することにより、ブロック率を算出した。なお、ブロック状スチレン量(ブロック状ビニル芳香族炭化水素量)Wは装置の感度上の理由から、5個以上のモノマー単位からなる連鎖である。
スチレンのブロック率(%)=(W/W0)×100
核磁気共鳴装置名:ブルカー・バイオスピン社製AVANCE−300
測定核種:H、共鳴周波数:300MHz(H)、測定溶媒:CDCl
【0069】
<tanδピーク温度及び(tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値)>
動的粘弾性測定(チャート)から求めた。測定から損失正接(tanδ)を求め、−100℃〜−60℃の温度範囲におけるtanδ極大値の内、最大値を「tanδ(max)値」とし、その温度を「tanδピーク温度」とした。次にtanδピーク温度から30℃高い温度でのtanδ値を「tanδ(max+30℃)値」とし、(tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値)を算出した。
【0070】
<動的粘弾性測定>
下記の装置を用い、被検サンプルに周波数1Hzの引っ張り方向の応力、および歪みを加え、4℃/分の割合で温度を上げながら、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)、及び損失正接(tanδ)を測定した(なおtanδ=E”/E’である)。動的粘弾性測定用の樹脂組成物のサンプルは、加熱プレスにより200℃〜220℃の条件下で2分間加圧保持して配向を緩和させた後、急冷する事で、無配向状態の0.6mm厚シートとした。その後、温度23℃、相対湿度50%RHに調整された室内にて24時間以上保管して使用した。
動的粘弾性測定装置:ティー・エイ・インスツルメント社製RSA3、
設定温度範囲:−120〜130℃、設定昇温速度:4℃/分、
測定周波数:1Hz
【0071】
重合例2、23より、ポリブタジエンブロックとポリスチレンブロックを繰り返すことにより、ブロック率、tanδピーク温度を変化させることなく、共役ジエン質量比を6.5%減量することができた。この際、tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値は0.6以上となることがわかった。
【0072】
一方、重合例2、21より、各々のブロック共重合体樹脂組成物の共役ジエン質量比を固定し、ポリブタジエンブロックとポリスチレンブロックを繰り返す場合(重合例2)と、繰り返しを行わず、ランダムブロックのスチレン/1,3−ブタジエン比を変更した場合(重合例21)とでは、ブロック率、tanδピーク温度、tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値が変化することがわかった。
【0073】
また重合例8、20より、ポリブタジエンブロックとポリスチレンブロックを繰り返す場合(重合例8)と、ランダムブロックとポリスチレンブロックを繰り返す場合(重合例20)とでは、ブロック率、tanδピーク温度は変化するものの、tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値はどちらも0.6以上となった。つまり、ソフトセグメントとハードセグメントの繰り返しにより、tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値は0.6以上になることがわかった。
【0074】
重合例2、15より、各々のブロック共重合体樹脂組成物の共役ジエン質量比を固定し、ポリブタジエンブロックとポリスチレンブロックを繰り返す場合(重合例2)と、テーパードブロックを繰り返す場合(重合例15)とでは、ブロック率、tanδピーク温度、tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値が変化することがわかった。
【0075】
<実施例1〜16および比較例1〜11>
・GPPSブレンドシートの作製
ブロック共重合体樹脂組成物とGPPSとを、表10、11に示した配合比率(質量%)で混ぜ、以下の手順でシート成形した。先端に幅40cmのTダイを取り付けた田辺プラスチックス社製φ40mm単軸押出機VS40−26を用い、押出温度200℃、Tダイ温度200℃、スクリュー回転数60rpmにて、配合例の樹脂を用いてシート押出を実施し、田辺プラスチックス社製480型シーティング装置を用い、冷却ロール温度50℃でシート厚0.6mmの単層シートを作製した。シートの厚みは、ダイのリップ開度で調整し、シートの引き取り速度は一定とした。使用した樹脂について表10、11に示す。GPPSは汎用ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製、トーヨースチロールGP G200C、ピークトップ分子量(Mp)286,000、Mw/Mn2.53)を使用した。
【0076】
<シートインパクト>
インパクトテスター(テスター産業社製)を用い、先端の直径が12.7mmの撃芯を使用して測定した。その他の測定条件は、ASTM D3420に準拠した。打ち抜けない場合は「>5.0」と記載した。
【0077】
<デュポン衝撃強度>
デュポン衝撃試験機(東洋精機製作所社製)を用い、シートから切り出した60mm四方の試験片20枚を、受け台の上に置き、先端の直径が6.35mmの撃芯を試験片上に乗せ、撃芯上端に100gの錘を落下させ、目視により、シートに生じた割れの有無を調べ、エネルギー値に換算して求めた。なお、本測定の前に別の予備試験片2〜3枚を用いて、シートが破壊するおおよその落錘高さを求め、1枚目は予備測定の結果から定めた落錘高さで測定し、2枚目以降は直前の測定結果を基に、シートが割れなかった場合は落錘高さを5cm上げ、割れた場合は落錘高さを5cm下げ、同様に測定した。この操作を連続して20回行い、各回での落錘高さと割れの有無の記録から、以下に示した式によりデュポン衝撃強度を求めた。割れが発生しない場合は「>0.90」と記載した。
X=(高さ×Aの枚数)の合計/Aの枚数(m) A:割れが生じないシート
Y=(高さ×Bの枚数)の合計/Bの枚数(m) B:割れが生じたシート
Z=(X+Y)/2(m)
デュポン衝撃強度(J)=0.1(kg)×9.8(m/s)×Z(m)
【0078】
<耐折強度>
MIT耐折疲労試験機(東洋精機製作所社製、MIT−DA)を用い、MD方向×TD方向=100mm×10mmおよび10mm×100mmに切削したサンプルをそれぞれ6回ずつ測定し、その平均値を使用した。測定は折り曲げ角度左右45°、折り曲げ回数175回/分、加重1kgで実施した。測定平均が1,000回を超えた場合、「>1000」と記載した。
【0079】
<引張弾性率>
テンシロン万能試験機(エー・アンド・デイ社製、RTC−1210A)を用い、シートからJISK6732に準拠したダンベル型試験片をMD方向が長手となるように切削し、初期チャック間隔50mm、引張速度10mm/min、23℃環境下でMD方向の引張弾性率(剛性)を測定した。
【0080】
実施例1、3及び比較例1、2より、樹脂組成物中の共役ジエン含有比率が22%未満では衝撃強度が低く、35%を超えると剛性が低下した。
【0081】
実施例2、比較例3、9、10より、樹脂組成物中のビニル芳香族炭化水素のブロック率が98%未満では衝撃強度が低下した。
【0082】
実施例4、5及び比較例4、5より、樹脂組成物中の分子量分布であるMw/Mnが1.3未満では衝撃強度が低く、3.5を超えると剛性が低下した。
【0083】
実施例6、7及び比較例6、7より、高分子量成分の面積比が30%未満では剛性が低く、55%を超えると衝撃強度が低下した。
【0084】
実施例2及び比較例9、10より、各々のブロック共重合体樹脂組成物の共役ジエン質量比を固定した場合、「tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値」が0.6未満では衝撃強度が低下した。実施例2及び比較例11より、各々のブロック共重合体樹脂組成物中のビニル芳香族炭化水素のブロック率を固定した場合、「tanδ(max+30℃)値/tanδ(max)値」が0.6未満では剛性が低下した。
【0085】
実施例2、9より、樹脂組成物中のブロック共重合体はカップリングの有無で物性に影響を与えない。実施例2、10より、樹脂組成物中のブロック共重合体は反応容器内で同時に重合した場合でも、別々に重合した後にブレンドした場合でも、物性に影響を与えない。
【0086】
実施例2、6及び比較例8、11より、樹脂組成物中のブロック共重合体のポリブタジエンブロックとポリスチレンブロックを繰り返すことにより、衝撃強度を損なわず、共役ジエン質量比を減量し、かつ剛性が向上した。ポリブタジエンブロックに挟まれたポリスチレンブロックが、見かけ上ポリブタジエンブロックに取り込まれ、ソフトセグメントとして機能し、かつ低温側のTg(tanδピーク温度)が変化しないため、ソフトセグメントとしての機能が阻害されない結果、耐衝撃性が向上したものと考えられる。
【0087】
実施例8及び比較例3より、樹脂組成物中のブロック共重合体のソフトセグメントとして、ポリブタジエンブロックとポリスチレンブロックを繰り返す場合とランダムブロックとポリスチレンブロックを繰り返す場合を比較すると、後者で衝撃強度が低下した。つまり、樹脂組成物中のブロック共重合体のソフトセグメントは、ポリブタジエンブロックでなければならない。
【0088】
実施例2及び比較例10より、各々のブロック共重合体樹脂組成物の共役ジエン質量比を固定し、ポリブタジエンブロックとポリスチレンブロックを繰り返す場合とテーパードブロックを繰り返す場合を比較すると、後者で衝撃強度が低下した。つまりポリブタジエンブロックとポリスチレンブロックを繰り返す場合、その境界は明瞭に区別されなければならないと考えられる。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】
【0095】
【表7】
【0096】
【表8】
【0097】
【表9】
【0098】
【表10】
【0099】
【表11】
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の樹脂組成物、及び該樹脂組成物を各種熱可塑性樹脂と配合した組成物は、シート、フィルム用の材料として有効であり、優れた耐衝撃性、及び機械的特性を生かして食品包装容器等の他、日用雑貨包装用、ラミネートシート・フィルム等として広く利用できる。