【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題は、請求項1に記載の薬物送達デバイスによって解決される。
【0010】
前述した種類の薬物送達デバイスは、一次用量ダイヤルスリーブを有する一次薬物送達アセンブリと、二次駆動スリーブを有する二次薬物送達アセンブリとを含む。本発明によれば、第1の位置、第2の位置、および第3の位置の間で可動の選択スイッチなどの選択要素が提供される。クラッチは、選択スイッチの動きがクラッチの回転を引き起こすように選択スイッチに連結される。二次駆動スリーブが、好ましくは二次薬物送達アセンブリの用量設定中に回転してクラッチに係合するように構成される。本発明によれば、クラッチは、選択スイッチが第1の位置から第2の位置に移動されるときに二次駆動スリーブにクラッチの回転を伝達するように、および選択スイッチが第1の位置から第3の位置に移動されるときに二次駆動スリーブから係合解除するように構成され、それにより、クラッチの回転および選択スイッチの動きは、二次駆動スリーブに伝達されない。
【0011】
好ましくは、選択スイッチは、好ましくは二次駆動スリーブの軸方向に延びる長手方向軸の周りで、第1、第2、および第3の位置の間で回転可能であり、クラッチは、選択スイッチに回転方向で拘束される。
【0012】
機構は、効率的な制御インターフェースをユーザに提供する。選択スイッチインターフェースによって、ユーザは、一次薬物送達アセンブリ内の一次薬剤の用量のみを設定および注射すること、または二次薬物送達アセンブリ内の一次薬剤と二次薬剤の組合せ用量を設定することを容易に選択することができる。ユーザは、併用療法治療に関する最適な条件を有する。選択スイッチは、レバーとして形成することができ、または簡便な操作のためにレバー要素に連結されることがあり、それにより、ユーザは、薬物送達デバイスハウジングの外部から選択スイッチを操作することができる。
【0013】
薬物送達ハウジングは、近位端から遠位端に、長手方向軸に沿って延び、一次および二次薬物送達アセンブリを収容することがある。遠位端は、通常は投薬端と呼ばれ、薬物送達デバイスは、注射針を有するニードルハブなど、単回投薬インターフェース(single dispense interface)を装備することができる。近位端は、通常は作動端と呼ばれ、この作動端でユーザがボタンなどを押して注射を開始する。
【0014】
好ましくは、クラッチは、選択スイッチとスプライン係合している。選択スイッチとクラッチとのスプライン連結は、選択スイッチの回転運動がクラッチに伝達されるように形成することができ、クラッチは、好ましくは薬物送達デバイスの近位端から遠位端に延びる長手方向軸に沿って、選択スイッチに対して軸方向で可動である。クラッチは、いくつかの軸方向に延びるリブなどを含むことができ、これらのリブは、選択スイッチにあるいくつかの軸方向に延びる溝に係合する。
【0015】
好ましくは、二次駆動スリーブは、用量設定中に螺旋運動で近位方向に移動し、用量投薬中に純軸方向運動(pure axial motion)で遠位方向に移動するように構成される。螺旋運動は、運動軸の周りでの回転と組み合わせた長手方向運動の組合せの動きとして特徴付けることができる。
【0016】
好ましくは、一次数字スリーブは、用量設定中には螺旋運動で近位方向に移動し、用量投薬中には逆の螺旋運動で逆方向へ遠位方向に移動するように構成される。
【0017】
一次薬物送達アセンブリは、薬物送達デバイスハウジング内に保持される、または薬物送達デバイスハウジング内に取り付けることができ、一次薬剤の可変用量を送達するように構成することができ、二次薬物送達アセンブリは、薬物送達デバイスハウジング内に保持される、または薬物送達デバイスハウジングに取り付けることができ、二次薬剤の固定用量のみを送達するように構成することができる。一次および二次薬物送達アセンブリはそれぞれ、薬剤リザーバを含むことができ、それぞれの薬剤の用量設定および用量投薬のために構成することができる。一次薬剤、例えば長時間作用型インスリンは、一次リザーバ内に含まれることがあり、二次薬剤、例えばGLP−1は、二次リザーバ内に含まれることがある。
【0018】
一次薬物送達アセンブリは、一次用量設定機構および一次用量投薬機構を含むことができる。二次薬物送達アセンブリは、二次用量設定機構および二次用量投薬機構を含むことができる。薬物送達デバイスは、一次薬剤の可変用量を設定するために一次薬物送達アセンブリと関連付けられる可変用量設定機構と、二次薬剤の固定用量を設定するために二次薬物送達アセンブリと関連付けられる固定用量設定機構とを含むことができる。一次薬物送達アセンブリおよび二次薬物送達アセンブリはそれぞれ、ハウジングの長手方向軸に平行に延びる長手方向軸に沿って延びることがある。
【0019】
一次薬物送達アセンブリは、一次薬物送達アセンブリハウジングを含むことができる。代替として、薬物送達デバイスのハウジングは、一次薬物送達アセンブリハウジングを構成することがある。二次薬物送達アセンブリは、二次薬物送達アセンブリハウジングを含むことができる。代替として、薬物送達デバイスのハウジングは、二次薬物送達アセンブリハウジングを構成することがある。
【0020】
一次薬物送達アセンブリは、用量設定機構または用量ダイヤルグリップなどの作動要素をさらに含むことができ、この作動要素は、用量設定中に一次用量ダイヤルスリーブに回転方向で固定されるように構成され、したがって、作動要素の回転により、一次用量ダイヤルスリーブが回転し、並進運動および回転運動の組合せでハウジングから進み出る。
【0021】
好ましくは、一次用量ダイヤルスリーブは、設定用量を視覚表示するためのいくつかのインデックス(index)を含む。したがって、一次用量ダイヤルスリーブは、一次数字スリーブと呼ばれることがある。
【0022】
本明細書で使用する用語「固定用量」は、薬物送達アセンブリの構成によって定義される用量値として特徴付けることができ、ここで、ユーザは、特定の用量を注射することのみ可能である。ユーザは、薬剤のより低いまたはより高い用量を設定する、および/または薬剤のより低いまたはより高い用量を注射することはできない。ユーザが効果的に設定および注射することができる用量は、特定の値に制限される。
【0023】
対照的に、用語「可変用量」は、注射することを望む薬剤の量をユーザが実質的に自由に選択できる用量として特徴付けることができる。この用量は、通常は上限と下限の間で可変に調節可能である。
【0024】
選択スイッチは、3つの位置の間で回転可能にすることができる。第1の位置は、回転方向で第2と第3の位置の中間の「静止」または中央位置でよい。選択スイッチは、デバイスの近位端から遠位端に延びる軸に沿って回転される。選択スイッチは、デバイスの近位端からデバイスの遠位端へ見たときにデバイスの時計および反時計方向に回転される。
【0025】
「静止」位置から、選択スイッチは第2の位置に回転され、この第2の位置は、選択スイッチの動きが二次駆動スリーブに伝達されるので、「固定用量オン」位置と呼ばれることがある。二次駆動スリーブの回転が、二次薬剤の用量の設定と共に生じる。「固定用量オン」位置では、一次薬剤と二次薬剤の組合せ用量を設定および投与することができる。
【0026】
「静止」位置から、選択スイッチは第3の位置に移動され、この第3の位置は、クラッチが二次駆動スリーブからデカップリングされ、選択スイッチの動きが二次駆動スリーブに伝達されるので、「固定用量オフ」位置と呼ばれることがある。二次駆動スリーブの回転がなければ、二次薬剤の用量は設定されない。「固定用量オフ」位置では、一次薬剤の用量のみを設定することができる。
【0027】
さらなる実施形態によれば、クラッチは、遠位位置と近位軸方向位置との間で可動であり、ここで、クラッチは、遠位位置では二次駆動スリーブに回転方向で拘束または回転方向で固定され、近位位置では二次駆動スリーブに対して自由に回転できる。好ましくは、クラッチは、選択スイッチが「静止」位置および/または「固定用量オン」位置にあるときには遠位位置にあり、選択スイッチが「固定用量オフ」位置にあるときには近位位置にある。クラッチは、二次駆動スリーブから実質的に近位に位置決めされる。選択スイッチは、クラッチから近位に位置決めされる。
【0028】
クラッチは、スプラインインターフェースを介して二次駆動スリーブに連結され、スプラインインターフェースは、クラッチと二次駆動スリーブが係合されるときにクラッチと二次駆動スリーブとの相対回転運動が防止され、相対軸方向運動が許可されるように構成される。クラッチは、クラッチの長手方向軸の周りで円形状で提供され、二次駆動スリーブに向かって軸方向に延びる係合アームを含むことができる。クラッチは、開いた遠位端を有することがあり、駆動スリーブの近位端は、クラッチの開口に挿入可能であることがある。二次駆動スリーブの近位端セクションは、いくつかの軸方向に延びる溝を備えてもよく、これらの溝は近位端に開いており、それにより、係合アームの半径方向内面が溝に入ることがある。係合アームの半径方向内面と溝とが、溝/ナットまたはスプライン連結を形成することがあり、それにより、クラッチと二次駆動スリーブとの間で回転運動を伝達することができ、その一方で相対軸方向運動を可能にする。
【0029】
さらなる実施形態によれば、クラッチは、薬物送達ハウジングによって提供される静止ガイダンス(stationary guidance)、または二次薬物送達アセンブリのハウジング要素との係合によって回転方向および軸方向で案内される。クラッチは、突出部、ピン、または任意の他の適切な係合手段を備えることができ、これらは、ガイダンスまたは係合セクション、例えば薬物送達ハウジング内で固定的に設けられた溝に係合する。係合セクションは、選択スイッチが第1の位置から第3の位置または「固定用量オフ」位置に移動されるときにはクラッチを近位位置に移動させ、一方、選択スイッチが第1の位置から「固定用量オン」位置に移動されるときにはクラッチが軸方向で静止しているように構成することができる。それにより、クラッチの軸方向位置は、ハウジングとのそのインターフェースによって拘束される。
【0030】
案内溝は、第1および第2のセクションを含むことができ、第1および第2のセクションの間でのピンの動きにより、クラッチが遠位および近位位置の間で移動することがある。第1および第2のセクションは、平行な関係で、少なくとも一部、円周方向でクラッチの周りで、例えば薬物送達デバイスハウジングの内面または二次薬物送達アセンブリのハウジング要素の内面で、ハウジングの長手方向軸に対して横切って延びることがある。
【0031】
第1および第2のセクションは、傾斜面などの移行部によって互いに分離され、ピンは、移行部を通って第1のセクションから第2のセクションに、およびその逆に延びることがある。第1と第2のセクションの間でのピンの動きは、クラッチを軸方向で移動させる。これにより、二次薬物送達アセンブリの用量設定機構の非常に正確な制御が提供される。
【0032】
本発明のさらなる実施形態によれば、クラッチと二次駆動スリーブとのスプライン連結は、ラチェットを含む。これは、移行領域内でのピンの動きが、クラッチと二次駆動スリーブとの係合解除中に二次駆動スリーブの回転を引き起こさないことを保証する。例えば、二次駆動スリーブの溝の近位端で、ラチェット要素として形成される傾斜面領域は、クラッチが遠位位置から近位位置に移動するときにクラッチが二次駆動スリーブに対して回転するのを可能にするように提供することができる。
【0033】
本発明のさらなる実施形態によれば、選択スイッチは、選択スイッチの作動が一次用量ダイヤルスリーブを回転させるように一次用量ダイヤルスリーブに動きを伝達するように構成される。好ましくは、第1の位置から第2の位置への選択スイッチの動き、および第1の位置から第3の位置への動きは、一次用量ダイヤルスリーブを同じ方向に、例えば時計方向に回転させる。この機構は、単一用量と組合せ用量との間のユーザの選択を、一次薬剤の用量の自動設定と効率良く結び付ける。「静止」位置から、ユーザは、選択スイッチを操作して、二次薬剤の固定用量を一次薬剤の可変用量と組み合わせて送達するように、または一次薬剤の可変用量のみを送達するようにデバイスを設定する。
【0034】
選択スイッチが第1の位置から第2の位置(「固定用量オン」)に移動されるときには、選択スイッチの動きは、二次駆動スリーブおよび一次用量ダイヤルスリーブに伝達される。選択スイッチを作動させることによって、一次薬剤の所定の用量および二次薬剤の所定の用量が設定される。逆に、選択スイッチが第1の位置から第3の位置(「固定用量オフ」)に移動されるとき、選択スイッチの動きは一次用量ダイヤルスリーブにのみ伝達され、二次薬剤の用量は設定されない。各場合に、第1の位置から第2の位置への、または第3の位置への選択スイッチの選択運動は、一次薬物送達アセンブリ内の薬剤の用量の設定をもたらす。
【0035】
さらに、この機構は、ユーザが、二次薬物送達アセンブリ内の固定用量をオフに切り替え、それらの用量を「分割」することを可能にする。すなわち、固定用量薬剤の2つの用量を受け取るのではなく、用量の一部分を1つのデバイスのカートリッジの最後から取り、用量の残りの部分を新たなデバイスから取る。一次薬物送達アセンブリ内の一次薬剤の所定の単位の自動ダイヤル設定は、送達の終了時にニードルハブが常に可変用量薬剤と面一であることを保証する。
【0036】
選択スイッチは、動きまたは回転の可能な度合いを定義するための手段を備えることができる。選択スイッチの外面に、選択バーが提供することができる。選択バーは、選択スイッチの軸方向に延びることがあり、静止対向当接部、例えばハウジングの内面に形成された突出部に係合するように構成することができる。「静止」位置から時計方向(「固定用量オン」)および反時計方向(「固定用量オフ」)への選択スイッチの回転運動の最大値は、ハウジングでの当接面に係合する選択バーによって制限することができる。
【0037】
さらなる実施形態によれば、薬物送達デバイスは第1の係合要素を含み、第1の係合要素が、一次用量ダイヤルスリーブを一方向に回転させるように構成され、選択スイッチに係合するように、または選択スイッチによって係合されるように適用され、それにより、第1の位置から第2の位置への、および第1の位置から第3の位置への選択スイッチの動きにより、第1の係合要素が一方向、または同じ方向に一次用量ダイヤルスリーブを回転させる。
【0038】
好ましくは、上記の一方向は、一次薬剤の用量を設定するために一次用量ダイヤルスリーブが通常回転される用量ダイヤル方向である。逆方向は通常、一次薬剤の設定解除中または投薬中に一次用量ダイヤルスリーブが回転する方向である。
【0039】
二次薬剤の用量の設定中、および一次用量ダイヤルスリーブの用量ダイヤルグリップをユーザが直接操作する前に、一次用量ダイヤルスリーブが所定数の単位だけ前進される、効率的な自動設定機構が提供される。選択スイッチが「静止」位置から回転される方向に関わらず、一次用量ダイヤルスリーブは常に同じ方向に回転され、一次薬剤の所定の用量が設定される。一次薬剤の用量の自動的に設定されるサイズは、選択スイッチの動きの長さによって決定することができ、それにより、前記自動的に設定される用量は、一次用量ダイヤルスリーブの回転の度合いを定義する構造的手段によって容易に予め設定することができる。
【0040】
本発明のさらなる実施形態は、一次薬物送達アセンブリの一次リザーバ内に収容された一次薬剤の用量の設定中に螺旋運動で近位方向に移動するように構成された一次用量ダイヤルスリーブを有する一次薬物送達アセンブリ、および二次薬物送達アセンブリの二次リザーバ内に収容された二次薬剤の用量の設定中に螺旋運動で近位方向に移動するように構成された二次駆動スリーブを有する二次薬物送達アセンブリとを含む薬物送達デバイスに関する。薬物送達デバイスは、第1、第2、および第3の位置の間で回転可能であり、第1の位置が第2と第3の位置との間の中間位置である、選択スイッチと;選択スイッチの動きがクラッチの回転を引き起こすように選択スイッチに回転方向で拘束されたクラッチとを含み、二次駆動スリーブは、回転してクラッチに係合するように構成され、ここで、クラッチは、二次薬剤の用量が設定されるように選択スイッチが第1の位置から第2の位置に移動されるときに二次駆動スリーブに回転を伝達するように、および二次薬剤の用量が設定されないように選択スイッチが第1の位置から第3の位置に移動されるときに二次駆動スリーブから係合解除するように構成される。薬物送達デバイスはさらに、用量を設定するために一次用量ダイヤルスリーブが回転される前に例えば係合によって一次用量ダイヤルスリーブを一方向に回転するように構成された第1の係合要素を含み、ここで、第1の係合要素は、選択スイッチによって係合されるように適用され、それにより、第1の位置から第2の位置への選択スイッチの動き、および第1の位置から第3の位置への選択スイッチの動きにより、第1の係合要素が一次用量ダイヤルスリーブを一方向に回転し、それにより一次薬剤の所定の用量が設定される。上のことは、第1の位置から第2の位置への、または第1の位置から第3の位置への選択スイッチのスイッチング方向に関わらず、一次薬剤の増分する、特に予め設定された用量の設定をもたらすことを意味する。
【0041】
薬物送達デバイスのユーザは、選択スイッチによって、二次薬剤の用量を一次薬剤の用量と組み合わせて設定することを選択することがあり、または一次薬剤の用量のみを設定することを選択することがある。どちらの場合にも、一次用量ダイヤルスリーブの回転によって、一次薬剤の所定の増分用量が設定される。ユーザが選択スイッチを作動したことを確認するために、制限機構が含まれることがあり、この制限機構は、ユーザが選択スイッチを作動する前、または選択スイッチが第1の位置に依然としてあるときに、設定可能な一次薬剤の用量を制限する。この実施形態によれば、第1の係合要素が、一次薬剤の増分用量を設定するための一方向への一次用量ダイヤルスリーブの回転が制限されるように、選択スイッチが第1の位置にあるときに一次用量ダイヤルスリーブのボスと係合するための第3の係合セクションを含む。
【0042】
さらなる用量設定を可能にするために、ユーザは、選択スイッチを作動して、二次薬剤の用量を設定するつもりか否かを選択しなければならない。このために、本発明のさらなる実施形態によれば、ロック要素と呼ばれることがある第3の係合セクションが第1の係合要素に配置することができ、それにより、第1の係合要素が第1の位置から第2の位置に移動するとき、または選択スイッチが第1の位置から第2の位置または第3の位置に移動するときに、制限値を超える用量ダイヤルスリーブのさらなる回転が許可される。当然、例えば一次用量ダイヤルスリーブと連結された用量ダイヤルグリップの回転によって、ユーザが一次薬剤の用量の設定前に選択スイッチを操作することができることを指摘しておく。この場合、用量ダイヤルスリーブの回転は第3の係合セクションによって制限されず、ユーザが一次薬剤の所望の用量を直接設定することができる。他方、一次用量ダイヤルスリーブが選択スイッチの作動前に回転されており、一次用量ダイヤルスリーブをさらに回転させることができない場合(一次用量ダイヤルスリーブが用量ダイヤル方向でのさらなる回転をロックされているので)、第1の位置から第2または第3の位置に選択スイッチを回転させて、第3の係合セクションが一次用量ダイヤルスリーブまたはボスから係合解除することで、一次用量ダイヤルスリーブのさらなる回転がより高い一次薬剤の用量を設定できるようにする。
【0043】
第1の係合要素は、レバーとして形成することができ、薬物送達ハウジング内で回転方向で支持され、それにより、第1のレバーは、ハウジングの長手方向軸に平行に延びる軸の周りで旋回または関節運動(articulate)することができる。したがって、第1の係合要素は、第1の前進レバーと呼ばれることがある。
【0044】
さらなる実施形態によれば、第1の係合要素は、第1および第2の位置の間で可動である。第1の係合要素は、第1および第2の位置の間で可動および/または回転可能、または切替え可能であることがある。第1の係合要素は、第1の位置から第2の位置に移動されるときに数字スリーブを一方向に回転するように構成することができる。
【0045】
さらなる実施形態によれば、第1の係合要素は第1の係合セクションを含み、第1の係合セクションは、一次用量ダイヤルスリーブの第1の対向係合面(counter engagement surface)に係合するように構成され、それにより、第1の位置から第2の位置への第1の係合要素の動きが一次用量ダイヤルスリーブに伝達され、次いで、一次用量ダイヤルスリーブが、一方向、好ましくは用量ダイヤル設定方向で回転させられる。
【0046】
第1の係合セクションは、第1の係合要素の第1の脚部に形成され、第1の対向係合セクションに係合するように構成された突出部、例えば一次数字スリーブに提供された突出部または当接面でよく、第1の位置から第2の位置に移動されるときに、第1の係合要素は、一次数字スリーブに係合し、数字スリーブを回転させる。
【0047】
第1の係合要素は、第1の位置と第2の位置との間で数字スリーブの長手方向軸に平行に延びる軸などの軸の周りで関節運動するように構成することができ、ここで、第2の位置では、第1の係合セクションが、数字スリーブの第1の対向係合面に係合することがあり、それにより、第1の位置から第2の位置への第1の係合要素の動きが数字スリーブに伝達される。
【0048】
好ましくは、選択スイッチは、第1の位置から第2の位置に、および第1の位置から第3の位置に移動するときに、第1の係合要素を第1の位置から第2の位置に移動させ、それにより、一次用量ダイヤルスリーブが一方向に回転される。
【0049】
さらなる実施形態によれば、薬物送達デバイスは、第2の係合要素を含む。第2の係合要素は、選択スイッチと第1の係合要素との間に配置することができ、選択スイッチの動きを第1の係合要素に伝達するように構成することができる。好ましくは、第2の係合要素は、選択スイッチが第1の位置から第2の位置または「固定用量オン」位置に移動されるときにのみ第1の係合要素に動きを伝達するように構成される。したがって、第2の係合要素は、第1の位置から第2の位置への選択スイッチの動きを第1の係合要素に伝達するように構成することができ、それにより、一次用量ダイヤルスリーブが一方向に回転される。
【0050】
第2の係合要素は、連結または伝達要素でよい。選択スイッチが第1の位置から第2の位置に移動されるとき、選択スイッチは第2の係合要素に係合し、第2の係合要素は、第1の係合要素を第1の位置から第2の位置に移動させる。
【0051】
第2の係合要素は、レバーとして形成することができ、薬物送達ハウジング内に回転方向で支持され、それにより、第2のレバーは、ハウジングの長手方向軸に平行に延びる軸の周りで旋回または関節運動することができる。したがって、第2の係合要素は、第2の前進レバーと呼ばれることがある。
【0052】
選択スイッチは、選択スイッチが例えば時計方向に「静止」位置から「固定用量オン」位置に移動されるときに第2の前進レバーに係合する当接面または突出部などを含むことができ、これにより、第2のレバーが関節運動し、第1の前進レバーに係合し、それにより、第1の前進レバーが第1の位置から第2の位置に移動する。その結果、第1の前進レバーは、数字スリーブに係合して、一次薬剤の用量が設定されるように数字スリーブを数単位だけ前進させる。
【0053】
さらなる実施形態によれば、選択スイッチは、好ましくは、一次用量ダイヤルスリーブが一方向に回転されるように選択スイッチが第1の位置から第3の位置に移動するときに、第1の係合要素を第1の位置から第2の位置に直接駆動する。選択スイッチは、第1の係合要素が第1の位置から第2の位置に移動するように選択スイッチが第1の位置から第3の位置に移動するときに、第1の係合要素に直接係合することがある。選択スイッチは、選択スイッチが例えば反時計方向への回転によって「静止」位置から「固定用量オフ」位置に移動されるときに第1の前進レバーに係合する当接面または突出部などを含むことができ、これにより、第1のレバーが関節運動し、第1の位置から第2の位置に移動し、それによりレバーは数字スリーブに係合して回転させ、それにより一次薬剤のドーズが設定される。これは、選択スイッチが「静止」位置から「固定用量オフ」位置に移動されるときに二次用量の所定の用量が設定されることを保証する。
【0054】
さらなる実施形態によれば、第1の係合要素が第2の係合セクションを含み、第2の係合セクションは、第1の係合要素の第2の位置または選択スイッチの第2の位置および/または第3の位置で静止対向係合セクションに係合し、ここで、対向係合セクションは、第1の係合セクションが数字スリーブから係合解除するように構成される。対向係合面は、第2の係合セクションが静止対向係合面に係合するときに第1の係合セクションが一次用量ダイヤルスリーブから係合解除するように配置することができる。第2の係合セクションは、第2の係合セクションと対向係合セクションとの係合により第1および第2の係合セクションが一次用量ダイヤルスリーブから移動して離れるように第1の係合セクションに対して配置することができる。対向係合面は、ハウジングの内面に提供することができ、突出部などとして形成することができる。
【0055】
第1の係合要素の脚部は可撓性を有することがあり、それにより、係合セクションは、一次用量ダイヤルスリーブから弾性的に湾曲させて離すことができる。
【0056】
さらなる実施形態によれば、第1の係合要素は、第3の係合セクションを含み、一次用量ダイヤルスリーブは、一方向への一次用量ダイヤルスリーブの回転が制限されるように選択スイッチおよび/または第1の係合要素がそれぞれの第1の位置にあるときに第3の係合セクションと係合するためのボスなどの当接面を含む。この機構は、選択スイッチが「静止」位置にあるときに、一次用量設定機構を所定数の単位、例えば2単位に制限する。一次用量ダイヤルスリーブの回転により、ボスは、一次用量ダイヤルスリーブと第1の係合要素または薬物送達デバイスハウジングとの間の所定の度合いの相対回転の後、第3の係合セクションに係合または当接し、それにより、ダイヤル方向への一次用量ダイヤルスリーブのさらなる回転が防止される。さらに、第3の係合セクションは第1の係合要素に配置することができ、それにより、第1の係合要素が第1の位置から第2の位置に移動するとき、または選択スイッチが第1の位置から第2または第3の位置に移動するときに(「固定用量オン」または「固定用量オフ」)、第3の係合セクションが一次用量ダイヤルスリーブまたはボスから係合解除し、それにより一次用量ダイヤルスリーブのさらなる回転が許可される。これは、ユーザが選択スイッチを作動して第2または第3の位置に設定する前に、ユーザが容量ダイヤルグリップを用いて一次薬剤のさらなる用量をダイヤル設定することを効率的に防止する。
【0057】
第3の係合セクションは、第1の係合要素の第2の脚部に形成することができる。第1および第2の脚部は、第1の係合要素の回転支持部によって離間される。
【0058】
さらなる実施形態によれば、選択スイッチを第1の位置に付勢するように構成されたばねなどの付勢部材が提供される。付勢部材は、薬物送達デバイスハウジング内部でピボットに位置し、選択スイッチをその中央の「静止」位置に戻るように復元力を提供することがある。
【0059】
さらなる実施形態によれば、選択スイッチを第2および/または第3の位置にロックするように構成された掛止要素が提供される。掛止要素は、掛止レバー(latch lever)として形成することができ、薬物送達ハウジング内で回転方向で支持され、それにより、掛止レバーは、ハウジングの長手方向軸に平行に延びる軸の周りで旋回または関節運動することができる。選択スイッチは、掛止レバーの掛止部と係合するために移動止めなどを含むことができる。
【0060】
さらなる実施形態によれば、一次用量ダイヤルスリーブは、一次用量ダイヤルスリーブが上記の一方向とは逆の方向に回転するときに選択スイッチから掛止要素を係合解除するように構成された手段を備える。
【0061】
数字スリーブは、傾斜部(ramp feature)などを備えることができ、傾斜部は、一次用量ダイヤルスリーブが用量ダイヤル方向とは逆の方向に回転するときに、掛止レバーを付勢して選択スイッチから離す。掛止レバーは、選択スイッチを第1のセクションと係合することがあり、傾斜部を第2のセクションと係合することがあり、これらのセクションは、掛止レバーの回転支持部によって互いに分離される。したがって、傾斜部により、掛止レバーが支持部の周りで関節運動することがあり、第2のセクションを付勢して一次用量ダイヤルスリーブから離すことによって第1のセクションが選択スイッチから係合解除することがある。
【0062】
さらなる実施形態によれば、一次薬物送達アセンブリは一次薬剤を収容し、二次薬物送達アセンブリは二次薬剤を収容する。
【0063】
薬物送達デバイスのカートリッジの少なくとも1つに薬剤が充填されていると好ましい。また、薬物送達デバイスは、使い捨ての注射デバイスでよい。そのようなデバイスは、薬剤の内容物が使い尽くされた後、投棄またはリサイクルすることができる。しかし、本発明は、カートリッジの内容物がすべて投与された後に、空になったカートリッジを満たされているカートリッジに交換するように設計された再使用可能なデバイスと共に適用することもできる。
【0064】
本明細書で使用する用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0065】
インスリン類似体は、例えば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0066】
インスリン誘導体は、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0067】
エキセンジン−4は、例えば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0068】
エキセンジン−4誘導体は、例えば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0069】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0070】
ホルモンは、例えば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0071】
多糖類としては、例えば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、例えば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0072】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0073】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(例えば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0074】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0075】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0076】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0077】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0078】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0079】
薬学的に許容される塩は、例えば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、例えば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、例えば、アルカリまたはアルカリ土類、例えば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0080】
薬学的に許容される溶媒和物は、例えば、水和物である。
【0081】
本発明の例示的実施形態を、添付図面を参照して以下に述べる。