【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の問題は、請求項1に定められるような薬物送達デバイスおよび請求項15に定められるような薬物送達デバイスによって解決される。
【0014】
薬物送達デバイスは、一次薬物送達アセンブリおよび二次薬物送達アセンブリを保持するハウジングを含む。二次薬物送達アセンブリは二次用量設定機構を含む。具体的には、二次用量設定機構は、リセット運動で二次用量設定機構をリセットするように適用された付勢部材を含む。アクチュエータは、ハウジングに対して、好ましくはハウジングの第1の長手方向軸に沿って、動くことができるように配置される。アクチュエータは、アクチュエータの作動運動が作動カラーに移されるように作動カラーによってもたらされる第2の係合セクションに係合するように構成される第1の係合セクションを含む。好ましくはレバーによって作動可能な設定要素は、第1の位置と第2の位置との間で動くことができる。設定要素は、二次用量設定機構のリセット運動の間第2の位置から第1の位置に動かされるように二次用量設定機構に連結される。設定要素は、第2の位置から第1の位置に動かされるとき作動カラーをアクチュエータとの係合から離すように、または作動カラーをアクチュエータから係合解除するように構成される。設定要素が第1の位置にあるとき、作動カラーは、アクチュエータから係合解除されている。設定要素が第2の位置にあるとき、作動カラーは、作動運動が移されるようにアクチュエータに係合されている。二次薬物送達アセンブリは、二次薬剤を含む二次リザーバを受けるように構成される。
【0015】
本発明は、一次用量設定機構からの影響のない使用者による二次用量設定機構の効果的な操作を可能にする薬物送達デバイスを提供する。リセット運動が作動カラーとアクチュエータとの間の係合解除を伴うので、薬物送達デバイスは、改善された動作安全特性を有する。
【0016】
第1および第2の長手方向軸は、平行関係、好ましくはハウジングの長手方向軸と平行に位置合わせされる。第1の長手方向軸または第2の長手方向軸は、ハウジングの長手方向軸と一致してもよい。さらに、第1および第2の長手方向軸は、ハウジングの近位端から遠位端まで延びることができる。ハウジングの遠位端は、投薬端に相当し、それにより、ハウジングのそれぞれの受容セクションに保持される第1および/または第2の薬物送達アセンブリの第1および/または第2の投薬機構の作動によって、それぞれの薬剤が遠位方向に流される。したがって、遠位端は、注射針を含むことができる投薬インターフェースへの取り付け向けに構成される。ハウジングの遠位端と近位端との間の軸は、ハウジングの長手方向軸に対応するまたはそれに対して平行であってよい。ハウジングの近位端は、作動端に対応することができ、そこにおいて使用者は、好ましくはアクチュエータを遠位方向に動かすことによって、アクチュエータを作動させることができる。設定要素の第1の位置は、薬剤用量の設定前の設定要素の初期位置に対応することができる。第2の位置は、設定プロセス後、または薬剤用量が設定された後の設定要素の最終位置に対応することができる。
【0017】
アクチュエータは、ハウジングに対して第1の、たとえば近位の位置と、第2の、たとえば遠位の位置との間で動くことができ、やはりまた、ハウジングの第1の長手方向軸に沿って動くことができるように配置される。アクチュエータは、ハウジングに摺動可能に受け入れられる。ハウジングは、その内面に形成され作動運動の間アクチュエータを案内するように構成される内側ウェブのような案内手段を備えることができる。第1および/または第2の長手方向軸に平行な遠位方向におけるアクチュエータの長手方向変位に対応することができる作動運動の間、使用者は、アクチュエータをハウジングの遠位端の方に向かって動かすことができる。
【0018】
設定要素は、ハウジングに対して動くことができる。設定要素は、設定運動の間、第2の長手方向軸周りに第1の位置と第2の位置との間で動くことができる。作動可能な設定要素は、使用者によって、ハウジングの外側から操作可能なように構成される。作動カラーは、第1の係合セクションと第2の係合セクションが係合していない、アクチュエータに対する非係合位置と、第1の係合セクションと第2の係合セクションが係合する、アクチュエータに対する係合位置との間で、動くことができる。設定要素の第1の位置では、作動カラーは、アクチュエータに対して非係合位置にあり、アクチュエータは、作動カラーに対して自由に動く。設定要素の第2の位置では、作動カラーは、アクチュエータとの係合位置にあり、アクチュエータの作動運動が作動カラーに移されるようにアクチュエータに係合する。したがって、アクチュエータが使用者によって作動され第1の位置から第2の位置に動かされると、作動運動が作動カラーに移され、それによって作動カラーが第1の位置から第2の位置、たとえば第1の近位位置から第2の遠位位置に動かされる。
【0019】
設定運動は、設定要素を伴って、作動カラーをアクチュエータに係合させることができる。設定要素の第1の位置では、アクチュエータは、作動カラーに対して自由に動き、設定要素の第2の位置では、作動カラーは、アクチュエータの作動運動が作動カラーに移されるようにアクチュエータに係合する。設定要素は、それが第1の位置から第2の位置に動くと作動カラーをアクチュエータとの非係合位置からアクチュエータとの係合位置に動かすように、作動カラーに適用される。たとえば、設定要素および作動カラーは、当接面のようなそれぞれの力伝達手段を備えることができる。
【0020】
設定要素の第1の位置から第2の位置までの設定運動は、所定のまたは固定された設定用量に対応することができる。設定要素の第1の位置から第2の位置までの設定運動は、特定用量が設定されるように二次用量設定機構に移される。好ましくは、設定運動によって設定される二次薬剤の用量サイズは、設定運動の第1の位置と第2の位置との間の長さによって定められる。設定運動の長さは、二次用量の設定用量が固定用量または非可変用量となるように予め定められるまたは制限される。たとえば、第1の位置は、患者によって用量が設定される前の、通常の初期位置である、ゼロ単位の設定用量に対応することができる。第2の位置は、たとえば、10単位の設定用量に対応することができる。作動運動は、設定プロセスの後に行われ、患者が薬剤の設定用量を注射する動作に対応することができる。そのような作動運動は、たとえば、投薬ボタンを変位させるまたは押すことである。
【0021】
設定運動は、好ましくは、使用者が設定要素を介して用量ノブを回転させるなど、二次薬物送達アセンブリの二次用量設定機構を操作することによって手動で行われ、第1の位置から第2の位置までの設定要素の運動に対応する。したがって、設定要素は、二次薬物送達アセンブリの長手方向軸に対して第1の位置から第2の位置まで回転される。
【0022】
リセット運動は、設定要素が第2の位置(たとえば、10単位)から第1の位置(0単位)に戻るように動かされる、逆設定運動として特徴づけられる。次いで、他の薬剤用量が設定される。
【0023】
設定要素は、弛緩される付勢部材の力を受けて第2の位置から動かされる。リセット運動は、投薬の間に起こる。二次薬物送達アセンブリの薬剤の投薬の間、設定要素は第2の位置から第1の位置にリセット運動で動かされる。というのも、設定要素は、二次用量設定機構のリセット運動が設定要素に移されるように二次用量設定機構に連結されるからである。薬剤の投薬後、設定要素は第1の位置にあり、再び二次薬物送達アセンブリの薬剤の用量設定のために第1の位置から第2の位置に動かされる。
【0024】
本明細書で使用される用語「固定用量」は、使用者が特定の用量だけしか注射することができない、ハウジング、薬物送達アセンブリまたは薬物送達デバイスの構造によって定められる用量値として特徴づけられる。使用者は、より少ないまたはより多い用量の薬剤を注射する立場にない。使用者が効果的に設定し注射することができる用量は、ある値に限定される。
【0025】
一方、用語「可変用量」は、使用者が、実質的に、注射したい薬剤の量を自由に選ぶことができる用量として特徴づけられる。用量は、通常、上限と下限との間で、可変的に調節可能である。
【0026】
付勢部材は、用量設定要素が第1の位置から第2の位置に動かされるとプレストレスが加えられるように、用量設定部材に連結される。付勢部材は、設定要素が第2の位置にあるとき、応力が加えられる。付勢部材は、弛緩されると第2の位置から第1の位置に設定要素を動かすように、設定要素に連結される。付勢部材は、設定要素が第1の位置にあるとき、弛緩される。たとえば、用量ノブのような用量設定部は、二次アセンブリハウジングに対するノブの第1の方向の回転が付勢部材にプレストレスを加えるまたはそれをねじることになるように、二次アセンブリハウジングに回転可能に連結される。好ましくは、用量ノブは、第1の長手方向軸に平行な回転軸周りに回転される。
【0027】
二次薬物送達アセンブリは、二次用量投薬機構を含むことができる。二次用量設定機構の、たとえばばねである付勢部材は、弛緩されると投薬のための力をもたらすように、二次用量投薬機構に連結される。設定運動の間、付勢部材にはプレストレスが加えられる。付勢部材は、リセット運動のための機械エネルギーを生み出すだけでなく、投薬機構のための機械エネルギーも生み出すことができる。付勢部材を弛緩状態からプレストレス状態に変えることによって機械エネルギーが生み出され付勢部材が弛緩されるまで蓄えられる(stored)。付勢部材の弛緩によって、蓄えられていた機械エネルギーが設定要素を第2の位置から第1の位置に動かす。それと同時に、機械エネルギーは、二次用量投薬機構のために使用される。
【0028】
トリガボタン、解放ボタン、投薬ボタンまたは同様のものは、プレストレスが加えられた付勢部材(ばね)の解放のために設けられる。ばねを解放することによって、ばねは、二次薬物送達アセンブリのハウジングに対して軸方向または遠位方向に用量投薬機構の駆動部材を駆動する。駆動部材の変位は、二次薬物送達アセンブリの二次リザーバ内の栓または同様のものを遠位方向に押しやることができ、それによって二次リザーバの二次薬剤が二次リザーバから出される。付勢部材の解放によって、設定要素は、その設定運動の逆であり第2の位置から第1の位置に戻されるリセット運動で、リセットされる。そのようなデバイスは、やはりまた、動力援助式注射器として既知であり、薬剤をカートリッジから出すようにプレストレス可能なばねによってもたらされる、蓄えられた機械エネルギーのようなエネルギー源を特徴とすることができる。
【0029】
好ましくは、アクチュエータは、ハウジングの一部であり、たとえば作動ボタンであるアクチュエータの一部または一セクションがハウジングの外側に配置され、その一方で第1の係合セクションがハウジングの内側に配置されるように構成される。アクチュエータと二次用量設定機構との間の機械連結は、付勢部材の力を受けて設定要素が第2の位置から第1の位置に動かされることによって二次薬剤が投薬された後、自動的に連結解除される。二次薬剤の投薬は、二次用量設定機構の付勢部材の力によって引き起こされる。設定要素のリセット後、二次用量設定機構は、アクチュエータによる機械的な影響から再び自由になる。実際、ハウジングは、二次用量設定機構に影響を及ぼさない。したがって、二次薬物送達アセンブリは、ハウジング内に取り付けられる動力援助式注射器のような市販の薬物送達デバイスであってよい。したがって、承認手順は必要ない。
【0030】
さらに、本発明は、投薬特性が改善された薬物送達デバイスを提供する。薬物送達デバイスの単一アクチュエータを用いて、一次薬物送達アセンブリの一次用量投薬機構と二次薬物送達アセンブリの二次用量投薬機構を一緒に効果的に操作することができる。一次薬物送達アセンブリは、一次薬剤を含む一次リザーバを受けるように構成される。
【0031】
好ましくは、一次薬物送達アセンブリは、ハウジングの第1の受容(receiving)セクションに保持され、二次薬物送達アセンブリは、ハウジングの第2の受容セクションに保持される。第1の長手方向軸は、第1の受容セクション内をハウジングの近位端からハウジングの遠位端に向かって延びることができる。第2の長手方向軸は、第2の受容セクション内を第1の長手方向軸に対して平行に延びることができる。アクチュエータは、ハウジングに対して回転方向に拘束され、それによって第1の係合セクションと第2の係合セクションとの間のしっかりとした係合が確実にされる。アクチュエータは、軸方向に第1の受容セクションの上を少なくとも部分的に延びる作動面を含むことができる。
【0032】
本発明のさらなる一実施形態によれば、二次薬物送達アセンブリは、二次用量投薬機構を含み、設定要素は、設定運動の間、第2の長手方向軸周りに第1の位置から第2の位置まで好ましくは回転運動で動くことができる。付勢部材は、設定運動の間、プレストレスが加えられ、二次用量投薬機構の起動によって解放されるように、設定要素に連結される。付勢部材は、弛緩されると、設定要素を第2の位置から第1の位置に駆動する。二次薬物送達アセンブリの二次薬剤の好ましくは固定用量は、設定運動によって設定される。設定運動は、使用者が二次用量設定機構を操作して設定要素を用いて二次薬剤の用量を設定することによって手動で行われる。二次用量設定機構は、設定要素を第1の位置か第2の位置のどちらかの安定位置にさせるように構成される。したがって、用量設定機構は、設定要素が第1の位置から第2の位置に動かされても付勢部材が弛緩されないように構成される保持またはロッキング機構を含むことができる。
【0033】
作動カラーは、スリーブのように二次薬物送達アセンブリを少なくとも部分的に囲繞することができる。作動カラーは、作動運動が作動カラーに移されるとトリガボタンを含むことができる二次用量投薬機構が作動されるように、二次用量投薬機構に対して配置される。好ましくは、トリガボタンは、第1の位置から第2の位置に動くことができる。トリガボタンは、第2の位置の方に向かって動かされると、リセット運動を開始するように付勢部材を解放する。好ましくは、作動運動は、作動カラーがトリガボタンを第2の位置に動かすように、作動カラーに移される。ばねは、解放されると、二次用量投薬機構の駆動部材を二次薬物送達アセンブリのハウジングに対して遠位方向に押しやる。ばね力の解放によって、二次用量設定機構は、設定要素の設定運動の逆であり、設定要素が第2の位置から第1の位置に戻されるリセット運動で回転してリセットされる。
【0034】
本発明のさらなる一実施形態によれば、設定要素および作動カラーは、同軸的に配置される。設定要素は、作動カラーに対して第1の相対回転位置と第2の相対回転位置との間で回転することができる。リセット運動の間、設定要素は、作動カラーに回転方向に係合するように、第1の相対回転位置から第2の相対回転位置に動かされる。それによって、第1の係合セクションと第2の係合セクションが係合解除される前に、二次薬剤の全用量が投薬されることが確実になる。第1の相対回転位置では、設定要素は、作動カラーに係合せず、したがって、設定要素は、リセット運動の間作動カラーに対して動く。第2の相対回転位置では、設定要素は、作動カラーに係合し、したがって、第1の位置に向けた設定要素の運動が作動カラーに移される。
【0035】
一実施形態では、一次薬物送達アセンブリは、一次用量設定機構を含むことができ、一次薬剤を含む一次リザーバを受けるように構成される。一次用量設定機構および二次用量設定機構は、個別に設定されるように構成される。換言すると、一次薬物送達アセンブリおよび二次薬物送達アセンブリは、共通の用量設定部を共有しない。その代わりに、使用者は、一次薬剤の用量を設定するように一次用量設定機構を操作することができ、二次薬剤の用量を設定するように二次用量設定機構を操作することができる。
【0036】
一次リザーバおよび二次リザーバのそれぞれは、薬剤を含むカートリッジのような交換可能な薬剤容器であってよい。
【0037】
本発明のさらなる一実施形態では、アクチュエータは、作動運動の間、一次薬物送達アセンブリの一次用量投薬機構に係合し、それによって一次薬剤の設定用量が投薬インターフェースを介して投薬される。好ましくは、一次用量設定機構は、二次用量設定機構から独立して操作可能である。一方の薬剤の用量を設定しても、他方の薬剤の用量の設定には影響を与えない、またはそれによって他方の薬剤の用量は設定されない。一次用量投薬機構および二次用量投薬機構は、第1の係合セクションと第2の係合セクションとの間の係合によってリンクまたは連結され、したがって作動運動によって一次用量投薬機構と二次用量投薬機構が作動されるようになる。二次用量投薬機構が作動されると、第1の係合セクションと第2の係合セクションが自動的に係合解除され、それによって作動リンクが自動的に連結解除される。
【0038】
薬物送達デバイスは、アクチュエータが操作されると一次薬剤の設定用量よりも前に二次薬剤の設定用量が投薬されるように構成される。本発明のさらなる一実施形態によれば、アクチュエータは、一次用量投薬機構の圧力受容セクションに係合するように構成される押圧面を有する。アクチュエータは、その作動運動によって、押圧面と圧力受容セクションとの間の間隙が閉じられ、作動運動が圧力受容セクションに移されるように、配置される。圧力受容セクションは、アクチュエータの作動運動が一次用量投薬機構に移され、一次薬剤の設定用量が投薬されるように一次用量投薬機構が起動されるように、一次用量投薬機構に連結される。したがって、二次薬剤および一次薬剤の順次的な送達が達成される。間隙が閉じられる前は、薬剤の一次用量は投薬されない。しかし、間隙が閉じられる前に、アクチュエータの作動運動は、二次薬物送達アセンブリの二次用量投薬機構に移される。したがって、間隙が開いておりアクチュエータが作動運動により動かされるとき、作動運動は作動カラーに移される。しかし、作動運動は、間隙が開いているので、圧力受容セクションにはまだ移されない。作動運動により、押圧面は、圧力受容セクションの方に向かって動かされ、それによって間隙が閉じられる。押圧面は、圧力受容セクションに達するとそれに当接し、それによって押圧面の動きが圧力受容セクションに移り、一次用量投薬機構が作動される。その結果、二次薬剤は一次薬剤よりも前に注射される。これは、1度の注射工程で、2つの薬剤の順次的な送達を効果的にもたらす。したがって、間隙は、一次用量投薬機構の起動に関する遅延機能を有する。二次用量投薬機構は、一次用量投薬機構が作動される前に作動される。
【0039】
さらなる一実施形態によれば、付勢部材は、アクチュエータをハウジングに対して近位方向に付勢するように構成される。上述した遅延機能に関して、患者は、アクチュエータを解放することができ、それによってアクチュエータは近位方向に動き、第1の係合セクションと第2の係合セクションとの係合が緩和される。これは、設定要素のリセット運動を支援する。
【0040】
好ましくは、係合セクションは、噛合係合するように構成される。さらに、作動カラーは、作動カラーの作動運動が二次用量投薬機構との係合を引き起こし、それによって二次用量投薬機構が起動されるように、構成される。
【0041】
本発明のさらなる一実施形態では、第1および第2の係合セクションは、アクチュエータが、作動カラーに対して作動運動の反対の方向に動かされると付勢されて係合解除されるように、構成される。これは、ハウジング内に配置されアクチュエータを近位方向に付勢するように構成される付勢部材によって支援される。
【0042】
効果的な係合解除のため、第1の係合セクションおよび第2の係合セクションは、カム機能をそれぞれ備えることができる。カム機能は、互いに係合して押し付けられるように互いに近づくように付勢されるまたは互いに対して動かされると第1の係合セクションと第2の係合セクションの係合解除を引き起こすように構成される。
【0043】
本発明のさらなる一実施形態によれば、第1の係合セクションおよび第2の係合セクションは、歯付きギアラックをそれぞれ含むことができる。歯は、当接面をそれぞれ含むことができる。当接面は、作動運動の軸に対して垂直に位置合わせされるように配置され、それによって作動運動は、効果的に、第1の係合セクションから第2の係合セクションに移される。
【0044】
本発明のさらなる一実施形態によれば、第1および/または第2の係合セクションはそれぞれ、当接面の後ろに面取りフランク(chamgered flank)を有することができる。好ましくは、第1のセクションの面取りフランクは、実質的に、ハウジングの近位端に向くように配置され、その一方で、第2の係合セクションの面取りフランクは、ハウジングの遠位端の方に向けられる。面取りフランクは、上述したカム機能を構築することができる。
【0045】
第1および第2の係合セクションの不適切な係合解除を防ぐように、第1および第2の係合セクションは、それぞれ、掛止部分に連結される。掛止部分は、設定要素が第1の位置から第2の位置まで動かされると、好ましくは回転によって掛止係合されるように構成される。したがって、設定要素が作動カラーをアクチュエータに係合させると、それによってアクチュエータの作動運動が作動カラーに移され、掛止要素が係合する。これは、第1および第2の係合セクションの係合解除の可能性を減少させる助けとなり、機械的な衝撃、たとえば患者がデバイスを落としたときの結果を回避する。第1および第2の係合セクションにある各掛止部分は、第1の長手方向軸に対して実質的に平行に延びるように構成される。掛止要素は、第1の係合セクションと第2の係合セクションとの間における相対的な回転運動を防ぐ掛止部分にもたらされる。第1および第2の係合セクションが係合されると、掛止部分は、抵抗力をもたらし、それによって第1および第2の係合セクションは、互いに回転方向に解放可能に拘束される。
【0046】
本発明のさらなる一実施形態によれば、作動カラーは、好ましくは設定要素と作動カラーの共用の回転軸に平行に延びる、少なくとも1つの突出リブを含む。突出リブは、アクチュエータに形成され第1の長手方向軸に平行に延びる少なくとも1つの溝に係合するように構成される。溝とリブの配置は、同様に、リブがアクチュエータに設けられ、溝が作動カラーに設けられるかたちで、反対であってもよい。掛止部分は、スナップのようなやり方で互いに係合するように構成される。そのようなスナップ連結は、たとえば、第1の係合セクションと第2の係合セクションの係合を固定する点で有利である。さらに、スナップ連結は、有利には、使用者に、第1の係合セクションと第2の係合セクションとの間の機械リンクが確立されたことを示す触覚および/または知覚可能フィードバックを与えるのにも使用される。
【0047】
掛止部分は、設定要素が第2の位置から第1の位置に動かされると係合解除するように構成される。掛止部分は、掛止部分の係合解除に必要な力が、リセット運動のために二次薬物送達アセンブリの付勢部材によってもたらされる力に相当するように、構成される。
【0048】
本発明のさらなる展開によれば、ハウジングは、第1および/または第2の薬物送達アセンブリをしっかりと係合しハウジングに取り外し可能に受け入れられるように構成されるロッキング要素を含むことができる。ハウジングは、ハウジング部材が組み付けられるとき、ロッキング要素をしっかりと受けるように構成される少なくとも2つのハウジング部材を含むことができる。ロッキング要素は、前もって関係機関の承認手順をすでに通過した薬物送達アセンブリに取り付けられるように構成される。ロッキング要素は、第1および/または第2の薬物送達アセンブリが、それぞれの受容セクションに受け入れられるとハウジングに対して回転方向かつ/または長手方向に拘束されるように、第1および/または第2の薬物送達アセンブリにしっかりと係合するように構成される。ロッキング要素は、連結要素、ロッキングまたは連結カラー、スペーサまたはインサートとして構成される。
【0049】
薬物送達アセンブリは、少なくとも2つのハウジング部材を含むことができる。ロッキング要素は、薬物送達アセンブリのハウジング部材に設けられる、2つのハウジング部材の互いの取り付けのための取り付け手段に取り付けられるように適用される。換言すると、ロッキング要素は、薬物送達アセンブリにおける取り付け手段に固定されるように適用される。それらの取り付け手段は、通常は、薬物送達アセンブリの単一部材を組み付けるのに使用される。ここで、ロッキング要素は、たとえば、スペーサとしての役割を果たすことができる。さらに、ロッキング要素が取り付けられた状態における、一次薬物送達アセンブリと二次薬物送達アセンブリとの間の相対的な位置は、効果的に固定可能である。したがって、ロッキング要素は、やはりまた、連結要素としての役割も果たすことができる。
【0050】
好ましくは、薬物送達デバイスは、薬剤を含む少なくとも1つのカートリッジを含む。
【0051】
本発明の他の実施形態によれば、薬物送達デバイスは、一次薬剤を含む一次リザーバを受けるように構成される一次薬物送達アセンブリおよび二次薬剤を含む二次リザーバを受けるように構成される二次薬物送達アセンブリを保持するハウジングを含む。一次薬物送達アセンブリは、一次薬剤の用量を設定するための一次用量設定機構を含み、二次薬物送達アセンブリは、二次薬剤の用量を設定するための二次用量設定機構を含む。二次用量設定機構は、リセット運動で二次用量設定機構をリセットするように適用された付勢部材と、付勢部材を解放するためのトリガボタンとを含む。トリガボタンは、第1の位置から第2の位置に動くことができる。デバイスは、第1の位置と第2の位置との間で動くことができ、二次用量設定機構のリセット運動の間、第2の位置から第1の位置に動かされるように二次用量設定機構に連結される、設定要素をさらに含む。アクチュエータは、ハウジングに対して動くことができる。アクチュエータは、一次薬剤の設定用量が投薬インターフェースを介して投薬されるように、作動運動の間、一次薬物送達アセンブリの一次用量投薬機構に係合する。アクチュエータは、アクチュエータの作動運動が作動カラーに移されるように作動カラーによってもたらされる第2の係合セクションに係合するように構成される第1の係合セクションを含む。作動カラーは、第1の係合セクションと第2の係合セクションが係合されない第1の位置と、第1の係合セクションと第2の係合セクションが係合される第2の位置であって、アクチュエータの作動運動が作動カラーに移され、作動カラーがトリガボタンに係合しそれを第2の位置に動かす、第2の位置との間で、アクチュエータに対して動くことができる。トリガボタンは、第2の位置の方に動かされると、付勢部材を解放する。付勢部材は、解放されると設定要素を第2の位置から第1の位置に動かすように設定要素に連結される。設定要素は、第2の位置から第1の位置に動かされると、作動カラーをアクチュエータから係合解除するように構成される。
【0052】
上述の薬物送達デバイスのさらなる一実施形態によれば、二次薬物送達アセンブリは、二次用量投薬機構を含み、二次用量投薬機構は、二次薬剤の用量が投薬されるようにトリガボタンが第1の位置から第2の位置に動かされると作動される。さらなる一実施形態では、付勢部材は、解放されると駆動部材を軸方向に駆動するように適用され、駆動部材の変位は、二次リザーバ内の栓または同様のものを遠位方向に押しやり、それによって二次リザーバの二次薬剤が二次リザーバから出される。付勢部材は、設定要素が第1の位置から第2の位置に動かされるとプレストレスが加えられるように設定要素に連結される。
【0053】
本明細書で使用する用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、アンチハウジングもしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0054】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0055】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0056】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0057】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0058】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0059】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0060】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0061】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各アンチハウジングの基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0062】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0063】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類によりアンチハウジングのアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見い出される。
【0064】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0065】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各アンチハウジングにつき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0066】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与のアンチハウジングの固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0067】
「アンチハウジングフラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0068】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0069】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0070】
以下において、概略的な図面を参照して本発明を例として説明する。