(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の積分時間期間に対してステップd)を繰り返すステップであって、前記複数の積分時間期間は一緒に総捕捉時間フレームを定義する、ステップをさらに含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
X線検出器は、X線データを捕捉する方法に従って2つのタイプに分類されることができ、アナログ電荷積分モードにおいて動作するものと、及び光子計数モードにおいて動作するものとである。アナログ積分モードでは到来照射は電荷として収集され積分され、これは読み出される前に一定の期間蓄積され、積分期間の間に収集された照射の量を表す出力信号をもたらす。光子計数モードでは、個々のX線光子は、検出されたX線エネルギーが一定の閾値エネルギーレベルを超えたときを決定する弁別ロジックを用いて計数される。
【0017】
上記で論じられた2つのX線データ捕捉方法のそれぞれはいくつかの利点を有するが、それぞれはまたいくつかの欠点及び制限を有する。電荷積分手法は、本質的な計数制限を有しないが、強いX線信号に対して検出器の飽和の影響を受け、又は弱いX線信号に対して低い信号対ノイズ比を生じ得る。これと対照的に光子計数手法は、特に弱い露出に対して高い検出感度を可能にするが、高い到来光子率において計数率飽和、及び隣接画素間の電荷共有による計数率誤りの影響を受け得る。
【0018】
本明細書で用いられる「X線照射」という用語は、通常は約0.01から10ナノメートル(nm)の波長範囲内の電磁照射を指す。また本明細書で用いられる「可視光」という用語は、通常は約200から780nmの波長範囲内の電磁照射を指す。しかし当業者は、これらの波長範囲は説明のためのみであり、本発明はこれらの範囲を超えて動作し得ることを理解するであろう。
【0019】
図1を参照すると、X線検出器10の例示的実施形態が示される。この実施形態ではX線検出器10は、間接検出方式を使用するが、他の実施形態は直接検出を用いることができる。間接X線検出を行うために
図1のX線検出器10は、入射X線照射18を可視光16に変換するためのX線変換器24、及び画素14の光検出器アレイ12を含み、各画素14はX線変換器24から受け取られた可視光16を、蓄積された電荷に変換する。或いは他の実施形態ではX線変換器24は、入射X線照射18を、電磁スペクトルの赤外線又は紫外線部分における、より低いエネルギーの照射に変換することができる。このような画素構造は当技術分野では知られており、各画素14から蓄積された電荷を読み出すための読み出しユニット20に関連して用いられる。読み出しユニット20に結合された処理ユニット22は、その後の処理のために、読み出しユニット20から蓄積された画素電荷値を受け取る。
【0020】
X線変換器24は、その詳細構造及び組成に関わらず、X線照射を紫外線、可視光、及び赤外線照射などの低いエネルギーの照射に変換する能力を有する任意のデバイス又は材料とすることができる。
図1の実施形態では、X線変換器24は、光検出器アレイ12による検出のためのX線照射18の可視光16への変換、及び望ましくないX線露出からの光検出器アレイ12の保護の両方を提供するように、X線照射18の発生源と光検出器アレイ12との間に置かれた、平板状のシンチレータ層である。シンチレータ層は、蛍光スクリーンなどのシンチレーティング材料を含み、これはX線光子を吸収し、それに応答して可視光光子を放射し、その数は吸収されたX線光子の量を示す。シンチレータ層で用いられるシンチレーティング材料は、希土類元素(例えばGd
2O
2S:Pr、又はGd
2O
2S:Pr,Ce,F)によりドーピングされたガドリニウムオキシ硫化物(Gd
2O
2S)、タリウムドープされたセシウムヨウ素、又はタングステン酸カドミウムなどの、当技術分野で知られている任意のこのような材料とすることができる。以下で論じられるように特定のシンチレーティング材料の選択は、シンチレーティング材料の時間減衰などの様々な要因に基づくことができる。
【0021】
図1のX線検出器10はまた例えば、X線照射18のものに対応する空間分布を有して、X線変換器24によって放射された光16を光検出器アレイ12上に伝達するために、X線変換器24と光検出器アレイ12との間に置かれた、光ファイバフェースプレート又はテーパなどの光導波路26を含む。X線変換器24はすべての入射X線照射18を吸収し得ないので、光導波路26はまた変換されないX線照射の少なくとも一部分を阻止するように働くことができ、それにより、そうでない場合は検出された信号内のノイズなどの有害な影響、及びアレイ12自体への損傷を生じ得る、望ましくないX線がアレイ12に到達することを防止する。当業者は、
図1の実施形態では光導波路が用いられるが、このような光導波路が不要又は好ましくない場合があり得る他の構成があり得ることを理解するであろう。
【0022】
X線変換器24によって放射され、光導波路26によって導かれた可視光16は、光検出器アレイ12によって受け取られる。アレイの各画素14は、それに入射する可視光16を蓄積された電荷に変換し、その量は画素14によって収集され登録された可視光16の量に比例する。X線変換器24と光検出器アレイ12との間の適切な空間的位置合わせ(光導波路26によって提供され得る)により、各画素に対する蓄積された電荷は、X線変換器の対応する領域に入射するX線エネルギーの量を表す。
【0023】
光検出器アレイ12は半導体構造、例えばCMOSベースの光検出器アレイ、又はCCDベースの光検出器アレイとすることができる。CMOSアクティブ画素センサ(APS)は、X線検出における用途に対していくつかの利点を有する。これらの利点は、高速な読み出し能力、高い量子利得、大きな光電性エリア、指定された画素の選択的読み出し、及びオンチップ信号処理を含む。本発明と共にまた、電荷注入デバイス(CID)センサ、アクティブコラムセンサ、及び他のアクティブ画素センサを含む、他のセンサタイプが用いられ得る。
【0024】
光検出器アレイ12は、光検出器アレイ12及び読み出しユニット20が単一の半導体基材から構築される、モノリシック実装形態に基づくことができる。或いは光検出器アレイ12と読み出しユニット20は別々である、ハイブリッド実装形態が用いられ得る。光検出器アレイ12は、列及び行において横及び縦に配置された画素14を有する。各画素14は、光電性要素、及び画素レベルで信号を処理し、読み出しユニット20などの他の電子回路と通信するための関連する画素回路を含む。光電性要素は、関連する画素14に衝突する可視光16を電気信号に変換し、これは画素回路の電荷記憶要素(例えばキャパシタ)上に、蓄積された電荷として積分される。画素回路はまた、蓄積された電荷が読み出しユニット20によって読み出されるのを可能にするためのスイッチング要素(例えばトランジスタ)を含むことができる。当業者は、各画素14の画素回路内に、様々な他の構成要素が統合され得ることを理解するであろう。
【0025】
読み出しユニット20は、積分時間期間の間、画素14から蓄積された電荷を読み出すための電子回路を含む。読み出しユニット20によって実行される読み出し動作は、当業者には理解されるアドレス方式を用いて、制御及びロジック回路構成要素によって開始され得る。
【0026】
単結晶回折実験では、入射X線ビームは単結晶試料にぶつかり、散乱されたX線を発生し、これはX線検出器の光検出器アレイによって記録され得る。露出時に試料は、一定の期間、試料の各原子面からのブラッグ反射を入射ビームとの共振に予想通りにもたらすように、入射X線ビームに対して回転され得る。本明細書では「電荷積分時間」と呼ばれるこの時間の間、検出器は試料によって散乱されたX線を受け取り、検出されたX線信号を蓄積された電荷に変換する。調査中の試料、及びX線発生源の強度に応じて、電荷積分時間は数分の1秒から数分までの範囲となり得る。
【0027】
従来のアナログ積分型検出は、入射X線照射の結果としての、しかしまたバックグラウンドノイズによる、電荷信号を蓄積する。バックグラウンドノイズは、固定パターンノイズ及び時間的ノイズ(例えば暗電流ショットノイズ、光子ショットノイズ、リセットノイズ、熱雑音、及び1/fノイズ)を含む、様々なノイズの発生源を含む。これらのノイズの発生源は、従来のアナログ積分型検出器の全体的な性能を、特に弱い露出に対して制限する傾向がある。特に、温度及び積分時間の関数である暗電流信号は、X線露出がない場合でさえも画素に蓄積し、それによって検出器のダイナミックレンジを制限する。さらに従来のアナログ積分型X線検出では、各画素における電荷は、X線露出の持続時間全体の間、連続して蓄積される。電荷積分期間の終わりに、各画素に記憶された蓄積された電荷は読み出され、次いで次の露出に備えてゼロにリセットされる。このような動作は「破壊読み出し」と呼ばれ、読み出しの後に画素内の電荷レベルはゼロにリセットされることを意味する。
【0028】
これと対照的に
図1の読み出しユニット20は、非破壊読み出し能力を有し、それにより画素内の蓄積された電荷は、電荷の値をリセットせずに、積分期間にわたって複数回サンプリングされ得る。結果として画素から読み出される電荷値は、積分時間期間にわたって増加する。本実施形態では光検出器アレイは、現在入手可能なCMOSセンサによりできるだけ高速に読み出され、これは約10ミリ秒(ms)ごととすることができる。従って5秒に等しい積分時間期間に対しては、電荷は約500回読み出される。これらの500個のデータの「フレーム」は、次いで単一の5秒のフレームを発生するように組み合わされ得る。
【0029】
本実施形態におけるアレイはできるだけ高速に読み出されるが、読み出しの間隔はシンチレーティング材料の減衰時間も考慮に入れなければならず、これは積分時間間隔よりずっと短くなるべきである。従って約10msの間隔時間に対して、Gd
2O
2S:Pr又はGd
2O
2S:Pr,Ce,Fなどの蛍光体がシンチレータのための適切な選択となり得る。またほとんどの光検出器アレイの有限なダイナミックレンジにより、強いX線信号及び/又は長い露出期間の場合は、一定数の非破壊読み出しの後に画素をリセットすることが望ましい又は必要となり得ることが理解されるであろう。このようにして光検出器アレイは、画素飽和のリスクを最小にしながら、画素感度を最大にするように高い利得で動作され得る。
【0030】
図1のX線検出器10はまた、読み出しユニット20に結合された処理ユニット22を含む。処理ユニット22はリアルタイムで、読み出しユニット20によって出力された各画素14の蓄積された電荷値を処理するように構成される。処理ユニットは、単一のユニット又は複数の相互接続された処理サブユニットとして実装されることができ、例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの高速プロセッサによって具体化され得る。いくつかの実施形態では、処理ユニット22及び読み出しユニット20は、光検出器アレイ12に結合された単一のコントローラの一部とすることができる。当業者は、処理ユニットがハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせにおいて実装され得ることを認識するであろう。
【0031】
図2は、
図1に示されるもののような電荷積分型X線検出器を用いた、X線検出の方法のフロー図を示す。この実施形態では高速フレーム非破壊読み出しと、画素に記憶された蓄積された電荷の高速なリアルタイム処理とを組み合わせることによって、X線検出器は、より強いX線信号に対しては電荷積分型出力モードで、又はより弱いX線信号に対しては光子計数出力モードで動作することができる。第1のステップ202では、画素から蓄積された電荷が読み出される。読み出し方法の詳細は、
図3の図に関連してより良く理解され得る。
【0032】
図3は、
図2の方法を実行するために用いられる電荷積分型X線検出器の、画素i,jに記憶された蓄積された電荷のグラフである。画素i,jにおける電荷は、t=t
0でゼロにリセットされ、積分時間期間28の間の複数の読み出し時間t
1からt
5において連続して非破壊的に読み出されて、対応する複数の蓄積された電荷値
【0036】
を生成する。当業者は
図3での特定の5つの読み出しの選択は説明のために提供され、他の実施形態では様々となり得ることを理解するであろう。各蓄積された電荷値
【0040】
は、それぞれの読み出し時間t
1からt
5において黒い四角によって表される。各読み出し時間t
1からt
5は、対応する積分時間間隔28aから28eの終わりを示す。積分時間間隔28aから28eは全体として、積分時間期間28を定義する。便宜上「積分時間間隔」及び「積分時間期間」という表現は本明細書では時には、それぞれ「サブフレーム」及び「リセット期間」と呼ばれる。
【0041】
積分時間期間28の終わりにおいて画素i,jにおける電荷は、黒い丸によって示されるようにゼロにリセットされる。その後に、画素i,jがその間に非破壊的に5回読み出され次いでリセットされる第2の積分時間期間30が実行されることができ、その後に第3の積分時間期間32が続く。リセット動作によって分離された非破壊読み出しのサイクルは、所与の総捕捉時間フレーム34までの必要な数の積分時間期間に対して繰り返され得る。便宜上「総捕捉時間フレーム」という用語は、本明細書では時には「フレーム」と呼ばれる。
【0042】
実際にはリセットノイズにより、各リセットの後に一般に残留信号R
i,jが、画素i,jに記憶されたままとなる。当技術分野で知られているようにリセットノイズは、画素が、ランダムオフセット値によって基準値からわずかに異なる値にリセットされるときに生じる。ランダムオフセットは通常、各リセットの後に変化するので、リセットノイズは一般に、例えば固定パターンノイズに対しては可能なように、事前の較正によって補正されることはできない。第1の積分時間期間28の間に、蓄積された電荷値は、画素i,j又はその近くに衝突する光によって引き起こされる電荷信号の蓄積だけでなくまた暗電流の蓄積により、時間と共に単調に増加する。
【0043】
戻って
図2を参照すると、画素が読み出された後に、読み出された蓄積された電荷からX線電荷値が決定される(ステップ204)。本明細書で用いられる「X線電荷値」という用語は、一定の積分時間間隔の間の画素による光吸収から結果として生じる、画素に記憶された蓄積された電荷の部分を指す。
図3に示されるように蓄積された電荷値
【0045】
からのX線電荷値の決定は、フレーム34の終わりまで、リセット期間28、30、及び32ごとの、サブフレーム28aから28e、30aから30e、及び32aから32eごとに繰り返される。所与の読み出し時間t
nにおいて、画素i,jに記憶された蓄積された電荷値
【0049】
と表されることができ、ただしDi,jは、較正によって知られると想定され得る画素i,jでの暗電流であり、
【0051】
はX線電荷値(すなわちt
n-1とt
nとの間の積分時間間隔の間の、画素i,jによる光吸収による蓄積された電荷値
【0053】
の部分)である。式(1)を並べ替えることによって、t
n-1とt
nとの間のX線電荷値
【0057】
各サブフレームt
n−t
n-1が十分短く、及び/又は暗電流が十分低い(例えば光検出器アレイが冷却されている場合)実施形態では、式(2)は以下のように簡略化され得る。
【0059】
この近似では、画素i,jにおけるX線電荷値
【0061】
は、連続した読み出し時間t
n及びt
n-1の間の蓄積された電荷
【0066】
しかしこのような場合、以下のように式(2)から表され得る、第1のリセット期間28の第1のサブフレーム28aの間のX線電荷値
【0070】
問題は、画素i,jにおけるリセットノイズR
i,jが未知であるために生じ得る。これは一般にリセットノイズR
i,jは、画素i,jがリセットされるごとに異なるためである。従ってリセットノイズR
i,jが顕著である場合(例えばリセットノイズR
i,jが、非破壊モードでの読み出しノイズより大きい場合)、リセットノイズR
i,jは測定された量から推定され得る。
【0071】
いくつかの実施形態では光検出器アレイは、行に沿ってリセットノイズR
i,jが一般にほぼ一定(すなわちR
i,j=R
i)になるように、画素が行ごとをベースとしてリセットされるように構成され得る。その場合は、行の終わりにおけるいくつかの画素をマスクオフすることによって、十分な精度でリセットノイズR
i,jを決定することが可能になり得る。このような場合、マスクされた画素でのX線電荷値はゼロであるので、リセットノイズは以下のように式(4)から推定されることができ、
【0075】
となるように、行iにおける最初のK個の画素がマスクされたと想定される。当業者は、式(5)は、画素が行の両端においてマスクされる場合に容易に一般化され得ることを理解するであろう。
【0076】
他の実施形態では、アレイの周縁部をマスクすることが実行可能でない場合がある。このような場合、リセットノイズR
i,jは、t
0とt
2との間で暗電流及びX線の両方からの電荷蓄積が線形であると想定することにより、及びt
1とt
2との間の電荷蓄積の傾きをt
0まで外挿することによって推定され得る。これは以下をもたらし、
【0078】
それにより次にリセットノイズR
i,jは以下のように推定され得る。
【0080】
単結晶回折実験では式(6)及び(7)は、所与のサブフレームに内在される角度範囲が、観察中の試料のロッキングカーブの幅と比べて非常に小さい場合は、近似的に正しくなる。いくつかの実施形態ではリセットノイズR
i,jは、複数のサブフレームの間の電荷蓄積の傾きをt
0まで外挿することにより、及び外挿された傾きの切片を平均してリセットノイズR
i,jをもたらすことによって推定され得る。
【0081】
最後にリセットノイズが所与の行iにおいてほぼ一定である場合は、式(7)によって提供される推定は、行iにわたって平均することによって改善されることができ、これは以下をもたらす。
【0083】
ただしMは、光検出器アレイの行内の画素の数である。
【0084】
各画素に記憶されたX線電荷値は、総捕捉時間フレームを構成する各積分時間期間の各積分時間間隔に対して決定される。このように決定された各X線電荷値に対して、
図2のX線検出方法は、X線電荷値を光子計数閾値と比較するステップ206を含む。X線電荷値が光子計数閾値未満である場合は、X線電荷値は推定された光子カウントを表す量子化された電荷値で置き換えられ(ステップ208)、量子化された電荷値は記録された電荷値として記憶される(ステップ210)。そうでない場合は、X線電荷値は、記録された電荷値として記憶される(ステップ212)。言い換えれば各画素の各蓄積された電荷値に対して、対応するX線電荷値は、強い信号に対してはアナログ電荷積分型出力モードで(例えば従来の電荷積分型検出器読み出しでのように)、又は弱い信号に対しては光子計数出力モードで出力される。
【0085】
光子計数出力モードでのアナログ電荷積分型X線検出器の使用は、少なくとも部分的に、十分高速な読み出し能力、及び十分低い読み出しノイズを有する光検出器アレイが現在入手可能であるという事実によって可能になる。従って全体として、十分短いサブフレーム期間を提供する能力を有する光検出器アレイ、読み出しユニット、及び処理ユニットを選択することによって典型的にはアレイの各画素は、各読み出しの間に多くても1個又は数個のX線光子を登録するようになる。次いでX線検出器の量子利得が高く、ノイズが低い場合は、サブフレーム内で受け取られた光子の数を信頼性良く計数することが可能になる。
【0086】
特に、検出器の量子利得(すなわち各入射X線に対してセンサ内で発生される電子の平均個数)がgであり、検出器のノイズがnである場合は、ゼロ個と1個のX線を区別する確率は、erf(g/n)で与えられることができ、erfは誤差関数である。またg/nが1よりずっと大きい実施形態では、光子計数が構想され得ることが理解されるであろう。言い換えれば、所与のサブフレームの間のX線電荷値が、g/n≫1であるgに近似的に等しい場合は、ある程度の確実性を有して、この電荷値は単一の光子事象を表すと結論され得る。一方、所与のサブフレームの間のX線電荷値がgよりずっと小さい場合は、ある程度の確実性を有して、光子事象はなかったと結論され得る。これは数学的に以下のように表され得る。
【0090】
は処理ユニットによって記録された、記録された電荷値である。
図2の方法では記録された電荷値
【0094】
、又は推定された光子計数を表す量子化された電荷値gに対応する。
【0095】
現在、X線光子当たり200から300電子の程度の量子利得、及び画素当たり20電子未満の総ノイズ値を有するX線検出器が達成され得る。これは各サブフレームの間に画素当たりわずかに1又はゼロカウントが見られるように画素当たりの計数率が低い限り、電荷積分型X線検出器を用いた光子計数を企図することが可能になる。従っていくつかの実施形態では、読み出しノイズは約200電子よりかなり少ないことが望ましく、なぜならこれは現在のX線検出器の量子利得の典型値を表すからである。
【0096】
上述の手順は、いずれのサブフレームの間も画素当たりのカウントの数が一般に1を超えないように、画素当たりの光子事象の数が低いままである限り良好に機能する。より高い計数率に対して、各画素は、いずれかのサブフレームの間に2個以上の光子事象を登録し得る。しかしサブフレーム当たり画素当たりにわずかに数個の光子事象が登録される場合は、以下で説明されるように依然として光子計数を達成することが可能となり得る。
【0097】
N個とN+1個の光子を区別する確率は、表式erf[g/sqrt(n
2+N
2δg)]から計算されることができ、δgはスワンク効果などによる量子利得における統計的変動である。この表式は、所与の画素における光子の数Nが増加するのに従って、信頼性のある光子計数を達成することがますます難しくなることを示す。例えばg=200電子、n=20電子、及びδg=30電子である実施形態では一般に、画素当たり約3カウントより多くを信頼性良く計数すること(又は言い換えれば、99.99%の信頼度で画素当たり2個と3個の光子を信頼性良く区別すること)は不可能となる。
【0098】
従って一般に、それを超えて真の光子計数を達成することはもはや不可能となる最大計数率が存在する。この最大計数率を超えると、各画素から読み出された蓄積された電荷から決定されるX線電荷値は、従来の電荷積分型X線検出器のようにアナログ出力モードで記録されることができる。例えばサブフレーム当たり画素当たり3個の光子までを計数する能力を有する電荷積分型X線検出器の場合は、所与のサブフレームn、及び所与の画素i,jに対して記録される電荷値
【0102】
式(10)は、所与のサブフレーム内で画素において3個未満の光子事象が登録されたときは、アナログX線電荷値
【0104】
は、ゼロと3の間の整数個の光子に対応する量子化された電荷値(すなわち0、g、2g、又は3g)によって置き換えられることを示す。しかしサブフレーム当たり3個より多い光子事象を有する画素に対しては、アナログ情報が維持される。式(10)に記載された計算手順は例のみとして提供され、光子を計数するため及び/又は、アナログ及び光子計数出力モードを切り換えるために、他の実施形態では異なる閾値が用いられ得ることが理解されるであろう。具体的には、特定の検出器の特定の量子利得及びノイズ値が、どれだけ多くのX線がこのようにして計数され得るかを決定することになる。
【0105】
アレイの各画素i,jに対して、X線電荷値
【0108】
【数31】
は、以下のように合計されることができる。
【0110】
ただしNは各リセットの間のサブフレームの数(例えば
図3ではN=5)であり、及びpは総捕捉時間フレーム内のリセット期間の数(例えば
図3ではp=3)である。
【0113】
は、純粋にデジタル情報からなり得る(例えば
【0115】
、ただしLは0と3×p×Nとの間の整数である)。このような場合、
【0117】
は、総捕捉時間フレームにわたって画素i,jによって登録された光子の数の推定を提供することができる。一方、
【0121】
は、従来の電荷積分型X線検出器でのようにアナログ信号として解釈されることになる。
【0122】
要約すると
図2の方法は、混合型光子計数/アナログ出力モードにおけるX線検出を提供する。各X線電荷値は、推定された光子カウントを表す量子化された電荷値で置き換えられ得るか、又はアナログ値として保持され得る。これは従来の電荷積分型又は光子計数検出器のいくつかの制限を克服し、一方でそれらのそれぞれの利点の恩恵を受ける。例えば高い到来光子率においては、検出器飽和を避けるように、一定数の非破壊読み出しの後に周期的に画素をリセットすることによって、従来の電荷積分型検出器と比べて、ハイエンドのダイナミックレンジが拡大され得る。高いフレームレートでの読み出し制限、及び高い到来光子率での計数率飽和がそれぞれ、電荷積分型検出方式、及び強い露出のもとでのアナログ形式において記録された電荷値を保持する可能性によって軽減されるので、ハイエンドのダイナミックレンジはまた、従来の光子計数検出器に対して拡大され得る。さらに従来の電荷積分型検出器のローエンドのダイナミックレンジは、弱い露出のもとで光子計数モードに切り換えることによって拡大されることができ、それにより暗電流及び読み出しノイズ問題を回避又は緩和する。
【0123】
図4は、
図1に示されるものなどの検出器を用いることができる、本発明の代替的実施形態を示すフロー図である。
図4の方法は、画素から蓄積された電荷を読み出すステップ402、及び読み出された蓄積された電荷からX線電荷値を決定するステップ404を含むという点で、
図2のものと同様である。しかし
図4の方法では電荷積分型X線検出器は、混合型光子計数/アナログ出力モードにおいてではなく、純粋に光子計数モードにおいて動作可能である。言い換えれば方法は、ステップ404で決定された各X線電荷値を、光子計数閾値と比較する必要はない。その代わりにステップ404の後に、X線電荷値を、推定された光子カウントを表す量子化された電荷値で置き換えるステップ(ステップ406)が直接続く。しかし当業者は、X線電荷値が光子計数閾値未満である場合にのみステップ406が実行される他の実施形態があり得ることを理解するであろう。
図4の実施形態は、光子カウントが適度に正確であることが予想される場合、例えばサブフレーム時間が十分短いとき、及び/又は十分弱い露出条件下であるときに実装され得る。
【0124】
図5のフロー図は、
図1に示されるものなどの検出器を用いる、本発明の別の実施形態を表す。
図5の方法は、到来光子が画素境界において光検出器アレイにぶつかるときに生じる、電荷又は光子共有の効果に対処する。これは、複数の画素の間での光子エネルギーの分割が、画素のいずれも検出閾値に到達することを妨げ得るので、計数の誤りに繋がり得る。電荷共有はまた、画素サイズの減少が画素間の電荷共有の効果を増加させ、従って検出器の応答を悪化させるので、画素の最小の達成可能サイズに制限を課す。
【0125】
入射X線光子のエネルギーに応じて、電荷共有は3つの主な結果に繋がり得る。第1に、画素のうちの1つで検出された電荷が閾値より高くなる場合があり、従ってこの画素内で光子が計数される。一方、隣接画素で検出された信号は閾値より低く、これらの画素では光子は計数されない。第2に、検出された電荷があらゆる画素において閾値未満となる場合があり、それにより光子は全く計数されない。第3に、より高いエネルギーの光子に対して、又はより低い閾値設定に対して、生成される電荷の量が2つ以上の画素で閾値を超えるのに十分に大きい場合があり、従ってこのX線光子の複数の計数に繋がる。
【0126】
電荷共有は、直接及び間接光子計数X線検出器の両方において生じ得る。直接光子計数検出器では、単一のX線光子がセンサにおいて吸収されるとき、それは印加された電界によって収集電極に輸送される有限の半径の多くの電子−正孔対(すなわち通常は数千の)を発生する。拡散及びクーロン反発力により、電荷雲の直径は、それが収集電極に向かってドリフトするにつれて増加する。変換が画素間の境界近く又はそこで生じたときは、単一のX線光子によって生成された電荷は、2つ以上の隣接画素によって部分的に検出され、それらの間で共有される。
【0127】
同様に、単一のX線が間接光子計数X線検出器のシンチレータにおいて吸収され、その後に可視光に変換される場合は、プロセスから結果としてやはり有限の半径を有する通常は数百個の光学光子を生じる。従ってこの光学光子の「雲」はまた、結果として電荷共有の効果を生じる。この点に関して、この場合は技術的には隣接した画素の間で共有される電荷ではなく光学光子であるが、間接光子計数検出器において生じるこの共有現象も、本明細書では話を簡単にするために「電荷共有」と呼ばれることが理解されるであろう。
【0128】
実際には吸収されたX線によって生成される信号は、有限の点広がり関数を有し、それにより信号は通常、いくつかの隣接した画素にわたって広がることになる。X線検出器が光子計数モードで動作するいくつかの実施形態では、光子事象を算定するために、隣接画素のX線電荷値を考慮し、一緒に組み合わせることが適切である。
【0129】
例えば、点広がり関数及び画素サイズの両方が100ミクロンに等しい実施形態では、所与の光子事象からの信号は、点広がり関数の中心がアレイに偶然、画素の中心近くで、又は画素間の境界近くでぶつかるかに応じて、すべて1つの画素において登録される場合もあり、又は2つ以上の画素の間で共有される場合もある。信号が複数の画素の間で共有されるときは、光子事象を識別することは、隣接画素のブロックから蓄積された電荷を読み出し、画素ブロック内の各画素のX線電荷値を決定し、このようにして決定されたX線電荷値を何らかの方法で組み合わせることを必要とし得る。当業者は、所与の実施形態において用いられるブロックのサイズは、点広がり関数の範囲及び画素サイズに依存し得ることを理解するであろう。例えばいくつかの実施形態では、基準画素と少なくとも1つの隣接画素は、m×n画素ブロックを定義することができ、m及びnのそれぞれは正の整数である。
【0130】
図5をさらに参照すると方法は、読み出し時間t
nにおいて、光検出器アレイの基準画素a,bから蓄積された電荷を読み出すステップ502を含む。方法はまた、読み出された蓄積された電荷からX線電荷値
【0132】
を決定するステップ504を含む。この後に、光子事象が実際に画素a,bで生じたことの尤度を算定するために、画素a,bにおけるX線電荷値
【0134】
を、第1の閾値T
1と比較するステップ506が続く。第1の閾値T
1は、X線検出器の量子利得gの一定の割合として、例えばT
1=r
1×g、ただしr
1=0.20として表され得る。当業者は他の実施形態では、r
1に対する他の値、及び第1の閾値T
1を表す他のやり方が用いられ得ることを認識するであろう。
【0137】
が第1の閾値T
1以上である場合、方法500は、基準画素a,bの少なくとも1つの隣接画素i,jからから蓄積された電荷を読み出し、それから各隣接画素i,jに対するX線電荷値
【0139】
を決定するステップ508を含む。ステップ508の後に、基準画素
【0143】
のX線電荷値を合計して、合計された電荷値
【0145】
をもたらすステップ510が続く。これは数学的に以下のように表され得る。
【0147】
ただしこの例では、基準画素a,bと隣接画素i,jは一緒に、m×m画素ブロックを定義し、以下となる。
【0149】
式(12)でのように隣接画素における電荷を合計することによって、従来の光子計数検出器におけるカウントロスに繋がり得る電荷共有効果を除去する、又は少なくとも軽減することが可能となり得る。式(13)に記載された任意選択の条件は、画素a,bの所与の隣接画素i,jは、その隣接画素i,jのX線電荷値
【0151】
が第3の閾値T
3未満である場合(第2の閾値T
2がさらに以下で導入される)、式(12)の合計から除外されるようになることを意味する。第3の閾値T
3も、X線検出器の量子利得gの一定の割合として、例えばT
3=r
3×g、ただしr
3=0.05として表され得る。当業者は他の実施形態では、r
3に対する他の値、及び第3の閾値T
3を表す他のやり方が用いられ得ることを認識するであろう。隣接画素のいくつかを除外することは、合計におけるノイズを最小にするのに寄与し得ることが理解されるであろう。実際、所与のX線からの電荷のほとんどは、多くても数個の画素において登録されることになることが予想され、それにより合計において無視できない寄与を有するこれら数個の画素のみが、式(12)の合計に含められ得る。当業者は、隣接画素のX線電荷値を合計するための式(12)に記載された手順は説明のためのみに提供され、他の実施形態では他の手順が用いられ得ることを認識するであろう。具体的には、式(12)に記載された手順は基準画素を中心としたm×m画素ブロックを考慮するが、他の画素構成も用いられ得る。
【0152】
図5の方法はさらに、光子事象が画素ブロック内部で実際に生じた尤度を算定するために、式(12)の合計された電荷値
【0154】
を第2の閾値T
2と比較するステップ512を含む。第2の閾値T
2も、X線検出器の量子利得gの一定の割合として、例えばT
2=r
2×g、ただしr
2=0.50として表され得る。当業者は他の実施形態では、r
2に対する他の値、及び第2の閾値T
2を表す他のやり方が用いられ得ることを認識するであろう。合計された電荷値
【0156】
が第2の閾値T
2以上であり、また光子計数閾値未満である場合は、個別の光子事象が画素ブロック内部で検出されたことが、良好な統計的確実性を有して結論され得る。
【0157】
個別の光子事象が画素ブロック内部で生じたことが確立された後に、そのX線電荷値が最も高い強度を有する、ブロックの画素において光子事象が生じたと想定され得る。この画素は、本明細書では画素i
max,j
maxとして参照され、基準画素a,b、又は隣接画素i,jである場合がある。次いで方法は、光子事象がその特定の画素で生じたことを示すために、画素i
max,j
maxのX線電荷値
【0161】
で置き換えるステップ514を含む。方法はまた、場合に応じて基準画素a,bを含む、ブロック内の残りの画素のX線電荷値をゼロに設定するステップ516を含む。さらに、次いでブロックのすべての画素が処理されたと見なされることができ、従って上述の第1の閾値を超え得る隣接画素に関わるいずれの他の合計において、考慮されなくてもよくなり得る。
【0162】
ステップ512において式(12)によって与えられる合計
【0164】
が第2の閾値T
2未満である場合は、基準画素a,bのX線電荷値
【0168】
に設定される(ステップ518)。言い換えれば光子事象は検出されなかったと結論され、それにより画素a,bにおける信号はゼロに設定される。このような場合、画素ブロック内の隣接画素における電荷
【0170】
は、これらの隣接画素は依然として隣接画素ブロック内の実際の光子事象の一部であり得るので、ゼロに設定され得ない、又はその必要はない。
【0171】
上述の計数手順は、画素当たりの光子事象の数が低いままであり、それによりいずれの積分時間間隔の間での画素当たりのカウントの数が1を超えない限り、良好に機能する。より高い計数率に対して、各画素は、任意の積分時間間隔の間に2個以上の光子事象を登録し得る。しかし積分時間間隔当たり画素当たりに数個の光子事象のみが登録されるときは、以下で説明されるように、光子計数を達成し、電荷共有の効果を補正することが依然として可能となり得る。
【0172】
前述のように一般に、それを超えてはもはや真の光子計数を達成することは可能でなくなる最大計数率が存在する。しかしこのような場合、従来の電荷積分型X線検出器のように、アナログモードで所与の画素のX線電荷値を記録することが可能である。例えば積分時間間隔当たり画素当たり3個の光子までを計数する能力を有する検出器の場合は、式(10)は以下のように一般化され得る。
【0174】
式(14)は、積分時間間隔当たり3個未満の光子事象を有する画素に対して、もとのアナログX線電荷値
【0176】
は、推定された光子カウントを表す量子化された電荷値によって置き換えられることを示す。しかし積分時間間隔当たり3個より多い光子事象を有する画素に対しては、画素内のアナログ情報が維持される。より具体的には、合計された電荷値
【0178】
が、第2の閾値T
2=0.5g以上であり、光子計数閾値3.5g未満である場合は、ブロックの最も大きなX線電荷値を有する画素i
max,j
maxのX線電荷値
【0182】
で置き換えられ、これは合計された電荷値
【0184】
に基づき、推定された光子カウントを表す。さらに、ブロック内の残りの画素のX線電荷値はゼロに設定される。合計された電荷値
【0186】
が第2の閾値T
2=0.5g未満であり、光子計数閾値3.5g未満である場合は、基準画素a,bのX線電荷値
【0188】
はゼロに設定される。最後に、合計された電荷値
【0190】
が光子計数閾値3.5g以上である場合は、基準画素a,bのX線電荷値
【0192】
は維持される。もちろん式(14)に記載された計算手順は例のみとして提供され、他の実施形態では、光子を計数するため及び/又は、アナログ及び光子計数出力モードの間で切り換えるための異なる閾値は、様々となり得る。
【0193】
本発明についてそのいくつかの実施形態を参照して示され述べられてきたが、当業者には添付の特許請求の範囲よって定義される本発明の範囲から逸脱せずに、本明細書で形、及び詳細において様々な変更がなされ得ることが認識されるであろう。