特許第6573690号(P6573690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573690呼吸機能検査装置および呼吸機能検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573690
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】呼吸機能検査装置および呼吸機能検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/087 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   A61B5/087
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-33553(P2018-33553)
(22)【出願日】2018年2月27日
(65)【公開番号】特開2019-146775(P2019-146775A)
(43)【公開日】2019年9月5日
【審査請求日】2019年1月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597129229
【氏名又は名称】チェスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄三
【審査官】 磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/129516(WO,A1)
【文献】 特開2007−029258(JP,A)
【文献】 桑平一郎,健診に必要な呼吸機能検査の基礎知識 2.フローボリューム曲線,総合健診,2016年 5月,Vol.43, No.3,pp.53-54,ISSN:1347-0086
【文献】 笠原靖紀,ここが知りたい!呼吸機能検査の図解なるほどQ&A 疾患・状態別に理解するためのQ&A スパイロメトリー編,呼吸器ケア,2014年 3月,Vol.12, No.3,pp.224-225,ISSN:1347-7285
【文献】 BROWN, C. Marlin,A computerized visual feedback display for easier and more accurate spirometry,Proceedings of the Human Factors Society Annual Meeting,1981年,Vol.25, No.1,pp.450-451,ISSN:0163-5182
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08−5/097
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の情報に基づいて、努力肺活量測定における肺気量の予測値を算出する算出部と、
前記努力肺活量測定により測定された被検者の呼出に基づいて、気流量と肺気量との関係を示すフローボリューム曲線を作成する作成部と、
前記作成部で作成されたフローボリューム曲線において、前記努力肺活量測定による測定値が前記予測値に到達する度合いを算出する演算部と、
前記演算部により算出された度合いに対応する画像を順次選択する選択部と、
前記選択部により選択された画像を表示部に表示させる表示制御部とを備え、
前記演算部は、前記努力肺活量測定による測定値が前記予測値に到達し、超過した場合、超過した度合いとして、前記努力肺活量測定による測定値の気流量を算出し、
前記選択部は、前記努力肺活量測定による測定値の気流量が所定の値を下回っている場合、この下回った時間からの経過時間に基づいて、前記努力肺活量測定による測定値が前記予測値に到達したときに表示する画像とは異なる画像を順次選択する呼吸機能検査装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記努力肺活量測定による測定値がピークフローに到達したときの第1気流量を算出し、
前記選択部は、前記演算部により算出された第1気流量に対応した画像群を選択し、前記画像群の中から前記演算部により算出された度合いに対応する画像を順次選択する請求項1に記載の呼吸機能検査装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記努力肺活量測定による測定値がピークフローに到達し、当該ピークフローから低下するときのフローボリューム曲線の傾きを算出し、
前記選択部は、前記演算部により算出されたフローボリューム曲線の傾きに対応した画像群を選択し、前記画像群の中から前記演算部により算出された度合いに対応する画像を順次選択する請求項1に記載の呼吸機能検査装置。
【請求項4】
前記選択部は、前記被検者の情報に対応した画像群を選択し、前記画像群の中から前記演算部により算出された度合いに対応する画像を順次選択する請求項1に記載の呼吸機能検査装置。
【請求項5】
音を出力する音出力部を備え、
前記選択部は、前記演算部により算出された度合いに対応する音を順次選択し、
前記音出力部は、前記選択部により選択された音を出力する請求項1から4のいずれか一項に記載の呼吸機能検査装置。
【請求項6】
前記努力肺活量測定による測定値の気流量が所定の値を下回って、前記異なる画像が表示されるまで、前記選択部は、前記努力肺活量測定による測定値が前記予測値に到達したときに表示する画像を選択する、請求項1に記載の呼吸機能検査装置。
【請求項7】
被検者の情報に基づいて、努力肺活量測定における肺気量の予測値を算出する算出工程と、
前記努力肺活量測定により測定された被検者の呼出に基づいて、気流量と肺気量との関係を示すフローボリューム曲線を作成する作成工程と、
前記作成工程で作成されたフローボリューム曲線において、前記努力肺活量測定による測定値が前記予測値に到達する度合いを算出する演算工程と、
前記演算工程により算出された度合いに対応する画像を順次選択する選択工程と、
前記選択工程により選択された画像を表示部に表示させる表示制御工程とをコンピュータに実行させる呼吸機能検査プログラムであって、
前記演算工程は、前記努力肺活量測定による測定値が前記予測値に到達し、超過した場合、超過した度合いとして、前記努力肺活量測定による測定値の気流量を算出し、
前記選択工程は、前記努力肺活量測定による測定値の気流量が所定の値を下回っている場合、この下回った時間からの経過時間に基づいて、前記努力肺活量測定による測定値が前記予測値に到達したときに表示する画像とは異なる画像を順次選択する呼吸機能検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸機能検査を行う呼吸機能検査装置および呼吸機能検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸機能検査(スパイロメトリ)とは、呼気量と吸気量とを測定し、呼吸の能力を調べる検査のことであり、換気の機能を調べる検査である。呼吸機能検査では、肺活量などを検査する。肺活量とは、吸入した空気を吐いたときの量で示される。
【0003】
また、最大吸気位から最大呼気位まで、できるだけ強く速く呼出させて得られる肺活量を努力肺活量(FVC、forced vital capacity)という。努力肺活量は、計測した気流量(フロー)と肺気量(ボリューム)との関係に基づいて、フローボリューム曲線で示すことができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、フローボリューム曲線を含む検査結果とともに、呼出開始時の努力度の良否を表示する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−229101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、努力肺活量は、最大吸気位から一気に呼出させたときの空気の量で示される。
【0007】
努力肺活量は、被検者に最大呼気および最大吸気を行わせることで信頼性の高い値となるものであり、被検者が最大限の努力を行わなかった場合には信頼性が低い値が測定されてしまう。また、一般的に、呼気または吸気の指示は、医師または検査技師等が行うが、医師または検査技師等の技量によって、被検者の努力にばらつきが生じてしまう。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、測定値が予測値に到達した後も、呼出を助長する画像を順次表示することができる呼吸機能検査装置および呼吸機能検査プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係る呼吸機能検査装置は、被検者の情報に基づいて、努力肺活量測定における肺気量の予測値を算出する算出部と、前記努力肺活量測定により測定された被検者の呼出に基づいて、気流量と肺気量との関係を示すフローボリューム曲線を作成する作成部と、前記作成部で作成されたフローボリューム曲線において、前記努力肺活量測定による測定値が前記予測値に到達する度合いを算出する演算部と、前記演算部により算出された度合いに対応する画像を順次選択する選択部と、前記選択部により選択された画像を表示部に表示させる表示制御部とを備え、前記演算部は、前記努力肺活量測定による測定値が前記予測値に到達し、超過した場合、超過した度合いを算出し、前記選択部は、前記超過した度合いに基づいて、前記努力肺活量測定による測定値が前記予測値に到達したときに表示する画像とは異なる画像を選択する。
【0010】
これにより、努力肺活量測定による測定値が予測値に到達したあとも、被検者が画像を見ながらさらに努力して呼出を継続することが期待される。よって、呼吸機能検査装置は、測定値が予測値に到達した後も、呼出を助長する画像を順次表示することができる。また、呼吸機能検査装置は、信頼性が高く、医師または検査技師等の技量によってばらつきが生じないように努力肺活量の測定を行うことができる。
【0011】
また、前記演算部は、前記努力肺活量測定による測定値が前記予測値に到達し、超過した場合、前記超過した度合いとして、前記努力肺活量測定による測定値の気流量を算出し、前記選択部は、前記努力肺活量測定による測定値の気流量が所定の値を下回っている場合、この下回った時間からの経過時間に基づいて画像を順次選択する構成でもよい。
【0012】
呼吸機能検査装置は、努力肺活量測定による測定値が予測値を超えたあとも、呼出を助長する画像を順次切り替えながら表示することができる。また、呼吸機能検査装置は、信頼性が高く、医師または検査技師等の技量によってばらつきが生じないように努力肺活量の測定を行うことができる。
【0013】
また、前記演算部は、前記努力肺活量測定による測定値がピークフローに到達したときの気流量を算出し、前記選択部は、前記演算部により算出された気流量に対応した画像群を選択し、前記画像群の中から前記演算部により算出された度合いに対応する画像を順次選択する構成でもよい。
【0014】
ここで、努力肺活量測定により、肺の状態を知ることができる。肺の状態には、正常の状態、慢性気管支炎の状態、気管支喘息の状態、肺気腫の状態など複数存在する。なお、詳細には、最大吸気位から一秒間に強制的に吐き出すことのできる空気の量である1秒量(FEV1)を観察することにより、肺の状態(正常な状態であるか、閉塞性肺疾患であるか)を予測することができる。また、肺の状態によって、フローボリューム曲線におけるピークフローの気流量が異なる。呼吸機能検査装置は、ピークフローの気流量に対応した画像群、すなわち、肺の状態に適した画像群を選択し、選択した画像群の中から努力肺活量測定による測定値が予測値に到達する度合いに対応した画像を選択して表示する。よって、呼吸機能検査装置は、肺の状態を考慮して被検者の負担を軽減しながら、測定値が予測値に到達した後も、呼出を助長する画像を順次表示することができる。呼吸機能検査装置は、医師または検査技師等の技量によってばらつきが生じないように努力肺活量の測定を行うことができる。また、呼吸機能検査装置は、被検者が予測値を超えて最大限の努力を行うことを助長するので、FVC(努力肺活量)が改善され、FVC値の信頼性を高めることができ、1秒率(G)の信頼性も高めることができる。また、呼吸機能検査装置は、1秒率の信頼性が高いので、1秒率を用いて行われる閉塞性換気障害の判定精度を向上することができる。閉塞性換気障害とは、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息などである。また、1秒率(G)とは、呼吸機能検査の項目の一つで、息を努力して吐き出したときに呼出される空気量(FVC(努力肺活量))のうち、最初の一秒間に吐き出された量(1秒量)の割合である。
【0015】
また、前記演算部は、前記努力肺活量測定による測定値がピークフローに到達し、当該ピークフローから低下するときのフローボリューム曲線の傾きを算出し、前記選択部は、前記演算部により算出されたフローボリューム曲線の傾きに対応した画像群を選択し、前記画像群の中から前記演算部により算出された度合いに対応する画像を順次選択する構成でもよい。
【0016】
肺の状態によって、フローボリューム曲線におけるピークフローから低下するときのフローボリューム曲線の傾きが異なる。呼吸機能検査装置は、ピークフローから低下するときのフローボリューム曲線の傾きに対応した画像群、すなわち、肺の状態に適した画像群を選択し、選択した画像群の中から努力肺活量測定による測定値が予測値に到達する度合いに対応した画像を選択して表示する。よって、呼吸機能検査装置は、肺の状態を考慮して被検者の負担を軽減しながら、測定値が予測値に到達した後も、呼出を助長する画像を順次表示することができる。また、呼吸機能検査装置は、信頼性が高く、医師または検査技師等の技量によってばらつきが生じないように努力肺活量の測定を行うことができる。
【0017】
また、前記選択部は、前記被検者の情報に対応した画像群を選択し、前記画像群の中から前記演算部により算出された度合いに対応する画像を順次選択する構成でもよい。
【0018】
被検者の情報とは、例えば、性別、身長、年齢などである。呼吸機能検査装置は、被検者の情報に対応した画像群、すなわち、被検者に適した画像群を選択し、選択した画像群の中から努力肺活量測定による測定値が予測値に到達する度合いに対応した画像を選択して表示する。よって、呼吸機能検査装置は、測定値が予測値に到達した後も、呼出を助長する画像を順次表示することができる。また、呼吸機能検査装置は、信頼性が高く、医師または検査技師等の技量によってばらつきが生じないように努力肺活量の測定を行うことができる。
【0019】
また、呼吸機能検査装置は、音を出力する音出力部を備え、前記選択部は、前記演算部により算出された度合いに対応する音を順次選択し、前記音出力部は、前記選択部により選択された音を出力する構成でもよい。
【0020】
これにより、努力肺活量測定による測定値が予測値に到達したあとも、被検者が画像と音声とにより、さらに努力して呼出を継続することが期待される。よって、呼吸機能検査装置は、画像と音とを効果的に活用し、測定値が予測値に到達した後も、呼出を助長する画像を順次表示することができる。また、呼吸機能検査装置は、信頼性が高く、医師または検査技師等の技量によってばらつきが生じないように努力肺活量の測定を行うことができる。
【0021】
本発明に係る呼吸機能検査プログラムは、被検者の情報に基づいて、努力肺活量測定における肺気量の予測値を算出する算出工程と、前記努力肺活量測定により測定された被検者の呼出に基づいて、気流量と肺気量との関係を示すフローボリューム曲線を作成する作成工程と、前記作成工程で作成されたフローボリューム曲線において、前記努力肺活量測定による測定値が前記予測値に到達する度合いを算出する演算工程と、前記演算工程により算出された度合いに対応する画像を順次選択する選択工程と、前記選択工程により選択された画像を表示部に表示させる表示制御工程とをコンピュータに実行させる呼吸機能検査プログラムであって、前記演算工程は、前記努力肺活量測定による測定値が前記予測値に到達し、超過した場合、超過した度合いを算出し、前記選択工程は、前記超過した度合いに基づいて、前記努力肺活量測定による測定値が前記予測値に到達したときに表示する画像とは異なる画像を選択する。
【0022】
これにより、努力肺活量測定による測定値が予測値に到達したあとも、被検者が画像を見ながらさらに努力して呼出を継続することが期待される。よって、呼吸機能検査装置は、測定値が予測値に到達した後も、呼出を助長する画像を順次表示することができる。また、呼吸機能検査装置は、信頼性が高く、医師または検査技師等の技量によってばらつきが生じないように努力肺活量の測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、測定値が予測値に到達した後も、呼出を助長する画像を順次表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、呼吸機能検査装置の構成を示す図である。
図2図2は、スパイログラム(努力呼気曲線)の一例を示す図である。
図3図3は、処理部の構成を示す図である。
図4図4は、フローボリューム曲線の一例を示す図である。
図5図5は、測定値が予測値に到達する度合いを示す図である。
図6図6は、測定値が予測値に到達する度合い、および、測定値が予測値に到達し、超過したときの度合いに対応する画像がディスプレイに表示される例を模式的に示す図である。
図7図7は、努力肺活量測定による測定値の気流量が所定の値を下回り、この下回った時間からの経過時間に基づいて画像を順次選択する手順についての説明に供する図である。
図8図8は、肺の状態に応じたフローボリューム曲線の形状を示す図である。
図9図9は、呼吸機能検査装置の動作についての説明に供するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。呼吸機能検査装置(スパイロメトリー)はボリュームの測定方法により気流型と気量型に分けられる。気流型は、流量計で気流の流速を測定し、その測定した流速を積分することで気量を得る方法である。気流型には、差圧式流量計や熱線式流量計などが存在する。また、容積の変化を計測し、肺気量を算出方式を気量型と呼ぶが、気量型では気量を微分することで気流量を算出することができる。以下の実施例としては、呼吸機能検査装置1は差圧式流量計(気流型)として説明するが、他の気流型や気量型であってもよい。
【0026】
図1は、本実施形態に係る呼吸機能検査装置1の構成を示す図である。呼吸機能検査装置1は、フローセンサ11と、圧力センサ12と、処理部13と、操作部14と、ディスプレイ15と、スピーカ16と、プリンタ17とを備える。
【0027】
フローセンサ11は、呼吸流量に比例した差圧を発生させるものであり、被検者が口にくわえて息を吹き込むための吹込口を備えている。被検者が吹込口から息を吹き込むと、フローセンサ11内に差圧が生じる。圧力センサ12は、この差圧を検出する。
【0028】
処理部13は、圧力センサ12により検出した差圧に基づいて、処理を行い、各種の測定データを算出する。処理部13の具体的な動作については、後述する。
【0029】
操作部14は、例えば、キーボートとマウスとから構成されており、医師等による操作を受け付ける。操作部14は、操作に応じた信号を生成し、生成した信号を処理部13に送信する。処理部13は、操作部14から送信されてきた信号に応じた処理を行う。
【0030】
ディスプレイ15は、処理部13により処理された内容を表示する。プリンタ17は、処理部13により処理された内容をプリントアウトする。ディスプレイ15に表示された内容およびプリンタ17によりプリントアウトされた資料は、医師または検査技師等により被検者の診断などに利用される。
【0031】
スピーカ16は、音を出力する音出力部である。スピーカ16は、例えば、処理部13から送信されてきた音声ガイドを出力する。音声ガイドとは、呼吸機能検査において、被検者に呼気および吸気を促すためのガイドである。
【0032】
このように構成される呼吸機能検査装置1は、呼吸機能検査により測定された測定結果を様々な形態でディスプレイ15に表示する。例えば、呼吸機能検査装置1は、肺気量分画およびフローボリューム曲線(flow volume curve)などを測定し、測定結果をディスプレイ15に表示する。
【0033】
ここで、肺気量分画について説明する。肺気量分画とは、深さにより、予備吸気量(IRV、inspiratory reserve volume)、1回換気量(TV、tidal volume)、予備呼気量(ERV、expiratory reserve volume)および残気量(RV、residual volume)の4つの1次分画(volume)と、2つ以上の1次分画からなる2次分画(capacity)とで構成される。
【0034】
予備吸気量とは、安静時吸息の終了からさらに最大努力により追加吸入しうる空気の量(容積)である。1回換気量とは、毎回の呼吸で肺を出入りする空気の量である。予備呼気量とは、安静時呼息の終了からさらに努力して呼出しうる最大の空気の量である。残気量とは、安静呼気位から最大息を吐き出した際に肺の中に残っている空気の量である。
【0035】
2次分画は、肺活量(VC、vital capacity)、全肺気量(TLC、total lung capacity)、最大吸気量(IC、inspiratory capacity)、機能的残気量(FRC、functional residual capacity)の4つで構成される。
【0036】
肺活量とは、息を最大限吸い込んだあとに肺から吐き出せる空気の量のことであり、全肺気量から残気量を引いた値と一致する。全肺気量とは、最大に膨らんだときの肺の容量のことである。最大吸気量とは、息を最大限吸い込んだときの空気の量のことである。機能的残気量とは、安静呼吸で息を吐いたときに肺内に残っている空気の量のことである。
【0037】
また、呼吸機能検査の基本的な検査法をスパイロメトリという。呼吸機能検査装置1は、スパイロメトリにより、スパイログラムを作成する。スパイログラムとは、X軸を時間とし、Y軸を肺気量(ボリューム)の変化として記録された曲線のことである。
【0038】
また、肺活量は、測定の仕方により呼び方が異なる。VC、はゆっくりと呼吸した際に測定される最大呼気位と最大吸気位との間の肺容量変化のことで、FVC(forced vital capacity)との比較から、SVC(slow vital capacity)とも呼ばれる。最大呼気位とは、最大限に空気を吐き出したときの呼気の位置である。最大吸気位とは、最大限に空気を吸い込んだときの吸気の位置である。
【0039】
また、最大吸気位からできるだけ速く最大限の努力呼気をさせて得られるスパイログラムを努力呼気曲線と呼ぶ。図2は、スパイログラム(努力呼気曲線)の一例を示す図である。
【0040】
最大吸気位から最大呼気位間の肺気量(ボリューム)の変化をFVCという。また、最大吸気位から一秒間に強制的に吐き出すことのできる空気の量を1秒量(FEV1)という。
【0041】
ここで、呼吸機能検査装置1は、アニメーション画像(以下、画像という。)をディスプレイ15に表示させながらFVCの測定を行う機能を有している。以下に、FVCの測定時に画像を表示するときにおける処理部13の動作と構成について説明する。
【0042】
図3は、処理部13の構成を示す図である。処理部13は、算出部21と、作成部22と、演算部23と、選択部24と、表示制御部25とを備える。
【0043】
算出部21は、被検者の情報に基づいて、努力肺活量測定における肺気量の予測値を算出する。被検者の情報とは、例えば、性別、身長、年齢などである。算出部21は、所定の関数に性別、身長、年齢を入力することにより、被検者の肺気量の予測値を算出する。なお、予測値を算出するための関数は、様々あり、例えば、「日本人のスパイログラムと動脈血液ガス分圧基準値(日本呼吸器学会肺生理専門員会 2001年4月)」に記載されている式(下記(1)式)を利用してもよい。(1)式は、性別に身長と年齢の2変数の重回帰分析を行って予測した式である。
Y=a×身長(cm)+b×年齢+定数 ・・・(1)
【0044】
Yは、予測値を示す。a、bおよび定数は、上記論文に記載されている表4から求めることができる。
【0045】
作成部22は、努力肺活量測定により測定された被検者の呼出に基づいて、気流量と肺気量との関係を示すフローボリューム曲線を作成する。図4は、フローボリューム曲線の一例を示す図である。縦軸は、呼出の勢いを示すフロー(気流量(l/s))を示し、横軸は、呼出する空気のボリューム(肺気量(l))を示している。
【0046】
ここで、フローボリューム曲線について説明する。フローボリューム曲線の点a1から点a2は、被検者が吹込口を口にくわえて、普通に空気を吸ったときの結果を示している。フローボリューム曲線の点a2から点a3は、被検者が吸った空気を吐いているときの結果を示している。フローボリューム曲線の点a3から点a4は、被検者が空気を胸いっぱいになるまで一気に吸い込んだときの結果を示している。
【0047】
フローボリューム曲線の点a4から点a5は、被検者が空気を勢いよく一気に吐き出したときの結果を示している。点a4は、最大吸気位である。点a5は、呼気の気流量の最大であり、ピークフローである。
【0048】
フローボリューム曲線の点a5から点a6は、被検者が吐けなくなるまで空気を吐き続けたときの結果を示している。点a6は、最大呼気位である。本実施例では、フローボリューム曲線の点a4から点a6に示す部分Dにおいて、被検者に最大限努力させて、十分の空気を吐き出させることを目的にしている。
【0049】
演算部23は、作成部22で作成されたフローボリューム曲線において、努力肺活量測定による測定値が予測値に到達する度合いを算出する。
【0050】
図5は、測定値が予測値に到達する度合いを示す図である。度合いとは、最大吸気位Xを始点として、測定値が予測値に到達する割合、および測定値が予測値を超過した割合を示している。
【0051】
図5(a)は、測定値V11が予測値V2に到達する度合いが5%の場合を示している。図5(b)は、測定値V12が予測値V2に到達する度合いが40%の場合を示している。図5(c)は、測定値V13が予測値V2に到達する度合いが100%の場合を示している。図5(d)は、測定値V14が予測値V2に到達し、超過したときの度合いが110%の場合を示している。
【0052】
選択部24は、演算部23により算出された度合いに対応する画像を順次選択する。表示制御部25は、選択部24により選択された画像をディスプレイ15に表示させる。
【0053】
画像は、記憶部31に保存されている。具体的には、選択部24は、演算部23により算出された度合いに対応する画像を記憶部31から読み出す。選択部24は、読み出した画像を表示制御部25に送信する。表示制御部25は、選択部24から送信されてきた画像を順次、ディスプレイ15に表示させる。
【0054】
また、演算部23は、努力肺活量測定による測定値が予測値に到達し、超過したときの度合いを算出する。選択部24は、超過したときの度合いに基づいて、努力肺活量測定による測定値が予測値に到達したときに表示する画像Paとは異なる画像Pbを選択する。詳細は後述するが、画像Pbは、画像Paに対して、例えば、色、画像の大きさ、絵柄などが異なっている画像である。
【0055】
図6は、測定値が予測値V2に到達する度合い、および、測定値が予測値V2に到達し、超過したときの度合いに対応する画像がディスプレイ15に表示される例を模式的に示す図である。
【0056】
測定値V11が予測値V2に到達する度合いが5%のときには、図6(a)に示すように、画像P1(少女が風船を膨らます絵柄の画像)がディスプレイ15に表示されている。
【0057】
測定値V12が予測値V2に到達する度合いが40%のときには、図6(b)に示すように、画像P2(風船が画像P1よりも膨らんでいる絵柄の画像)がディスプレイ15に表示されている。
【0058】
測定値V13が予測値V2に到達する度合いが100%のときには、図6(c)に示すように、画像P3(風船が画像P2よりも膨らんでいる絵柄の画像)がディスプレイ15に表示されている。
【0059】
測定値V14が予測値V2に到達し、超過したときの度合いが110%のときには、図6(d)に示すように、画像P4(膨らませた風船で少女が空を飛ぶ絵柄の画像)がディスプレイ15に表示されている。
【0060】
例えば、選択部24は、度合いが0%から20%のときには、画像P1を選択し、度合いが21%から80%のときには、画像P2を選択し、度合いが81%から100%のときには、画像P3を選択し、度合いが100%を超えたときには、画像P4を選択する。なお、選択部24によって画像を選択するタイミングは、上述に限られない。
【0061】
また、画像P1から画像P4は、被検者が画像を見ながら努力して呼出の継続を助長するような画像である。とくに、画像P3は、測定値V13が予測値V2に到達する度合いが100%なので、一応の目安(目標)となる画像であるが、測定値が予測値に到達したあとも、被検者が画像を見ながらさらに努力して呼出の継続を助長するような画像であることが好ましい。
【0062】
例えば、呼吸機能検査装置1は、測定値が予測値に到達する度合いに応じて、風船を膨らませる図柄の画像を表示し、測定値が予測値に到達し、超過したときの度合いに応じて、膨らませた風船で空に浮かんでゆく図柄の画像を表示する。
【0063】
また、図6では、測定値が予測値V2に到達する度合い、および、測定値が予測値V2に到達後に超過したときの度合いに基づいて、4つの異なる画像が順次選択されて、ディスプレイ15に表示される例を示しているが、画像数は4つに限られない。
【0064】
呼吸機能検査装置1では、努力肺活量の測定において、被検者が予測値を超えて最大限の努力を行うことが期待される。よって、呼吸機能検査装置1は、測定値が予測値に到達した後も、呼出を助長する画像を順次表示することができる。また、呼吸機能検査装置1は、医師または検査技師等の技量によってばらつきが生じないように努力肺活量の測定を行うことができる。また、呼吸機能検査装置1は、被検者が予測値を超えて最大限の努力を行うことを助長するので、FVC(努力肺活量)が改善され、FVC値の信頼性を高めることができ、1秒率(G)の信頼性も高めることができる。また、呼吸機能検査装置1は、1秒率の信頼性が高いので、1秒率を用いて行われる閉塞性換気障害の判定精度を向上することができる。閉塞性換気障害とは、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息などである。また、1秒率(G)とは、呼吸機能検査の項目の一つで、息を努力して吐き出したときに呼出される空気量(FVC(努力肺活量))のうち、最初の一秒間に吐き出された量(1秒量)の割合であり、(2)式により算出される。
1秒率=1秒量/FVC×100 ・・・(2)
【0065】
また、演算部23は、努力肺活量測定による測定値が予測値に到達し、超過した場合、超過した度合いとして、努力肺活量測定による測定値の気流量(フロー)を算出する。また、選択部24は、努力肺活量測定による測定値の気流量(フロー)が所定の値を下回っている場合、この下回った時間からの経過時間に基づいて画像を順次選択する。
【0066】
図7は、努力肺活量測定による測定値の気流量(フロー)が所定の値Thを下回り、この下回った時間であるT(0[sec])からの経過時間に基づいて画像を順次選択する手順についての説明に供する図である。なお、以下では、測定値の気流量(フロー)が所定の値Thを下回ってから、約2秒後(図7中のT(約2[sec]))に被検者の呼出が終了する場合を想定している。また、努力肺活量測定による測定値の気流量(フロー)が所定の値Thを下回った状態とは、被検者は、呼出がほとんどされていないが、呼出する努力をしている状態を想定している。また、図7に示すフローボリューム曲線の横軸は、流速であり、図7中に示す「T」、「T」、「T」および「T」は、呼出の経過時間を模式的に示すものである。
【0067】
選択部24は、測定値が予測値V2を超過した場合、画像P41を選択する。選択部24は、測定値の気流量(フロー)が所定の値Thを下回った場合、画像P42を選択する。選択部24は、測定値の気流量(フロー)が所定の値Thを下回った時間であるT(0[sec])からTが経過した場合、画像P43を選択する。選択部24は、測定値の気流量(フロー)が所定の値Thを下回った時間であるT(0[sec])からTが経過した場合、画像P44を選択する。画像P41は、例えば、画像P4と同様に、膨らませた風船で少女が空を飛ぶ絵柄の画像である。画像P42は、例えば、風船により少女が雲を超えて上昇する絵柄の画像である。画像P43は、例えば、画像P42よりもさらに上空まで少女が上昇する絵柄の画像である。画像P44は、例えば、宇宙まで少女が上昇する絵柄の画像である。なお、画像P41から画像P44の絵柄は、上述以外でもよく、画像P4よりもさらに風船が徐々に大きくなってゆく絵柄の画像でもよい。
【0068】
なお、図7では、測定値が予測値V2を超過し、測定値の気流量(フロー)が所定の値Thを下回り、この下回った時間であるT(0[sec])からの経過時間に基づいて、4つの異なる画像が順次選択される例を示しているが、画像数は4つに限られない。
【0069】
よって、呼吸機能検査装置1では、努力肺活量測定による測定値が予測値を超えたあとも、呼出を助長する画像を順次切り替えながら表示するので、努力肺活量の測定において、被検者が予測値を超えて最大限の努力を行うことが期待される。また、呼吸機能検査装置1は、信頼性が高く、医師または検査技師等の技量によってばらつきが生じないように努力肺活量の測定を行うことができる。
【0070】
また、演算部23は、努力肺活量測定による測定値がピークフローに到達したときの気流量(フロー)を算出する。選択部24は、演算部23により算出された気流量(フロー)に対応した画像群を選択し、画像群の中から演算部23により算出された度合いに対応する画像を順次選択する。
【0071】
努力肺活量測定により、肺の状態を知ることができる。肺の状態には、正常の状態と異常の状態とがある。異常の状態には、例えば、気管支炎、気管支喘息、肺気腫、肺線維症など複数存在する。
【0072】
図8は、肺の状態に応じたフローボリューム曲線の形状を示す図である。なお、図8中の「100%TLC」は、全肺気量(total lung capacity)が100%であることを示している。フローボリューム曲線の形状およびピークフローの気流量(フロー)は、図8に示すように、肺の状態によって異なる。
【0073】
例えば、肺が正常の状態のときのフローボリューム曲線F1におけるピークフローA1の気流量(フロー)は、「Y1」である。気管支炎のフローボリューム曲線F2におけるピークフローA2の気流量(フロー)は、「Y2」である。気管支喘息のフローボリューム曲線F3におけるピークフローA3の気流量(フロー)は、「Y3」である。肺気腫のフローボリューム曲線F4におけるピークフローA4の気流量(フロー)は、「Y4」である。肺線維症のフローボリューム曲線F5におけるピークフローA5の気流量(フロー)は、「Y5」である。なお、図8に示す各フローボリューム曲線の形状、各フローボリューム曲線におけるピークフローおよび気流量(フロー)は、一例であり、これに限られない。図8から分かるように、気管支喘息(F3)および肺気腫(F4)などの閉塞性換気障害のフローボリューム曲線は、肺線維症などの拘束性換気障害のフローボリューム曲線に比べて、低肺気量位の下降脚が下に凸になっている。このようにして、フローボリューム曲線の形状は、換気障害の種類によって特徴的になっている。低肺気量位は、1秒率で計測することができる。呼吸機能検査装置1は、1秒率の信頼性が高いので、1秒率を用いて行われる閉塞性換気障害の判定精度を向上することができる。とくに、1秒率が70%以下の場合には、閉塞性換気障害が疑われる。
【0074】
また、フローボリューム曲線の形状は、肺の状態に応じた呼出の特性を示している。呼出の特性に適合した絵柄の画像がディスプレイ15に表示されることが好ましい。
【0075】
そこで、各画像群は、それぞれ異なる絵柄により構成されている。具体的には、記憶部31では、ピークフローの気流量(フロー)ごとに、異なる画像群が対応付けて保存されている。
【0076】
例えば、選択部24は、ピークフローの気流量(フロー)が「Y1」の場合には、気流量(フロー)「Y1」に対応する画像群(例えば、風船を大きく膨らます絵柄の画像群)を選択し、選択した画像群の中から演算部23により算出された度合いに対応する画像を順次選択する。また、選択部24は、ピークフローの気流量(フロー)が「Y4」の場合には、気流量(フロー)「Y4」に対応する画像群(例えば、船が遠くから近くに迫ってくる絵柄の画像群)を選択し、選択した画像群の中から演算部23により算出された度合いに対応する画像を順次選択する。
【0077】
このようにして、呼吸機能検査装置1は、ピークフローの気流量(フロー)に対応した画像群、すなわち、肺の状態に適した画像群を選択し、選択した画像群の中から測定値が予測値に到達する度合いに対応した画像を順次選択して表示する。
【0078】
よって、呼吸機能検査装置1では、努力肺活量の測定において、肺の状態を考慮して被検者の負担を軽減しながら、被検者が予測値を超えて最大限の努力を行うことが期待される。よって、呼吸機能検査装置1は、測定値が予測値に到達した後も、呼出を助長する画像を順次表示することができる。また、呼吸機能検査装置1は、信頼性が高く、医師または検査技師等の技量によってばらつきが生じないように努力肺活量の測定を行うことができる。
【0079】
また、演算部23は、努力肺活量測定による測定値がピークフローに到達し、当該ピークフローから低下するときのフローボリューム曲線の傾きを算出する。選択部24は、演算部23により算出されたフローボリューム曲線の傾きに対応した画像群を選択し、画像群の中から演算部23により算出された度合いに対応する画像を順次選択する。
【0080】
図8に示すように、肺の状態によって、フローボリューム曲線におけるピークフローから低下するときのフローボリューム曲線の傾きが異なる。
【0081】
例えば、肺が正常の状態のときのフローボリューム曲線F1におけるピークフローA1から低下するときの傾きは、「B1」である。気管支炎のフローボリューム曲線F2におけるピークフローA2から低下するときの傾きは、「B2」である。気管支喘息のフローボリューム曲線F3におけるピークフローA3から低下するときの傾きは、「B3」である。肺気腫のフローボリューム曲線F4におけるピークフローA4から低下するときの傾きは、「B4」である。肺線維症のフローボリューム曲線F5におけるピークフローA5から低下するときの傾きは、「B5」である。なお、図8に示す各フローボリューム曲線におけるピークフローから低下するときの傾きは、一例であり、これに限られない。
【0082】
また、フローボリューム曲線におけるピークフローから低下するときの傾きは、肺の状態に応じた呼出の特性を示している。呼出の特性に適合した絵柄の画像がディスプレイ15に表示されることが好ましい。
【0083】
そこで、各画像群は、それぞれ異なる絵柄により構成されている。具体的には、記憶部31では、ピークフローから低下するときの傾きごとに、異なる画像群が対応付けて保存されている。
【0084】
例えば、選択部24は、ピークフローから低下するときの傾きが「B1」の場合には、傾き「B1」に対応する画像群(例えば、風船を大きく膨らます絵柄の画像群)を選択し、選択した画像群の中から演算部23により算出された度合いに対応する画像を順次選択する。また、選択部24は、ピークフローから低下するときの傾きが「B4」の場合には、傾き「B1」に対応する画像群(例えば、船が遠くから近くに迫ってくる絵柄の画像群)を選択し、選択した画像群の中から演算部23により算出された度合いに対応する画像を順次選択する。
【0085】
このようにして、呼吸機能検査装置1は、ピークフローから低下するときのフローボリューム曲線の傾きに対応した画像群、すなわち、肺の状態に適した画像群を選択し、選択した画像群の中から測定値が予測値に到達する度合いに対応した画像を順次選択して表示する。
【0086】
よって、呼吸機能検査装置1では、努力肺活量の測定において、肺の状態を考慮して被検者の負担を軽減しながら、被検者が最大限の努力を行うことが期待される。呼吸機能検査装置1は、測定値が予測値に到達した後も、呼出を助長する画像を順次表示することができる。また、呼吸機能検査装置1は、信頼性が高く、医師または検査技師等の技量によってばらつきが生じないように努力肺活量の測定を行うことができる。
【0087】
また、呼吸機能検査装置1は、ピークフローの気流量(フロー)とピークフローから低下するときのフローボリューム曲線の傾きとに対応した画像群、すなわち、肺の状態に適した画像群を選択し、選択した画像群の中から測定値が予測値に到達する度合いに対応した画像を選択して表示する構成でもよい。なお、記憶部31では、ピークフローの気流量(フロー)と、ピークフローから低下するときの傾きとに応じて、異なる画像群が対応付けて保存されている。
【0088】
また、選択部24は、演算部23により算出された度合いと被検者の情報とに対応する画像を順次選択する。
【0089】
被検者の情報とは、例えば、性別、身長、年齢などである。具体的には、記憶部31には、被検者の情報ごとに、異なる画像群が対応付けて保存されている。例えば、選択部24は、被検者の情報から被検者が20代の男性であった場合、この被検者に対応する画像群(例えば、宇宙船が打ち上げられ上昇してゆく絵柄の画像群)を選択し、選択した画像群の中から演算部23により算出された度合いに対応する画像を順次選択する。
【0090】
よって、呼吸機能検査装置1では、被検者の興味を引く画像を用いるので、努力肺活量の測定において、被検者が予測値を超えて最大限の努力を行うことが期待される。呼吸機能検査装置1は、測定値が予測値に到達した後も、呼出を助長する画像を順次表示することができる。また、呼吸機能検査装置1は、信頼性が高く、医師または検査技師等の技量によってばらつきが生じないように努力肺活量の測定を行うことができる。
【0091】
呼吸機能検査装置1は、音を出力する音出力部であるスピーカ16を備えている。記憶部31には、演算部23により算出される度合いごとに、異なる音が対応付けて保存されている。選択部24は、演算部23により算出された度合いに対応する音を順次選択する。スピーカ16は、選択部24により選択された音を出力する。なお、音は、ディスプレイ15に表示される画像とともに被検者に予測値を超えて最大限の努力を行わせるような効果音、または、音声などが考えられる。
【0092】
よって、呼吸機能検査装置1は、努力肺活量の測定において、画像と音とを効果的に活用し、測定値が予測値に到達した後も、呼出を助長する画像を順次表示することができる。また、呼吸機能検査装置1は、信頼性が高く、医師または検査技師等の技量によってばらつきが生じないように努力肺活量の測定を行うことができる。
【0093】
つぎに、呼吸機能検査装置1の動作について、図9に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0094】
ステップST1において、算出部21は、被検者の情報に基づいて、努力肺活量測定における肺気量の予測値を算出する。
【0095】
ステップST2において、作成部22は、努力肺活量測定により測定された被検者の呼出に基づいて、気流量(フロー)と肺気量との関係を示すフローボリューム曲線を作成する。
【0096】
ステップST3において、演算部23は、ステップST2の工程で作成されたフローボリューム曲線において、努力肺活量測定による測定値が予測値に到達する度合いを算出する。
【0097】
ステップST4において、選択部24は、ステップST3の工程で算出された度合いに対応する画像を順次選択する。具体的には、選択部24は、ステップST3の工程で算出された度合いに対応する画像を記憶部31から読み出す。
【0098】
ステップST5において、表示制御部25は、ステップST4により選択された画像をディスプレイ15に表示させるように制御する。
【0099】
よって、呼吸機能検査装置1は、測定値が予測値に到達した後も、呼出を助長する画像を順次表示することができる。また、呼吸機能検査装置1は、信頼性が高く、医師または検査技師等の技量によってばらつきが生じないように努力肺活量の測定を行うことができる。
【0100】
また、本実施例では、主に、努力肺活量の測定において、被検者に予測値を超えて最大限の努力を行わせるための呼吸機能検査装置1の構成と動作について説明したが、これに限られず、各構成要素を備え、努力肺活量の測定において、被検者に予測値を超えて最大限の努力を行わせるための呼吸機能検査プログラムとして構成されてもよい。
【0101】
さらに、呼吸機能検査プログラムをコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録された呼吸機能検査プログラムをコンピュータに読み込ませ、実行することによって実現されてもよい。
【0102】
具体的には、呼吸機能検査プログラムは、被検者の情報に基づいて、努力肺活量測定における肺気量の予測値を算出する算出工程と、努力肺活量測定により測定された被検者の呼出に基づいて、気流量(フロー)と肺気量との関係を示すフローボリューム曲線を作成する作成工程と、作成工程で作成されたフローボリューム曲線において、努力肺活量測定による測定値が予測値に到達する度合いを算出する演算工程と、演算工程により算出された度合いに対応する画像を順次選択する選択工程と、選択工程により選択された画像を表示部に表示させる表示制御工程とをコンピュータに実行させるプログラムである。また、演算工程は、努力肺活量測定による測定値が予測値に到達し、超過した場合、超過した度合いを算出する。選択工程は、超過した度合いに基づいて、努力肺活量測定による測定値が予測値に到達したときに表示する画像とは異なる画像を選択する。
【符号の説明】
【0103】
1 呼吸機能検査装置
11 フローセンサ
12 圧力センサ
13 処理部
14 操作部
15 ディスプレイ
16 スピーカ
17 プリンタ
21 算出部
22 作成部
23 演算部
24 選択部
25 表示制御部
31 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9