(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573698
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】水素化処理装置または水素化転化装置の始動方法
(51)【国際特許分類】
C10G 65/04 20060101AFI20190902BHJP
C10G 45/08 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
C10G65/04
C10G45/08 B
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-91900(P2018-91900)
(22)【出願日】2018年5月11日
(62)【分割の表示】特願2015-560742(P2015-560742)の分割
【原出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2018-159075(P2018-159075A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2018年5月11日
(31)【優先権主張番号】1351993
(32)【優先日】2013年3月6日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】303059484
【氏名又は名称】ウールカ エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】デュフレン ピエール
【審査官】
森 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭55−137189(JP,A)
【文献】
特開昭47−7226(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第01324034(GB,A)
【文献】
特開昭59−176390(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00122180(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素の存在下で、少なくとも2個の触媒床で行われる、水素化処理または水素化転化反応の始動方法であって、
‐少なくとも1個の床が、少なくとも1つの予備硫化・予備活性化された触媒を含み、少なくとも1個の触媒床が、触媒金属が酸化された形態にある触媒を含み、
‐いわゆる出発供給原料が、少なくとも0.3重量%の硫黄を含み、オレフィン化合物を欠き、添加された硫黄含有化合物を含まない炭化水素フラクションであり、この出発供給原料は、前記予備硫化・予備活性化された触媒を含む第1の触媒床を通過し、次いで触媒金属が酸化された形態にある触媒を含む少なくとも1個の触媒床を通過し、
‐第1の予備硫化・予備活性化された触媒床は、少なくとも220℃の温度に達することを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、供給原料は、前記予備硫化・予備活性化された触媒を含む触媒床の全てを通過し、次いで、触媒金属が酸化された形態にある触媒を含む触媒床の全てを通過する、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記供給原料は、下降流で流通する、方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法であって、触媒床(複数)は、同一の反応器内に充填され、予備硫化・予備活性化された触媒は、反応器の頂部において床(単数または複数)内に充填され、出発供給原料は下降流で流通する、方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法であって、前記予備硫化・予備活性化された触媒は、金属硫化物の化学量論量に相当する硫黄の80〜110%を含み、遊離硫黄含有化合物(free sulfur−containing compound)を含まず、水素中、少なくとも1回の処理によって現場外で活性化されている、方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法であって、酸化された形態の触媒、および/または、予備硫化‐活性化された触媒は、第VIII族および第VIB族の金属を含み、かつ、アルミナ、シリカ、シリカ‐アルミナ、ゼオライト、またはアルミナ‐ホウ素を、単独であるいは混合物の形態で含む、方法。
【請求項7】
第VIII族の金属がCo、Niであり、第VIB族の金属Mo、Wである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法であって、出発供給原料は、原油の常圧蒸留から得られる直留ディーゼル燃料である、方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法であって、触媒床が充填された後、以下の段階に従って操作する、方法:
a)任意の乾燥の後、添加された硫黄含有化合物を含まない出発供給原料の存在下、水素の存在下で、予備硫化・予備活性化された触媒を含む第1床の温度が、220〜280℃にされ;触媒金属が酸化された形態にある触媒を含む床の温度が、210〜250℃にされ、これは、前記第1床の温度より10〜30℃低い、段階、
b)触媒金属が酸化された形態にある前記触媒床の出口において硫化水素の存在下で、酸化物触媒を含む前記床の温度は、320〜350℃にされ、その後、温度が保持される
、段階。
【請求項10】
予備硫化・予備活性化された触媒を含む第1床の温度が、230〜270℃にされ;触媒金属が酸化された形態にある触媒を含む床の温度が、220〜250℃にされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法であって、クエンチガスが、前記予備硫化・予備活性化された触媒を含む触媒床(単数または複数)と、触媒金属が酸化された形態にある前記触媒を含む触媒床(単数または複数)との間に注入される、方法。
【請求項12】
請求項9または10に記載の方法であって、最後の触媒床の出口における硫化水素の分圧が、0.2体積%超である場合、段階b)が行われる、方法。
【請求項13】
最後の触媒床の出口における硫化水素の分圧が、0.5体積%である場合、段階b)が行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1つに記載の方法であって、一方の、予備硫化/予備活性化された触媒の重量と、他方の、触媒金属が酸化された形態にある触媒の重量の間の比が0.25〜4である、方法。
【請求項15】
比が0.5〜2である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1つに記載の方法であって、出発供給原料は少なくとも0.5重量%の硫黄を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油供給原料の水素化処理または水素化転化のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これらの方法により、硫黄および窒素のヘテロ元素を除去すること、並びに、炭化水素の炭素含有骨格を変更することが可能となる。
【0003】
これらの方法では、水素化処理(水素化脱硫、水素化脱窒、および不飽和化合物の水素化)の反応を実施し、場合によっては、水素化転化(水素化分解、水素化異性化)の反応を実施し、これらの反応は、活性相が金属硫化物を含む触媒によって促進される。これらの方法は、1基の反応器または直列に配置された複数の反応器を含み得る装置(unit)内で実施され、各反応器は1個以上の触媒床を含むことが可能である。
【0004】
水素化処理および水素化転化の、反応のために用いられる触媒は、担体(例えば、単独であるいは混合物の形態で、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、ゼオライト、アルミナホウ素)と、少なくとも1種の水素化脱水素元素、例えば、第VI族および/または第VIII族の非貴金属(例えば、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル)からの少なくとも1種の金属とを含む。一般に、これらの金属の2種からなる対、例えば、コバルト-モリブデン、ニッケル-モリブデン、ニッケル-タングステンの対のうち1つが、用いられる。
【0005】
水素化処理反応は、一般的に、水素の存在下、200〜400℃で、圧力が、例えば、5〜200バールで、体積流量(触媒のリットル当たりかつ時間当たりに注入される供給原料のリットルで表される)が、0.2〜8h
−1で行われる。これらは、例えば、ナフサ、ケロシン、若しくはディーゼル燃料フラクションの、水素化処理、または、より重質の供給原料、例えば常圧残油または真空残油の、接触分解、水素化分解、若しくは水素化処理の前処理における、真空蒸留物の他の水素化処理である。
【0006】
新しい触媒の金属相は、一般に、これらの調製の終わりには酸化物である。それらはまた、再生後、酸化物である。しかし、これらの触媒の金属は、硫化された形態でのみ、これらの反応に対して活性である。従って、触媒の使用前に、触媒の硫化および活性化を行う必要がある。硫化は、現場で(in-situ)、すなわち該反応の反応器内で、あるいは、現場外で(ex-situ)、すなわち反応器外で行われ得る。
【0007】
現場での硫化は、反応器内に装填された触媒に対して行われ、これは、触媒の金属酸化物を硫化物に転換するのに十分な量の硫黄含有化合物を注入することによって行われる。この硫黄含有剤は、スルフィド、ジスルフィド、またはポリスルフィドタイプのものであり;場合によっては、それは、直接的に硫化水素(H
2S)である。ほとんどの場合、DMDS(ジメチルジスルフィド)、DMS(ジメチルスルフィド)、またはTBPS(tert−ブチルポリスルフィド)が、用いられ、供給原料に加えられる。NiMoタイプの触媒のための以下の反応によると、注入される硫黄の量は、一般に、酸化物を硫化物に転換するのに必要な化学量論量よりわずかに多く、しばしば、触媒の重量に対して硫黄が5〜15重量%である:
M
OO
3+H
2+2H
2S(R)M
OS
2+3H
2O
NiO+H
2S(R)NiS+H
2O
最終の硫化温度は、しばしば、反応温度(反応のために選ばれる温度)に極めて近い。一般に、それは、250℃超であり、しばしば300〜350℃前後である。水素の存在下での硫化手順は、数時間から数日間、しばしば12〜36時間続くことがある。
【0008】
最も頻繁な場合において、硫黄含有化合物はDMDSであり、その手順は、一般に、2つの主な段階を含む:第1の段階は、中程度の温度、しばしば200〜250℃で、DMDSを注入することにあり、その後の段階は、反応器全体が、この化合物と接触させられたことを見込むことにある(expecting)。この時点は、反応器の出口における硫化水素(H
2S)の分圧をモニタリングすることによって実証される。一旦H
2Sが検出されると、300〜350℃に近い、最終の活性化温度にまで昇温することにより、手順が継続される。このレベルに到達すると、触媒は、活性化されたと考えられ、処理されるべき供給原料の水素化処理のための段階を行うことが可能となる。
【0009】
3つの主要な硫化剤は、DMDS、TBPS、およびDMSであり、DMDSが圧倒的に最もよく用いられている。DMDSが有利であることの主要な理由の1つは、それが、不活性触媒に対して始動条件下で、比較的容易にH
2Sへ転換されることである。それは、220℃で十分分解されると一般的に想定されている。DMSの欠点は、より安定であること、および60〜80℃高い温度を要求することである。したがって、触媒のオキシド・ラジカル(oxide radicals)の還元のリスクが、より高く、これは、多くの作業者が取りたくないリスクである。ポリスルフィド、例えばTBPSもまた、DMDSと同様の容易な分解、更にはより容易な分解(約20℃低い温度での分解)という利点を有する。それらは、所定の他の欠点、特に、より高い粘度を有し得る。
【0010】
このように、硫化水素混合物による硫化は、従来技術(特許文献2)に記載されて折り、同混合物は一般的に水素中に希釈され(H
2S/H
2=0.5〜5体積%)、かつ、硫化は好ましくは温度段階によって行われる(特許文献1)。 また、この従来技術(特許文献1)には、5〜20重量%の芳香族化合物を含み、ジオレフィンおよびオレフィン化合物を欠き、かつ、硫黄含有化合物(DMDS)を含む、液体硫化供給原料を用いる、現場での硫化方法が記載されている。
【0011】
この、現場での硫化により、(存在する金属に従った)配合の硫黄、CoS、NiS、MoS
2、およびWS
2、の量を求めるために計算された、一般的に約50〜110%の化学量論量の硫黄を、触媒中に固定することが可能となる。
【0012】
硫化はまた、硫黄含有化合物を添加することなく行われ得る。この方法は、供給原料による硫化と呼ばれている。直接蒸留ディーゼル燃料タイプの液体供給原料が利用可能である場合であって、この供給原料が、高い硫黄含有量、例えば0.5重量%超、より良くは1重量%を有する場合、触媒を硫化するためにこの硫黄を利用することが可能である。
【0013】
それにもかかわらず、この方法は、いくつかの欠点を有するため、あまり用いられない。第1の欠点は、このように硫化された触媒の性能レベルが、硫黄含有剤が供給原料に添加される方法よりも、比較的低いと、一般的に考えられていることである。第2の欠点は、この方法が、明らかに、より長い期間を必要とすることである。実際、例えば、ディーゼル燃料供給原料に含まれる硫黄は、H
2Sに転換されるのに、部分的にのみ利用可能である。しかし、選択された硫化方法にかかわらず、金属酸化物の、硫化物への転換を行う硫化剤は、実にH
2Sである。いわゆる、供給原料を用いる硫化の場合、この硫黄は利用可能性がより低く、このことは、触媒が、依然として酸化物状態にあるから、それを転換するのに活性でないためである。
【0014】
全ての硫化方法に伴う共通のリスクは、特に高圧下、かつ、触媒の任意のポイントにおいて過剰な温度、一般に推定250℃でのH
2Sの非存在下で、触媒が水素と接触することである。この、供給原料を用いる硫化の方法では、このリスクが高く、なぜなら、H
2Sを発生させるのが困難であるからであり;したがって、このリスクを回避するために、非常にゆっくりと温度を上昇させる必要があり、このことにより、この方法が非常に長くなる。
【0015】
本明細書の以降において、石油供給原料中に潜在的に存在する「利用可能な硫黄」のこの概念については、再び言及されることとなる。
【0016】
硫化剤の添加を伴う、現場での硫化は、今日、業界において広く行われている。それにもかかわらず、それは、いくつかの欠点を有する。
【0017】
第1の主要な欠点は、環境的リスク、特に、非常に少量の漏れの場合でさえ放たれる非常に強い臭気を有する、硫黄含有化合物、例えばDMDSを一般に、取り扱う必要性があることであり、このようなリスクは、敷地内の駐在者に警戒を引き起こし得る。
【0018】
他の欠点としては、現場での活性化に必要な期間が挙げられるであろう。十分に行われる手順では、一般に、12〜24時間を必要とし、いくつかの特定の場合においては、より長い期間を必要とする。別の欠点は、その手順が、比較的技術的に困難であることであり、それは、専門化しかつ熟練した人員を必要とする。このことは、非常に活性な触媒を得る目的で、反応器を今後適切に操作するためには、手順の全ての段階において、厳格な実行が非常に重要となるからである。
【0019】
このことが、触媒が、現場外、すなわち敷地外で硫化され、次いで金属硫化物に必要な化学量論量に相当する硫黄含有量を有する触媒が反応器内に装填される、硫化方法が開発される理由である。これらの方法は、大きく2つのカテゴリー:簡易な硫化方法、ならびに、硫化および活性化方法、に分類される。
【0020】
第1のカテゴリーにおいて、触媒は、硫化物、CoS、NiS、MoS
2、およびWS
2に相当する適切な硫黄含有量を含む。これらの方法は、触媒が必要とし、外因性の(exogenic)硫黄含有化合物の注入の必要性をこのように取り除く、硫黄を提供するという利点を有する。この現場外での硫化は、様々な方法に従って実施され得る。このように、Sulficat(登録商標)法(特許文献3)は、水素の非存在下で行われる、第1の予備段階を含み、ここで、触媒の細孔内に、溶媒中の溶液の硫黄含有化合物(例えば、有機ポリスルフィド)が組み入れられる。触媒は、反応器内に装填される。「現場で」行われる、第2の段階において、触媒の活性化は、水素の存在下で、100℃または150℃超、一般的に最高400℃の温度で行われる。硫黄の必要量および、硫黄の所望量のみが、このように触媒中に導入される。触媒は、従って、事前包装された状態で使用者に送られて、活性化される準備ができている。次いで、反応の始動段階が始まる。以降、上記の方法は、有機ポリスルフィドに、所定量の元素硫黄を添加することによって向上させられる(特許文献4)。
【0021】
特許文献5には、この第1のカテゴリーに属する別の硫化方法が記載されている。それは、以下の段階を含む:(a)少なくとも硫黄の一部が、触媒の細孔内に組み入れられるような温度で、触媒を、元素硫黄と接触させる段階、およびそれに次ぐ、(b)触媒を、少なくとも12個の炭素原子を有する酸化された炭化水素分子と接触させる段階であって、得られた触媒は、段階(b)に付されていない触媒と比較して、自己発熱が低減している、段階。
【0022】
現場外での方法の第2のカテゴリーは、予備硫化および活性化の方法に関する。
【0023】
出願人のTotsucat(登録商標)法において、触媒は、単に予備硫化されるだけではない;それは、また予備活性化され、それ故に、活性な状態で反応器内に装填され、使用される準備ができている。この方法は、いくつかの特許の目的である。
【0024】
特許文献6に記載の方法において、水素の存在下、かつ、硫化水素か、水素の存在下で硫化水素に分解することが可能な硫黄含有化合物のいずれかの存在下で、硫黄は、移動触媒床の形態の触媒の細孔内に、現場外で組み入れられる。
【0025】
温度は、80〜450℃、好ましくは110〜400℃である。移動触媒床は、例えば、移動床、流通床、流動床、発泡(expanded)床、沸騰床、または、帯域(band)もしくは回転するタイプの床である。
【0026】
Totsucat(登録商標)法の終わりには、触媒の表面上に担持される金属硫化物の化学量論量に相当する、少なくとも50%の硫黄、最大110%の硫黄を含む、予備硫化触媒が得られる。この触媒は、考慮される反応に必要な硫黄の全量を含み、かつ、この量のみを含む;遊離硫黄含有化合物は存在しない。実際、水素の存在下での処理段階のおかげで、この硫黄は、金属硫化物の状態で存在する。
【0027】
この触媒は、包装され、使用者に送られて、反応器内に装填される。
【0028】
特許文献7(Tricat社)にはまた、予備硫化/活性化された触媒の調製方法が記載されており、この方法は、沸騰または発泡床内で動作中であり、H
2S/H
2混合物中で硫化/活性化された触媒を用いて行われる。
【0029】
この現場外での硫化の決定的な利点は、反応器内に装填された触媒が、既に必要量の硫黄を含んでおり、既に活性化されており、それ故に、活性な触媒として用いられる準備が既にできていることである。この特定の特徴により、使用者にとって貴重な時間が節約でき、かつ、始動手順が相当単純化される。使用者は、処理されるべき供給原料の注入によって、反応を始動させるだけでよい。
【0030】
従って、従来技術は、水素化処理/水素化転化触媒の、3つの硫化-活性化技術で要約される:
1.反応器内の、酸化物が装入された触媒の供給原料を用いる、現場での硫化。
【0031】
2.反応器内の、酸化物が装入された触媒の、硫化剤が添加された供給原料を用いる、現場での硫化。
【0032】
3.2つのカテゴリー:単なる予備硫化と、予備硫化/予備活性化とに分類される、現場外での硫化。現場外で単に予備硫化された触媒は、そのままで装入されて、水素の存在下で、現場での最終活性化に付される。予備硫化/予備活性化された触媒は、そのままで装入され、使用される準備が直ちにできている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】欧州特許第64429号明細書
【特許文献2】米国特許第4334982号明細書
【特許文献3】米国特許第4530917号明細書
【特許文献4】米国特許第5139983号明細書
【特許文献5】米国特許第5681787号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第785022号明細書
【特許文献7】米国特許第5958816号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
各技術は、利点を提供しているが、同時に、本発明が明確に解決しようと意図する欠点をも提供している:
1.供給原料を用いる、現場での硫化は、経済的であるが、非常に長い時間がかかり、時に性能が疑わしく、
2.硫化剤が添加された供給原料を用いる、現場での硫化は、良好な結果を提供するが、悪臭および有毒生産物の取り扱いという問題を提起し、
3.活性化なしの、現場外での硫化はまた、現場での活性化を実行しなければならない、という欠点を示す。活性化を伴う、現場外での硫化は、始動の容易さと迅速性の観点では完璧であるが、特に、大量の触媒を含む大規模な装置、例えば、100m
3超の触媒を有する装置の場合、現場での硫化と比較して、より高いコストという、むしろ致命的な欠点を示す。現場外での硫化はまた、空気に対して所定の敏感さを有することのある触媒を装入しなければならないという欠点を示すことがあり、これにより、装入手順が非常に複雑化する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本出願人は、これら3つの方法を組み合わせて1つの方法とすることが可能であることに気付いた。この方法によると、予期しない方法で、上記3つの方法のそれぞれの欠点が取り除かれるか、あるいは少なくとも低減させられ、かつ、利点については相当保持される。
【0036】
本発明によると、方法1のように、硫黄が供給原料とともに用いられ、方法2とは反して、硫化剤は添加されない。
【0037】
より具体的には、本発明は、反応器内に、方法3と同様の、予備硫化/予備活性化された触媒と、方法2と同様の、酸化物触媒との両方を装入することにある。
【0038】
本発明は、より具体的には、水素の存在下で、少なくとも2個の触媒床において行われる、水素化処理または水素化転化の装置の始動方法に関し、ここで、
-少なくとも1個の床は、少なくとも1つの予備硫化・予備活性化された触媒を含み、少なくとも1個の触媒床は、触媒金属が酸化された形態の触媒を含み、
-いわゆる出発供給原料は、少なくとも0.3重量%の硫黄を含み、オレフィン化合物を欠き、添加された硫黄含有化合物を含まない、炭化水素含有フラクションであり、同供給原料は、前記予備硫化・予備活性化された触媒を含む第1の触媒床を通過し、次いで、触媒金属が酸化された形態にある触媒を含む少なくとも1個の触媒床を通過し、
-第1の予備硫化・予備活性化された触媒床は、少なくとも220℃の温度に達する。
【0039】
有利には、触媒金属が酸化された形態にある触媒を有する床は、第1床の温度よりも10〜30℃低い210〜250℃の温度で保たれる。
【0040】
有利な方法において、供給原料は、前記予備硫化・予備活性化された触媒を含む触媒床の全てを通過し、その後、触媒金属が酸化された形態にある触媒を含む触媒床の全てを通過する。
【0041】
好ましい方法において、前記供給原料は、下降流で流通する。
【0042】
本発明に必要な条件は、したがって、予備硫化-予備活性化された触媒が、フラッシュされた触媒床の頂部において装填されることである。酸化物触媒は、次いで、その後に続く少なくとも1個の床に装填される。
【0043】
好ましい方法において、触媒床は、同一の反応器内に装填され、予備硫化・予備活性化された触媒は、反応器の頂部における床(単数または複数)に装填され、出発供給原料は、下降流で流通する。次いで、酸化物触媒は、反応器の底部の床(複数)に装填される。
【0044】
典型的なスキームは、予備硫化-予備活性化された触媒が、2個の触媒床を含む反応器の上方の床に装填されること、および、酸化物触媒が、同じ反応器の下方の床に装填されることである。
【0045】
直列に配列された2基の反応器を有する装置の場合、一般に、第1の反応器には少なくとも部分的に、現場外で活性化された硫黄含有触媒が装填され,第2の反応器には、酸化物触媒が装填される。
【0046】
本発明の利点の1つであり、かつ、特に好ましい装填様式は、また、触媒を下方の床に装填することが、空気に敏感な予備硫化触媒にとって少なからずより複雑である事から、本手順では、予備硫化/予備活性化された触媒が上方の床にのみ装填されるので、単純化されることである。
【0047】
このように、本発明は、より具体的には、水素化処理装置の始動方法であって、これは、触媒床の上方の部分を、現場外で活性化された硫黄含有触媒で充填し、下方の部分を、酸化物触媒(触媒金属が酸化された形態にある触媒を示す省略された用語)で充填することにある。
【0048】
本発明の原則は、第1床(頂部)に置かれた予備硫化/予備活性化された触媒が、転換するのが容易であると言われている硫黄含有分子を、中程度の温度で、硫化水素に転換することができること、およびこのH
2Sが、次に、酸化物触媒を硫化することができることである。
【0049】
転換するのが容易であると言われているこれらの分子(硫化物、チオール、軽質のチオフェン化合物)は、従来の硫化剤であるTBPS(tert−ブチルポリスルフィド)、DMDS、またはDMSよりも、転換することが困難である。それにもかかわらず、頂部の触媒の活性化された性質により、硫黄含有分子の系列全体を、比較的穏やかな条件下で、すなわち、中程度の温度で、H
2Sに転換することを可能としたことは、本発明の驚くべきことである。
【0050】
適切な操作の1つの条件は、液体硫化供給原料が、はっきりと感知できる量の硫黄を含み、オレフィン化合物を欠くことである。
【0051】
処理されるべき供給原料は、一般に、下降流で流通する。それは、最初に、第少なくとも1つの予備硫化・予備活性化された触媒を含む、少なくとも1個の触媒床上を通り、次いで、それは、酸化された形態の少なくとも1つの触媒を含む少なくとも1個の触媒床上を通る。好ましくは、供給原料は、前記予備硫化・予備活性化された触媒を含む触媒床の全てを通過し、次いで、それは、触媒金属が酸化された形態にある触媒を含む触媒床の全てを通過する。
【0052】
予備硫化・予備活性化された触媒は、金属硫化物の化学量論量に相当する硫黄の50〜110%、好ましくは80〜110%を含む。それは、遊離硫黄含有化合物を含まない。それは、水素下での少なくとも1回の処理によって、現場外で活性化された。上記のTotsucat法に従って調製されるのは、例えば、触媒である。
【0053】
触媒の組成は、それが酸化物形態であれ、あるいは予備硫化/予備活性化形態であれ、従来のものであり、従来技術に記載された、上記の触媒に相当する。
【0054】
酸化された形態の触媒、および/または、予備硫化/予備活性化された触媒は、第VIII族および第VIB族の金属、特にCo、Ni、Mo、およびWを含む。一般に、それは、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、ゼオライト、またはアルミナホウ素の担体を、単独であるいは混合物の形態で含む。
【0055】
これらは主に、触媒CoMo、またはNiMo、またはNiWである。
【0056】
これらはまた、担体のないバルク触媒であり得、したがって、第VIおよび第VIII族、例えば、Ni、Mo、およびWタイプの金属を大量に含む。
【0057】
予備硫化-予備活性化された形態の、あるいは酸化された形態の、これらの触媒は、新たな触媒あるいは再生された触媒である。
【0058】
一方の、予備硫化/予備活性化された触媒の重量と、他方の、触媒金属が酸化された形態にある触媒の重量との間の比は、0.25〜4であり、好ましくは0.5〜2である。
【0059】
反応器内への触媒床の装入は、1つまたは複数の下方の床に、触媒金属が酸化物形態にある触媒を装入すること(装入は、空気中で起こる)によって、次いで、1つまたは複数の上方の床に、予備硫化-予備活性化された触媒を装入すること(この装入は、触媒が、空気中での装入を可能にするのに適切な、任意のパッシベーション処理を受けない場合、窒素中で起こることが可能である)によって行われ得る。
【0060】
触媒を対応する触媒床に装入後、酸化された形態の金属を含む触媒の硫化が完了する迄、いわゆる出発供給原料を用いて、始動方法が実施される。活性化の後、出発供給原料の供給が停止され、処理されるべき供給原料が導入される。
【0061】
この始動方法は、全てのタイプの水素化処理および水素化転化に関連し得る。それにもかかわらず、その利点は、硫黄が少ししか装入されていない供給原料、例えばナフサ、ならびにさらにはケロシンでは、低減される。それは、実際、ディーゼル燃料型の蒸留物の水素化処理のための装置では、完全に意味を成す。それは、ディーゼル燃料よりも重質の供給原料、例えば真空ディーゼル燃料(または真空ガスオイル)にも適用され得る。
【0062】
始動方法は、一般に下降流で流通する、いわゆる液体出発供給原料を用いて行われる。下降流とは、水素化処理および水素化転化のための方法において、好まれるタイプの流れであり、このことは、上昇流と比較して、固定床方法のために大規模で用いるのに最も容易であるためである。
【0063】
好ましくは、温度のモニタリングが行われる。好ましい方法において、それは、前記予備硫化・予備活性化された触媒を含む触媒床(単数または複数)と、触媒金属が酸化された形態にある前記触媒を含む触媒床(単数または複数)との間に、クエンチガスを注入することによって行われる。
【0064】
方法は、有利には、ガスクエンチによって隔てられた多数の床を含む反応器内で行われる。
【0065】
したがって、これにより、各床の温度の、所定の別個のモニタリングが可能になり、特に、酸化物の床(単数または複数)の温度が、第1床(単数または複数)と呼ばれる、予備硫化/予備活性化された触媒床(単数または複数)の温度より、僅かに数度あるいは数十度低い温度で保たれ得る。
【0066】
方法は、触媒床が装入された後、かつ、従来の段階、例えば窒素による空気のパージ、水素の導入、および、装置の加圧の後、以下の段階に従って行われる:
a)任意の乾燥の後、添加された硫黄含有化合物を含まない出発供給原料の存在下、水素の存在下で、予備硫化・予備活性化された触媒を含む第1床の温度が、220〜280℃、または220〜270℃、好ましくは230〜270℃にされ;触媒金属が酸化された形態にある触媒を含む床の温度が、210〜250℃、好ましくは220〜250℃にされ、これは、前記第1床の温度より10〜30℃低い、段階、
b)硫化水素の存在下で、触媒金属が酸化された形態にある前記触媒の床の出口において、酸化物触媒を含む前記床の温度が、320〜350℃にされ、次いでその温度で保持される、段階。
【0067】
より具体的には:
a)床の温度は、流通水素の存在下で、徐々に上昇させられる。乾燥時間は、好ましくは120〜130℃まで観察され得、酸化物タイプの触媒が水を排出することを可能とする。
【0068】
予備活性化・予備硫化された触媒床(第1床)の温度は、徐々に、220〜280℃、または220〜270℃、好ましくは230〜270℃、平均して、例えば、およそ250℃にされ、このレベルでの一定状態が保たれ、これにより、硫化水素の発生が可能となる。
【0069】
酸化物触媒を含む床(第2床)は、第1床の温度よりも僅かに10〜30℃低い温度、すなわち210〜250℃、好ましくは220〜250℃、平均して例えば230℃で保たれ、これにより、第1床で発生した硫化水素が、第2床中に拡散することが可能となる。
【0070】
酸化物触媒を含む床の温度は、この触媒が、水素圧力下かつH
2Sの非存在下で損傷を受けないようなものであるべきである。実際、MoO
3相のMoO
2への所定の還元は、H
2Sの非存在下で起こり得、これは次いで、適切な、硫化された活性相の形成を、妨げるようになるであろう。
【0071】
b)硫化水素の分圧が、酸化物触媒を含む床(単数または複数)の出口で増加し始める場合、酸化物触媒の活性化を最終化することにある、次の始動段階に移ることが可能である。生じた硫化水素は、触媒金属が酸化された形態の触媒を硫化することとなる。温度は、H
2S分圧のモニタリングを維持することによって、漸進的な方法で、320〜350℃にされる。活性化された触媒床(単数または複数)にH
2Sを生じさせることにより、常に、最後の酸化物触媒床(単数または複数)の消費を補うことが、必須である。
【0072】
この温度での最終の一定状態は、最低で約4時間、しばしば6〜8時間続く。この一定状態をより長く行うことは、実際必要ではないが、可能であり、活性化は、このレベルで終了させられる。
【0073】
第1の触媒床におけるH
2Sの発生は、予備硫化・予備活性化された触媒を含む触媒床の温度が、一般的に220℃に達する場合、水素化脱硫反応を介して、行われる。
【0074】
この発生は可能となされる。なぜなら、予備硫化された触媒は、完全な水素化脱硫(すなわち、ほとんどの耐火性化合物を含む、全てのタイプの硫黄含有化合物の除去)を行うのに必要であろう温度よりも低い、中程度の温度での、水素化脱硫によって容易に除去され得るタイプの硫黄を含む出発供給原料の水素化脱硫を行うからである。
【0075】
したがって、出発供給原料の選択は、硫黄含有量の多い供給原料および除去が容易な硫黄に関係する。これらは、例えば、常圧ディーゼル燃料である。これらは、初留点が一般的に210℃〜250℃、ほとんどの場合230〜250℃であり、終点が、一般的に350〜380℃であるフラクションである。硫黄が容易に除去され得る硫黄含有化合物は、チオールおよび硫化物、ならびに、軽質のチオフェン化合物である。
【0076】
前記供給原料は、少なくとも0.3%、好ましくは少なくとも0.5重量%の硫黄、更により好ましい方法において少なくとも0.7重量%の硫黄、有利な方法において少なくとも0.9重量%の硫黄を含み、それは、添加された硫黄含有化合物を含まない。この目的のために従来用いられている供給原料がある。通常、それは、原油の常圧蒸留から得られる直留ディーゼル燃料である。それは、オレフィン化合物(オレフィン、ジオレフィン、・jを含まない。したがって、それが、分解方法、例えば、コーキング、ビスブレーキング(visbreaking)、接触分解、および水蒸気分解から、得られることはない。それは、チオール、および/または硫化物、および/または軽質のチオフェン化合物を含む。
【0077】
したがって、出発供給原料は、好ましくは、原油の常圧蒸留から得られる直留ディーゼル燃料である。
【0078】
有利には、酸化された形態の触媒を含む最後の触媒床の出口、あるいはそれがユニークな場合、反応器の出口における、硫化水素の分圧をモニタリングすることにより、温度の硫化段階への上昇の制御が可能となる。したがって、段階b)は、最後の触媒床の出口における硫化水素の分圧が、0.2体積%超、好ましくは0.5体積%である時、有利に行われる。
【0079】
硫化、ならびに活性化が完了すると、出発供給原料は停止され、処理されるべき供給原料が、行われるべき反応の条件下で導入される。場合によっては、処理されるべき供給原料は、それが、十分な硫黄を含みかつオレフィンに欠けるという、示された基準を満たす場合、出発供給原料として用いられ得る。
【0080】
本発明による始動方法を行うことにより、以下の利点に気付くことが可能になった:
-「ポップコーン」効果の制限;この効果は、触媒床の底部における、液体供給原料の存在下での急速な加熱の際の、水の凝縮によるものであり、これは、急速過ぎる、触媒の乾燥・損傷をもたらす、
-酸化された形態の触媒の、硫化活性相の良質な形成であって、これは、特に、H
2の存在下かつH
2Sの非存在下で起こり得る、MoO
2相の形成の非存在によるものであり;MoO
3の還元により形成されるこの相は、硫化プロセスを妨げる。
【0081】
-酸化された形態の触媒のコーキングの制限;実際、反応性の高すぎる供給原料(オレフィンの存在)、重質すぎる供給原料、高すぎる温度、あるいは低すぎる水素の分圧の影響下で;酸化された形態の触媒は、コークスになりやすい。
【0082】
本発明による方法の圧力は、5〜300バールであり、これは、装置の全圧で表され、より一般的には20〜200バールである。
【実施例】
【0083】
実施例1(比較例−供給原料を用いる硫化)
基準となるCoMo/アルミナタイプの、市販の触媒、Albemarle KF757を、基準として採用した。体積10mLを、触媒試験装置の反応器内に装入した。この第1実施例の目的は、無添加の(non-additive)ディーゼル燃料供給原料で行う始動を例証することである。
【0084】
用いた供給原料は、密度0.839g/mL、硫黄含有量1.20重量%、窒素含有量0.0102重量%、芳香族含有量28.3重量%、5%が蒸留された時点での沸点211℃、95%が蒸留された時点での沸点366℃の、直留ディーゼル燃料であった。
【0085】
反応器を、40バールで加圧した。供給原料を、流量20mL/h(毎時の体積流量が2)で反応器内に注入し、温度を、8時間にわたり250℃にした。H
2/HC比は、300であった(液体のリットル当たりの気体のリットルで表される)。4時間にわたる一定状態が、この温度で保持された。次に、温度を、4時間にわたり320℃にした。この段階で、触媒の活性化が終了したと判断した。
【0086】
HDS試験自体は始動することができた。温度を、40時間にわたり340℃にし、次いで30時間にわたり345℃にし、次いで30時間にわたり350℃にした。各段階において、流出物のサンプルを3つサンプリングし、それらの硫黄含有量について分析した。各温度における平均硫黄含有量は、それぞれ、63ppm、31ppm、および13ppmであった。
実施例2(比較例−添加剤供給原料を用いる硫化)
2.04重量%の硫黄に相当する、3重量%のレベルで、ジメチルジスルフィド(DMDS)と共に添加剤として用いられるのが、ディーゼル燃料供給原料のみである場合に、同様の実験を厳密に繰り返した。この供給原料を、320℃の温度まで、注入した。次いで、それを、試験のために、無添加ディーゼル燃料と取り替えた。
実施例3(比較例−予備硫化・予備活性化された触媒)
実施例1の1つと同じ触媒、KF757 CoMoを、Totsucat法に従って予備硫化した。100mLの量を、H
2/H
2S気体混合物中で、最終温度280℃で処理に付した。得られた硫黄および炭素の含有量は、12.4%および6.2重量%であった。体積10mLを、試験装置内に装填した。操作手順は、同じディーゼル燃料供給原料を用いる、実施例1の操作手順と類似していた。
【0087】
実施例1で用いたディーゼル燃料を注入した。温度を、8時間にわたり250℃にし、次いで、一定状態を保つことなく(予備硫化-予備活性化された触媒について不要)、4時間にわたり320℃にした。実施例1と同様の操作手順で、試験を行った。
実施例4(本発明に合致する−混合した、酸化物触媒/予備硫化・予備活性化された触媒の装入)
酸化物形態と、予備硫化・予備活性化形態の両方の形態にある、基準となるKF757触媒を用いた。5mLの酸化物を反応器の底部に装填し、5mLの予備硫化触媒(実施例3の触媒)を頂部に装填した。次いで、実施例1と同様の操作手順を用いた(40b、H
2/HC=300、VVH=2、DMDS無添加供給原料)。
【0088】
温度を、8時間にわたり250℃にし、4時間にわたり放置し、次いで、4時間にわたり320℃にした。
【0089】
340℃、345℃、および350℃の3つの温度で、同一条件でHDS試験を行った。
結果
結果を以下の表に示す。3つの温度での流出物の硫黄含有量、ならびに、添加剤供給原料を用いた現場での硫化を基準100として採用することによって、計算したHDS活性率を、表に示す。
【0090】
実施例1による、供給原料を用いる硫化は、DMDS添加剤供給原料を用いる、基準となる実施例2の場合よりも少ない活性率を示した。本発明による実施例4は、添加剤供給原料による酸化物触媒の従来の硫化のものと比べて、(計測の不確かさを考慮に入れると)同等の活性率を示した。
【0091】
【表1】