特許第6573700号(P6573700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573700熱交換システム及び熱交換システムの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6573700
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】熱交換システム及び熱交換システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 27/00 20060101AFI20190902BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20190902BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20190902BHJP
   F28B 11/00 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   F28F27/00 511D
   F28F3/08 311
   F28D9/02
   F28B11/00
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-134020(P2018-134020)
(22)【出願日】2018年7月17日
【審査請求日】2018年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000152480
【氏名又は名称】株式会社日阪製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田中 信雄
【審査官】 山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3184804(JP,U)
【文献】 国際公開第2007/058256(WO,A1)
【文献】 特開2001−215088(JP,A)
【文献】 特開平10−267564(JP,A)
【文献】 特開平9−113151(JP,A)
【文献】 特開平8−30337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 27/00
F28B 11/00
F01K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に重ね合わされた複数の伝熱プレートを含むプレート式熱交換器であって、隣り合う伝熱プレート間がシールされることで、伝熱プレートを境にして、第一流体を第一方向と直交する第二方向に流通させる第一流路と、第二流体を第二方向に流通させる第二流路とが、第一方向において交互に形成されるとともに、複数の伝熱プレートのそれぞれに設けられた貫通孔が連なることで、それぞれが第一方向に延びて第一流路のみに連通する第一流入路及び第一流出路と、それぞれが第一方向に延びて第二流路のみに連通する第二流入路及び第二流出路とが形成されたプレート式熱交換器と、第一流入路に接続された第一供給配管系であって、第一流入路に第一流体としての蒸気を供給する第一供給配管系と、第一流出路に接続された第一排出配管系であって、第一流出路から第一流体を排出させる第一排出配管系と、第一排出配管系を流通する第一流体の温度を感知する第一温度感知手段とを備え、第一供給配管系は、弁開度を調整可能な調整弁を含み、調整弁は、第一温度感知手段の感知結果が蒸気の液化温度以下になるように、弁開度を調整することを特徴とする熱交換システム。
【請求項2】
第二流入路に接続された第二供給配管系であって、第二流入路に第二流体を供給する第二供給配管系と、第二流出路に接続された第二排出配管系であって、第二流出路から第二流体を排出させる第二排出配管系と、第二排出配管系を流通する第二流体の温度を感知する第二温度感知手段とをさらに備え、第一供給配管系は、調整弁を二つ含み、二つの調整弁のうちの一方の調整弁は、第一温度感知手段の感知結果が蒸気の液化温度以下になるように弁開度を調整し、二つの調整弁のうちの他方の調整弁は、第二温度感知手段の感知結果が予め設定された熱交換後における第二流体の設定温度になるように、弁開度を調整する請求項1に記載の熱交換システム。
【請求項3】
制御部と、第二流入路に接続された第二供給配管系であって、第二流入路に第二流体を供給する第二供給配管系と、第二流出路に接続された第二排出配管系であって、第二流出路から第二流体を排出させる第二排出配管系と、第二排出配管系を流通する第二流体の温度を感知する第二温度感知手段とをさらに備え、制御部は、第一温度感知手段の感知結果が蒸気の液化温度以下になり且つ第二温度感知手段の感知結果が予め設定された熱交換後における第二流体の設定温度になるように、調整弁に対して弁開度を調整させる請求項1に記載の熱交換システム。
【請求項4】
プレート式熱交換器における第一流入路から第一流出路に向かう第一流体の流通経路の流通抵抗は、第一流入路側よりも第一流出路側の方が大きい請求項1乃至3の何れか1項に記載の熱交換システム。
【請求項5】
第一方向に重ね合わされた複数の伝熱プレートを含むプレート式熱交換器であって、隣り合う伝熱プレート間がシールされることで、伝熱プレートを境にして、第一流体を第一方向と直交する第二方向に流通させる第一流路と、第二流体を第二方向に流通させる第二流路とが、第一方向において交互に形成されるとともに、複数の伝熱プレートのそれぞれに設けられた貫通孔が連なることで、それぞれが第一方向に延びて第一流路に連通する第一流入路及び第一流出路と、それぞれが第一方向に延びて第二流路に連通する第二流入路及び第二流出路とが形成されたプレート式熱交換器と、調整弁を含み且つ第一流入路に接続された第一供給配管系であって、第一流入路に第一流体としての蒸気を供給する第一供給配管系と、第一流出路に接続された第一排出配管系であって、第一流出路から第一流体を排出させる第一排出配管系とを含む熱交換システムの運転方法において、第一流体の温度を感知する第一温度感知手段によって、第一排出配管系を流通する第一流体の温度を経時的に感知する工程と、第一温度感知手段の感知結果が蒸気の液化温度以下になるように調整弁の弁開度を調整する工程とを含むことを特徴とする熱交換システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一流体と第二流体とを熱交換させるプレート式熱交換器を含む熱交換システム及び熱交換システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、第一流体と第二流体とを熱交換させるプレート式熱交換器を含む熱交換システムが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
プレート式熱交換器は、複数の伝熱プレートを備える。複数の伝熱プレートのそれぞれは、第一方向に貫通した貫通孔を少なくとも四か所に有する。
【0004】
複数の伝熱プレートは、対応する位置にある貫通孔が第一方向に連なるように、第一方向に重ね合わされる。この状態において、隣り合う伝熱プレートの外周端部の間及び貫通孔の周囲の間が、ガスケットやロウ付けによって液密にシールされる。
【0005】
これにより、この種のプレート式熱交換器では、伝熱プレートを境にして、第一流体を第一方向と直交する第二方向に流通させる第一流路と、第二流体を第二方向に流通させる第二流路とが、第一方向において交互に形成される。また、複数の伝熱プレートの貫通孔が第一方向に連なることで、それぞれが第一方向に延びる第一流入路及び第一流出路であって、第一流路のみに連通する第一流入路及び第一流出路と、それぞれが第一方向に延びる第二流入路及び第二流出路であって、第二流路のみに連通する第二流入路及び第二流出路とが形成される。
【0006】
これに伴い、熱交換システムは、第一流入路に接続された第一供給配管系であって、第一流入路に第一流体を供給する第一供給配管系と、第一流出路に接続された第一排出配管系であって、第一流出路から第一流体を排出させる第一排出配管系と、第二流入路に接続された第二供給配管系であって、第二流入路に第二流体を供給する第二供給配管系と、第二流出路に接続された第二排出配管系であって、第二流出路から第二流体を排出させる第二排出配管系とを含む。
【0007】
かかる熱交換システムでは、第一供給配管系からプレート式熱交換器の第一流入路に対して第一流体が供給され、第二供給配管系からプレート式熱交換器の第二流入路に対して第二流体が供給される。そうすると、第一流入路に流入した第一流体は、複数の第一流路に流入し、各第一流路内を第一流出路に向けて流通する。また、第二流入路に流入した第二流体は、複数の第二流路に流入し、各第二流路内を第一流出路に向けて流通する。
【0008】
このとき、第一流体と第二流体とは、第一流路と第二流路とを仕切る伝熱プレートを介して熱交換を行う。そして、第一流出路に到達した第一流体は、第一排出配管系に排出され、第二流出路に到達した第二流体は、第二排出配管系に排出される。
【0009】
ところで、上記熱交換システムで第二流体を加熱する場合、第一流体は、第二流体よりも高温な流体とされる。具体的には、この種の熱交換システムでは、第二流体として水や油等が採用され、第二流体を加熱する第一流体として蒸気(スチーム)が採用されることがある。
【0010】
この場合、第一排出配管系は、第一流体(蒸気)を外部に排出せずに、該第一流体(蒸気)の液化したドレンのみを選択的に排出するためのスチームトラップを含む。スチームトラップは、第一流体の流通抵抗を非常に大きくするため、第一流入路には第一供給配管系から高圧の蒸気が供給される。これにより、第一供給配管系から第一排出配管系に至る第一流体の流通経路における流通性が確保される。
【0011】
しかしながら、蒸気の温度は、蒸気の圧力と相関関係にあるため、上述の如く、第一供給配管系に高圧の蒸気が供給されると、第一流路内には必要以上に高温な蒸気が供給されることになる。
【0012】
そのため、この種の熱交換システムにおいて、プレート式熱交換器のシール部分は、第一流体(蒸気)の熱影響により、機械的或いは化学的なダメージを受け、シール性能を低下させる虞がある。
【0013】
具体的には、第一流入路及び第一流路に高温な蒸気が供給されると、第一流入路や第一流路を画定する伝熱プレートが熱膨張する。
【0014】
そうすると、伝熱プレート間がロウ付けによってシールされている場合には、伝熱プレート同士を接続するロウ付け部分に応力が集中的に作用し、ロウ付け部分が損傷する(シール性能が低下する)虞がある。また、伝熱プレート間がガスケットによってシールされている場合には、ガスケットが高圧の蒸気の熱影響によって劣化し、シール性能が低下する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002―106966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明は、第一流体に蒸気が採用されても、プレート式熱交換器の伝熱プレート間のシール性能を維持することのできる熱交換システム及び熱交換システムの運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、第一方向に重ね合わされた複数の伝熱プレートを含むプレート式熱交換器であって、隣り合う伝熱プレート間がシールされることで、伝熱プレートを境にして、第一流体を第一方向と直交する第二方向に流通させる第一流路と、第二流体を第二方向に流通させる第二流路とが、第一方向において交互に形成されるとともに、複数の伝熱プレートのそれぞれに設けられた貫通孔が連なることで、それぞれが第一方向に延びて第一流路のみに連通する第一流入路及び第一流出路と、それぞれが第一方向に延びて第二流路のみに連通する第二流入路及び第二流出路とが形成されたプレート式熱交換器と、第一流入路に接続された第一供給配管系であって、第一流入路に第一流体としての蒸気を供給する第一供給配管系と、第一流出路に接続された第一排出配管系であって、第一流出路から第一流体を排出させる第一排出配管系と、第一排出配管系を流通する第一流体の温度を感知する第一温度感知手段とを備え、第一供給配管系は、弁開度を調整可能な調整弁を含み、調整弁は、第一温度感知手段の感知結果が蒸気の液化温度以下になるように、弁開度を調整することを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、第一供給配管系は、弁開度を調整可能な調整弁を含み、調整弁は、第一温度感知手段の感知結果が蒸気の液化温度以下になるように弁開度を調整するため、第一排出配管系から排出される第一流体は、液化した状態(ドレンになった状態)になる。すなわち、上記構成によれば、蒸気を外部に排出せずにドレンのみを選択的に排出するためのスチームトラップを設けることなく、第一流体である蒸気をドレンにして排出することができる。
【0019】
そして、蒸気を外部に排出せずにドレンのみを選択的に排出するためのスチームトラップを設けることなく、第一流体である蒸気をドレンにして排出することができるため、第一流体の流通経路の主たる抵抗は、プレート式熱交換器の第一流路での抵抗となる。これにより、第一流体を流通経路で流通させるために必要となる圧力を低く設定することができる。
【0020】
このように、上記構成の熱交換システムでは、第一流体の供給圧力を低くできるため、第一流路を流通する第一流体の温度も必要以上に高くならない。従って、プレート式熱交換器の伝熱プレートの間のシールが熱的な影響(熱膨張による応力集中や加熱による劣化等)を受けることが抑えられる。
【0021】
本発明の一態様として、第二流入路に接続された第二供給配管系であって、第二流入路に第二流体を供給する第二供給配管系と、第二流出路に接続された第二排出配管系であって、第二流出路から第二流体を排出させる第二排出配管系と、第二排出配管系を流通する第二流体の温度を感知する第二温度感知手段とをさらに備え、第一供給配管系は、調整弁を二つ含み、二つの調整弁のうちの一方の調整弁は、第一温度感知手段の感知結果が蒸気の液化温度以下になるように弁開度を調整し、二つの調整弁のうちの他方の調整弁は、第二温度感知手段の感知結果が予め設定された熱交換後における第二流体の設定温度になるように、弁開度を調整するようにしてもよい。
【0022】
上記構成によれば、第一供給配管系は、調整弁を二つ含み、二つの調整弁のうちの一方の調整弁は、第一温度感知手段の感知結果が蒸気の液化温度以下になるように弁開度を調整するため、第一排出配管系から排出される第一流体は液化した状態(ドレンになった状態)になる。すなわち、上記構成によれば、蒸気を外部に排出せずにドレンのみを選択的に排出するためのスチームトラップを設けることなく、第一流体である蒸気をドレンにして排出することができる。
【0023】
そして、二つの調整弁のうちの他方の調整弁は、第二温度感知手段の感知結果が予め設定された熱交換後における第二流体の設定温度になるように弁開度を調整するため、第一排出配管系でドレンになるように第一流路で流通する第一流体(蒸気)との熱交換で、第二流体が予め設定された温度にすることができる。すなわち、第一温度感知手段及び第二温度感知手段のそれぞれの感知結果に応じて二つの調整弁の弁開度が調整されるため、その二つの調整弁の弁開度のバランスが図られる。その結果、第一流体はドレンになって排出される一方で、第二流体は設定温度になって排出される。
【0024】
そして、蒸気を外部に排出せずにドレンのみを選択的に排出するためのスチームトラップを設けることなく、第一流体である蒸気をドレンにして排出することができるため、第一流体の流通経路の主たる抵抗は、プレート式熱交換器の第一流路での抵抗となる。これにより、第一流体を流通経路で流通させるために必要となる圧力を低く設定することができる。
【0025】
このように、上記構成の熱交換システムでは、第一流体の供給圧力を低くできるため、第一流路を流通する第一流体の温度も必要以上に高くならない。従って、プレート式熱交換器の伝熱プレートの間のシールが熱的な影響(熱膨張による応力集中や加熱による劣化等)を受けることが抑えられる。
【0026】
本発明の他態様として、制御部と、第二流入路に接続された第二供給配管系であって、第二流入路に第二流体を供給する第二供給配管系と、第二流出路に接続された第二排出配管系であって、第二流出路から第二流体を排出させる第二排出配管系と、第二排出配管系を流通する第二流体の温度を感知する第二温度感知手段とをさらに備え、制御部は、第一温度感知手段の感知結果が蒸気の液化温度以下になり且つ第二温度感知手段の感知結果が予め設定された熱交換後における第二流体の設定温度になるように、調整弁に対して弁開度を調整させる、ようにしてもよい。
【0027】
上記構成によれば、制御部は、第一温度感知手段の感知結果が蒸気の液化温度以下になり且つ第二温度感知手段の感知結果が予め設定された熱交換後における第二流体の設定温度になるように、調整弁に対して弁開度を調整させるため、第一排出配管系から排出される第一流体は液化した状態(ドレンになった状態)になる一方で、第二流体は設定温度になって排出される。
【0028】
すなわち、制御部は、第一温度感知手段及び第二温度感知手段のそれぞれの感知結果に対応して第一排出配管系における第一流体の温度状態と第二排出配管系における第二流体の温度状態とがバランスのとれた状態になるように調整弁の弁開度を調整する。
【0029】
そして、蒸気を外部に排出せずにドレンのみを選択的に排出するためのスチームトラップを設けることなく、第一流体である蒸気をドレンにして排出することができるため、第一流体の流通経路の主たる抵抗は、プレート式熱交換器の第一流路での抵抗となる。これにより、第一流体を流通経路で流通させるために必要となる圧力を低く設定することができる。
【0030】
このように、上記構成の熱交換システムでは、第一流体の供給圧力を低くできるため、第一流路を流通する第一流体の温度も必要以上に高くならない。従って、プレート式熱交換器の伝熱プレートの間のシールが熱的な影響(熱膨張による応力集中や加熱による劣化等)を受けることが抑えられる。
【0031】
本発明の別の態様として、プレート式熱交換器における第一流入路から第一流出路に向かう第一流体の流通経路の流通抵抗は、第一流入路側よりも第一流出路側の方が大きいことが好ましい。このようにすれば、第一流入路から第一流出路に向かう第一流体の流通経路(第一流路)で第一流体を適度に滞留させる(スルーさせない)ことになるため、第二流路を流通する第二流体との熱交換効率が高まる。その結果、第一流体(蒸気)を確実に液化させる(ドレンにする)ことができる。
【0032】
本発明に係る熱交換システムの運転方法は、第一方向に重ね合わされた複数の伝熱プレートを含むプレート式熱交換器であって、隣り合う伝熱プレート間がシールされることで、伝熱プレートを境にして、第一流体を第一方向と直交する第二方向に流通させる第一流路と、第二流体を第二方向に流通させる第二流路とが、第一方向において交互に形成されるとともに、複数の伝熱プレートのそれぞれに設けられた貫通孔が連なることで、それぞれが第一方向に延びて第一流路に連通する第一流入路及び第一流出路と、それぞれが第一方向に延びて第二流路に連通する第二流入路及び第二流出路とが形成されたプレート式熱交換器と、調整弁を含み且つ第一流入路に接続された第一供給配管系であって、第一流入路に第一流体としての蒸気を供給する第一供給配管系と、第一流出路に接続された第一排出配管系であって、第一流出路から第一流体を排出させる第一排出配管系とを含む熱交換システムの運転方法において、第一流体の温度を感知する第一温度感知手段によって、第一排出配管系を流通する第一流体の温度を経時的に感知する工程と、第一温度感知手段感知結果が蒸気の液化温度以下になるように調整弁の弁開度を調整する工程とを含むことを特徴とする。
【0033】
上記方法によれば、第一排出配管系の温度を経時的に感知する工程と、第一温度感知手段の感知結果が蒸気の液化温度以下になるように調整弁の弁開度を調整する工程とを含むため、第一排出配管系から排出される第一流体が液化した状態(ドレンになった状態)になる。すなわち、上記構成によれば、蒸気を外部に排出せずにドレンのみを選択的に排出するためのスチームトラップを設けることなく、第一流体である蒸気をドレンにして排出することができる。
【0034】
そして、第一排出配管系にスチームトラップを設ける必要がない(大気開放される)ため、第一流体の流通経路の主たる抵抗は、プレート式熱交換器の第一流路での抵抗となる。これにより、第一流体を流通経路で流通させるために必要となる圧力を低く設定することができる。
【0035】
このように、上記方法では、第一流体の供給圧力を低くできるため、第一流路を流通する第一流体の温度も必要以上に高くならない。従って、プレート式熱交換器の伝熱プレートの間のシールが熱的な影響(熱膨張による応力集中や加熱による劣化等)を受けることが抑えられる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、第一流体に蒸気が採用されても、プレート式熱交換器の伝熱プレート間のシール性能を維持することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る熱交換システムの全体概略図である。
図2図2は、第一実施形態に係る熱交換システムのプレート式熱交換器の全体斜視図である。
図3図3は、第一実施形態に係る熱交換システムのプレート式熱交換器の分解斜視図である。
図4図4は、第一実施形態に係る熱交換システムの第一流路での第一流体の流れを説明するための図である。
図5図5は、第一実施形態に係る熱交換システムの第二流路での第二流体の流れを説明するための図である。
図6図6は、本発明の第二実施形態に係る熱交換システムの全体概略図である。
図7図7は、本発明の第三実施形態に係る熱交換システムの全体概略図である。
図8図8は、本発明の他実施形態に係る熱交換システムの第一流路での第一流体の流れを説明するための図である。
図9図9は、本発明の別の実施形態に係る熱交換システムの第一流路での第一流体の流れを説明するための図である。
図10図10は、本発明のさらに別の実施形態に係る熱交換システムの第一流路での第一流体の流れを説明するための図である。
図11図11は、本発明のさらに別の実施形態に係る熱交換システムのプレート式熱交換器の概略断面図である。
図12図12は、本発明のさらに別の実施形態に係る熱交換システムの全体概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0039】
まず、本発明の第一実施形態に係る熱交換システムについて説明する。図1に示す如く、本実施形態に係る熱交換システム1は、プレート式熱交換器2を備える。
【0040】
プレート式熱交換器2は、図2及び図3に示す如く、複数の伝熱プレート20を含む。複数の伝熱プレート20のそれぞれは、金属プレートをプレス成型品である。複数の伝熱プレート20のそれぞれは、図3に示す如く、第一方向(厚み方向)において、複数の凹条(採番しない)及び複数の凸条(採番しない)が形成された第一面と、第一面に対して反対側を向く第二面であって、第一面の凹条と表裏の関係にある複数の凸条(採番しない)及び第一面の凸条と表裏の関係にある複数の凹条(採番しない)が形成された第二面とを有する。第一面及び第二面に形成された凹条及び凸条は、第一方向と直交する第二方向に対して交差する方向に延びる。
【0041】
また、複数の伝熱プレート20のそれぞれは、第一方向に貫通した貫通孔200を少なくとも四か所に有する。本実施形態において、複数の伝熱プレート20のそれぞれは、第一方向から見て矩形状であり、四隅(四つの角部)のそれぞれに貫通孔200を有する。すなわち、本実施形態において、伝熱プレート20は、四つの貫通孔200を有する。
【0042】
複数の伝熱プレート20は、互いの貫通孔200を一致させた状態で第一方向に重ね合わされている。具体的には、複数の伝熱プレート20のそれぞれは、第一面を隣り合う伝熱プレート20の第一面と対向させ、第二面を隣り合う伝熱プレート20の第二面と対向させる。
【0043】
この状態において、隣り合う伝熱プレート20の外周端部同士の間がシール(封止)される。また、隣り合う伝熱プレート20の貫通孔200の周囲(貫通孔200を包囲する環状の領域)同士の間がシール(封止)される。
【0044】
具体的には、第二方向における一端側にある二つの貫通孔200のうちの一方の貫通孔200の周囲、及び第二方向における他端側にある二つの貫通孔200のうちの一方の貫通孔200の周囲については、隣り合う伝熱プレート20の第二面間がシールされる。これに対し、第二方向における一端側にある二つの貫通孔200のうちの他方の貫通孔200の周囲、及び第二方向における他端側にある二つの貫通孔200のうちの他方の貫通孔200の周囲については、隣り合う伝熱プレート20の第一面間がシールされる。
【0045】
本実施形態において、複数の伝熱プレート20は、ロウ付けによって一体にされる。これにより、本実施形態のプレート式熱交換器2においては、隣り合う伝熱プレート20の外周端部同士の間がロウ付けによってシール(封止)されるとともに、隣り合う伝熱プレート20の貫通孔200の周囲の間がロウ付けによってシール(封止)されている。
【0046】
このように、隣り合う伝熱プレート20の間がシールされることで、プレート式熱交換器2には、伝熱プレート20を境にして、第一流体Aを第二方向に流通させる第一流路R1と、第二流体Bを第二方向に流通させる第二流路R2とが、第一方向において交互に形成される。また、複数の伝熱プレート20の四つの貫通孔200のそれぞれが、第一方向に連なる。すなわち、プレート式熱交換器2には、それぞれが第一方向に延びて第一流路R1のみに連通する第一流入路Ra1及び第一流出路Ra2と、それぞれが第一方向に延びて第二流路R2のみに連通する第二流入路Rb1及び第二流出路Rb2とが形成される。
【0047】
本実施形態に係るプレート式熱交換器2において、第一流路R1の上流域(第一流入路Ra1側の領域)と、第一流路R1の下流域(第一流出路Ra2側の領域)とが、第一方向及び第二方向と直交する第三方向に延びる中心線を基準にして線対称にされ、第一流路R1での第一流体Aの流れが台形流になるように構成されている。また、第二流路R2の上流域(第二流入路Rb1側の領域)と、第二流路R2の下流域(第二流出路Rb2側の領域)とが、第一方向及び第二方向と直交する第三方向に延びる中心線を基準にして線対称にされ、第二流路R2での第二流体Bの流れが台形流になるように構成されている。これに伴い、第一流路R1と第二流路R2とは、伝熱プレート20の第二方向に延びる中心線を基準にして線対称になっている。
【0048】
本実施形態に係る熱交換システム1は、上記構成のプレート式熱交換器2を備えることを前提に、図1に示す如く、第一流入路Ra1に接続された第一供給配管系3であって、第一流入路Ra1に第一流体Aとしての蒸気を供給する第一供給配管系3と、第一流出路Ra2に接続された第一排出配管系4であって、第一流出路Ra2から第一流体Aを排出させる第一排出配管系4と、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度を感知する第一温度感知手段7とを備える。さらに、本実施形態に係る熱交換システム1は、第二流入路Rb1に接続された第二供給配管系5であって、第二流入路Rb1に第二流体Bを供給する第二供給配管系5と、第二流出路Rb2に接続された第二排出配管系6であって、第二流出路Rb2から第二流体Bを排出させる第二排出配管系6とを備える。
【0049】
第一供給配管系3は、第一流体Aの供給源(図示しない)とプレート式熱交換器2(第一流入路Ra1)とを繋ぐ。すなわち、第一供給配管系3は、第一流体Aの供給源とプレート式熱交換器2の第一流入路Ra1とを連通させる流路(流通経路)を画定する。本実施形態において、第一流体Aは、蒸気である。これに伴い、第一供給配管系3は、第一流体A(蒸気)の発生源(供給源)であるボイラ(図示しない)に繋がる。
【0050】
第一供給配管系3は、弁開度を調整可能な調整弁30を含む。本実施形態において、第一供給配管系3は、流路を開放及び遮断するための開閉弁31をさらに備える。
【0051】
調整弁30及び開閉弁31は、第一供給配管系3の途中位置に配置される。本実施形態において、開閉弁31は、調整弁30の下流側に配置される。
【0052】
調整弁30は、弁開度を調整可能な弁本体300と、弁本体300の弁開度を変更させるアクチュエータ301とを含む。
【0053】
本実施形態において、弁本体300は、上流側と下流側とを連通させる流路を画したハウジング(採番しない)と、ハウジングの流路の途中位置に配置された弁座(図示しない)と、弁座に対して接離可能な弁体(図示しない)とを備える。本実施形態に係る弁本体300は、弁体を弁座に対して接離させる(弁体と弁座との距離(弁開度)を変更する)ことで、第一流体Aの流通量(供給蒸気量)を調整する、所謂流量調整バルブである。なお、弁本体300には、グローブバルブやニードルバルブ等、各種バルブを採用することができ、本実施形態においては、グローブバルブが採用される。
【0054】
アクチュエータ301は、弁座に対する弁体の接離方向に延びる動作軸(採番しない)であって、弁体に接続された動作軸と、第一温度感知手段7による温度感知を受けて動作軸を軸芯方向に移動させる作動部(採番しない)とを備える。
【0055】
アクチュエータ301の作動部は、動作軸に連結された受圧部(図示しない)であって、流体の圧力を受ける受圧部と、受圧部を流体の圧力の作用方向とは逆方向に付勢する付勢部材(図示しない)とを備える。受圧部は、動作軸の軸芯方向で位置調整可能である。位置調整された受圧部の位置は、弁開度を決定する。すなわち、位置調整された受圧部の位置は、基準となる弁開度(初期の弁開度)を決定し、これに伴って第一流体Aの基準となる供給量を決定する。
【0056】
アクチュエータ301は、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度に応じて弁体を移動させる。本実施形態において、アクチュエータ301は、第一温度感知手段7の温度感知に連動し、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度が該第一流体A(蒸気)の液化温度以下になるように、弁本体300の弁開度を変更させる。
【0057】
本実施形態において、第一流体Aが蒸気であるため、熱交換システム1が大気圧下に設置されることを前提に、第一流体Aの液化温度は、100℃である。従って、アクチュエータ301は、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度が100℃以下になるように、弁本体300の弁開度を変更させる。本実施形態において、アクチュエータ301は、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度が、該第一流体Aの液化温度よりも低い温度(蒸気がドレンになる温度よりも低い温度)になる(例えば、99℃以下になる)ように、弁本体300の弁開度を変更させる。
【0058】
開閉弁31は、第一流体Aの流通と遮断とを切り変え可能なバルブである。これに伴い、開閉弁31には、ボールバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、ニードルバルブ等の種々タイプのものを採用することができる。
【0059】
第一排出配管系4は、大気開放している。すなわち、第一排出配管系4は、プレート式熱交換器2(第一流出路Ra2)から第一流体Aの排出位置(図示しない)に至る配管であり、全長に亘って流路(空間)が連通している。なお、第一排出配管系4は、プレート式熱交換器2によって第一流体Aと第二流体Bとを熱交換させる状況において、大気開放している(弁開度を調整しない)ことを前提に、第一供給配管系3と同様に流路を開放及び遮断するための開閉弁が設けられていてもよい。
【0060】
本実施形態において、第二供給配管系5は、第二流体Bを貯留する貯留タンクTに接続され、第二排出配管系6は、貯留タンクTに第二流体Bを供給可能に設置される。第二供給配管系5又は第二排出配管系6の何れか一方は、ポンプPを含む。
【0061】
第二供給配管系5がポンプPを含む場合、そのポンプPは、貯留タンクTから第二流体Bを引き込んで該第二流体Bをプレート式熱交換器2(第二流入路Rb1)に送り込むためのポンプであり、第二排出配管系6がポンプPを含む場合、そのポンプPは、プレート式熱交換器2(第二流出路Rb2)から第二流体Bを引き込んで該第二流体Bを貯留タンクTに送り込むためのポンプである。ここでは、第二供給配管系5がポンプPを含む。
【0062】
これにより、本実施形態に係る熱交換システム1は、第二流体B(例えば、水)を、貯留タンクT、第二供給配管系5、プレート式熱交換器2(第二流入路Rb1、第二流路R2、第二流出路Rb2)、及び第二排出配管系6で循環させつつ、プレート式熱交換器2内で第一流路R1を流通する第一流体Aと熱交換させる(本実施形態においては第一流体Aによって加熱する)ようになっている。
【0063】
第一温度感知手段7は、第一排出配管系4に取り付けられ、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度(熱)を経時的に感知する。具体的には、第一温度感知手段7は、第一流体Aの温度(熱)を感知する感知部70と、感知部70による感知結果を第一調整弁30に伝達する感知結果伝達手段71とを有する。
【0064】
本実施形態において、第一温度感知手段7の感知部70には、熱の影響を受けて膨張及び収縮するガスが封入されている。第一温度感知手段7の感知部70は、第一排出配管系4の流路内に位置させた状態で該第一排出配管系4に取り付けられている。これにより、感知部70は、第一流体Aの熱を受け、その熱の温度に応じて封入したガスを膨張・収縮させる。
【0065】
第一温度感知手段7において、膨張・収縮するガスを封入した感知部70が採用されるに伴い、感知結果伝達手段71は、内部に圧縮性の乏しいガスが封入されチューブによって構成される。感知結果伝達手段(チューブ)71は、長手方向に第一端と該第一端に対して反対側の第二端とを有する。感知結果伝達手段71の第一端は、感知部70に流体的に接続され、感知結果伝達手段71の第二端は、第一調整弁30の作動部に流体的に接続されている。
【0066】
これにより、感知部70のガスが膨張したときに、感知結果伝達手段(チューブ)71内のガスがアクチュエータ301の作動部に向けて押され、作動部の受圧部を加圧する一方、感知部70のガスが収縮したときに、感知結果伝達手段(チューブ)71内のガスが感知部70側に引かれ、受圧部に対する加圧を徐々に解除する。
【0067】
アクチュエータ301の作動部において、受圧部が動作軸を軸芯方向に移動させ、弁体を移動(弁座に対して接離)させる。すなわち、感知部70のガスは、第一流体Aの温度に対応して膨張又は収縮するため、該感知部70内のガスの膨張又は収縮に伴って感知結果伝達手段(チューブ)71内のガスも第一流体Aの温度と対応して移動する。
【0068】
そして、第一調整弁30において、作動部の受圧部は、感知結果伝達手段(チューブ)71内のガスによる加圧(受圧)状態に応じて移動するため、受圧部に対して動作軸を介して接続された弁体についても、第一流体Aの温度に応じて移動する。これにより、感知部70に封入されたガスの状態が、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度が予め設定した温度(蒸気の液化温度以下)と対応した状態になるように、第一調整弁30の弁開度が調整される。すなわち、本実施形態に係る熱交換システム1において、第一調整弁30及び第一温度感知手段7は、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度を調整する自動温度調整弁を構成している。
【0069】
本実施形態に係る熱交換システム1は、以上の通りであり、ポンプPを駆動することで、第二流体Bを循環させる。これに併せ、開閉弁31を開状態にし、供給源から第一流体Aをプレート式熱交換器2に供給する。この状態において、図4に示す如く、第一流体Aは、第一流入路Ra1から第一流路R1に流入し、第一流路R1を第二方向に流通して第一流出路Ra2に排出される。これに対し、第二流体Bは、図5に示す如く、第二流入路Rb1から第二流路R2に流入し、第二流路R2を第二方向に流通して第二流出路Rb2に排出される。
【0070】
そうすると、第一流路R1を流通する第一流体Aと、第二流路R2を流通する第二流体Bとが、伝熱プレート20を介して熱交換する。これにより、第二流路R2を流通する第二流体Bは、第一流体A(蒸気)の熱を受けて加熱される。これに対し、第一流体Aである蒸気は、第二流体Bに熱が奪われる結果、第一流出路Ra2に向かうにつれて凝縮してドレンになる。
【0071】
この状態において、供給された第一流体A(蒸気)が完全にドレンにならない可能性があるが、本実施形態において、図1に示す如く、第一温度感知手段7が、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度(熱)を感知し、調整弁30が第一温度感知手段7の感知結果を受けて第一供給配管系3における第一流体Aの供給量(熱量)を調整する。すなわち、調整弁30は、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度が該第一流体Aの液化温度以下(蒸気がドレンになる温度以下)になるように、第一流体Aの供給量を調整する。
【0072】
従って、第一流体A(蒸気)は、第一排出配管系4を流通する状態では完全に液化することになり、第一排出配管系4からドレンとして排出される。
【0073】
以上のように、本実施形態に係る熱交換システム1は、第一方向に重ね合わされた複数の伝熱プレート20を含むプレート式熱交換器2であって、隣り合う伝熱プレート20間がシールされることで、伝熱プレート20を境にして、第一流体Aを第一方向と直交する第二方向に流通させる第一流路R1と、第二流体Bを第二方向に流通させる第二流路R2とが、第一方向において交互に形成されるとともに、複数の伝熱プレート20のそれぞれに設けられた貫通孔200が連なることで、それぞれが第一方向に延びて第一流路R1に連通する第一流入路Ra1及び第一流出路Ra2と、それぞれが第一方向に延びて第二流路R2に連通する第二流入路Rb1及び第二流出路Rb2とが形成されたプレート式熱交換器2と、第一流入路Ra1に接続された第一供給配管系3であって、第一流入路Ra1に第一流体Aとしての蒸気を供給する第一供給配管系3と、第一流出路Ra2に接続された第一排出配管系4であって、第一流出路Ra2から第一流体Aを排出させる第一排出配管系4と、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度を感知する第一温度感知手段7とを備え、第一供給配管系3は、弁開度を調整可能な調整弁30を含み、調整弁30は、第一温度感知手段7の感知結果が蒸気の液化温度以下になるように弁開度を調整する。
【0074】
上記構成によれば、第一供給配管系3は、弁開度を調整可能な調整弁30を含み、調整弁30は、第一温度感知手段7の感知結果が蒸気の液化温度以下になるように弁開度を調整するため、第一排出配管系4から排出される第一流体Aは液化した状態(ドレンになった状態)になる。すなわち、上記構成によれば、蒸気を外部に排出せずにドレンのみを選択的に排出するためのスチームトラップを設けることなく、第一流体Aである蒸気をドレンにして排出することができる。
【0075】
そして、蒸気を外部に排出せずにドレンのみを選択的に排出するためのスチームトラップを設けることなく、第一流体Aである蒸気をドレンにして排出することができるため、第一流体Aの流通経路の主たる抵抗は、プレート式熱交換器2の第一流路R1での抵抗となる。これにより、第一流体Aを流通経路で流通させるために必要となる圧力を低く設定することができる。
【0076】
このように、上記構成の熱交換システム1では、第一流体Aの供給圧力を低くできるため、第一流路R1を流通する第一流体Aの温度も必要以上に高くならない。従って、プレート式熱交換器2の伝熱プレート20の間のシールが熱的な影響(熱膨張による応力集中や加熱による劣化等)を受けることが抑えられる。
【0077】
次に、本発明の第二実施形態に係る熱交換システムについて説明する。なお、本実施形態に係る熱交換システムは、第一実施形態に係る熱交換システムの構成と同一の構成又は相当する構成を備えているため、第一実施形態に係る熱交換システムの構成と同一の構成又は相当する構成については、同一名称及び同一符号を付すこととし、さらに、第一実施形態に係る熱交換システムの構成と同一の構成については、第一実施形態の説明を引用することとする。従って、ここでは、第一実施形態の熱交換システム1と異なる構成についてのみ説明することとする。
【0078】
図6に示す如く、本実施形態に係る熱交換システム1において、プレート式熱交換器2は第一実施形態と同一である。これを前提に、熱交換システム1は、第一供給配管系3、第一排出配管系4、第二供給配管系5、及び第二排出配管系6を備える。さらに、熱交換システム1は、第一温度感知手段7に加え、第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度を感知する第二温度感知手段8を備える。
【0079】
第一供給配管系3は、調整弁30,32を二つ含む。二つの調整弁30,32は、開閉弁31の上流側に配置される。なお、以下の説明において、二つの調整弁30のうちの一方の調整弁30を第一調整弁といい、二つの調整弁30のうちの他方の調整弁32を第二調整弁ということとする。
【0080】
第一調整弁30は、第一実施形態の調整弁30と同一の構成を有し、第一温度感知手段7の感知結果に応じて弁開度を調整する。すなわち、第一調整弁30が設置される目的は、第一実施形態の調整弁30を設置する目的と同一である。
【0081】
第二調整弁32の機械的な構成は、第一調整弁30の機械的な構成と同一であるが、設置される目的(機能)が異なるため、第二調整弁32の構成について具体的に説明する。
【0082】
第二調整弁32は、弁開度を調整可能な弁本体320と、弁本体320の弁開度を変更させるアクチュエータ321とを含む。
【0083】
第二調整弁32の弁本体320は、上流側と下流側とを連通させる流路を画したハウジング(採番しない)と、ハウジングの流路の途中位置に配置された弁座(図示しない)と、弁座に対して接離可能な弁体(図示しない)とを備える。本実施形態に係る弁本体320は、弁体を弁座に対して接離させる(弁体と弁座との距離(弁開度)を変更する)ことで、第一流体Aの流通量(供給蒸気量)を調整する、所謂流量調整バルブである。なお、弁本体320には、グローブバルブやニードルバルブ等、各種バルブを採用することができ、本実施形態においては、グローブバルブが採用されている。
【0084】
第二調整弁32のアクチュエータ321は、第二排出配管系6(排出される第二流体B)の温度に応じて弁体を移動させる。本実施形態において、アクチュエータ321は、第二温度感知手段8の温度感知に連動し、第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度が予め設定した温度になるように、弁本体320の弁開度を変更させる。
【0085】
具体的に説明すると、第二調整弁32のアクチュエータ321は、弁座に対する弁体の接離方向に延びる動作軸であって、弁体に接続された動作軸と、第二温度感知手段8による温度感知を受けて動作軸を軸芯方向に移動させる作動部とを備える。
【0086】
第二調整弁32において、アクチュエータ321の作動部は、動作軸に連結された受圧部(図示しない)と、受圧部を流体の圧力の作用方向とは逆方向に付勢する付勢部材(図示しない)とを備える。受圧部は、動作軸の軸芯方向で位置調整可能である。位置調整された受圧部の位置は、弁開度を決定する。すなわち、位置調整された受圧部の位置は、基準となる弁開度(初期の弁開度)を決定し、これに伴って第一流体Aの基準となる供給量を決定する。
【0087】
第一温度感知手段7は、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度を経時的に感知する。第一温度感知手段7は、第一実施形態の第一温度感知手段7と同一であり、感知部70が第一排出配管系4に取り付けられ、感知結果伝達手段71が第一調整弁30の作動部に対して流体的に接続される。
【0088】
第二温度感知手段8の機械的な構成は、第一温度感知手段7の機械的な構成と同一であるが、第一温度感知手段7と設置される目的(機能)が異なるため、第二温度感知手段8の構成について具体的に説明する。
【0089】
第二温度感知手段8は、第二排出配管系6に取り付けられ、第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度(熱)を感知する。具体的には、第二温度感知手段8は、第二流体Bの温度(熱)を感知する感知部80と、感知部80による感知結果を第二調整弁32に伝達する感知結果伝達手段81とを有する。
【0090】
第二温度感知手段8の感知部80は、第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度を経時的に感知する。本実施形態において、第二温度感知手段8の感知部80には、熱の影響を受けて膨張及び収縮するガスが封入されている。第二温度感知手段8の感知部80は、第二排出配管系6の流路内に位置させた状態で該第二排出配管系6に取り付けられている。これにより、感知部80は、第二流体Bの熱を受け、その熱の温度に応じて封入したガスを膨張・収縮させる。
【0091】
第二温度感知手段8において、膨張・収縮するガスを封入した感知部80が採用されるに伴い、感知結果伝達手段81は、内部に圧縮性の乏しいガスが封入されチューブによって構成される。感知結果伝達手段(チューブ)81は、長手方向に第一端と該第一端に対して反対側の第二端とを有する。感知結果伝達手段81の第一端は、感知部80に流体的に接続され、感知結果伝達手段81の第二端は、第二調整弁32の作動部に流体的に接続されている。
【0092】
これにより、感知部80のガスが膨張したときに、感知結果伝達手段(チューブ)81内のガスがアクチュエータ321の作動部に向けて押され、作動部の受圧部を加圧する一方、感知部80のガスが収縮したときに、感知結果伝達手段(チューブ)81内のガスが感知部80側に引かれ、受圧部に対する加圧を徐々に解除する。
【0093】
アクチュエータ321の作動部において、受圧部が動作軸を軸芯方向に移動させ、弁体を移動(弁座に対して接離)させる。すなわち、感知部80のガスは、第二流体Bの温度に対応して膨張又は収縮するため、該感知部80内のガスの膨張又は収縮に伴って感知結果伝達手段(チューブ)81内のガスも第二流体Bの温度と対応して移動する。
【0094】
そして、第二調整弁32において、作動部の受圧部は、感知結果伝達手段(チューブ)81内のガスによる加圧(受圧)状態に応じて移動するため、受圧部に対して動作軸を介して接続された弁体についても、第二流体Bの温度に応じて移動する。これにより、感知部80に封入されたガスの状態が、第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度が予め設定した加熱温度と対応した状態になるように、第二調整弁32の弁開度が調整される。すなわち、本実施形態に係る熱交換システム1において、第二調整弁32及び第二温度感知手段8は、第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度を調整する自動温度調整弁を構成している。
【0095】
本実施形態に係る熱交換システム1は、以上の通りであり、ポンプPを駆動することで、第二流体Bを循環させる。これに併せ、開閉弁31を開状態にし、供給源から第一流体Aをプレート式熱交換器2に供給する。この状態において、第一流体Aは、第一流入路Ra1から第一流路R1に流入し、第一流路R1を第二方向に流通して第一流出路Ra2に排出される。これに対し、第二流体Bは、第二流入路Rb1から第二流路R2に流入し、第二流路R2を第二方向に流通して第二流出路Rb2に排出される。
【0096】
そうすると、第一流路R1を流通する第一流体Aと、第二流路R2を流通する第二流体Bとが、伝熱プレート20を介して熱交換する。これにより、第二流路R2を流通する第二流体Bは、第一流体A(蒸気)の熱を受けて加熱される。これに対し、第一流体Aである蒸気は、第二流体Bに熱が奪われる結果、第一流出路Ra2に向かうにつれて凝縮してドレンになる。
【0097】
この状態において、供給された第一流体A(蒸気)が完全にドレンにならない可能性があるが、本実施形態において、第一温度感知手段7が、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度(熱)を感知し、その感知結果を受けて第一調整弁30が第一供給配管系3における第一流体Aの供給量(熱量)を調整する。すなわち、第一調整弁30は、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度が該第一流体Aの液化温度以下(蒸気がドレンになる温度以下)になるように、第一流体Aの供給量を調整する。
【0098】
従って、第一流路R1に供給された第一流体A(蒸気)は、第一排出配管系4を流通する状態では完全に液化することになり、第一排出配管系4からドレンとして排出される。
【0099】
本実施形態の熱交換システム1においては、第二温度感知手段8が、第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度(熱)を感知し、その感知結果を受けて第二調整弁32が第一供給配管系3における第一流体Aの供給量(熱量)を調整する。すなわち、第二調整弁32は、第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度が予め設定した加熱温度になるように、第一流体Aの供給量を調整する。
【0100】
上述の如く、本実施形態に係る熱交換システム1では、第一調整弁30及び第二調整弁32のそれぞれが第一流体Aの流量を調整することになる。しかし、第一調整弁30が第一温度感知手段7の感知結果に対応して弁開度を調整することで、第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度が予め設定した温度から外れると、第二調整弁32が第二温度感知手段8の感知結果に対応して弁開度を調整する。また、第二調整弁32が第二温度感知手段8の感知結果に対応して弁開度を調整することで、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度が液化温度を超えようとすると、第一調整弁30が第一温度感知手段7の感知結果に対応して弁開度を調整する。
【0101】
すなわち、第一調整弁30及び第二調整弁32は、互いの弁開度の状態を補完し合うことで、最終的にバランスのとれた状態になり、第一供給配管系3から第一流入路Ra1に流入する第一流体Aの流量は、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度が液化温度以下となり且つ第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度が予め設定した温度になる流量になる。
【0102】
以上のように、本実施形態に係る熱交換システム1は、第一方向に重ね合わされた複数の伝熱プレート20を含むプレート式熱交換器2であって、隣り合う伝熱プレート20間がシールされることで、伝熱プレート20を境にして、第一流体Aを第一方向と直交する第二方向に流通させる第一流路R1と、第二流体Bを第二方向に流通させる第二流路R2とが、第一方向において交互に形成されるとともに、複数の伝熱プレート20のそれぞれに設けられた貫通孔200が連なることで、それぞれが第一方向に延びて第一流路R1に連通する第一流入路Ra1及び第一流出路Ra2と、それぞれが第一方向に延びて第二流路R2に連通する第二流入路Rb1及び第二流出路Rb2とが形成されたプレート式熱交換器2と、第一流入路Ra1に接続された第一供給配管系3であって、第一流入路Ra1に第一流体Aとしての蒸気を供給する第一供給配管系3と、第一流出路Ra2に接続された第一排出配管系4であって、第一流出路Ra2から第一流体Aを排出させる第一排出配管系4と、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度を感知する第一温度感知手段7と、第二流入路Rb1に接続された第二供給配管系5であって、第二流入路Rb1に第二流体Bを供給する第二供給配管系5と、第二流出路Rb2に接続された第二排出配管系6であって、第二流出路Rb2から第二流体Bを排出させる第二排出配管系6と、第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度を感知する第二温度感知手段8とを備え、第一供給配管系3は、調整弁30を二つ含み、二つの調整弁30のうちの一方の調整弁30(第一調整弁30)は、第一温度感知手段7の感知結果が蒸気の液化温度以下になるように弁開度を調整し、二つの調整弁30のうちの他方の調整弁32(第二調整弁32)は、第二温度感知手段8の感知結果が予め設定された熱交換後における第二流体Bの設定温度になるように弁開度を調整する。
【0103】
上記構成によれば、第一供給配管系3は、調整弁30を二つ含み、二つの調整弁30のうちの一方の調整弁30(第一調整弁30)は、第一温度感知手段7の感知結果が蒸気の液化温度以下になるように弁開度を調整するため、第一排出配管系4から排出される第一流体Aは液化した状態(ドレンになった状態)になる。すなわち、上記構成によれば、蒸気を外部に排出せずにドレンのみを選択的に排出するためのスチームトラップを設けることなく、第一流体Aである蒸気をドレンにして排出することができる。
【0104】
そして、二つの調整弁30のうちの他方の調整弁32(第二調整弁32)は、第二温度感知手段8の感知結果が予め設定された熱交換後における第二流体Bの設定温度になるように弁開度を調整するため、第一排出配管系4でドレンになるように第一流路R1で流通する第一流体A(蒸気)との熱交換で、第二流体Bを予め設定された温度にすることができる。
【0105】
すなわち、第一温度感知手段7及び第二温度感知手段8のそれぞれの感知結果に応じて二つの調整弁30,32(第一調整弁30及び第二調整弁32)の弁開度が調整されるため、その二つの調整弁30,32(第一調整弁30及び第二調整弁32)の弁開度のバランスが図られる。その結果、第一流体Aはドレンになって排出される一方で、第二流体Bは設定温度になって排出される。
【0106】
そして、蒸気を外部に排出せずにドレンのみを選択的に排出するためのスチームトラップを設けることなく、第一流体Aである蒸気をドレンにして排出することができるため、第一流体Aの流通経路の主たる抵抗は、プレート式熱交換器2の第一流路R1での抵抗となる。これにより、第一流体Aを流通経路で流通させるために必要となる圧力を低く設定することができる。
【0107】
このように、上記構成の熱交換システム1では、第一流体Aの供給圧力を低くできるため、第一流路R1を流通する第一流体Aの温度も必要以上に高くならない。従って、プレート式熱交換器2の伝熱プレート20の間のシールが熱的な影響(熱膨張による応力集中や加熱による劣化等)を受けることが抑えられる。
【0108】
次に、本発明の第三実施形態に係る熱交換システムについて説明する。なお、本実施形態に係る熱交換システムは、第一実施形態に係る熱交換システムの構成と同一の構成又は相当する構成を備えているため、第一実施形態に係る熱交換システムの構成と同一の構成又は相当する構成については、同一名称及び同一符号を付すこととし、さらに、第一実施形態に係る熱交換システムの構成と同一の構成については、第一実施形態の説明を引用することとする。従って、ここでは、第一実施形態の熱交換システム1と異なる構成についてのみ説明することとする。
【0109】
図7に示す如く、本実施形態に係る熱交換システム1において、プレート式熱交換器2は第一実施形態と同一である。これを前提に、熱交換システム1は、第一供給配管系3、第一排出配管系4、第二供給配管系5、及び第二排出配管系6を備える。さらに、熱交換システム1は、第一温度感知手段7に加え、第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度を感知する第二温度感知手段8を備えるとともに、制御部9を備える。
【0110】
第一供給配管系3において、調整弁30は、開閉弁31の上流側に配置される。調整弁30は、弁開度を調整可能な弁本体300と、弁本体300の弁開度を変更させるアクチュエータ301とを含む。
【0111】
本実施形態において、弁本体300は、上流側と下流側とを連通させる流路を画したハウジング(採番しない)と、ハウジングの流路の途中位置に配置された弁座(図示しない)と、弁座に対して接離可能な弁体(図示しない)とを備える。本実施形態に係る弁本体300は、弁体を弁座に対して接離させる(弁体と弁座との距離(弁開度)を変更する)ことで、第一流体Aの流通量(供給蒸気量)を調整する、所謂流量調整バルブである。なお、弁本体300には、グローブバルブやニードルバルブ等、各種バルブを採用することができ、本実施形態においては、グローブバルブが採用されている。
【0112】
アクチュエータ301は、電動モータMを含む。かかるアクチュエータ301は、電動モータMの駆動によって、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度及び第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度に応じて弁本体300の弁体を移動させる。本実施形態において、アクチュエータ301は、制御部9からの指示に基づき、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度が蒸気の液化温度以下になり且つ第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度が予め設定された熱交換後における第二流体Bの設定温度になるように、弁本体300の弁開度を変更させる。
【0113】
第一温度感知手段7は、第一排出配管系4に取り付けられ、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度(熱)を経時的に感知する。具体的には、第一温度感知手段7は、第一流体Aの温度(熱)を感知する感知部70と、感知部70による感知結果を制御部9に伝達する感知結果伝達手段71とを有する。
【0114】
第一温度感知手段7において、感知部70は、経時的に第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度を感知する。本実施形態において、感知部70は、温度センサであり、感知結果伝達手段71は、感知部70と制御部9とを電気的に接続する通信線である。
【0115】
第二温度感知手段8は、第二排出配管系6に取り付けられ、第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度(熱)を感知する。具体的には、第二温度感知手段8は、第二流体Bの温度(熱)を感知する感知部80と、感知部80による感知結果を制御部9に伝達する感知結果伝達手段81とを有する。
【0116】
第二温度感知手段8において、感知部80は、経時的に第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度を経時的に感知する。感知部80は、温度センサであり、感知結果伝達手段81は、感知部80と制御部9とを電気的に接続する通信線である。
【0117】
制御部9は、上述の如く、第一温度感知手段7及び第二温度感知手段8に対して電気的に接続される。また、制御部9は、通信線90,91を介して調整弁30のアクチュエータ301,321に対して電気的に接続されている。
【0118】
制御部9は、調整弁30の作動部(電動モータM)を制御し、第一温度感知手段7の感知結果が蒸気の液化温度以下になり且つ第二温度感知手段8の感知結果が予め設定された熱交換後における第二流体Bの設定温度になるように調整弁30に弁開度を調整させる。
【0119】
以上のように、本実施形態に係る熱交換システム1は、第一方向に重ね合わされた複数の伝熱プレート20を含むプレート式熱交換器2であって、隣り合う伝熱プレート20間がシールされることで、伝熱プレート20を境にして、第一流体Aを第一方向と直交する第二方向に流通させる第一流路R1と、第二流体Bを第二方向に流通させる第二流路R2とが、第一方向において交互に形成されるとともに、複数の伝熱プレート20のそれぞれに設けられた貫通孔200が連なることで、それぞれが第一方向に延びて第一流路R1に連通する第一流入路Ra1及び第一流出路Ra2と、それぞれが第一方向に延びて第二流路R2に連通する第二流入路Rb1及び第二流出路Rb2とが形成されたプレート式熱交換器2と、第一流入路Ra1に接続された第一供給配管系3であって、第一流入路Ra1に第一流体Aとしての蒸気を供給する第一供給配管系3と、第一流出路Ra2に接続された第一排出配管系4であって、第一流出路Ra2から第一流体Aを排出させる第一排出配管系4と、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度を感知する第一温度感知手段7と、制御部9と、第二流入路Rb1に接続された第二供給配管系5であって、第二流入路Rb1に第二流体Bを供給する第二供給配管系5と、第二流出路Rb2に接続された第二排出配管系6であって、第二流出路Rb2から第二流体Bを排出させる第二排出配管系6と、第二排出配管系6を流通する第二流体Bの温度を感知する第二温度感知手段8とを備え、第一供給配管系3は、弁開度を調整可能な調整弁30を含み、第一排出配管系4は、大気開放され、制御部9は、第一温度感知手段7の感知結果が蒸気の液化温度以下になり且つ第二温度感知手段8の感知結果が予め設定された熱交換後における第二流体Bの設定温度になるように調整弁30に弁開度を調整させる。
【0120】
上記構成によれば、制御部9は、第一温度感知手段7の感知結果が蒸気の液化温度以下になり且つ第二温度感知手段8の感知結果が予め設定された熱交換後における第二流体Bの設定温度になるように調整弁30に弁開度を調整させるため、第一排出配管系4から排出される第一流体Aは液化した状態(ドレンになった状態)になる一方で、第二流体Bは設定温度になって排出される。
【0121】
すなわち、制御部9は、第一温度感知手段7及び第二温度感知手段8のそれぞれの感知結果に対応して第一排出配管系4における第一流体Aの温度状態と第二排出配管系6における第二流体Bの温度状態とがバランスのとれた状態になるように調整弁30の弁開度を調整する。
【0122】
そして、蒸気を外部に排出せずにドレンのみを選択的に排出するためのスチームトラップを設けることなく、第一流体Aである蒸気をドレンにして排出することができるため、第一流体Aの流通経路の主たる抵抗は、プレート式熱交換器2の第一流路R1での抵抗となる。これにより、第一流体Aを流通経路で流通させるために必要となる圧力を低く設定することができる。
【0123】
このように、上記構成の熱交換システム1では、第一流体Aの供給圧力を低くできるため、第一流路R1を流通する第一流体Aの温度も必要以上に高くならない。従って、プレート式熱交換器2の伝熱プレート20の間のシールが熱的な影響(熱膨張による応力集中や加熱による劣化等)を受けることが抑えられる。
【0124】
以上のように、上記何れの実施形態に係る熱交換システム1においても、第一流体Aに蒸気を採用しても、プレート式熱交換器2の伝熱プレート20間のシール性能を維持することができるという優れた効果を奏し得る。
【0125】
尚、本発明は、上記何れの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0126】
上記各実施形態のプレート式熱交換器2において、第一流路R1の上流域(第一流入路Ra1側の領域)と、第一流路R1の下流域(第一流出路Ra2側の領域)とが、第一方向及び第二方向と直交する第三方向に延びる中心線を基準にして線対称にされ、第一流路R1において第一流体Aの流れが台形流になるように構成されたが、これに限定されない。例えば、プレート式熱交換器2において、第一流路R1の上流域(第一流入路Ra1側の領域)と、第一流路R1の下流域(第一流出路Ra2側の領域)とが、第一方向に延びる中心線を基準にして回転対称にされ、第一流路R1において第一流体Aの流れが斜行流になるように構成されてもよい。また、第二流路R2も同様である。なお、この場合においても、第一流路R1と第二流路R2とは、第二方向に延びる伝熱プレート20の中心線を基準に線対称にされればよい。
【0127】
上記各実施形態において、プレート式熱交換器2の第一流路R1での第一流体Aの流れが台形流になるように構成され、第一流路R1における第一流体Aの流通抵抗が、第一流路R1の中流域において上流域よりも小さくなるようにされたが、これに限定されない。例えば、プレート式熱交換器2における第一流入路Ra1から第一流出路Ra2に向かう第一流体Aの流通経路の流通抵抗は、第一流入路Ra1側よりも第一流出路Ra2側の方が大きくなるようにされてもよい。このようにすれば、第一流入路Ra1から第一流出路Ra2に向かう第一流体Aの流通経路(第一流路R1)で第一流体Aを適度に滞留させる(スルーさせない)ことになるため、第二流路R2を流通する第二流体Bとの熱交換効率が高まる。その結果、第一流体(蒸気)Aを確実に液化させる(ドレンにする)ことができる。
【0128】
具体的には、図8に示す如く、第一流入路Ra1を複数設けるとともに、第一流入路Ra1の数よりも少ない数の第一流出路Ra2を設けるようにしてもよい。すなわち、第一流入路Ra1と第一流出路Ra2との数を異ならせることで、第一流路R1に対して第一流体Aを流入させるための流路の流路断面積よりも、第一流路R1から第一流体Aを流出させための流路の流路断面積を小さくするようにしてもよい。このようにすれば、第一流体Aの第一流出路Ra2での流通抵抗が大きくなり、第一流路R1を流通する第一流体Aと第二流路R2を流通する第二流体Bとの熱交換効率が高まり、第一流体(蒸気)Aを確実に液化させる(ドレンにする)ことができる。
【0129】
また、図9及び図10に示す如く、伝熱プレート20間に仕切り部(採番しない)を形成し、第一流入路Ra1から第一流出路Ra2に向かうにつれて第一流路R1の流路幅を連続的に或いは断続的に縮小させるようにしてもよい。このようにすれば、第一流出路Ra2に向かうにつれて(流路幅の縮小に対応して)、第一流路R1の流路断面積が小さくなる。これにより、第一流体Aの流通抵抗が第一流路R1の下流側ほど大きくなるため、第一流路R1を流通する第一流体Aと第二流路R2を流通する第二流体Bとの熱交換効率が高まり、第一流体(蒸気)Aを確実に液化させる(ドレンにする)ことができる。
【0130】
さらに、図11に示す如く、第一流路R1を形成した伝熱プレート20同士の間隔は、第一流入路Ra1側よりも第一流出路Ra2側の方が狭くなるようにしてもよい。すなわち、隣り合う伝熱プレート20の第一流路R1を画定する第一面において、上流域、中流域、下流域のそれぞれで凸条の形成態様を異ならせることで、第一流入路Ra1側よりも第一流出路Ra2側の方が伝熱プレート20,20の第一面同士の間隔が狭まるようにしてもよい。このようにすれば、伝熱プレート20,20の間隔に対応して、第一流路R1の流路断面積が第一流出路Ra2側ほど小さくなる。これにより、第一流体Aの流通抵抗が第一流路R1の下流側ほど大きくなるため、第一流路R1を流通する第一流体Aと第二流路R2を流通する第二流体Bとの熱交換効率が高まり、第一流体(蒸気)Aを確実に液化させる(ドレンにする)ことができる。
【0131】
さらに、図12に示す如く、第一流入路Ra1は、複数の第一流路R1のうちの特定の第一流路R1に接続され、第一流出路Ra2は、複数の第一流路R1のうちの前記特定の第一流路R1以外の第一流路R1に接続され、前記特定の第一流路R1と、前記特定の第一流路R1以外の第一流路R1とは、伝熱プレート20に設けられた貫通孔が第一方向に連なることで形成された中継路Rvであって、第一方向に延びる中継路Rvを介して接続され、前記特定の第一流路R1の数が該特定の第一流路R1以外の第一流路R1の数よりも多いようにしてもよい。
【0132】
このようにすれば、第一流入路Ra1と第一流出路Ra2とを繋ぐ第一流体Aの流通経路(流路)の流路断面積が、上流側よりも下流側の方が狭くなる。すなわち、第一流出路Ra2に接続される第一流路R1の数が、第一流入路Ra1に接続される第一流路R1の数に比して少ない分、第一流体Aの流通経路(流路)の流路断面積が下流側ほど小さくなる。従って、第一流体Aを第一流路R1で適度に滞留させる(スルーさせない)ことになるため、第二流路R2を流通する第二流体Bとの熱交換効率が高まる。その結果、第一流体A(蒸気)を確実に液化させる(ドレンにする)ことができる。
【0133】
上記各実施形態において、隣り合う伝熱プレート20の外周端部の間や隣り合う伝熱プレート20の貫通孔200の周囲の間がロウ付けによってシールしたプレート式熱交換器2が採用されたが、これに限定されない。例えば、隣り合う伝熱プレート20の外周端部の間や隣り合う伝熱プレート20の貫通孔200の周囲の間にガスケットが配置され、該ガスケットによって伝熱プレート20間がシールされたプレート式熱交換器2であってもよい。
【0134】
上記各実施形態において、調整弁30と第一温度感知手段7とが自動温度調整弁を構成したが、これに限定されない。例えば、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度を感知し、その感知結果が蒸気の液化温度以下になるように、調整弁30の弁開度を手動で調整するようにしてもよい。すなわち、第一流体Aの温度を感知する第一温度感知手段7によって、第一排出配管系4を流通する第一流体Aの温度を経時的に感知する工程と、第一温度感知手段7の感知結果が蒸気の液化温度以下になるように調整弁30の弁開度を調整する工程とを含んでいればよい。
【符号の説明】
【0135】
1…熱交換システム、2…プレート式熱交換器、3…第一供給配管系、4…第一排出配管系、5…第二供給配管系、6…第二排出配管系、7…第一温度感知手段、8…第二温度感知手段、9…制御部、20…伝熱プレート、30…第一調整弁(調整弁)、31…開閉弁、32…第二調整弁(調整弁)、70…感知部、71…感知結果伝達手段、80…感知部、81…感知結果伝達手段、90,91…通信線、200…貫通孔、300…弁本体、301…アクチュエータ、320…弁本体、321…アクチュエータ、A…第一流体、B…第二流体、M…電動モータ、P…ポンプ、R1…第一流路、R2…第二流路、Ra1…第一流入路、Ra2…第一流出路、Rb1…第二流入路、Rb2…第二流出路、Rv…中継路、T…貯留タンク
【要約】
【課題】 本発明は、第一流体に蒸気が採用されても、プレート式熱交換器の伝熱プレート間のシール性能を維持することのできる熱交換システム及び熱交換システムの運転方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、プレート式熱交換器の第一流入路に第一流体としての蒸気を供給する第一供給配管系と、プレート式熱交換器の第一流出路から第一流体を排出させる第一排出配管系と、第一排出配管系を流通する第一流体の温度を感知する第一温度感知手段とを備え、第一供給配管系は、弁開度を調整可能な調整弁を含み、調整弁は、第一温度感知手段の感知結果が蒸気の液化温度以下になるように弁開度を調整する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12