特許第6573727号(P6573727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573727
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】量子ビットにおける漏れの除去
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/00 20190101AFI20190902BHJP
【FI】
   G06N10/00
【請求項の数】32
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-542110(P2018-542110)
(86)(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公表番号】特表2018-534638(P2018-534638A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】US2015057984
(87)【国際公開番号】WO2017074379
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2018年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラミ・バレントス
【審査官】 塚田 肇
(56)【参考文献】
【文献】 CHEN, Zijun et al.,Measuring and Suppressing Quantum State Leakage in a Superconducting Qubit,arXiv,2015年 9月21日,pp.1-10,URL,https://arxiv.org/pdf/1509.05470.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のキュービットであって、各キュービットが、複数のキュービットレベルのうちの少なくとも1つの占有を容易にし、前記キュービットレベルが、2つの計算キュービットレベルと、それぞれが前記計算キュービットレベルよりも高い1つまたは複数の非計算キュービットレベルとを含み、前記キュービットが、対応する遷移周波数に関連付けられたキュービットレベル間の遷移を容易にする、キュービットと、
キャビティであって、該キャビティがキャビティ周波数を規定する、キャビティと、
各キュービットを前記キャビティに結合する1つまたは複数の結合器と、
前記キャビティを、前記1つまたは複数のキュービットおよび前記キャビティの外部の環境に結合する1つまたは複数の結合器と、
周波数コントローラであって、前記周波数コントローラが制御するキュービットごとに、前記キュービットの前記周波数が前記キャビティ周波数に対して調整されることで非計算レベルの母集団が前記キャビティに転送されるように、キュービットの前記周波数を制御する周波数コントローラと、
を備える、装置。
【請求項2】
前記周波数コントローラが、キュービットごとに、
最も低い計算キュービットレベルに達するまで下方へのキュービットレベル遷移を反復的に実行するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記周波数コントローラが、関連するキュービットレベル以下のキュービットについて、下方へのキュービットレベル遷移を反復的に実行するように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
下方へのキュービットレベル遷移を実行するステップが、
関連するキュービット遷移周波数を前記キャビティ周波数に整合させることと、
あらかじめ定められた時間量にわたって前記整合を維持することと
を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記あらかじめ定められた時間量にわたって前記整合を維持すると、前記キャビティへの母集団の転送が起こる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記周波数コントローラが、キュービットごとに、
前記キャビティ周波数を超えて前記キュービットの前記周波数を掃引するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記周波数コントローラが、関連するキュービットレベル以下のキュービットについて、下方へのキュービットレベル遷移を実行するために、前記キャビティ周波数を超えて前記キュービットの前記周波数を掃引するように構成される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記下方へのキュービットレベル遷移が、最も低い計算キュービットレベルに達するまで逐次実行される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記キュービットを掃引することが、
前記キャビティ周波数に対するキュービット周波数軌道を決定することと、
前記キュービット周波数軌道に従って前記キュービットの前記周波数を移動させることと
を備える、請求項4に記載の装置。
【請求項10】
前記キュービット周波数軌道に従って前記キュービットの前記周波数を移動させることにより、前記キャビティへの母集団の転送のために前記キュービット遷移周波数が前記キャビティ周波数と逐次整合するようになる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記環境が、負荷に接続するワイヤによって形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記ワイヤが読出しラインである、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記キャビティが読出し共振器である、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記キャビティを前記環境に結合する前記結合器が強力である、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記1つまたは複数のキュービットが弱い非線形を示す、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
量子システムにアクセスするステップであって、前記量子システムは、
1つまたは複数のキュービットであって、各キュービットが、複数のキュービットレベルのうちの少なくとも1つの占有を容易にし、前記キュービットレベルが、2つの計算キュービットレベルと、それぞれが前記計算キュービットレベルよりも高い1つまたは複数の非計算キュービットレベルとを含み、前記キュービットが、対応する遷移周波数に関連付けられたキュービットレベル間の遷移を容易にする、キュービットと、
キャビティであって、該キャビティがキャビティ周波数を規定する、キャビティと、
各キュービットを前記キャビティに結合する1つまたは複数の結合器と、
前記キャビティを、前記1つまたは複数のキュービットおよび前記キャビティの外部の環境に結合する1つまたは複数の結合器と、
周波数コントローラであって、前記周波数コントローラが制御するキュービットごとに、前記キュービットの前記周波数が前記キャビティ周波数に対して調整されることで非計算レベルの母集団が前記キャビティに転送されるように、キュービットの前記周波数を制御する周波数コントローラと、
を備える、ステップと、
キュービットごとに、前記キュービットの前記周波数が前記キャビティ周波数に対して調整されることで非計算レベルの母集団が前記キャビティに転送されるように、各キュービットの前記周波数を制御するステップと
を含む、方法。
【請求項17】
前記方法が、キュービットごとに、
最も低い計算キュービットレベルに達するまで下方へのキュービットレベル遷移を反復的に実行するステップを含み、下方へのキュービットレベル遷移を実行するステップが、
関連するキュービット遷移周波数を前記キャビティ周波数に整合させるステップと、
あらかじめ定められた時間量にわたって待機するステップと
を備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
あらかじめ定められた時間量にわたって待機すると、前記キャビティへの母集団の転送が起こる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
キュービットごとに最も低い計算キュービットレベルに達するまで下方へのキュービットレベル遷移を反復的に実行するステップが、同様のキュービットに対して並列に実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記あらかじめ定められた時間量が、効果的な漏れ除去を可能にするように最適化される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、キュービットごとに、
前記キャビティ周波数を超えて前記キュービットの前記周波数を掃引するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記キャビティ周波数を超えて前記キュービットの前記周波数を掃引するステップが、関連するキュービットレベル以下のキュービットについて、下方へのキュービットレベル遷移を実行する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記下方へのキュービットレベル遷移が、最も低い計算キュービットレベルに達するまで逐次実行される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記キャビティ周波数を超えて前記キュービットの前記周波数を掃引するステップが、同様のキュービットに対して並列に実行される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記キュービットを掃引するステップが、
前記キャビティ周波数に対するキュービット周波数軌道を決定するステップと、
前記キュービット周波数軌道に従って前記キュービットの前記周波数を移動させるステップと
を備える、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記キュービット周波数軌道に従って前記キュービットの前記周波数を移動させるステップにより、前記キャビティへの母集団の転送のためにキュービット遷移周波数が前記キャビティ周波数と逐次整合するようになり、下方へのキュービットレベル遷移が、最も低い計算キュービットレベルに達するまで逐次実行される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記キュービットの状態の各々の前記母集団に関する事前知識が必要ではない、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記量子システムが、量子計算において使用するために提供される、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、前記量子計算における1つまたは複数の計算動作の後に繰り返し実行され、前記計算動作の最終ステップが測定動作である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記キュービットの状態の各々の前記母集団に関する事前知識が必要ではない、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が、量子計算における1つまたは複数の計算動作に関連付けられた測定動作の直前に繰り返し実行される、請求項16に記載の方法。
【請求項32】
1つまたは複数のキュービットであって、各キュービットが、複数のキュービットレベルのうちの少なくとも1つの占有を容易にし、前記キュービットレベルが、2つの計算キュービットレベルと、それぞれが前記計算キュービットレベルよりも高い1つまたは複数の非計算キュービットレベルとを含み、前記キュービットが、対応する遷移周波数に関連付けられたキュービットレベル間の遷移を容易にする、キュービットと、
キャビティであって、該キャビティがキャビティ周波数を規定する、キャビティと、
周波数コントローラであって、前記周波数コントローラが制御するキュービットごとに、前記キュービットの前記周波数が前記キャビティ周波数に対して調整されることで非計算レベルの母集団が前記キャビティに転送されるように、キュービットの前記周波数を制御する周波数コントローラと、
を備える、量子システムにおいて計算を実行することに応答して、
前記周波数コントローラが制御するキュービットごとに、前記キュービットの前記周波数が前記キャビティ周波数に対して調整されることで前記非計算レベルの母集団が前記キャビティに転送されるように、前記キュービットレベルの前記母集団の事前知識なしに、前記周波数コントローラが制御する各キュービットの前記周波数を制御するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
量子ビットの寄生的な占有(parasitic occupation)を除去することは、量子コンピューティング、ならびに他のアプリケーションにおける課題である。
【課題を解決するための手段】
【0002】
本明細書は、量子ハードウェアに関連する技術と、量子ビットの状態の事前知識を必要とせずに、減衰されたキャビティモードを使用して、量子ビット(キュービット(qubit))におけるより高いレベルの寄生的な占有、たとえば漏れ(leakage)を除去するための方法を説明する。減衰されたキャビティ周波数に近い周波数における量子ビットを移動させることによって、より高いレベルの寄生的な占有がキャビティに転送される。寄生的な占有は、減衰されたキャビティモードを使用してキャビティ内で減衰され得る。
【0003】
一般に、本明細書に記載された主題の1つの革新的な態様は、1つまたは複数のキュービットであって、各キュービットが、複数のキュービットレベルのうちの少なくとも1つの占有を容易にし、キュービットレベルは、2つの計算キュービットレベルと、それぞれが計算キュービットレベルよりも高い1つまたは複数の非計算キュービットレベルとを含み、キュービットは、対応する遷移周波数に関連付けられたキュービットレベル間の遷移を容易にする、キュービットと、キャビティであって、キャビティ周波数を規定する、キャビティと、各キュービットをキャビティに結合する1つまたは複数の結合器と、キャビティを1つまたは複数のキュービットおよびキャビティの外部の環境に結合する1つまたは複数の結合器と、周波数コントローラが制御するキュービットごとに、キュービットの周波数がキャビティ周波数に対して調整されることで非計算レベルの母集団がキャビティに転送され得るように、キュービットの周波数を制御する周波数コントローラと、を備える量子システムにアクセスするアクションと、キュービットごとに、非計算レベルの母集団がキャビティに転送され得るように、キュービットの周波数がキャビティ周波数に対して調整され得るように、各キュービットの周波数を制御するアクションとを含む方法において具現化され得る。
【0004】
前述の実装形態および他の実装形態は、それぞれ、以下の特徴のうちの1つまたは複数を、単独で、または組み合わせて、任意で含むことができる。いくつかの実装形態では、本方法は、1つまたは複数のキュービットであって、各キュービットが、複数のキュービットレベルのうちの少なくとも1つの占有を容易にし、キュービットレベルは、2つの計算キュービットレベルと、それぞれが計算キュービットレベルよりも高い1つまたは複数の非計算キュービットレベルとを含み、キュービットは、対応する遷移周波数に関連付けられたキュービットレベル間の遷移を容易にし、キャビティであって、キャビティ周波数を規定する、キャビティと、各キュービットをキャビティに結合する1つまたは複数の結合器と、キャビティを1つまたは複数のキュービットおよびキャビティの外部の環境に結合する1つまたは複数の結合器と、周波数コントローラが制御するキュービットごとに、キュービットの周波数がキャビティ周波数に対して調整されることで非計算レベルの母集団がキャビティに転送されるように、キュービットの周波数を制御する周波数コントローラと、を備える量子システムにアクセスするアクションと、キュービットごとに、キュービットの周波数がキャビティ周波数に対して調整されることで非計算レベルの母集団がキャビティに転送されるように、各キュービットの周波数を制御するアクションとを含む。
【0005】
他の実装形態では、本方法は、キュービットごとに、最も低い計算キュービットレベルに達するまで下方へのキュービットレベル遷移を反復的に実行するステップを含み、下方へのキュービットレベル遷移を実行するステップは、関連するキュービット遷移周波数をキャビティ周波数に整合させるステップと、あらかじめ定められた時間量にわたって待機するステップとを含む。
【0006】
いくつかの場合、あらかじめ定められた時間量にわたって待機すると、キャビティへの母集団の転送が起こる。
【0007】
他の場合では、キュービットごとに最も低い計算キュービットレベルに達するまで下方へのキュービットレベル遷移を反復的に実行するステップが、同様のキュービットに対して並列に実行される。
【0008】
いくつかの実装形態では、あらかじめ定められた時間量が、効果的な漏れ除去を可能にするように最適化される。
【0009】
他の実装形態では、本方法は、キュービットごとに、キャビティ周波数を超えてキュービット周波数を掃引するステップを含む。
【0010】
いくつかの実装形態では、キャビティ周波数を超えてキュービット周波数を掃引するステップは、関連するキュービットレベル以下のキュービットについて、下方へのキュービットレベル遷移を実行する。
【0011】
いくつかの場合、下方へのキュービットレベル遷移は、最も低い計算キュービットレベルに達するまで逐次実行される。
【0012】
いくつかの実装形態では、キャビティ周波数を超えてキュービット周波数を掃引するステップは、同様のキュービットに対して並列に実行される。
【0013】
他の実装形態では、キュービットを掃引するステップは、キャビティ周波数に対するキュービット周波数軌道(qubit frequency trajectory)を決定するステップと、キュービット周波数軌道に従ってキュービット周波数を移動させるステップとを含む。
【0014】
いくつかの場合、キュービット周波数軌道に従ってキュービット周波数を移動させるステップにより、キャビティへの母集団の転送のためにキュービット遷移周波数がキャビティ周波数と逐次整合するようになり、下方へのキュービットレベル遷移は、最も低い計算キュービットレベルに達するまで逐次実行される。
【0015】
いくつかの場合、キュービット状態の各々の母集団に関する事前知識は必要ではない。
【0016】
いくつかの場合、量子システムは、量子計算において使用するために提供される。
【0017】
いくつかの実装形態では、本方法は、量子計算における1つまたは複数の計算動作の後に繰り返し実行され、計算動作の最終ステップは測定動作である。
【0018】
いくつかの場合、本方法は、量子計算における1つまたは複数の計算動作に関連付けられた測定動作の直前に繰り返し実行される。
【0019】
他の実装形態では、キュービット状態の各々の母集団に関する事前知識は必要ではない。
【0020】
本明細書に記載される主題は、以下の利点のうちの1つまたは複数を実現するように、特定の実施形態において実装され得る。
【0021】
いくつかの例では、量子ビットの状態を測定し、順方向にフィードすることによって、量子ビットを特定の状態に設定することが可能になる。そのようなプロセスの主要な複雑さは、より高いレベルの量子ビットがアルゴリズム動作中にポピュレートされるようになることである。より高いレベルの量子ビットは正確に読み出すことができず、ゆっくりと減衰し、計算部分空間外で量子ビットレベルの著しい占有(significant occupation)が生じるため、量子計算アルゴリズムの実装を妨げる。減衰されたキャビティを使用して量子ビットにおける漏れを除去するシステムは、多値量子ビットのリセットを可能にし、したがって量子計算に使用される量子ビットにおけるより高いレベルの漏れ状態の占有を減らし、そのような量子計算の効率および性能を改善する。
【0022】
減衰されたキャビティを使用して量子ビットにおける漏れを除去するシステムは、容易に達成可能なキュービット-キャビティ結合強度(qubit-cavity coupling strength)、たとえば約100MHzのオーダーを含み得、数十ナノ秒で漏れを除去するための動作が実行されることを可能にする。したがって、漏れを除去するための動作は、量子ビットが参加している量子計算に時間的にわずかなオーバーヘッドしか追加しない。したがって、減衰されたキャビティを使用して量子ビットにおける漏れを除去するシステムは、量子ビットにおける漏れを除去するための他の方法と比較して、改善された計算効率を達成し得る。
【0023】
減衰されたキャビティを使用して量子ビットにおける漏れを除去するシステムは、量子ビットにおける漏れを除去するための他の方法と比較して、必要とするハードウェア構成要素が少ない場合がある。量子ビットにおける漏れの除去を実行するために別個のキャビティが挿入され得るが、漏れ除去のための読出し共振器と減衰されたキャビティの両方が、高速の読出しおよび減衰を可能にするために環境への強い結合(strong coupling)を必要とするため、減衰されたキャビティとして作用するために既存の読出し共振器が使用され得る。
【0024】
減衰されたキャビティを使用して量子ビットにおける漏れを除去するシステムは、より高いキュービットレベルの占有を除去するために使用され得るキュービット軌道の持続時間、周波数、および形状が、短い時間スケールで効果的な漏れ除去を可能にするために直接的に最適化され得るため、高いレベルの堅牢性および効率を達成し得る。
【0025】
本明細書の主題の1つまたは複数の実装形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載される。主題の他の特徴、態様、および利点は、説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】キュービットにおける漏れを除去するための例示的なシステムを示す図である。
図2】段階的手法を使用してキュービットにおける漏れを除去するための例示的なプロセスのフローチャートである。
図3】掃引手法を使用してキュービットにおける漏れを除去するための例示的なプロセスのフローチャートである。
図4】段階的手法を使用する例示的なキュービットリセットを示す図である。
図5】掃引手法を使用する例示的なキュービットリセットを示す図である。
図6A】例示的なキュービット軌道を示す図である。
図6B】時間の関数としてのキュービット基底状態からの例示的な偏差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
様々な図面における同様の参照番号および名称は同様の要素を示す。
【0028】
本明細書は、キュービットの状態の事前知識を必要とせずに、減衰されたキャビティを使用して、量子ビットにおけるより高いレベルの占有を除去するためのアーキテクチャおよび方法を説明する。
【0029】
一般に、キュービットの状態を測定し、その状態に応じて遷移パルスを適用することにより、キュービットを特定の状態に設定することが可能になる。しかしながら、主要な複雑さは、アルゴリズムの動作中に、2-および3-状態などのより高いレベルのキュービットがアルゴリズム動作中にポピュレートされるようになることである。これらのより高いレベルは正確に読み出すことができず、ゆっくりと減衰する。その結果、計算部分空間外のキュービットレベルは、著しい占有(significant occupation)を累積することがあり、量子誤り訂正動作などの手順の実装を妨げる。この効果は、エネルギーレベルが十分に近く、容易にポピュレートされるような弱い非線形性(weak non-linearity)を有するキュービットに特に存在し得る。
【0030】
したがって、キュービットの寄生的な占有を除去するための、たとえばキュービットリセットを実行するための動作は、キュービットの制御性および量子ハードウェアの重要な要素である。本明細書は、キュービットにおけるより高いレベルの占有を除去するための2つの手法について詳述する。第1に、各遷移周波数がキャビティ周波数と整合される段階的手法が記載される。第2に、キュービットがキャビティを超えて周波数において掃引される掃引手法が記載される。両方の手法により、より高いレベルの母集団がキャビティに転送されることが可能になり、そこでキャビティが減衰される。
【0031】
[例示的な動作環境]
図1は、キュービットにおける漏れを除去するための例示的なシステム100を示す図である。システム100は、1つまたは複数のキュービット102と、周波数コントローラ112と、1つまたは複数のキュービット102、周波数コントローラ112、ならびに1つまたは複数のキュービット102、周波数コントローラ112、およびキャビティ104の外部にある環境106と相互作用するキャビティ104とを含む。
【0032】
1つまたは複数のキュービット102はそれぞれ、キュービットレベルのセットの少なくとも1つの占有を容易にする。たとえば、1つまたは複数のキュービットが原子である場合、キュービットレベルのセットの1つの占有は、その原子のエネルギーレベルを占有する電子に対応する。キュービットレベルは、2つの計算キュービットレベル114、たとえばレベル0-および1-、ならびに、それぞれが計算キュービットレベル114よりも高い1つまたは複数の非計算レベル116、たとえばレベル2-および3-を含む。これらのより高い非計算レベルは、一般にゆっくりと減衰する。
【0033】
1つまたは複数のキュービット102は、同調可能な周波数であり、それぞれがキュービットレベル間の遷移、たとえば、レベル3-から2-、2-から1-、および1-から0-への遷移を容易にする。キュービットレベル間の各遷移は、対応する遷移周波数に関連付けられ得る。いくつかの実装形態では、1つまたは複数のキュービット102は、弱い非線形性を示すことがあり、計算部分空間の外側のキュービットレベルは、著しい占有を累積することがある。たとえば、弱い非線形性の場合、計算キュービットレベルよりも高いキュービットレベル間の間隔は大きくは変化しないことがあり、そのようなキュービットレベルへの遷移の無視できない確率につながる可能性がある。1つまたは複数のキュービット102は、超伝導キュービットまたは半導体キュービットを含み得るが、これに限定されない。
【0034】
1つまたは複数のキュービット102は、アルゴリズム動作または量子計算を実行するために能動的に使用され得る。しかしながら、より高い非計算キュービットレベルの母集団は、そのような動作または計算において誤りを引き起こす可能性がある。たとえば、計算部分空間外のキュービットレベルの占有は、量子誤り訂正動作の実装を妨げるか、または阻む可能性がある。したがって、1つまたは複数のキュービットはキュービットリセット動作を必要とすることがあり、キュービットレベル間の下方への遷移は、最も低いキュービットレベルに達するまで実行される。キュービットリセット動作については、図2および図3を参照して以下でより詳細に説明する。
【0035】
1つまたは複数のキュービット102の各々は、それぞれの結合器、たとえば結合器108を介してキャビティ104に結合される。それぞれの結合器は、原理的には、任意のタイプの結合器、たとえば容量性結合器であり得る。容量性結合器は、キュービットのアームとキャビティの端部とを近接して配置し、爪状結合器を使用することによって達成され得る。1つまたは複数のキュービット102をキャビティ104に結合する結合器は、制御可能である。たとえば、1つまたは複数のキュービット102をキャビティ104に結合する結合器の強度は、周波数制御可能であり得る。結合器は、キャパシタンスが固定され得るように制御可能である。結合は周波数に弱く依存することがあり、キュービットとキャビティとの間の相互作用は、キュービット周波数をキャビティ周波数に近づけたり遠ざけたりするように操縦することによって達成され得る。
【0036】
キャビティ104は、1つまたは複数の結合器、たとえば結合器110を介して、1つまたは複数のキュービット104の外部にある環境106に結合され得る。いくつかの実装形態では、キャビティ104の環境106への結合は強力であり得る。キャビティ104は、環境106とのその相互作用のために減衰され得る。たとえば、キャビティ104の環境106への結合は、速度Γでのキャビティの励起状態からの真空モードへの減衰、および速度κでのキャビティのフィールドモードの減衰などの減衰につながり得る。結合が強い場合、すなわちΓ,κ>>gである場合(ここで、gはキャビティ-環境結合定数である)、強い減衰およびコヒーレントな進化は期待できない。結合が弱い場合、すなわちΓ,κ<<gである場合には、たとえばディフェージングがコヒーレントな進化を破壊するまで、コヒーレントな進化が支配的である。環境106は、負荷に接続するワイヤによって形成され得る。いくつかの実装形態では、ワイヤは読出しラインである。
【0037】
キャビティ104は、キャビティ周波数を規定する。いくつかの実装形態では、キャビティ104は、1つまたは複数のキュービット104から漏れを除去する目的で、システム100に含まれる別個のキャビティであり得る。他の実装形態では、読出し共振器を減衰されたキャビティとして動作させることによって、ハードウェアオーバヘッドが低減され得る。
【0038】
周波数コントローラ112は、1つまたは複数のキュービット102の各々の周波数を制御する。周波数コントローラ112は、キュービットごとに、キュービットの周波数が、キャビティ周波数に対して調整され得、非計算レベルの母集団がキャビティに転送され得るように、1つまたは複数のキュービット102の各々の周波数を制御する。
【0039】
周波数コントローラ112は、各キュービットの最大関連占有レベル(maximum relevant occupational level)を決定するように構成され得る。周波数コントローラはまた、下方へのキュービットレベル遷移が実行されるように、各キュービットの遷移周波数を同調させるように構成され得る。たとえば、周波数コントローラ112は、キュービットの最大関連占有レベルとして3-レベルを決定し、キュービットがリセットされるまで、たとえば0レベルに達するまで、下方へのキュービットレベル遷移を実行し得る。たとえば3-レベルから2-レベルへのキュービットレベル遷移などの、下方へのキュービットレベル遷移を実行するために、周波数コントローラは、関連するキュービット遷移周波数、たとえばキュービット遷移周波数f32をキャビティ周波数に整合させ、キャビティへの母集団の転送を引き起こすあらかじめ定められた時間量にわたって整合を維持するように構成され得、そこで減衰され得る。周波数コントローラを使用して下方へのキュービットレベル遷移を実行することについては、図2および図3を参照して以下により詳細に説明する。
【0040】
周波数コントローラ112はまた、下方へのキュービットレベル遷移を実行するために、キャビティ周波数を超えて1つまたは複数のキュービットの周波数を掃引するように構成され得る。たとえば、周波数コントローラ112は、キュービットの最大関連占有レベルとして3-レベルを決定し、キュービットがリセットされるまで、キャビティ周波数を超えて各キュービット周波数を掃引することによって下方へのキュービットレベル遷移を実行し得る。周波数コントローラは、キャビティへの母集団の転送のためにキュービット遷移周波数がキャビティ周波数と逐次整合するように、キャビティ周波数に対する各キュービット周波数軌道を決定することによって、キャビティ周波数を超えて各キュービット周波数を掃引するように構成され得、そこで減衰され得る。周波数コントローラはまた、それぞれのキュービット周波数軌道に従って各キュービット周波数を移動させるように構成され得る。下方へのキュービットレベル遷移は、最も低い計算キュービットレベルに達するまで逐次実行される。周波数コントローラを使用して下方へのキュービットレベル遷移を実行することについては、図2および図3を参照して以下により詳細に説明する。
【0041】
[より高いキュービットレベルからの占有の除去]
図2は、段階的手法を使用してキュービットにおける漏れを除去するための例示的なプロセス200のフローチャートである。たとえば、プロセス200は、図1を参照して上述したシステム100の周波数コントローラ112によって実行され得る。便宜上、プロセス200は、単一のキュービットにおける漏れを除去するものとして説明される。しかしながら、プロセス200は、複数のキュービットを含むシステムに対して並列に実行され得る。
【0042】
周波数コントローラは、下方へのキュービットレベル遷移を反復的に実行する(ステップ202)。いくつかの実装形態では、周波数コントローラは、関連する最大キュービットレベルを決定し得る。キュービットレベルの数は大きい場合があるので、周波数コントローラは、関心のあるシステムに従って、しきい値を超えるキュービットレベルのあらゆる占有を無視した関連する最大キュービットレベルを決定する。たとえば、周波数コントローラは、最大キュービットレベルが3-レベルであり、キュービットが0-レベルにリセットされるべきであると決定し得る。したがって、周波数コントローラは、下方へのキュービットレベル遷移を3-レベルから反復的に実行し、すなわち、3-から2-へ、2-から1-へ、および1-から0-へ、関連するキュービットレベル以下のキュービットごとに、キュービットがリセットされるまで遷移を実行する。
【0043】
下方へのキュービットレベル遷移を実行するために、周波数コントローラは、各キュービット遷移周波数をキャビティ周波数に調整して整合させる(ステップ204)。周波数コントローラは、最も高いキュービットレベル遷移から開始する。たとえば、3-レベルから2-レベルへの遷移を実行するために、周波数コントローラは、キュービットf32の遷移周波数をキャビティ周波数に整合させる。
【0044】
周波数コントローラは、キャビティに転送するために、キュービットレベルの母集団の整合を維持する(ステップ206)。たとえば、周波数コントローラは、キュービット遷移周波数f32をキャビティ周波数に整合させ、3-レベルの母集団がキャビティに移動され得るまで整合を維持し得る。周波数コントローラは、あらかじめ定められた時間量にわたってキュービット周波数のキャビティ周波数への整合を維持する。あらかじめ定められた時間量は、標準的な最適化技法、たとえばシンプレックスアルゴリズム、勾配降下アルゴリズム、またはラグランジュ法を使用して効果的な漏れ除去を可能にするように最適化されたあらかじめ定められた時間であり得る。キュービットレベルの母集団がキャビティに移動されると、周波数コントローラは、すべての下方へのキュービットレベル遷移が実行されるまで、ステップ(204)および(206)を反復的に繰り返す。
【0045】
周波数コントローラはキュービットのリセットを達成する(ステップ208)。段階的手法を有する減衰されたキャビティを使用してキュービットをリセットすることについては、図4を参照して以下でさらに説明する。図1を参照して上述したように、本明細書に記載されたプロセス200を実装する量子システムが、量子計算においてアクティブにされるか、または量子計算における使用のために提供され得る。そのような設定では、量子計算における計算動作に関連付けられた1つまたは複数の測定動作の直前または直後に、ステップ(202)〜(208)が繰り返し実行され得る。
【0046】
プロセス200は、キュービット状態の各々の母集団の事前知識を必要としない。たとえば、プロセス200が、量子計算における計算動作に関連付けられた測定動作の直前に繰り返し実行される場合、プロセスは、決定された最大キュービットレベルから、最も高い計算レベルに達し得るまで整合を逐次実行することができる。この場合、0-状態は0-状態のままであり、完全な1-状態は1-状態のままである。計算レベル0-および1-のみの占有のキュービットは影響を受けない。別の例では、プロセス200が、量子計算における計算動作に関連付けられた測定動作後に繰り返し実行される場合には、たとえ計算動作に関連付けられた測定動作が誤って報告した場合であっても、またはより高いレベルで母集団を誘導しても、プロセスは堅牢であり得る。
【0047】
図3は、掃引手法を使用してキュービットにおける漏れを除去するための例示的なプロセス300のフローチャートである。たとえば、プロセス300は、図1を参照して上述したシステム100の周波数コントローラ112によって実行され得る。便宜上、プロセス300は、単一のキュービットにおける漏れを除去するものとして説明される。しかしながら、プロセス300は、複数のキュービットを含むシステムに対して並列に実行され得る。
【0048】
周波数コントローラは、キャビティ周波数を超えてキュービット周波数を掃引する(ステップ302)。いくつかの実装形態では、周波数コントローラは、最大キュービットレベルを決定する。キュービットレベルの数は大きい場合があるので、周波数コントローラは、関心のあるシステムに従って、しきい値を超えるキュービットレベルのあらゆる占有を無視した関連する最大キュービットレベルを決定する。たとえば、周波数コントローラは、最大キュービットレベルが3-レベルであり、キュービットが0-レベルにリセットされるべきであると決定し得る。したがって、周波数コントローラは、キャビティを超えてキュービット周波数を掃引し、最も低い計算キュービットレベルに到達し、キュービットがリセットされ得るまで、関連するエネルギーレベルをキャビティ周波数に近づける。この手順は、図6および図7を参照して以下でさらに論じるように、周波数で表現されたキュービット-キャビティ結合強度が掃引時間の逆数のオーダーまたはそれを上回るとき、およびキャビティ減衰率が結合強度のオーダーまたはそれを上回るときに、高忠実度を達成し得る。
【0049】
キャビティ周波数を超えてキュービット周波数を掃引するために、周波数コントローラは、キュービット周波数軌道を決定する(ステップ304)。キュービット周波数軌道の持続時間、周波数、および形状は、短い時間スケールで効果的な漏れ除去を可能にする最適化技法および最適制御理論を使用して決定され得る。例示的なキュービット周波数軌道は、図6を参照して以下に説明される。
【0050】
周波数コントローラは、決定されたキュービット周波数軌道に従ってキュービット周波数を移動させる(ステップ306)。周波数コントローラは、決定されたキュービット周波数軌道に従ってキュービット周波数を移動または掃引し、キュービット遷移周波数が、キャビティへの母集団の転送のためにキャビティ周波数に逐次整合されることを可能にし、そこで減衰され得る。掃引の間、下方へのキュービットレベル遷移は、最も低い計算キュービットレベルに達し得るまで逐次実行される。周波数コントローラは、関連するキュービットレベル以下のキュービットごとに掃引を実行し得る。
【0051】
周波数コントローラは、キュービットのリセットを達成する(ステップ308)。掃引手法で減衰されたキャビティを使用してキュービットをリセットすることについては、図5図7を参照して以下でさらに説明する。図1を参照して上述したように、本明細書に記載されたプロセス300を実装する量子システムが、量子計算においてアクティブにされるか、または量子計算における使用のために提供され得る。そのような設定では、量子計算における計算動作に関連付けられた1つまたは複数の測定動作の直前または直後に、ステップ(304)〜(308)が繰り返し実行され得る。
【0052】
プロセス300は、プロセス300が、量子計算における計算動作に関連付けられた測定動作の後に実行される場合、キュービット状態の各々の母集団の事前知識を必要としない。たとえ計算動作に関連付けられた測定動作が誤って報告した場合であっても、またはより高いレベルで母集団を誘導しても、プロセスは堅牢であり得る。しかしながら、プロセス300はマルチレベルの同時スワップであるので、プロセスは、非計算上のより高いレベルならびに励起された計算レベル、たとえば1-レベルのあらゆるキュービット母集団を失い、したがって、測定動作の結果は常に0-状態を示すので、関心のある情報を破壊する。
【0053】
図4は、段階的手法を使用する例示的なキュービットリセットを示す図400である。たとえば、図2を参照して上述したプロセス200は、キュービットリセットを実行するために使用され得る。図400は、3-レベルから0-レベルへの例示的なキュービットリセットを示す。上述したように、段階的手法を使用する他のレベルにおけるキュービットについてのキュービットリセットも考慮され得る。
【0054】
キュービット周波数fは、キュービットリセット動作の持続時間の間、時間tの関数としてプロットされる。キュービットの1-状態から0-状態への遷移周波数f10は階段パターンに従っており、キャビティ周波数fcavityへの異なるレベルの整合を反映している。まず、3-状態から2-状態への遷移周波数f32がキャビティ周波数fcavityに整合され、キュービットが第2の励起レベルに到達することを可能にする。次に、2-状態から1-状態への遷移周波数f21がキャビティ周波数fcavityに整合され、キュービットが第1の励起レベルに到達することを可能にする。これに続いて、1-状態から0-状態の遷移周波数f10をキャビティ周波数fcavityに整合することにより、キュービットが基底状態に到達することを可能にし、キュービットをリセットする。固体キュービット遷移周波数線は、占有遷移の可能性を示す。灰色の点線は、空になった遷移を示す。図400の例では、0-、1-、2-、または3-状態のキュービットの場合、最終結果は基底状態0-である。3-状態より上のレベルが含まれる必要がある場合、リセットプロセスおよび図400は、関連するレベルの遷移周波数から開始する。
【0055】
図5は、掃引手法を使用する例示的なキュービットリセットを示す図500である。たとえば、図3を参照して上述したプロセス300が、キュービットリセットを実行するために使用され得る。図500は、3-レベルから0-レベルへの例示的なキュービットリセットを示す。上述したように、掃引手法を使用する他のレベルにおけるキュービットについてのキュービットリセットも考慮され得る。
【0056】
キュービット遷移周波数f10は、キュービットリセット動作の持続時間の間、時間tの関数としてプロットされる。関連するキュービット遷移周波数は、関連するエネルギーレベルがキャビティ周波数fcavityと整合するように、周波数fcavityにあるキャビティを超えて掃引される。固体キュービット遷移周波数線は、占有遷移の可能性を示す。灰色の点線は、空になった遷移を示す。図5に示されるような掃引手法を使用するキュービットリセットは、周波数で表現されたキュービット-キャビティ結合強度が掃引時間の逆数のオーダーまたはそれを上回るとき、およびキャビティ減衰率が結合強度のオーダーまたはそれを上回るときに、高忠実度で実行され得る。より詳細については、下記図6Aおよび図6Bを参照されたい。
【0057】
図500の例では、キュービットが0-、1-、2-、または3-状態の場合、最終結果は基底状態0-である。3-状態より上のレベルが含まれる必要がある場合、リセットプロセスおよび図500は、キャビティを超えて前記のより高いレベルを掃引することを含む。掃引手法を使用してキュービットリセットを実行するためのキュービット軌道は、図6Aおよび図6Bを参照して以下により詳細に説明される。
【0058】
図6Aは、キュービットからの漏れを除去するための掃引手法における、例示的なキュービット周波数軌道600を示す図である。たとえば、キュービット周波数軌道は、図3を参照して説明した掃引手法を使用してキュービットにおける漏れを除去するための例示的なプロセス300のステップ306において、図1の周波数コントローラ112によって決定されたキュービット周波数軌道に対応し得る。
【0059】
キュービット周波数軌道600は、キュービット-キャビティ結合強度gの単位でキャビティ周波数に対してプロットされている。キュービット周波数軌道600は、キャビティを超えてキュービット周波数を移動させた後、高速ランプでキュービット周波数をその開始周波数まで下げることができることを示している。寄生的な交換が発生する可能性があり、たとえば、量子がキュービットに戻ってくる可能性があるが、この交換は、1/κのオーダーの時間スケールなど、高速の時間スケールの場合は2次のプロセスであり、ここで、κはキャビティ減衰率であり、迅速なランプによって最小化され得る。しかしながら、たとえば電子機器の制約のためにランプを十分に速くすることができない場合、プロセスは、キャビティがデポピュレートするのを待つことによって継続し得る。
【0060】
図6Bは、時間の関数としてのキュービット基底状態からの偏差の例示的なプロット650を示す図である。プロット650は、1-、2-、および3-状態について約0.1%〜1%の偏差を示し、計算はキュービット-キャビティ結合g/2π=100MHz、キャビティ減衰率κ=1/25ns、およびキュービット非線形性220MHzを使用して実行された。シミュレーションは、4つの共振器レベルと4つのキュービットレベルを使用して実行された。
【0061】
本明細書で説明されるデジタルおよび/または量子の主題、ならびにデジタル機能動作および量子動作の実施形態は、デジタル電子回路、適切な量子回路、あるいは、より一般的には量子計算システムにおいて、有形に具現化されたデジタルおよび/または量子コンピュータソフトウェアまたはファームウェアにおいて、本明細書に開示された構造およびそれらの構造的均等物を含むデジタルおよび/または量子コンピュータハードウェアにおいて、あるいはそれらの1つまたは複数の組合せにおいて実装され得る。「量子計算システム」という用語は、量子コンピュータ、量子情報処理システム、量子暗号システム、または量子シミュレータを含み得るが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書に記載されたデジタルおよび/または量子の主題の実施形態は、1つまたは複数のデジタルおよび/または量子コンピュータプログラム、すなわち、データ処理装置によって実行されるために、あるいはデータ処理装置の動作を制御するために、有形の非一時的記憶媒体上で符号化されたデジタルおよび/または量子コンピュータプログラム命令の1つまたは複数のモジュールとして実装され得る。デジタルおよび/または量子コンピュータ記憶媒体は、機械可読記憶デバイス、機械可読記憶基板、ランダムまたはシリアルアクセスメモリデバイス、1つまたは複数のキュービット、あるいはそれらのうちの1つまたは複数の組合せであり得る。代替的または追加的に、プログラム命令は、データ処理装置によって実行されるために適切な受信機装置への送信のためにデジタルおよび/または量子情報を符号化するために生成された、デジタルおよび/または量子情報、たとえば機械で生成された電気信号、光学信号、または電磁信号を符号化することができる人工的に生成された伝播信号上で符号化され得る。
【0063】
量子情報および量子データという用語は、量子システムによって運ばれ、量子システムにおいて保持または記憶される情報またはデータを指し、最小の非自明なシステムはキュービット、すなわち量子情報の単位を定義するシステムである。「キュービット」という用語は、対応する状況において2つのレベルのシステムとして適切に近似され得るすべての量子システムを包含することが理解される。そのような量子システムは、たとえば2つ以上のレベルを有するマルチレベルシステムを含み得る。一例として、そのようなシステムは、原子、電子、光子、イオン、または超伝導キュービットを含むことができる。多くの実装形態では、計算基礎状態は、基底状態および第1の励起状態で識別されるが、計算状態がより高いレベルの励起状態で識別される他の設定も可能であることが理解される。
【0064】
「データ処理装置」という用語は、デジタルおよび/または量子データ処理ハードウェアを指し、一例として、プログラマブルデジタルプロセッサ、プログラマブル量子プロセッサ、デジタルコンピュータ、量子コンピュータ、あるいは複数のデジタルおよび量子プロセッサまたはコンピュータ、およびそれらの組合せを含む、デジタルおよび/または量子データを処理するためのあらゆる種類の装置、デバイス、および機械を包含する。本装置は、たとえばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、またはASIC(特定用途向け集積回路)、または量子シミュレータ、すなわち特定の量子システムに関する情報をシミュレートまたは生成するように設計される量子データ処理装置などの専用論理回路であってもよく、それをさらに含んでもよい。特に、量子シミュレータは、汎用量子計算を実行する能力を持たない専用量子コンピュータである。本装置は、任意で、ハードウェアに加えて、デジタルおよび/または量子コンピュータプログラムのための実行環境を生成するコード、たとえば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、あるいはそれらの1つまたは複数の組合せを構成するコードを含むことができる。
【0065】
プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、モジュール、ソフトウェアモジュール、スクリプト、またはコードとも呼ばれ得、または記述され得るデジタルコンピュータプログラムは、コンパイラ型言語またはインタープリタ型言語、あるいは宣言型言語または手続き型言語を含む任意の形式のプログラミング言語で記述されてよく、スタンドアロンプログラムとして、またはデジタルコンピューティング環境での使用に適したモジュール、構成要素、サブルーチン、またはその他のユニットとして含む、あらゆる形式で展開され得る。プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、モジュール、ソフトウェアモジュール、スクリプト、またはコードとも呼ばれ得、または記述され得る量子コンピュータプログラムは、コンパイラ型言語またはインタープリタ型言語、あるいは宣言型言語または手続き型言語を含む任意の形式のプログラミング言語で記述されてよく、適切な量子プログラミング言語に翻訳されてもよく、量子プログラミング言語、たとえばQCLまたはQuipperで記述されてもよい。
【0066】
デジタルおよび/または量子コンピュータプログラムは、ファイルシステム内のファイルに対応し得るが、対応する必要はない。プログラムは、マークアップ言語文書に記憶された1つまたは複数のスクリプトなどの、他のプログラムまたはデータを保持するファイルの一部において、問題のプログラム専用の単一のファイルにおいて、または複数のコーディネートされたファイル、たとえば、1つまたは複数のモジュール、サブプログラム、またはコードの一部を記憶するファイルにおいてに記憶され得る。デジタルおよび/または量子コンピュータプログラムは、1つのデジタルまたは1つの量子コンピュータ上で、あるいは1つのサイトに配置されるか、または複数のサイトにわたって分散され、デジタルおよび/または量子データ通信ネットワークによって相互接続された、複数のデジタルおよび/または量子コンピュータ上で実行されるために展開され得る。量子データ通信ネットワークは、量子システム、たとえばキュービットを使用して量子データを送信し得るネットワークであると理解される。一般に、デジタルデータ通信ネットワークは量子データを送信することができないが、量子データ通信ネットワークは量子データとデジタルデータの両方を送信し得る。
【0067】
本明細書で説明されるプロセスおよび論理フローは、1つまたは複数のプログラム可能なデジタルおよび/または量子コンピュータによって実行され得、1つまたは複数のデジタルおよび/または量子プロセッサで適宜動作し、1つまたは複数のデジタルおよび/または量子コンピュータプログラムを実行して、入力されたデジタルデータおよび量子データを操作して出力を生成することによって機能を実行する。プロセスおよび論理フローはまた、FPGAまたはASICなどの専用論理回路、または量子シミュレータによって実行されてもよく、装置はFPGAまたはASICなどの専用論理回路、または量子シミュレータとして実装されてよく、あるいは専用論理回路または量子シミュレータと1つまたは複数のプログラムされたデジタルおよび/または量子コンピュータとの組合せによって実行されてもよい。
【0068】
1つまたは複数のデジタルおよび/または量子コンピュータのシステムが、特定の動作またはアクションを実行「するように構成される」ことは、システムが、動作中にシステムに動作またはアクションを実行させるソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの組合せをインストールしたことを意味する。特定の動作またはアクションを実行するように構成されるべき1つまたは複数のデジタルおよび/または量子コンピュータプログラムは、1つまたは複数のプログラムが、デジタルおよび/または量子データ処理装置によって実行されると、装置に、動作またはアクションを実行させる命令を含むことを意味する。量子コンピュータは、量子コンピューティング装置によって実行されると、装置に動作またはアクションを実行させる命令をデジタルコンピュータから受信し得る。
【0069】
デジタルおよび/または量子コンピュータプログラムの実行に適したデジタルおよび/または量子コンピュータは、汎用または専用のデジタルおよび/または量子マイクロプロセッサ、またはその両方、あるいは任意の他の種類の中央デジタルおよび/または量子処理ユニットに基づくことができる。一般に、中央デジタルおよび/または量子処理ユニットは、読出し専用メモリ、またはランダムアクセスメモリ、あるいは量子データの送信に適した量子システム、たとえば光子、またはその両方の組合せから、命令ならびにデジタルおよび/または量子データを受信する。
【0070】
デジタルコンピュータおよび/または量子コンピュータの必須要素は、命令を実行または遂行するための中央処理ユニットと、命令ならびにデジタルおよび/または量子データを記憶するための1つまたは複数のメモリデバイスである。中央処理ユニットおよびメモリは、専用論理回路または量子シミュレータによって補完されてもよく、それに組み込まれてもよい。一般に、デジタルおよび/または量子コンピュータはまた、磁気ディスク、または光磁気ディスク、または光ディスクなどのデジタルおよび/または量子データを記憶するための1つまたは複数の大容量記憶デバイス、あるいは量子情報の記憶に適した量子システムを含むか、そこからデジタルおよび/または量子データを受信するために、あるいはそこにデジタルおよび/または量子データを転送するために、あるいはその両方のために動作可能に結合される。しかしながら、デジタルおよび/または量子コンピュータは、そのようなデバイスを有する必要はない。
【0071】
デジタルおよび/または量子コンピュータプログラム命令ならびにデジタルおよび/または量子データの記憶に適したデジタルおよび/または量子コンピュータ可読媒体は、一例として、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス、たとえば内部ハードディスクまたはリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスク、ならびにトラップされた原子または電子などの量子システムを含む、あらゆる形態の不揮発性デジタルおよび/または量子メモリ、媒体、およびメモリデバイスを含む。量子メモリは、高い忠実度および効率で量子データを長期間にわたって記憶することができるデバイス、たとえば、光が送信のために使用され、重畳または量子コヒーレンスなどの量子データの量子フィーチャを記憶および保存するための物質である光-物質インターフェースであることが理解される。
【0072】
本明細書に記載された様々なシステム、またはそれらの一部の制御は、1つまたは複数の非一時的機械可読記憶媒体に記憶され、1つまたは複数のデジタルおよび/または量子処理デバイス上で実行可能である命令を含む、デジタルおよび/または量子コンピュータプログラム製品において実装され得る。本明細書に記載されたシステム、またはそれらの一部は、それぞれ、1つまたは複数のデジタルおよび/または量子処理デバイスと、本明細書に説明される動作を実行するための実行可能命令を記憶するためのメモリとを含み得る装置、方法、または電子システムとして実装され得る。
【0073】
本明細書は多くの具体的な実装形態の詳細を含むが、これらは特許請求され得る範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、むしろ特定の実施形態に特有であり得る特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施形態の文脈において本明細書において説明される特定の特徴もまた、単一の実施形態において組み合わせて実装され得る。逆に、単一の実施形態の文脈において記載されている様々な特徴もまた、複数の実施形態において別々に、または任意の適切なサブコンビネーションにおいて実装され得る。さらに、特徴は、特定の組合せで作用するものとして上述されており、当初はそのように特許請求されているものであっても、いくつかの場合、特許請求された組合せからの1つまたは複数の特徴が組合せから切り出されてよく、特許請求された組合せは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションのバリエーションに向けられ得る。
【0074】
同様に、動作は特定の順序で図面に示されているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような動作が示された特定の順序または逐次的な順序で実行されること、または図示されたすべての動作が実行されることを必要とするものと理解されるべきではない。特定の状況では、マルチタスク処理と並列処理が有利な場合があり得る。さらに、上述した実施形態における様々なシステムモジュールと構成要素の分離は、すべての実施形態においてそのような分離を必要とするものとして理解されるべきではなく、記載されたプログラム構成要素およびシステムは、一般に、単一のソフトウェア製品に一緒に統合され得るか、または複数のソフトウェア製品にパッケージ化され得ることが理解されるべきである。
【0075】
主題の特定の実施形態について説明した。他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内にある。たとえば、特許請求の範囲に列挙されたアクションは、異なる順序で実行され、依然として望ましい結果を達成することができる。一例として、添付の図面に示されるプロセスは、望ましい結果を達成するために、示された特定の順序または逐次的な順序を必ずしも必要としない。いくつかの場合、マルチタスク処理と並列処理が有利な場合があり得る。
【符号の説明】
【0076】
100 システム
102 キュービット
104 キャビティ
106 環境
108 結合器
110 結合器
112 周波数コントローラ
114 計算キュービットレベル
116 非計算レベル
200 プロセス
300 プロセス
400 図
500 図
600 周波数軌道
600 キュービット周波数軌道
650 プロット
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B