特許第6573760号(P6573760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573760ヨーレートを用いた制動装置の故障検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573760
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】ヨーレートを用いた制動装置の故障検出方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20190902BHJP
   B60T 8/174 20060101ALI20190902BHJP
   B60L 7/24 20060101ALI20190902BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20190902BHJP
【FI】
   B60T17/18
   B60T8/174 Z
   B60L7/24
   B60L3/00 N
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-261649(P2014-261649)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-214326(P2015-214326A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年9月21日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0056489
(32)【優先日】2014年5月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】506392274
【氏名又は名称】成均館大学校産学協力団
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 仁 洙
(72)【発明者】
【氏名】高 志 源
(72)【発明者】
【氏名】金 ヒョン 秀
【審査官】 羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−051456(JP,A)
【文献】 特開平08−002403(JP,A)
【文献】 特開2008−126761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 15/00−17/22
B60T 7/12−8/1769
B60T 8/32−8/96
B60L 1/00−3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を制動するに当たり、
減速度センサーで制動時の減速度を測定する段階と、
制御システムにより前記測定された減速度と要求減速度とを比較して制動装置の故障を判断する段階と、を有し、
前記測定された減速度と要求減速度とを比較して前記制動装置の故障と判断された場合、前記制動装置のどの部分の故障なのかを検出するため、
a1)前記制御システムにより前記要求減速度に基づいて制動区間が回生制動だけで制動を行う区間か否かを判断する段階と、
a2)前記制動区間が前記要求減速度に基づいて回生制動だけで制動を行う区間である場合、前記制御システムにより回生制動装置の故障と判断する段階と、
a3)前記制動区間が回生制動だけで制動を行う区間ではない場合、前記制御システムによりヨーレート値を測定するヨーレートセンサーを使用して左側の摩擦制動装置または右側の摩擦制動装置の故障を決定し、前記制御システムにより前記減速度の測定値の変化量を取得する前記減速度センサーを使用して前輪摩擦制動装置または後輪摩擦制動装置の故障を判断する段階と、
をさらに含み、
前記制動区間は、回生制動区間と、回生制動及び後輪摩擦制動区間と、回生制動並びに前輪及び後輪摩擦制動区間とに分けられることを特徴とする制動装置の故障検出方法。
【請求項2】
前記制動装置の故障を判断する段階で、
前記制動時の要求減速度と記測定された減速度の差があらかじめ設定され範囲以上である場合、前記制御システムは前記制動装置の故障と判断することを特徴とする請求項1に記載の制動装置の故障検出方法。
【請求項3】
前記制動装置の故障と判断された場合、前記制御システムにより前記制動装置の故障を判断する段階は、
b1)前記制御システムにより前記制動区間回生制動及び後輪摩擦制動区間であるか否かを判断する段階
b2)前記制動区間が前記回生制動及び後輪摩擦制動区間であると判断された場合、前記ヨーレートセンサーでヨーレート値を測定する段階
記ヨーレート値が0である場合、前記制御システムにより前記回生制動装置の故障と判断する段階と
前記ヨーレート値が0より大きい場合、前記制御システムにより後輪右側の摩擦制動装置の故障と判断する段階と
前記ヨーレート値が0より小さい場合、前記制御システムにより後輪左側の摩擦制動装置の故障と判断する段階と、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の制動装置の故障検出方法。
【請求項4】
前記制動装置の故障と判断された場合、前記制御システムにより前記制動装置の故障を判断する段階
c1)前記制御システムにより前記制動区間回生制動並びに前輪及び後輪摩擦制動区間であるか否かを判断する段階と
c2)前記制動区間が前記回生制動並びに前輪及び後輪摩擦制動区間であると判断された場合、前記ヨーレートセンサーでヨーレート値を測定する段階
記ヨーレート値が0である場合、前記制御システムにより前記回生制動装置の故障と判断する段階と
)ヨーレート値が0より大きい場合、前記制御システムにより前輪右側または後輪右側の摩擦制動装置の故障と判断する段階とをさらに含み、
前記前輪右側または後輪右側の摩擦制動装置の故障と判断する段階は、
前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一であるか否か判断する段階
記前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一である場合、前輪右側制動力の変化に応じて減速度変化か否判断する段階
記前輪右側の制動力変化に応じて前記減速度変化る場合、前記後輪右側の摩擦制動装置の故障と判断する段階と
記前輪右側の制動力変化に応じて前記減速度変化ない場合、前記前輪右側の摩擦制動装置の故障と判断する段階と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の制動装置の故障検出方法。
【請求項5】
前記制御システムにより前記前輪右側または後輪右側の摩擦制動装置の故障と判断する段階は、
前記前輪摩擦制動力と前記後輪摩擦制動力とが同一でない場合、制動により実際減少した減速度と前輪右側の摩擦制動装置が発生させ減速度が同一であるか否か判断する段階
記制動により実際減少した減速度と前記前輪右側の摩擦制動装置が発生させた減速度が同一である場合、前記後輪右側の摩擦制動装置の故障と判断する段階と
記制動により実際減少した減速度と前記前輪右側の摩擦制動装置が発生させた減速度が同一でない場合、前記前輪右側の摩擦制動装置の故障と判断する段階と、を含むことを特徴とする請求項に記載の制動装置の故障検出方法。
【請求項6】
ヨーレートセンサーでヨーレート値を測定する段階で、ヨーレート値が0より小さい場合、前記制御システムにより前記制動装置の故障を判断する段階は、
前輪左側または後輪左側の摩擦制動装置故障しているか否かを判断する段階をさらに含み、
記前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一である場合、前記制御システムにより前記前輪左側または後輪左側の摩擦制動装置が故障しているか否かを判断する段階は、
前輪左側制動力の変化に応じて前記減速度変化する場合前記後輪左側の摩擦制動装置の故障と判断する段階と
前記前輪左側制動力の変化に応じて前記減速度に変化い場合、前記前輪左側の摩擦制動装置の故障と判断する段階と、含むことを特徴とする請求項に記載の制動装置の故障検出方法。
【請求項7】
前輪摩擦制動力と前記後輪摩擦制動力とが同一でない場合、前記制御システムにより前記前輪左側または後輪左側の摩擦制動装置が故障しているか否かを判断する段階は、
前記制動によって実際減少した減速度と前記前輪左側の摩擦制動装置が発生させた減速度が同一であるか否か判断する段階
記制動により実際に減少した減速度と前記前輪左側の摩擦制動装置が発生させた減速度が同一である場合、前記後輪左側の摩擦制動装置の故障と判断する段階と
記制動により実際減少した減速度と前記前輪左側の摩擦制動装置が発生させた減速度が同一でない場合、前記前輪左側の摩擦制動装置の故障と判断する段階と、を含むことを特徴とする請求項に記載の制動装置の故障検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヨーレートを用いた制動装置の故障検出方法に係り、より詳しくは、ハイブリッド車両と電気車両のようにモーターで駆動される車両において、回生制動と摩擦制動を行う車両の制動装置のヨーレートを用いた制動装置の故障検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両及び電気車両(Electric Vehicle)は、電気エネルギーで駆動されるモーターが装着されており、このモーターによって走行する次世代の環境車両である。
したがって、ハイブリッド車両と電気車両の場合、既存の摩擦制動方式と共にモーターを通じた回生制動方式を適用している。
このように、回生制動方式を適用する車両の場合、既存の制動装置の故障を判断するアルゴリズムを利用することができず、ハイブリッド車両及び電気車両の制動装置の故障を判断するために、別の制御アルゴリズムが必要となる。
【0003】
日本特許特開平11−170991号は、車両の減速度を検出し、検出した車両の減速度が基準値より小さい場合、ブレーキの中央制御器が電気式ブレーキの故障を判定する技術である。
しかし、上記日本公開特許の場合、ブレーキ中央制御器が電気式ブレーキの故障を判定するため、ブレーキの中央制御器が正常に作動できない場合、制動装置の故障を判断することができない。さらに、制動装置が故障した時、回生制動装置または摩擦制動装置の中で、どちの制動装置の故障なのか判断できない。 また、摩擦制動装置の故障を検出する場合、摩擦制動装置の中で故障した対象の制動装置を把握することができないという問題点がある。
【0004】
制動装置に故障が生じた場合、運転手の要求制動力を補償するためのフェイルセーフが適用される。フェイルセーフが適用されるために制動装置の故障を判断するロジックが重要となるが、故障したか否かはブレーキの中央制御器を通じて制動装置の故障信号を受信して判断される。
但し、各車輪に装着されているブレーキの副制御器の故障判断信号を利用できない車両では制動装置の故障を判断できないため、運転手の要求制動力を補償できるフェイルセーフを適用できないという問題点がある。従って、各車輪にあるブレーキの副制御器の故障有無の信号を受けないで、既に装着されている他のセンサーを利用して故障を判断できる方法が必要となる。
【0005】
さらに、ハイブリッド車両と電気車両の場合、回生制動方式を適用しているので、摩擦制動装置を備えている車両とは別に制動装置の故障を判断するロジックが要求されている。さらに、摩擦制動装置の故障の中で、どの制動装置の故障かを判断する具体的なロジックの設計が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−208527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的とするところは、制動装置の故障判断信号を利用せずに、回生制動装置または摩擦制動装置のいずれか一つが故障の場合、故障した対象の制動装置が判断できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両を制動するに当たり、
制動時の減速度を測定する段階、
上記測定された減速度と実際の減速度を比較して制動装置の故障を判断する段階、
前記制動装置の故障を判断する段階で、制動装置の故障と判断される場合、
a1)制動区間を確認して回生制動だけで制動を行う領域かを判断して、回生制動装置の故障と判断し、
a2)上記制動区間が回生制動だけで制動を行わない場合、ヨーレート値を測定して左側の摩擦制動装置または右側の摩擦制動装置の故障を決定し、減速度の測定値の変化量を利用して前・後輪摩擦制動装置の故障を判断することを特徴とする。
【0009】
上記測定された減速度と実際の減速度を比較して制動装置の故障を判断する段階で、
制動時の要求減速度と上記測定された減速度の差があらかじめ設定されている範囲以上である場合、制動装置の故障と判断することを特徴とする。
【0010】
上記制動区間は、回生制動区間、回生制動及び後輪摩擦制動区間、回生制動及び前・後輪摩擦制動区間に分けられることを特徴とする。
【0011】
上記測定された減速度と実際の減速度を比較して制動装置の故障を判断する段階で制動装置の故障と判断され、上記制動区間は回生制動と後輪摩擦制動区間と判断された場合、
ヨーレート値を測定する段階を含み、
上記段階では、
b1)上記ヨーレート値が0である場合、回生制動装置の故障と判断し、
b2)ヨーレート値が0より大きい場合、後輪右側の摩擦制動装置の故障と判断し、
b3)ヨーレート値が0より小さい場合、後輪左側の摩擦制動装置の故障と判断することを特徴とする。
【0012】
上記測定された減速度と実際の減速度を比較して制動装置の故障を判断する段階で制動装置の故障と判断され、上記制動区間は回生制動と前輪及び後輪摩擦制動区間である場合、
ヨーレート値を測定する段階、
c1)上記ヨーレート値が0である場合、回生制動装置の故障と判断し、
c2)ヨーレート値が0より大きい場合、前輪右側または後輪右側の摩擦制動装置の故障と判断して、前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一であるかを比較した結果によって、各制動装置の故障を決定する段階をさらに含み、
上記故障を決定する段階において、
c3)上記前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一である場合、前輪右側制動力の変化による減速度の変化があるのか判断する段階、
c4)上記前輪右側の制動力変化による減速度に変化がある場合、後輪右側の摩擦制動装置の故障と判断し、
c5)上記前輪右側の制動力変化による減速度に変化がない場合、前輪右側の摩擦制動装置の故障と判断することを特徴とする。
【0013】
上記c2)段階で同一ではない場合、
制動することで実際減少した減速度と前輪右側の摩擦制動装置が発生させる減速度が同一であるかを比較した結果によって、各制動装置の故障を決定する段階をさらに含み、
上記故障を決定する段階で、
d1)上記制動を通じて実際減少した減速度と前輪右側の摩擦制動装置が発生させる減速度が同一である場合、後輪右側の摩擦制動装置の故障と判断し、
d2)上記制動を通じて実際減少した減速度と前輪右側の摩擦制動装置が発生させる減速度が同一ではない場合、前輪右側の摩擦制動装置の故障と判断することを特徴とする。
【0014】
e1)上記ヨーレート値を測定する段階で、ヨーレート値が0より小さい場合、前輪左側または後輪左側の摩擦制動装置の故障と判断し、前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一であるかを比較した結果によって、各制動装置の故障を決定する段階をさらに含み、
上記故障を決定する段階において、
e2)上記前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一である場合、前輪左側制動力の変化による減速度に変化があれば、後輪左側の摩擦制動装置の故障と判断し、
e3)前輪左側制動力の変化による減速度に変化がなければ前輪左側の摩擦制動装置の故障と判断することを特徴とする。
【0015】
上記e1)段階で同一ではない場合、
f1)制動によって実際減少した減速度と前輪左側の摩擦制動装置が発生させる減速度が同一であるかを比較した結果によって、各制動装置の故障を決定する段階をさらに含み、
上記故障を決定する段階で、
f2)上記制動によって減少した減速度と前輪左側の摩擦制動装置が発生させる減速度が同一である場合、後輪左側の摩擦制動装置の故障と判断し、
f3)上記制動によって実際減少した減速度と前輪左側の摩擦制動装置が発生させる減速度が同一ではない場合、前輪左側の摩擦制動装置の故障と判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、制動装置が故障した時、回生制動装置及び摩擦制動装置の故障を判断し、摩擦制動装置の故障が検出される場合、故障した対象の制動装置を判断できる效果がある。
また、制動装置の故障が判断される場合、制動装置が全て正常に遂行される車両に要求される制動力と、制動装置の故障時に遂行できる制動力の差だけの制動力を補償できるように、故障が生じた制動装置を除いて正常に作動する制動装置を通じて制動力を補償されるフェイルセーフを適用することができる。
さらに、本発明は制動装置の故障を判断する方法を提供しているため、ブレーキの中央制御装置に受信される故障判断信号を利用する必要がない。
そして、車両に装着された減速度センサーとヨーレートセンサー値の変化を分析して制動装置の故障を判断し、別途に制御装置を設置しないでハイブリッド車両及び電気車両の制動装置の故障を判断することができる。よって、別の制御装置を使わないので、経済的效果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ヨーレートを利用した制動装置の故障検出方法示すフローチャートである。
図2図1のフローチャートの各制動区間による制動装置の故障検出方法を示す図である。
図3図1のフローチャートの各制動区間による制動装置の故障検出方法を示す図である。
図4図1のフローチャートの各制動区間による制動装置の故障検出方法を示す図である。
図5】前輪左側の摩擦制動装置が故障する瞬間、ヨーレート値がマイナスの値に増加するグラフである。
図6】前輪右側の摩擦制動装置が故障する瞬間、ヨーレート値がプラスの値に増加するグラフである。
図7】後輪左側の摩擦制動装置が故障する瞬間、ヨーレート値がマイナスの値に増加するグラフである。
図8】後輪右側の摩擦制動装置が故障する瞬間、ヨーレート値がプラスの値に増加するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のヨーレートを用いた制動装置の故障検出方法の好適な実施例を添付した図面を参照して詳しく説明する。
但し、本実施例によって定義されている制動区間及び制動装置の故障を判断する手順として、ヨーレートを判断して左側または右側の制動装置の故障を判断する段階と、減速度を判断して前輪または後輪の制動装置の故障を判断する段階の場合、時系列的手順に制限されないので、均等な範囲に対して保護範囲が及ぶものと解釈するべきである。
【0019】
ハイブリッド車両及び電気車両の場合、制動段階で回生制動装置と摩擦制動装置を利用して制動を行うため、ハイブリッド車両の場合、摩擦制動装置の故障だけでなく、回生制動を通じた制動装置の故障有無の判断が要求される。
したがって、ハイブリッド車両の制動装置の故障に応じて設定されているフェイルセーフを適用するために、制動装置の故障判断が先行されなければならないし、一部の制動装置の故障を判断した以降、正常に作動する制動装置を通じて要求制動力を補償することができる。
【0020】
また、ハイブリッド及び電気車両の場合、制動区間によって車両の制動時に使用される制動装置が決まる。すなわち、ブレーキペダルの入力値が大きくなるほど要求制動力が大きくなるので、制動区間が分けられる。要求制動力が低い区間では回生制動装置だけを使って制動を行う。回生制動装置によって発生する制動力以上の制動力が要求される場合、回生制動装置と並行して後輪摩擦制動装置による制動が行なわれる。さらに、回生制動装置と後輪摩擦制動装置によって発生する制動力を超える制動力が要求される場合、回生制動装置と前・後輪摩擦制動装置による制動が行なわれる。
したがって、制動区間とは、ブレーキペダルの入力による要求制動力を判断し、要求制動力が満足されるようにそれぞれ制動装置の動作を判断して、車両の制動装置がそれぞれ行なわれたり、または並行して行なわれる区間を区分したものである。
【0021】
本発明はヨーレート値の変化と減速度の変化を通じて、制動装置の故障を判断する方法を提供する。
ヨーレート(Yaw rate)は、ヨー角速度とも言い、自動車の中心を通る垂直線の周りに回転角が変わる速度を言う。したがって、車両の回転角が変化する場合、ヨーレートセンサーは車両の回転角の変化値を測定する。
したがって、各摩擦制動装置故障時、ヨーレートセンサーの測定値の変化で、前輪左側の摩擦制動装置(S630)(S720) 及び後輪左側の摩擦制動装置に故障(S620)(S710)がある場合、ヨーレート値は、図5図7にヨーレート値の変化で示す通り、急にマイナス値が増加する。前輪右側の摩擦制動装置(S520)(S460) 及び後輪右側の摩擦制動装置に故障(S510)(S440)がある場合、ヨーレート値は急にプラスの値に増加する。これは図6図8にヨーレート値の変化で表れる。但し、回生制動遂行時、ヨーレート値は0となる(S350)(S450)。
上記のように、ヨーレートセンサーを通じて、車両の右側または左側の制動装置の故障を判断することができる。
【0022】
また、減速度センサーは、車両の減速度の変化量を測定するセンサーとして、制御システムにおいて必須のセンサーである。
減速度センサーを通じて車両の前輪または後輪の制動装置の故障を判断することができる(S430)(S500)(S610)(S700)。すなわち、減速度センサーを通じて車両の実際の減速度を測定することができ、それぞれの制動装置によって発生する制動力による減速度の変化値を測定して、測定された実際の車両の減速度とそれぞれの制動装置で発生した制動力による減速度値を比較して要求制動力以下の制動力を持つ制動装置を検出することで、前輪または後輪の制動装置の故障を判断することができる。
本発明の実施例では、ヨーレート値を測定して左側または右側の摩擦制動装置の故障を判断し、車両の実際の減速度値の変化を測定することで、前輪と後輪の制動装置の故障を判断することができる。
【0023】
以下、本発明において制動装置の故障を検出する方法について、実施例を通じて説明する。
車両の走行段階で、ブレーキペダルの入力による要求減速度の計算値と車両の減速度センサー値を比較して制動システムの故障を判断し、制動システムの故障が判断された場合、制動区間領域においてそれぞれ制動装置の中で、どの装置の故障なのかを判断する。
ブレーキペダルの入力による要求減速度と実際の減速度の差が、あらかじめ設定された範囲を超える場合(S120)、制動装置の故障と判断する。
【0024】
以後、回生制動区間、回生制動及び後輪摩擦制動区間(S210)、回生制動及び前・後輪摩擦制動区間(S220)を判断し、各制動装置のどの部分における制動装置の故障なのかを検出する。ヨーレート値を通じて左側または右側の制動装置の故障を検出することができ、さらに、減速度の測定値の変化とそれぞれの制動装置の制動力を通じて前輪または後輪の制動装置の故障を検出することができる。
制動に回生制動装置だけが使用される場合は(S200)、回生制動装置の故障で制動装置の故障(S300)を検出する。また、回生制動装置だけが使用される制動区間でない場合でヨーレート値が0である場合、回生制動装置の故障と判断されることがある(S350)(S450)。
【0025】
制動が回生制動と後輪摩擦制動装置によって行なわれる区間において、上記ヨーレート値が0より大と測定される場合(S320)、後輪右側の摩擦制動装置の故障と判断(S330)し、上記ヨーレート値が0より小さく測定される場合、後輪左側の摩擦制動装置の故障(S340)を検出する。
制動が回生制動及び前・後輪摩擦制動装置によって行なわれる区間(S220)において、車両は回生制動装置と前・後輪摩擦制動装置を利用して制動を行う。車両の制動時、ヨーレート値を測定し、摩擦制動装置の左側または右側制動装置の中で、どの制動装置が故障したのか判断することができる。すなわち、ヨーレート値が0より大きい場合は、前輪右側または後輪右側の制動装置の故障と判断し、ヨーレート値が0より小さい場合は、前輪左側または後輪左側の制動装置の故障と判断する。
【0026】
ヨーレート値を通じて左側または右側制動装置の故障を判断した後、前輪または後輪の制動装置の故障を検出するために、前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一であるかを判断する。これと関連して、一般的な摩擦制動を遂行する場合、前輪摩擦制動力が後輪摩擦制動力に比べて大きい制動力を提供するが、回生制動が併行して行われる区間では前輪摩擦制動力が後輪摩擦制動力と同一の値となることがある。
したがって、前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一である場合、車両の制動を遂行して実際減少した減速度の値と、摩擦制動装置の制動力の変化による減速度の変化を比較しても、どの制動装置の故障なのか判断することができない。 よって、前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一条件で故障が検出された左側または右側の制動装置の中で、一つの制動力の変化を測定することで対象となる制動装置の故障を判断することができる。
【0027】
一方、前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一ではない場合、制動を遂行して実際減少した減速度と、故障が検出された左側または右側の制動装置の前輪または後輪の制動装置のいずれか一つの制動装置の制動が行われることよって発生した減速度の値を比較することで、前輪または後輪制動装置の中で、どの制動装置に故障があるのか検出することができる。
したがって、上記ヨーレート値が0より大きい場合は、前輪右側または後輪右側の摩擦制動装置の故障と判断(S470)し、前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一であると判断(S420)されると、前輪右側の制動力の変化によって減速度に変化(S430)があれば後輪右側の摩擦制動装置の故障(S440)と判断し、上記前輪右側の制動力の変化による減速度に変化(S430)がなければ前輪右側の摩擦制動装置の故障(S460)と判断する。
【0028】
上記前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一ではないと判断される場合、車両を制動することによって実際減少した減速度が前輪右側の摩擦制動装置が発生させる減速度と同一である場合には後輪右側の摩擦制動装置の故障と判断し、車両を制動することで実際減少した減速度が前輪右側の摩擦制動装置が発生させる減速度と同一ではない場合には前輪右側の摩擦制動装置の故障と判断する。
また、上記ヨーレート値が0より小さい場合、前輪左側または後輪左側の摩擦制動装置の故障(S640)と判断し、前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一であるかを判断(S600)する。前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一である場合、前輪左側制動力の変化によって減速度に変化があれば(S610)、後輪左側の摩擦制動装置の故障と判断(S620)し、前輪左側制動力変化による減速度に変化がないと(S610)、前輪左側の摩擦制動装置の故障と判断(S630)する。
上記の前輪摩擦制動力と後輪摩擦制動力が同一ではない場合、車両の制動を通じて実際減少した減速度が前輪左側の摩擦制動装置が発生させる減速度と同一である場合(S700)には後輪左側の摩擦制動装置の故障と判断し、車両の制動を通じて実際減少した減速度が前輪左側の摩擦制動装置が発生させる減速度と同一ではない場合には前輪左側の摩擦制動装置の故障を検出する(S720)。
【0029】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
図1
図2
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図5
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図7
図8