特許第6573775号(P6573775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573775
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】交差点監視システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/04 20060101AFI20190902BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20190902BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20190902BHJP
【FI】
   G08G1/04 D
   H04N7/18 D
   G06T7/20
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-84496(P2015-84496)
(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公開番号】特開2016-206756(P2016-206756A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川邉 恵一
【審査官】 岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−330942(JP,A)
【文献】 特開2002−222488(JP,A)
【文献】 特開2004−102426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/04
G06T 7/20
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に設置された撮像装置が撮像した動画像が示す前記交差点を通過する移動体の軌跡データと、前記交差点の種別、前記交差点の信号機の現示階梯の種別及び当該通過の時点における前記現示階梯のステップの組合せに応じた移動体挙動判定の基準を示す判定基準データとを取得する取得手段と、
前記判定基準データに照らし前記軌跡データが示す移動が正常であるか否かを判定する判定手段と
を備える交差点監視システム。
【請求項2】
前記取得手段は、前記信号機の現示階梯のステップ内における、移動体が前記交差点を通過したタイミングを示すタイミングデータを取得し、
前記取得手段は、前記タイミングデータに応じた前記判定基準データを取得する
請求項1に記載の交差点監視システム。
【請求項3】
前記取得手段は、移動体が前記交差点を通過した時点における前記交差点の信号機の現示状態を示す現示状態データを取得し、
前記取得手段は、前記現示状態データに応じた前記判定基準データを取得する
請求項1または2に記載の交差点監視システム。
【請求項4】
前記取得手段は複数の軌跡データを取得し、
前記取得手段が取得した複数の前記軌跡データに基づき前記判定基準データを生成する基準生成手段を備える
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の交差点監視システム。
【請求項5】
前記取得手段は、複数の前記軌跡データの各々が示す移動体の移動が正常であるか否かを示す判定結果データを取得し、
前記基準生成手段は、前記取得手段が取得した複数の前記軌跡データと前記判定結果データとの組み合わせに基づき前記判定基準データを生成する
請求項4に記載の交差点監視システム。
【請求項6】
前記撮像装置が撮像した動画像を前記撮像装置の撮像アングルとは異なる撮像アングルから撮像された動画像に変換し、変換後の動画像から前記軌跡データを生成する軌跡生成手段
を備える請求項1乃至のいずれか1項に記載の交差点監視システム。
【請求項7】
前記撮像装置が撮像した動画像が示す移動体の軌跡を前記撮像装置の撮像アングルとは異なる撮像アングルから撮像された動画像が示す移動体の軌跡に変換し、変換後の軌跡を示す前記軌跡データを生成する軌跡生成手段
を備える請求項1乃至のいずれか1項に記載の交差点監視システム。
【請求項8】
前記取得手段は、前記撮像装置の撮像アングルデータを取得し、
前記軌跡生成手段は、前記撮像アングルデータに基づき前記変換を行う
請求項またはに記載の交差点監視システム。
【請求項9】
前記取得手段は、前記撮像装置が撮像した前記交差点の静止画における3以上の点の座標データを取得し、
前記軌跡生成手段は、前記座標データに基づき前記変換を行う
請求項またはに記載の交差点監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点を通過する移動体の動きを監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点を通過する移動体の動きを監視するための技術がある。例えば、特許文献1には、統合化ブロック法を用いて、ニューロネットワークにより交差点の車両の動きが異常な動きやルール違反の動きであるか否かを判定する方法が記載されている。特許文献1に記載の方法においては、交差点内の車両の異常な動きやルール違反の現象と各ブロックの動き量の総和との関係を学習したニューロネットワークが、現実の車両の動きから得られる各ブロックの動き量の総和を学習内容と比較し、現実の車両の動きが異常な動きやルール違反の動きであるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−285399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
交差点を通過する移動体の動きは一律ではない。従って、移動体の動きが正常であるか否かを判定するためには、数多くの有り得る動きの動きが正常な動きであるか否かの判定を行う必要がある。この判定を人間が行う場合、多大な労力を有する。また、この判定を装置に行わせた場合であっても、結果の妥当性を確認する作業は人間が行わなければならない。装置が行った判定の結果の妥当性を確認する作業にも多大な労力を有する。
【0005】
上記の事情に鑑み、本発明は、交差点を通過する移動体の動きを監視するために要する労力を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、交差点に設置された撮像装置が撮像した動画像が示す前記交差点を通過する移動体の軌跡データと、前記交差点の種別、前記交差点の信号機の現示階梯の種別及び当該通過の時点における前記現示階梯のステップの組合せに応じた移動体挙動判定の基準を示す判定基準データとを取得する取得手段と、前記判定基準データに照らし前記軌跡データが示す移動が正常であるか否かを判定する判定手段とを備える交差点監視システムを第1の態様として提供する。
【0007】
第1の態様の交差点監視システムによれば、交差点を通過する移動体の動きが、交差点の種別、交差点の信号機の現示階梯の種別及び通過時の現示階梯のステップに応じた判定基準に照らし判定される。そのため、当該判定基準が用いられない場合と比較し、交差点を通過する移動体の動きを監視するために要する労力が軽減される。
【0008】
第1の態様の交差点監視システムにおいて、前記取得手段は、前記信号機の現示階梯のステップ内における、移動体が前記交差点を通過したタイミングを示すタイミングデータを取得し、前記取得手段は、前記タイミングデータに応じた前記判定基準データを取得する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0009】
第2の態様の交差点監視システムによれば、交差点を通過する移動体の動きが、現示ステップ内における移動体の通過タイミングに応じた判定基準に照らし判定される。そのため、現示ステップ内における移動体の通過タイミングに応じた判定基準が用いられない場合と比較し、判定基準の作成作業や判定結果の確認作業に要する労力が軽減される。
【0010】
第1または第2の態様の交差点監視システムにおいて、前記取得手段は、移動体が前記交差点を通過した時点における前記交差点の信号機の現示状態を示す現示状態データを取得し、前記取得手段は、前記現示状態データに応じた前記判定基準データを取得する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0011】
第3の態様の交差点監視システムによれば、例えば信号機の表示の切り替えを制御する信号制御装置等から取得される現示状態データに応じて判定基準データが取得される。そのため、交差点監視システムが独自に現示状態を管理する必要がない。
【0012】
第1乃至第3のいずれかの態様の交差点監視システムにおいて、前記取得手段は複数の軌跡データを取得し、前記取得手段が取得した複数の前記軌跡データに基づき前記判定基準データを生成する基準生成手段を備える、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0013】
第4の態様の交差点監視システムによれば、複数の軌跡データが示す移動体の動きに基づき判定基準データが生成される。そのため、ユーザが判定基準データを作成する手間が軽減される。
【0014】
第4の態様の交差点監視システムにおいて、前記取得手段は、複数の前記軌跡データの各々が示す移動体の移動が正常であるか否かを示す判定結果データを取得し、前記基準生成手段は、前記取得手段が取得した複数の前記軌跡データと前記判定結果データとの組み合わせに基づき前記判定基準データを生成する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0015】
第5の態様の交差点監視システムによれば、複数の軌跡データが示す移動体の動きに加え、移動体の移動が正常であるか否かを示す判定結果に基づき判定基準データが生成される。そのため、複数の軌跡データが示す移動体の動きのみに基づき生成された判定基準データが用いられる場合と比較し、高い精度の判定結果が得られる。
【0018】
第1乃至第のいずれかの態様の交差点監視システムにおいて、前記撮像装置が撮像した動画像を前記撮像装置の撮像アングルとは異なる撮像アングルから撮像された動画像に変換し、変換後の動画像から前記軌跡データを生成する軌跡生成手段を備える、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0019】
第1乃至第のいずれかの態様の交差点監視システムにおいて、前記撮像装置が撮像した動画像が示す移動体の軌跡を前記撮像装置の撮像アングルとは異なる撮像アングルから撮像された動画像が示す移動体の軌跡に変換し、変換後の軌跡を示す前記軌跡データを生成する軌跡生成手段を備える、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0020】
または第の態様の交差点監視システムによれば、異なる撮像アングルから撮像された動画像が示す移動体の軌跡を同じ撮像アングルから撮像された動画像が示す移動体の軌跡として扱うことができる。そのため、異なる撮像アングルの各々に関し判定基準を準備する必要がなく、判定基準の作成作業や判定結果の確認作業に要する労力が軽減される。
【0021】
または第の態様の交差点監視システムにおいて、前記取得手段は、前記撮像装置の撮像アングルデータを取得し、前記軌跡生成手段は、前記撮像アングルデータに基づき前記変換を行う、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0022】
の態様の交差点監視システムによれば、撮像装置の撮像アングルに基づき移動体の軌跡の変換が行われる。そのため、ユーザが移動体の軌跡を変換する手間が軽減される。
【0023】
または第の態様の交差点監視システムにおいて、前記取得手段は、前記撮像装置が撮像した前記交差点の静止画における3以上の点の座標データを取得し、前記軌跡生成手段は、前記座標データに基づき前記変換を行う、という構成が第の態様として採用されてもよい。
【0024】
の態様の交差点監視システムによれば、交差点の静止画における3以上の点の座標データに基づき移動体の軌跡の変換が行われる。そのため、ユーザが移動体の軌跡を変換する手間が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態にかかる交差点監視システムの全体構成を示した図。
図2】一実施形態にかかる端末装置およびサーバ装置に用いられるコンピュータの基本構成を示した図。
図3】一実施形態にかかる端末装置の機能構成を示した図。
図4】一実施形態にかかる端末装置およびサーバ装置に記憶される判定基準データベースのデータ構成を例示した図。
図5】一実施形態にかかる端末装置およびサーバ装置に記憶される動画像データベースのデータ構成を例示した図。
図6】一実施形態にかかる端末装置およびサーバ装置に記憶される軌跡データベースのデータ構成を例示した図。
図7】一実施形態にかかるサーバ装置の機能構成を示した図。
図8】一実施形態にかかる端末装置の動作を示した図。
図9】一実施形態にかかるサーバ装置の動作を示した図。
図10】一実施形態にかかる端末装置の動作を示した図。
図11】一実施形態にかかる端末装置に表示される動画像閲覧ページを示した図。
図12】一実施形態にかかるサーバ装置の動作を示した図。
図13】一実施形態にかかるサーバ装置の動作を示した図。
図14】一実施形態にかかる端末装置の動作を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[実施形態]
以下に本発明の一実施形態にかかる交差点監視システム1を説明する。図1は交差点5を通過する車両や通行人等の移動体の動きを監視するための交差点監視システム1の全体構成と、交差点5に設置された信号機等を示した図である。
【0027】
図1に例示の交差点5は片側一車線の標準的な十字路(以下、「片側一車線標準十字路」という)である。交差点5の種別は片側一車線標準十字路に限られず、現存する交差点のいずれの種別であってもよい。
【0028】
図1に例示の交差点5には車両用の信号機として4つの信号機6が設置されている。また、図1に例示の交差点5には歩行者用の信号機として8つの信号機7が設置されている。また、交差点5には信号制御装置8が設置されている。信号制御装置8は信号機6および信号機7の各々と例えば有線接続されており、信号機6および信号機7の各々の信号表示状態を制御する。なお、信号制御装置8と信号機6および信号機7の各々とが無線接続されていてもよい。
【0029】
また、図1に例示の交差点5には8つの撮像装置11が設置されている。8つの撮像装置11の各々は、図1に示されるように、互いに異なる位置から異なる方向に向けて撮像を行い、交差点5を通過する移動体(車両、歩行者等)の動きを示す動画像データを生成する。
【0030】
なお、図1に例示の信号機6、信号機7および撮像装置11の数や配置は例示であって、交差点5の種別、大きさ、樹木の配置等に応じて、信号機6、信号機7および撮像装置11の数や配置は様々に変化する。
【0031】
交差点5には端末装置12が設置されている。端末装置12は撮像装置11の各々と例えば有線接続されており、撮像装置11により生成される動画像データを受信して、動画像データが示す移動体の動きが正常であるか否かの判定(以下、「移動体挙動判定」という)を行う装置である。なお、端末装置12と撮像装置11の各々が無線接続されていてもよい。
【0032】
また、端末装置12は信号制御装置8と例えば有線接続されており、信号制御装置8から移動体挙動判定に用いる各種データ(後述)を受信するとともに、撮像装置11から受信した動画像データや移動体挙動判定の結果を示す判定結果データ等を信号制御装置8に送信する。なお、端末装置12と信号制御装置8が無線接続されていてもよい。
【0033】
信号制御装置8は有線または無線により、例えば交通管制センターに配置されているサーバ装置13に接続されている。なお、サーバ装置13の配置場所は交通管制センターに限られない。信号制御装置8は端末装置12から受信した動画像データや判定結果データ等をサーバ装置13に送信する。
【0034】
サーバ装置13は図1に例示の交差点5に加え、多数の異なる交差点5の各々に設置された信号制御装置8から送信されてくる動画像データや判定結果データ等を受信し、これらのデータを蓄積する。また、サーバ装置13は蓄積したデータを用いて移動体挙動判定の基準を示す判定基準データを生成し、様々な交差点5に設置された端末装置12に判定基準データを送信する。
【0035】
また、サーバ装置13は端末装置14との間で有線または無線によりデータ通信が可能である。端末装置14は例えば交差点5を通過する移動体の動きを監視する担当者により使用される端末装置である。サーバ装置13は例えばWebサーバ機能を有し、端末装置14からの要求に応じて、要求された動画像データや判定結果データ等を表示するWebページを生成し、端末装置14に配信する。
【0036】
端末装置14は上述のように、例えば交差点5を通過する移動体の動きを監視する担当者により使用される端末装置であり、例えばブラウザ機能を有し、使用者の操作に応じてサーバ装置13にWebページを要求し、サーバ装置13から配信されるWebページを表示する。
【0037】
図1に示される構成要素のうち、交差点5、信号機6、信号機7、および信号制御装置8は既知のものであるため、これらの説明を省略する。また、図1に示される構成要素のうち、撮像装置11、端末装置12、サーバ装置13および端末装置14が交差点監視システム1を構成する。交差点監視システム1の構成要素のうち、撮像装置11と端末装置14は既知のものであるため、これらの説明を省略する。従って、以下に端末装置12とサーバ装置13の説明を行う。
【0038】
端末装置12はASIC等を用いた専用装置として構成されてもよいし、一般的なコンピュータにより実現されてもよい。サーバ装置13もまた、ASIC等を用いた専用装置として構成されてもよいし、一般的なコンピュータにより実現されてもよい。以下、例として、端末装置12とサーバ装置13がともに一般的なコンピュータにより実現される場合を説明する。
【0039】
図2は端末装置12に用いられるコンピュータ20と、サーバ装置13に用いられるコンピュータ30の基本構成を示した図である。コンピュータ20は各種データを記憶するメモリ201、メモリ201に記憶されているプログラムに従い各種データ処理を行うプロセッサ202、撮像装置11の各々に対し撮像制御を指示する制御データを出力するとともに撮像装置11の各々から動画像データの入力を受けるインタフェースである入出力IF203、信号制御装置8との間で各種データの送受信を行うインタフェースである通信IF204を備える。
【0040】
コンピュータ30は各種データを記憶するメモリ301、メモリ301に記憶されているプログラムに従い各種データ処理を行うプロセッサ302、信号制御装置8および端末装置14との間で各種データの送受信を行うインタフェースである通信IF303を備える。
【0041】
図3は端末装置12の機能構成を示した図である。すなわち、コンピュータ20がメモリ201に記憶されているプログラムを実行することにより、図3に示す機能構成部を備える端末装置12として動作する。以下に端末装置12の機能構成部を説明する。
【0042】
動画像取得手段1201は撮像装置11から動画像データを取得する。軌跡生成手段1202(軌跡取得手段の一例)は動画像データが示す移動体の軌跡を示す軌跡データを生成する。軌跡生成手段1202が行う動画像データから軌跡データを生成する処理は既知であるため、その説明を省略する。
【0043】
現示状態取得手段1203は信号制御装置8から信号機6および信号機7の現示状態を示す現示状態データを取得する。タイミング特定手段1204(タイミング取得手段の一例)は、軌跡データが示す軌跡を描いて移動した移動体が、現示状態データが示す現示階梯のステップ内において交差点5を通過したタイミングを特定する。
【0044】
記憶手段1205は各種データを記憶する。記憶手段1205に記憶されるデータには、交差点5の種別および現示階梯の種別を示す種別データ、現示状態取得手段1203により信号制御装置8から取得された現示状態データ、交差点5の種別および現示階梯の種別に応じた移動体挙動判定の基準を示す判定基準データ、動画像取得手段1201により撮像装置11から取得された動画像データ、軌跡生成手段1202により生成された軌跡データ、移動体挙動判定の結果を示す判定結果データ、撮像装置11の各々の撮像アングルを示す撮像アングルデータ等が含まれる。
【0045】
種別データは端末装置12の設置された交差点5の種別と、交差点5において信号制御装置8が信号機6および信号機7の表示制御に用いている現示階梯の種別とを示すデータである。種別データは、例えば端末装置12の設置時に設置者等により端末装置12に対し入力されたデータである。ただし、例えば信号制御装置8が交通管制センター等からの指示に従い用いる現示階梯の種別を変更した場合、端末装置12は信号制御装置8から新たに用いられる現示階梯の種別の通知を受け、種別データを更新する。
【0046】
判定基準データはサーバ装置13において交差点5の種別に応じて生成されるデータであり、端末装置12がサーバ装置13から受信したデータである。図4は端末装置12が判定基準データを格納する判定基準データベースのデータ構成を例示した図である。判定基準データベースは、撮像方向の各々に応じたレコードの集まりであり、フィールドとして[撮像方向]、[第1ステップ]、[第2ステップ]、・・・、[第iステップ]を備える。なお、「i」は当該判定基準データに応じた現示階梯に含まれるステップの数である。
【0047】
[撮像方向]には、交差点5における動画像の撮像方向を示す「第1方向(右)」等のデータが格納される。[第1ステップ]、[第2ステップ]、・・・、[第iステップ]の各々には、現示階梯の各ステップに応じた判定基準データが格納される。
【0048】
例えば、図4に例示の「J001_P001_S01_D01R_T1.crt」は、「J001」で識別される交差点種別の、「P001」で識別される現示階梯種別の、「S01」で識別されるステップの、「D01R」で識別される撮像方向の、「T1」で識別される期間に応じた判定基準データである。
【0049】
図4に例示の判定基準データベースには、[第1ステップ]、[第2ステップ]、・・・、[第iステップ]の各々に、期間「T1」に応じた判定基準データと、期間「T2」に応じた判定基準データが格納されている。期間「T1」はステップ内においてステップの開始直後の所定時間(例えば10秒間)内の期間(第1期間)である。また、期間「T2」はステップ内において期間「T1」の経過の後の期間(第2期間)である。すなわち、図4に例示の判定基準データベースには、ステップ内を区分した2つの期間の各々に応じた判定基準データが格納されている。なお、各ステップに応じた判定基準データの数、すなわち、各ステップ内を区分する期間の数は2つに限られない。
【0050】
図5は端末装置12が撮像装置11から受信した動画像データを格納する動画像データベースのデータ構成を例示した図である。動画像データベースは、現示状態(現示階梯のステップ)が変化するタイミングで分割された動画像データの各々に応じたレコードの集まりであり、フィールドとして[交差点ID]、[交差点種別]、[現示階梯種別]、[現示状態]、[撮像方向]、[撮像開始時刻]、[撮像終了時刻]、[動画像データ]を備える。これらのフィールドにはフィールド名に応じたデータが格納される。
【0051】
図6は端末装置12が生成した軌跡データを格納する軌跡データベースのデータ構成を例示した図である。なお、軌跡データベースには、端末装置12が軌跡データに基づき移動体挙動判定を行った結果を示す判定結果データも格納される。軌跡データベースは交差点5を通過した移動体の各々に応じたレコードの集まりであり、フィールドとして[移動体ID]、[交差点ID]、[交差点種別]、[現示階梯種別]、[現示状態]、[撮像方向]、[通過開始時刻]、[通過終了時刻]、[ステップ内通過開始時刻]、[ステップ内通過終了時刻]、[判定結果]、[軌跡データ]を備える。これらのフィールドにはフィールド名に応じたデータが格納される。
【0052】
撮像アングルデータは撮像装置11の撮像アングルを示すデータであり、例えば撮像装置11の設置時に設置者等により端末装置12に対し入力されたデータである。撮像アングルデータは、例えば基準位置(例えば、交差点5の中心点)から撮像装置11の設置位置に向かうベクトルを示すデータと撮像装置11の撮像方向を示すデータの組み合わせである。ただし、撮像アングルデータの形式はこれに限定されない。
【0053】
図3に戻り、端末装置12の機能構成部の説明を続ける。送信手段1206は動画像データ、軌跡データ、判定結果データ等の各種データをサーバ装置13に送信する。受信手段1207はサーバ装置13から判定基準データ等の各種データを受信する。
【0054】
種別取得手段1208は記憶手段1205から種別データを読み出す。送信手段1206は種別取得手段1208により読み出された種別データを含む判定基準データの要求を生成しサーバ装置13に送信する。受信手段1207は当該要求に応じてサーバ装置13から送信されてくる判定基準データ(種別データが示す交差点種別および現示階梯種別に応じた判定基準データ)を受信する。
【0055】
撮像アングル取得手段1209は記憶手段1205から撮像アングルデータを読み出す。軌跡生成手段1202は動画像から特定した軌跡に対し、撮像アングル取得手段1209により読み出された撮像アングルデータが示す撮像装置11の撮像アングルと予め定められた基準となる撮像アングルとの差に応じた座標変換を施し、当該座標変換を施した後の軌跡を示す軌跡データを生成する。従って、軌跡生成手段1202により生成される軌跡データは、個々の撮像装置11の撮像アングルの影響が除去された軌跡を示す。
【0056】
判定基準取得手段1210は、軌跡生成手段1202により生成された軌跡データの各々に関し、記憶手段1205から当該軌跡データの属性(撮像方向、現示状態、ステップ内のタイミング等)に応じた判定基準データを読み出す。判定手段1211は判定基準取得手段1210により読み出された判定基準データに従い、軌跡生成手段1202により生成された軌跡データが示す移動体の軌跡が正常な動きを示すか否かの判定を行う。なお、判定手段1211により行われた判定の結果は軌跡データベース(図6)の[判定結果]に格納される。以上が端末装置12の機能構成部の説明である。
【0057】
図7はサーバ装置13の機能構成を示した図である。すなわち、コンピュータ30がメモリ301に記憶されているプログラムを実行することにより、図7に示す機能構成部を備えるサーバ装置13として動作する。以下にサーバ装置13の機能構成部を説明する。
【0058】
受信手段131は端末装置12および端末装置14から各種データを受信する。具体的には、受信手段131は端末装置12から動画像データ、軌跡データ、判定結果データ等を受信する。また、受信手段131は、端末装置14から動画像データおよび判定結果データの要求を受信する。さらに、受信手段131は、端末装置14のユーザが動画像を目視して、移動体の動きが正常であるか否かを判定した結果を示す判定結果データを受信する。
【0059】
記憶手段132は各種データを記憶する。具体的には、記憶手段132は、端末装置12の記憶手段1205と同様に、判定基準データベース(図4)、動画像データベース(図5)、軌跡データベース(図6)等を記憶する。ただし、記憶手段132が記憶する判定基準データベースには、様々な交差点種別と現示階梯種別の組み合わせに応じた判定基準データが格納される。また、記憶手段132が記憶する動画データベースには、様々な端末装置12から送信されてくる動画像データが格納される。また、記憶手段132が記憶する軌跡データベースには、様々な端末装置12から送信されてくる軌跡データおよび判定結果データが格納される。
【0060】
軌跡取得手段133は記憶手段132から多数の軌跡データを読み出す。基準生成手段134は軌跡取得手段133により読み出された多数の軌跡データに基づき、これらの軌跡データの外れ値を特定し、外れ値として特定された軌跡データの特徴を示す判定基準データを生成する。基準生成手段134が軌跡データの外れ値を特定する方法としては、例えば既知のOne Class Support Vector Machine等の教師なし学習方法が用いられる。
【0061】
判定結果取得手段135は端末装置14からサーバ装置13が受信した判定結果データ(端末装置14のユーザの目視による判定結果を示す判定結果データ)を記憶手段132から読み出す。基準生成手段134は判定結果取得手段135が読み出した判定結果データに基づき判定基準データを生成する。基準生成手段134が判定結果データを用いて判定基準データを生成する方法としては、例えば既知のSupport Vector Machine等の教師あり学習方法が用いられる。この場合、判定結果データは教師データとして用いられる。
【0062】
判定手段136は基準生成手段134により生成された判定基準データに従い、軌跡取得手段133により読み出された軌跡データが示す移動体の軌跡が正常な動きを示すか否かの判定を行う。
【0063】
送信手段137は端末装置12および端末装置14に各種データを送信する。具体的には、送信手段137は端末装置12に判定基準データを送信する。また、送信手段137は端末装置14に動画像データと判定結果データを送信する。以上がサーバ装置13の機能構成部の説明である。
【0064】
続いて、交差点監視システム1の動作を説明する。交差点監視システム1においては、監視対象の交差点の種別および監視対象の交差点において用いられている現示階梯の種別に応じた判定基準に基づき移動体挙動判定が行われる。従って、或る交差点において新たに交差点監視システム1による監視を開始する場合、この交差点の種別およびこの交差点において用いられている現示階梯の種別に応じた判定基準がまだ準備されていなければ、まずその判定基準の準備が行われる。
【0065】
交差点監視システム1における判定基準の準備フェーズには、例として以下の2つの方法のいずれかが採用される。
(教師なし学習法)収集した軌跡データを用いて教師なし学習により判定基準データを生成する方法。
(教師あり学習法)目視判定の結果を示す判定結果データを用いて教師あり学習により判定基準データを生成する方法。
【0066】
以下に、教師なし学習法が採用される場合の準備フェーズにおける交差点監視システム1の動作を説明する。教師なし学習法が採用される場合の準備フェーズにおいて、端末装置12は所定数の軌跡データを生成しサーバ装置13に送信する。また、サーバ装置13は端末装置12から送信されてくる所定数の軌跡データを用いて教師なし学習により判定基準データを生成する。
【0067】
図8は教師なし学習法が採用される場合の準備フェーズにおける端末装置12の動作を示した図である。まず、端末装置12は生成する軌跡データの数をカウントするためのカウンタhに初期値「0」を代入する(ステップS101)。続いて、端末装置12は複数の撮像装置11の各々から順次送信されてくる動画像データを受信する(ステップS102)。同時に、端末装置12は信号制御装置8から順次送信されてくる現示状態データを受信する(ステップS103)。端末装置12は現示状態データが示す現示階梯のステップの切り替わりのタイミングにおいて動画像データを分割し、分割した動画像データを記憶手段1205の動画像データベース(図5)に記憶していく(ステップS104)。なお、後続する動画像データに関するステップS102〜S104の処理は、先行する動画像データに関する以下のステップS105以降の処理と並行して継続される。
【0068】
端末装置12は、ステップS104において記憶した動画像データが示す移動体を特定し、特定した移動体の軌跡を示す軌跡データを生成する(ステップS105)。以下、ステップS105において特定された移動体の数、すなわちステップS105において生成された軌跡データの数をnとする。端末装置12は生成した軌跡データの各々に対し座標変換処理を施す(ステップS106)。この座標変換処理は、個々の撮像装置11の撮像アングルの差異による影響を除去し標準化された軌跡データを生成する処理である。端末装置12は座標変換処理を施した軌跡データを記憶手段1205の軌跡データベース(図6)に記憶する(ステップS107)。端末装置12はステップS107において新たに記憶した軌跡データの数nをカウンタhに加算する(ステップS108)。
【0069】
端末装置12はカウンタhが所定数(図8の例では10000)に達したか否かを判定する(ステップS109)。カウンタhが所定数に達していない場合(ステップS109;No)、端末装置12はステップS102〜S108の処理を継続する。カウンタhが所定数に達している場合(ステップS109;Yes)、端末装置12はステップS102〜S108の処理を停止し、記憶した動画像データと軌跡データを、それらの属性(撮像方向、現示状態等)を示すデータとともにサーバ装置13に送信する(ステップS110)。
【0070】
図9は教師なし学習法が採用される場合の準備フェーズにおけるサーバ装置13の動作を示した図である。サーバ装置13は端末装置12が上述したステップS110において送信する動画像データと軌跡データを、それらの属性(撮像方向、現示状態等)を示すデータとともに受信する(ステップS201)。サーバ装置13は受信したデータを記憶手段132の動画像データベース(図5)または軌跡データベース(図6)に記憶する(ステップS202)。
【0071】
続いて、サーバ装置13はステップS202において記憶した軌跡データを現示階梯のステップ毎にグループ化する(ステップS203)。図9の例では、現示階梯のステップ数は10である。従って、ステップS203においてサーバ装置13はステップS202において記憶した軌跡データを第1ステップ〜第10ステップの各々に応じた10個のグループに区分する。
【0072】
続いて、サーバ装置13は現示階梯のステップの順番を示すカウンタjに初期値「1」を代入する(ステップS204)。サーバ装置13は第jステップの軌跡データをステップ内の期間毎にグループ化する(ステップS205)。図9の例では、ステップ内は2つの期間(ステップの開始直後の期間とそれ以降の期間)に区分される。従って、ステップS205においてサーバ装置13は第jステップの軌跡データをステップ内の第1期間と第2期間の各々に応じた2つのグループに区分する。
【0073】
続いて、サーバ装置13はステップ内の期間の順番を示すカウンタkに初期値「1」を代入する(ステップS206)。続いて、サーバ装置13は第jステップの第k期間の軌跡データを用いて、教師なし学習により判定基準データを生成する(ステップS207)。サーバ装置13は生成した判定基準データを記憶手段132の判定基準データベース(図4)に記憶する(ステップS208)。
【0074】
続いて、サーバ装置13はカウンタkが、ステップ内を区分した期間の数である「2」に達しているか否かを判定する(ステップS209)。カウンタkが「2」に達していない場合(ステップS209;No)、サーバ装置13はカウンタkを1だけ増加し(ステップS210)、処理をステップS207に戻す。
【0075】
ステップS209の判定において、カウンタkが2に達している場合(ステップS209;Yes)、サーバ装置13はカウンタjが現示階梯のステップ数である「10」に達しているか否かを判定する(ステップS211)。カウンタjが「10」に達していない場合(ステップS211;No)、サーバ装置13はカウンタjを1だけ増加し(ステップS212)、処理をステップS205に戻す。カウンタjが「10」に達している場合(ステップS211;Yes)、サーバ装置13は一連の処理を終了する。以上が、教師なし学習法が採用される場合の準備フェーズにおける交差点監視システム1の動作である。
【0076】
続いて、教師あり学習法が採用される場合の準備フェーズにおける交差点監視システム1の動作を説明する。教師あり学習法が採用される場合の準備フェーズにおいて、端末装置14はユーザに対し動画像を表示し、ユーザの目視判定の結果を取得する。サーバ装置13は、端末装置14に対し動画像データを送信する。また、サーバ装置13は、端末装置14のユーザによる目視判定の結果に基づき教師つき学習により判定基準データを生成する。
【0077】
図10は教師あり学習法が採用される場合の準備フェーズにおける端末装置14の動作を示した図である。まず、端末装置14のユーザは端末装置14を操作してブラウザ画面を表示させ、所定のURL(Uniform Resource Locator)を入力することでサーバ装置13が提供するWebページ(以下、「動画像閲覧ページ」という)にアクセスする(ステップS301)。
【0078】
図11は動画像閲覧ページを示した図である。以下、図10図11をともに参照しつつ、端末装置14の動作の説明を続ける。動画像閲覧ページには、ユーザが動画像を閲覧したい監視対象の交差点を識別する交差点IDの入力欄が表示される。ユーザがこの入力欄に交差点IDを入力すると、端末装置14はユーザに入力された交差点IDに応じたデータの送信要求をサーバ装置13に送信する(ステップS302)。端末装置14は、送信要求の応答としてサーバ装置13から送信されてくるデータデータを受信する(ステップS303)。ステップS303において端末装置14が受信するデータは、ユーザにより入力された交差点IDに応じた交差点を通過した移動体毎に切り出された動画像データ、当該動画像データに応じた軌跡データ、および当該動画像データの属性(撮像方向、現示状態等)を示すデータである。
【0079】
端末装置14はサーバ装置13から受信したデータを用いて、動画像閲覧ページに含まれるリスト(以下、「動画像リスト」という)の表示を更新する。動画像リストには、現示階梯のユーザにより選択されたステップにおいて交差点を通過した移動体に関する通過開始時刻と撮像方向が表示される。動画像リストの各行には、対応する移動体の動画像データが対応付けられている。なお、リストには判定結果の表示欄が設けられており、この欄にはユーザによる目視判定の結果が表示される。従って、ユーザによる目視判定が行われる前は、判定結果の表示欄は空である。また、ユーザがステップを選択する前は、デフォルトで第1ステップが選択され、第1ステップにおいて交差点を通過した移動体に関する情報が動画像リストに表示される。
【0080】
動画像閲覧ページにはユーザがステップを選択するためのドロップダウンリストが表示される。ユーザが当該ドロップダウンリストからいずれかのステップを選択すると、動画像リストにはユーザにより選択されたステップに関する情報が表示される。ユーザが動画像リストからいずれかの行を選択し、「再生」ボタンをクリック等すると、端末装置12はユーザにより選択された移動体の動画像の再生指示を取得し(ステップS304)、動画像リストの下方の領域に、再生指示が行われた動画像を再生する(ステップS305)。ステップS305において、端末装置12は動画像とともに、軌跡データが示す移動体の軌跡を、例えば矢印等で表示する。
【0081】
ユーザは、動画像閲覧ページにおいて再生される動画像を目視して、移動体の動きが正常である否かと判定し、「正常」ボタンまたは「異常」ボタンをクリック等する。このユーザの操作に応じて、端末装置14はユーザによる目視判定の結果を示す判定結果データを取得する(ステップS306)。端末装置14は取得した判定結果データを一時的に記憶するとともに、動画像リストの判定結果の表示欄に取得した判定結果データの内容を反映させる。
【0082】
ユーザは、引き続き他の移動体の動きを目視判定したい場合(ステップS307;No)、動画像リストから適当な行を選択した後、「再生」ボタンをクリック等し、動画像を目視確認して、移動体の動きが正常であると判定した場合、「正常」ボタンをクリック等する。これにより、ステップS304〜S306の処理が繰り返される。
【0083】
一方、ユーザは動画像の目視確認を完了したい場合、「送信」ボタンをクリック等する。このユーザの操作に応じて(ステップS307;Yes)、端末装置14はステップS306において取得した判定結果データをサーバ装置13に送信する(ステップ308)。
【0084】
図12は教師あり学習法が採用される場合の準備フェーズにおいて、上述した端末装置14のユーザによる動画像の目視判定が行われる際にサーバ装置13が行う動作を示した図である。サーバ装置13は、図10のステップS302において端末装置14から送信されるデータの送信要求を受信すると(ステップS401)、記憶手段132に記憶している軌跡データベース(図6)に含まれるテーブルの中から、[交差点ID]が送信要求に含まれる交差点IDと一致するレコードを抽出する(ステップS402)。
【0085】
続いて、サーバ装置13はステップS402において抽出したレコードの各々に関し、記憶手段132に記憶している動画像データベース(図5)から対応するレコードを検索する(ステップS403)。具体的には、サーバ装置13は軌跡データベースから抽出したレコードと[交差点ID]が一致し、[通過開始時刻]および[通過終了時刻]が示す通過期間をカバーする撮影期間を示す[撮像開始時刻]および[撮像終了時刻]を格納するレコードを動画像データベースから検索する。
【0086】
続いて、サーバ装置13はステップS403において検索したレコードに含まれる動画像データから、対応する軌跡データベースのレコードの[通過開始時刻]および[通過終了時刻]が示す通過期間に応じた部分を切り出す(ステップS404)。サーバ装置13はステップS402において軌跡データベースから抽出したレコードに含まれる軌跡データと、当該軌跡データに関しステップS404において切り出した動画像データを、これらのデータの属性(撮像方向、現示状態等)を示すデータとともに端末装置14に送信する(ステップS405)。
【0087】
その後、サーバ装置13は図10のステップS308において端末装置14から送信される判定結果データを受信し(ステップS406)、受信した判定結果データで記憶手段132の軌跡データベース(図6)を更新する(ステップS407)。
【0088】
図13は教師あり学習法が採用される場合の準備フェーズにおいて、サーバ装置13が判定基準データを生成する際の動作を示した図である。なお、サーバ装置13は交差点種別と現示階梯種別の組み合わせ毎に判定基準データを生成する。サーバ装置13は、様々な交差点種別と現示階梯種別の組み合わせの各々に関し、図13に示す動作を行う。
【0089】
まず、サーバ装置13は軌跡データベース(図6)から、判定基準データの生成の対象となる交差点種別と現示階梯種別の組み合わせに応じたレコードであって、かつ、判定結果に正常または異常が格納されているレコードを抽出する(ステップS501)。ステップS501において抽出されたレコードの数が所定数(図13の例では10000)より少ない場合(ステップS502;No)、判定基準データの生成に必要な数の判定結果データが得られないため、サーバ装置13は処理を終了する。
【0090】
ステップS501において抽出されたレコードの数が所定数以上である場合(ステップS501;Yes)、サーバ装置13は抽出したレコードを現示階梯のステップ毎にグループ化する(ステップS503)。
【0091】
続いて、サーバ装置13は現示階梯のステップの順番を示すカウンタjに初期値「1」を代入する(ステップS504)。サーバ装置13は第jステップに応じたレコードをステップ内の期間毎にグループ化する(ステップS505)。
【0092】
続いて、サーバ装置13はステップ内の期間の順番を示すカウンタkに初期値「1」を代入する(ステップS506)。続いて、サーバ装置13は第jステップの第k期間に応じたレコードを用いて、教師あり学習により判定基準データを生成する(ステップS507)。ステップS507において、サーバ装置13は[判定結果]に格納されているデータを教師データとして用いる。
【0093】
サーバ装置13は生成した判定基準データで記憶手段132の判定基準データベース(図4)を更新する(ステップS508)。続いて、サーバ装置13はカウンタkが、ステップ内を区分した期間の数である「2」に達しているか否かを判定する(ステップS509)。カウンタkが「2」に達していない場合(ステップS509;No)、サーバ装置13はカウンタkを1だけ増加し(ステップS510)、処理をステップS507に戻す。
【0094】
ステップS509の判定において、カウンタkが2に達している場合(ステップS509;Yes)、サーバ装置13はカウンタjが現示階梯のステップ数である「10」に達しているか否かを判定する(ステップS511)。カウンタjが「10」に達していない場合(ステップS511;No)、サーバ装置13はカウンタjを1だけ増加し(ステップS512)、処理をステップS505に戻す。カウンタjが「10」に達している場合(ステップS511;Yes)、サーバ装置13は一連の処理を終了する。以上が、教師あり学習法が採用される場合の準備フェーズにおける交差点監視システム1の動作である。
【0095】
準備フェーズを経て判定基準の準備が完了すると、運用フェーズへの移行が可能となる。以下に、運用フェーズにおける交差点監視システム1の動作を説明する。図14は運用フェーズにおける端末装置12の動作を示した図である。運用フェーズに先立ち、端末装置12は記憶手段1205に記憶されている種別データが示す交差点の種別および現示階梯の種別に応じた判定基準データをサーバ装置13から受信し、受信した判定基準データを記憶手段1205の判定基準データベース(図4)に記憶している。
【0096】
上記の状態で、端末装置12は複数の撮像装置11の各々から順次送信されてくる動画像データを受信する(ステップS601)。同時に、端末装置12は信号制御装置8から順次送信されてくる現示状態データを受信する(ステップS602)。端末装置12は現示状態データが示す現示階梯のステップの切り替わりのタイミングにおいて動画像データを分割し、分割した動画像データを記憶手段1205の動画像データベース(図5)に記憶していく(ステップS603)。後続する動画像データに関するステップS601〜S603の処理は、先行する動画像データに関する以下のステップS604以降の処理と並行して継続される。
【0097】
端末装置12は、ステップS603において記憶した動画像データが示す移動体を特定し、特定した移動体の軌跡を示す軌跡データを生成する(ステップS604)。端末装置12は生成した軌跡データに対し座標変換処理を施す(ステップS605)。端末装置12は座標変換処理を施した軌跡データを記憶手段1205の軌跡データベース(図6)に記憶する(ステップS606)。
【0098】
続いて、端末装置12はステップS606において記憶した軌跡データの現示状態(現示階梯のステップ)およびステップ内通過開始時刻に応じた判定基準データを記憶手段1205の判定基準データベース(図4)から読み出す(ステップS607)。端末装置12は読み出した判定基準データに基づき、ステップS606において記憶した軌跡データに関し移動体挙動判定を行う(ステップS608)。端末装置12は移動体挙動判定の結果を示す判定結果データを記憶手段1205の軌跡データベース(図6)に記憶する(ステップS609)。
【0099】
続いて、端末装置12はステップS603において動画像データを記憶した動画像データベースのレコードと、ステップS609において判定結果データを記憶した判定結果データベースのレコードをサーバ装置13に送信する(ステップS610)。
【0100】
ステップS610において端末装置12から送信された動画像データベースのレコードは、サーバ装置13の動画像データベース(図5)に追加される。また、ステップS610において端末装置12から送信された軌跡データベースのレコードは、サーバ装置13の軌跡データベース(図6)に追加される。これにより、サーバ装置13に動画像データ、軌跡データ、判定結果データが蓄積されていく。以上が、運用フェーズにおける交差点監視システム1の動作の説明である。
【0101】
上述した運用フェーズにおける動作が、様々な交差点5に設置された端末装置12の各々とサーバ装置13との間で行われることで、サーバ装置13の動画像データベースには様々な交差点5で撮像された動画像データが、またサーバ装置13の軌跡データベースには様々な交差点5を通過した移動体に関する軌跡データおよび判定結果データが、蓄積されていく。サーバ装置13に蓄積されたこれらのデータは、例えば動画像閲覧ページ(図11)の表示に用いられる。従って、例えば端末装置14のユーザは、動画像閲覧ページを端末装置14に表示させ、異常と判定された移動体の動きを動画像で確認することで、信号機6および信号機7の配置等の改善や信号表示のサイクル、スプリット、またはオフセットの調整等を検討することができる。
【0102】
以上述べたように、交差点監視システム1によれば、運用フェーズにおいて、交差点5を通過する移動体の動きが正常であるか否かの判定が人の手によらず行われる。従って、ユーザは移動体の異常な動きを検出するために動画像を確認する手間を要さない。
【0103】
また、準備フェーズにおいて教師なし学習法が採用される場合、交差点監視システム1によれば、判定基準データが人の手によらず生成される。交差点監視システム1においては現示状態(現示階梯のステップ)の各々に応じた判定基準データが生成されるため、人の手によらずに生成された判定基準データであっても、ある程度の高い信頼性が得られる。
【0104】
また、準備フェーズにおいて教師あり学習法が採用される場合、交差点監視システム1によれば、ユーザが目視判定により行った判定の結果に基づき、教師なし学習法が採用される場合と比較して信頼性がより高い判定基準データの生成が行われる。交差点監視システム1においては現示状態(現示階梯のステップ)の各々に応じた動画像および移動体の軌跡がユーザに対し表示されるため、ユーザによる目視判定が容易である。また、教師なし学習法が採用される場合と同様に、教師あり学習法が採用される場合においても判定基準データは現示状態(現示階梯のステップ)の各々に応じて生成されるため、現示状態にかかわらず一律の判定基準データが生成される場合と比較し、高い信頼性の判定基準データが生成される。
【0105】
[変形例]
上述した実施形態は様々に変形することができる。以下にそれらの変形の例を示す。なお、上述した実施形態および以下に示す変形例は適宜組み合わされてもよい。
【0106】
(1)上述した実施形態において端末装置12により行われるものとした処理の少なくとも一部がサーバ装置13により行われてもよい。例えば、運用フェーズにおいて端末装置12が移動体挙動判定を行わず、端末装置12が軌跡データ等をサーバ装置13に送信し、サーバ装置13において移動対挙動判定が行われてもよい。また、上述した実施形態においてサーバ装置13により行われるものとした処理の少なくとも一部が端末装置12により行われてもよい。例えば、判定基準データの生成をサーバ装置13に代わって端末装置12が行ってもよい。また、端末装置12とサーバ装置13が一つの装置に統合された構成が採用されてもよい。
【0107】
(2)上述した実施形態において、教師あり学習法が採用される場合の準備フェーズにおいて、判定基準データの生成に用いられる教師データは端末装置14のユーザの目視判定の結果を示す判定結果データである。教師あり学習法が採用される場合の準備フェーズにおいて教師データとして用いられるデータはユーザによる目視判定の結果を示す判定結果データには限られない。例えば、過去に交通事故を招いた移動体の動きを示す軌跡データが教師データとして用いられる構成が採用されてもよい。
【0108】
(3)上述した実施形態において、撮像装置11により生成された動画像データや軌跡データは全て端末装置12またはサーバ装置13に蓄積されるものとしたが、不要となった動画像データや軌跡データを端末装置12やサーバ装置13に蓄積しない構成が採用されてもよい。例えば、動きが異常と判定された移動体が撮像されていない動画像データや、当該動画像データから生成された軌跡データは端末装置12やサーバ装置13に記憶しないという構成が採用されてもよい。
【0109】
(4)上述した実施形態において、撮像アングルの差異による影響を除去するための座標変換処理は、撮像装置11の撮像アングルを示す撮像アングルデータに基づき行われる。これに代えて、例えば端末装置12の設置者等が、撮像装置11により撮像された静止画に示される交差点5の特徴点(例えば、車道中央線と停止線の交点等)を3以上指定し、指定されたこれらの3点の静止画における座標に基づき、端末装置12が座標変換処理を行う構成が採用されてもよい。この場合、撮像装置11の設置者等により指定された特徴点の各々の座標が、基準となる撮像アングルで撮像された静止画における同種の特徴点の各々の座標に移動するように、軌跡データの座標変換が行われる。
【0110】
(5)上述した実施形態において、撮像アングルの差異による影響を除去するための座標変換処理は軌跡データに対し行われる。これに代えて、座標変換処理が動画像データに対し行われてもよい。この場合、座標変換処理が行われた動画像データに基づき、軌跡データの生成が行われる。
【0111】
(6)上述した実施形態において、判定基準データはサーバ装置13により人の手によらず生成される。これに代えて、交差点監視システム1の管理者等により作成された判定基準データが用いられてもよい。この場合であっても、交差点監視システム1の管理者等は現示階梯のステップ毎に判定基準データを作成すればよいので、現示状態を考慮せずに判定基準データを生成する場合と比較し、手間が軽減される。
【0112】
(7)運用フェーズにおいて判定基準データが更新される構成が採用されてもよい。例えば運用フェーズにおいて、端末装置14のユーザが動画像および移動体の軌跡を動画像閲覧ページ(図11)で閲覧しているときに、端末装置12による判定結果の誤りを発見する場合がある。この場合、ユーザは正しい判定結果に応じた「正常」ボタンまたは「異常」ボタンをクリック等した後に「送信」ボタンをクリック等する。その結果、ユーザの目視判定の結果を示す判定結果データがサーバ装置13の軌跡データベース(図6)に反映される。サーバ装置13は、例えば所定時間の経過毎に更新された軌跡データベースに格納されている[判定結果]を教師データとして判定基準データの生成を行い、生成した判定基準データで判定基準データベース(図4)を更新する。その後、端末装置12がサーバ装置13から更新された判定基準データを受信し、移動体挙動判定に用いれば、判定結果の信頼性が向上する。
【0113】
(8)上述した実施形態においては、図4に示されるように、1つの交差点に複数の撮像装置が設置されている場合、それらの撮像装置の撮像方向毎に判定基準データが準備される。ただし、例えば片側一車線標準十字路のように対称性を有する種別の交差点においては、互いに対称な位置にある2以上の撮像方向に関し同じ判定基準データが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1…交差点監視システム、5…交差点、6…信号機、7…信号機、8…信号制御装置、11…撮像装置、12…端末装置、13…サーバ装置、14…端末装置、20…コンピュータ、30…コンピュータ、131…受信手段、132…記憶手段、133…軌跡取得手段、134…基準生成手段、135…判定結果取得手段、136…判定手段、137…送信手段、201…メモリ、202…プロセッサ、203…入出力IF、204…通信IF、301…メモリ、302…プロセッサ、303…通信IF、1201…動画像取得手段、1202…軌跡生成手段、1203…現示状態取得手段、1204…タイミング特定手段、1205…記憶手段、1206…送信手段、1207…受信手段、1208…種別取得手段、1209…撮像アングル取得手段、1210…判定基準取得手段、1211…判定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14