特許第6573776号(P6573776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573776
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】外装構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 1/18 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   E04D1/18 F
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-86615(P2015-86615)
(22)【出願日】2015年4月21日
(65)【公開番号】特開2016-204943(P2016-204943A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0008812(KR,A)
【文献】 実開昭52−110710(JP,U)
【文献】 特開平02−128049(JP,A)
【文献】 特表2006−516692(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01249552(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/18
E04F 13/12
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面板部の周縁を表面側或いは裏面側に折曲して係合部、被係合部をそれぞれ成形した菱形外装材を、下地に固定した保持材により取付保持し、隣接する菱形外装材同士が相互に係合して敷設される外装構造であって、
前記菱形外装材は、少なくとも水上側に位置して隣接する二辺に、表面側に折曲して被係合部が設けられ、水下側に位置して隣接する二辺に、裏面側に折曲して係合部が設けられ、
前記菱形外装材の水上側頂部に設けられる被係合部には、折返し端縁が切除された平面視段差状の係止受部が設けられ、前記折返し端縁が交差する中央又は水上側頂部の先端には位置決め部が設けられ、
前記保持材は、下地への固定部と、前記係止受部に係合する係止部とを備え、該係止部の中央又は前記固定部の水上側端縁の中央には合わせ部が設けられ、
前記菱形外装材の位置決め部と前記保持材の合わせ部とを重ねるか、或いは合わせ部から水流れ方向に平行な直線上に前記位置決め部を位置させるように位置調整して下地に取り付けられることを特徴とする外装構造。
【請求項2】
軒端に平面視三角形状の軒端用外装材を配設し、該軒端用外装材は、水上側に位置して隣接する二辺に、表面側に折曲して被係合部が設けられ、該被係合部の水上側頂部には、折返し端縁が切除された平面視段差状の係止受部が設けられ、前記折返し端縁が交差する中央又は水上側頂部の先端には位置決め部が設けられ、前記軒端用外装材の位置決め部と前記保持材の合わせ部とを重ねるか、或いは合わせ部から水流れ方向に平行な直線上に前記位置決め部を位置させるように位置調整して前記軒端用外装材は下地に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の外装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菱葺き外装材等の外装材の敷設に際し、外装材同士の係合状態を均一に且つ確実に行うことができる外装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に平葺きは、比較的小単位の外装材を重ねて葺いていく工法であり、通常の板金工具で施工でき、極めて多種の屋根に広く適用され、例えば神社・仏閣や住宅など木造建築の屋根を中心に広く適用されている。この平葺きに属する菱葺きは、外装材が菱形を呈するという意匠性に加え、裏面側に生成される結露の殆どを水下側の屋根材の表面側へ排出、流下させることができるため、下地材への水分の影響も少ないという構造的利点をも有している。
【0003】
このような菱葺きに関する構造としては、例えば特許文献1,2に記載の構造が知られていた。
特許文献1には、一つの屋根材(金属製の面材11)の水上側の斜辺(係合受部12,12A)を複数の吊子(18)で固定する構造が記載されている。なお、吊子18は、面材11の水上側の斜辺に係合させているものと認められる。
特許文献2には、屋根材(平葺建築用板A)の水上側先端の頂部を吊子(D)で固定する構造が記載されている。なお、吊子Dは、平葺建築用板Aを配した状態で折り込むように係合させているものと認められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−11219号公報
【特許文献2】特開平2−128049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の構造では、面材11の水上側の斜辺に吊子18を係合させた上から、その水上側に隣接する面材11を係合させているため、吊子18が存在する部分と存在しない部分とでは係合深さが異なっている。
また、前記特許文献2の構造でも、特にその第14図及び第20図に水上側の平葺建築用板Aの下側折返し縁3が、上側折返し縁2に吊子Dを挟んだ状態で係合していることが示され、吊子Dが存在する部分と存在しない部分とでは係合深さが異なっている。
このように外装材の係合深さが不均一であると、当然のことながら係合の浅い箇所ではズレ等が生じ易く、風雨の影響も受けやすいものであった。
【0006】
そこで、本発明は、菱葺き外装材等の外装材の敷設に際し、外装材同士の係合状態を均一に且つ確実に行うことができる外装構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、面板部の周縁を表面側或いは裏面側に折曲して係合部、被係合部をそれぞれ成形した菱形外装材を、下地に固定した保持材により取付保持し、隣接する菱形外装材同士が相互に係合して敷設される外装構造であって、
前記菱形外装材は、少なくとも水上側に位置して隣接する二辺に、表面側に折曲して被係合部が設けられ、水下側に位置して隣接する二辺に、裏面側に折曲して係合部が設けられ、前記菱形外装材の水上側頂部に設けられる被係合部には、折返し端縁が切除された平面視段差状の係止受部が設けられ、前記折返し端縁が交差する中央又は水上側頂部の先端には位置決め部が設けられ、前記保持材は、下地への固定部と、前記係止受部に係合する係止部とを備え、該係止部の中央又は前記固定部の水上側端縁の中央には合わせ部が設けられ、前記菱形外装材の位置決め部と前記保持材の合わせ部とを重ねるか、或いは合わせ部から水流れ方向に平行な直線上に前記位置決め部を位置させるように位置調整して下地に取り付けられることを特徴とする外装構造を提案するものである。
【0009】
また、本発明は、前記外装構造において、軒端に平面視三角形状の軒端用外装材を配設し、該軒端用外装材は、水上側に位置して隣接する二辺に、表面側に折曲して被係合部が設けられ、該被係合部の水上側頂部には、折返し端縁が切除された平面視段差状の係止受部が設けられ、前記折返し端縁が交差する中央又は水上側頂部の先端には位置決め部が設けられ、前記軒端用外装材の位置決め部と前記保持材の合わせ部とを重ねるか、或いは合わせ部から水流れ方向に平行な直線上に前記位置決め部を位置させるように位置調整して前記軒端用外装材は下地に取り付けられることを特徴とする外装構造をも提案する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の外装構造は、外装材の水上側頂部に設けた平面視段差状の係止受部に保持材の係止部を係合する構成であるため、係止部の先端が被係合部の折返し端縁から水下側へ突出することがなく、隣接する外装材を係合させる際にその係合深さが不均一となることがなく、外装材同士の係合状態を均一に且つ確実に行うことができる。また、外装材に設けた位置決め部と、保持材に設けた合わせ部を重ねるように位置調整するので、保持材と外装材とが正確に位置決めされて配置される。そのため、これらの構成の相乗効果で高い精度で施工することができる。しかも、外装材の水上側頂部を保持材で係合保持するので、使用する保持材も少なくてよく、一枚の外装材を一つの保持材にて取付保持することができるものとなる。したがって、優れた意匠性を有し、且つ構造的利点を備える(菱葺き)外装構造を容易に且つ高い精度で施工することができる。
【0012】
また、軒端に前記外装材と同様の係止受部を備える軒端用外装材を配設した場合、当該軒端用外装材と隣接する外装材との係合状態を均一に且つ確実に行うことができる。そして、この軒端用外装材から順に水上側へ外装材を敷設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)本発明の第1実施例における外装材及び保持材を、支持部材を取り付けた下地に敷設する外装構造において、部材の配設以前の状態を示す斜視図、(b)その配設後の状態を示す斜視図、(c)第1実施例における外装材及び保持材を、平坦状の下地に敷設する外装構造において、部材を配設以前の状態を示す斜視図、(d)その配設後の状態を示す斜視図である。
図2】(a)第1実施例における外装材及び保持材を組み付けた状態を示す外装構造を示す斜視図、(b)用いた外装材の斜視図、(c)その下地構造を示す断面図である。
図3】(a)本発明の第2実施例における外装材及び保持材を、平坦状の下地に敷設する外装構造において、部材の配設以前の状態を示す斜視図、(b)その配設後の状態を示す斜視図、(c)被係合部の水上側斜辺に係止受部を設け、該係止受部に保持材を取り付けた態様を示す斜視図である。
図4】(a)本発明の第3実施例における外装材及び軒端用外装材との組み付け状態を示す平面図、(b)その水上側頂部の保持状態を示す拡大平面図、(c)用いた外装材を示す平面図、(d)その正面図、(e)その側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の外装構造は、面板部(a-1)の周縁を表面側或いは裏面側に折曲して係合部(a-3)、被係合部(a-2)をそれぞれ成形した外装材(A)を、下地(B)に固定した保持材(C)により取付保持し、隣接する外装材同士が相互に係合して敷設される構成である。
前記外装材(A)は、少なくとも水上側に位置して隣接する二辺に、表面側に折曲して被係合部(a-2)が設けられ、水下側に位置して隣接する二辺に、裏面側に折曲して係合部(a-3)が設けられる構成である。
そして、前記外装材(A)の水上側頂部に設けられる被係合部(a-2)には、折返し端縁が切除された平面視段差状の係止受部(a-4)設けられ前記折返し端縁が交差する中央又は水上側頂部の先端には位置決め部が設けられ、
前記保持材(C)は、下地(B)への固定部(c-2)と、該係止受部(a-4)に係合する係止部(c-1)とを備え、該係止部(c-1)の中央又は前記固定部(c-2)の水上側端縁の中央には合わせ部が設けられ、
前記外装材の位置決め部と前記保持材の合わせ部とを重ねるように位置調整して下地(B)に取り付けられる構成である。
なお、以下、外装材(A)、下地(B)、保持材(C)の順で詳細に説明する。
【0015】
前述のように外装材(A)は、隣接する外装材同士が相互に係合するものであり、面板部(a-1)と、被係合部(a-2)と、係合部(a-3)と、係止受部(a-4)とを有する。この外装材としては、図示実施例のように菱形外装材でもよいし、それ以外の矩形状(菱形以外の平行四辺形等)でもよく、水上側頂部が形成される六角形等の多角形状でもよい。
矩形状の外装材(A)を例にすると、敷設状態の面板部(a-1)の水上側頂部を挟んだ二辺を表面側に折り返して被係合部(a-2)とし、他の二片を裏面側に折り返して係合部(a-3)とする。
【0016】
面板部(a-1)は、この外装材(A)が図示実施例のように菱形外装材の場合には菱形に成形され、それ以外の矩形状の場合や六角形等の多角形状に形成される外装材の場合にもそれに応じた形状に成形される。
【0017】
被係合部(a-2)は、前述のように少なくとも水上側に位置して隣接する二辺に形成されるものであって、面板部の水上側端縁を表面側に折曲した構成であり、後述する図示実施例(第1実施例)のようにプレス加工等により折返し基端を連続状に形成したものでも、被係合部の端縁同士が突き合わせ状、被係合部の端部が重合状でもよい。なお、重合状とは、被係合部を順次折り曲げ加工等により重なって折り曲げられた状態を指す。この被係合部(a-2)には、係止受部(a-4)が設けられる。
【0018】
係合部(a-3)は、前述のように少なくとも水下側に位置して隣接する二辺に形成されるものであって、面板部の水下側端縁を裏面側に折曲した構成である。隣接する外装材同士が相互に係合するので、前記被係合部(a-2)と係合するものである。
【0019】
係止受部(a-4)は、前述のように前記被係合部(a-2)に設けられるものであって、折返し端縁が切除された平面視段差状である。この係止受部(a-4)は、水上側頂部における被係合部(a-2)に設けても良いし、水上側斜辺における被係合部(a-2)に設けても良い。この係止受部(a-4)には、保持材(C)の係止部(c-1)が係合するので、この係止受部(a-4)の段差は、保持材(C)の係止部(c-1)の板厚以上であればよく、この段差により、係止部(c-1)の先端が「出っ張る」ことがなく、係合深さを均一に保持することができる。
【0020】
前述のように下地(B)は、前記保持材(C)を固定する取付対象(面)を指し、前記外装材(A)が配設される屋根下地又は壁面下地を指す。この下地(B)は、後述する図示実施例(第1実施例等)では流れ方向又はそれと直交する方向に連続する支持部材(垂木)を用い、該支持部材間に野地材等の断熱材を配した構造としたが、特にこの構成を限定するものではなく、野地材(のみ)を下地としてもよい。
【0021】
なお、支持部材を実質的に下地(B)として配設する場合には、使用する外装材に応じて支持部材の配設方向を適宜に設定してもよい。例えば連続状の支持部材(B)上に保持材(C)を固定して外装材(A)を取り付ける場合を想定すると、後述する第1実施例のように水上側頂部が鈍角となる外装材(A)では、支持部材(B)は水流れ方向に連続するように配設し、図示しないが水上側頂部が鋭角となる外装材(A)では、支持部材(B)は水流れ方向に直交する方向に連続するように配設することが好ましい。
【0022】
前述のように保持材(C)は、前記下地(B)に前記外装材(A)を取付保持するために用いる場合に用いる部材である。
この保持材(C)は、前述のように前記外装材(A)の係止受部(a-4)に係合する係止部(c-1)を備え、下地(B)への固定部(c-2)を有する構成である。また、前記係止部(c-1)に近接して裏面側を目視可能な開口部を設けてもよい。
【0023】
そして、本発明の外装構造は、前記外装材(A)に設けた平面視段差状の係止受部(a-4)に前記保持材(C)の係止部(c-1)を係合する構成であるため、保持材(C)を取り付けた(係合させた)状態で保持材(C)の係止部(c-1)が被係合部(a-2)の折返し端縁から突出することがない。そのため、菱葺き外装材等の外装材(A)の敷設に際し、外装材(A)同士の係合状態を均一な係合深さに且つ確実に行うことができる。
【実施例1】
【0024】
本発明の外装構造に用いる外装材1は、図1及び図2に示す第1実施例に示すように面板部11の周縁を表面側或いは裏面側に折曲して係合部13、被係合部12をそれぞれ成形してなり、隣接する外装材1,1同士が相互に係合するように敷設するものである。そして、少なくとも水上側に位置して隣接する二辺112,112には、表面側に折曲して被係合部12が設けられる。また、前記外装材1の被係合部12には、折返し端縁が(部分的に)切除された平面視段差状の係止受部14が設けられる。
前記外装材1を取付保持する保持材2には、前記係止受部14に係合される係止部22が設けられる。
【0025】
この第1実施例の外装材1は、図2(b)に示すように水上側頂部111が鈍角となるように取り付けられている菱形外装材であって、言い換えればこの外装材1の面板部11は、水上側頂部111(及び対向する水下側角部114)が鈍角である横長の菱型形である。
前記被係合部12は、水上側(図面では上側)に位置して略一定幅に表面側に折曲された略逆V字状であり、隣接する二辺112,112に跨がって連続状に形成され、水上側頂部111には、折返し片が一部切除された平面視段差状の係止受部14が設けられている。また、この折返し片が交差する中央部分を位置決め部15とした。なお、図中、115,116は側方角部を指す。
前記係合部13は、水下側(図面では下側)に位置して略一定幅に裏面側に折曲された略V字状であり、同図には詳細には示していないが、前記被係合部12と同様に隣接する二辺113,113に跨がって連続状に形成されている。
【0026】
また、この第1実施例の下地は、図1(a),(b)では、水流れ方向に連続する支持部材であって、この支持部材3の配設間隔には断熱材4が配設されて図2(c)に示される下地構造を形成している。前記支持部材3(下地)は、上面を形成する頂面部31と、側面を形成する縦面部32,32と、該縦面部32,32の下端を外側へ折り曲げて形成した固定部33,33とからなる断面略ハット状であり、前記頂面部31に前記外装材1の水上側頂部111を取付保持する保持材2が固定される。また、前記頂面部31には、それぞれ切り起こしにて水下側縦片312と、水上側縦片313とが設けられている。
一方、図1(c),(d)における下地は、略平坦状の下地材3Bを敷設した構造であり、保持材2をビス3xにて固定している。
【0027】
この外装材1を取付保持する保持材2は、図1(a)に示すように前記支持部材3の頂面部31に固定される固定部21(211は固定具用の孔)と、前記外装材1の係止受部14に係合する係止部22と、を有し、該係止部22の略中央には、前記外装材1の位置決め部15と平面視略重ね状に位置調整を行うための合わせ部23が設けられている。
また、前記固定部21には、前記固定具用の孔211の水下側に、支持部材3の水下側縦片312の挿通可能なスリット213が設けられ、この固定部21の水上側端縁には、前記支持部材3の水上側縦片313を係止可能な溝214と、が設けられ、該溝214の略中央にはV字状の切り込みを形成して合わせ部212が設けられている。
【0028】
そして、図1(a),(b)では、下地としての支持部材3に外装材1を取り付ける。一方、図1(c),(d)では、下地としての下地材3Bに外装材1を取り付ける。
この第1実施例では、前述のように保持材2を用いて外装材1を取り付ける構成であるから、保持材2を固定すると共に外装材1の水上側頂部111を保持させて取り付ける。
なお、図1(a),(b)では、保持材2のスリット213に支持部材3の水下側縦片312を挿通させ、溝212に水上側縦片313を係止させ、その後、縦片312,313を倒し込むことにより、支持部材3に保持材2を取り付けることができ、適正位置に保持材2を取り付けることができる。一方、図1(c),(d)では、下地材3Bに保持材2を固定するには、孔211に固定具2xを打ち込んで固定するが、下地3Bに対し、合わせ部23,212を結ぶ直線が流れ方向に平行になるように配設することにより、適正な向きに保持材2を取り付けることができる。
このように保持材2を下地3,3Bに固定する際には、外装材1の位置決め部15と保持材2の合わせ部23とが平面視略重ね状になるように位置調整を行うことにより、容易に且つ適正位置に外装材1を取り付けることができる。
【0029】
このように施工される第1実施例の外装構造は、外装材1に設けた平面視段差状の係止受部14に保持材2の係止部22を係合する構成であるため、係止部22の先端が被係合部12の折返し端縁から水下側へ突出することがなく、隣接する外装材1を係合させる際にその係合深さが不均一となることがなく、外装材1,1同士の係合状態を均一に且つ確実に行うことができる。したがって、優れた意匠性を有し、且つ構造的利点を備える(菱葺き)外装構造を容易に且つ高い精度で施工することができる。
【0030】
図3(a),(b)に示す第2実施例では、同じ保持材2を用い、外装材1Bは、前記第1実施例と同様の菱形外装材であるが、係止受部14が設けられる中央部分16は円弧状に切除され、折返し片が短く形成され、その中央に水下側へ突出する位置決め部15bが形成されている点が相違するだけで、その他の構成は前記第1実施例における外装材1と同様であるから図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
この第2実施例では、前記第1実施例における図1(c),(d)の態様と同様に施工することができ、外装材1Bの位置決め部15bと保持材2の合わせ部23とを重ねるように位置調整すればよい。
【0032】
この第2実施例の外装構造でも、外装材1Bに設けた平面視段差状の係止受部14に保持材2の係止部22を係合する構成であるため、係止部22の先端が被係合部12の折返し端縁から水下側へ突出することがなく、隣接する外装材1Bを係合させる際にその係合深さが不均一となることがなく、外装材1B,1B同士の係合状態を均一に且つ確実に行うことができる。
【0033】
図3(c)に示す外装構造は、被係合部12の水上側斜辺の一辺112に係止受部14"を設けた態様であって、当該部分に取り付ける保持材2Cは、下地材3Bへの固定部21cと前記係止受部14"に係合する係止部22cを有する構成である。
この態様でも、係止部22"の先端が被係合部12の折返し端縁から水下側へ突出することがなく、隣接する外装材1を係合させる際にその係合深さが不均一となることがなく、外装材1",1同士の係合状態を均一に且つ確実に行うことができる。
但し、他の実施例のように係止受部14が外装材1の水上側頂部に設けられ、該係止受部14を保持材2で係合保持するので、一枚の外装材1を一つの保持材2にて取付保持できるが、この態様では、二箇所以上に係止受部14"(図示以外の箇所に少なくとも一箇所)を設けてそれぞれを保持材2Cにて取付保持することが好ましい。
【0034】
図4(a)は、第3実施例の外装材1Cと、軒端に配設される平面視三角形状の軒端用外装材6との組み付け状態を示し、前記第1実施例における保持材2を用いて取り付けた構造である。
この第3実施例における外装材1Cは、図4(c)に示すように中央部分16が円弧状に切除され、折返し片が短く形成されている構成は、前記第2実施例における外装材1Bと同様であるが、その中央に水下側へ突出する位置決め部15bが形成されていない点が相違する構成であり、その他の構成は前記第1実施例における外装材1と同様であるから図面に同一符号を付して説明を省略する。
また、軒端用外装材6は、軒端に配設される平面視三角形状であって、略三角形状の面板部61の水上側に位置して隣接する二辺には、前記菱形外装材である外装材1と同様に被係合部62が設けられ、隣接する外装材1の係合部13が係合する点でも同様である。また、この軒端用外装材6にも、前記外装材1と同様に被係合部62に折返し端縁が切除された平面視段差状の係止受部64が形成され、該係止受部64に保持材2の係止部22が係合している。
【0035】
この第3実施例の外装構造でも、外装材1Cに設けた平面視段差状の係止受部14に保持材2の係止部22を係合する構成であるため、係止部22の先端が被係合部12の折返し端縁から水下側へ突出することがなく、隣接する外装材1Cを係合させる際にその係合深さが不均一となることがなく、外装材1C,1C同士の係合状態を均一に且つ確実に行うことができる。
なお、この第3実施例では、外装材1Cに位置決め部を設けていないが、水上側頂部111の先端を位置決め部として用いることができ、保持材2の合わせ部23から水流れ方向に平行な直線状にこの位置決め部が位置するように位置調整すればよい。
【符号の説明】
【0036】
1,1B,1C 外装材
11 面板部
111 水上側頂部
112 (水上側)辺
113 (水下側)辺
114 水下側角部
115,116 側端角部
12 被係合部
13 係合部
14 係止受部
15,15b 位置決め部
16 切除部分
2,2C 保持材
21 固定部
211 孔
212 合わせ部(切り込み)
22 係止部
3 下地(支持部材)
31 頂面部
32 縦面部
33 固定部
4 断熱材
6 軒端用外装材
61 面板部
615,616 側端角部
62 被係合部
64 係止受部
図1
図2
図3
図4