【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る燃料タンクは、エンジンの燃料を収容するための燃料タンク本体と、前記燃料タンク本体の底面に設けられた弾性部材と、を備え、前記弾性部材は、下方に向かって突設するとともに地面と接地する接地面を有する少なくとも一つの凸部を含み、且つ、前記エンジンのクランク軸の軸方向(以下、前後方向という。)又は前記前後方向と交わる水平方向(以下、左右方向という。)の少なくとも一方について非対称な形状を有する。
【0008】
上記(1)に記載の燃料タンクによれば、弾性部材が前後方向又は左右方向の少なくとも一方について非対称な形状を有するため、エンジンが地面に設置された状態で運転している場合(エンジンのアイドル運転時)において、エンジンの振動にともなってエンジンが弾性部材を介して地面から受ける反力に、前後方向又は左右方向の少なくとも一方について方向性を持たせることができる。したがって、前後方向又は左右方向の少なくとも一方について、エンジンが振動時に移動しやすい方向と反対方向への反力が生じるように弾性部材を非対称に構成することにより、エンジンの振動に起因する移動を抑制することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の燃料タンクにおいて、前記前後方向のうち前記クランク軸の出力側を前方向と定義すると、前記凸部は、前記前後方向における前側に形成された前側側面と、前記前後方向における後側に形成された後側側面と、を含み、鉛直方向に対する前記前側側面の傾斜角は、鉛直方向に対する前記後側側面の傾斜角と異なる。
【0010】
上記(2)に記載の燃料タンクによれば、エンジンが地面に設置された状態で運転している場合において、エンジンの振動にともなってエンジンが弾性部材を介して地面から受ける反力に、前後方向の方向性を持たせることができる。したがって、前後方向のうちエンジンが振動時に移動しやすい方向と反対方向の反力を生じるように前側側面の傾斜角及び後側側面の傾斜角を設定することにより、エンジンの振動に起因する前後方向の移動を抑制することができる。なお、上記(2)に記載の燃料タンクおいて、鉛直方向に対する前側側面の傾斜角と鉛直方向に対する後側側面の傾斜角のうち一方は0度であってもよい。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の燃料タンクにおいて、鉛直方向に対する前記後側側面の傾斜角は、前記前側側面の鉛直方向に対する傾斜角よりも大きい。
【0012】
上記(3)に記載の燃料タンクによれば、エンジンが地面に設置された状態で運転している場合において、エンジンの振動にともなってエンジンが弾性部材を介して地面から受ける反力に、後側への方向性を持たせることができる。このため、エンジンが地面に設置された状態で運転している場合において、エンジンの振動に起因するエンジンの前方向への移動を抑制することができる。例えば、刈払機が地面に設置されている場合には、下側に凸形状である半円状の保護カバーがエンジンの振動に起因して地面から受ける反力が、エンジンの前側への移動の要因となる場合があり、かかる移動を抑制することができる。なお、上記(3)に記載の燃料タンクおいて、鉛直方向に対する前側側面の傾斜角は0度であってもよい。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)に記載の燃料タンクにおいて、前記左右方向のうち前記クランク軸の下端での回転接線方向を左方向と定義すると、前記凸部は、前記左右方向における左側に形成された左側側面と、前記左右方向における右側に形成された右側側面と、を含み、鉛直方向に対する前記左側側面の傾斜角は、鉛直方向に対する前記右側側面の傾斜角と異なる。
【0014】
上記(4)に記載の燃料タンクによれば、エンジンが地面に設置された状態で運転している場合において、エンジンの振動にともなってエンジンが弾性部材を介して地面から受ける反力に、左右方向の方向性を持たせることができる。したがって、左右方向のうちエンジンが移動しやすい方向と反対方向の反力を生じるように左側側面の傾斜角及び右側側面の傾斜角を設定することにより、エンジンの振動に起因する左右方向の移動を抑制することができる。なお、上記(4)に記載の燃料タンクおいて、鉛直方向に対する左側側面の傾斜角と、鉛直方向に対する右側側面の傾斜角のうち一方は0度であってもよい。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の燃料タンクにおいて、鉛直方向に対する前記左側側面の傾斜角は、鉛直方向に対する前記右側側面の傾斜角よりも大きい。
【0016】
上記(5)に記載の燃料タンクによれば、エンジンが地面に設置された状態で運転している場合において、エンジンの振動にともなってエンジンが弾性部材を介して地面から受ける反力に、左側への方向性を持たせることができる。このため、エンジンが地面に設置された状態で運転している場合において、エンジンの振動に起因するエンジンの右方向への移動を抑制することができる。なお、上記(5)に記載の燃料タンクおいて、鉛直方向に対する右側側面の傾斜角は0度であってもよい。
【0017】
例えば、上記エンジンにおいては、ピストンが上死点から下降を始めた時にシリンダー内での爆発力がピストンに作用するため、ピストンの下降時にコネクティングロッドを介してクランク軸に作用する力の方がピストンの上昇時にコネクティングロッドを介してクランク軸に作用する力よりも大きい。このため、エンジンが地面に設置された状態で運転している場合において、エンジンには、シリンダー内での爆発力に起因して、クランク軸の下端での回転接線方向(左方向)とは反対方向(右方向)へ移動するような力が作用する。この点、上述のように、左側側面の傾斜角を右側側面の傾斜角よりも大きくすることより、シリンダー内での爆発力に起因するエンジンの右方向への移動を抑制することができる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れか1項に記載の燃料タンクにおいて、前記凸部の前記接地面は、前記前後方向又は前記左右方向の少なくとも一方に傾斜している。
【0019】
上記(6)に記載の燃料タンクによれば、凸部の接地面が前後方向又は左右方向の少なくとも一方に傾斜しているため、エンジンが地面に設置された状態で運転している場合において、エンジンの振動にともなってエンジンが弾性部材を介して地面から受ける反力に、前後方向又は左右方向の少なくとも一方について方向性を持たせることができる。したがって、前後方向又は左右方向の少なくとも一方について、エンジンが振動時に移動しやすい方向と反対方向への反力が生じるように接地面の傾斜方向を設定することにより、エンジンの振動に起因する移動を抑制することができる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載の燃料タンクにおいて、前記前後方向のうち前記クランク軸の出力側を前方向と定義すると、前記凸部の前記接地面は、前記前方向へ向かうにつれて下方に位置するよう傾斜している。
【0021】
上記(7)に記載の燃料タンクによれば、エンジンが地面に設置された状態で運転している場合において、エンジンの振動にともなってエンジンが弾性部材を介して地面から受ける反力に、後側への方向性を持たせることができる。このため、エンジンが地面に設置された状態で運転している場合において、エンジンの振動に起因するエンジンの前方向への移動を抑制することができる。例えば、刈払機が地面に設置されている場合には、下側に凸形状である半円状の保護カバーがエンジンの振動に起因して地面から受ける反力が、エンジンの前側への移動の要因となる場合があり、かかる移動を抑制することができる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)又は(7)に記載の燃料タンクにおいて、前記左右方向のうち前記クランク軸の下端での回転接線方向を左方向と定義すると、前記凸部の前記接地面は、前記右方向へ向かうにつれて下方に位置するよう傾斜している。
【0023】
上記(8)に記載の燃料タンクによれば、エンジンが地面に設置された状態で運転している場合において、エンジンの振動にともなってエンジンが弾性部材を介して地面から受ける反力に、左側への方向性を持たせることができる。このため、エンジンが地面に設置された状態で運転している場合において、エンジンの振動に起因するエンジンの右方向への移動を抑制することができる。例えば、上述したようなシリンダー内での爆発力に起因するエンジンの右方向への移動を抑制することができる。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れか1項に記載の燃料タンクにおいて、前記少なくとも一つの凸部は、前記前後方向に沿ってそれぞれ延在する複数の凸部からなる第1凸部群と、前記左右方向に沿ってそれぞれ延在する複数の凸部からなる第2凸部群と、前記前後方向に沿ってそれぞれ延在する複数の凸部からなる第3凸部群と、を含み、前記第2凸部群は、前記前後方向において前記第1凸部群と前記第3凸部群の間に配置されている。
【0025】
上記(9)に記載の燃料タンクによれば、弾性部材が前後方向及び左右方向に対して良好なグリップ力を発揮することができるため、エンジンが地面に設置された状態で運転している場合において、エンジンの振動に起因するエンジンの前後方向及び左右方向への移動を抑制することができる。
【0026】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載の燃料タンクにおいて、前記前後方向のうち前記クランク軸の出力側を前方向と定義すると、前記第1凸部群〜第3凸部群の各凸部は、前記前後方向における前側に形成された前側側面と、前記前後方向における後側に形成された後側側面と、を含み、前記第1凸部群〜第3凸部群の各凸部において、鉛直方向に対する前記後側側面の傾斜角は鉛直方向に対する前側側面の傾斜角よりも大きい。
【0027】
(10)に記載の燃料タンクによれば、上記(9)に記載の第1〜第3凸部群のグリップ力によるエンジンの移動抑制の効果と、第1〜第3凸部群の各凸部の後側側面の傾斜角を大きくしたことによるエンジンの前方向への移動抑制の効果が重畳して、エンジン自体の振動に起因するエンジンの移動を効果的に抑制することができる。なお、上記(10)に記載の燃料タンクでは、第1凸部群〜第3凸部群の各凸部において、鉛直方向に対する前側側面の傾斜角は0度であってもよい。
【0028】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)又は(10)に記載の燃料タンクにおいて、前記前後方向のうち前記クランク軸の出力側を前方向と定義すると、前記第3凸部群は、前記第1凸部群よりも後側に配置されており、前記第1凸部群〜第3凸部群の各凸部は、前記前後方向における前側に形成された前側側面と、前記前後方向における後側に形成された後側側面と、を含み、前記第3凸部群の各凸部における前記後側側面の鉛直方向に対する傾斜角は、前記第1凸部群の各凸部における前記後側側面の鉛直方向に対する傾斜角よりも大きい。
【0029】
エンジンの振動に起因するエンジンの前方向への移動を抑制するために各凸部の後側側面の傾斜角を大きくすると、弾性部材の前後方向の大きさに対して確保できる接地面積が小さくなりやすい。この点、上記のように第3凸部群の各凸部における後側側面の傾斜角を第1凸部群の各凸部における後側側面の傾斜角より大きくすることにより、接地面積の減少を抑制しつつ、エンジンの振動に起因するエンジンの前方向への移動を効果的に抑制することができる。
【0030】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(11)の何れか1項に記載の燃料タンクにおいて、前記弾性部材は、前記燃料タンク本体の底面側に第1穴と第2穴とを含み、前記燃料タンク本体の前記底面には、前記第1穴の内周面に当接する外周面を有する第1突起、及び前記第2穴の内周面に当接する外周面を有する第2突起が形成されており、前記第1穴と前記第2穴とは、前記前後方向又は前記左右方向の少なくとも一方について非対称に配置されている。
【0031】
燃料タンクの製造時において、前後方向又は左右方向の少なくとも一方について非対称な形状を有する弾性部材を燃料タンク本体の底面に設ける際に、弾性部材の向きを間違えて設けてしまった場合、振動に起因する燃料タンクの移動を助長してしまうことになる。この点、上記(12)に記載のように、第1穴と第2穴とを、前後方向又は左右方向の少なくとも一方について非対称に配置することにより、弾性部材を燃料タンク本体の底面に適切な向きに設けるとともに、弾性部材と燃料タンク本体とを強固に固定することが可能となる。
【0032】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(12)の何れか1項に記載の燃料タンクにおいて、前記少なくとも一つの弾性部材は、互いに異なる弾性率を有する二つの弾性部材を含む。
【0033】
上記(13)に記載の燃料タンクによれば、エンジンが振動時に移動しやすい方向と反対方向への反力(エンジンが二つの弾性部材を介して地面から受ける反力(弾性力)の合力)が生じるように各弾性部材の弾性率を異ならせることにより、エンジンの振動に起因する移動を抑制する効果を高めることができる。
【0034】
(14)本発明の少なくとも一実施形態に係る燃料タンクは、エンジンの燃料を収容するための燃料タンク本体と、前記燃料タンク本体の底面に設けられ、地面と設置する接地面をそれぞれ有する少なくとも二つの弾性部材と、を備え、前記少なくとも二つの弾性部材は、互いに異なる弾性率を有する二つの弾性部材を含む。
【0035】
上記(14)に記載の燃料タンクによれば、エンジンが振動時に移動しやすい方向と反対方向への反力(エンジンが二つの弾性部材を介して地面から受ける反力(弾性力)の合力)が生じるように各弾性部材の弾性率を異ならせることにより、エンジンの振動に起因する移動を抑制することができる。
【0036】
(15)本発明の少なくとも一実施形態に係るエンジンは、シリンダーと、前記シリンダーとともに燃焼室を形成するピストンと、前記ピストンの往復運動を回転運動に変換するためのクランク軸と、上記(1)乃至(14)の何れか1項に記載の燃料タンクと、を備える。
【0037】
上記(15)に記載のエンジンによれば、上記(1)乃至(14)の何れか1項に記載の燃料タンクを備えているため、エンジン自体の振動に起因する前後方向又は左右方向の少なくとも一方へのエンジンの移動を抑制することができる。
【0038】
(16)本発明の少なくとも一実施形態に係る刈払機は、操作竿と、前記操作竿の一端側に設けられた回転可能な刈刃と、前記刈刃の一部を覆うように設けられた保護カバーと、前記操作竿の他端側に設けられた上記(15)に記載のエンジンと、を備える。
【0039】
上記(16)に記載の刈払機によれば、上記(15)に記載のエンジンを備えているため、エンジン自体の振動に起因する前後方向又は左右方向の少なくとも一方への刈払機の移動を抑制することができる。