特許第6573825号(P6573825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573825
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   B41J2/14 303
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-232245(P2015-232245)
(22)【出願日】2015年11月27日
(65)【公開番号】特開2017-94682(P2017-94682A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】中山 仁
【審査官】 長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−216860(JP,A)
【文献】 特開2012−101437(JP,A)
【文献】 特開2015−071259(JP,A)
【文献】 特開2002−144566(JP,A)
【文献】 特開2002−160365(JP,A)
【文献】 米国特許第6254819(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する溝を分離する隔壁と、
前記隔壁の下部を固定する下基板と、
前記隔壁の上端面に設置される上基板と、
を備え、
前記隔壁は前記上端面より下方の表面に電極層を有し、
前記電極層は前記上端面に対して略直交する外側面を有し、
前記外側面は外側に凸の第一凸曲面を介して前記上端面に連続する
液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記電極層は前記外側面から前記上端面に向けて膜厚が次第に薄くなる
請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記隔壁は、前記上端面に対して略直交する内側面と、前記内側面と前記上端面とを繋ぎ外側に凸の第二凸曲面とを有する
請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第一凸曲面は、複数の前記溝が配列する配列方向の幅が0.4μm〜15μmの範囲であり、前記配列方向に直交する上下方向の幅が0.4μm〜10μmの範囲である
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、
前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、
を備える液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体に液滴を噴射して記録する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出して文字や図形を記録する、或いは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜を形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料などの液体を液体タンクから供給管を介して液体噴射ヘッドのチャンネルに供給し、チャンネルの液体に圧力を印加してチャンネルに連通するノズルから液滴として吐出する。液滴の吐出の際には、液体噴射ヘッドや被記録媒体を移動させて文字や図形を記録する、或いは所定形状の機能性薄膜や三次元構造を形成する。
【0003】
例えば特許文献1には、この種の液体噴射ヘッドの製造方法が記載される。第一の製造方法では、まず、圧電体基板の表面に複数の溝からなるインク流路を形成する。次に、蒸着法又はメッキ法により溝の内面及び溝と溝の間の隔壁の上端面に電極を形成する。次に、溝の内面および隔壁の上端面の全面にフォトレジスト膜を塗布する。次に、露光現像により隔壁の上端面のフォトレジスト膜を除去する。フォトレジスト膜の除去の際には隔壁の上端面の外周部にフォトレジスト膜を残す。次に、電極をエッチングし隔壁の上端面に露出する電極を除去する。そして、隔壁の上端面にガラス蓋を設置し、溝が開口する圧電体基板の側面にノズル板を設置して液体噴射ヘッドが完成する。
【0004】
第二の製造方法では、まず、圧電体基板の表面にフォトレジスト膜を塗布する。次に、圧電体基板の表面に複数の溝からなるインク流路を形成する。次に、露光現像により隔壁の上端面のフォトレジスト膜を除去する。フォトレジスト膜の除去の際には隔壁の上端面の外周部にフォトレジスト膜を残す。次に、溝の内面及び隔壁の上端面に電極を形成する。次に、フォトレジスト膜を除去して、リフトオフ法によりフォトレジスト膜の上面に堆積した電極を除去する。次に、隔壁の上端面にガラス蓋を設置し、溝が開口する圧電体基板の側面にノズル板を設置して液体噴射ヘッドが完成する。
【0005】
特許文献2には、隔壁の側面に無電解メッキ法により電極を形成する液体噴射ヘッドの製造方法が記載される。まず、圧電体基板の上面にフォトレジスト膜を形成する。次に、圧電体基板の表面に複数の溝を形成する。溝と溝の間には隔壁が形成される。次に、無電解メッキの前処理としてセンシタイジング・アクチベーション処理を行う。まず、溝の内表面(隔壁の側面)及びフォトレジスト膜の表面にSnを吸着させる。次に、Snが吸着する圧電体基板を、硝酸銀を含む液に浸漬してSnをAgに置換する。次に、塩化パラジウムを含む溶液に圧電体基板を浸漬して、AgをPdに置換する。次に、圧電体基板の上面からフォトレジスト膜を除去する。次に、無電解メッキ法により触媒核としてのPdが吸着する基板表面に電極を形成する。圧電体基板の表面(隔壁の上端面)には触媒核が無いのでメッキ層が形成されず、溝の内表面(隔壁の側面)には触媒角が有るのでメッキ層が形成される。
【0006】
特許文献3には、液体噴射ヘッドの主要部の構造が記載される。液体噴射ヘッドの主要部は、絶縁基板と、絶縁基板の上部にインク圧力室を隔てて配置される圧電部材からなる隔壁と、インク圧力室に対向するノズル穴を有し、隔壁の上端面に接着剤を介して接着されるノズルプレートと、を備える。隔壁は、インク圧力室の側の側面とノズルプレートが接着される上端面との間の角部が凹形状に面取りされる。詳しくは、絶縁基板の表面と隔壁の側面は略直交し、隔壁の面取り部、即ち隔壁の側面と上端面とを繋ぐ角部を凹形状に面取りする。次に、隔壁の露出面の全面に電極を形成する。次に、隔壁の上端面の電極を除去する。次に、隔壁の上端面に接着剤を介してノズルプレートを接着する。このように、隔壁の側面と上端面の角部に凹部を形成して、上端面とノズルプレートの間からはみ出した接着剤を凹部に収容し、接着剤がノズル穴に流れ込むのを防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−244668号公報
【特許文献2】特開平10−244677号公報
【特許文献3】特開2012−35607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の第一の製造方法では、圧電体基板の溝の内面及び溝と溝の間の隔壁の上端面に電極を形成し、次にフォトレジスト膜を塗布する。即ち、隔壁が配列し凹凸差の大きな表面にフォトレジスト膜を塗布するのでフォトレジスト膜の膜厚が不均一となり、隔壁の上端面のフォトレジスト膜を高精度にパターニングすることができない。その結果、上端面の外周部に均一幅の電極パターンを形成できず、隔壁の側面まで電極が除去される等のパターン不良が発生しやすい。また、第二の製造方法では、隔壁の上端面に電極を形成し、リフトオフ法によりパターニングする。そのため、電極のエッジ部にバリが発生しやすく、組み立て工程でバリが剥離し製造歩留まりを低下させる原因となる。
【0009】
また、特許文献2に記載の方法では、隔壁の側面と上端面との角部に電極パターンを形成するので、製造工程中に角部の電極が欠けたり剥がれたりしやすく、製造歩留まりを低下させる原因となる。また、フォトレジスト膜が形成される圧電体基板の表面に触媒核を吸着させる。しかし、フォトレジスト膜は撥水性を有するので塩化パラジウム溶液を弾き、フォトレジスト膜の微細パターンを触媒核のパターンに転写することが難しい。加えて、フォトレジスト膜が付着した圧電体基板を塩化パラジウム溶液に浸漬するので、塩化パラジウム溶液の劣化が早く、溶液管理が難しい。
【0010】
特許文献3に記載される圧電体からなる隔壁は、ノズルプレート側の上端面とインク圧力室側の側面との角部が凹形状に面取りされる。隔壁の露出面の全面に電極を形成し、次に、隔壁の上端面の電極を研磨あるいはレーザー光照射などの手法により除去する。そのため、凹部上端には角張った電極が露出し、組み立て工程の途中で欠けて、製造歩留まりを低下させる原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の液体噴射ヘッドは、隣接する溝を分離する隔壁と、前記隔壁の下部を固定する下基板と、前記隔壁の上端面に設置される上基板と、を備え、前記隔壁は前記上端面より下方の表面に電極層を有し、前記電極層は前記上端面に対して略直交する外側面を有し、前記外側面は外側に凸の第一凸曲面を介して前記上端面に連続することとした。
【0012】
また、前記電極層は前記外側面から前記上端面に向けて膜厚が次第に薄くなることとした。
【0013】
また、前記隔壁は、前記上端面に対して略直交する内側面と、前記内側面と前記上端面とを繋ぎ外側に凸の第二凸曲面とを有することとした。
【0014】
また、前記第一凸曲面は、複数の前記溝が配列する配列方向の幅が0.4μm〜15μmの範囲であり、前記配列方向に直交する上下方向の幅が0.4μm〜10μmの範囲であることとした。
【0019】
本発明の液体噴射装置は、上記の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【発明の効果】
【0020】
本発明による液体噴射ヘッドは、隣接する溝を分離する隔壁と、隔壁の下部を固定する下基板と、隔壁の上端面に設置される上基板と、を備え、隔壁は上端面より下方の表面に電極層を有し、電極層は上端面に対して略直交する外側面を有し、外側面は外側に凸の第一凸曲面を介して上端面に連続する。これにより、電極層の端部が剥離し難く、剥離する電極ダストによって製造歩留まりが低下するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの断面模式図である。
図2】本発明の第一実施形態の変形例に係る液体噴射ヘッド1の領域Rの拡大図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造方法を表す工程図である。
図4】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造方法を説明するための断面模式図である。
図5】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造方法を説明するための断面模式図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造方法により製造する液体噴射ヘッドの模式的な分解斜視図である。
図7】本発明の第三実施形態に係る液体噴射装置の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第一実施形態)
図1は本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッド1の断面模式図である。図1(a)は液体噴射ヘッド1の部分断面模式図であり、図1(b)は角部Cを含む領域Rの拡大図である。なお、以下の説明において、上及び下(±z方向)は液体噴射ヘッド1が実際に使用されるときの重力方向とは無関係である。
【0023】
図1に示すように、液体噴射ヘッド1は、隣接する溝3を分離する隔壁2と、隔壁2の下部を固定する下基板4と、隔壁2の上端面USに設置される上基板5とを備える。隔壁2は上端面USより下方(−z方向)の表面に電極層6を有する。電極層6は上端面USに対して略直交する外側面OSを有する、外側面OSは外側に凸の第一凸曲面7aを介して上端面USに連続する。上端面USと外側面OSを繋ぐ外表面が外側に凸の第一凸曲面7aを成すので、電極層6の上端部が剥離し難く、剥離する電極ダストによって製造歩留まりが低下するのを防止できる。
【0024】
具体的に説明する。隔壁2はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)セラミックス材料等からなる圧電体材料を使用することができる。例えば、上方向と下方向(±z方向)に分極処理を施した2枚のPZTセラミックスを重ねて接着した圧電体材料を使用することができる。隔壁2は溝3を挟んでy方向に多数配列する。下基板4は隔壁2の下部を固定し、例えば隔壁2と同じ圧電体材料を使用することができる。上基板5は隔壁2の上端面USに接着剤により固定され、例えば隔壁2と同じ圧電体材料を使用することができる。溝3は2つの隔壁2と下基板4及び上基板5により囲まれ、吐出溝や非吐出溝を構成する。電極層6は、隔壁2の上端面USより下方であり下基板4に達する表面に設置される。隔壁2の上下方向の高さは300μm〜400μmであり、隔壁2の配列方向(y方向)の厚さ及び溝3の配列方向の幅は30μm〜100μmであり、隔壁2及び溝3の紙面手前方向(x方向)の幅は1mm〜5mmである。
【0025】
電極層6は、例えばメッキ法により形成することができる。隔壁2を挟む2つの電極層6に駆動電圧を印加することにより、隔壁2がくの字状に変形し、溝3に充填される液体に圧力波を生成する。この圧力波が溝3に連通する図示しないノズル孔に達し、液滴が吐出される。なお、上基板5又は下基板4に溝3と連通する液室を形成し、上基板5又は下基板4をカバープレートとすることができる。また、上基板5又は下基板4に溝3に連通するノズル孔を形成し、上基板5又は下基板4をノズルプレートとすることができる。また、一枚の圧電体基板から隔壁2と下基板4を構成することができる。即ち、一枚の圧電体基板の上部の表面に多数の溝3を形成し、溝3と溝3の間の圧電体基板を隔壁2とし、隔壁2より下部の圧電体基板を下基板4としてもよい。
【0026】
電極層6は、上端面USに対して略直交する外側面OSを有し、外側面OSは外側に凸の第一凸曲面7aを介して上端面USに連続する。上端面USと第一凸曲面7aは接続点P1において接続し第一凸曲面7aと外側面OSは接続点P2において接続する。なお、図1(b)は溝3の配列方向であるy方向と上下方向であるz方向により作られるyz平面における断面を表す。接続点P1、P2はyz平面に直交するx方向を考慮すればx方向に延在する線として考えることができ、これらの線はx方向の電極層6が形成される領域又はその近傍に位置する。第一凸曲面7aは、yz平面の断面において、接続点P1と接続点P2を結ぶ直線SL1よりも外側に位置する。第一凸曲面7aは、yz平面の断面において円弧形状である必要はなく凹凸があってもよいが、直線SL1よりも内側に位置する箇所が無く、角張った突起の無い曲面形状を有する。電極層6の外側面OSにおける厚さは、0.2μm〜5μmとするのが好ましい。電極層6が0.2μmよりも薄いと抵抗が高くなり、5μmよりも厚いと内部応力が大きくなって剥がれやすくなる。
【0027】
隔壁2は、上端面USに対して略直交する内側面ISと、内側面ISと上端面USとを繋ぎ外側に凸の第二凸曲面7bとを有する。上端面USと第二凸曲面7bは接続点P1において接続し第二凸曲面7bと内側面ISは接続点P3において接続する。接続点P1、接続点P3は、x方向を考慮すればx方向に延在する線として考えることができ、これらの線はyz平面に直交するx方向の隔壁2が形成される領域に位置する。第二凸曲面7bは、yz平面の断面において、接続点P1と接続点P3を結ぶ直線SL2よりも外側に位置する。第二凸曲面7bは、yz平面において円弧形状である必要はなく凹凸があってもよいが、直線SL2よりも内側に位置する箇所が無い。
【0028】
第一凸曲面7aのyz平面におけるy方向の幅、つまり接続点P1と接続点P2のy方向の間隔Myは0.4μm〜15μmの範囲とするのが好ましい。間隔Myが0.4μmよりも小さいと電極層6の厚さが薄くなって抵抗が高くなる。間隔Myを15μmよりも大きくしようとすると、電極層6の好ましい膜厚である5μmよりも10μm以上大きくする必要がある。しかし、第二凸曲面7bのyz平面におけるy方向の幅、つまり接続点P1と接続点P3のy方向の間隔Dyを10μmよりも大きく形成するのは、後に説明するエッチング法では難しく、研削法等の他の方法を用いなければならず、製造方法が複雑になる。従って第一凸曲面7aの間隔Myは15μmよりも小さく形成することが好ましい。第一凸曲面7aのyz平面におけるz方向(上下方向)の幅、つまり接続点P1と接続点P2のz方向の間隔Mzは0.4μm〜10μmの範囲とするのが好ましい。間隔Mzが0.4μmよりも小さいと電極層6が角張って作業途中で剥がれやすく、間隔Mzが10μmよりも大きいと形成方法が難しくなる。第一凸曲面7aの上記要件は電極層6が形成されるx方向の領域に亘って満たされる。
【0029】
第二凸曲面7bのyz平面におけるy方向の幅、つまり接続点P1と接続点P2のy方向の間隔Dyは、10μmを超えない大きさとするのが好ましい。間隔Dyを10μmよりも大きく形成しようとすると、すでに説明したように製造方法が複雑となる。同様の理由から、第二凸曲面7bのyz平面におけるz方向の幅、つまり接続点P1と接続点P3のz方向の間隔Dzは10μmを超えない大きさとするのが好ましい。間隔Dzを10μmよりも大きく形成しようとすると、製造方法が複雑となる。第二凸曲面7bの上記要件は電極層6が形成されるx方向の領域に亘って満たされる。
【0030】
(変形例)
図2は本発明の第一実施形態の変形例に係る液体噴射ヘッド1の領域Rの拡大図である。図2(a)は変形例1に係る液体噴射ヘッド1の領域Rの拡大図である。変形例1では電極層6の上端部が隔壁2の上端面USに達しない。その他の構成は第一実施形態と同様である。図2(b)は変形例2に係る液体噴射ヘッド1の領域Rの拡大図である。変形例2では隔壁2の内側面ISと上端面USの間に第二凸曲面7bを有しない。変形例1、2はいずれも本発明の範囲に含まれる。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0031】
図2(a)に示すように、第一凸曲面7aは、電極層6の表面と隔壁2の表面が滑らかに連続する。従って、隔壁2の第二凸曲面7bは、電極層6の上端部よりも上部が第一凸曲面7aと重なる。この場合でも、第一凸曲面7aはyz平面の断面において円弧形状である必要はなく凹凸があってもよいが、直線SL1よりも内側に位置する箇所が無く、角張った突起の無い曲面形状を有する。その他は第一実施形態と同様なので、説明を省略する。
【0032】
図2(b)に示すように、隔壁2は内側面ISと上端面USが略直交し第二凸曲面7bを有しない。この場合でも、第一凸曲面7aはyz平面の断面において円弧形状である必要はなく凹凸があってもよいが、直線SL1よりも内側に位置する箇所が無く、角張った突起の無い曲面形状を有する。第一凸曲面7aのy方向の間隔Myは0.4μm〜5μmの範囲とするのが好ましい。その他の構成は第一実施形態と同様なので、説明を省略する。
【0033】
(第二実施形態)
図3は、本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッド1の製造方法を表す工程図である。図4及び図5は、本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッド1の製造方法を説明するための断面模式図である。図6は本発明の第二実施形態に係る製造方法により製造する液体噴射ヘッド1の模式的な分解斜視図である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0034】
本発明の液体噴射ヘッド1の製造方法は、感光性樹脂層形成工程S2と、溝形成工程S4と、エッチング工程S5と、表面処理工程S6と、感光性樹脂層除去工程S7と、無電解メッキ工程S8とを備える。感光性樹脂層形成工程S2において、分極した圧電体基板11の表面に感光性樹脂層12を設置する。次に、溝形成工程S4において、圧電体基板11に溝3を形成し、溝3と溝3の間に圧電体基板11からなる隔壁2を形成する。次に、エッチング工程S5において、圧電体基板11の露出面をエッチングして、隔壁2の上端面USと、この上端面USに略直交する内側面ISとを繋ぎ、外側に凸の第二凸曲面7bを形成する。
【0035】
次に、表面処理工程S6の内の第一表面処理工程S6aにおいて、例えば、圧電体基板11の表面にSnとPdのコロイド粒子、又は、Snを付着させる表面処理を行う。次に、感光性樹脂層除去工程S7において、圧電体基板11の表面から感光性樹脂層12を除去する。次に、表面処理工程S6の内の第二表面処理工程S6bにおいて、例えば、圧電体基板11の表面を酸処理、又は、表面にPdを付着させる表面処理を行う。次に、無電解メッキ工程S8において、圧電体基板11の表面に無電解メッキにより電極層6を形成する。これにより、無電解メッキ法により形成する電極層6にバリが発生せず、また、電極層6の端部が剥離し難いので、バリや剥離した電極がダストとなって製造歩留まりが低下するのを防止する。
【0036】
以下、具体的に説明する。準備工程S1において、図4(a)に示すように、圧電体基板11を準備する。圧電体基板11は、基板面の法線方向に分極処理が施されているPZTセラミックス板を用いることができる。例えば、法線方向に分極Pを有する圧電体基板11aと、反対方向に分極(−P)を有する圧電体基板11bとを分極境界Bの位置で積層接着されるシュブロン型の圧電体基板11を使用することができる。なお、本発明はシュブロン型の圧電体基板11に限定されない。
【0037】
次に、感光性樹脂層形成工程S2において、図4(b)に示すように、圧電体基板11の表面に感光性樹脂層12を設置する。感光性樹脂層12としてレジスト膜を使用することができる。圧電体基板11の表面にフィルム状レジストをラミネートして感光性樹脂層12とすることができる。また、圧電体基板11の表面にデスペンサーやコーターによりレジストを塗布し、乾燥して感光性樹脂層12としてもよい。感光性樹脂層12の膜厚は20μm〜50μmの範囲である。
【0038】
次に、パターン形成工程S3において、図4(c)に示すように、感光性樹脂層12のパターンを形成する。フォトリソグラフィにより、外部駆動回路と電気的接続用の電極端子や電極配線を形成する領域から感光性樹脂層12を除去する。なお、パターン形成工程S3は、圧電体基板11の上端面USに溝パターンや電極パターンを形成する必要が無ければ省略することができる。
【0039】
次に、溝形成工程S4において、図4(d)に示すように、ダイシングブレードDやダイヤモンドカッター等を用いて圧電体基板11の上端面USを研削し、複数の溝3を形成することにより隣接する溝3の間に隔壁2を形成する。なお、図4(d)は図4(c)と異なる断面を描いている。図4(c)は電極端子や電極配線を設置する領域の断面であり、図4(d)は多数の溝3が配列する領域の断面を描いている。図4(e)及び図5(f)〜(h)も同様に多数の溝3が配列する領域の断面を描いている。溝3及び隔壁2の配列方向(y方向)の幅は30μm〜100μmであり、溝3の上端面USからの深さは300μm〜400μmであり、溝3及び隔壁2の紙面手前方向(x方向)の幅は1mm〜5mmである。シュブロン型の圧電体基板11を用いる場合には、分極境界Bの位置が溝3の深さの略1/2となるようにする。溝3は200本以上形成する。
【0040】
次に、エッチング工程S5において、図4(e)に示すように、隔壁2を含む圧電体基板11の露出面をエッチングする。具体的には隔壁2の露出面をエッチングする。圧電体基板11としてPZTセラミックスを使用する場合には、隔壁2の露出面を濃度1.5wt%以下のフッ化アンモニウム水溶液に所定時間浸漬する。隔壁2の露出面はエッチング液によりエッチングされる他に、エッチング液は感光性樹脂層12と隔壁2の上端面USの間に浸み込み、隔壁2の上端面USと内側面ISの角部Cがエッチングされて第二凸曲面7bが形成される。第二凸曲面7bは、隔壁2の上端面USと、この上端面USに対して略直交する内側面ISとの間を繋いでいる。エッチングはソフトに(軽く)行って、隔壁2にクラックが生じたり、結晶粒界が脱落したりするのを防ぐ。第二凸曲面7bは、溝3の配列方向と上下方向により作られるyz平面において、溝3の配列方向(y方向)の幅、及び、上下方向(z方向)の幅を最大10μmとするのが好ましい。各幅が10μmよりも大きく形成しようとすると、隔壁2にクラックが生じたり結晶粒界が脱落したりする。
【0041】
次に、第一表面処理工程S6aにおいて、図5(f)に示すように、隔壁2を含む圧電体基板11の露出面をSnとPdのコロイド溶液に浸漬して、露出面にSnとPdのコロイド粒子を付着させる。具体的には、溝3の内側面IS及び底面にコロイド粒子13を付着させる。コロイド溶液は感光性樹脂層12と第二凸曲面7bの間にも浸入して、第二凸曲面7bにもコロイド粒子13が付着する。
【0042】
次に、感光性樹脂層除去工程S7において、図5(g)に示すように、隔壁2を含む圧電体基板11の表面から感光性樹脂層12を除去する。具体的には、感光性樹脂層12を、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ溶液、NMP(Nメチルピロリドン)等の有機溶媒、或いはエタノール等のアルコール溶液により溶解、又は剥離して、隔壁2の上端面USから除去する。感光性樹脂層12は電極材料等により覆われていないので、容易に除去することができる。次に、第二表面処理工程S6bにおいて、圧電体基板11の露出面を酸処理する。例えば、圧電体基板11の露出面を塩酸溶液に浸漬し、露出面からSnを除去し、露出面に金属Pdを析出させる。金属Pdはメッキ触媒14として機能する。
【0043】
次に、無電解メッキ工程S8において、図5(h)に示すように、隔壁2を含む圧電体基板11の表面に無電解メッキにより電極層6を形成する。具体的には、メッキ触媒14が付着した溝3の内側面IS、底面BS及び第二凸曲面7bに無電解メッキにより電極層6を形成する。電極層6として、Ni、Cu、Au、Ag等を形成することができる。例えば、隔壁2を含む圧電体基板11をNiメッキ液に浸漬し、圧電体基板11を搖動させながらメッキ触媒が付着する表面に電極層6を形成する。圧電体基板11を搖動させて電極層6の析出時に発生する水素が溝3に付着するのを防ぐ。電極層6は0.2μm〜5μmの範囲の厚さとするのが好ましい。電極層6が0.2μmよりも薄いと電気抵抗が高くなり、5μmより厚いと電極層6の内部応力が高くなって電極剥がれが起きやすくなる。
【0044】
電極層6は、メッキ触媒14が付着する溝3の底面BS、隔壁2の内側面IS、第二凸曲面7b及び上端面US(図4(c)に示すように、感光性樹脂層12が除去される上端面USの領域)に形成され、メッキ触媒14が付着していない隔壁2の上端面USには電極層6が形成されない。電極層6は、隔壁2の上端面USに対して略直交する外側面OSを有し、外側面OSは外側に凸の第一凸曲面7aを介して上端面USに連続する。電極層6は、外側面OSから上端面USに向けて膜厚が次第に薄くなる。第一凸曲面7aは、yz平面におけるy方向の幅を0.4μm〜15μmの範囲とするのが好ましい。y方向の幅が0.4μmよりも小さいと電極層6の厚さが薄くなって抵抗が高くなる。また、電極層6の好ましい膜厚が5μmまであり、第二凸曲面7bのy方向の好ましい幅が10μmまでであることから、第一凸曲面7aのy方向の幅を15μm以下とするのが好ましい。また、第一凸曲面7aのz方向の幅を0.4μm〜10μmの範囲とするのが好ましい。z方向の幅が0.4μmよりも小さいと電極層6が角張って作業途中で剥がれやすく、z方向の幅が10μmよりも大きいと、形成方法が難しくなる。
【0045】
次に、ヘッド組立工程S9において、図6に示すように、隔壁2を含む圧電体基板11の上端面USにカバープレート9を接着剤により接着し、圧電体基板11及びカバープレート9の前方の端面にノズルプレート8を接着剤により接着して液体噴射ヘッド1を構成する。
【0046】
このように、電極層6は、隔壁2の内側面ISの他に第二凸曲面7bにも形成される。そのため、電極層6は剥離し難く、剥離した電極ダストによる製造歩留まりの低下を防ぐことができる。また、感光性樹脂層12を除去した後に無電解メッキにより電極層6を形成するので、電極層6の微細パターンを容易に形成することができる。本発明とは異なり、例えば、第一表面処理工程S6aの後に続けて第二表面処理工程S6bを行って圧電体基板11の露出面にメッキ触媒を付着させ、次に無電解メッキ工程S8を行って隔壁2の露出面及び感光性樹脂層12の表面に電極材料を堆積させ、次にリフトオフ法によって感光性樹脂層12とその上の電極材料を除去して、隔壁2の内側面IS及び第二凸曲面7bに電極層6することができる。しかし、感光性樹脂層12は撥水性を有するので、感光性樹脂層12と上端面USの隙間に無電解メッキ液が浸入し難く、電極層6の上端部にバリが残る、或いは上端部が角張って電極ダストが発生しやすい形状となる。また、感光性樹脂層12の上に電極材料が堆積するので、感光性樹脂層12の除去が難くなる。
【0047】
なお、本実施形態では、第一表面処理工程S6aにおいて圧電体基板11の露出面をSnとPdのコロイド溶液に浸漬し、第二表面処理工程S6bにおいて圧電体基板11の露出面を酸処理して、表面に金属Pdを析出させるキャタリスト・アクセレーター法を用いている。これに代えて、第一表面処理工程S6aにおいて圧電体基板11の露出面にSnを付着させ、第二表面処理工程S6bにおいて圧電体基板11の露出面に付着するSnを金属Pdに置換するセンシタイザー・アクチベーター法を用いることができる。具体的には、第一表面処理工程S6aにおいて、隔壁2を含む圧電体基板11を塩化第一錫溶液に浸漬する。そして感光性樹脂層除去工程S7の後に、第二表面処理工程S6bにおいて、圧電体基板11を塩化パラジウム水溶液に浸漬する。塩化錫と塩化パラジウムの酸化還元反応により、塩化錫が付着する圧電体基板11の表面に金属Pdを析出させる。
【0048】
センシタイザー・アクチベーター法を用いる場合は、溝3の内表面(底面BS、内側面IS、第二凸曲面7b)や、隔壁2及び圧電体基板11の上端面USに正確なパターンでメッキ触媒14や電極層6を形成することができる。また、第一表面処理工程S6aにおいて感光性樹脂層12の撥水性の影響を受けずに圧電体基板11の露出面にSnを付着させることができる。そのため、第二表面処理工程S6bにおいて感光性樹脂層12のパターンの形状に正確にメッキ触媒14を付着させ、無電解メッキ工程S8において第二凸曲面7b及び上端面USに電極層6の正確なパターンを形成することができる。また、第一表面処理工程S6aにおいて感光性樹脂層12の表面に付着する触媒前処理物質(例えば塩化第一錫溶液の塩化第一錫)を、第二表面処理工程S6bの触媒付与溶液(例えば塩化パラジウム溶液)に持ち込むことが無いので、触媒付与溶液の触媒付与反応を進めることが無く、触媒付与溶液の劣化を抑制することができる。
【0049】
図6に示す液体噴射ヘッド1の構成を説明する。液体噴射ヘッド1は、圧電体基板11と、圧電体基板11の上端面USに接着されるカバープレート9と、カバープレート9及び圧電体基板11の前方の端面に接着されるノズルプレート8とを備える。圧電体基板11は、上端面USに交互に配列する吐出溝3aと非吐出溝3bを備える。吐出溝3aは圧電体基板11の前方の端面FPから後方の端面BPの手前まで形成され、非吐出溝3bは前方の端面FPから後方の端面BPにかけて形成される。吐出溝3a及び非吐出溝3bの側面(隔壁2の内側面IS)及び底面BSには上記方法により析出した電極層6が設置される。なお、非吐出溝3bの一方の側面(一方の隔壁2の内側面IS)の電極層6と他方の側面(他方の隔壁2の内側面IS)の電極層6とは電気的に分離される。電気的分離は、例えば、無電解メッキ工程S8により電極層6を形成した後に、非吐出溝3bの底面にレーザー光を照射して底面の電極層6を除去することができる。圧電体基板11は上端面USの後方の端面BPの側に個別端子10b、個別端子10bより前方側に共通端子10aを備える。個別端子10bは、吐出溝3aを挟んで隣接する2つの非吐出溝3bの吐出溝3a側の電極層6を電気的に接続する。共通端子10aは吐出溝3aの電極層6と電気的に接続する。
【0050】
カバープレート9は、前方の端面が圧電体基板11の前方の端面FPと面一となるように、また、共通端子10a及び個別端子10bが露出するように圧電体基板11の上端面USに接着される。カバープレート9は後方側に液室9aを備え、液室9aは、その底面から圧電体基板11の側に貫通するスリット9bを備える。スリット9bは液室9aと吐出溝3aの後方端とを連通し、液室9aから吐出溝3aに液体を供給する。ノズルプレート8は、圧電体基板11及びカバープレート9の前方の端面に接着される。ノズルプレート8はノズル孔8aを備え、ノズル孔8aは吐出溝3aに連通する。
【0051】
液体噴射ヘッド1は次にように動作する。まず、液室9aに液体を供給し、スリット9bを介して吐出溝3aに液体を充填する。共通端子10aと個別端子10bに駆動信号を与えて吐出溝3aを挟む両隔壁2を厚み滑り変形させる。具体的には、吐出溝3aの容積が拡大する方向に両隔壁2を変形させて液室9aから吐出溝3aに液体を引き込み、次に、吐出溝3aの容積が縮小する方向に両隔壁2を変形させて、ノズル孔8aから液滴を吐出させる。なお、図6に示す液体噴射ヘッド1は一例である。本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、エッジシュート型の液体噴射ヘッドの他にサイドシュート型や液体循環型の液体噴射ヘッドに適用することができる。
【0052】
(第三実施形態)
図7は、本発明の第三実施形態に係る液体噴射装置15の模式的な斜視図である。液体噴射装置15は、液体噴射ヘッド1、1’を往復移動させる移動機構40と、液体噴射ヘッド1、1’に液体を供給し、液体噴射ヘッド1、1’から液体を排出する流路部35、35’と、流路部35、35’に連通する液体ポンプ33、33’及び液体タンク34、34’とを備えている。液体噴射ヘッド1、1’は既に説明した第一実施形態の液体噴射ヘッド1又は第二実施形態により製造する液体噴射ヘッド1を使用する。
【0053】
液体噴射装置15は、紙等の被記録媒体44を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42と、被記録媒体44に液体を吐出する液体噴射ヘッド1、1’と、液体噴射ヘッド1、1’を載置するキャリッジユニット43と、液体タンク34、34’に貯留した液体を流路部35、35’に押圧して供給する液体ポンプ33、33’と、液体噴射ヘッド1、1’を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構40とを備えている。図示しない制御部は液体噴射ヘッド1、1’、移動機構40、搬送手段41、42を制御して駆動する。
【0054】
一対の搬送手段41、42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体44を主走査方向に搬送する。移動機構40は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット43と、キャリッジユニット43を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト38と、この無端ベルト38を図示しないプーリを介して周回させるモータ39とを備えている。
【0055】
キャリッジユニット43は、複数の液体噴射ヘッド1、1’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク34、34’は対応する色の液体を貯留し、液体ポンプ33、33’、流路部35、35’を介して液体噴射ヘッド1、1’に供給する。各液体噴射ヘッド1、1’は駆動信号に応じて各色の液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット43を駆動するモータ39の回転及び被記録媒体44の搬送速度を制御することにより、被記録媒体44上に任意のパターンを記録することできる。
【0056】
なお、本実施形態は、移動機構40がキャリッジユニット43と被記録媒体44を移動させて記録する液体噴射装置15であるが、これに代えて、キャリッジユニットを固定し、移動機構が被記録媒体を2次元的に移動させて記録する液体噴射装置であってもよい。つまり、移動機構は液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させるものであればよい。
【符号の説明】
【0057】
1 液体噴射ヘッド
2 隔壁
3 溝、3a 吐出溝、3b 非吐出溝
4 下基板、5 上基板
6 電極層
7a 第一凸曲面、7b 第二凸曲面
8 ノズルプレート、8a ノズル孔、9 カバープレート、9a 液室、9b スリット
10a 共通端子、10b 個別端子
11 圧電体基板、12 感光性樹脂層、13 コロイド粒子、14 メッキ触媒
US 上端面、OS 外側面、IS 内側面、C 角部、BS 底面
P1、P2、P3 接続点、SL1、SL2 直線、B 分極境界
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7