特許第6573827号(P6573827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573827獣道推定方法、獣道推定プログラムおよび獣道推定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573827
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】獣道推定方法、獣道推定プログラムおよび獣道推定装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/00 20060101AFI20190902BHJP
   G01J 1/42 20060101ALI20190902BHJP
   G08C 15/00 20060101ALN20190902BHJP
   G08C 17/02 20060101ALN20190902BHJP
【FI】
   A01M23/00 Z
   G01J1/42 B
   !G08C15/00 E
   !G08C17/02
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-256171(P2015-256171)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-118832(P2017-118832A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000237156
【氏名又は名称】株式会社富士通アドバンストエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100192636
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】石井 良雄
(72)【発明者】
【氏名】多賀 万里子
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−306313(JP,A)
【文献】 特開2007−155389(JP,A)
【文献】 特開2006−223174(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0283435(US,A1)
【文献】 金子弥生,食肉目のフィールドサイン,自動撮影技術と解析-分布調査を例にして,哺乳類科学,2009年,49巻1号 ,p.65-88
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近傍を動物が通過した際に検知動作を行う複数のセンサによる、動物の通過の検知日時を含むデータを登録し、
登録された複数の前記データから検知日時が近接して連続するデータ群を取り出し、
前記データ群の先頭のデータに対応するセンサの設置位置から、前記データ群内の各データに対応するセンサの設置位置までの距離を計算し、
前記データ群内の各データの前記検知日時と前記距離の相関係数値を計算し、
前記相関係数値と前記データ群の出現頻度から獣道に対応するデータ群を特定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする獣道推定方法。
【請求項2】
前記データは前記センサが検知した動物種の情報を含み、
前記データ群についての処理は、前記動物種ごとに行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の獣道推定方法。
【請求項3】
前記距離の相関係数値を計算する処理の前に、前記データ群の先頭のデータに対応するセンサの設置位置から所定の距離を超えるデータを除去する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の獣道推定方法。
【請求項4】
前記獣道に対応するデータ群を特定する処理は、前記相関係数値が所定の閾値を超え、かつ、前記出現頻度が最高のデータ群を特定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の獣道推定方法。
【請求項5】
近傍を動物が通過した際に検知動作を行う複数のセンサによる、動物の通過の検知日時を含むデータを登録し、
登録された複数の前記データから検知日時が近接して連続するデータ群を取り出し、
前記データ群の先頭のデータに対応するセンサの設置位置から、前記データ群内の各データに対応するセンサの設置位置までの距離を計算し、
前記データ群内の各データの前記検知日時と前記距離の相関係数値を計算し、
前記相関係数値と前記データ群の出現頻度から獣道に対応するデータ群を特定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする獣道推定プログラム。
【請求項6】
近傍を動物が通過した際に検知動作を行う複数のセンサによる、動物の通過の検知日時を含むデータを登録する手段と、
登録された複数の前記データから検知日時が近接して連続するデータ群を取り出す手段と、
前記データ群の先頭のデータに対応するセンサの設置位置から、前記データ群内の各データに対応するセンサの設置位置までの距離を計算する手段と、
前記データ群内の各データの前記検知日時と前記距離の相関係数値を計算する手段と、
前記相関係数値と前記データ群の出現頻度から獣道に対応するデータ群を特定する手段と、
を備えたことを特徴とする獣道推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、獣道推定方法、獣道推定プログラムおよび獣道推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鳥獣害による農業被害が多く発生しており、駆除対策をしないと農業従事者の死活問題になってきている。そこで、国・県等が対策を推進しており、交付金により市町村や猟友会などが協力して駆除活動を実行している。
【0003】
駆除の手法としては、罠を設置することが一般的である。罠の設置に当たっては、捕獲従事関係者(猟友会、猟師、自治体担当者等)による踏査(実際にその地へ出かけて調べること)等により進入路や痕跡の調査が実施された上で、適切と考えられる設置位置が特定される。駆除対象の動物が高い頻度で通過する獣道が特定できれば罠の有効な設置位置を決めやすくなるが、踏査により調査できる範囲やタイミングは限られ、獣道を特定するのは容易ではない。そのため、常に有効な設置位置が特定できるわけではなく、罠設置後の設置場所の移動も発生しており、多くの人員と手間を要している。更に、昨今、猟師等は高齢化により年々減少傾向にあり、駆除活動もままならなくなってきている。
【0004】
一方、野性動物用のトンネルや獣道で夜間でも動物の通過状況を自動検出する通過検出器について開示がある(特許文献1等)。また、野生生物を検出して、獣道などを利用したり、森の中の所定の空間を移動する頻度を日時などの情報とともに記録できる野生生物検出センサ装置について開示がある(特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−306313号公報
【特許文献2】特開2007−155389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、罠の設置の作業を効率的に行う上で獣道を特定することが有効であるが、従来は定点における動物の通過を記録するにとまるものであり、獣道を特定することはできなかった。
【0007】
そこで、一側面では、獣道を自動的に特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの形態では、近傍を動物が通過した際に検知動作を行う複数のセンサによる、動物の通過の検知日時を含むデータを登録し、登録された複数の前記データから検知日時が近接して連続するデータ群を取り出し、前記データ群の先頭のデータに対応するセンサの設置位置から、前記データ群内の各データに対応するセンサの設置位置までの距離を計算し、前記データ群内の各データの前記検知日時と前記距離の相関係数値を計算し、前記相関係数値と前記データ群の出現頻度から獣道に対応するデータ群を特定する、処理をコンピュータが実行する。

【発明の効果】
【0009】
獣道を自動的に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態にかかるシステムの構成例を示す図である。
図2】センサの例を示す図である。
図3】サーバ装置のソフトウェア構成例を示す図である。
図4】各種データベースのデータ構造例を示す図である。
図5】サーバ装置のハードウェア構成例を示す図である。
図6】実施形態の処理例を示すフローチャートである。
図7】移動ルート作成の例を示す図である。
図8】移動ルート評価の例を示す図である。
図9】移動ルートの例を示す図(その1)である。
図10】移動ルートの例を示す図(その2)である。
図11】獣道判定の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
【0012】
<構成>
図1は一実施形態にかかるシステムの構成例を示す図である。図1において、駆除対象の動物が出現する可能性のある各所にはセンサ1が設置されている。センサ1は、該センサ1の近傍を動物が通過した際に検知動作を行うとともに、体高や体重等により動物種(大、中、小等)を判定し、小電力無線等による通信機能により中継器2に検知信号を送信する機能を有している。検知信号にはセンサ1を識別するセンサIDと動物種の情報が含まれる。なお、各センサ1の設置位置はサーバ装置3側に予め登録される。設置位置の登録は、センサ1の設置位置に持ち込んだGPS(Global Positioning System)機能付きの携帯端末等で位置情報を測定し、携帯端末等からサーバ装置3に対してセンサIDと位置情報を通知することで行うことができる。また、センサ1自体にGPS機能を持たせ、適当なタイミングでセンサ1からサーバ装置3にセンサIDと位置情報の登録を行ってもよい。
【0013】
図2はセンサ1の例を示す図である。図2(a)は、支柱11の異なる高さに、動物の発する赤外線に反応する焦電型の赤外線センサ12を備え、動物の通過と同時に体高を判別できるようにしたものである。
【0014】
図2(b)はマットセンサ13を備え、動物の通過と同時に体重を測定できるようにしたものである。なお、マットセンサ13として、動物の足の接地位置を検出できるようにすることもでき、その場合は、四つ足の間隔や歩幅・歩速等から動物の種類(大きさ、動物名等)を判別することも可能である。
【0015】
図1に戻り、中継器2は、センサ1から小電力無線等により検出信号を受信すると、無線デジタル回線等によりサーバ装置3に検出信号を送信(転送)する機能を有している。なお、センサ1の通信機能として、サーバ装置3との間で直接に通信できるレベルの無線電力を持たせることができる場合には、中継器2を省略することもできる。中継器2はGPS機能を有しており、中継器2の位置情報は、中継対象の複数のセンサ1が設置される地域の代表的な位置情報としてサーバ装置3側で管理される。
【0016】
サーバ装置3は、センサ1から中継器2を介して検知信号を受信すると、検知実績データを蓄積していき、所定のタイミングで、蓄積された検知実績データに基づいて獣道推定を行い、推定結果をPC(Personal Computer)等の端末装置4やスマートフォン等の携帯端末装置5に出力(通知)する。
【0017】
図3はサーバ装置3のソフトウェア構成例を示す図である。図3において、サーバ装置3は、ソフトウェア(コンピュータプログラム)により実現される機能手段として、検知受信部31と移動ルート作成部32と移動ルート評価部33と獣道判定部34と獣道出力部35とを備えている。また、処理に際して参照・更新するデータ(情報)を保持する手段として、センサ位置データベースDB1と検知実績データベースDB2と移動ルートデータベースDB3と移動ルート評価結果データベースDB4とを備えている。
【0018】
図4は各種データベースのデータ構造例を示す図である。図4において、センサ位置データベースDB1は、センサ1の設置位置を管理するデータベースであり、「センサID」「位置」等の項目を有している。「センサID」は、センサ1を識別する情報である。「位置」は該センサ1の設置位置の座標(緯度・経度等)である。なお、中継器2の位置を管理するデータベースも別途存在するが、獣道推定には用いないため、図示を省略している。
【0019】
検知実績データベースDB2は、センサ1から受信した検知信号の情報を蓄積するデータベースであり、「検知日時(受信日時)」「センサID」「動物種」等の項目を有している。「検知日時(受信日時)」は、動物の通過を検知した日時であり、サーバ装置3がセンサ1から検知信号を受信した日時を代用している。「センサID」は、検知を行ったセンサ1を識別する情報である。「動物種」は、通過を検知した動物の種類(大、中、小等)である。
【0020】
移動ルートデータベースDB3は、動物種ごとに、検知日時が近接して連続する一連の移動ルートとして抽出された検知データ群を保持するデータベースであり、「ルートID」「検知日時」「センサID」「初検知からの距離」等の項目を有している。「ルートID」は、移動ルートを識別する情報である。「検知日時」は、動物の通過を検知した日時である。「センサID」は、検知を行ったセンサ1を識別する情報である。「初検知からの距離」は、移動ルートを構成するデータ群の先頭のデータに対応するセンサの設置位置から、そのデータ群内の各データに対応するセンサの設置位置までの距離である。この距離は、座標から得られる直線距離を想定している。
【0021】
移動ルート評価結果データベースDB4は、移動ルートに対して評価を行った結果を保持するデータベースであり、「ルートID」「センサID列」「相関係数値」等の項目を有している。「ルートID」は、移動ルートを識別する情報である。「センサID列」は、移動ルートに含まれるセンサ1のセンサIDを列挙したものである。「相関係数値」は、移動ルートを構成するデータ群の検知日時と距離の相関を示す値であり、獣道としての評価値を示す。
【0022】
図3に戻り、検知受信部31は、センサ1から中継器2を介して検知信号を受信し、検知信号の情報を検知実績データベースDB2に登録する機能を有している。移動ルート作成部32は、検知実績データベースDB2に蓄積されたデータとセンサ位置データベースDB1のデータに基づき、移動ルートを抽出する機能を有している。
【0023】
移動ルート評価部33は、移動ルート作成部32により抽出された移動ルートのそれぞれについて、検知日時と距離の相関係数値を計算することで、獣道としての評価を行う機能を有している。獣道判定部34は、移動ルートの相関係数値と出現頻度から獣道と推定される移動ルートを判定する機能を有している。獣道出力部35は、獣道判定部34により判定された獣道の移動ルートを外部(端末装置4、携帯端末装置5等)に出力する機能を有している。
【0024】
図5はサーバ装置3のハードウェア構成例を示す図である。図5において、サーバ装置3は、システムバス301に接続されたCPU(Central Processing Unit)302、ROM(Read Only Memory)303、RAM(Random Access Memory)304、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)305を備えている。また、サーバ装置3は、I/F(Interface)306と、I/F306に接続された、I/O(Input/Output Device)307、HDD(Hard Disk Drive)/フラッシュメモリ308、NIC(Network Interface Card)309と、I/O307に接続されたモニタ310、キーボード311、マウス312等を備えている。I/O307にはCD/DVD(Compact Disk/Digital Versatile Disk)ドライブ等を接続することもできる。
【0025】
図3で説明したサーバ装置3の機能は、CPU302において所定のプログラムが実行されることで実現される。プログラムは、記録媒体を経由して取得されるものでもよいし、ネットワークを経由して取得されるものでもよいし、ROM組込でもよい。
【0026】
<動作>
各位置に設置されたセンサ1は、動物の通過を検知すると検知信号を送信する。検知信号が中継器2を介してサーバ装置3において受信されると、検知受信部31は検知信号の情報を検知実績データベースDB2に登録する。
【0027】
その後の処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。図6において、移動ルート作成部32は、検知実績データベースDB2から蓄積された検知実績データを読み込み、動物種ごとに仕分けした時系列データを作成する(ステップS1)。図7(A)は、動物種:大についての時系列データの例を示している。なお、検知日時のうち年月日の部分は図示を省略している。
【0028】
次いで、図6に戻り、移動ルート作成部32は、時系列データの検知日時に着目し、所定時間(例えば、10分)以内に近接して連続するデータを一繋がりのデータ群として認識して取り出す(ステップS2)。図7(A)において、検知日時:2:27 53"と検知日時:3:04 12"の間、検知日時:3:25 24"と検知日時:3:57 30"の間、検知日時:3:57 30"と検知日時:4:16 12"の間、検知日時:4:30 01"と検知日時:5:04 12"の間は時間間隔が空いているため一連のデータ群とはみなさず、検知日時:3:04 12"〜検知日時:3:25 24"と、検知日時:4:16 12"検知日時:4:30 01"とを一繋がりのデータ群として取り出す。
【0029】
次いで、図6に戻り、移動ルート作成部32は、各ポイントの初検知ポイント(一連のデータ群の先頭のデータ)からの距離(センサの設置位置の距離)を、センサ位置データベースDB1を参照して算出する(ステップS3)。図7(B)は、取り出されたデータ群の各ポイントに算出された距離が付加された状態を示している。
【0030】
次いで、図6に戻り、移動ルート作成部32は、初検知ポイントから移動不可データをノイズデータとして除外する(ステップS4)。例えば、動物種ごとに予め定めた所定の距離(例えば、動物種:大について1000m)を超えるデータを除去する。図7(B)では、検知日時:3:04 21"の距離:2450と、検知日時:3:14 17"の距離:1920と、検知日時:4:17 34"の距離:1650と、検知日時:4:23 09"の距離:3600と、検知日時:4:24 56"の距離:2970のデータを除去する。除去した後の時系列データを図7(C)に示している。ノイズデータを除去した結果、前後のデータの検知日時が一繋がりのデータ群として判断する所定時間を超えることとなる場合には、そのままとしてもよいし、移動ルートを分けてもよい。
【0031】
ノイズデータ除去後の時系列データは、図7(D)に示すように、一繋がりのデータ群にユニークなルートIDが付され、移動ルートデータベースDB3に登録される。
【0032】
次いで、図6に戻り、移動ルート評価部33は、移動ルート作成部32により抽出された移動ルートのそれぞれについて、検知日時と距離の相関係数値を計算する(ステップS5)。計算された相関係数値は、ルートIDおよびセンサID列とともに移動ルート評価結果データベースDB4に登録される。
【0033】
図8は、図7(D)の移動ルートデータに基づく評価の例を示している。ルートID:R001の移動ルートは、例えば、図9に示すようなセンサ1「a」「b」・・の配置に対して、太線で示すような移動を示している。また、ルートID:R002の移動ルートは、例えば、図10に示すように、同じセンサ1の配置に対して、太線で示すような移動を示している。ここで、推定により求めたい獣道は、一般に山と里(田畑)の間を動物が移動する主要なルートであるため、図9のような一部を徘徊するようなルートではなく、図10のようなほぼ一方向にほぼ一定速度で移動するルートが望ましい。
【0034】
図8に戻り、ほぼ一方向にほぼ一定速度で移動するルートでは、時刻に対して距離が直線的に変化するものとなるため、移動ルート評価部33は、例えば以下の式により計算される相関係数値が高い場合により相応しいものと評価することができる。各記号についての意味は図8に示したとおりである。
【0035】
【数1】
【0036】
図示の例では、ルートID:R001の移動ルートの相関係数値は「0.24」と計算され、ルートID:R002の移動ルートの相関係数値は「0.87」と計算されるため、ルートID:R002の移動ルートの方が獣道である可能性が高くなる。
【0037】
次いで、図6に戻り、獣道判定部34は、相関係数値が所定の閾値以上のルート群の中で、出現頻度が最も高いポイント列をもつルートを獣道と判定する(ステップS6)。出現頻度は、過去の所定期間内における同じ移動ルートが出現した回数である。図11は、縦軸にルートIDおよびセンサID列を、横軸に出現頻度を示し、出現頻度の高い順に並べた例であり、例えば、最も出現頻度の高いルートIDで示される移動ルートを獣道と判定する。なお、出現頻度にも閾値を設定し、所定の閾値を超える複数の移動ルートを獣道と判定してもよい。
【0038】
次いで、図6に戻り、獣道出力部35は、獣道であると判定された移動ルートを外部(端末装置4、携帯端末装置5等)に出力する(ステップS7)。出力の形態は種々存在するが、センサID列を出力してもよいし、位置座標列を出力してもよいし、地図上に移動ルートを描画した状態で出力してもよい。
【0039】
<総括>
以上説明したように、本実施形態によれば、獣道を自動的に特定することができ、罠の設置の効率化、ひいては駆除対策の促進に寄与することができる。
【0040】
以上、好適な実施の形態により説明した。ここでは特定の具体例を示して説明したが、特許請求の範囲に定義された広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により限定されるものと解釈してはならない。
【0041】
以上の説明に関し、更に以下の項を開示する。
(付記1)
複数のセンサによる検知日時を含むデータを登録し、
登録された複数の前記データから検知日時が近接して連続するデータ群を取り出し、
前記データ群の先頭のデータに対応するセンサの設置位置から、前記データ群内の各データに対応するセンサの設置位置までの距離を計算し、
前記データ群内の各データの前記検知日時と前記距離の相関係数値を計算し、
前記相関係数値と前記データ群の出現頻度から獣道に対応するデータ群を特定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする獣道推定方法。
(付記2)
前記データは前記センサが検知した動物種の情報を含み、
前記データ群についての処理は、前記動物種ごとに行う、
ことを特徴とする付記1に記載の獣道推定方法。
(付記3)
前記距離の相関係数値を計算する処理の前に、前記データ群の先頭のデータに対応するセンサの設置位置から所定の距離を超えるデータを除去する、
ことを特徴とする付記1または2に記載の獣道推定方法。
(付記4)
前記獣道に対応するデータ群を特定する処理は、前記相関係数値が所定の閾値を超え、かつ、前記出現頻度が最高のデータ群を特定する、
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか一項に記載の獣道推定方法。
(付記5)
複数のセンサによる検知日時を含むデータを登録し、
登録された複数の前記データから検知日時が近接して連続するデータ群を取り出し、
前記データ群の先頭のデータに対応するセンサの設置位置から、前記データ群内の各データに対応するセンサの設置位置までの距離を計算し、
前記データ群内の各データの前記検知日時と前記距離の相関係数値を計算し、
前記相関係数値と前記データ群の出現頻度から獣道に対応するデータ群を特定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする獣道推定プログラム。
(付記6)
前記データは前記センサが検知した動物種の情報を含み、
前記データ群についての処理は、前記動物種ごとに行う、
ことを特徴とする付記5に記載の獣道推定プログラム。
(付記7)
前記距離の相関係数値を計算する処理の前に、前記データ群の先頭のデータに対応するセンサの設置位置から所定の距離を超えるデータを除去する、
ことを特徴とする付記5または6に記載の獣道推定プログラム。
(付記8)
前記獣道に対応するデータ群を特定する処理は、前記相関係数値が所定の閾値を超え、かつ、前記出現頻度が最高のデータ群を特定する、
ことを特徴とする付記5乃至7のいずれか一項に記載の獣道推定プログラム。
(付記9)
複数のセンサによる検知日時を含むデータを登録する手段と、
登録された複数の前記データから検知日時が近接して連続するデータ群を取り出す手段と、
前記データ群の先頭のデータに対応するセンサの設置位置から、前記データ群内の各データに対応するセンサの設置位置までの距離を計算する手段と、
前記データ群内の各データの前記検知日時と前記距離の相関係数値を計算する手段と、
前記相関係数値と前記データ群の出現頻度から獣道に対応するデータ群を特定する手段と、
を備えたことを特徴とする獣道推定装置。
(付記10)
前記データは前記センサが検知した動物種の情報を含み、
前記データ群についての処理は、前記動物種ごとに行う、
ことを特徴とする付記9に記載の獣道推定装置。
(付記11)
前記距離の相関係数値を計算する処理の前に、前記データ群の先頭のデータに対応するセンサの設置位置から所定の距離を超えるデータを除去する、
ことを特徴とする付記9または10に記載の獣道推定装置。
(付記12)
前記獣道に対応するデータ群を特定する手段は、前記相関係数値が所定の閾値を超え、かつ、前記出現頻度が最高のデータ群を特定する、
ことを特徴とする付記9乃至11のいずれか一項に記載の獣道推定装置。
【符号の説明】
【0042】
1 センサ
11 支柱
12 赤外線センサ
13 マットセンサ
2 中継器
3 サーバ装置
31 検知受信部
32 移動ルート作成部
33 移動ルート評価部
34 獣道判定部
35 獣道出力部
DB1 センサ位置データベース
DB2 検知実績データベース
DB3 移動ルートデータベース
DB4 移動ルート評価結果データベース
4 端末装置
5 携帯端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11