特許第6573831号(P6573831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573831
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】視覚電気生理学デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20190902BHJP
   A61B 3/11 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   A61B3/10 800
   A61B3/11
【請求項の数】27
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-555410(P2015-555410)
(86)(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公表番号】特表2016-504166(P2016-504166A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】US2014013395
(87)【国際公開番号】WO2014117154
(87)【国際公開日】20140731
【審査請求日】2017年1月16日
(31)【優先権主張番号】61/842,102
(32)【優先日】2013年7月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/757,316
(32)【優先日】2013年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/836,971
(32)【優先日】2013年6月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509048716
【氏名又は名称】エルケーシー テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(72)【発明者】
【氏名】デービス、チャールズ、クエンティン
(72)【発明者】
【氏名】ハンレス、フランク
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−501250(JP,A)
【文献】 米国特許第07540613(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の視覚系機能の指標を提供する視覚電気生理学デバイスにおいて、
a.可視の第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタと、
b.上記第1の光エミッタから出射された光が上記患者の眼に到達するように構成された光学アセンブリと、
c.上記患者の眼を撮像するように構成されたカメラと、
d.上記第1の光エミッタからの光出射を変調し、光刺激を生成し、上記患者の視覚系から電気信号を受信して解析を行い、上記解析に基づいて視覚系機能の指標を提供するコントローラと、を備え
記視覚電気生理学デバイスが、上記第1の発光スペクトルとは異なる可視の第2の発光スペクトルを有する第2の光エミッタをさらに備え、上記光学アセンブリは、上記第2の光エミッタから出射された光が上記患者の眼に到達するように構成され、上記コントローラは、上記カメラからの画像を用いて上記眼の瞳孔面積を測定し、上記眼の瞳孔面積の関数として、光刺激のルミナンスを調整し、上記コントローラは、上記第1及び第2の光エミッタからの光出射を変調し、いずれか上記光出射の継続時間の長い方の閃光に対してもう一方の閃光の光波形が時間的に少なくとも50%重なる第1及び第2の閃光を生成する、視覚電気生理学デバイス。
【請求項2】
上記光刺激が、1つ以上の閃光を含み、上記コントローラは、上記カメラと上記光刺激とを同期させ、上記閃光がないときにだけ上記カメラを駆動する、請求項1に記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項3】
上記コントローラが、上記カメラから受信した画像を用いて眼の瞳孔面積を測定し、上記眼の瞳孔面積の非線形凹関数によって光刺激のルミナンスを調整する、請求項1に記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項4】
上記コントローラが、上記眼の瞳孔が特定されていない場合、視覚系機能の指標を提供しない、請求項1に記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項5】
上記視覚電気生理学デバイスが、上記第1の光エミッタから出射された光を測定する光検出器を更に備え、上記コントローラは、上記光検出器からの信号が過剰な外部光を含むと予想される光検出器信号の組と異なっている場合、上記視覚系機能の指標を提供しない、請求項1に記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項6】
上記視覚電気生理学デバイスが、単一のユニットとして皮膚に貼り付けられ、及び上記皮膚から取り外されるように構造的に適応化された、3つの電極を含む電極アレイと、上記電極アレイの第1の電極と第2の電極の間の電位差に等しい電気信号を測定するアナログ/デジタル変換器と、上記電極アレイの第3の電極に電気的に接続されたコモンモード減衰回路と、をさらに備え、上記第3の電極は、上記第1の電極と上記第2の電極との間に配置されている、請求項1に記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項7】
上記コントローラが、上記第1の光エミッタからの光出射を変調して、正弦波、30%から70%の間のデューティサイクルを有する矩形波及び三角波の1つとして変化する網膜照度に近似する周期的光刺激を眼に照射する、請求項1に記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項8】
上記視覚電気生理学デバイスが、710nmより長い波長でエネルギの少なくとも50%を出射する発光スペクトルを有する赤外光エミッタをさらに備え、上記光学アセンブリは、上記赤外光エミッタから出射された光が上記眼に到達するように構成され、上記コントローラは、上記赤外光エミッタからの光出射を変調して、継続時間が40ms未満である赤外閃光を生成し、そして、上記赤外閃光の間に上記第1の光エミッタが出射するエネルギは、上記赤外閃光の間に上記赤外光エミッタが出射するエネルギの50%未満である、請求項1に記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項9】
上記光刺激は、7Hzより高い刺激周波数で周期性を有し、
上記コントローラは、フレームレートで上記カメラから画像を受信し、
上記フレームレートに対する上記刺激周波数の比は、整数の1%以内又は整数の逆数の1%以内である請求項1からのいずれか1つに記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項10】
上記光刺激は、28.31、28.72、32.55Hzの0.1Hz以内又はその整数倍の刺激周波数で周期性を有する請求項1からのいずれか1つに記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項11】
上記視覚電気生理学デバイスが、上記第1の発光スペクトルとは異なる可視の第2の発光スペクトルを有する第2の光エミッタをさらに備え、上記光学アセンブリは、上記第2の光エミッタから出射された光が上記患者の眼に到達するように構成され、上記コントローラは、上記カメラからの画像を用いて上記眼の瞳孔面積を測定し、上記眼の瞳孔面積の関数として、光刺激のルミナンスを調整し、上記コントローラは、上記第1及び第2の光エミッタからの光出射を変調し、いずれか上記光出射の継続時間の長い一方の閃光に対してもう一方の閃光の光波形が時間的に少なくとも90%重なる第1及び第2の閃光を生成する、請求項1から10のいずれか1つに記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項12】
上記第1の発光スペクトル及び第2の発光スペクトルとは異なる可視の第3の発光スペクトルを有する第3の光エミッタを更に備え、上記光学アセンブリは、更に、上記第3の光エミッタから出射された光が上記眼に到達するように構成されており、上記第1の光エミッタは、緑色LEDであり、上記第2の光エミッタは、赤色LEDであり、上記第3の光エミッタは、青色LEDであり、上記コントローラは、上記第3の光エミッタからの光出射をさらに変調して、第3の閃光を生成し、上記第1の閃光、第2の閃光及び第3の閃光は、3つの閃光のいずれか上記光出射の継続時間の最も長い閃光に他の閃光の光波形が時間的に少なくとも90%重なり、そして、上記第1の閃光、第2の閃光及び第3の閃光の継続時間は、全て6ms未満である、請求項11に記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項13】
上記視覚電気生理学デバイスが、上記第1の光エミッタから出射された光を測定する光検出器を更に備え、上記コントローラは、上記光検出器からの信号が閾値を超えない外部光を含むと予想される光検出器信号の組と異なっている場合、上記視覚系機能の指標を提供せず、上記閾値は、1cd/mから200cd/mの間の値である、請求項1から12のいずれか1つに記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項14】
上記コントローラは、上記第1の光エミッタからの光出射を変調して、正弦波として変化する網膜照度に近似する周期的光刺激を眼に照射する、請求項1から13のいずれか1つに記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項15】
患者の視覚系機能の指標を提供する視覚電気生理学デバイスにおいて、
可視の第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタと、
上記第1の光エミッタから出射された光が上記患者の眼に到達するように配置された光学アセンブリと、
上記患者の眼を撮像するように配置されたカメラと、
上記第1の光エミッタからの発光を変調して光刺激を生成するコントローラと、を備え、
上記コントローラは、
上記第1の光エミッタが21ms未満の継続時間及び第1の発光スペクトルを有する可視の第1の閃光を備える光刺激によって上記患者の眼を照射するステップと、
上記眼の瞳孔面積を測定し、上記眼の瞳孔面積の関数として、上記第1の閃光のエネルギを調整するステップと、
上記第1の光エミッタからの光出射を変調し、光刺激を生成し、上記患者から電気信号を受信して解析を行い、上記解析に基づいて視覚系機能の指標を提供するステップと、を実行するよう構成され
1ms未満の継続時間及び上記第1の発光スペクトルとは異なる第2の発光スペクトルを有する可視の第2の閃光によって患者の眼を照射し、上記第1の閃光及び第2の閃光は、いずれか光出射の継続時間の長い方の閃光にもう一方の閃光の光波形が時間的に少なくとも50%重なる、視覚電気生理学デバイス。
【請求項16】
上記眼の瞳孔面積の非線形凹関数によって光刺激のルミナンスを調整することを含む請求項15に記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項17】
上記眼の瞳孔が特定されていない場合、視覚系機能の指標を提供しないことを含む請求項15に記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項18】
上記光検出器からの信号が過剰な外部光を含むと予想される光検出器信号の組と異なっている場合、上記視覚系機能の指標を提供しないことを含む請求項15に記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項19】
患者の皮膚上に単一ユニットとして3つの電極を有する電極アレイを配置し、上記3つの電極が、第1の電極、第2の電極及び第3の電極を含み、第1の電極及び第2の電極が、第1、第2及び第3の電極の他の対よりも互いにより離れて配置されており、そして、第3の電極にコモンモード減衰回路を電気的に接続することを含む請求項15に記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項20】
上記第1の光エミッタからの光出射を変調して、正弦波、30%から70%の間のデューティサイクルを有する矩形波及び三角波の1つとして変化する網膜照度に近似する周期的光刺激を眼に照射することを含む請求項15に記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項21】
710nmより長い波長でエネルギの少なくとも50%を出射し、1Hzより高い赤外閃光周波数を有する赤外閃光によって患者の眼を照射し、そして、上記赤外閃光の間に上記光刺激が出射するエネルギは、上記赤外閃光の間に出射される赤外エネルギの50%未満であることを含む請求項15に記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項22】
上記光刺激が、7Hzより高い閃光周波数を有する閃光を含み、
上記眼の瞳孔面積の測定が、フレームレート周波数で起こり、そして、
上記フレームレート周波数に対する上記閃光周波数の比は、整数の1%以内又は整数の逆数の1%以内である、請求項15から21のいずれか1つに記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項23】
上記光刺激は、28.31、28.72、32.55Hzの0.1Hz以内又はその整数倍の刺激周波数で周期性を有する、請求項15から22のいずれか1つに記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項24】
21ms未満の継続時間及び上記第1の発光スペクトルとは異なる第2の発光スペクトルを有する可視の第2の閃光によって患者の眼を照射し、上記第1の閃光及び第2の閃光は、いずれか上記光出射の継続時間の長い方の閃光にもう一方の閃光の光波形が時間的に少なくとも90%重なることを含む請求項15から23のいずれか1つに記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項25】
上記第1の発光スペクトル及び第2の発光スペクトルとは異なる第3の発光スペクトルを有する可視の第3の閃光によって患者の眼を照射し、上記第1の閃光、第2の閃光及び第3の閃光は、3つの閃光のいずれか上記光出射の継続時間の最も長い閃光に他の閃光の光波形が時間的に少なくとも90%重なり、そして、上記第1の閃光、第2の閃光及び第3の閃光の継続時間は、全て6ms未満であることを含む請求項24に記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項26】
光検出器からの信号が閾値を超える外部光の監視を含む予想される光検出器信号の組と異なっている場合、上記視覚系機能の指標を提供せず、上記閾値は、1cd/mから200cd/mの間の値であることを含む請求項15から25のいずれか1つに記載の視覚電気生理学デバイス。
【請求項27】
上記第1の光エミッタからの光出射を変調して、正弦波として変化する網膜照度に近似する周期的光刺激を眼に照射することを含む請求項15から26のいずれか1つに記載の視覚電気生理学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2013年1月28日に出願された米国仮出願第61/757,316号、2013年6月19日に出願された米国仮出願第61/836,971号及び2013年7月2日に出願された米国仮出願第61/842,102号の優先権を主張する。これらの文献は、引用によって全体が本願に援用される。
<政府の権利>
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)による交付番号9R44EY021121に基づく支援を受けて達成された。したがって、交付に関する諸条件に基づき、米国政府は、本出願について一定の権利を有する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、視覚系機能(visual system function)を評価するための改良された視覚電気生理学デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
網膜電図(electroretinogram:ERG)及び視覚誘発電位(visual evoked potential:VEP)は、視覚系機能を評価するために役立つ診断試験である。例えば、Heckenlively及びArden編、教科書「Principles and Practice of Clinical Electrophysiology of Vision」第二版(2006)は、視覚電気生理学(visual electrophysiology)の補助によって診断できる多数の疾病を説明している。Marmor他(2009)、Hood他(2012)、Holder他(2007)及びOdom他(2010)に開示されているように、これらの試験に最も汎用的な規格も開発されている。特定の具体例として、臨床用ERGの幾つかの特徴は、糖尿病性網膜症に強い相関性を有する(Bresnick及びPalta(1987)、Han及びOhn(2000)、及びSatoh他(1994))。他の具体例として、Kjeka他(2013)は、眼科診察のみではなく、ERG結果に基づく治療判断によって、網膜中心静脈閉塞症の治療の成果が大いに向上することを示している。
【0004】
通常、ERG測定は、眼に直接的に電極を配置し、暗くされた部屋で、大きな装置(例えば、LKC Technologies社のUTASシステム)を用いて記録される。ここでは、散瞳薬を使用して瞳孔を拡大し、電極を眼に配置する前に、麻酔点眼薬を使用して眼の感覚を麻痺させる。眼を光で刺激して視覚系から応答を引き出し、電極を介してこの応答を記録する。この測定は、熟練した技師が行い、この結果は、通常、眼科医又は視覚電気生理学の専門家によって解析される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,540,613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したERGには、侵襲性及び複雑性といった問題があるために、糖尿病性網膜症及び他の病気を評価する用途としては、普及していない。また、米国特許7,540,613に開示されている発明は、これらの短所を改善するものである。しかしながら、より容易に使用でき及び/又は性能が向上した視覚電気生理学デバイスが求められている。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、より容易に使用でき及び/又は性能が向上した視覚電気生理学デバイスを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、その実施形態は、上述した課題を解決する。
すなわち、本発明は、視覚系機能の指標を提供するための視覚電気生理学デバイス及び、患者の視覚系機能の指標を提供する方法の実施形態を開示する。本発明に係る視覚電気生理学デバイス及び、患者の視覚系機能の指標を提供する方法の改善は、個別に又は組み合わせて用いることができ、刺激生成の改善、利便性の向上及びエラー条件の監視を含む。
【0008】
患者の視覚系機能の指標を提供する視覚電気生理学デバイスの実施形態は、可視の第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタを備える。視覚電気生理学デバイスは、更に、第1の光エミッタから出射された光が患者の眼に到達するように構成された光学アセンブリを備える。視覚電気生理学デバイスは、更に、患者の眼を撮像するように構成されたカメラと、コントローラとを備える。コントローラは、第1の光エミッタからの光出射を変調し、光刺激を生成し、患者の視覚系から電気信号を受信して解析を行い、及び解析に基づいて視覚系機能の指標を提供する。
【0009】
幾つかの実施形態においては、視覚電気生理学デバイスは、第1の発光スペクトルとは異なる可視の第2の発光スペクトルを有する第2の光エミッタを更に備え、光学アセンブリは、第2の光エミッタから出射された光が患者の眼に到達するように構成されている。この場合、コントローラは、カメラからの画像を用いて眼の瞳孔面積を測定し、眼の瞳孔面積の関数として光刺激のルミナンスを調整し、コントローラは、第1及び第2の光エミッタからの光出射を変調し、光波形が時間的に重なる第1及び第2の閃光を生成する。
【0010】
他の実施形態では、光刺激は、1つ以上の閃光を含み、コントローラは、カメラと光刺激とを同期させ、閃光がないときにだけカメラを駆動する。
【0011】
他の実施形態では、コントローラは、カメラから受信した画像を用いて眼の瞳孔面積を測定し、眼の瞳孔面積の非線形凹関数によって光刺激のルミナンスを調整する。
【0012】
他の実施形態では、コントローラは、眼の瞳孔が特定されていない場合、視覚系機能の指標を提供しない。
【0013】
他の実施形態では、視覚電気生理学デバイスは、第1の光エミッタから出射された光を測定する光検出器を更に備え、コントローラは、光検出器からの信号が過剰な外部光を含むと予想される光検出器信号の組と異なっている場合、視覚系機能の指標を提供しない。
【0014】
他の実施形態では、コントローラは、カメラからの画像を用いて眼の瞳孔面積を測定し、眼の瞳孔面積の関数として光刺激のルミナンスを調整する。更に、視覚電気生理学デバイスは、電気インピーダンス計を備え、コントローラは、電気インピーダンス計が目標値を下回るインピーダンスを測定するまでは、視覚系機能の指標を提供しない。
【0015】
他の実施形態では、コントローラは、第1の光エミッタからの光出射を変調して、正弦波、30%から70%の間のデューティサイクルを有する矩形波及び三角波の1つとして変化する網膜の照度に近似する周期的視覚刺激を眼に照射する。
【0016】
幾つかの実施形態では、コントローラは、第1の光エミッタからの光出射を変調して、継続時間が21ms未満の第1の閃光を生成する。また、コントローラは、第2の光エミッタからの光出射を変調して、継続時間が21ms未満の第2の閃光を生成する。第1の閃光及び第2の閃光は、いずれか光出射の継続時間の長い一方の閃光に対して光波形が時間的に少なくとも50%重なっていてもよい。コントローラは、フレームレートでカメラから画像を受信し、受信した画像を用いて眼の瞳孔面積を測定し、眼の瞳孔面積の関数として、第1の閃光のエネルギを調整してもよい。コントローラは、患者から電気信号を受信して解析を行い、解析に基づいて、視覚系機能の指標を提供してもよい。
【0017】
本発明の他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する視覚電気生理学デバイスは、400nmから710nmの間で少なくともそのエネルギの50%を出射する第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタを備える。視覚電気生理学デバイスは、更に、患者の眼を撮像するように構成されたカメラを備える。視覚電気生理学デバイスは、更に、第1の光エミッタから出射された光が眼に到達するように構成された光学アセンブリを備える。また、視覚電気生理学デバイスは、第1の光エミッタからの光出射を変調し、1Hzより高い閃光周波数を有する第1の閃光を生成するコントローラを有する。コントローラは、フレームレートでカメラから画像を受信する。コントローラは、画像を用いて眼の瞳孔面積を測定し、この面積の関数として、第1の閃光のエネルギを調整する。フレームレートに対する閃光周波数の比は、整数又は整数分の1(整数の逆数)である。コントローラは、更に、電気信号を受信して解析し、視覚系機能の指標を提供する。
【0018】
他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する視覚電気生理学デバイスは、400nmから710nmの間で少なくともそのエネルギの50%を出射する第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタを備える。また、視覚電気生理学デバイスは、710nmより長い波長でそのエネルギの少なくとも50%を出射する第2の発光スペクトルを有する赤外光エミッタを備える。また、視覚電気生理学デバイスは、第1の光エミッタ及び赤外光エミッタから出射された光が患者の眼に到達するように構成された光学アセンブリを備える。また、視覚電気生理学デバイスは、コントローラを備える。コントローラは、第1の光エミッタからの光出射を変調して、継続時間が21ms未満の第1の閃光を生成する。また、コントローラは、赤外光エミッタからの光出射を変調し、継続時間が40ms未満の赤外閃光を生成する。赤外閃光の間に第1の光エミッタが出射するエネルギは、赤外閃光の間に赤外光エミッタが出射するエネルギの50%未満である。コントローラは、患者から電気信号を受信して解析を行い、解析に基づいて、視覚系機能の指標を提供してもよい。
【0019】
他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する視覚電気生理学デバイスは、単一のユニットとして皮膚に貼り付けられ、及び皮膚から取り外されるように構造的に適応化された、3つの電極を含む電極アレイを備える。また、視覚電気生理学デバイスは、電極アレイの第1の電極と第2の電極の間の電位差に等しい電気信号を測定するアナログ/デジタル変換器を備える。更に、視覚電気生理学デバイスは、電極アレイの第3の電極に電気的に接続されたコモンモード減衰回路を備える。第1の電極と第2の電極の間の距離は、第1の電極と第3の電極の間の距離より長く、第1の電極と第2の電極の間の距離は、第2の電極と第3の電極の間の距離より長い。また、視覚電気生理学デバイスは、コントローラを備える。
【0020】
ある実施形態では、視覚電気生理学デバイスは、400nmから710nmの間で少なくともそのエネルギの50%を出射する第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタと、第1の光エミッタから出射された光が患者の眼に到達するように構成された光学アセンブリとを備える。コントローラは、第1の光エミッタからの光出射を変調して、継続時間が21ms未満の第1の閃光を生成してもよい。コントローラは、更に、電気信号を受信して解析し、この解析に基づいて、視覚系機能の指標を提供することができる。
【0021】
他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する視覚電気生理学デバイスは、400nmから710nmの間で少なくともそのエネルギの50%を出射する第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタを備える。視覚電気生理学デバイスは、更に、第1の光エミッタから出射された光が患者の眼に到達するように構成された光学アセンブリを備える。視覚電気生理学デバイスは、更に、患者の眼を撮像するように構成されたカメラを備える。また、視覚電気生理学デバイスは、第1の光エミッタからの光出射を変調し、21msより短い継続時間を有する第1の閃光を生成するコントローラを有する。また、コントローラは、カメラから画像を受信し、更に患者の視覚系から電気信号を受信して解析し、視覚系機能の指標を提供することができる。コントローラは、眼の瞳孔が特定されるまで、指標を提供しない。
【0022】
他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する視覚電気生理学デバイスは、患者の視覚系から電気信号を受信する電極を備える。また、視覚電気生理学デバイスは、400nmから710nmの間で少なくともそのエネルギの50%を出射する第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタを備える。視覚電気生理学デバイスは、更に、第1の光エミッタから出射された光が患者の眼に到達するように構成された光学アセンブリを備える。また、視覚電気生理学デバイスは、第1の光エミッタから出射された光を測定する光検出器を備える。また、視覚電気生理学デバイスは、コントローラを備える。コントローラは、第1の光エミッタからの光出射を変調して第1の閃光を生成し、更に電気信号を受信及び解析して視覚系機能の指標を提供することができる。また、コントローラは、光検出器から信号を受信でき、コントローラは、光検出器からの信号が予想される光検出器信号の組と異なっている場合、視覚系機能の指標を提供しない。
【0023】
他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する視覚電気生理学デバイスは、400nmから710nmの間で少なくともそのエネルギの50%を出射する第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタを備える。視覚電気生理学デバイスは、更に、第1の光エミッタから出射された光が患者の眼に到達するように構成された光学アセンブリを備える。また、視覚電気生理学デバイスは、第1の光エミッタから出射された光を測定する光検出器を備える。また、視覚電気生理学デバイスは、コントローラを備える。コントローラは、第1の光エミッタからの光出射を変調して第1の閃光を生成し、更に患者の視覚系から電気信号を受信して解析し、視覚系機能の指標を提供することができる。また、コントローラは、光検出器から信号を受信でき、コントローラは、光検出器からの信号が予想される光検出器信号の組と異なっている場合、指標を提供しない。
【0024】
他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する視覚電気生理学デバイスは、400nmから710nmの間で少なくともそのエネルギの50%を出射する第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタを備える。視覚電気生理学デバイスは、更に、第1の光エミッタから出射された光が患者の眼に到達するように構成された光学アセンブリを備える。視覚電気生理学デバイスは、更に、患者の眼を撮像するように構成されたカメラを備える。また、視覚電気生理学デバイスは、第1の光エミッタからの光出射を変調し、21msより短い継続時間を有する第1の閃光を生成するコントローラを有する。コントローラは、カメラから画像を受信し、カメラからの画像を用いて眼の瞳孔面積を測定し、この面積の関数として第1の閃光のエネルギを調整する。更に、コトンローラは、患者の視覚系から電気信号を受信して解析し、視覚系機能の指標を提供することができる。また、視覚電気生理学デバイスは、電気インピーダンス計を備え、コントローラは、電気インピーダンス計が1GΩを下回るインピーダンスを測定するまでは、指標を提供しない。
【0025】
他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、21ms未満の継続時間及び第1の発光スペクトルを有する可視の第1の閃光によって患者の眼を照射するステップを有する。患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、更に、21ms未満の継続時間及び第1の発光スペクトルとは異なる第2の発光スペクトルを有する可視の第2の閃光によって患者の眼を照射するステップを有する。第1の閃光及び第2の閃光は、長い方の閃光に時間的に少なくとも50%重なる。患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、更に、眼の瞳孔面積を測定し、眼の瞳孔面積の関数として、第1の閃光のエネルギを調整するステップと、患者から電気信号を受信して解析を行い、解析に基づいて、視覚系機能の指標を提供するステップとを有する。
【0026】
患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、更に、患者の眼を撮像するステップと、カメラから画像を受信するステップと、カメラからの画像を用いて眼の瞳孔面積を測定するステップと、この面積の関数として第1の閃光のエネルギを調整するステップとを有していてもよい。他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、閃光周波数が7Hzより高い閃光を含む可視光刺激によって患者の眼を照射するステップを有する。患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、更に、フレームレート周波数で眼の瞳孔面積を測定し、眼の瞳孔面積の関数として、可視光刺激のルミナンスを調整するステップと、患者から電気信号を受信して解析を行い、解析に基づいて、視覚系機能の指標を提供するステップとを有し、フレームレート周波数に対する刺激周波数の比は、整数の1%以内又は整数の逆数の1%以内である。
【0027】
患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、更に、710nmより長い波長でエネルギの少なくとも50%を出射し、赤外閃光周波数が1Hzより高い赤外閃光によって、患者の眼を照射するステップを有していてもよく、赤外閃光の間に出射される第1の可視光刺激のエネルギは、赤外閃光の間に出射される赤外線のエネルギの50%未満である。患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、更に、フレームレート周波数で眼の瞳孔面積を測定し、眼の瞳孔面積の関数として、第1の可視光刺激のルミナンスを調整するステップと、第2の可視光刺激によって患者の眼を照射するステップとを有していてもよい。この場合、第1の可視光刺激は、21ms未満の継続時間及び第1の発光スペクトルを有する可視の第1の閃光を含むことができる。第2の可視光刺激は、21ms未満の継続時間及び第1の発光スペクトルとは異なる第2の発光スペクトルを有する可視の第2の閃光を含むことができる。第1の閃光及び第2の閃光は、長い方の閃光に時間的に少なくとも50%重なっていてもよく、フレームレート周波数に対する赤外閃光周波数の比は、整数の1%以内又は整数の逆数の1%以内である。
【0028】
他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、患者の皮膚に、単一のユニットとして、3個の電極を含む電極アレイを配置するステップであって、3個の電極は、第1の電極、第2の電極及び第3の電極を含み、第1及び第2の電極は、第1、第2及び第3の電極の他の如何なる組み合わせよりも離間しているステップを有し、第3の電極には、コモンモード減衰回路を電気的に接続する。患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、更に、第1の可視光刺激によって患者の眼を照射するステップと、第1の電極と第2の電極との間の電位差を測定し、測定に基づいて視覚系機能の指標を提供するステップとを有する。
【0029】
患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、更に、710nmより長い波長でエネルギの少なくとも50%を出射し、赤外閃光周波数が1Hzより高い赤外閃光によって、患者の眼を照射するステップと、フレームレート周波数で眼の瞳孔面積を測定し、眼の瞳孔面積の関数として、第1の光刺激のルミナンスを調整するステップとを有していてもよく、フレームレート周波数に対する閃光周波数の比は、整数の1%以内又は整数の逆数の1%以内であってもよい。患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、更に、第2の可視光刺激によって患者の眼を照射するステップを更に有していてもよい。この場合、第1の可視光刺激は、7Hzより高い刺激周波数を有し、可視の第1の閃光及び21ms未満の継続時間を有し、第1の発光スペクトルを有していてもよい。第2の可視光刺激は、可視の第2の閃光を有し、21ms未満の継続時間を有し、第1の発光スペクトルとは異なる第2の発光スペクトルを有していてもよい。赤外閃光の間に出射される可視の第1の閃光のエネルギは、赤外閃光の間に出射される赤外線のエネルギの50%未満であってもよく、可視の第1及び第2の閃光は、長い方の可視の閃光に時間的に少なくとも50%重なっていてもよい。
【0030】
他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、400nmから710nmの間で少なくともそのエネルギの50%を出射する第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタから第1の光を出射し、患者の眼に照射するステップを有する。患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、更に、710nmより長い波長でエネルギの少なくとも50%を出射する赤外線出射スペクトルを有する赤外光エミッタから赤外光を出射し、患者の眼に照射するステップを有する。また、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、第1の光エミッタを制御して第1の光を変調し、21ms未満の継続時間を有する第1の閃光を生成する。また、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、赤外光エミッタを制御して、赤外光を変調し、40ms未満の継続時間を有する赤外閃光を生成し、赤外閃光の間に第1の光エミッタが出射するエネルギは、赤外閃光の間に赤外光エミッタが出射するエネルギの50%未満である。更に、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、患者から電気信号を受信して解析し、視覚系機能の指標を提供するステップを有する。
【0031】
他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、患者の皮膚に、単一のユニットとして、3個の電極を含む電極アレイを配置するステップを有し、3個の電極は、第1の電極、第2の電極及び第3の電極を含み、第1の電極と第2の電極の間の距離は、第1の電極と第3の電極の間の距離より長く、第1の電極と第2の電極の間の距離は、第2の電極と第3の電極の間の距離より長い。また、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、400nmから710nmの間で少なくともそのエネルギの50%を出射する第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタから第1の光を出射し、患者の眼に照射するステップを有する。また、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、第1の光エミッタを制御して第1の光を変調し、21ms未満の継続時間を有する第1の閃光を生成する。また、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、第1の電極と第2の電極との間の電位差を測定し、測定に基づいて視覚系機能の指標を提供するステップとを有する。
【0032】
他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、400nmから710nmの間で少なくともそのエネルギの50%を出射する第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタから第1の光を出射し、患者の眼に照射するステップを有する。また、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、第1の光エミッタを制御して第1の光を変調し、21ms未満の継続時間を有する第1の閃光を生成する。患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、更に、患者の眼を撮像するステップと、カメラから画像を受信するステップと、カメラからの画像を用いて眼の瞳孔面積を測定するステップと、この面積の非線形凹関数として第1の閃光のエネルギを調整するステップとを有していてもよい。更に、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、患者から電気信号を受信して解析し、視覚系機能の指標を提供するステップを有する。
【0033】
他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、400nmから710nmの間で少なくともそのエネルギの50%を出射する第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタから第1の光を出射し、患者の眼に照射するステップを有する。また、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、第1の光エミッタを制御して第1の光を変調し、21ms未満の継続時間を有する第1の閃光を生成する。患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、更に、患者の眼を撮像するステップと、カメラから画像を受信するステップと、患者から電気信号を受信して解析し、視覚系機能の指標を提供するステップとを有し、この指標は、眼の瞳孔が特定されるまでは提供されない。
【0034】
他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、400nmから710nmの間で少なくともそのエネルギの50%を出射する第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタから第1の光を出射し、患者の眼に照射するステップを有する。また、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、第1の光エミッタを制御して第1の光を変調し、21ms未満の継続時間を有する第1の閃光を生成する。また、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、第1の光エミッタから出射された光を光検出器によって測定し、光検出器から信号を受信するステップを有する。更に、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、患者から電気信号を受信して解析し、視覚系機能の指標を提供するステップを有し、この指標は、光検出器からの信号が予想される光検出器信号の組と異なっている場合、提供されない。
【0035】
他の実施形態では、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、400nmから710nmの間で少なくともそのエネルギの50%を出射する第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタから第1の光を出射し、患者の眼に照射するステップを有する。また、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、第1の光エミッタを制御して第1の光を変調し、21ms未満の継続時間を有する第1の閃光を生成する。患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、更に、患者の眼を撮像するステップと、カメラから画像を受信するステップとを有する。また、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、患者から電気信号を受信して解析し、視覚系機能の指標を提供するステップとを有する。患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、患者から受信した電気信号に関連する電気的インピーダンスを測定するステップを有し、電気インピーダンス計が1GΩを下回るインピーダンスを測定するまでは、指標を提供しない。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、より容易に使用でき及び/又は性能が向上した視覚電気生理学デバイス及び、患者の視覚系機能の指標を提供する方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】例示的な視覚電気生理学デバイスの断面図である。
図2図1の視覚電気生理学デバイスに含まれるコンポーネントを示す概略図である。
【0038】
図3A】視覚電気生理学デバイスから出射されたルミナンスの観点から、ルミナンスと瞳孔面積との間の3つの例示的な関係を示す図である。
図3B】網膜照度の観点から、ルミナンスと瞳孔面積との間の3つの例示的な関係を示す図である。
【0039】
図4A】ここに説明する例示的な実施形態の光出力と時間のタイミングチャートであって、周期的合成白色光刺激と、これに続く赤外閃光とを示すタイミングチャートである。
図4B】ここに説明する例示的な実施形態の光出力と時間のタイミングチャートであって、高周波合成白色光背景がスーパーインポーズされた周期的合成白色光刺激と、これに続く赤外閃光とを示すタイミングチャートである。
【0040】
図5A】ここに説明する例示的な実施形態の光出力と時間のタイミングチャートであって、所望の正弦波及びそのパルス幅変調(PWM)近似を示すタイミングチャートである。
図5B】ここに説明する例示的な実施形態の光出力と時間のタイミングチャートであって、所望の三角波形及びそのPWM近似を示すタイミングチャートである。
図5C】ここに説明する例示的な実施形態の光出力と時間のタイミングチャートであって、矩形波及びそのPWM近似を示すタイミングチャートである。
【0041】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、複数の実施形態を例示し、以下の記述と共に、ここに開示する実施形態の新規な原理を説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
改善された視覚電気生理学デバイス(visual electrophysiology device)及び改善された視覚電気生理学に基づく方法の実施形態を開示する。これらのデバイス及び方法は、患者の視覚系機能の指標を提供するために用いることができる。眼に向けられる光刺激を制御し、眼が光に応答して生成する電気信号を測定する電気回路がある。視覚電気生理学デバイスの動作は、光によって眼を刺激し、刺激に対する電気的応答を測定することを含む。例えば、閃光と、電気的応答のピークの時間との間のタイムスパンによって、患者の網膜虚血の度合いを調べることができる。
【0043】
本発明の実施形態は、刺激の一貫性を高め、データ収集を改善し、及び/又はエラー条件をチェックすることによって、既存の視覚電気生理学デバイスの測定を改善できる。眼への刺激は、閃光又は他の変調された光波形を含むことができる。眼への刺激は、単一の閃光を含むことができる。眼への刺激は、知覚に対して一定の又は緩やかにのみ変化する背景照射を含むことができる。
【0044】
実施形態は、第1の発光スペクトルを有する第1の光エミッタを提供できる。第1の光エミッタは、可視発光スペクトルを有することができ、例えば、緑色、赤色、オレンジ色、青色、琥珀色又は黄色の光を出射することができる。第1の光エミッタは、LEDであってもよい。オプションとして、それぞれ別個のスペクトルを有する他の(2個、3個、4個又は5個以上の)可視光エミッタを設けてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、それぞれ、赤色、緑色及び青色エミッタを有する4つのLEDを用いてもよい。幾つかの実施形態では、710nmより長い波長で少なくともそのエネルギの50%を出射する赤外光エミッタを設けてもよい。他の光エミッタを設けてもよい。
【0045】
幾つかの実施形態は、コントローラを用いてエミッタの出力を変調して、複数のエミッタがある期間(例えば、6ms、21ms又は40ms)光を出射し、少なくとも幾つかの可視光エミッタから出射された光が時間的に重なるようにしてもよい。幾つかの実施形態では、各エミッタの出射持続時間は、異なる(例えば、第2の光エミッタは、第1の光エミッタより長い期間に亘って発光する)。
【0046】
幾つかの実施形態では、カメラを用いて瞳孔サイズを測定するため、光刺激ルミナンスを調整して、有効な網膜の刺激による瞳孔サイズへの影響を低減することができ、例えば、光刺激ルミナンスは、線形関数によって眼の瞳孔面積の逆数に関係付けることができ、又は光刺激ルミナンスは、非線形凹関数によって、眼の瞳孔面積の逆数に関係付けることができる。
【0047】
光エミッタは、例えば、継続的に光出力を変調することによって、又はパルス幅変調(pulse-width modulation:PWM)方式で閃光を照射することによって、略々正弦波、三角波又は矩形波の網膜照射を照射するように構成することができる。様々な実施形態では、光刺激、オプションの赤外光閃光及びカメラ撮像の時間又は周波数同期によって、より一貫した刺激、画像収集、光刺激ルミナンス調整等を提供できる。ここに説明するように、これらの光エミッタの特性を変更することによって、実施形態は、既存の視覚電気生理学デバイスの結果を向上させる。
【0048】
実施形態は、電極アレイを用いて、コモンモード減衰回路によって中央電極を駆動し、より遠くに分離している外側の電極間の電位差を測定することによって、既存の視覚電気生理学デバイスを改善する。この回路構成によって、使い易い電極アレイを提供しながら、電気信号の規模を最大化できる。
【0049】
幾つかの実施形態は、エラー条件をチェックすることによって既存の視覚電気生理学デバイスを改善する。電気的インピーダンス測定を用いて、視覚電気生理学デバイスが十分低いインピーダンスで電気的に患者に接続されていることを確認してもよい。例えば、電気的接続を達成するために、電極アレイが患者に十分に取り付けられていないことを検出してもよい。また、光検出器を用いて、例えば、望ましくない外部光が十分小さいこと、及び/又は所望の光刺激が実際に生成されていることを確認してもよい。また、瞳孔検出を用いて、患者の眼が存在し、開いており、生成された光刺激が患者の眼に入っていることを確認してもよい。
【0050】
また、上述した説明の組み合わせも想到される。これらの複合及び使用の、患者の視覚系機能の指標を提供する方法も想到される。幾つかの実施形態は、詳細な説明から明らかな他の手法で、既存の視覚電気生理学デバイスを改善する。
【0051】
<定義>
ここに説明する実施形態を明瞭にするために、幾つかの用語を以下のように定義する。他の用語は、この開示の他の部分で定義される。
【0052】
「光エミッタ(light emitter)」とは、紫外線(UV)、可視光及び赤外線(IR)範囲で電磁照射を放つあらゆる物体を指す。例示的な光エミッタは、LED、ディスプレイデバイス、並びにキセノン閃光電球及び蛍光球等のガス放電デバイスを含む。ここでは、「赤外光(infrared)」を略語の「IR」で示す場合がある。
【0053】
「LED」は、発光ダイオード(light emitting diode)を示す。LEDは、半導体LED、有機LED及び量子ドットLEDを含む。LEDは、集積化された発光体(integrated phosphors)を含む。
【0054】
「患者」とは、生理的電気信号が測定される人間又は他の哺乳類を意味する。視覚電気生理学デバイスは、患者の視覚系を刺激し、この刺激に対する生理反応の測定できるように、患者に近接する位置に配置される。
【0055】
「網膜照度」とは、ルミナンスと瞳孔面積の積を意味する。単位トロランド(Tdと略す)は、ルミナンスの単位をcd/m、瞳孔面積の単位をmmとした網膜照度の尺度である。
【0056】
「視覚系機能の指標」とは、光に応答する患者の視覚系から電気信号の解析結果を意味する。これは、例えば、眼底撮影、OCT等による眼の構造のイメージング、又はスネレン視標を用いる視力等の心理物理的な測定値のみに基づく視覚系の他の測定結果とは区別される。
【0057】
<説明>
以下、様々な実施形態、更なる目的、特徴及びこれらの利点について、説明する。
図1は、患者の視覚系機能の指標を提供する例示的な視覚電気生理学デバイス100を示している。アイカップ107は、眼の周りの骨の領域に接触し、視覚電気生理学デバイスを患者に対して又は患者近くで維持する。光エミッタ106は、患者の眼に光を方向付ける光学アセンブリ104に光を照射する。この具体例では、光学アセンブリ104は、光エミッタ106から出射された光を拡散させて患者の眼に照射する積分球として機能する。拡散光源により、網膜の大部分を精査でき、患者の固定の影響を減じることができる。他の例示的な光学アセンブリでは、光エミッタ106からの光が患者の眼に達する前に、この光を反射させる必要はなく、例えば、光は、屈折させてもよく、拡散させてもよく、散乱させてもよく、又は光エミッタと患者の眼との間に直接的な光路を設けてもよい。
【0058】
光エミッタ106は、1個、2個、3個又は4個以上の発光源を有することができる。例えば、光エミッタ106は、第1の光エミッタであってもよく、これは、LED又は異なるタイプの光エミッタであってもよい。第1の光エミッタは、第1の発光スペクトルを有する。幾つかの実施形態では、第1の光エミッタは、緑色、赤色、オレンジ色、青色、琥珀色又は黄色の光を出射することができる。例えば、第1の光エミッタは、緑色LEDであってもよい。
【0059】
また、光エミッタ106は、第2の光エミッタであってもよい。オプションの第2の光エミッタは、例えば、第1の発光スペクトルとは異なる可視の第2の発光スペクトルを有する。第2の光エミッタは、存在する場合、発光スペクトルが第1の発光スペクトルから異なることを条件に、緑色、赤色、オレンジ色、青色、琥珀色又は黄色の光を出射することができる。オプションの第2の光エミッタは、LEDであってもよく、又は異なるタイプの光エミッタであってもよく、例えば、赤色LEDであってもよい。
【0060】
また、光エミッタ106は、第3の光エミッタであってもよい。オプションの第3の光エミッタは、例えば、第1及び第2の発光スペクトルとは異なる可視の第3の発光スペクトルを有する。第3の光エミッタは、存在する場合、発光スペクトルが第1及び第2の発光スペクトルから異なることを条件に、緑色、赤色、オレンジ色、青色、琥珀色又は黄色の光を出射することができる。オプションの第3の光エミッタは、LEDであってもよく、又は異なるタイプの光エミッタであってもよく、例えば、青色LEDであってもよい。
【0061】
視覚電気生理学デバイス100は、別個のスペクトルを有する更なる(例えば、4個、5個、6個、7個又は8個以上)可視光エミッタを有することができ、例えば、4つの異なる可視スペクトル源を有することによって、人間の患者において、円錐型又はロッド型の3つのタイプのうちの1つの独立した刺激が可能になる(Shapiro他(1996))。
【0062】
光エミッタ106は、例えば、RGB LEDであってもよく、例えば、CREE CLV6Aa、Avago ASMT−MT000−0001又はOsram LRTD−C9TPであってもよい。光エミッタ106は、例えば、赤色、緑色、青色、白色LEDであってもよく、例えば、CREE XLamp XM−Lであってもよい。個別のLED又は他の光源を用いてもよい。視覚電気生理学デバイス100の断面では、光エミッタ106の2つのコンポーネントが見えており、反対側にもう2つのコンポーネントがあり、合計で4個のコンポーネントがある。光エミッタ106のコンポーネントの数は、4個である必要はなく、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個又は12個以上であってもよい。光エミッタ106のコンポーネントの数を多くすると、積分球における光の均一性が向上し、光出力をより明るくできるが、コンポーネントの数の増加によって、製造の困難性及びコストが上昇するという不利益もある。
【0063】
図1に示すように、カメラ101は、光学アセンブリ104内の孔及びアイカップ107を介して、患者の眼をイメージングすることができる。アイカップ107は、患者の眼の周りの領域に取り付けられるように設計でき、これによって、視覚電気生理学デバイス100の外部から眼に達する光量を減少させる。これに代えて、アイカップ107は、患者に接触しないように設計することもできる。オプションの固定光102は、検査プロセスの間、患者を固定させるためのターゲットを提供できる。赤外光エミッタ103を用いる場合、710nmより長い波長でそのエネルギの少なくとも50%が出射される。赤外光エミッタ103を用いて、カメラ101の露光時間の間、患者の眼を照射することができる。幾つかの実施形態では、視覚電気生理学デバイス100は、カメラ101も赤外光エミッタ103も有していなくてもよい。
【0064】
患者から電気信号を受信できるように、患者コネクタ108を用いて、患者への一組の電気的接続を行うことができる。電気信号は、ケーブルを介して視覚電気生理学デバイス100に動作的に接続された様々な数(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個以上)の電極を用いて、患者から取得できる。応答を測定する位置の具体例としては、眼の表面(例えば、ビュリアン−アレン(Burian Allen)電極、DTL電極、ERG Jet電極)、上皮下(例えば、針電極)、眼の近くの皮膚(例えば、米国の特許出願61/696,499に記載されているLKCセンサストリップ(LKC Sensor Strip)電極)、頭の後部又は頂部(例えば、ゴールドカップ電極)等が含まれる。
【0065】
図2は、先に米国特許第7,540,613号に開示されている、図1の視覚電気生理学デバイス100内に含むことができるコンポーネントを概略的に示している。図2の光エミッタ106は、眼144に光刺激を提供する。現在の明度が高いLEDは、効率的な拡散体を用いて本発明を実施するために十分な明度を有するが、幾つかの用途では、光エミッタ106のために複数のLEDを用いてもよい。
【0066】
光エミッタ106は、視覚電気生理学デバイス100を全体的に制御するコントローラ110によって制御される。コントローラ110は、マイクロコントローラであってもよく、又はプロセッサ、メモリ及び視覚電気生理学デバイス100の他のコンポーネントへの他の接続を有するマイクロコンピュータデバイスであってもよい。コントローラ110は、ここに説明する機能及び制御を実行するように予めプログラミングされたコンピュータであってもよい。これに代えて、コントローラ110は、(例えば、機能追加又はアップデートのための)リモートプログラミングを可能にする無線接続又は有線接続を含んでいてもよい。コントローラ110をどのようにプログラミングし、動作させるかは、当業者にとって明らかである。光エミッタ106の制御は、コントローラ110によって行われ、コントローラ110は、後述するように光源及びカメラ光源の点灯のタイミング、並びにこれらの強度、周波数及び同期を制御できる。一例として、コントローラ110は、LED等の光エミッタ106の動作を変調して、所定の時間幅の一連の短い閃光を提供できるが、以下に更に説明するように、他の刺激波形又は刺激周波数を使用してもよい。
【0067】
光エミッタ106は、球状散光反射体142の内部に光を出射するように配置され、これによって、光源からの光は、あらゆる方向から眼144に向かって一様に方向付けられる。ここに例示した実施形態では、球状散光反射体142は、反射率を高めるために白色の内表面を有するように構成された球状体である。白色の表面は、コーティングであってもよく(例えば、塗料)、又は、例えば、白色プラスチックによって球状散光反射体142を形成してもよい。球状散光反射体142を使用することによって、眼144の網膜の大部分に均等な照明を行うことができる。球状散光反射体142は、光学アセンブリ104の一例である。
【0068】
図2に戻って説明すると、上述したように、光エミッタ106による光刺激によって、眼144から電気信号を発生させることができ、この電気信号は、例えば、眼144に最も近い患者の皮膚に接触する電極132,134によって感知でき、更にこの電気信号は、ワイヤ148を介して、ブロック150として示す増幅器及びアナログ/デジタル(A/D)変換器に供給される。A/D変換器(例えば、図1の電子回路基板109上に配設されている。)は、電極上の電気信号を測定し、コントローラ110に情報を提供することができる。コントローラ110は、例えば、上述した背景技術の説明に示した引用文献に開示されているような技術を用いて、電気信号を解析し、視覚系機能の指標を提供する。
【0069】
上述したように、電極132,134によって感知される電気信号からのデータの解析は、コントローラ110によって実行される。特に、患者の網膜虚血のためのアルゴリズム等が既に発表されている。例えば、このようなアルゴリズムは、Severns他(1991)、Severns及びJoshson(1991)、Kjeka他(2013)等に開示されている。背景技術の部分で紹介した引用文献には、他の疾病のためのアルゴリズムも記述されている。
【0070】
例示的な実施形態では、皮膚電極132,134からの信号に存在する雑音の量を解析し、正確で臨床的に有意な測定を行うことができるかを判定する。信号対雑音比が限界に近い場合、推定を改善するために追加的データを収集することができる。次に、正弦波をデータに当て嵌め、刺激のアクチュエートと眼の最大応答との間の経過時間の量を判定する。この測定は、眼の虚血の程度に関する非常に敏感な測定であることが示されている(Severns他(1991))。
【0071】
視覚電気生理学デバイス100(図1)は、更なるコンポーネントとして、各テストを開始し及び設定をカスタマイズするために使用される操作子120を有する。更に、視覚電気生理学デバイス100は、各検査の結果をユーザに視覚的に表示するディスプレイ118を備えることができ、すなわち、ディスプレイ118は、眼の網膜虚血の量に関連する情報をユーザに視覚的に表示する。
【0072】
増幅器は、24ビット(又はこれ以上)のA/D変換器を用いる生体増幅器(biomedical amplifier)であってもよく、これによって、従来の増幅器の利得調整及び飽和からの回復の遅延を排除することができる。通常、従来の増幅器は、利得設定がA/D変換器の入力範囲に正しく一致していることを確認するために、検査の間、技術者が監視を行う必要があった。更に、このような従来の増幅器は、飽和する(入力信号に応答しない)ことがあり、信号に応答する能力を回復するために何十秒もの時間が掛かることがあった。飽和は、患者から応答の欠如から区別することが困難であり、したがって、信号取得を高い信頼度で自動化することが困難であった。
【0073】
このような問題を回避するために、視覚電気生理学デバイス100は、(32倍を超えない)低利得差動増幅器と、高分解能(通常、18ビット以上)の差動A/D変換器とを用いて、皮膚電極132,134を介して、眼144から信号を取得する。したがって、増幅器は、入力波形を非常に忠実に再生しながら、雑音及びオフセットに対する許容度が高い。また、ブロック150の増幅器及びA/D変換器は、干渉信号によって生じる飽和の遅延にも耐性を有する。幾つかの実施形態では、増幅器及びA/D変換器は、同じデバイスに組み込むことができる(例えば、テキサスインスツルメンツ社(Texas Instruments)から入手できるADS1220,ADS1248,ADS1292,ADS1294,ADS1298又はADS1299、又はアナログデバイス社(Analog Devices)から入手できるAD7195,AD7194,AD7193,AD7799,AD7738)。幾つかの実施形態では、増幅器を使用しない。システムの入力インピーダンスは、非常に高く(>10MΩ)、このため、皮膚に接触する電極132,134の比較的高いインピーダンスは、結果に影響しない。ブロック150内のA/D変換器の出力は、コントローラ110に接続され、コントローラ110は、データを解析する。
【0074】
1つの眼のために用いられる全ての電極は、自己接着型電極アレイ(self-adhering electrode array)内に好適に設けることができ、これについては、2012年9月4日に出願された米国仮出願第61/696,499号及び2013年9月4日に出願された国際出願PCT/US13/58007号に開示されており、これらは、引用によって本願に援用されるものとする。幾つかの実施形態では、各眼のためのアレイに、それぞれ3つの電極を用いる。A/D変換器(例えば、電子回路基板109上に配設されている。)は、電極アレイ内の第1の電極と第2の電極との間の電位差を測定でき、電極アレイ内の第3の電極には、コモンモード減衰回路を電気的に接続できる。これらの電極の有利で新規な構成は、第1の電極と第2の電極との間の距離が、第1の電極と第3の電極との間の距離及び第2の電極と第3の電極との間の距離の両方より長い点である。この結果、コモンモード減衰回路は、3つの電極の中央に接続されているとみなすことができる。
【0075】
これに対し、(Marmor他によるISCEV規格(2009)に記載されているように)既存の技術では、コモンモード減衰回路電極を耳たぶ等の遠隔位置に設けている。電極が小さいセンサアレイ上に配置されている場合、第1の電極と第2の電極との間の距離を最大にすることによって性能が向上する。例えば、一実施形態では、第1の電極を眼の下に配置し、第2の電極をこめかみの近くに配置し、第3の電極を第1の電極と第2の電極との間に配置してもよい。コモンモード減衰回路は、例えば、電力線と人体の間の容量結合によって生じる電極及びA/D変換器上の信号間のコモンモード電圧差を低減する。コモンモード干渉を低減することによって、電極の間の電位測定をより正確に行うことができる。例示的なコモンモード減衰回路は、右足駆動回路(right leg drive circuit)を含み、A/D変換器の電位に対して、定電位である。
【0076】
電子回路基板109は、第1の光エミッタからの光出射を変調して21msより短い継続時間を有する第1の閃光を生成するコントローラ110を有していてもよい。また、コントローラ110は、第2の光エミッタからの光出射を変調して、21msより短い継続時間を有する第2の閃光を生成してもよい。また、コントローラ110は、第3の光エミッタからの光出射を変調して、21msより短い継続時間を有する第3の閃光を生成してもよい。包括的に言えば、コントローラ110は、1つ以上の光エミッタからの光出射を変調して、21msより短い、例えば、10ms、6ms、5ms、4ms又は3msより短い継続時間を有する閃光を生成する。
【0077】
複数の異なる色付き光源からの閃光を生成する際、幾つかの代替となる手法を用いることができる。例えば、第1の光エミッタが緑色を出射し、第2のエミッタが青色を出射する場合、シアン色を出射するには、両方のエミッタが必要である。共通の手法は、各光源の閃光の継続時間を個別に制御することである。例えば、緑色の閃光継続時間を2msとし、及び青色の閃光継続時間を5msとしてもよい。2つの閃光の開始時刻を揃えてもよく、終了時刻を揃えてもよく、ピーク電力要求を低減するために、第1の閃光が終了した直後に第2の閃光を開始してもよい。閃光は、短いので継続時間が異なっていても、脳は、これらをシアンの色として知覚する。しかしながら、到着する光に網膜が応答する際、(この具体例における)閃光がいつ発生したかに関するミリ秒レベルの不確実性が生じる。赤色、緑色及び青色のLEDから白色光を合成する場合も同様のことが言える。1つの一般的な視覚電気生理学検査である30Hzのフリッカ網膜電図(Marmor他(2009))は、20〜40msの範囲の応答時間を有し、閃光特性によって生じる数ミリ秒の不確実性によって、測定に誤差が生じるおそれがある。
【0078】
但し、適切に合成された色は、単一のLEDに対して幾つかの利点を有する。白色の閃光を生成するには、例えば、白色光源(例えば、白色LED又はキセノン球)を用いる手法と、例えば、赤色、緑色及び青色のLEDを用いて色を合成する手法の2つの手法がある。光学アセンブリ104は、幾つか波長を他の波長より多く反映することがあり、白色光源のスペクトルに逸脱が生じることがある。また、製造時のばらつきのために、光学アセンブリ104の色も部分毎に変化することがあり、白色光源を用いた場合、出射されたスペクトルが部分毎に逸脱することがある。これに対し、赤色、緑色及び青色のLEDを用いた場合は、光学アセンブリ104の正確な色吸収から独立して色を所望の色に調整できる。
【0079】
閃光特性によって生じるタイミング不確実性を低減する1つの手法は、光波形を時間的に重ならせることである。幾つかの実施形態では、個別の可視光スペクトル源が、より長い閃光に少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%重なるようにする(個別の可視光スペクトル源は、2個、3個又は4個以上あってもよい)。図4A及び図4Bは、全ての閃光が同時に100%重なっている状態を示している。幾つかの実施形態では、中心点に関して左右対称の閃光を用いる。例えば、青色閃光をインターバル(t−1ms、t+1ms)で生成し、緑色閃光をインターバル(t−2ms、t+2ms)で生成することによって、2msの青色閃光を4msの緑色閃光に結合できる。これによって、各閃光の中心が同時(この具体例では、tms)に出現する。重なりの比率に影響することなく所望の色を達成する1つの手法は、各光源に適用される電流を個別に調整することである。明度は、更なる電流調整によって調整してもよく、閃光の継続時間を変更することによって調整してもよい。
【0080】
オプションとして、赤外光エミッタ103を用いて、赤外線スペクトルで眼をイメージングしてもよい。赤外線照射によって、瞳孔と虹彩との間のコントラストが向上する。コントローラ110は、赤外光エミッタ103からの光出射を変調し、40ms、30ms、20ms、10ms、5ms又は3msの継続時間を有する赤外閃光を生成する。赤外閃光の実際の継続時間は、一定であってもよく、動作中に動的に変更してカメラ101への露光を変化させてもよい。幾つかの実施形態における典型的な露光時間は、2.6msである。但し、コントローラ110は、例えば、センサからのフィードバックに基づいて、露光時間を変更することができる。
【0081】
通常、露光時間が短い方が、画像のモーションブラーが少なくなり、外部光の影響も少なくなるという点で好ましいが、露光時間を短くすると、視覚電気生理学デバイス100のピーク電力要求が高まり、カメラ101に供給される光が少なくなるという問題もある。
【0082】
幾つかの実施形態では、赤外光の閃光を点滅させる際に、可視光刺激によって網膜に照射されるエネルギを最小にすることが望ましい。まず、光エミッタ106及び赤外光エミッタ103から出射される光を実質的に異なる時間に発生させることによって、視覚電気生理学デバイス100によって要求されるピークパワーが低減される。カメラ101がIR閃光の間に画像を取得する際にも、更なる利点がある。IR閃光の間の可視光が少ないと、照射のスペクトルコンテンツがより限定されるために、カメラ101が撮影する画像の色収差も小さくなる。更に、IR閃光の間の可視光が少ないと、カメラ101は、主に赤外線の画像を取得でき、カメラ101が可視光及びIR光に敏感な場合であっても、瞳孔と虹彩との間のコントラストを改善できる。コストを削減するために、及び/又はカメラ101が、例えば、コンピュータディスプレイ、スマートフォン等に表示される情報等の可視の情報を視覚電気生理学デバイス100に提供できるように、可視光及び赤外光の両方に敏感なカメラ101を用いることが有利な場合もある。
【0083】
オプションの赤外光エミッタ103を有する幾つかの実施形態は、カメラ101を有さず、これらの実施形態では、赤外光を用いて、例えば、同期情報を提供することによって、他の視覚電気生理学デバイスをトリガしてもよい。
【0084】
赤外閃光の間に第1の光エミッタが放出するエネルギは、赤外閃光の間に赤外光エミッタが放出するエネルギの50%、40%、30%、25%、20%、10%、5%又は1%未満であってもよい。同様に、第2の光エミッタを有する実施形態では、赤外閃光の間に第2の光エミッタが放出するエネルギは、赤外閃光の間に赤外光エミッタが放出するエネルギの50%、40%、30%、25%、20%、10%、5%又は1%未満であってもよい。
【0085】
幾つかの実施形態では、図4Aに示すように、色収差を最小にし、IRにおけるより高いコントラストを提供するために、赤外閃光の間に第1の光エミッタが放出するエネルギは、赤外光エミッタが放出するエネルギの0%である。(例えば、図4Bに示すように)背景照射を使用する場合、赤外閃光の間の幾らかの可視光を避けることは困難であり、このパーセンテージは、0%を超えることがある。同様に、第3の光エミッタを有する実施形態では、赤外閃光の間に第3の光エミッタが放出するエネルギは、赤外閃光の間に赤外光エミッタが放出するエネルギの50%、40%、30%、25%、20%、10%、5%又は1%未満であってもよい。
【0086】
コントローラ110は、第1の光エミッタからの光出射を変調して、以下に限定されるものではないが、以下に列挙する30Hz近傍の周波数のリストを含む7Hzより高い刺激周波数を有する光刺激を生成することができる。また、コントローラ110は、赤外光エミッタ103からの光出射を変調して、継続時間が40ms未満であり、赤外閃光周波数が1Hzより高い赤外閃光を生成する。
【0087】
幾つかの場合、例えば、光刺激によって生成される照明と赤外閃光との相互作用が一貫性を有するように、刺激周波数と赤外閃光周波数との間のタイミングを制御することが有利である。2つの周波数間のタイミングを制御する他の潜在的利点は、ピークパワーの低減、より少ない色収差によるコントラストの向上、可視光及びIR光に敏感なカメラを用いる実施形態における照明レベルの変化の抑制等がある。時間同期がない場合、可視光とIR光に敏感なカメラを用いる実施形態の照明レベルは、可視光と赤外光の周波数との間のうなり周波数で変化する。
【0088】
幾つかの実施形態では、赤外閃光の間に第1の光エミッタが放出するエネルギは、赤外閃光の間に赤外光エミッタが放出するエネルギの50%未満であり、赤外閃光周波数に対する刺激周波数の比は、整数の1%以内又は整数の逆数の1%以内であり、例えば、この比は、1であってもよい。
【0089】
光エミッタ106は、患者の視覚系を刺激できる可視光を生成する。幾つかの実施形態では、光エミッタ106は、26.94、27.13、27.32、27.51、27.70、27.90、28.10、28.31、28.51、28.72、28.94、29.15、29.37、29.59、29.82、30.05、30.28、30.52、30.76、31.00、31.25、31.50、31.76、32.02、32.28、32.55、32.83、33.10、33.67Hz及びその整数倍の周波数のうちの1つの0.01Hz以内の刺激周波数を有する周期的な光刺激を生成する。他の周波数を用いてもよい。
【0090】
幾つかの実施形態では、光エミッタ106は、28.31、28.72、32.55Hzの0.1Hz又はこれらの整数倍以内の刺激周波数を有する光刺激を生成する。光エミッタ106は、光が常に点灯していると見えるように、十分大きい周波数(例えば、約50Hz以上)で閃光を生成することができる。幾つかの実施形態では、周波数は、40Hzより低く、閃光又は点滅に見えてもよい。他の実施形態では、光エミッタ106は、約50Hz以上の周波数で閃光を生成し、40Hz以下の周波数で更なる光を生成し、これによって、一定の背景光上で光が点滅するように見せてもよい。例えば、視覚電気生理学デバイス100は、28.31Hzの0.01Hz内の周波数で点滅する光と、283.06Hzの0.1Hz内の周波数で知覚的に一定の背景光とを生成することができる。幾つかの実施形態では、光エミッタ106は、刺激周波数が7Hzより高い光刺激を生成する。
【0091】
図4A及び図4Bは、上述した光波形のための例示的なタイミングチャートを示している。グラフ300は、合成白色光閃光の1.5期間に続くIR閃光を示している。合成白色光閃光(刺激とも呼ぶ。)及びIR閃光の両方は、約28.306Hzの刺激周波数で出現する。したがって、可視閃光及び赤外閃光の比は、1である。符号(曲線)301は、アイカップ107で測定される光エミッタ106の一部である緑色LEDのルミナンス出力を表している。符号(曲線)302,303は、アイカップ107で測定される光エミッタ106の一部である(それぞれ)赤色及び青色LEDからの対応するルミナンス出力を表している。符号(曲線)304は、赤外光エミッタ103からの出力を表している。この具体例では、可視光と赤外光の出力は、重なっていない。
【0092】
グラフ310は、背景照射を加えた点を除いて、グラフ300と同様のグラフである。この具体例では、赤色、緑色及び青色のLEDの283.06Hzの閃光による背景照射を生成しており、このうち7つを符合315で示している。283.06Hzの背景周波数は、患者の臨界融合頻度(critical fusion frequency)より高く、したがって、一定の照明であると知覚される。この具体例では、背景周波数は、刺激周波数の10倍であるが、他の倍数(2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍以上)を用いてもよい。赤色、緑色、青色及び赤外線の波形は、それぞれ、グラフ300と同様なドットパターン及び符合(曲線)312,311,313及び314で示している。グラフ310の具体例では、赤外光出射の間に2つの背景閃光が出現し、刺激閃光の間に1つの背景閃光が出現する。背景照射及び刺激照射を生成するために同じ光エミッタを用いてもよく、異なる光エミッタを用いてもよい。
【0093】
オプションとして、カメラ101を用いてフレームレート周波数で周期的に患者の眼を撮像してもよい。視覚電気生理学デバイス100のコントローラ110は、例えば、画像を用いて眼の瞳孔を検出し、その面積を測定することができる。瞳孔を検出できない場合、誤った結果を表示してしまう可能性を低減するために、安全策として、視覚電気生理学デバイス100は、結果を表示しないように構成できる。これに代えて、視覚電気生理学デバイス100は、瞳孔の検出の如何にかかわらず結果を表示してもよく、これは、閉じたまぶたを介して眼を刺激するような場合に有益である。
【0094】
幾つかの実施形態では、コントローラ110は、第1の光エミッタからの光出射を変調して、以下に限定されるものではないが、先に列挙した30Hz近傍の周波数のリストを含む7Hzより高い刺激周波数を有する光刺激を生成することができる。幾つかの場合、例えば、(a)光刺激によって生成される照明と、カメラ101による画像取得との相互作用が一貫性を有するように、及び/又は(b)瞳孔面積測定に基づく刺激照射の更新が一貫性を有するように、刺激周波数とフレームレートとの間のタイミングを制御することが有益である。
【0095】
幾つかの実施形態では、フレームレートに対する刺激周波数の比は、整数の1%以内又は整数の逆数の1%以内であり、例えば、この比は、1であってもよい。幾つかの実施形態では、フレームレートに対する刺激周波数の比は、7より大きく、例えば、8、9、10、11、12、13、14又は15以上であってもよい。例えば、パルス幅変調を用いて30%から70%の間のデューティサイクルを有する正弦波、矩形波又は三角波として変化する網膜の照射照度に近似する光刺激を生成する場合、この比が高くなる(但し、これは必要条件ではない)。更に、赤外光エミッタ103と共にカメラ101を用いて赤外線で眼を撮影した場合、フレームレートは、赤外光エミッタ103の閃光レートに等しくしてもよく(すなわち、1つのIR閃光毎に一回の撮影)、刺激周波数に対するこれらの閃光レートの比は、整数の1%であってもよく、整数の逆数の1%以内であってもよい(例えば、1であってもよい)。
【0096】
視覚電気生理学デバイス100のコントローラ110は、カメラ101を用いて、患者の瞳孔の面積を測定できる。この情報により、コントローラ110は、面積の関数として光刺激を調整できる。この調整は、例えば、瞳孔面積の変化に起因する網膜の照射の差から生じる患者内及び/又は患者間の変動を低減するために有用である。瞳孔面積の関数としての光刺激の調整は、フレームレート周波数及び/又は他の周波数、例えば、0.5Hz、1Hz、2Hz、5Hz、10Hz又は20Hzより高い周波数で行ってもよい。瞳孔面積の関数としての光刺激の調整は、必ずしも周期的に行わなくてもよく、例えば、コントローラ上のマイクロプロセッサは、ピークCPU負荷が100%を超えることがあり、この場合、臨時的に調整を行わなくてもよい。Satoh他(1994)に示されているように、30Hzのフリッカ刺激への応答のタイミングは、光強度に基づく。Satoh他(1994)では、眼を広げ、5mmの直径を有する人工瞳孔を挿入し、刺激瞳孔サイズを独立させている。
【0097】
図3A及び3Bは、視覚刺激のルミナンスと瞳孔面積との間の例示的な関係を示しており、図3Aは、視覚電気生理学デバイス100から出射される光と、瞳孔面積の間の関係を示しており、図3Bは、網膜の照度と瞳孔面積との間の関係を示している。符号(曲線)201は、瞳孔面積から独立した閃光のルミナンスを示している。この場合、符号(曲線)211に示すように、眼に入る光の総量は、瞳孔面積に対して直線的に変化する。幾つかの実施形態では、光刺激は、眼の瞳孔面積の逆数に線形に関連付けることができる。例えば、瞳孔サイズの如何にかかわらず眼に入るエネルギが一定になるように光刺激を設定することができる。符号(曲線)203、213は、眼に入る光量が一定である関係を示している。
【0098】
他の実施形態では、光刺激は、非線形凹関数(non-linear, concave function)を介して、眼の瞳孔面積の逆数に関連付けることができる。非線形凹関数を用いることによって、瞳孔の中心から外れた位置に入射する光に対する眼の感度の低下を補償できる(例えば、スタイルス−クロフォード(Stiles-Crawford)効果)。これらの場合、面積増加に伴って減少する光の量が瞳孔面積の増加の量より小さい。符号(曲線)202、212は、この関係を示しており、瞳孔の中心に入らない光のために網膜を刺激する効果によって瞳孔面積が低下するにつれて、眼に入る光量が緩やかに増加している。
【0099】
幾つかの実施形態では、視覚電気生理学デバイス100は、患者の瞳孔の面積を測定してもよい。(例えば、まぶたが閉じられているために)瞳孔の面積を測定できない場合、コントローラ110は、先の測定に基づいて、瞳孔サイズを推定してもよい。未だ瞳孔が特定されていない場合、コントローラは、これを視覚電気生理学デバイスのオペレータに知らせ、結果(すなわち、視覚系機能の指標)を提供しないようにしてもよい。コントローラ110は、残りの検査プロセスを続ける前に、初期の瞳孔取得を無期限に待機するように構成してもよく、所定の時間だけ待機するように構成してもよい。このフェイルセイフ(fail-safe)手続によって、誤った結果を予防できる。更に、瞳孔サイズが測定されたが、後にこの情報が失われ、少なくとも所定の時間(例えば、0.1秒、0.2秒、0.3秒、0.4秒、0.5秒、0.6秒、0.7秒、0.8秒、0.9秒又は1秒以上)測定が行われなかった場合、コントローラ110は、視覚電気生理学デバイスのオペレータにエラーを知らせ、結果を提供しないようにしてもよい。
【0100】
幾つかの実施形態では、視覚電気生理学デバイス100は、光エミッタ106の出力を監視できる光検出器105を有する。光検出器105は、例えば、フォトダイオードを備えていてもよい。また、光検出器105は、視覚電気生理学デバイス100の外部から光学アセンブリ104に入る光(「外部光」と呼ぶ。)の量を監視できる。光検出器105は、例えば、外部光の予想レベル及び/又は光エミッタ106の予想レベルに基づいて、予想される信号の組を生成することができる。これらの予想が実現されない場合、コントローラ110は、結果を提供しなくてもよい。
【0101】
幾つかの視覚検査は、背景照射の量に依存する。検査される眼の周囲の皮膚にアイカップ107を押しつけると、外部光の量が減少する。それでも、幾らかの外部光が存在することがあり、追加的な背景照射として機能する場合がある。外部光の量が閾値を超える場合、光検出器105を用いてこれを検出し、誤った結果が提供されることを防止することができる。例えば、閾値は、1cd/mから200cd/mの間の値であってもよい。閾値は、3cd/mから30cd/mの間の値であってもよい。閾値は、10cd/mから100cd/mの間の値であってもよい。
【0102】
外部光の量と、検査される眼の瞳孔サイズに関する情報とを組み合わせて、外部光の量が多過ぎるかを判定してもよい。例えば、閾値は、10Tdから1000Tdの間の値であってもよい。閾値は、30Tdから300Tdの間の値であってもよい。また、幾つかの実施形態では、閾値は、刺激に依存していてもよい。例えば、刺激が暗い程、閾値を下げる必要がある。
【0103】
幾つかの実施形態では、外部光の量に応じて刺激を変更し、電気的測定に対する外部光の影響を低減する。
【0104】
オプションの光検出器105を用いて光刺激を監視してもよく、これにより、コントローラ110は、光エミッタ106の出力又は光学アセンブリ104の光学効率の変化を補償することができる。コントローラ110は、例えば、検査の較正フェーズの間に、光検出器105において所望の信号が実現されるように、光エミッタ106の出力を調整することができる。調整が大き過ぎる場合、視覚電気生理学デバイス100は、誤りである可能性がある結果を提供するのではなく、誤りを報告するように構成してもよい。
【0105】
幾つかの実施形態では、視覚電気生理学デバイス100は、患者コネクタ108を介して接続され、患者の視覚系から受信する電気信号に関連するインピーダンスを測定する電気インピーダンス計を有する。インピーダンスが大き過ぎる場合、視覚電気生理学デバイス100が患者に電気的に接続できていない可能性があり、又は接続の信号品質が悪いため、信号の品質が劣化することがある。幾つかの実施形態では、コントローラ110は、インピーダンスが目標値、例えば、1GΩ、500MΩ、150MΩ、15MΩ、1.5MΩ、150kΩ、100kΩ、50kΩ、25kΩ、10kΩ又は5kΩを下回るまでは、視覚系機能の指標を提供しない。これらの値の上限(例えば、1GΩ、500MΩ、150MΩ等)によって、これらの実施形態は、何かが接続されているか否かを明らかにすることができる。インピーダンスが下限の近くに下がっている場合、実施形態は、雑音が小さい有効な接続が行われていることを示すことができる。但し、インピーダンスを低めるために要求される皮膚の前処理が必要となるため、インピーダンスの下限を求めることは、実用的又は有意ではない場合がある。幾つかの実施形態では、上限(150MΩ)近傍のインピーダンスで十分である。他の実施形態では、より低いインピーダンスが要求されることもある。
【0106】
図5A図5Cは、光波形のための3個の例示的なタイミングチャートを示している。図5Aのグラフ400は、約28.306Hzの刺激周波数において出現する合成白色光の2つの期間を示している。符号(曲線)402は、所望の正弦波状刺激を表し、パルス列401は、曲線402に近似するパルス幅変調(PWM)を表す。この具体例では、PWM期間は、刺激期間の10倍であるが、PWM期間と刺激期間の比はこれ以外でもよく、例えば、7倍でもよい。幾つかの実施形態では、整数比によって、各期間が互いに類似するため、比を整数とすることが好ましい。曲線402は、2つの期間を示しているが、2つの期間の振幅は、同じではない。
【0107】
上述したように、コントローラ110は、カメラ101を用いて患者の瞳孔の面積を測定できる。この情報によって、コントローラ110は、面積の関数としてルミナンスを調整できる。曲線402の第1及び第2の期間の間では、視覚電気生理学デバイス100は、瞳孔がより小さくなったことを測定し、したがって、所望の光波形の明度を増加させ、網膜の刺激による瞳孔サイズの影響を低減する。
【0108】
図5Bのグラフ410は、所望の光波形が三角波である点を除いて、グラフ400と同様である。符号(曲線)412は、所望の三角波であり、パルス列411は、そのPWM近似である。また、図5Cのグラフ420は、所望の光波形が矩形波である点を除いて、グラフ400と同様である。符号(曲線)422は、デューティサイクルが50%の矩形波である。また、他のデューティサイクルも想到でき、例えば、30%から70%の間のデューティサイクルを有する矩形波、又は40%から60%の間のデューティサイクルを有する矩形波を用いてもよい。短いデューティサイクル(例えば、<20%)は、図4A及び図4Bに示すような単一の閃光によって実現できる。
【0109】
パルス列421は、曲線422のPWM近似である。この具体例では、刺激期間は、PWM期間の20倍である。曲線422には、第1の期間より振幅が小さい第2の期間を有し、この第2の期間は、例えば、瞳孔面積が増加したことを視覚電気生理学デバイス100が測定したときに出現する。幾つかの実施形態では、視覚電気生理学デバイス100は、正弦波、30%から70%の間のデューティサイクルを有する矩形波又は三角波として変化し、網膜の照射照度に近似する連続する光波形を直接的に合成する。
【0110】
幾つかの実施形態では、視覚電気生理学デバイス100は、パルス幅変調(PWM)を用いて、正弦波、30%から70%の間のデューティサイクルを有する矩形波又は三角波として変化し、網膜の照射照度に近似する光刺激を生成する。例えば、コントローラ110は、PWMを用いて、第1の光エミッタと第2の光エミッタの出力を制御して、周期的視覚刺激を眼に照射するために、パルス幅変調(PWM)を用いて、正弦波、30%から70%の間のデューティサイクルを有する矩形波又は三角波として変化し、網膜の照射照度に近似する光刺激を生成する。例えば、コントローラ110は、PWMを用いて第1の光エミッタ及び第2の光エミッタの出力を制御し、正弦波として変化する網膜の照射照度に近似する周期的視覚刺激を眼に照射する。
【0111】
電子回路基板109上のコントローラ110は、当分野で周知の如何なるコントローラであってもよい。コントローラ110は、例えば、アナログデバイス社(Analog Devices)、アトメル社(Atmel)、インテル社(Intel)、マイクロチップ社(Microchip)、テキサスインスツルメンツ社(Texas Instruments)が市販している単一のマイクロプロセッサであってもよい。これに代えて、視覚電気生理学デバイス100の1つ以上のプリント回路板上の複数の集積回路に亘ってコントローラ110を分散してもよい。コントローラ110は、第1の光エミッタの光出力を変調し、患者から電気信号を受信し、これを解析するように構成できる。
【0112】
幾つかの実施形態では、コントローラ110は、カメラと通信し、カメラによって撮影された画像における瞳孔サイズを測定する。幾つかの実施形態では、コントローラ110は、更なる光エミッタ、例えば、第2の光エミッタ、第3の光エミッタ及び/又は赤外光エミッタからの光出力を変調できる。コントローラ110は、ディスプレイを用いて、オペレータに人間の視覚系機能の指標を提供し、及び/又はコンピュータ又は他の電子デバイスに情報を通信する手段を提供する。
【0113】
上述した説明では、構成を強調しているが、これらを使用する、患者の視覚系機能の指標を提供する方法も想到される。患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、光刺激によって患者の眼を照射することを含む。また、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、患者から電気信号を受信し、解析して、視覚系機能の指標を提供すること、又は第1の電極と第2の電極との間の電位差を測定して、視覚系機能の指標を提供することを含む。
【0114】
眼を照射することは、1個、2個又は3個以上の個別のスペクトル源から、継続時間が21ms未満の可視の閃光を生成することを含んでいてもよい。これらの閃光が複数のスペクトル源から生成される場合、これらは、最も長い閃光の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%時間的に重なるように構成でき、これによって、上述したように、タイミング不確実性を低減することができる。
【0115】
患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、眼の瞳孔面積を測定し、眼の瞳孔面積の関数として、第1の閃光(又は他の光刺激)のエネルギを調整することを含んでいてもよく、例えば、第1の閃光のエネルギは、眼の瞳孔面積の逆数に線形に関係付けてもよく、第1の閃光のエネルギは、非線形凹関数によって、眼の瞳孔面積の逆数に関係付けてもよい。幾つかの、患者の視覚系機能の指標を提供する方法では、光刺激は、閃光周波数が7Hzより高い閃光を含み、眼の瞳孔面積の測定は、フレームレートで行われ、フレームレート周波数に対する閃光周波数の比は、整数の1%以内又は整数の逆数の1%以内であり、これらの特徴は、個別に実現してもよく、上述した重畳する閃光と共に実現してもよい。幾つかの、患者の視覚系機能の指標を提供する方法では、光刺激は、閃光周波数が7Hzより高い閃光を含み、また、眼は、エネルギの大部分が710nmより長い波長で出射される赤外閃光によっても照射され、赤外閃光周波数は、1Hzより高く、赤外閃光の間に第1の光エミッタが出射するエネルギは、赤外閃光の間に赤外光エミッタが出射するエネルギの50%未満であり、赤外閃光周波数に対する刺激周波数の比は、整数の1%以内又は整数の逆数の1%以内であり、これらの特徴は、個別に実現してもよく、上述したフレームレート及び重畳する閃光と組み合わせて実現してもよい。
【0116】
幾つかの、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、患者の皮膚に、単一のユニットとして3つの電極を含む電極アレイを配置することを含み、これらの3つの電極は、第1の電極、第2の電極及び第3の電極を含み、第1及び第2の電極は、第1、第2及び第3の電極の他の如何なる組み合わせよりも離間しており、これらの特徴は、個別に実現してもよく、上述した赤外閃光、フレームレート及び重畳する閃光と組み合わせて実現してもよい。
【0117】
幾つかの、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、眼の瞳孔面積を測定し、眼の瞳孔面積の非線形凹関数によって光刺激のルミナンスを調整することを含み、これらの特徴は、個別に実現してもよく、上述した電極アレイ、赤外閃光、フレームレート及び重畳する閃光と組み合わせて実現してもよい。幾つかの、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、眼の瞳孔面積を測定し、眼の瞳孔面積の関数として光刺激のルミナンスを調整することを含み、網膜の照射照度に近似する光刺激は、正弦波、30%から70%の間のデューティサイクルを有する矩形波又は三角波として変化し、これらの特徴は、個別に実現してもよく、上述した電極アレイ、赤外閃光、フレームレート及び重畳する閃光と組み合わせて実現してもよい。
【0118】
幾つかの、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、誤った結果を低減する手法を含み、これらは、個別に実現してもよく、他の、患者の視覚系機能の指標を提供する方法と組み合わせて実現してもよい。幾つかの、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、カメラが撮影した画像内で眼の瞳孔の位置を特定することを試みることを含み、眼の瞳孔が特定されなければ、視覚系機能の指標を返さない。幾つかの、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、光検出器から信号を受信することを含み、光検出器からの信号が予想される光検出器信号の組と異なっている場合、視覚系機能の指標を返さず、この予想される光検出器信号の組は、閾値を超える外部光の監視を含む。閾値は、瞳孔面積に依存する閾値及び瞳孔面積から独立した閾値を含む上述したいずれの閾値であってもよい。幾つかの、患者の視覚系機能の指標を提供する方法は、眼の瞳孔面積を測定し、眼の瞳孔面積の関数として光のルミナンスを調整し、患者から受信した電気信号に関連する電気的インピーダンスを測定することを含み、電気インピーダンス計が目標値を下回るインピーダンスを測定するまでは、指標を提供しない。目標値は、GΩ、MΩ及びkΩの範囲を含む上述した如何なる値であってもよい。
【0119】
ここに引用する文献の全体は、本願に援用される。引用によって本願に援用される非特許文献、特許文献又は特許出願が本明細書に含まれる開示に矛盾する範囲では、このような矛盾する事項に対して、本明細書が置き換えられ及び/又は優先される。
【0120】
明細書及び特許請求の範囲で用いる量を表す全ての数は、「約」が付されているものと解釈される。したがって、特に指摘がない限り、明細書及び特許請求の範囲に示す数値パラメータは、概算値であり、本発明によって獲得しようとする所望の特性によって変化できる。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限することなく、各数値パラメータは、有効桁数及び一般的な丸め法に基づいて解釈される。
【0121】
上述した視覚電気生理学デバイスの説明は、多くの新規で有利な側面を含む。また、複数の側面の組み合わせも想到される。本発明の範囲から逸脱することなく、ここに開示した検出デバイス、コンポーネント及び、患者の視覚系機能の指標を提供する方法の様々な変形例及び変更例を想到できることは、当業者にとって明らかである。明細書の検討及びここに開示した本発明の実施から、当業者は、本発明の他の実施形態を想到することができる。明細書及び実施の形態は例示的なものにすぎず、本発明の真の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその均等物によって画定される。
【0122】
ここで用いた用語及び説明は、例示的なものであり、限定的なものではない。以下の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される本発明の思想及び範囲内で多くの変形が可能であることは当業者にとって明らかであり、特許請求の範囲では、全ての用語は、特段の指示がない限り、可能な限り最も広い意味で解釈される。
【0123】
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【符号の説明】
【0134】
100 視覚電気生理学デバイス(デバイス)、101 カメラ、102 オプションの固定光、103 赤外光エミッタ、104 光学アセンブリ、105 光検出器、106 光エミッタ、107 アイカップ、108 患者コネクタ、109 電子回路基板、110 コントローラ、118 ディスプレイ、120 操作子、132,134 皮膚電極(電極)、142 球状散光反射体、144 眼、148 ワイヤ、150 ブロック、201,202,203,211,212,213,301,302,303,304,311,312,313,314,402,412,422 曲線、401,411,421 パルス列、300,310,400,410,420 グラフ
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C