(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の面および前記第1の面とは反対側に位置する第2の面を有する基材と、前記基材における第2の面側に積層され、前記基材に近位な側に第1の面を有し、前記基材に遠位な側に第2の面を有する半導体貼付層と、前記半導体貼付層における第2の面側に積層され、前記半導体貼付層に近位な側に第1の面を有し、前記半導体貼付層に遠位な側に第2の面を有する剥離フィルムとを少なくとも備える半導体加工用シートであって、
前記基材の第1の面における算術平均粗さRaが、0.01〜0.8μmであり、
前記剥離フィルムが、当該剥離フィルムの第1の面側および第2の面側のそれぞれに剥離剤層を備え、
前記半導体貼付層の第2の面と、前記剥離フィルムの第1の面とを貼付して40℃で3日間保管した後における、前記半導体貼付層の第2の面と前記剥離フィルムの第1の面との界面での剥離力βが、10〜1000mN/50mmである
ことを特徴とする半導体加工用シート。
前記基材の第1の面と前記剥離フィルムの第2の面とを積層して40℃で3日間保管した後における、前記基材の第1の面と前記剥離フィルムの第2の面との界面での剥離力をαとしたとき、前記剥離力βに対する前記剥離力αの比の値(α/β)が、0以上、1.0未満であることを特徴とする請求項1に記載の半導体加工用シート。
前記半導体貼付層は、粘着剤層と、前記粘着剤層および前記剥離フィルムの間に位置する接着剤層とから構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体加工用シート。
前記半導体貼付層は、粘着剤層と、前記粘着剤層および前記剥離フィルムの間に位置する保護膜形成層とから構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体加工用シート。
前記半導体加工用シートは、長尺の前記剥離フィルムに、平面視にて前記剥離フィルムとは異なる形状を有する、前記基材および前記半導体貼付層を含む積層体が積層されてなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体加工用シート。
第1の面および前記第1の面とは反対側に位置する第2の面を有する基材と、前記基材における第2の面側に積層され、前記基材に近位な側に第1の面を有し、前記基材に遠位な側に第2の面を有する半導体貼付層と、前記半導体貼付層における第2の面側に積層され、前記半導体貼付層に近位な側に第1の面を有し、前記半導体貼付層に遠位な側に第2の面を有する治具用粘着剤層と、少なくとも前記治具用粘着剤層における第2の面側に積層され、前記治具用粘着剤層に近位な側に第1の面を有し、前記治具用粘着剤層に遠位な側に第2の面を有する剥離フィルムとを少なくとも備える半導体加工用シートであって、
前記基材の第1の面における算術平均粗さRaが、0.01〜0.8μmであり、
前記剥離フィルムが、当該剥離フィルムの第1の面側および第2の面側のそれぞれに剥離剤層を備え、
前記治具用粘着剤層の第2の面と前記剥離フィルムの第1の面とを貼付して40℃で3日間保管した後における、前記治具用粘着剤層の第2の面と前記剥離フィルムの第1の面との界面での剥離力βが、10〜1000mN/50mmである
ことを特徴とする半導体加工用シート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1には、第1の実施形態に係る半導体加工用シート1が示される。半導体加工用シート1は、基材10、半導体貼付層80および剥離フィルム30がこの順に積層されて構成される。基材10は、半導体貼付層80に遠位な側に第1の面101を有し、半導体貼付層80に近位な側に第2の面102を有する。半導体貼付層80は、基材10に近位な側に第1の面801を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面802を有する。剥離フィルム30は、半導体貼付層80に近位な側に第1の面301を有し、半導体貼付層80に遠位な側に第2の面302を有する。
【0028】
本実施形態に係る半導体加工用シート1では、基材10の第1の面101における算術平均粗さRaが、0.01〜0.8μmである。基材10の第1の面101がこのように平滑であることにより、第1の面101に照射された光が当該面で散乱することが低減され、基材10において高い光線透過性が発揮される。
【0029】
また、本実施形態に係る半導体加工用シート1では、剥離フィルム30が、第1の面301側および第2の面302側に剥離剤層を備える。剥離フィルム30が第1の面301側に剥離剤層を備えることにより、半導体加工用シート1から剥離フィルム30を適度な剥離力により剥離することが可能となる。また、剥離フィルム30が第2の面302側に剥離剤層を備えることにより、上記のように平滑な基材10の第1の面101に対しても剥離フィルム30の第2の面302が密着し難くなる。その結果、半導体加工用シート1をロール状に巻き取った際に、半導体加工用シート1同士が密着し難くなる。これにより、繰り出しを良好に行うことができるとともに、繰り出しの際に意図しない界面での剥離が生じない。すなわち、優れた耐ブロッキング性が発揮される。
【0030】
さらに、本実施形態に係る半導体加工用シート1では、剥離力βが、10〜1000mN/50mmである。ここで、剥離力βとは、後述する通り、半導体貼付層80の第2の面802と剥離フィルム30の第1の面301との界面での剥離力である。これにより、半導体加工用シート1を使用する際に、適度な剥離力で、基材および半導体貼付層を含む積層体を剥離フィルムから剥離することができる。
【0031】
1.半導体加工用シートの物性等
本実施形態に係る半導体加工用シート1では、粘着剤層20の第2の面202と剥離フィルム30の第1の面301との界面での剥離力をβとしたとき、当該剥離力βが、10〜1000mN/50mmであり、10〜500mN/50mmであることが好ましく、特に30〜200mN/50mmであることが好ましい。ここで、剥離力βとは、半導体貼付層80の第2の面802と剥離フィルム30の第1の面301とが貼付された状態で、乾燥状態において40℃で3日間保管した後における、粘着剤層20に対する剥離フィルム30の剥離力である。剥離力βが10mN/50mm未満であると、ロールから半導体加工用シート1を繰り出す際や、それ以外の意図しない段階において、剥離フィルム30から基材10と半導体貼付層80との積層体が剥離し易くなる。また、剥離力βが1000mN/50mmを超えると、半導体加工用シート1を使用する際に、剥離フィルム30から基材10と半導体貼付層80との積層体を剥離することが困難となり、作業性が悪くなってしまう。特に、ウエハマウンターを使用して、当該積層体に対して半導体ウエハに順次マウントする際に、剥離フィルム30から当該積層体が良好に剥離せず、マウントすることができないといった不具合が生じてしまう。
【0032】
なお、本明細書では、剥離力βは、剥離フィルム30と、それと接触する主な層との界面における剥離力として規定される。例えば、上記半導体加工用シート1では、剥離フィルム30と半導体貼付層80とが接触しているため、半導体貼付層80と剥離フィルム30との界面おける剥離力βが規定される。一方、後述する治具用粘着剤層60を備える第2の実施形態に係る半導体加工用シート2(
図8参照)では、剥離フィルム30に対して、半導体貼付層80とともに治具用粘着剤層60が接触する。ここで、剥離フィルム30と治具用粘着剤層60との接触の方が、剥離フィルム30と半導体貼付層80との接触に比べて、半導体加工用シート2から剥離フィルム30を剥離する際の剥離力に与える影響が大きい。そのため、治具用粘着剤層60を備える半導体加工用シート2においては、後述する通り、治具用粘着剤層60の剥離フィルム30側の面(第2の面602)と剥離フィルム30の治具用粘着剤層60側の面(第1の面301)との界面における剥離力βが規定される。
【0033】
本実施形態に係る半導体加工用シート1では、基材10の第1の面101と剥離フィルム30の第2の面302との界面での剥離力をαとしたとき、上述した剥離力βに対する剥離力αの比の値(α/β)が、0以上であることが好ましく、特に0.05以上であることが好ましく、さらには0.1以上であることが好ましい。また、当該比の値(α/β)は、1.0未満であることが好ましく、特に0.5以下であることが好ましく、さらには0.2以下であることが好ましい。ここで、剥離力αとは、基材10の第1の面101と剥離フィルム30の第2の面302とを積層して、乾燥状態において40℃で3日間保管した後における、基材10に対する剥離フィルム30の剥離力である。なお、上記比の値(α/β)が0である場合とは、剥離力αの値が0となる場合であり、剥離力αが測定できないほど小さいか、または測定前において基材10から剥離フィルム30が既に剥離している状態を意味する。剥離力βに対する剥離力αの比の値(α/β)が0以上、1.0未満であることで、
図2に示されるように半導体加工用シート1同士が重なったときに、半導体加工用シート1同士の密着性が、半導体加工用シートを構成する各層同士の密着性よりも高くなることがない。具体的には、基材10の第1の面101と、それと対向する剥離フィルム30の第2の面302との間における密着性が、基材10と半導体貼付層80との間の密着性や半導体貼付層80と剥離フィルム30との間の密着性よりも高くなることがない。これにより、上述した耐ブロッキング性がより優れたものとなる。すなわち、ロール状に巻き重なった半導体加工用シート1を繰り出す際に、半導体加工用シート1における基材10の第1の面101と、それに重なった半導体加工用シート1における剥離フィルム30の第2の面302との密着を効果的に抑制することができる。さらに、繰り出しの際に、半導体加工用シート1の意図しない界面での剥離の発生が抑制される。以上により、半導体加工用シート1を良好に繰り出すことができる。
【0034】
本実施形態に係る半導体加工用シート1の厚さは、半導体加工用シート1が使用される工程において適切に機能できる限り限定されない。当該厚さは、通常、50〜300μmであることが好ましく、特に50〜250μmであることが好ましく、さらには50〜230μmであることが好ましい。なお、本明細書における半導体加工用シート1の厚さとは、半導体加工用シート1の使用前に剥離される剥離フィルム30を除いた厚さを意味する。
【0035】
2.基材
本実施形態に係る半導体加工用シート1では、基材10の第1の面101における算術平均粗さRaは、0.01〜0.8μmであり、特に0.02〜0.5μmであることが好ましく、さらには0.03〜0.3μmであることが好ましい。当該算術平均粗さRaが0.01μm未満であると、第1の面101が過度に平滑になり、剥離力αの値が大きくなり過ぎ、半導体加工用シート1をロール状に巻き取った際にブロッキングが生じ易くなる。また、当該算術平均粗さRaが0.8μmを超えると、第1の面101に照射された光が当該面において散乱し易くなり、光線透過性が損なわれる。なお、本明細書における算術平均粗さRaは、JIS B0601:2013に基づいて測定したものであり、測定方法の詳細は後述する実施例に示す通りである。
【0036】
上記算術平均粗さRaを達成するためには、基材10の製造時に、上記算術平均粗さRaを有するように製造することが好ましい。例えば、基材10の押出成形に使用するロールの表面粗さを調整することにより、上記算術平均粗さRaを有する基材10を製造することが好ましい。あるいは、基材10をインフレーション法により製造する際に、第1の面101となる面の粗さが上記算術平均粗さRaとなるように調整することが好ましい。
【0037】
基材10の第2の面102における算術平均粗さRaは、基材10の光線透過性を確保できる限り適宜設定することができ、例えば、0.01〜2.0μmであることが好ましく、特に0.03〜1.5μmであることが好ましく、さらには0.05〜1.0μmであることが好ましい。
【0038】
本実施形態に係る半導体加工用シート1において、基材10の構成材料は、所望の波長の光に対する優れた光線透過性を発揮し、さらに半導体加工用シート1の使用工程における所望の機能を発揮する限り、特に限定されない。基材10は、樹脂系の材料を主材とするフィルム(樹脂フィルム)を含むものであってよい。好ましくは、基材10は樹脂フィルムのみからなる。樹脂フィルムの具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム;エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体フィルム、その他のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン−ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム;(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。ポリエチレンフィルムの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等が挙げられる。また、これらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムといった変性フィルムも用いられる。基材10は、これらの1種からなるフィルムでもよいし、これらを2種類以上組み合わせた材料からなるフィルムであってもよい。また、上述した1種以上の材料からなる層が複数積層された、多層構造の積層フィルムであってもよい。この積層フィルムにおいて、各層を構成する材料は同種であってもよく、異種であってもよい。基材10としては、上記フィルムの中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニルフィルムまたはポリプロピレンフィルムを使用することが好ましい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
【0039】
基材10においては、所望の波長の光に対する優れた光線透過性を損なわない限り、上記のフィルム内に、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、着色剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、イオン捕捉剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。これらの添加剤の含有量としては、特に限定されないものの、基材10が優れた光線透過性および所望の機能を発揮する範囲とすることが好ましい。
【0040】
なお、後述する通り、半導体貼付層80として粘着剤層20を使用してもよく、この粘着剤層20を硬化させるためにエネルギー線を使用する場合、基材10は当該エネルギー線に対する光線透過性を有することが好ましい。例えば、当該エネルギー線の例としては、紫外線や電子線が挙げられる。
【0041】
基材10の第2の面102は、半導体加工用シート1における光線透過性を損なわない限り、半導体貼付層80との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されてもよい。
【0042】
基材10の厚さは、半導体加工用シート1が使用される工程において適切に機能できる限り限定されない。当該厚さは、通常、20〜450μmであることが好ましく、特に25〜300μmであることが好ましく、さらには50〜200μmであることが好ましい。
【0043】
3.剥離フィルム
本実施形態に係る半導体加工用シート1の剥離フィルム30では、第1の面301側および第2の面302側のそれぞれに剥離剤層を備える。第2の面302側に剥離剤層を備えることにより、半導体加工用シート1をロール状に巻き取った際に、平滑な基材10の第1の面101に対しても剥離フィルム30の第2の面302が密着し難くなる。その結果、半導体加工用シート1同士が密着し難くなり、ブロッキングを抑制することができる。また、第1の面301側に剥離剤層を備えることにより、剥離力βの上述した値を達成することが可能となる。
【0044】
第1の面301側の剥離剤層と第2の面302側の剥離剤層とは、同程度の剥離力を有してもよい。あるいは、第1の面301側の剥離剤層および第2の面302側の剥離剤層のうち、一方を剥離力の大きい重剥離型とし、他方を剥離力の小さい軽剥離型としてもよい。後者の場合、半導体加工用シート1をロールから繰り出す際における、半導体貼付層80と剥離フィルム30との界面での意図しない剥離を防止する観点から、第1の面301側の剥離剤層を重剥離型とし、第2の面302側の剥離剤層を軽剥離型とすることが好ましい。
【0045】
剥離フィルム30は、例えば、樹脂フィルム等の基材の両面に剥離剤層を備えた構成を有する。樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系剥離剤、アルキッド系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、ゴム系剥離剤等を用いることができる。これらの中でも、耐ブロッキング性の発揮と、剥離力βの上述した値の達成とを両立し易いという観点から、第1の面301側ではシリコーン系剥離剤を使用することが好ましく、剥離力βに対する剥離力αの比(α/β)を上述した値に調整し易いという観点から、第2の面302側ではシリコーン系剥離剤またはアルキッド系剥離剤を使用することが好ましい。
【0046】
剥離フィルム30の第2の面302の算術平均粗さRaは、0.02〜0.8μmであることが好ましく、特に0.03〜0.5μmであることが好ましく、さらには0.03〜0.04μmであることが好ましい。第2の面302の算術平均粗さRaが0.02〜0.8μmであることで、第2の面302が適度な粗さを有することとなり、剥離力αの値は過度に大きくならない。これにより、剥離力αと剥離力βとの間の上述の関係を満たし易くなる。また、第2の面302の算術平均粗さRaが0.02μm以上であることで、半導体加工用シート1をロール状に巻き取った際に、平滑な基材10の第1の面101に対しても剥離フィルム30の第2の面302が密着し難くなり、その結果、ブロッキングの発生を効果的に防止できる。さらに、第2の面302の算術平均粗さRaが0.8μm以下であることで、半導体加工用シート1をロール状に巻き取った際に、剥離フィルム30の第2の面302の表面形状の、基材10の第1の面101への転写が生じたとしても、第1の面101の平滑性が低下することが防止される。
【0047】
上記算術平均粗さRaを達成するためには、剥離フィルム30の製造時に、上記算術平均粗さRaを有するように製造してもよい。あるいは、剥離フィルム30の構成材料をシート状に製造した後に、上記算術平均粗さRaを有するように当該シートに表面処理を施してもよい。前者の場合、例えば、剥離フィルム30の押出成形に使用するロールの表面粗さを調整することにより、上記算術平均粗さRaを有する剥離フィルム30を製造することができる。後者の場合、例えば、シートに対してサンドブラスト処理やエンボス加工等を施すことにより、上記算術平均粗さRaを有する剥離フィルム30を得ることができる。
【0048】
剥離フィルム30の第1の面301における算術平均粗さRaは、剥離力βの上述した値を達成できる限り、適宜設定することができ、例えば、0.02〜0.10μmであることが好ましく、特に0.02〜0.07μmであることが好ましく、さらには0.03〜0.05μmであることが好ましい。
【0049】
剥離フィルム30の第1の面301側に設けられる剥離剤層の厚さは、剥離力βの値を上述の範囲に調整しやすいという観点から、0.04〜3.0μmであることが好ましく、特に0.06〜2.0μmであることが好ましい。また、剥離フィルム30の第2の面302側に設けられる剥離剤層の厚さは、剥離力βに対する剥離力αの比(α/β)を上述した値に調整し易いという観点から、0.04〜3.0μmであることが好ましく、特に0.06〜2.0μmであることが好ましい。
【0050】
剥離フィルム30の厚さは、特に制限はないものの、通常12〜250μm程度である。
【0051】
4.半導体貼付層
半導体貼付層80とは、本実施形態に係る半導体加工用シート1の使用に際し、半導体ウエハ等が貼付される層または半導体ウエハ等に貼付される層をいう。このときの貼付は、半導体加工用シート1の使用時に一時的に行われる貼付であってもよく、あるいは、半導体加工用シート1の使用後も継続される貼付であってもよい。半導体貼付層80の好ましい例としては、粘着剤層20、接着剤層40、保護膜形成層50、粘着剤層20と接着剤層40とからなる積層体、粘着剤層20と保護膜形成層50との積層体等が挙げられる。
【0052】
図3には、第1の実施形態に係る半導体加工用シート1の第1の態様が示されている。当該態様に係る半導体加工用シート1aでは、半導体貼付層80が粘着剤層20となっている。半導体加工用シート1aにおいて、粘着剤層20は、基材10に近位な側に第1の面201を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面202を有する。なお、半導体加工用シート1aは、例えば、ダイシングシートとして使用することができる。
【0053】
図4には、第1の実施形態に係る半導体加工用シート1の第2の態様が示されている。当該態様に係る半導体加工用シート1bでは、半導体貼付層80が接着剤層40となっている。半導体加工用シート1bにおいて、接着剤層40は、基材10に近位な側に第1の面401を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面402を有する。なお、半導体加工用シート1bは、例えば、ダイボンディングシートとして使用することができる。
【0054】
図5には、第1の実施形態に係る半導体加工用シート1の第3の態様が示されている。当該態様に係る半導体加工用シート1cでは、半導体貼付層80が保護膜形成層50となっている。半導体加工用シート1cにおいて、保護膜形成層50は、基材10に近位な側に第1の面501を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面502を有する。なお、半導体加工用シート1cは、例えば、保護膜形成用シートとして使用することができる。
【0055】
図6には、第1の実施形態に係る半導体加工用シート1の第4の態様が示されている。当該態様に係る半導体加工用シート1dでは、半導体貼付層80が粘着剤層20と接着剤層40とからなる積層体となっている。半導体加工用シート1dにおいて、粘着剤層20は基材10に近位な側に位置し、接着剤層40は剥離フィルム30に近位な側に位置する。また、粘着剤層20は、基材10に近位な側に第1の面201を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面202を有する。さらに、接着剤層40は、基材10に近位な側に第1の面401を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面402を有する。なお、半導体加工用シート1dは、例えば、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。
【0056】
図7には、第1の実施形態に係る半導体加工用シート1の第5の態様が示されている。当該態様に係る半導体加工用シート1eでは、半導体貼付層80が粘着剤層20と保護膜形成層50とからなる積層体となっている。半導体加工用シート1eにおいて、粘着剤層20は基材10に近位な側に位置し、保護膜形成層50は剥離フィルム30に近位な側に位置する。また、粘着剤層20は、基材10に近位な側に第1の面201を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面202を有する。さらに、保護膜形成層50は、基材10に近位な側に第1の面501を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面502を有する。なお、半導体加工用シート1eは半導体ウエハのダイシングに使用でき、さらにはダイシング後、保護膜形成層50を加熱等することより、半導体チップに保護膜を形成することができる。また、半導体加工用シート1eは、保護膜形成用シートとしても使用することができる。
【0057】
(1)粘着剤層
本実施形態に係る半導体加工用シート1では、粘着剤層20は、非エネルギー線硬化性粘着剤(エネルギー線硬化性を有しないポリマー)から構成されてもよいし、エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよい。非エネルギー線硬化性粘着剤としては、所望の粘着力および再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中でも、ダイシング工程等にて半導体ウエハや半導体チップ等の脱落を効果的に抑制することのできるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0058】
一方、エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線照射により粘着力が低下するため、半導体ウエハや半導体チップ等と半導体加工用シート1とを分離させたいときに、エネルギー線照射することにより、容易に分離させることができる。
【0059】
粘着剤層20を構成するエネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするものであってもよいし、非エネルギー線硬化性ポリマー(エネルギー線硬化性を有しないポリマー)と少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。また、エネルギー線硬化性を有するポリマーと非エネルギー線硬化性ポリマーとの混合物であってもよいし、エネルギー線硬化性を有するポリマーと少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物であってもよいし、それら3種の混合物であってもよい。
【0060】
最初に、エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合について、以下説明する。
【0061】
エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖にエネルギー線硬化性を有する官能基(エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)(以下「エネルギー線硬化型重合体(A)」という場合がある。)であることが好ましい。このエネルギー線硬化型重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0062】
アクリル系共重合体(a1)は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位とからなる。
【0063】
アクリル系共重合体(a1)の構成単位としての官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーであることが好ましい。
【0064】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
アミノ基含有モノマーまたは置換アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、n−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
アクリル系共重合体(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが用いられる。これらの中でも、特に好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。
【0068】
アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を通常3〜100質量%、好ましくは5〜40質量%の割合で含有し、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を通常0〜97質量%、好ましくは60〜95質量%の割合で含有してなる。
【0069】
アクリル系共重合体(a1)は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とを常法で共重合することにより得られるが、これらモノマーの他にもジメチルアクリルアミド、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
【0070】
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)を、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
【0071】
不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がヒドロキシ基、アミノ基または置換アミノ基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がエポキシ基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはアミノ基、カルボキシ基またはアジリジニル基が好ましい。
【0072】
また上記不飽和基含有化合物(a2)には、エネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合が、1分子中に少なくとも1個、好ましくは1〜6個、さらに好ましくは1〜4個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
【0073】
上記不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマーに対して、通常5〜95モル%、好ましくは10〜95モル%の割合で用いられる。
【0074】
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基と不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の官能基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
【0075】
このようにして得られるエネルギー線硬化型重合体(A)の重量平均分子量は、10,000以上であるのが好ましく、特に150,000〜1,500,000であるのが好ましく、さらに200,000〜1,000,000であるのが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0076】
エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化型重合体(A)といったエネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合であっても、エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)をさらに含有してもよい。
【0077】
エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
【0078】
かかるエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0079】
エネルギー線硬化型重合体(A)に対し、エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合、エネルギー線硬化性粘着剤中におけるエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の含有量は、エネルギー線硬化型重合体(A)100質量部に対して、10〜400質量部であることが好ましく、特に30〜350質量部であることが好ましい。
【0080】
ここで、エネルギー線硬化性粘着剤を得るためのエネルギー線として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤(C)を添加することが好ましく、この光重合開始剤(C)の使用により、重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
【0081】
光重合開始剤(C)としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、(2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパノン}、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
光重合開始剤(C)は、エネルギー線硬化型共重合体(A)(エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合には、エネルギー線硬化型共重合体(A)およびエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の合計量100質量部)100質量部に対して0.1〜10質量部、特には0.5〜6質量部の範囲の量で用いられることが好ましい。
【0083】
エネルギー線硬化性粘着剤においては、上記成分以外にも、適宜他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、非エネルギー線硬化性ポリマー成分またはオリゴマー成分(D)、架橋剤(E)等が挙げられる。
【0084】
非エネルギー線硬化性ポリマー成分またはオリゴマー成分(D)としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、重量平均分子量(Mw)が3000〜2,500,000のポリマーまたはオリゴマーが好ましい。当該成分(D)をエネルギー線硬化性粘着剤に配合することにより、硬化前における粘着性および剥離性、硬化後の強度、他の層との接着性、保存安定性などを改善し得る。当該成分(D)の配合量は特に限定されない。
【0085】
架橋剤(E)としては、エネルギー線硬化型共重合体(A)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。当該成分(E)をエネルギー線硬化性粘着剤に配合することにより、硬化前における粘着性および剥離性、粘着剤の凝集性などを改善し得る。当該成分(E)の配合量は特に限定されず、エネルギー線硬化型共重合体(A)100質量部に対して0〜15質量部の範囲で適宜決定される。
【0086】
次に、エネルギー線硬化性粘着剤が、非エネルギー線硬化性ポリマー成分と少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とする場合について、以下説明する。
【0087】
非エネルギー線硬化性ポリマー成分としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分が使用できる。
【0088】
少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、前述の成分(B)と同じものが選択できる。非エネルギー線硬化性ポリマー成分と少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの配合比は、非エネルギー線硬化性ポリマー成分100質量部に対して、少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー10〜250質量部であるのが好ましく、特に25〜100質量部であるのが好ましい。
【0089】
この場合においても、上記と同様に、光重合開始剤(C)や架橋剤(E)を適宜配合することができる。
【0090】
粘着剤層20の厚さは、半導体加工用シート1が使用される各工程において適切に機能できる限り、特に限定されない。具体的には、1〜50μmであることが好ましく、特に2〜40μmであることが好ましく、さらには3〜30μmであることが好ましい。
【0091】
(2)接着剤層
接着剤層40を構成する材料としては、ダイシングの際にウエハを固定し、さらに、個片化されたチップに対して接着剤層を形成できるものであれば、特に制限はなく使用することができる。このような接着剤層40を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と低分子量の熱硬化性接着成分とからなるものや、Bステージ(半硬化状)の熱硬化型接着成分からなるもの等が用いられる。これらの中でも、接着剤層40を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と熱硬化性接着成分とを含むものであることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル系共重合体、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレン(メタ)アクリル酸系共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミドなどが挙げられるが、中でも、粘着性及び造膜性(シート加工性)の点から(メタ)アクリル系共重合体が好ましい。熱硬化性接着成分としては、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、シアネート系樹脂、ビスマレイミドトリアジン系樹脂、アリル化ポリフェニレンエーテル系樹脂(熱硬化性PPE)、ホルムアルデヒド系樹脂、不飽和ポリエステル又はこれらの共重合体などが挙げられるが、中でも、接着性の観点からエポキシ系樹脂が好ましい。接着剤層40を構成する材料としては、半導体ウエハへの貼付性に優れ、特に
図6に示される半導体加工用シート1dにおいて粘着剤層20との剥離性が優れるという点から、特に、(メタ)アクリル系共重合体及びエポキシ系樹脂を含有する材料が好ましい。
【0092】
(メタ)アクリル系共重合体としては、特に制限はなく、従来公知の(メタ)アクリル系共重合体を用いることができる。(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜2,000,000であることが好ましく、特に100,000〜1,500,000であることが好ましい。(メタ)アクリル系共重合体のMwが10,000以上であることで、接着剤層40と粘着剤層20との剥離性がより良好となり、チップのピックアップを効果的に行うことができる。また、(メタ)アクリル系共重合体のMwが2,000,000以下であることで、特に
図6に示される半導体加工用シート1dにおいて、接着剤層40が被着体の凹凸に対してより良好に追従することができ、ボイド等の発生を効果的に防ぐことができる。
【0093】
(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、−60〜70℃であることが好ましく、−30〜50℃であることがより好ましい。(メタ)アクリル系共重合体のTgが−60℃以上であることで、特に
図6に示される半導体加工用シート1dにおいて、接着剤層40と粘着剤層20との剥離性がより良好となり、チップのピックアップを効果的に行うことができる。また、(メタ)アクリル系共重合体のTgが70℃以下であることで、ウエハを固定するための接着力を十分に得ることができる。
【0094】
(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルモノマー又はその誘導体が挙げられ、より具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどの環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。また、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などのカルボキシ基を含有する不飽和単量体を用いてもよい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマーとして、上記の中では、エポキシ系樹脂との相溶性の点から、少なくともヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルを用いることが好ましい。この場合、(メタ)アクリル系共重合体において、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位は、1〜20質量%の範囲で含まれることが好ましく、3〜15質量%の範囲で含まれることがより好ましい。(メタ)アクリル系共重合体として、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が好ましい。
【0096】
また、(メタ)アクリル系共重合体は、本発明の目的を損なわない範囲で、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンなどのモノマーを共重合させてもよい。
【0097】
エポキシ系樹脂としては、従来公知の種々のエポキシ系樹脂を用いることができる。エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂や、これらのハロゲン化物などの、構造単位中に2つ以上の官能基が含まれるエポキシ系樹脂が挙げられる。これらのエポキシ系樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0098】
エポキシ系樹脂のエポキシ当量は特に限定されない。エポキシ当量は、通常、150〜1000g/eqであることが好ましい。なお、本明細書におけるエポキシ当量は、JIS K7236:2009に準じて測定される値である。
【0099】
エポキシ系樹脂の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、1〜1500質量部が好ましく、3〜1000質量部がより好ましい。エポキシ系樹脂の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して1質量部以上であることで、十分な接着力を得ることができる。また、エポキシ系樹脂の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して1500質量部以下であることで、十分な造膜性が得られ、接着剤層40を効果的に形成することができる。
【0100】
接着剤層40を構成する材料は、さらに、エポキシ系樹脂を硬化させるための硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、エポキシ基と反応しうる官能基を分子中に2個以上有する化合物が挙げられ、その官能基としては、フェノール性ヒドロキシ基、アルコール性ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、酸無水物基などが挙げられる。これらの中では、フェノール性ヒドロキシ基、アミノ基及び酸無水物基が好ましく、フェノール性ヒドロキシ基及びアミノ基がより好ましい。
【0101】
硬化剤の具体例としては、ノボラック型フェノール系樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール系樹脂、トリフェノールメタン型フェノール系樹脂、アラルキルフェノール系樹脂などのフェノール性熱硬化剤;DICY(ジシアンジアミド)などのアミン系熱硬化剤が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
硬化剤の含有量は、エポキシ系樹脂100質量部に対して、0.1〜500質量部が好ましく、1〜200質量部がより好ましい。硬化剤の含有量が、エポキシ系樹脂100質量部に対して0.1質量部以上であることで、十分な接着力を得ることができる。また、硬化剤の含有量が、エポキシ系樹脂100質量部に対して500質量部以下であることで、接着剤層40の吸湿率の上昇が効果的に防止され、半導体パッケージの信頼性をより優れたものとすることができる。
【0103】
接着剤層40を構成する材料(接着剤組成物)には、上記以外に、所望により、硬化促進剤、カップリング剤、架橋剤、エネルギー線硬化型化合物、光重合開始剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料、染料、無機充填剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。これらの各添加剤は、1種が単独で含まれてもよいし、2種以上が組み合わせられて含まれてもよい。
【0104】
硬化促進剤は、接着剤組成物の硬化速度を調整するために用いられる。硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性ヒドロキシ基やアミン等との反応を促進し得る化合物が好ましい。かかる化合物としては、具体的には、3級アミン類、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール等のイミダゾール類、有機ホスフィン類、テトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0105】
カップリング剤は、接着剤組成物の被着体に対する接着性・密着性を向上させる機能を有する。また、カップリング剤を使用することで、接着剤組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性を損なうことなく、当該硬化物の耐水性を向上させることができる。カップリング剤は、上記(メタ)アクリル系重合体及びエポキシ系樹脂が有する官能基と反応する基を有する化合物であることが好ましい。このようなカップリング剤としては、シランカップリング剤が好ましい。
【0106】
シランカップリング剤としては特に制限はなく、公知のものが使用できる。例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0107】
架橋剤は、接着剤層40の凝集力を調節するためのものである。上記(メタ)アクリル系重合体の架橋剤としては、特に制限はなく、公知のものが使用でき、例えば、粘着剤層20を構成する材料として上述したものを使用することができる。
【0108】
エネルギー線硬化型化合物は、紫外線等のエネルギー線の照射を受けると重合硬化する化合物である。エネルギー線硬化型化合物をエネルギー線照射によって硬化させることで、特に
図6に示される半導体加工用シート1dにおいて、接着剤層40と粘着剤層20との剥離性が向上するため、半導体チップのピックアップがしやすくなる。
【0109】
エネルギー線硬化型化合物としては、アクリル系化合物が好ましく、分子内に少なくとも1つの重合性二重結合を有するものが特に好ましい。そのようなアクリル系化合物としては、具体的には、ジシクロペンタジエンジメトキシジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレート、イタコン酸オリゴマーなどが挙げられる。
【0110】
アクリル系化合物の重量平均分子量は、通常、100〜30000であり、好ましくは300〜10000程度である。
【0111】
接着剤組成物がエネルギー線硬化型化合物を含有する場合、エネルギー線硬化型化合物の含有量は、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、通常1〜400質量部、好ましくは3〜300質量部、より好ましくは10〜200質量部である。
【0112】
光重合開始剤は、接着剤層40が上記エネルギー線硬化型化合物を含む場合に、エネルギー線の照射により重合硬化するにあたって、重合硬化時間及びエネルギー線の照射量を少なくすることができるものである。光開始剤としては、特に制限はなく、公知のものが使用でき、例えば、粘着剤層20を構成する材料として上述したものを使用することができる。
【0113】
接着剤層40の厚さは、通常3〜100μmであり、好ましくは5〜80μmである。
【0114】
(3)保護膜形成層
保護膜形成層50は、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。この場合、保護膜形成層50に半導体ウエハや半導体チップ等を重ね合わせた後、保護膜形成層50を硬化させることにより、保護膜を半導体ウエハや半導体チップ等に強固に接着することができ、耐久性を有する保護膜をチップ等に形成することができる。この保護膜形成層50に対しては、硬化性接着剤が未硬化の段階でも、硬化後の段階でも、レーザー光照射によって良好に印字することができる。
【0115】
保護膜形成層50は、常温で粘着性を有するか、加熱により粘着性を発揮することが好ましい。これにより、上記のように保護膜形成層50に半導体ウエハや半導体チップ等を重ね合わせるときに両者を貼合させることができる。したがって、保護膜形成層50を硬化させる前に位置決めを確実に行うことができ、半導体加工用シート1c,1eの取り扱い性が容易になる。
【0116】
上記のような特性を有する保護膜形成層50を構成する硬化性接着剤は、硬化性成分とバインダーポリマー成分とを含有することが好ましい。硬化性成分としては、熱硬化性成分、エネルギー線硬化性成分、またはこれらの混合物を用いることができる。保護膜形成層50の硬化方法や硬化後の耐熱性の観点からは、熱硬化性成分を用いることが特に好ましく、硬化時間の観点からは、エネルギー線硬化性成分を用いることが好ましい。
【0117】
熱硬化性成分としては、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂等およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂およびこれらの混合物が好ましく用いられる。熱硬化性成分としては、通常分子量300〜10,000程度のものが用いられる。
【0118】
エポキシ系樹脂は、加熱を受けると三次元網状化し、強固な被膜を形成する性質を有する。このようなエポキシ系樹脂としては、公知の種々のエポキシ系樹脂が用いられるが、通常は、重量平均分子量300〜2500程度のものが好ましい。さらには、重量平均分子量300〜500の常態で液状のエポキシ系樹脂と、重量平均分子量400〜2500、特に重量平均500〜2000の常温で固体のエポキシ系樹脂とをブレンドした形で用いることが好ましい。また、エポキシ系樹脂のエポキシ当量は、50〜5000g/eqであることが好ましい。
【0119】
このようなエポキシ系樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、フェニルノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール類のグリシジルエーテル;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸のグリシジルエーテル;アニリンイソシアヌレート等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したグリシジル型もしくはアルキルグリシジル型のエポキシ樹脂;ビニルシクロヘキサンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−ジシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等のように、分子内の炭素−炭素二重結合を例えば酸化することによりエポキシが導入された、いわゆる脂環型エポキシドを挙げることができる。その他、ビフェニル骨格、ジシクロヘキサジエン骨格、ナフタレン骨格等を有するエポキシ系樹脂を用いることもできる。
【0120】
これらの中でも、ビスフェノール系グリシジル型エポキシ系樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ系樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ系樹脂が好ましく用いられる。これらエポキシ系樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0121】
エポキシ系樹脂を用いる場合には、助剤として、熱活性型潜在性エポキシ系樹脂硬化剤を併用することが好ましい。熱活性型潜在性エポキシ系樹脂硬化剤とは、室温ではエポキシ系樹脂と反応せず、ある温度以上の加熱により活性化し、エポキシ系樹脂と反応するタイプの硬化剤である。熱活性型潜在性エポキシ系樹脂硬化剤の活性化方法には、加熱による化学反応で活性種(アニオン、カチオン)を生成する方法;室温付近ではエポキシ系樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ系樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法;モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤で、高温で溶出して硬化反応を開始する方法;マイクロカプセルによる方法等が存在する。
【0122】
熱活性型潜在性エポキシ系樹脂硬化剤の具体例としては、各種オニウム塩や、二塩基酸ジヒドラジド化合物、ジシアンジアミド、アミンアダクト硬化剤、イミダゾール化合物等の高融点活性水素化合物等を挙げることができる。これら熱活性型潜在性エポキシ系樹脂硬化剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のような熱活性型潜在性エポキシ系樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、特に好ましくは0.2〜10質量部、さらに好ましくは0.3〜5質量部の割合で用いられる。
【0123】
フェノール系樹脂としては、アルキルフェノール、多価フェノール、ナフトール等のフェノール類とアルデヒド類との縮合物などのフェノール系ヒドロキシ基を有する重合体が特に制限されることなく用いられる。具体的には、フェノールノボラック系樹脂、o−クレゾールノボラック系樹脂、p−クレゾールノボラック系樹脂、t−ブチルフェノールノボラック系樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール系樹脂、ポリパラビニルフェノール系樹脂、ビスフェノールA型ノボラック系樹脂、あるいはこれらの変性物等が用いられる。
【0124】
これらのフェノール系樹脂に含まれるフェノール性ヒドロキシ基は、上記エポキシ系樹脂のエポキシ基と加熱により容易に付加反応して、耐衝撃性の高い硬化物を形成することができる。このため、エポキシ系樹脂とフェノール系樹脂とを併用してもよい。
【0125】
エネルギー線硬化性成分としては、例えば、粘着剤層20を構成する材料として前述したものを用いることができる。また、エネルギー線硬化性成分として、エネルギー線硬化性モノマー/オリゴマーを用いてもよい。さらに、エネルギー線硬化性成分と組み合わされるバインダーポリマー成分として、エネルギー線硬化性化合物が付加されたアクリル系ポリマーを用いてもよい。
【0126】
バインダーポリマー成分は、保護膜形成層50に適度なタックを与えたり、半導体加工用シート1c,1eの操作性を向上したりすること等を目的として配合される。バインダーポリマーの重量平均分子量は、通常は30,000〜2,000,000、好ましくは50,000〜1,500,000、特に好ましくは100,000〜1,000,000の範囲にある。重量平均分子量が30,000以上であることにより、保護膜形成層50のフィルム形成が十分なものとなる。また、重量平均分子量が2,000,000以下であることにより、他の成分との相溶性が良好に維持され、保護膜形成層50のフィルム形成を均一に行うことができる。このようなバインダーポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系共重合体、ポリエステル系樹脂、フェノキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系共重合体等が用いられ、特に(メタ)アクリル系共重合体が好ましく用いられる。
【0127】
(メタ)アクリル系共重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと(メタ)アクリル酸誘導体とを重合してなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が用いられる。また、(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0128】
上記の中でもグリシジルメタクリレート等を構成単位として用いて(メタ)アクリル系共重合体にグリシジル基を導入すると、前述した熱硬化性成分としてのエポキシ系樹脂との相溶性が向上し、保護膜形成層50の硬化後のガラス転移温度(Tg)が高くなり、耐熱性が向上する。また、上記の中でもヒドロキシエチルアクリレート等を構成単位として用いて(メタ)アクリル系共重合体にヒドロキシ基を導入すると、半導体ウエハや半導体チップ等への密着性や粘着物性をコントロールすることができる。なお、グリシジルメタクリレート等を構成単位として用いて(メタ)アクリル系共重合体にグリシジル基を導入した場合における、その(メタ)アクリル系共重合体や、エポキシ基を有するフェノキシ系樹脂は、熱硬化性を有することがある。しかしながら、このような熱硬化性を有するポリマーも、本実施形態においては熱硬化性成分ではなく、バインダーポリマー成分に該当するものとする。
【0129】
バインダーポリマーとして(メタ)アクリル系共重合体を使用した場合における、当該(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、好ましくは100,000以上であり、特に好ましくは150,000〜1,000,000である。(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度は通常20℃以下、好ましくは−70〜0℃程度であり、常温(23℃)においては粘着性を有する。
【0130】
硬化性成分とバインダーポリマー成分との配合比率としては、バインダーポリマー成分100質量部に対して、硬化性成分を、好ましくは50〜1500質量部、特に好ましくは70〜1000質量部、さらに好ましくは80〜800質量部配合することが好ましい。このような割合で硬化性成分とバインダーポリマー成分とを配合すると、硬化前には適度なタックを示し、貼付作業を安定して行うことができ、また硬化後には、被膜強度に優れた保護膜が得られる。
【0131】
保護膜形成層50には、フィラーおよび/または着色剤を含有させることもできる。但し、半導体加工用シート1c,1eを、チップ形状の検査、ステルスダイシングまたは半導体チップのレーザー印字に使用する場合、保護膜形成層50が光線透過性を有する必要がある。そのため、この場合、当該光線透過性を阻害しない程度に、フィラーおよび/または着色剤を含有させる必要がある。一方、半導体加工用シート1c,1eを、保護膜形成層50またはそれが個片化されて形成される保護膜のレーザー印字に使用する場合、保護膜形成層50に光線透過性は要求されない。この場合、レーザー印字を可能にするために、保護膜形成層50は、当該レーザー光を遮断する必要がある。したがって、レーザー印字を効果的に行うために、保護膜形成層50はフィラーおよび/または着色剤を含有することが好ましい。また、保護膜形成層50がフィラーを含有すると、硬化後の保護膜の硬度を高く維持することができるとともに、耐湿性を向上させることができる。さらに、形成される保護膜の表面のグロスを所望の値に調整することもできる。さらにまた、硬化後の保護膜の熱膨張係数を半導体ウエハの熱膨張係数に近づけることができ、これによって加工途中の半導体ウエハの反りを低減することができる。
【0132】
フィラーとしては、結晶シリカ、溶融シリカ、合成シリカ等のシリカや、アルミナ、ガラスバルーン等の無機フィラーが挙げられる。中でも合成シリカが好ましく、特に半導体装置の誤作動の要因となるα線の線源を極力除去したタイプの合成シリカが最適である。フィラーの形状としては、球形、針状、不定形のいずれであってもよい。
【0133】
また、保護膜形成層50に添加するフィラーとしては、上記無機フィラーの他にも、機能性のフィラーが配合されていてもよい。機能性のフィラーとしては、例えば、帯電防止性の付与を目的とした、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、カーボン、セラミック、またはニッケル、アルミニウム等を銀で被覆した導電性フィラーや、熱伝導性の付与を目的とした、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、シリコン、ゲルマニウム等の金属材料やそれらの合金等の熱伝導性フィラーなどが挙げられる。
【0134】
着色剤としては、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料など公知のものを使用することができる。
【0135】
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0136】
有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色等が挙げられる。これらの顔料又は染料は、目的とする光線透過率に調整するため適宜混合して使用することができる。
【0137】
レーザー光照射による印字性の観点からは、上記の中でも、顔料、特に無機系顔料を使用することが好ましい。無機系顔料の中でも、特にカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックは、通常は黒色であるが、レーザー光照射によって削り取られた部分は白色を呈し、コントラスト差が大きくなるため、レーザー印字された部分の視認性に非常に優れる。
【0138】
保護膜形成層50中におけるフィラーおよび着色剤の配合量は、所望の作用が奏されるよう適宜調整すればよい。具体的に、フィラーの配合量は、通常は40〜80質量%であることが好ましく、特に50〜70質量%であることが好ましい。また、着色剤の配合量は、通常は0.001〜5質量%であることが好ましく、特に0.01〜3質量%であることが好ましく、さらには0.1〜2.5質量%であることが好ましい。
【0139】
保護膜形成層50は、カップリング剤を含有してもよい。カップリング剤を含有することにより、保護膜形成層50の硬化後において、保護膜の耐熱性を損なわずに、保護膜と半導体ウエハや半導体チップ等との接着性・密着性を向上させることができるとともに、耐水性(耐湿熱性)を向上させることができる。カップリング剤としては、その汎用性とコストメリットなどからシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、例えば前述したものを使用することができる。
【0140】
保護膜形成層50は、硬化前の凝集力を調節するために、有機多価イソシアネート系化合物、有機多価イミン系化合物、有機金属キレート系化合物等の架橋剤を含有してもよい。また、保護膜形成層50は、静電気を抑制し、チップの信頼性を向上させるために、帯電防止剤を含有してもよい。さらに、保護膜形成層50は、保護膜の難燃性能を高め、パッケージとしての信頼性を向上させるために、リン酸系化合物、ブロム系化合物、リン系化合物等の難燃剤を含有してもよい。
【0141】
保護膜形成層50の厚さは、保護膜としての機能を効果的に発揮させるために、3〜300μmであることが好ましく、特に5〜250μmであることが好ましく、さらには7〜200μmであることが好ましい。
【0142】
保護膜形成層50の第1の面501のグロス値は、25以上であることが好ましく、特に30以上であることが好ましい。第1の面501のグロス値が25以上であることで、当該面にレーザー印字した際に、美観が優れるとともに、形成される印字の視認性に優れる。なお、本明細書におけるグロス値は、JIS Z8741:1997に準じ、測定角60°にて光沢計を使用して測定した値とする。
【0143】
5.治具用粘着剤層
本実施形態に係る半導体加工用シートは、治具用粘着剤層をさらに備えてもよい。
図8には、治具用粘着剤層60を備える、第2の実施形態に係る半導体加工用シート2の断面図が示される。この半導体加工用シート2において、治具用粘着剤層60は、半導体貼付層80に近位な側に第1の面601を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面602を有する。また、治具用粘着剤層60は、リングフレーム等の治具の形状に対応する形状に形成され、通常、環状に形成される。これにより、半導体貼付層80の粘着力とは関係なく、半導体加工用シート2をリングフレーム等の治具に貼付して確実に固定することができる。
【0144】
第2の実施形態に係る半導体加工用シート2では、
図8に示される通り、剥離フィルム30の第1の面301に治具用粘着剤層60が接している。また、
図8に示されるように、治具用粘着剤層60が存在していない半導体加工用シート2の中央部では、剥離フィルム30の第1の面301に半導体貼付層80の第2の面802が接している。ここで、第2の実施形態に係る半導体加工用シート2では、半導体加工用シート2をロール状に巻き取った際、その巻き圧は治具用粘着剤層60が存在する位置に集中する。これにともない、ブロッキングも治具用粘着剤層60が存在する位置において発生し易くなる。そのため、半導体加工用シート2をロールから良好に巻き出せるか否かは、剥離フィルム30の第1の面301と治具用粘着剤層60の第2の面602との密着性が大きく影響する。したがって、半導体加工用シート2では、治具用粘着剤層60の第2の面602と剥離フィルム30の第1の面301との界面での剥離力を剥離力βとする。具体的には、剥離力βは、治具用粘着剤層60の第2の面602と剥離フィルム30の第1の面301とが積層された状態で、所定の条件下において40℃で3日間保管した後における、治具用粘着剤層60に対する剥離フィルム30の剥離力とする。一方、剥離力αについては、上述した第1の実施形態に係る半導体加工用シート1と同様に、基材10の第1の面101と剥離フィルム30の第2の面302との界面での剥離力とする。
【0145】
本実施形態における治具用粘着剤層60は、単層からなってもよいし、2層以上の多層からなってもよく、多層の場合、芯材が間に入った構成であることが好ましい。
【0146】
治具用粘着剤層60を構成する粘着剤は、リングフレーム等の治具に対する粘着力の観点から、非エネルギー線硬化性の粘着剤から構成されることが好ましい。非エネルギー線硬化性の粘着剤としては、所望の粘着力および再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができ、中でも粘着力および再剥離性の制御が容易なアクリル系粘着剤が好ましい。
【0147】
芯材としては、通常樹脂フィルムが用いられ、中でもポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルムが好ましく、特にポリ塩化ビニルフィルムが好ましい。ポリ塩化ビニルフィルムは、加熱して軟化したとしても、冷却した際に復元し易い性質を有する。芯材の厚さは、2〜200μmであることが好ましく、特に5〜100μmであることが好ましい。
【0148】
治具用粘着剤層60の厚さは、リングフレーム等の治具に対する接着性の観点から、5〜200μmであることが好ましく、特に10〜100μmであることが好ましい。
【0149】
治具用粘着剤層60を有する半導体加工用シート2は、基材10の第1の面101における算術平均粗さRaが0.01〜0.8μmであることで、当該面における平滑性は良好なものとなり、少なくとも基材10が、所望の波長の光に対する高い光線透過性を有する。さらに、剥離フィルムが、その第2の面側に剥離剤層を備えることで、優れた耐ブロッキング性が発揮され、ロールからの半導体加工用シート2の繰り出しを良好に行うことができるとともに、繰り出しの際に意図しない剥離が生じない。また、剥離力βが10〜1000mN/50mmであることで、半導体加工用シート2を使用する際に、適度な剥離力で、剥離フィルム30から基材10、半導体貼付層80および治具用粘着剤層60を含む積層体を剥離することができる。
【0150】
6.プリカット
本実施形態に係る半導体加工用シートは、剥離フィルム30以外の層が所望の形状に切断加工された、いわゆるプリカットされた状態のものであってもよい。すなわち、本実施形態に係る半導体加工用シートは、長尺の剥離フィルム30に、平面視にて剥離フィルム30とは異なる形状を有する、基材10および半導体貼付層80を含む積層体が積層されてなるものであってもよい。
図9には、このようなプリカットされた、第3の実施形態に係る半導体加工用シート3を基材側から見た平面図が示されている。半導体加工用シート3では、長尺の剥離フィルム30上に、円形にカットされた基材10aと半導体貼付層80aとの積層体(以下「主使用部」という場合がある。)が設けられている。主使用部は、剥離フィルム30の長辺方向に複数配置されている。また、剥離フィルム30の長辺方向の両端部には、主使用部と接触しないようにカットされた、基材10bと半導体貼付層80bとの積層体(以下「シート残留部」という場合がある。)が設けられている。なお、
図10には、
図9のA−A線に沿った断面図が示されている。
【0151】
プリカットされた半導体加工用シート3においても、半導体加工用シート1について上述した物性等を満たす。また、半導体加工用シート3を構成する各層としては、半導体加工用シート1について上述したものを使用することができる。
【0152】
また、上述した治具用粘着剤層60を含む半導体加工用シート2を、プリカットが施されたシートとすることができる。当該シートでは、治具用粘着剤層60が、主使用部の周縁部に設けられる。
【0153】
半導体加工用シート3において、主使用部は、剥離フィルム30から剥離された後に、半導体ウエハや半導体チップ等に貼付される。一方、シート残留部は、半導体加工用シート3をロール状に巻き取った際の巻き圧が主使用部に集中することを防ぐ。
【0154】
一般に、プリカットされた半導体加工用シートでは、ロールから繰り出す際に、剥離フィルムから主使用部が剥離したり、当該剥離した主使用部の基材側が、剥離フィルムの第2の面に貼り付くといった不具合が生じ易い。しかしながら、第3の実施形態に係る半導体加工用シート3によれば、剥離フィルムが、その第2の面側に剥離剤層を備えることで、半導体加工用シート3同士が密着し難いものとなり、このような不具合の発生が抑制される。また、基材10の第1の面101における算術平均粗さRaが0.01〜0.8μmであることで、当該面における平滑性は良好なものとなり、少なくとも基材10が、所望の波長の光に対する高い光線透過性を有する。さらに、剥離力βが10〜1000mN/50mmであることで、半導体加工用シート3を使用する際に、適度な剥離力で、半導体貼付層80から剥離フィルム30を剥離することができる。
【0155】
7.半導体加工用シートの製造方法
粘着剤層20を含む半導体加工用シート1aの製造方法は、特に限定されず、常法を使用することができる。当該製造方法の第1の例としては、まず、粘着剤層20の材料を含む粘着剤組成物、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工用組成物を調製する。次に、この塗工用組成部物を、剥離フィルム30の第1の面301上に、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、ナイフコーター等により塗布して塗膜を形成する。さらに、当該塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層20を形成することができる。その後、粘着剤層20の第1の面201と、基材10の第2の面102とを貼合することで、半導体加工用シート1aが得られる。塗工用組成物は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されない。粘着剤層20を形成するための成分は、塗工用組成物中に溶質として含有されてもよく、または分散質として含有されてもよい。
【0156】
塗工用組成物が架橋剤(E)を含有する場合、所望の存在密度で架橋構造を形成させるために、上記の乾燥の条件(温度、時間など)を変えてもよく、または加熱処理を別途設けてもよい。架橋反応を十分に進行させるために、通常は、上記の方法などによって基材に粘着剤層を積層した後、得られた半導体加工用シート1aを、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行う。
【0157】
半導体加工用シート1aの製造方法の第2の例としては、まず、基材10の第2の面102上に上記塗工用組成物を塗布して、塗膜を形成する。次に、当該塗膜を乾燥させて、基材10と粘着剤層20とからなる積層体を形成する。さらに、この積層体における粘着剤層20の第2の面202と、剥離フィルム30の第1の面301とを貼合することで、半導体加工用シート1aが得られる。
【0158】
接着剤層40を含む半導体加工用シート1bの製造方法は、特に限定されず、常法を使用することができる。例えば、接着剤層40の材料を含む接着剤組成物および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工用組成物を、剥離フィルム30の第1の面301上に塗布し、乾燥させることにより接着剤層40を形成する。その後、接着剤層40の第1の面401と、基材10の第2の面102とを貼合することで、半導体加工用シート1bが得られる。
【0159】
保護膜形成層50を含む半導体加工用シート1cの製造方法は、上述した半導体加工用シート1bの製造方法を参考に製造することができる。特に、半導体加工用シート1bの製造方法において、接着剤層40の材料を含む接着剤組成物を、保護膜形成層50の材料を含む保護膜形成層組成物に置き換えることで、半導体加工用シート1cを得ることができる。
【0160】
粘着剤層20および接着剤層40を含む半導体加工用シート1dの製造方法は、特に限定されず、常法を使用することができる。例えば、接着剤層40の材料を含む接着剤組成物および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工用組成物を、剥離フィルム30の第1の面301上に塗布し、乾燥させることにより接着剤層40を形成する。これにより、剥離フィルム30と接着剤層40との積層体を得る。次に、予め作製した半導体加工用シート1aから剥離フィルム30を剥離し、露出した粘着剤層20側の面と、上記積層体の接着剤層40側の面とを貼り合せることで、半導体加工用シート1dが得られる。
【0161】
粘着剤層20および保護膜形成層50を含む半導体加工用シート1eは、上述した半導体加工用シート1dの製造方法を参考に製造することができる。特に、半導体加工用シート1dの製造方法において、接着剤層40の材料を含む接着剤組成物を、保護膜形成層50の材料を含む保護膜形成層組成物に置き換えることで、半導体加工用シート1eを得ることができる。
【0162】
治具用粘着剤層60を含む半導体加工用シート2は、常法によって製造することができる。例えば、所望の形状に形成された治具用粘着剤層60を、基材10および半導体貼付層80等を含む積層体における、基材10とは反対側の面に積層することで、半導体加工用シート2を製造することができる。
【0163】
また、治具用粘着剤層60を含む半導体加工用シート2をプリカットされたシートとする場合には、例えば、次のように製造することができる。まず、剥離フィルム30の剥離面上に、治具用粘着剤層60を構成するための治具用粘着剤をシート状に形成する。次に、このシート状治具用粘着剤における、治具用粘着剤層60の内周縁となる部分を、剥離フィルム30を残してシート状治具用粘着剤を切断(ハーフカット)し、その内側の円形部分を除去する。次いで、円形部分を除去した後のシート状治具用粘着剤と剥離フィルム30とからなる積層体のシート状治具用粘着剤側の面を、別途用意した、基材10と半導体貼付層80とからなる積層体の半導体貼付層80側の面に貼付する。これにより、剥離フィルム30と、シート状治具用粘着剤と、半導体貼付層80と、基材10とが順に積層された積層体を得る。最後に、この積層体において、剥離フィルム30を残して、シート状治具用粘着剤、半導体貼付層80および基材10を切断(ハーフカット)する。このとき、治具用粘着剤層60の外周縁となる部分を、剥離フィルム30を残して切断(ハーフカット)し、不要な部分を除去することで、主使用部を形成することができる。これにより、シート状治具用粘着剤は、環状の治具用粘着剤層60となる。また、主使用部となる部分以外の位置を適宜ハーフカットして、シート残留部を形成することもできる。
【0164】
プリカットされた半導体加工用シート3の製造方法は特に限定されず、常法を使用することができる。
【0165】
8.半導体加工用シートの使用方法
本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3は、バックグラインドシート、ダイシングシート等として使用することができる。当該シート1,2,3を使用する際、シート裏面からレーザーを照射してダイシングを行うことができる。また、バックグラインドやダイシング等の工程の後に、本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3を介して、ウエハやチップの形状を検査することができる。さらに、本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3を介して、ウエハやチップの裏面に対してレーザー印字することもできる。
【0166】
また、特に、接着剤層40を含む半導体加工用シート1b,1dは、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。すなわち、半導体加工用シート1b,1dを使用することで、チップの裏面に保護膜を形成することができる。この場合、保護膜形成層50を含む半導体加工用シート1c,1eにウエハを貼付し、保護膜形成層50を硬化させる。続いて、半導体加工用シート1c,1e上にてウエハをダイシングし、必要に応じてエキスパンド工程を行う。その後、得られたチップをピックアップすることで、接着剤層が付与されたチップを得ることができる。さらに、保護膜形成層50を含む半導体加工用シート1c,1e上にてウエハをダイシングし、必要に応じてエキスパンド工程を行った後に、得られたチップをピックアップすることで、裏面に保護膜が形成されたチップを得ることができる。
【0167】
本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3は、保管等のために、ロール状に巻き取った状態にすることができる。本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3は、このように巻き取った場合であっても、上述したように剥離フィルムが、その第2の面側に剥離剤層を備えることで、本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3同士が密着し難いものとなる。このため、優れた耐ブロッキング性が発揮され、本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3のロールからの繰り出しを良好に行うことができ、さらに、繰り出しの際の意図しない層間での剥離を抑制することができる。また、基材10の第1の面における算術平均粗さRaが0.01〜0.8μmであることで、当該面における平滑性は良好なものとなり、基材10が所望の波長の光に対する高い光線透過性を有する。その結果、上述したような、裏面からのレーザーダイシング、検査およびレーザー印字を良好に行うことができる。さらに、剥離力βが10〜1000mN/50mmであるため、本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3に対してウエハを貼付する際に、適度な剥離力で、剥離フィルム30から基材10および半導体貼付層80を含む積層体を剥離することができる。
【0168】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0169】
例えば、本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3における基材10と半導体貼付層80との間には、他の層が介在していてもよい。
【実施例】
【0170】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0171】
〔実施例1〕
(1)基材の作製
基材として、ポリ塩化ビニルフィルムをカレンダー製膜法により作製した。当該ポリ塩化ビニルフィルムは、第1の面の算術平均粗さRaが0.03μmであり、JIS K7161:1994に準拠して測定した23℃におけるMD方向の引張弾性率(ヤング率)が250MPaであり、厚さが80μmであった。
【0172】
なお、本実施例における算術平均粗さRaは、触式表面粗さ計(Mitsutoyo社製「SURFTEST SV−3000」)を用い、JIS B0601:2013に準拠して、面内で10点測定し、その平均値を算出したものである。
【0173】
また、上記基材単体について、印字用レーザー光(波長:532nm)の透過性、ステルスダイシング用レーザー光(波長:1600nm)の透過性、および検査用赤外線(波長:1069nm)の透過性を評価したところ、いずれの場合も優れた透過性を示した。
【0174】
(2)剥離フィルムの作製
ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面(第1の面)をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET381031」,厚さ:38μm)の他方の面(第2の面)を、アルキッド系剥離剤を使用して剥離処理した。当該アルキッド系剥離剤としては、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にアルキッド系剥離剤層を設けてなる剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET38AL−5」)におけるアルキッド系剥離剤層を形成するためのアルキッド系剥離剤を使用した。これにより、第1の面はシリコーン系剥離剤で剥離処理され、第2の面はアルキッド系剥離剤で剥離処理された剥離フィルムを得た。この剥離フィルムの第1の面の算術平均粗さRaは、0.03μmであり、第2の面の算術平均粗さRaは、0.03μmであった。
【0175】
(3)粘着剤組成物(I)の調製
2−エチルヘキシルアクリレート18.5質量部(固形分換算,以下同じ)と、酢酸ビニル75質量部と、アクリル酸1質量部と、メチルメタクリレート5質量部と、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.5質量部とを共重合させて、重量平均分子量600,000のアクリル系共重合体を得た。
【0176】
得られたアクリル系共重合体100質量部と、エネルギー線硬化性化合物としての2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(Mw=8000)60質量部と、エネルギー線硬化性化合物としての6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(Mw=2000)60質量部と、光重合開始剤としてのα−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製,製品名「イルガキュア184」)3質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)1.6質量部とを溶媒中で混合し、粘着剤組成物(I)の塗布溶液を得た。
【0177】
(4)半導体加工用シートの作製
上記工程(2)で作製した剥離フィルムの第1の面に対し、上記工程(3)で得られた粘着剤組成物(I)の塗布溶液を、ナイフコーターで塗布した。次いで、100℃で1分間処理して、塗膜を乾燥させるとともに架橋反応を進行させた。これにより、剥離フィルムと厚さ10μmの粘着剤層とからなる積層体を得た。さらに、当該積層体における粘着剤層の第1の面と、上記工程(1)で作製した基材の第2の面とを貼合することで、基材と粘着剤層と剥離フィルムとが順に積層された半導体加工用シートを得た。その後、当該半導体加工用シートを、温度23℃、相対湿度50%の環境下で7日間養生した。
【0178】
〔実施例2〕
(1)基材の作製
基材として、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルムをTダイ製膜法によって作製した。当該エチレン−メタクリル酸共重合体フィルムは、第1の面の算術平均粗さRaが0.05μmであり、JIS K7161:1994に準拠して測定した23℃におけるMD方向の引張弾性率(ヤング率)が130MPaであり、厚さが80μmであった。
【0179】
なお、上記基材単体について、印字用レーザー光(波長:532nm)の透過性、ステルスダイシング用レーザー光(波長:1600nm)の透過性、および検査用赤外線(波長:1069nm)の透過性を評価したところ、いずれの場合も優れた透過性を示した。
【0180】
(2)粘着剤組成物(II)の調製
ブチルアクリレート99質量部と、アクリル酸1質量部とを共重合させて、重量平均分子量600,000のアクリル系共重合体を得た。
【0181】
次いで、得られたアクリル系共重合体100質量部と、エネルギー線硬化性モノマーとしてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製,製品名「KAYARAD DPHA)120質量部と、光重合開始剤としてのα−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製,製品名「イルガキュア184」)3質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)17質量部とを溶媒中で混合し、粘着剤組成物(II)の塗布溶液を得た。
【0182】
(3)半導体加工用シートの作製
上記のように作製した、エチレン−メタクリル酸共重合体を材料とする基材、および粘着剤組成物(II)を使用する以外、実施例1と同様に半導体加工用シートを作製した。
【0183】
〔実施例3〕
(1)剥離フィルムの作製
ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面(第1の面)をシリコーン系剥離剤により剥離処理した剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP-PET382150」,厚さ:38μm)の他方の面(第2の面)を、実施例1で使用したものと同じアルキッド系剥離剤を使用して剥離処理した。これにより、第1の面はシリコーン系剥離剤で剥離処理され、第2の面はアルキッド系剥離剤で剥離処理された剥離フィルムを得た。この剥離フィルムの第1の面の算術平均粗さRaは、0.03μmであり、第2の面の算術平均粗さRaは、0.03μmであった。
【0184】
(2)半導体加工用シートの作製
上記のように作製した、第1の面はシリコーン系剥離剤で剥離処理され、第2の面はアルキッド系剥離剤で剥離処理された剥離フィルムを使用する以外、実施例2と同様に半導体加工用シートを作製した。
【0185】
〔比較例1〕
ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面(第1の面)をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET381031」,厚さ:38μm)を剥離フィルムとして使用する以外、実施例1と同様に半導体加工用シートを作製した。なお、当該剥離フィルムの第1の面の算術平均粗さRaは、0.03μmであり、他方の面(第2の面)の算術平均粗さRaは、0.05μmであった。
【0186】
〔比較例2〕
(1)基材の作製
基材として、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムをTダイ製膜法によって作製した。当該エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムは、第1の面の算術平均粗さRaが0.06μmであり、JIS K7161:1994に準拠して測定した23℃におけるMD方向の引張弾性率(ヤング率)が75MPaであり、厚さが100μmであった。
【0187】
なお、上記基材単体について、印字用レーザー光(波長:532nm)の透過性、ステルスダイシング用レーザー光(波長:1600nm)の透過性、および検査用赤外線(波長:1069nm)の透過性を評価したところ、いずれの場合も優れた透過性を示した。
【0188】
(2)粘着剤組成物(III)の調製
2−エチルヘキシルアクリレート40質量部と、酢酸ビニル40質量部と、ヒドロキシエチルアクリレート20質量部とを共重合させて、重量平均分子量420,000のアクリル系共重合体を得た。
【0189】
次いで、得られたアクリル系共重合体100質量部と、エネルギー線硬化性基含有化合物としての2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)30.2質量部とを反応させることで、側鎖にエネルギー線硬化性基(メタクリロイル基)が導入されたエネルギー線硬化型重合体を得た。
【0190】
得られたエネルギー線硬化型重合体100質量部と、光重合開始剤としてのα−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製,製品名「イルガキュア184」)3質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)1.1質量部とを溶媒中で混合し、粘着剤組成物(III)の塗布溶液を得た。
【0191】
(3)半導体加工用シートの作製
上記のように作製した、エチレン−酢酸ビニル共重合体を材料とする基材、および粘着剤組成物(III)を使用する以外、比較例1と同様に半導体加工用シートを作製した。
【0192】
〔比較例3〕
ポリエチレンテレフタレートフィルム製の剥離フィルム(三菱樹脂社製,製品名「ダイアホイル(登録商標)T−100 38」,厚さ:38μm,両面剥離処理なし)を剥離フィルムとして使用する以外、実施例2と同様に半導体加工用シートを作製した。なお、当該剥離フィルムの両面の算術平均粗さRaは、ともに0.05μmであった。
【0193】
〔試験例1〕(剥離力αの測定)
実施例および比較例で製造した半導体加工用シートを幅50mm×長さ100mmに裁断した。このとき、半導体加工用シートの製造時における流れ方向(MD方向)が長さ方向となるように裁断した。このように裁断した半導体加工用シートを、基材を上側として10枚積層し、この積層体を、幅75mm×長さ15mm×厚さ5mmのガラス板で上下から挟んだ。そして、500gの重りを上側のガラス板上に置いた状態で、40℃で乾燥状態に設定した湿熱促進器(ESPEC社製,製品名「SH641」)内で3日間保管した。なお、半導体加工用シートがエネルギー線硬化性の材料を含む場合には、積層体を遮光した状態で保管した。
【0194】
保管が完了した後、上記積層体から、最外層に位置する半導体加工用シートと、それと隣接する半導体加工用シートとの2枚の導体加工用シートを、それらが重なった状態で測定用サンプルとして取り分けた。続いて、当該測定用サンプルの最外層に位置する剥離フィルムを剥離し、露出した粘着面を、ステンレス板に両面粘着テープを用いて貼合し、万能引張試験機(オリエンテック社製,製品名:テンシロン UTM−4−100)に固定した。その後、温度23℃、相対湿度50%RHの条件下で、ステンレス板から最も遠位に位置する半導体加工用シートを、それに重なった半導体加工用シートから、180°方向に引張速度300mm/分で剥離した。すなわち、基材の第1の面と剥離フィルムの第2の面との間で剥離させた。このときの力を測定し、これを剥離力α(mN/50mm)とした。結果を表2に示す。
【0195】
〔試験例2〕(剥離力βの測定)
上記試験例1と同様に、10枚の半導体加工用シートからなる積層体を作製し、40℃で3日間保管した。この積層体から、1枚の半導体加工用シートを取り出し、基材の第1の面をステンレス板に両面粘着テープを用いて貼り合わせ、万能引張試験機(オリエンテック社製,製品名:テンシロン UTM−4−100)に固定した。その後、温度23℃、相対湿度50%RHの条件下で、剥離フィルムのみを、180°方向に引張速度300mm/分で剥離した。すなわち、剥離フィルムの第1の面と粘着剤の第2の面との間で剥離させた。このときの力を測定し、これを剥離力β(mN/50mm)とした。結果を表2に示す。さらに、当該剥離力βと、試験例1で測定した剥離力αとに基づいて、剥離力βに対する剥離力αの比の値(α/β)を算出した。結果を表2に示す。
【0196】
〔試験例3〕(ロールからの繰り出しの評価)
実施例および比較例で製造した半導体加工用シートを、290mmの幅を有する長尺のシートとして準備した。そして、基材側から切れ込みを入れて、
図9に示されるように円形の主使用部およびシート残留部を形成した。このとき、剥離フィルム以外の層のみを切断(ハーフカット)し、また、主使用部の直径は、270mmとした。その後、主使用部およびシート残留部以外の基材および粘着剤層(さらに、存在する場合には接着剤層または保護膜形成層)を除去した。これにより、100個の主使用部を有する半導体加工用シートを得た。当該半導体加工用シートを、基材側が外側となるように巻き取り、ロール状とした。
【0197】
このように得られたロール状の半導体加工用シートを、40℃で乾燥状態に設定した湿熱促進器(ESPEC社製,製品名「SH641)内で3日間保管した。なお、半導体加工用シートがエネルギー線硬化性の材料を含む場合には、積層体を遮光した状態で保管した。
【0198】
保管が完了した後、ウエハマウンター(リンテック社製,製品名「RAD−2500m/8」)を使用して、ロール状に巻き取られた半導体加工用シートを繰り出した。そして、半導体加工用シートの長さ方向の両端部における、主使用部20枚分が存在する領域(すなわち、ロールの外側の部分における主使用部20枚分が存在する領域、および内側の部分における主使用部20枚分が存在する領域)について、良好な繰り出しが可能であるかどうかを確認した。このとき、いずれの領域においても主使用部20枚分連続で良好に繰り出せた場合、○と評価した。一方、剥離フィルムの第2の面に、その下に重なっていた主使用部が密着して、繰り出すことができないといった不具合が1枚でも生じた場合、×と評価した。結果を表2に示す。
【0199】
〔試験例4〕(マウントの評価)
上記試験例3と同様に、ロール状の半導体加工用シートを作製し、40℃で3日間保管した。その後、ウエハマウンター(リンテック社製,製品名「RAD−2500m/8」)を使用して、このロールの剥離フィルムから主使用部を剥離し、当該主使用部を半導体ウエハに貼付(マウント)した。この操作を連続して20回繰り返し、良好に完了した場合、○と評価した。一方、剥離フィルムからの主使用部の剥離不良などにより、マウントに不具合が生じた場合、×と評価した。結果を表2に示す。
【0200】
表1に、実施例および比較例で製造した半導体加工用シートの構成をまとめる。なお、表1に記載の略号の詳細は以下の通りである。
[基材]
・PVC:ポリ塩化ビニル
・EMAA:エチレン−メタクリル酸共重合体
・EVA:エチレン−酢酸ビニル共重合体
【0201】
〔試験例5〕(光線透過性の評価)
厚さ350μmのシリコンウエハのミラー面に対し、ウエハマウンター(リンテック社製,製品名「RAD−2500m/8」)を使用して、試験例3において3日間の保管が完了した後の半導体加工用シート、およびリングフレームを貼付した。その後、ダイシング装置(DISCO社製,製品名「DFD−651」)を使用して、以下の条件で、シリコンウエハのダイシングを行った。
ダイシング条件:
・ワーク(被切断物):シリコンウエハ(サイズ:6インチ,厚さ:350μm,貼付面:ミラー)
・ダイシングブレード:ディスコ社製,製品名「27HECC」
・ブレード回転数:30,000rpm
・ダイシングスピード:10mm/秒
・切り込み深さ:基材の、ダイシング装置テーブルとは反対の面から20μmの深さまで切り込み
・ダイシングサイズ:5mm×5mm
【0202】
上記ダイシングにより得られた、半導体加工用シートに貼付されたチップについて、半導体加工用シートおけるチップとは反対の面(基材の第2の面)側から、半導体加工用シートを介してチップの周縁部および角部を認識できるか目視により確認した。チップの周縁部および角部が確認できたものを光線透過性(可視光線透過性)が良好(○)、確認できなかったものを光線透過性(可視光線透過性)が不良(×)と評価した。結果を表2に示す。
【0203】
【表1】
【0204】
【表2】
【0205】
表2から明らかなように、実施例の半導体加工用シートは、光線透過性に優れるとともに、ロールからの繰り出しおよびマウントの両方において、優れた評価が得られた。一方、比較例の半導体加工用シートでは、ロールからの繰り出しおよびマウントの何れかにおいて、不具合が生じた。