(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。
[1.全体構成]
本実施形態の通信装置1は、OSI(Open Systems Interconnection)に基づくレイヤ2の中継処理を行う、いわゆるレイヤ2スイッチとして機能するボックス型のスイッチ装置である。なお、ここではボックス型の場合を例にして説明するが、これに限るものではなく、シャーシ型のスイッチ装置であってもよい。また、レイヤ2スイッチとして機能するものに限らず、レイヤ3スイッチとして機能するものであってもよい。
【0010】
図1および
図2に示すように、通信装置1は、直方体形状に形成された筐体10を備える。筐体10には、メインボード20、同期モジュール30、二つの電源モジュール40,40が収容されている。
【0011】
筐体10の正面には、フロントパネル12が設けられ、そのフロントパネル12には、ローカルエリアネットワーク(即ちLAN)を構成するケーブルCEのコネクタを装着可能な多数の外部ポート12aと、マネージメント用ネットワークを構成するケーブルCMのコネクタを装着可能なマネージメント用ポート12bと、メモリカードMCを装着可能なカード用スロット12cと、同期モジュール30を装着可能な同期用スロット12dとが設けられている。なお、外部ポート12aおよびマネージメント用ポート12bは、LAN規格の一つであるイーサネット(登録商標)に従った通信を行なうためのインタフェースを提供する。
【0012】
筐体10の背面には、電源モジュール40,40を装着するための二つの電源用スロット14,14が設けられている。電源モジュール40は、商用電源を入力とし所定電圧(例えば5V)の直流電圧に変換して通信装置1の各部に供給する周知のものであり、冗長性を持たせるために同じものが二つ設けられている。
【0013】
[2.メインボード]
メインボード20は、両面にプリント配線が形成された矩形状の基板20aを備える。基板20aの一方の面である部品面には、2個のインタフェースモジュール(以下、IFモジュール)21,21、マネージメント用IFモジュール22、メモリ用IFモジュール23、スイッチLSI24、CPUボード25、保守管理LSI26、論理回路部27、同期モジュール用コネクタ28、電源モジュール用コネクタ29,29等が配置されている。
【0014】
なお、IFモジュール21,21は、いずれもIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.3規格に準拠した1Gbpsまたは10Gbpsのイーサネットインタフェースを12ポート分ずつ提供するトランシーバである。このインタフェースは、フロントパネル12に形成された外部ポート12aを介して提供される。
【0015】
なお、マネージメント用IFモジュール22は、IEEE802.3規格に準拠した10Mbps,100Mbps,1Gbpsのうちいずれかのイーサネットインタフェースを2ポート分提供するトランシーバである。このインタフェースは、フロントパネル12に形成されたマネージメント用ポート12bを介して提供される。搭載される各モジュール21〜23の数は、本実施形態にて示している数に限定されるものではなく、任意の数を採用することができる。
【0016】
メモリ用IFモジュール23は、カード用スロット12cに装着されるメモリカードMCに対するリード/ライトを制御する装置である。
スイッチLSI24は、IFモジュール21,21を介して送受信されるイーサネットフレームを中継するスイッチ機能を実現する半導体集積回路である。
【0017】
CPUボード25は、通信装置1を構成する各デバイスの設定や監視等に関する各種制御を実行するCPU251を備え、基板20a上に設けられた図示しないコネクタに接続される。CPU251は、I2C(Inter-Integrated Circuit)等により構成された制御用の通信網を介して通信装置1を構成する各デバイスとの通信を行うことによって上記制御を実現する。なお、CPU251は制御部に相当する。
【0018】
保守管理LSI26は、基板20a上のCPUボード25で覆われた位置に配置されている。保守管理LSI26は、電源投入時やリセット時の起動シーケンスの制御、CPU251からの指示に従って、通信装置1各部の監視や異常検出時の制御等を実行する機能を有する半導体集積回路である。なお、保守管理LSI26は、後述する第1電源部34の給電電圧を監視する機能を実現する第1電圧監視部261を少なくとも備える。なお、第1電圧監視部261は、第1電源部34の給電電圧を監視し、その給電電圧が予め設定された異常判定閾値より低下した場合に、アクティブレベルとなる第1監視信号を出力する。
【0019】
論理回路部27は、通信装置1の各部にて検出された監視用の信号を、CPU251から読み出し可能に保持する機能を実現する監視情報保持部271を少なくとも備え、通信装置1の保守管理等に必要な様々な機能を論理回路によって実現する半導体集積回路である。この論理回路部27は、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成されている。
【0020】
同期モジュール用コネクタ28は、基板20a上に設けられ、同期用スロット12dに装着された同期モジュール30と基板20aとを電気的に接続するコネクタである。
電源モジュール用コネクタ29,29は、基板20a上に設けられ、電源用スロット14に装着された電源モジュール40,40と基板20aとを電気的に接続するコネクタである。
【0021】
なお、IFモジュール21,21、マネージメント用IFモジュール22、メモリ用IFモジュール23、スイッチLSI24、CPUボード25、保守管理LSI26、論理回路部27は、いずれも、電源モジュール40または電源モジュール40と共通のグランドラインを有する電源からの給電により動作するように構成されている。
【0022】
[3.同期モジュール]
同期モジュール30は、IEEE1588に規定されたネットワークを用いた時刻同期方式を実現するためのモジュールであり、フロントパネル12の同期用スロット12dに装着して使用される。4kストリーミング等、データを分割し送信・伝送するアプリケーションでは、ギガビットイーサネットなどの高速な伝送路を介しデータ伝送され受信側のアプリケーションでデータを復元する。しかし伝送経路の違いにより、例え高速なギガビットイーサネットを用いた場合においても、伝送路毎の遅延ならびに伝送経路上の装置による遅延により、アプリケーション側でデータを復元できないことがある。同期モジュール30は、この復元の際に必要となる正確な時刻情報を得るために用いられる。
【0023】
同期モジュール30は、
図2および
図3に示すように、入出力部31、信号絶縁部32、信号処理部33、第1電源部34、第2電源部35、第2電圧監視部36、監視絶縁部37等を備える。
【0024】
入出力部31は、同期用スロット12dに装着されたときに、フロントパネル12の外部に露出する前面部30aに、BNCコネクタからなる二つの入出力ポート31a,31bと、RJ45コネクタからなる二つの入出力ポート31c,31dを備える。これら各入出力ポート31a〜31dは、当該通信装置1と同様の機能を有する複数の通信装置によって構成されたネットワークにおいて、タイミング同期および時刻同期を実現するために必要な各種信号が入出力される。なお、タイミング同期は、各通信装置1間において動作の基準となるクロック信号の周波数や位相を合わせるためのものであり、時刻同期は、そのクロック信号のタイミングで表現される時刻を合わせるためのものである。これらの信号には、例えば、標準時を表す情報が含まれた放送波から抽出されるタイミング信号や時刻情報を用いることができる。また、そのような放送波として、具体的には、衛星測位システム(例えば、GPS)の航法衛星からの送信波や日本標準時を表す標準電波、携帯電話の基地局からの送信波等が考えられる。なお、GPSは、Global Positioning Systemの略である。
【0025】
信号絶縁部32は、周知のフォトカプラを用いて構成され、入出力部31と信号処理部33との間で入出力される各信号の信号線を電気的に絶縁しながら信号を伝達する。
信号処理部33は、デジタルPLL回路等によって構成され、入出力ポート31a〜31dから入力される信号や情報に基づいて、タイミング同期を行なったクロック信号を生成してメインボード20を構成する各部に供給すると共に、時刻同期により設定された時刻情報を保持する。
【0026】
第2電圧監視部36は、第2電源部35の給電電圧を監視し、その給電電圧が予め設定された異常判定閾値より低下した場合に、アクティブレベルとなる第2監視信号を出力する。
【0027】
監視絶縁部37は、周知のフォトカプラを用いて構成され、第2電圧監視部36と論理回路部27との間の信号線を電気的に絶縁しながら信号、即ち第2監視信号を伝達する。なお、論理回路部27の監視情報保持部271は、監視絶縁部37を介して第2電圧監視部36から供給される第2監視信号の信号レベルを、CPU251からの読出可能な状態に保持する。
【0028】
第1電源部34は、任意のDC−DCコンバータにて構成されている。但し、第1電源部34を構成するDC−DCコンバータが絶縁型である場合は、入力側と出力側とでグランドラインが互いに接続される。つまり、第1電源部34の出力側のグランドラインは、電源モジュール40からの給電線と共通のグランドラインを有するように構成されている。そして、第1電源部34は、電源モジュール40から給電を受け所定電圧(例えば、3.3V)に変換して、信号処理部33、信号絶縁部32を構成するフォトカプラの信号処理部33側回路、監視絶縁部37を構成するフォトカプラの論理回路部27側回路に電源供給する。
【0029】
第2電源部35は、入力側と出力側とが絶縁された絶縁型DC−DCコンバータにて構成されている。つまり、第2電源部35の出力側のグランドラインを含む給電線は、電源モジュール40からの給電線や、第1電源部34の出力側の給電線とは絶縁されている。そして、第2電源部35は、電源モジュール40から給電を受け所定電圧(例えば、3.3V)に変換して、入出力部31、第2電圧監視部36、信号絶縁部32を構成するフォトカプラの入出力部31側回路、監視絶縁部37を構成するフォトカプラの第2電圧監視部36側回路に電源供給する。
【0030】
[4.動作]
入出力部31を構成する入出力ポート31a~31dを介して入出力される信号に基づいて、信号処理部33は、当該通信装置1と共にネットワークを構成する他の通信装置で使用されるものと同期したクロックを生成し、このクロックを用いてスイッチLSI24やIFモジュール21等を動作させる。第2電圧監視部36は、第2電源部35による入出力部31への給電電圧を監視し、その監視結果を表す第2監視信号を、監視絶縁部37を介して監視情報保持部271に供給する。監視情報保持部271は、第2監視信号の信号レベルを保持すると共に、その保持した結果をCPU251に対して出力する。第1電圧監視部261は、第1電源部34による信号処理部33への給電電圧を監視し、その監視結果を表す第1監視信号の信号レベルを保持すると共に、その保持した結果をCPU251に対して出力する。CPU251は、第1監視信号および第2監視信号の信号レベルおよび装置各部の状態を表す図示しない各種監視信号に基づき、異常の有無や異常の状態を判断し、その判断結果に応じた各種制御を実行する。具体的には、例えば、入出力部31からの信号入力が予め設定された一定時間以上継続してない場合に、第2監視信号を確認することで、第2電源部35による給電系の異常であるか、単に信号入力がないだけなのかを判断することができる。また、CPU251が実行する制御としては、例えば、検出された異常の状態に応じて、図示しないLED等を点灯させることで、異常の発生やその種類を通知することが考えられる。なお、これに限るものではなく、装置全体をリセットしたり、異常のある部位を予備系に切り替えたりする制御等を実行してもよい。
【0031】
[5.効果]
以上詳述して実施形態によれば、以下の効果が得られる。
通信装置1では、信号絶縁部32、監視絶縁部37、第2電源部35によって、当該通信装置1の外部からの信号を入出力する入出力部31だけでなく、入出力部31への給電電圧を監視する第2電圧監視部36も、それ以外の部位とは絶縁されている。このため、入出力部31を構成する入出力ポート31a〜31dを介して侵入するノイズへの耐性を確保しつつ、入出力部31側の異常を、入出力部31とは絶縁されたCPU251側にて的確に把握することができる。
【0032】
[6.他の実施形態]
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0033】
(A)上記実施形態では、第2監視信号を論理回路部27の監視情報保持部271が保持し、第1監視信号を保守管理LSI26の第1電圧監視部261が保持して、CPU251に供給するように構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、第1電圧監視部261を論理回路部27に設けたり、逆に監視情報保持部271を保守管理LSI26に設けたりしてもよい。これらの機能配置は、同期モジュール用コネクタ28の位置や数に応じて、例えば、総合的な配線長が最短となるように、適宜設計すればよい。
【0034】
(B)上記実施形態では、信号絶縁部32および監視絶縁部37としてフォトカプラを用いているが、これに限定されるものではなく、例えばパルストランス等を用いてもよい。
【0035】
(C)上記実施形態では、信号処理部33が第1電源部34からの給電により動作するように構成されているが、これに限定されるものではなく、第1電源部34と共通のグランドラインを有する電源からの給電により動作するように構成してもよい。また、第2電圧監視部36が第2電源部35からの給電により動作するように構成されているが、これに限定されるものではなく、第2電源部35と共通のグランドラインを有する電源からの給電により動作するように構成してもよい。
【0036】
(D)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。
【0037】
(E)上述した通信装置の他、当該通信装置を構成要素とするシステムなど、種々の形態で本発明を実現することもできる。