【実施例1】
【0034】
図5は、実施例1に係るデュプレクサの回路図である。
図5に示すように、デュプレクサ100は、送信フィルタ10、受信フィルタ12およびノッチ回路14を備えている。受信フィルタ12はラダー型フィルタであり、直列共振器S21からS25および並列共振器P21からP24を備えている。直列共振器S21からS25は、
アンテナに接続される共通端子Antと受信端子Rxとの間に直列に接続されている。並列共振器P21からP24は、共通端子Antと受信端子Rxとの間に並列に接続されている。直列共振器S21からS25および並列共振器P21からP24は弾性表面波共振器31であり、圧電基板30上に設けられている。
【0035】
弾性表面波共振器31は、IDT(Interdigital Transducer)32と反射器34を備える。弾性表面波共振器31の弾性表面波の伝搬方向はX方向である。IDT32の電極指の延伸方向はY方向である。ノッチ回路14のキャパシタCnおよびインダクタLnは共通端子Antとグランドとの間に、共振器を介さずに直列に接続されている。ノッチ回路14のキャパシタCnは圧電基板30上に設けられている。キャパシタCnは平面方向に対向する一対の電極42を有する。電極42の電極指の延伸方向はX方向である。インダクタLnは圧電基板30の外に設けられている。その他の構成は比較例1および比較例2と同じであり説明を省略する。
【0036】
図6(a)は、受信フィルタにおける弾性表面波共振器の平面図、
図6(b)は、キャパシタの平面図、
図6(c)は、送信フィルタにおける圧電薄膜共振器の断面図である。
図6(a)に示すように、圧電基板30上にIDT32と反射器34が形成されている。圧電基板30は、例えばタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である。圧電基板30は、サファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板またはシリコン基板等の支持基板の上面に接合されていてもよい。IDT32は、互いに対向する1対の櫛型電極32aを有する。櫛型電極32aは、複数の電極指32bと複数の電極指32bを接続するバスバー32cとを有する。電極指32bはX方向に配列し、Y方向に延伸している。反射器34は、IDT32の両側に設けられている。
【0037】
IDT
32は圧電基板30に弾性表面波を励振する。弾性表面波はX方向に伝搬する。回転YカットX伝搬基板の場合、結晶方位のX軸方向がX方向となる。弾性表面波の波長は電極指32bのピッチλに相当する。IDT32および反射器34はAl(アルミニウム)層またはCu(銅
)等の金属層により形成される。IDT32および反射器34上に絶縁体からなる保護膜または温度補償膜を設けてもよい。
【0038】
図6(b)に示すように、圧電基板30上に1対の電極42が設けられている。電極42は、複数の電極指42bと複数の電極指42bが接続されたバスバー42cを有している。電極指42bは平面方向に対向している。電極指42bの延伸方向はX方向である。電極指42bの幅D1、電極指42bの間の距離D2および開口長D3とする。電極42は、IDT32および反射器34と同じ金属層から形成されていてもよいし、異なる金属層から形成されていてもよい。一対の電極42を櫛型電極とした場合、一対の電極42
が共振器として機能するとノッチ回路14はラダー型フィルタの並列共振器のようにハイパスフィルタとして機能してしまう。
【0039】
そこで、一対の電極42の共振周波数を送信フィルタ10および受信フィルタ12の通過帯域より十分低くする。電極指42bのピッチをIDT
32の電極指32bのピッチλより大きくすることで、共振周波数を低くできる。これにより、送信フィルタ10および受信フィルタ12の通過帯域およびその高周波側では、一対の電極42をキャパシタCnとして機能させることができる。この場合、一対の電極42の面積が大きくなる。そこで、電極指42bの延伸方向をY方向とする。これにより、一対の電極42は弾性表面波をほとんど励振しない。よって、一対の電極42をキャパシタCnとして機能させることができる。電極指42bと32bの延伸方向は直交していることが好ましいが、交差していればよい。
【0040】
図6(c)に示すように、基板20上に圧電膜23が設けられている。基板20は、例えばサファイア基板、スピネル基板またはアルミナ基板等の絶縁基板、またはシリコン基板等の半導体基板である。圧電膜23を挟むように下部電極22および上部電極24が設けられている。下部電極22と基板20との間に空隙25が形成されている。下部電極22および上部電極24は圧電膜23内に、厚み縦振動モードの弾性波を励振する。下部電極22および上部電極24は例えばルテニウム膜等の金属膜である。圧電膜23は例えば窒化アルミニウム膜である。圧電薄膜共振器21および弾性表面波共振器31は、弾性波を励振する電極を含む。
【0041】
実施例1の通過特性および2次高調波をシミュレーションした。
圧電膜23:窒化アルミニウム膜
圧電基板30:42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
キャパシタCn
電極42:膜厚が150nmのAl膜
電極指の幅D1およびD2:800nm
開口長D3:40μm
対数:32対
インダクタLn
インダクタンス:3.5nH
Q値:無限大
ノッチ回路14を設けない比較例1に係るデュプレクサについても通過特性および2次高調波特性をシミュレーションした。
【0042】
図7(a)および
図7(b)は、実施例1における送信フィルタの送信端子から共通端子への通過特性を示す図である。実線は実施例1を示し、破線は比較例1を示す。
図7(a)および
図7(b)に示すように、通過帯域Passより高周波側、送信帯域Pass1および受信帯域Pass2における実施例1の送信フィルタ10の通過特性および抑圧特性は比較例1と同程度である。なお、4600MHz付近の減衰極は送信フィルタ10の並列共振器とグランドとの間に接続されるインダクタに起因するものである。2次高調波は送信フィルタ10の最も共通端子Ant側の直列共振器S15および並列共振器P13において生成されるため、この減衰極は2次高調波の抑制には余り寄与しない。
【0043】
図8(a)および
図8(b)は、実施例1における受信フィルタの共通端子から受信端子への通過特性を示す図である。
図8(c)は、実施例1における送信端子から受信端子へのアイソレーション特性を示す図である。
図8(a)および
図8(b)に示すように、通過帯域Passより高周波側、送信帯域Pass1および受信帯域Pass2における実施例1の受信フィルタ12の通過特性および抑圧特性は比較例1と同程度である。
図8(c)に示すように、送信帯域Pass1および受信帯域Pass2における実施例1のアイソレーション特性は比較例1と同程度である。
【0044】
図7(a)から
図8(c)に示すように、ノッチ回路14を設けることによる通過特性、抑圧特性およびアイソレーション特性の劣化はほとんどない。
【0045】
次に2次高調波をシミュレーションした。送信端子Txに2500MHzから2570MHzの28dBmの高周波信号を印加し、共通端子Antから出力される2次高調波をシミュレーションした。2次高調波は、圧電薄膜共振器21の圧電膜23に加わる「電界強度の2乗」、「電界強度とひずみの積」、および「ひずみの2乗」に比例した非線形電流に基づき算出できる。
【0046】
図9(a)は、実施例1におけるノッチ回路の通過特性、
図9(b)は2次高調波を示す図である。
図9(a)に示すように、ノッチ回路14は2次高調波の周波数帯域2HDにおいて阻止帯域を有する。なお、通過帯域Passのある1GHzから2.5GHzのノッチ回路14の挿入損失を小さくするためには、キャパシタCnのキャパシタンスを1pF以下とし、インダクタLnのインダクタンスを2nH以上とすることが好ましい。
【0047】
図9(b)に示すように、実施例1は比較例1に比べ周波数帯域2HDにおける2次高調波が小さくなる。周波数帯域2HDにおける2次高調波の最悪値は、比較例1で−23dBmに対し、実施例1で−44dBmである。このように、実施例1では2次高調波を20dBm程度削減できる。
【0048】
[実施例1の変形例1]
図10(a)は、実施例1の変形例1の回路図、
図10(b)はノッチ回路の通過特性を示す図である。
図10(a)に示すように、デュプレクサ102では、ノッチ回路14のインダクタLnが共通端子Ant側にキャパシタCnがグランド側に接続されている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0049】
ノッチ回路14の通過特性は、キャパシタCnのキャパシタンスを0.25pF、インダクタLnのインダクタンスを4.0nHとしてシミュレーションした。
図10(b)に示すように、キャパシタCnとインダクタLnを逆にしても、実施例1と同様の通過特性を有するノッチ回路14を形成できる。実施例1と同様に、キャパシタCnのキャパシタンスを1pF以下とし、インダクタLnのインダクタンスを2nH以上とすることが好ましい。
【0050】
[実施例1の変形例2]
図11(a)は、実施例1の変形例2の回路図、
図11(b)はノッチ回路の通過特性を示す図である。
図11(a)に示すように、マルチプレクサ104では、ノッチ回路14が共通端子AntとノードN1との間に接続されている。ノードN1は送信フィルタ10と受信フィルタ12とが共通に接続するノードである。キャパシタCnおよびインダクタLnは共通端子AntとノードN1との間に並列に接続されている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0051】
ノッチ回路14の通過特性は、キャパシタCnのキャパシタンスを1.975pF、インダクタLnのインダクタンスを0.5nHとしてシミュレーションした。
図11(b)に示すように、実施例1の変形例2においても、実施例1と同様の通過特性を有するノッチ回路14を形成できる。通過帯域Passのある1GHzから2.5GHzのノッチ回路14の挿入損失を小さくするためには、キャパシタCnのキャパシタンスを0.3pF以上とし、インダクタLnのインダクタンスを3nH以下とすることが好ましい。
【0052】
[実施例1の変形例3]
圧電基板30に形成された受信フィルタ12およびキャパシタCnの具体例を実施例1の変形例3から6において説明する。
図12は、実施例1の変形例3における圧電基板の平面図である。
図12に示すように、圧電基板30上に複数の弾性表面波共振器31、キャパシタCn、配線36およびパッド38が設けられている。各弾性表面波共振器31は1ポート共振器でありIDT32と反射器34を有する。複数の弾性表面波共振器31は、直列共振器S21からS25および並列共振器P21からP24を含む。パッド38は共通パッドPant,受信パッドPrx、インダクタ接続用パッドPLおよびグランドパッドPgndを含む。配線36は弾性表面波共振器31間、弾性表面波共振器31とパッド38との間、および/またはキャパシタCnとパッド38との間を電気的に接続する。配線36およびパッド38は例えばCu層、Au層またはAl層等の金属層である。パッド38上にバンプ39が設けられている。
【0053】
直列共振器S21からS25は共通パッドPantと受信パッドPrxとの間に配線36を介し直列に接続されている。並列共振器P21からP24は共通パッドPantと受信パッドPrxとの間に配線36を介し並列に接続されている。キャパシタCnは共通パッドPantとインダクタ接続用パッドPLとの間に接続されている。インダクタ接続用パッドPLはインダクタLnを介し接地されている。直列共振器S21、S22、S23およびS24は、それぞれ共振器S21aとS21b、共振器S22aとS22b、共振器S23aとS23b、および共振器S24aとS24bに直列に分割されている。並列共振器P21は共振器P21aとP21bに直列に分割されている。
【0054】
図13は、実施例1の変形例3における
図12の範囲Aの拡大図である。図示し易いように、電極指32bおよび42bのピッチを拡大し、対数を減らして図示している。
図13に示すように、電極42は、複数の電極指42bにそれぞれ
X方向に対向する複数のダミー電極指42dを備えている。IDT32は、複数の電極指32bにそれぞれ
Y方向に対向する複数のダミー電極指32dを備えている。IDT32の電極指32bの延伸方向と電極42の電極指42bの延伸方向は直交している。これにより、電極42により弾性表面波を励振し難くなる。また、電極指42bのピッチを電極指32bより大きくしている。これらにより、電極42とIDT32との干渉を抑制できる。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例3のようにIDT32および電極42はダミー電極指32dおよび42dを有してもよい。
【0055】
[実施例1の変形例4]
図14は、実施例1の変形例4におけるキャパシタ付近の拡大図である。
図14に示すように、電極42はダミー電極を有さなくてもよい。その他の構成は実施例1の変形例3と同じであり説明を省略する。
【0056】
[実施例1の変形例5]
図15は、実施例1の変形例5におけるキャパシタ付近の拡大図である。
図15に示すように、電極42の電極指42bの配列方向はX方向であり、電極指42bの延伸方向はY方向である。電極42のX方向の両側に反射器44が設けられている。その他の構成は実施例1の変形例3と同じであり説明を省略する。
【0057】
実施例1の変形例5のように、IDT32の電極指32bの延伸方向と電極42の電極指42bの延伸方向は平行でもよい。この場合、電極42が励振する弾性表面波がIDT32に影響することが考えられる。そこで、電極42の両側に、電極42が励振した弾性表面波を反射する反射器44を設ける。これにより、電極42とIDTとの干渉を抑制できる。
【0058】
[実施例1の変形例6]
図16は、実施例1の変形例6におけるキャパシタ付近の拡大図である。
図16に示すように、一対の電極42はそれぞれスパイラル状であり、平面方向に対向している。その他の構成は実施例1の変形例3と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例6のように、一対の電極42は櫛型電極でなくてもよい。
【0059】
圧電基板30は比誘電率が大きい。例えばタンタル酸リチウムの比誘電率は約40であり、ニオブ酸リチウムの比誘電率は約85である。これにより、圧電基板30上に一対の電極42を設けることで、キャパシタCnの面積を削減できる。圧電基板30上に電極42を設けると、耐電力性が小さい。しかし、実施例1のように、信号経路に対し並列にキャパシタCnを接続すると、通過帯域におけるノッチ回路14のインピーダンスが高くなり、大きな電流は信号経路を介し共通端子Antに流れる。よって、電極42が破壊されることを抑制できる。
【0060】
[実施例1の変形例7]
図17(a)および
図17(b)は、それぞれ実施例1および実施例1の変形例7におけるキャパシタの断面図である。
図17(a)に示すように、実施例1においては、電極42の電極指42bは圧電基板30上に形成されている。このとき、電極指42bの下面同士の電気力線50aは圧電基板30内を通る。電極指42bの側面同士の電気力線50bおよび電極指42bの上面同士の電気力線50cは、空気中または温度補償膜内を通る。
【0061】
図17(b)に示すように、実施例1の変形例7においては、電極指42bは圧電基板30に埋め込まれている。電極指42bの上面は圧電基板30から露出している。このとき、電極指42bの側面同士の電気力線50bは圧電基板30内を通る。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例7では、比誘電率の高い圧電基板30内を通る電気力線が増加する。これにより、電極指42b間の静電容量が大きくなる。よって、キャパシタCnの面積を削減できる。
【0062】
[実施例1の変形例8]
インダクタLnの具体例を実施例1の変形例8から10において説明する。
図18は、実施例1の変形例8におけるデュプレクサの断面図である。
図18に示すように、実装基板60上に基板20および圧電基板30がフリップチップ実装されている。実装基板60は、積層された絶縁層60aと60bを備えている。絶縁層60aの下面には導電体パターン62が設けられている。絶縁層60aおよび60bの上面には導電体パターン66aおよび66bが設けられている。絶縁層60aおよび60bを貫通するビア配線64aおよび64bが設けられている。ビア配線64aは導電体パターン62と66aとを電気的に接続する。ビア配線64bは導電体パターン66aと66bとを電気的に接続する。導電体パターン66bと基板20および圧電基板30とはバンプ68を介し電気的に接続されている。絶縁層60aおよび60bは例えば樹脂板またはセラミック板である。導電体パターン62、66aおよび66b、並びにビア配線64aおよび64bは、例えばCu層、Al層、またはAu層等の金属層である。バンプ68は例えばAuバンプ、半田パンプまたはCuバンプである。
【0063】
図19(a)から
図19(c)は、実施例1の変形例8における絶縁層の平面図である。
図19(a)は、絶縁層60bの上面の平面図である。基板20および圧電基板30を破線で示している。
図19(b)は、絶縁層60aの上面の平面図である。
図19(c)は、絶縁層60aの下面の平面図であり、絶縁層60aを透視して図示している。
【0064】
図19(a)に示すように、導電体パターン66bは、共通パッドPa、送信パッドPt、受信パッドPr、インダクタ接続用パッドPL、グランドパッドPg1およびPg2を含む。共通パッドPaはバンプ68を介し基板20および圧電基板30の共通パッドPantと電気的に接続される。送信パッドPtおよびグランドパッドPg1はバンプ68を介し基板20のそれぞれ送信パッドPtxおよびグランドパッドPgnd(
図4(a)参照)と電気的に接続される。受信パッドPr、インダクタ接続用パッドPlおよびグランドパッドPg2はバンプ68を介し圧電基板30のそれぞれ受信パッドPrx、インダクタ接続用パッドPLおよびグランドパッドPgndに電気的に接続される。
【0065】
図19(b)に示すように、導電体パターン66aはインダクタパターン65を含んでいる。インダクタパターン65の一端はビア配線64b(
図19(a)参照)を介しインダクタ接続用パッドPLに電気的に接続されている。
【0066】
図19(c)に示すように、導電体パターン62は、外部回路と接続するための共通端子Ant、送信端子Tx、受信端子Rxおよびグランド端子Gnd1からGnd3を含む。共通端子Ant、送信端子Tx、受信端子Rx、グランド端子Gnd1およびGnd2は、ビア配線64a、導電体パターン66aおよびビア配線64bを介しそれぞれ共通パッドPa、送信パッドPt、受信パッドPr、グランドパッドPg1およびPg2に電気的に接続される。グランド端子Gnd3はビア配線64aを介しインダクタパターン65の他端に電気的に接続される。これにより、インダクタ接続用パッドPlとグランドとの間にインダクタLnを構成するインダクタパターン65が直列に接続される。インダクタパターン65は、メアンダ型である。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0067】
[実施例1の変形例9]
図20は、実施例1の変形例9における絶縁層の平面図である。
図20に示すように、絶縁層60aの上面に導電体パターン66aから形成されるインダクタパターン65が設けられている。インダクタパターン65はスパイラル型である。その他の構成は実施例1の変形例8と同じであり説明を省略する。
【0068】
[実施例1の変形例10]
図21は、実施例1の変形例10におけるデュプレクサの断面図である。
図21に示すように、絶縁層60aと60bとの間に絶縁層60cが設けられている。絶縁層60cの上面には導電体パターン66cが設けられている。絶縁層60cを貫通するビア配線64cが設けられている。
【0069】
図22(a)および
図22(b)は、実施例1の変形例10における絶縁層の平面図である。
図22(a)は、絶縁層60cの上面の平面図である。
図22(b)は、絶縁層60aの上面の平面図である。
図22(a)に示すように、絶縁層60cの上面に、導電体パターン66cで形成された直線状のインダクタパターン65cが設けられている。
図22(b)に示すように、絶縁層60aの上面に、導電体パターン66aで形成された直線状のインダクタパターン65aが設けられている。
図22(a)および
図22(b)には、それぞれインダクタパターン65aおよび65cを破線で図示する。複数のインダクタパターン65cと65aとはビア配線64cを介しヘリカル型に接続されている。ヘリカル状に接続されたインダクタパターン65cおよび65aの一端はビア配線64bを介しインダクタ接続用パッドPLに電気的に接続されている。インダクタパターン65cおよび65aの他端はビア配線64aを介しグランド端子Gnd3に電気的に接続されている。これにより、インダクタ接続用パッドPlとグランドとの間にインダクタLnを構成するインダクタパターン65cおよび65aが直列に接続される。その他の構成は実施例1の変形例8と同じであり説明を省略する。
【0070】
実施例1の変形例8から10のように、インダクタLnの少なくとも一部を基板20および圧電基板30を実装する実装基板60に形成する。これにより、チップインダクタを用いる場合に比べ、小型化できる。また、インダクタンスのばらうきを抑制できる。インダクタLnの少なくとも一部は、基板20または圧電基板30上に設けてもよい。
【0071】
実施例1およびその変形例によれば、送信フィルタ10(第1フィルタ)は基板20上に設けられた圧電薄膜共振器21を有する。受信フィルタ12(第2フィルタ)は、圧電基板30上に設けられたIDTを備えた弾性波共振器を有する。送信フィルタ10に接続されたキャパシタCnは、圧電基板30上に設けられた平面方向に対向する一対の電極を備える。
【0072】
圧電基板30に設けられたキャパシタCnを用いるため、チップコンデンサを用いる場合に比べ、小型化できる。また、平面方向に対向する電極は精度よく電極を形成できる。よって、公差が小さく、キャパシタンスのばらつきを抑制できる。また、基板20にキャパシタCnを設け、MIMキャパシタの誘電体に圧電膜23を用いる場合に比べ、2次高調波を抑制できる。基板20にキャパシタCnを設け、MIMキャパシタの誘電体膜を新たに形成する場合に比べ、製造工数を削減できる。圧電基板30上に設けられた共振器をノッチ回路として用いる場合に比べ、電極間隔を広くできる。比誘電率の大きな圧電基板30を用いるため、キャパシタCnを小型化できる。
【0073】
また、実施例1の変形例1から5のように、一対の電極42は一対の櫛型電極42(すなわち櫛歯電極)である。これにより、キャパシタCnの面積を小さくできる。
【0074】
さらに、実施例1の変形例1から4のように、IDT32の電極指32bの配列方向と一対の電極42の電極指42bの配列方向は交差する。これにより、IDT32と一対の電極42との干渉を抑制できる。
【0075】
さらに、実施例1の変形例1から5のように、IDT32の電極指32bのピッチは一対の電極42の電極指42bのピッチと異なる。これにより、IDT32と一対の電極42との干渉を抑制できる。電極指42bの加工精度の観点から、電極指42bのピッチは電極指32bのピッチより大きいことが好ましい。
【0076】
さらに、実施例1の変形例7のように、一対の電極42は圧電基板30に埋め込まれている。これにより、キャパシタCnを小型化できる。
【0077】
さらに、送信フィルタ10と受信フィルタ12は、同じ通信方式(例えば同じバンド)である。このように、送信フィルタ10と受信フィルタ12を有するデュプレクサでは、送信フィルタ10に大きい電力が加わるため送信フィルタ10からの2次高調波が問題となる。一方、送信フィルタ10は耐電力性を高めるため圧電薄膜共振器が用いられる。そこで、送信フィルタ10に接続されるノッチ回路14を圧電基板30に用いることが好ましい。なお、第1フィルタが受信フィルタであり、第2フィルタが送信フィルタでもよい。また、第1フィルタおよび第2フィルタは、いずれも送信フィルタであってもよく、受信フィルタであってもよい。
【0078】
実施例1およびその変形例1のように、ノッチ回路14において、キャパシタCnは送信フィルタ10の出力端子とグランドとの間に直列に接続されている。インダクタLnは送信フィルタ10の出力端子とグランドとの間にキャパシタCnと直列に接続されている。送信フィルタ10の出力側に2次高調波が出力される。よって、送信フィルタ10の出力端子とグランドとの間にノッチ回路14を接続することが好ましい。
【0079】
実施例1の変形例2のように、キャパシタCnとインダクタLnは、送信フィルタ10と受信フィルタ12とが共通に接続されたノードN1と共通端子Antとの間に並列に接続されている。これにより共通端子Antから2次高調波が出力されることを抑制できる。
【0080】
実施例1およびその変形例1および2のように、ノッチ回路14は、送信フィルタ10の通過帯域の2倍の周波数帯域に阻止帯域を有することが好ましい。これにより、送信フィルタ10により生成される2次高調波を抑制できる。ノッチ回路14の阻止帯域は任意の周波数でもよい。これにより、任意の周波数の不要信号を抑制できる。また、キャパシタCnはノッチ回路14のキャパシタでなくてもよい。
【実施例2】
【0081】
実施例2は、フィルタを3個以上含むマルチプレクサの例である。
図23は、実施例2に係るマルチプレクサのブロック図である。
図23に示すように、マルチプレクサ104は、複数のデュプレクサ70aおよび70bとフィルタ70cを備えている。デュプレクサ70aおよび70bの共通端子は共通端子Antに接続されている。フィルタ70cの一端は共通端子Antに他端は端子Tcに接続されている。デュプレクサ70aは同じ通信方式(例えばバンド)の送信フィルタおよび受信フィルタを有している。デュプレクサ70bは同じ通信方式(例えばバンド)の送信フィルタおよび受信フィルタを有している。
【0082】
デュプレクサ70aおよび70bは各々FDD(Frequency Division Duplex)方式用のデュプレクサである。FDD方式では、送信と受信とを周波数で分割するため、FDD方式のバンドでは送信帯域と受信帯域は重なっていない。このため、デュプレクサ70aおよび70bは、各々通過帯域の重ならない送信フィルタと受信フィルタとを有する。フィルタ70cはTDD(Time Division Duplex)方式用のフィルタである。TDD方式では、送信と受信とを時間で分割するため、TDD方式のバンドでは、送信帯域と受信帯域は重なっている。このため、フィルタ70cは、送信フィルタと受信フィルタとを兼ねる。
【0083】
RF(Radio Frequency)−IC(Integrated Circuit)74は、送信信号をPA(パワーアンプ)71に出力する。PA71は送信信号を増幅し、送信端子Txに出力する。LNA(ローノイズアンプ)72は、マルチプレクサ104の受信端子Rxから出力された受信信号を増幅し、RF−IC74に出力する。スイッチ73は、端子TcをPA71とLNA72のいずれか一方に接続する。スイッチ73が端子TcとPA71を接続したとき、フィルタ70cは送信フィルタとして機能する。スイッチ73が端子TcとLNA72を接続したとき、フィルタ70cは受信フィルタとして機能する。
【0084】
デュプレクサ70aおよび70bの送信フィルタおよび受信フィルタ、並びにフィルタ70cのいずれかのフィルタは、圧電薄膜共振器を有する第1フィルタである。デュプレクサ70aおよび70bの送信フィルタおよび受信フィルタ、並びにフィルタ70cの他のフィルタは、キャパシタCnが同じ圧電基板に形成された第2フィルタである。第1フィルタと第2フィルタとは同じバンド用の送信フィルタおよび受信フィルタでもよい。第1フィルタと第2フィルタとは異なるバンド用のフィルタでもよい。
【0085】
[実施例2の変形例1]
図24は、実施例2の変形例1に係るマルチプレクサの回路図である。
図24に示すように、マルチプレクサ106は、送信フィルタ16a、受信フィルタ12、フィルタ10aおよびノッチ回路14を備えている。送信フィルタ16aはFDD方式であるバンド7用の送信フィルタであり、共通端子Antと送信端子TxB7の間に接続されている。受信フィルタ12はバンド7用の受信フィルタであり、共通端子Antと受信端子RxB7の間に接続されている。フィルタ10aは、TDD方式であるバンド40(通信帯域:2496MHz〜2690MHz)用のフィルタであり、共通端子Antと端子Tcとの間に接続されている。
【0086】
送信フィルタ16aは、圧電基板30a上に設けられた弾性表面波共振器である直列共振器S1からS4と並列共振器P1からP3を有する。受信フィルタ12は、圧電基板30上に設けられた弾性表面波共振器である直列共振器S21からS25と並列共振器P21からP24を有する。フィルタ10aは、基板20上に設けられた圧電薄膜共振器である直列共振器S11からS15と並列共振器P11からP13を有する。キャパシタCnは圧電基板30上に設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0087】
実施例2の変形例1のように、圧電薄膜共振器を有する第1フィルタはTDD方式のフィルタであり、キャパシタCnと同じ圧電基板30に設けられた第2フィルタはFDD方式のフィルタでもよい。
【0088】
[実施例2の変形例2]
図25は、実施例2の変形例2に係るマルチプレクサの回路図である。
図25に示すように、マルチプレクサ108は、送信フィルタ16b、16c、10、受信フィルタ12a、16dおよび16eを備えている。送信フィルタ16bは、FDD方式であるバンド1(送信帯域:1920MHz〜1980MHz)用であり、共通端子Antと送信端子TxB1との間に接続されている。送信フィルタ16cは、FDD方式であるバンド3(送信帯域:1710MHz〜1785MHz)用であり、共通端子Antと送信端子TxB3との間に接続されている。送信フィルタ10は、バンド7用であり、共通端子Antと送信端子TxB7との間に接続されている。受信フィルタ12aは、バンド1(受信帯域:2110MHz〜2170MHz)用であり、共通端子Antと受信端子RxB1との間に接続されている。受信フィルタ16dは、バンド3(受信帯域:1805MHz〜1880MHz)用であり、共通端子Antと受信端子
RxB3との間に接続されている。受信フィルタ16eは、バンド7用であり、共通端子Antと受信端子RxB7との間に接続されている。
【0089】
送信フィルタ16b、16c、受信フィルタ16dおよび16eは、それぞれ圧電基板30bから30e上に設けられた弾性表面波共振器である直列共振器S1からS4と並列共振器P1からP3を有する。送信フィルタ10は、基板20上に設けられた圧電薄膜共振器である直列共振器S11からS15と並列共振器P11からP13を有する。受信フィルタ12aは、圧電基板30上に設けられた弾性表面波共振器である直列共振器S21およびS22と並列共振器P21およびP22と多重モードフィルタDMSを有する。キャパシタCnは圧電基板30上に設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0090】
実施例2の変形例1のように、圧電薄膜共振器を有する第1フィルタはFDD方式のフィルタであり、キャパシタCnと同じ圧電基板30に設けられた第2フィルタは第1フィルタとは異なるLTEバンドのFDD方式のフィルタでもよい。
【0091】
実施例2の変形例1および2のように、第1フィルタと第2フィルタとは通信方式が異なっていてもよい。ここで、通信方式が異なるとは、実施例2の変形例1のように分割多重方式が異なっていてもよい。また、実施例2の変形例2のように、同じ分割多重方式においてLTEバンドが異なっていてもよい。マルチプレクサが有するフィルタの個数は任意に設計できる。また、各フィルタの通信方式(例えば分割多重方式およびバンド)は任意に設計できる。
【0092】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。