(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
肢体を構成する骨を切断するときには、表面の皮膚を切開してから骨を切断するため、大きく骨を露出させた状態で切断することができる。しかし、顎骨の切断の際には、審美性の観点から口腔側の粘膜を切開し、粘膜の切開部から切断用器具を挿入して、開いた切開部から見える顎骨を術者が覗き込むようにして切断するため、切断位置を正確に把握することが難しい。
【0008】
特許文献1に記載の顎骨穿孔用ガイド装置では、歯列に固定された基礎部材から垂直にガイド部材として、ハンドピースのスライド部材に挿通されるガイドバーが延びているため、開いた切開部へ挿入することが困難である。
【0009】
また、非特許文献1に記載のテンプレートでは、下顎切痕、下顎枝後縁、下後角前縁の3ヵ所により固定されるため、幅広く骨膜や咬筋を顎骨から剥離させる必要がある。従って、このテンプレートを使用すると患者への負担が大きい。
【0010】
そこで本発明は、顎骨の切削が正確にできると共に、患者への外科的侵襲量を抑えることができる顎骨切削用補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の顎骨切削用補助具は、歯欠損部における歯肉または歯に被せるための凹部が形成された固定部と、前記固定部に設けられ、手術による切削予定部の一部または全部を指す位置指示部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の顎骨切削用補助具によれば、固定部の凹部を歯欠損部における歯肉または歯に被せることでしっかりと位置決めでき、本発明の顎骨切削用補助具を固定することができる。従って、顎骨に固定するために、幅広く粘膜を切開しなくてもよい。そして、固定部に設けられた位置指示部が、手術による切削予定部の一部または全部を指すため、位置指示部が指し位置を目安に切削することができる。
【0013】
前記位置指示部が、前記固定部に基端が接続された棒状の第1部分と、前記第1部の先端に接続され、前記切削予定部を指す第2部分とを備ることができる。
切削予定部を指す第2部分が、棒状の第1部分の先端に形成されているため、この第2部分および第1部分を頬の開口部より挿入するだけである。従って、顎骨から剥離させる骨膜や咬筋の範囲を抑えることができる。
【0014】
前記第2部分は、先端の端辺が直線状の切削予定部に位置するものであると、第2部分の先端の端辺に目印を付けることで直線状の切削予定部の位置を簡単に印すことができる。
【0015】
前記第2部分は、前記切削予定部に含まれる少なくとも2点以上を指すように形成されていると、切削予定部に含まれる2点を目印として付け、後でこの2点を結ぶ線を描けば、切削予定部を示す切断予定線とすることができる。従って、術者は、正確に切断する位置を把握することができる。
【0016】
前記第2部分を、前記第1部分側の基端部から前記切削予定部に向かって開いた二又状に形成することができる。第2部分を二又状とすることで、二方向に分かれた間から顎骨の様子を観察することができるため、正確に目印を付けることができる。
【0017】
前記二又状の第2部分は、一方の指示片と他方の指示片とから形成され、前記一方の指示片と前記他方の指示片との基端部同士が軸により開閉自在に接続されていることが望ましい。二又状に形成された位置指示部が開閉することで、粘膜に形成した開口部が狭くても、位置指示部を閉じた状態とすれば、容易に開口部に挿入することができる。
【0018】
前記第1部分が、前記固定部と前記第2部分のいずれか一方または両方が連結部により接続されていると、腕部に位置指示部が繋がり固定部が離れた状態、腕部に固定部が繋がり位置指示部が離れた状態、または腕部と位置指示部と固定部とのそれぞれが離れた状態とすることができる。従って、頬の粘膜に形成した狭い開口部も通過させやすくすることができる。
【0019】
前記位置指示部には、前記切削予定部の領域を露出させる開口部が形成されたものとすることができる。切削予定部が領域を有するものであっても、位置指示部がその範囲を開口部が露出させていることで、切削予定部を正確に把握することができるため、正確に切削することができる。
【0020】
前記位置指示部が、前記顎骨の表面の凹凸に沿って湾曲していると、位置指示部を顎骨の表面に当てたときに、顎骨の凹凸面に位置指示部が嵌まり安定した状態で切断予定線の位置を示す目印を付けることができる。
【0021】
前記固定部を、義歯またはインプラントの上部構造、スプリントのいずれかとすることができる。歯科医師による施術が終了し、位置指示部を固定部から外せば、固定部を、義歯またはインプラントの上部構造、スプリントのいずれかとして使用することができる。
【0022】
本発明の顎骨切削用補助具の設計支援装置は、顎骨切削用補助具の設計を支援するものであり、
前記顎骨を撮像するCT撮像装置からの顎骨画像の歯欠損部における歯肉または歯に基づいて、前記固定部の形状を画像操作により作図するための第1画像処理部と、前記顎骨画像に前記切削予定部として仮想切削予定部を作図するための第2画像処理部と、前記仮想切削予定部の位置に合わせて配置される前記位置指示部を作図するための第3画像処理部を備えたことを特徴とする。
【0023】
本発明の顎骨切削用補助具の設計支援装置によれば、CT撮像装置が撮像した顎骨画像の歯欠損部における歯肉または歯に基づいて、第1画像処理部により固定部の形状を画像操作により作図するため、固定部が歯肉または歯に嵌合することで安定した固定が得られる固定部が設計できる。次に、第2画像処理部が顎骨画像に切削予定部として仮想切削予定部を作図し、この仮想切削予定部の位置に合わせ配置される位置指示部を第3画像処理部が作図することにより、本発明の顎骨切削用補助具を正確に設計することができる。
【0024】
前記位置指示部が、前記固定部に基端が接続された棒状の第1部分と、前記第1部の先端に接続され、前記切削予定部を指す第2部分とを備えたものとしたときに、前記第2部分と、前記固定部との間に前記第1部分を作図するための第4画像処理部を備えることができる。第4画像処理部が第2部分と固定部との間に第1部分を作図するため、第2部分と第1部分の長さが、固定部から仮想切削予定部までの長さとなるように正確に設計することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、位置指示部を粘膜の開口部より挿入するだけであるため、顎骨から剥離させる骨膜や咬筋の範囲を抑えることができるので、顎骨の切削が正確にできると共に、患者への外科的侵襲量を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る顎骨切削用補助具を図面に基づいて説明する。
本発明の顎骨切削用補助具は、顎骨を切削する際に使用されるが、
図1(A)および同図(B)に示す本実施の形態1に係る顎骨切削用補助具10は、下顎切痕から下顎底に向かって垂直骨切りする際に使用される。
顎骨切削用補助具10は、歯に被せ、固定するための凹部11aが形成された固定部11と、手術による切削予定部を指す位置指示部12とを備えている。顎骨切削用補助具10は、樹脂製とすることができる。
【0028】
固定部11は、
図1(A)および同図(B)に示す顎骨切削用補助具10では、歯に被せるために咬合面を溝底とする半筒状に形成されている。
【0029】
位置指示部12は、固定部11から顎骨の直線状の切削予定部に向かって延びる第1部分となる棒状の腕部121と、腕部121の先端に形成され、切断予定部に含まれる少なくとも2点以上を指す第2部分である指示部本体122とを備えている。以下、直線状の切削予定部を切断予定線と称す。)
腕部121は、固定部11の頂部に接続されている。腕部121は、顎骨の表面の凹凸に沿って湾曲している。本実施の形態の腕部121は、下顎体から下顎枝に向かって延びる際の斜線を越えるために、顎骨の表面に沿って緩やかに湾曲するU字状に形成されている。
【0030】
指示部本体122は、腕部121側の基端122aから先端122bに向かって拡がる扇状に形成されている。この指示部本体122の先端の端辺122cが切断予定線の位置を示す。指示部本体122も腕部121と同様に、指示部本体122の基端122aから先端122bの端辺122cに向かって顎骨の表面に沿って湾曲して形成されている。
顎骨切削用補助具10を樹脂製とするときに、透明樹脂とすると、顎骨の様子が指示部本体122を通して見えるため望ましい。
【0031】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係る顎骨切削用補助具10の使用状態を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態1では、
図2に示すように、外科矯正治療時における手術にて下顎枝B1を下顎切痕B2から下顎角B3(下顎底)に向けて切断する下顎枝垂直骨切り術(IVRO)を例に説明する。また、予め頬粘膜を切開して、開口部を形成し、骨膜、咬筋を顎骨から剥離させているものとする。
【0032】
まず、術者が、腕部121の先端部121a(一端部)に設けられた指示部本体122を頬粘膜に形成された開口部から挿入しながら、
図2に示すように、腕部121の他端部に接続された固定部11を歯T1に被せる。固定部11が歯T1に被せられることで、安定した状態で固定部11が歯T1に固定される。
【0033】
固定部11を歯T1に被せることで、指示部本体122の先端122bの端辺122cが、顎骨の切断予定線に位置して、切断予定線の一部を指し示す。従って、術者は、頬粘膜の開口部を開きながら指示部本体122の端辺122cの位置を目視して、指示部本体122の端辺122cのうちのどこかの2点か、2点をそれぞれに含む2つの直線を、切断予定線Lを示す目印として付けることができるため、簡単に切断予定線Lの位置を印すことができる。
【0034】
目印となる2点または、2つの直線は、近すぎると、それらを結ぶ直線を切断予定線Lとして引いたとしても、下顎枝を下顎切痕から下顎角に向けて切断することを示す直線を正確に引くことは難しい。そのため、目印となる2点または、2つの直線は、なるべく離れた位置であると、まっすぐ正確に直線が切断予定線Lに重なる線として引けるため、2点または、2つの直線は、端辺122cの両端部付近に印すことが望ましい。この目印は、疵による溝としたりインクで印したりすることができる。
【0035】
このとき、指示部本体122において、特に顎骨に接する面が、顎骨の表面の凹凸に沿って湾曲しているため、指示部本体122を顎骨の表面に当てたときに、顎骨の凹凸面に指示部本体122が嵌まり安定した状態で切断予定線の位置を示す目印を付けることができる。
また、腕部121も、顎骨の表面の凹凸に沿って湾曲しているため、指示部本体122と共に、腕部121を、顎骨の表面にフィットして配置することができるため、腕部121がずれてしまうことを抑止することができる。
【0036】
切断予定線が引ければ、術者は、この切断予定線に沿ってハンドピースにより切削を進めることで、下顎枝を切断することができる。従って、術者は、正確に切断する位置を把握することができる。また、切断予定線の位置を示す指示部本体122が腕部121の先端に形成され、この指示部本体122および腕部121を頬の開口部より挿入するだけであるため、顎骨から剥離させる骨膜や咬筋の範囲を抑えることができる。従って、患者への外科的侵襲量を抑えることができる。
【0037】
なお、本実施の形態1では、固定部11が歯に被せるものであったが、固定部を歯欠損部に配置するものであれば、歯肉に被せるために、部分義歯の義歯床と同様に断面U字状の凹部とすることができる。また、固定部を無歯顎に配置するものであれば、総義歯の義歯床と同様の全体形状とすることができる。また、患者が義歯を装着する者であれば、固定部は有床義歯そのものを使用することも可能である。更に、インプラントの上部構造を固定部とすることができる。
【0038】
また、固定部は、スプリント(矯正治療、顎関節疾患治療、ブラキシズム治療、スポーツ等に用いる樹脂等の材質で複数の歯を覆う形態の可撤性装置)とすることも可能である。固定部をスプリントとしたときには、顎骨の切断が終了したときに、腕部から固定部を取り外せば、固定部をそのままスプリントとして使用できる。
【0039】
また、指示部本体122は、扇状に形成されているが、半円状でも、三角形状でもよい。
【0040】
また、本実施の形態1では、下顎枝垂直骨切り術(IVRO)を例に説明したが、本発明に係る顎骨切削用補助具は、切断予定線の位置に合わせて位置指示部の形状と腕部の向きとを組み合わせることにより、下顎枝矢状分割術(SSRO)や下顎枝垂直矢状分割術(IVSRO)における切断予定線や、上顎においては、ルフォーI型法、ケーレ法における切断予定線、他の切断予定線でも対応することが可能である。
【0041】
(実施の形態1の変形例)
本発明の実施の形態1の変形例について、図面に基づいて説明する。なお、
図3においては、
図1(A)と同じ構成は同符号を付して説明を省略する。
図3に示す顎骨切削用補助具10xは、扇状または半円状の指示部本体122に、直線状溝122dが形成されている。この直線状溝122dは、指示部本体122の端辺122cと平行である。直線状溝122dは、2本形成されているが、1本でもよい。
【0042】
この直線状溝122dは、顎骨を切削する器具を案内する機能を有する。例えば、顎骨を切削する器具として、ハンドピースの先端に取り付けられる、
図4に示すような切削バー50が使用される。
切削バー50は、丸棒状の軸部51と、軸部51の先端に、軸部51の軸線に対して傾斜して取り付けられた刃部52とを備えている。
軸部51の基端には、ハンドピースに挿入され固定されるための環状凹部51aが形成されている。また、軸部51には、
図3に示す指示部本体122に形成された直線状溝122dに嵌まる環状凸部51bが2本形成されている。
刃部52は、扇状に形成され、先端に円弧状の鋸刃が形成されている。
この切削バー50がハンドピースに装着され駆動されると、切削バー50の軸線を中心にして、一方への軸回転と他方への軸回転とを繰り返す揺動動作が開始される。
【0043】
この
図4に示す切削バー50を使用して顎骨を切断するときには、刃部52を指示部本体122の端辺122cに当て、顎骨に対して切削して、切削バー50の環状凸部51bが、指示部本体122の直線状溝122dに嵌まるまで掘り下げると、ハンドピースを切断予定線に沿って移動させる。
そうすると、環状凸部51bが直線状溝122dに嵌まった状態でハンドピースを移動することができるため、刃部52が指示部本体122の端辺122cに沿って移動する。
従って、直線状溝122dに沿って切削バー50が案内されるので、安定した状態で刃部52により切断予定線を切断することができる。
【0044】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る顎骨切削用補助具を図面に基づいて説明する。なお、
図5においては、
図1と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図5(A)および同図(B)に示すように顎骨切削用補助具20の位置指示部22は、指示部本体222の腕部121側の基端222aから先端222b(切断予定線)に向かって開いた二又状(U字状)に形成されている。
指示部本体222の先端222bに位置する一対の端辺222cは、一方の端辺222cを延長する仮想直線L1が、他方の端辺222cを通るように形成されている。
【0045】
このように、指示部本体222が二又状に形成されていても、それぞれの端辺222c,222cに位置する2点、または2つの直線を、切断予定線の目印とすることができる。
指示部本体222が二又状に形成されているため、二方向に分かれた間から顎骨の様子を観察することができるため、目印を正確に、かつ容易に付けることができる。
図1に示す顎骨切削用補助具10を透明な樹脂製とした場合でも、指示部本体222を介して見ると顎骨の様子が屈折して歪むおそれがあるが、
図5に示す二又の指示部本体222の間は空間であるため、屈折による歪みが発生しない。
【0046】
本実施の形態2では、位置指示部22の指示部本体222がU字状に形成されていたが、V字状としたり、扇子の仲骨のように複数本の腕が基端222aから拡がるように延びていたりしてもよい。
【0047】
(実施の形態2の変形例)
本発明の実施の形態2の変形例を図面に基づいて説明する。なお、
図6および
図7は、顎骨切削用補助具の連結部分の原理図である。
【0048】
図6に示す本発明の実施の形態2の第1変形例では、固定部11と腕部121とが連結部14により接続されている。
固定部11には、切断予定線側の端部に嵌合用穴11bが形成されている。この嵌合用穴11bは、角筒状に形成されている。腕部121には、基端部121bから、嵌合用穴11bの奥部に向かって突出する角棒状の軸部121cが形成されている。腕部121の軸部121cは、この嵌合用穴11bに差し込まれ嵌合することで、腕部121と固定部11とが連結される。このようにして、固定部11の嵌合用穴11bと、腕部121の軸部121cとにより連結部14が形成される。
【0049】
固定部11と腕部121とが切り離せることで、まず固定部11をしっかりと歯に固定し、腕部121の先側にある指示部本体122,222(
図1および
図3参照)を頬の内側に形成した開口部に挿入した後に、腕部121を固定部11に連結することができる。
【0050】
第1変形例では、固定部11の端部に嵌合用穴11bが形成されていたが、嵌合用穴11bは固定部11の頂部に形成されていてもよい。その場合、軸部121cは、腕部121の基端部121bの側面から固定部11の頂部の嵌合用穴11bに向かって突出させる。
また、固定部11と腕部121とが連結部14により接続されていたが、腕部121と指示部本体122,222とが、連結部14と同様に、差し込みにより接続されるようにしてもよい。
また、嵌合用穴11bは角筒状に形成され、軸部121cは角棒状に形成されているが、嵌合用穴は円筒状、軸部は円柱棒状としたり、差し込んで嵌合できれば他の形状としたりしてもよい。また、固定部11と腕部121とをねじ止めにより固定してもよい。
【0051】
図7に示す本発明の実施の形態2の第2変形例では、位置指示部32の指示部本体部322が、一方の指示片3221と、他方の指示片3222とにより、二又状に形成され、指示片3221,3222が折り畳み可能に形成されている。
一方の指示片3221と、他方の指示片3222は、基端部3221a,3222a同士が重なっており、基端部3221a,3222aが軸3223に連結されていることで、先側が鋏のように開閉自在に接続されている。
【0052】
指示片3221,3222の先端3221b,3222bに位置する端辺3221c,3222cは、指示片3221,3222が完全に開いた状態であれば、切断予定線に位置する仮想直線L1上に位置する。
【0053】
また、指示片3221,3222が完全に開いた状態では、指示片3221の基端部3221aから、指示片3222に向かって突出する凸部3221dが、指示片3222の基端部3222aに形成された凹部3222dに嵌合することで、指示片3221と指示片3222とを完全に開いた状態で固定することができる。
【0054】
このように、二又状に形成された位置指示部32の指示部本体部322が開閉することで、頬の内側粘膜に形成した開口部が狭くても、指示部本体部322を閉じた状態とすれば、容易に開口部に挿入することができる。
【0055】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る顎骨切削用補助具の設計支援装置について、図面に基づいて説明する。
図8に示す設計支援装置100は、例えば、顎骨切削用補助具10,10x,20の設計を支援するものである。設計支援装置100は、設計支援プログラムを動作させたコンピュータである。
【0056】
設計支援装置100は、CT撮像装置200が接続されている。
図9に示すように、設計支援装置100は、CT撮像装置200を制御して、患者の顎の状態を示す顎骨画像を撮像するものである。
設計支援装置100は、CT撮像装置200と通信可能に接続される通信部110と、CT撮像装置200から骨画像である顎骨画像を取り込むCT制御部120と、顎骨画像を操作する画像処理部130と、歯科医師または歯科技工士などの操作者が顎骨画像を操作するための操作部140と、顎骨画像を表示する表示部150と、顎骨画像を格納する記憶部160とを備えている。
【0057】
通信部110は、設計支援装置100の各部からの送信データをCT撮像装置200へ送信したり、CT撮像装置200からの受信データを各部へ受信したりする機能を備えている。通信部110は、例えば、LANやUSBなどとすることができる。
CT制御部120は、CT撮像装置200の撮像条件の設定、撮像の開始および停止、顎骨画像を取り込み記憶部160へ格納するなどを制御することができる。
画像処理部130は、操作者が操作する操作部140に応じて、顎骨画像の一部を、切り取ったり、移動したり、複写したり、加工したりする編集処理を制御する機能を備えている。
【0058】
画像処理部130は、第1画像処理部131と、第2画像処理部132と、第3画像処理部133と、第4画像処理部134とを備えている。
第1画像処理部131は、顎骨を撮像するCT撮像装置200からの顎骨画像の歯欠損部における歯肉または歯に基づいて、固定部11の形状を画像操作により作図する機能を備えている。第2画像処理部132は、顎骨画像に切断予定線として、直線状の仮想切削部である仮想切断予定線を作図する機能を備えている。第3画像処理部133は、仮想切断予定線の位置に合わせて配置される位置指示部を作図する機能を備えている。第4画像処理部134は、第2部分となる指示部本体122と、固定部11との間に、第1部分となる腕部121を作図する機能を備えている。
【0059】
操作部140は、CT撮像装置200の撮像条件を入力したり、顎骨画像の編集操作を入力したりするために、例えば、キーボードやマウス、ジョイスティック、ペンタブレットとすることができる。表示部150は、LCDや有機ELパネルとすることができる。
記憶部160は、ハードディスクドライブやフラッシュメモリなどとすることができる。
【0060】
以上のように構成された本発明の実施の形態3に係る顎骨切削用補助具10の設計支援装置100の動作および使用状態を図面に基づいて説明する。
まず、操作者は、操作部140を操作してCT撮像装置200に患者の治療対象骨となる下顎の撮像を指示する。この指示によりCT制御部120は、CT撮像装置200を制御して、顎骨画像を取り込み、記憶部160に格納する。
【0061】
次に、操作者は、記憶部160から読み出され、
図10に示す表示部150に表示された顎骨画像Pに基づいて、操作部140を操作して、固定部11の作図を、例えば、右側下顎の第1大臼歯および第2大臼歯に基づいて行うように指示する。そうすることで、第1画像処理部131が、右側下顎の第1大臼歯および第2大臼歯の歯の形状を内包する輪郭形状の固定部11を作図する。
【0062】
本実施の形態では、固定部11は歯に装着されるものとしたが、歯欠損部における歯肉(顎堤)に装着されるものでもよい。歯肉に装着される固定部とした場合には、操作者が、表示部150に表示された顎骨画像に基づいて、操作部140を操作して、歯欠損部の歯肉の範囲を指定する。そうすることで、第1画像処理部131が、その歯肉の範囲を内包する輪郭形状の固定部を作図する。
また、無歯顎の場合には、操作者が弓状となる顎堤の範囲を指定することで、第1画像処理部131が、その歯肉の範囲を内包する輪郭形状の固定部を作図する。
【0063】
次に、操作者は、操作部140を操作して、顎骨画像に切断予定線として仮想切断予定線L2の位置を指定することで、第2画像処理部132が仮想切断予定線L2を作図する。
次に、操作者は、操作部140を操作して、仮想切断予定線L2の位置に、端辺122cを合わせて指示部本体122の配置を指示することにより、第3画像処理部133は、仮想切断予定線の位置に合わせて指示部本体122を配置する。
【0064】
そして、操作者は、操作部140を操作して、歯に配置された固定部11と、仮想切断予定線L2に配置された指示部本体122との間の顎骨画像に、腕部121が延びる方向を指示する。そうすることで、第4画像処理部134は、指示部本体122と固定部11との間に腕部121を作図する。
【0065】
操作者が、固定部11から指示部本体122までの間を直線的に指示すると、直線状の腕部121が作図される。また、操作者が、腕部121が延びる方向をなぞるように指示すると、曲線の腕部121を作図することができる。このとき、腕部121の顎骨側の面は、解剖学的形態、つまりは顎骨の凹凸に沿って湾曲面に作図される。
【0066】
このようにして、設計支援装置100は、顎骨切削用補助具10を設計することができるため、指示部本体122と腕部121の長さが、固定部11から仮想切断予定線までの長さとなるように正確に設計することができる。
【0067】
顎骨切削用補助具10の設計が完了すれば、例えば、3Dプリンタなどで成形することにより、患者にフィットした顎骨切削用補助具10を製造することができる。
【0068】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係る顎骨切削用補助具を図面に基づいて説明する。なお、
図11においては、
図1(A)と同じ構成は同符号を付して説明を省略する。
図11に示す本実施の形態4に係る顎骨切削用補助具40は、固定部11と、位置指示部42とを備えている。
【0069】
位置指示部42は、幅が下顎の歯槽部から下顎底まで、長さが右側下顎の第2大臼歯から側切歯までの台形状に形成されている。位置指示部42は、第2大臼歯および第1大臼歯に位置する台形の角部の一部が切り欠かれて、第2大臼歯および第1大臼歯に被さる固定部11に接続されている。
位置指示部42には、下顎骨部に発生した腫瘍T2を切除または摘出するために下顎骨を切削するための切削予定部Sの領域を囲う範囲を露出させる開口部421が形成されている。
【0070】
このように形成された顎骨切削用補助具40は、位置指示部42が固定部11により固定されるため、しっかりと、切削予定部Sの領域に対して位置決めすることができる。
術者は、腫瘍T2を切除または摘出する際の切削予定部Sの領域が開口部421により示されているため、切削予定部Sの全部を正確に把握することができる。そのため、開口部421の周縁に沿って切削することで、正確に切削予定部Sの周縁を切削することができる。
従って、顎骨切削用補助具40は、下顎にでき、外観からでは視認できない腫瘍T2であっても、確実に、切削予定部Sを除去することができる。
【0071】
この顎骨切削用補助具40は、
図8および
図9に示す設計支援装置100により設計することができる。
CT撮像装置200により患者の治療対象骨となる下顎を撮像すると、顎骨画像に腫瘍が撮像される。操作者は、顎骨画像に撮像された腫瘍をまたはその腫瘍の周囲の骨組織を含む領域を切削予定部として、設計支援装置100により顎骨切削用補助具40を設計する。
【0072】
まず、操作者は、操作部140を操作して、第1画像処理部131により固定部11を作図させる。次に、操作者は、切削予定部Sの領域を指定することにより、仮想切削予定部を第2画像処理部132に作図させる。
次に、操作者は、切削予定部Sの範囲を囲う開口部421を指定することにより、開口部421を有する位置指示部42を、第3画像処理部133に作図させる。
【0073】
このようにして、設計支援装置100は、顎骨切削用補助具40を設計することができるため、外観からでは視認できない腫瘍であっても、下顎画像に撮像された腫瘍に基づいて位置指示部42を設計することができる。
【0074】
以上のような顎骨切削用補助具10,10x,20,40には、患者を特定する識別情報を付与することができる。
識別情報は、氏名を、レーザー光による刻印としたり、印刷としたりすることができる。また、識別情報は、患者を特定する番号や文字、記号としたり、光学的読取情報(例えば、一次元バーコードや二次元バーコードなど。)としたりすることができる。
患者を特定する番号や文字、記号としたり、光学的読取情報としたりしたときには、登録したデータベースから、識別情報に基づいて検索することにより、患者に関する様々な情報を得ることができる。
例えば、患者に関する情報としては、氏名と生年月日の他に、住所、性別、血液型、治療に掛かった歯科医院を特定する病院名や病院を識別するコードなどの個人情報、家族の連絡先や病歴、投薬歴のほか社会歴、家族歴などとすることができる。
【0075】
このように顎骨切削用補助具10,10x,20,40に氏名が付与されていることにより、ひと目見ただけで、顎骨切削用補助具がどの患者のものか特定できる
患者を特定する番号や文字、記号を識別情報とした場合には、この識別情報を入力してデータベースを検索することで、患者を特定でき、光学的読取情報を識別情報とした場合には、光学的読取装置により読み取ることにより患者を特定することができる。
従って、取り違いなどを防止することができる。