特許第6573863号(P6573863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573863
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】多段式燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0662 20160101AFI20190902BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20190902BHJP
   H01M 8/0668 20160101ALI20190902BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20190902BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20190902BHJP
【FI】
   H01M8/0662
   H01M8/04014
   H01M8/0668
   C01B3/38
   !H01M8/12
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-211852(P2016-211852)
(22)【出願日】2016年10月28日
(62)【分割の表示】特願2014-252418(P2014-252418)の分割
【原出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2017-59541(P2017-59541A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2017年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 麻理恵
(72)【発明者】
【氏名】多久 俊平
(72)【発明者】
【氏名】中村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 顕二郎
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−199979(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/086836(WO,A1)
【文献】 特開2002−313402(JP,A)
【文献】 特開2006−031989(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/105570(WO,A1)
【文献】 特開2009−076313(JP,A)
【文献】 特開2006−107946(JP,A)
【文献】 特開2004−288603(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0108936(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/077969(WO,A1)
【文献】 特開2008−204784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を含む燃料ガスを用いて発電を行う第1燃料電池と、
前記第1燃料電池から排出され前記第1燃料電池において未反応の前記燃料ガスを含むオフガスから、水の凝縮点よりも高い温度で使用される水蒸気分離膜を用いて水蒸気を除去した再生燃料ガスを用いて発電を行う第2燃料電池と、
前記再生燃料ガス、原料ガス、空気、前記水蒸気、及び該水蒸気を凝縮した水の少なくとも1つと前記オフガスとの間で熱交換を行い、前記オフガスを水の凝縮点よりも高い温度へ冷却すると共に前記再生燃料ガス、前記原料ガス、前記空気、前記水蒸気、及び該水蒸気を凝縮した前記水の少なくとも1つを加熱する熱交換器と、
を有する多段式燃料電池システム。
【請求項2】
前記オフガスが流れるオフガス経路において、前記熱交換器の上流側及び下流側の少なくとも一方に設けられ、前記オフガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去部を有し、
前記再生燃料ガスは、前記オフガスから前記水蒸気及び前記二酸化炭素を除去したものである請求項1に記載の多段式燃料電池システム。
【請求項3】
水素を含む燃料ガスを用いて発電を行う第1燃料電池と、
前記第1燃料電池から排出され前記第1燃料電池において未反応の前記燃料ガスを含むオフガスから、水蒸気を気体の状態で除去する水蒸気分離膜と、
前記オフガスから前記水蒸気を除去した再生燃料ガスを用いて発電を行う第2燃料電池と、
前記第2燃料電池において未反応の前記再生燃料ガスを含むオフガスを燃焼させる燃焼器と、を有し、
前記水蒸気分離膜は、前記オフガスから前記水蒸気及び二酸化炭素を除去するものであり、
前記再生燃料ガスは、前記オフガスから前記水蒸気及び前記二酸化炭素を除去したものであり、
前記水蒸気分離膜で前記オフガスから除去されたガス中の水蒸気を凝縮させた後のガスを前記燃焼器へ供給する、
る多段式燃料電池システム。
【請求項4】
前記水蒸気分離膜で分離された水蒸気を凝縮させた水を貯留する水タンク、
を有する、請求項3に記載の多段式燃料電池システム。
【請求項5】
前記水タンクから気化器へ水を供給するポンプを備えた、請求項4に記載の多段式燃料電池システム。
【請求項6】
前記第1燃料電池のカソードへ酸化ガスを供給すると共に、前記第1燃料電池のカソードから排出されたカソードオフガスを前記第2燃料電池のカソードへ供給する空気供給経路と、
を有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の多段式燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段式燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高温作動形燃料電池の燃料リサイクル技術として、アノード排気のリサイクルを行う燃料電池システムが開示されている(特許文献1参照)。また、多段スタック又は単一スタックにおいて、アノードオフガス中の水蒸気や二酸化炭素を除去する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5542332号公報
【特許文献2】特開2006−31989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体酸化物形燃料電池(SOFC)や溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった高温作動形燃料電池システムの高効率化に向けて、燃料利用率を向上させる手法として、燃料電池スタックの多段化が提案されている。これは、複数の燃料電池スタックを用いて、前段の燃料電池スタックで未反応であった燃料ガスを含むアノードオフガスを後段の燃料電池スタックで利用するという技術である。
【0005】
このアノードオフガス中から水蒸気や二酸化炭素を取り除き、反応に寄与する燃料ガス(水素や一酸化炭素)の濃度を高めた再生燃料ガスを得ることができれば、この再生燃料ガスを用いて、後段の燃料電池スタックで再度発電を行うことができる。
【0006】
上記した特許文献1に係る従来例では、水蒸気や二酸化炭素の除去に、分圧スイング吸着ユニット、温度スイング吸着ユニット、電気化学的ポンプが提案されている。しかしながら、吸着ユニットを用いる場合、圧力スイング又は温度スイングが必要で、システム構成及びシステムシーケンスが複雑になる。
【0007】
電気化学的ポンプを用いる場合は、圧力スイング又は温度スイングを行う必要はないが、燃料オフガスを200℃以下に低下させる必要がある。また、電気化学的ポンプは、電極触媒に白金をも用いるため、一般的に設備が高価となる。
【0008】
上記した特許文献2に係る従来例では、アノードオフガスから水蒸気を除去する方法が、該アノードオフガスを例えば100℃以下の常温近くまで冷却する凝縮であるため、アノードオフガスから水蒸気を除去し再生燃料ガスとして利用するためには、該再生燃料ガスを燃料電池スタックの発電温度まで再び加熱する必要がある。
【0009】
即ち、比較的簡易な構成及びシーケンス、あるいは安価な設備でアノードオフガスから水蒸気を除去するためには該アノードオフガスを一旦冷却する必要があり、その温度域から発電温度まで再度加熱するための熱エネルギーが必要であった。また、凝縮水を回収し、原料ガスの改質用の水として利用する場合には、この水を再度使用温度まで加熱する熱エネルギーに加えて、この水を気化させるための熱エネルギーが必要であった。これらの熱エネルギー源として、燃料電池の排熱等が利用されていた。
【0010】
本発明は、上記事実を考慮して、燃料電池の排熱を従来よりも有効利用できるようにして、構成を簡素化しつつシステムの効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一例として、多段式燃料電池システムは、原料ガスを水蒸気改質して水素を含む燃料ガスを生成する燃料処理装置と、前記燃料処理装置から供給される前記燃料ガスを用いて発電を行う第1燃料電池と、前記第1燃料電池から排出され前記第1燃料電池において未反応の前記燃料ガスを含むオフガスから、水蒸気を気体の状態で除去する水蒸気分離膜と、前記オフガスから前記水蒸気を除去した再生燃料ガスを用いて発電を行う第2燃料電池とを有し、前記燃料処理装置は、前記水蒸気分離膜で除去された前記水蒸気を用いて前記原料ガスを改質し、前記燃料ガスを生成する。
【0012】
この多段式燃料電池システムでは、燃料処理装置において、水蒸気改質により、原料ガスから水素を含む燃料ガスが生成される。この燃料ガスは、第1燃料電池に供給される。第1燃料電池では、燃料ガスを用いて発電が行われる。第1燃料電池から排出されるオフガスは、未反応の燃料ガス及び水蒸気等を含んでいる。この水蒸気は、水蒸気分離膜により、気体の状態でオフガスから除去される。これにより、水素濃度が高められた再生燃料ガスが生成される。第2燃料電池では、この再生燃料ガスを用いて発電が行われる。
【0013】
また、この多段式燃料電池システムでは、オフガス中の水蒸気が、水蒸気分離膜により、気体の状態で該オフガスから除去されるので、水の凝縮に必要な温度までオフガスを冷却する必要がない。従って、再生燃料ガスを第2燃料電池に適した発電温度まで加熱する際の加熱幅が小さくなる。従って、再生燃料ガスを加熱するための熱交換器等を簡素化でき、追加の加熱装置を不要とすることができる。また、従来再生燃料ガスの加熱に使用されていた熱エネルギーを、給湯や、熱処理装置での改質反応(吸熱反応)等に有効利用できるようになる。
【0014】
更に、この多段式燃料電池システムでは、燃料処理装置が、水蒸気分離膜で除去された水蒸気を用いて原料ガスを改質し、燃料ガスを生成するので、システムの水自立化を図ることができる。
【0015】
なお、前述の多段式燃料電池システムにおいて、前記水蒸気分離膜で除去された前記水蒸気が、気体のまま前記燃料処理装置での改質反応に用いられることもできる
【0016】
この多段式燃料電池システムでは、オフガスから除去された水蒸気が気体のまま燃料処理装置での改質反応に用いられる。従って、水蒸気を凝縮させた水を貯えるための水タンクや、該水を燃料処理装置に向けて送り出すためのポンプが不要となる。
【0017】
なお、前述の多段式燃料電池システムにおいて、前記水蒸気分離膜で除去された前記水蒸気は、ブロワを用いて、前記燃料処理装置に供給又は前記原料ガスに混入されることもできる
【0018】
この多段式燃料電池システムでは、オフガスから除去された水蒸気が気体のままブロワにより送られ、燃料処理装置に供給又は原料ガスに混入されて、燃料処理装置での改質反応に用いられる。
【0019】
なお、前述の多段式燃料電池システムにおいて、前記水蒸気分離膜の透過側に前記原料ガスを流し、前記水蒸気分離膜で除去された前記水蒸気を前記原料ガスに混入して、前記燃料処理装置に供給することもできる
【0020】
この多段式燃料電池システムでは、水蒸気分離膜で除去された水蒸気が、該水蒸気分離膜の透過側に流される原料ガスに直接混入されて、燃料処理装置での改質反応に用いられる。
【0021】
なお、前述の多段式燃料電池システムにおいて、前記再生燃料ガス、前記原料ガス、空気、前記水蒸気、及び該水蒸気を凝縮した水の少なくとも1つと前記オフガスとの間で熱交換を行い、前記オフガスを冷却すると共に前記再生燃料ガス、前記原料ガス、前記空気、前記水蒸気、及び該水蒸気を凝縮した前記水の少なくとも1つを加熱する熱交換器を有することもできる。
【0022】
この多段式燃料電池システムでは、再生燃料ガス、原料ガス、空気、水蒸気、及び該水蒸気を凝縮した水の少なくとも1つとオフガスとの間で、熱交換器による熱交換が行われる。この熱交換器は、水蒸気分離膜に至る前のオフガスを該水蒸気分離膜に適した温度に向けて冷却する。
【0023】
なお、前述の多段式燃料電池システムにおいて、前記オフガスが流れるオフガス経路において、前記熱交換器の上流側及び下流側の少なくとも一方に設けられ、前記オフガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去部を有し、前記再生燃料ガスは、前記オフガスから前記水蒸気及び前記二酸化炭素を除去したものであってもよい
【0024】
この多段式燃料電池システムでは、オフガス中の水蒸気が除去されるだけでなく、オフガス中の二酸化炭素が二酸化炭素除去部により除去されて再生燃料ガスが生成されるので、該再生燃料ガスを用いて発電を行う第2燃料電池の性能を向上させることができる。
【0025】
なお、前述の多段式燃料電池システムにおいて、前記水蒸気分離膜は、前記オフガスから前記水蒸気及び二酸化炭素を除去するものであり、前記再生燃料ガスは、前記オフガスから前記水蒸気及び前記二酸化炭素を除去したものであってもよい
【0026】
この多段式燃料電池システムでは、水蒸気分離膜により、オフガス中の水蒸気及び二酸化炭素が除去される。従って、二酸化炭素除去部を別途設ける必要がない。
請求項1に係る多段式燃料電池システムは、水素を含む燃料ガスを用いて発電を行う第1燃料電池と、前記第1燃料電池から排出され前記第1燃料電池において未反応の前記燃料ガスを含むオフガスから、水の凝縮点よりも高い温度で使用される水蒸気分離膜を用いて水蒸気を除去した再生燃料ガスを用いて発電を行う第2燃料電池と、前記再生燃料ガス、原料ガス、空気、前記水蒸気、及び該水蒸気を凝縮した水の少なくとも1つと前記オフガスとの間で熱交換を行い、前記オフガスを水の凝縮点よりも高い温度へ冷却すると共に前記再生燃料ガス、前記原料ガス、前記空気、前記水蒸気、及び該水蒸気を凝縮した前記水の少なくとも1つを加熱する熱交換器と、を有する。
請求項2に係る多段式燃料電池システムは、前記オフガスが流れるオフガス経路において、前記熱交換器の上流側及び下流側の少なくとも一方に設けられ、前記オフガスから二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去部を有し、前記再生燃料ガスは、前記オフガスから前記水蒸気及び前記二酸化炭素を除去したものである。
請求項3に係る多段式燃料電池システムは、水素を含む燃料ガスを用いて発電を行う第1燃料電池と、前記第1燃料電池から排出され前記第1燃料電池において未反応の前記燃料ガスを含むオフガスから、水蒸気を気体の状態で除去する水蒸気分離膜と、前記オフガスから前記水蒸気を除去した再生燃料ガスを用いて発電を行う第2燃料電池と、前記第2燃料電池において未反応の前記再生燃料ガスを含むオフガスを燃焼させる燃焼器と、を有し、前記水蒸気分離膜は、前記オフガスから前記水蒸気及び二酸化炭素を除去するものであり、前記再生燃料ガスは、前記オフガスから前記水蒸気及び前記二酸化炭素を除去したものであり、前記水蒸気分離膜で前記オフガスから除去されたガス中の水蒸気を凝縮させた後のガスを前記燃焼器へ供給する。
請求項4に係る多段式燃料電池システムは、前記水蒸気分離膜で分離された水蒸気を凝縮させた水を貯留する水タンク、を有する。
請求項5に係る多段式燃料電池システムは、前記水タンクから気化器へ水を供給するポンプを備えている。
請求項6に係る多段式燃料電池システムは、前記第1燃料電池のカソードへ酸化ガスを供給すると共に、前記第1燃料電池のカソードから排出されたカソードオフガスを前記第2燃料電池のカソードへ供給する空気供給経路と、を有する。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る多段式燃料電池システムによれば、燃料電池の排熱を従来よりも有効利用できるようにして、構成を簡素化しつつシステムの効率を高めることができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態に係る多段式燃料電池システムを模式的に示すブロック図である。
図2】第2実施形態に係る多段式燃料電池システムを模式的に示すブロック図である。
図3】第3施形態に係る多段式燃料電池システムを模式的に示すブロック図である。
図4】第4施形態に係る多段式燃料電池システムを模式的に示すブロック図である。
図5】第5実施形態に係る多段式燃料電池システムを模式的に示すブロック図である。
図6】第6施形態に係る多段式燃料電池システムを模式的に示すブロック図である。
図7】第7施形態に係る多段式燃料電池システムを模式的に示すブロック図である。
図8】第8実施形態に係る多段式燃料電池システムを模式的に示すブロック図である。
図9】第9実施形態に係る多段式燃料電池システムを模式的に示すブロック図である。
図10】第10実施形態に係る多段式燃料電池システムを模式的に示すブロック図である。
図11】二酸化炭素除去部の原理を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
【0030】
[第1実施形態]
図1において、本実施形態に係る多段式燃料電池システム10は、燃料処理装置14と、第1燃料電池11と、水蒸気分離膜16と、第2燃料電池12とを有している。
【0031】
燃料処理装置14は、メタン等の原料ガスから水素を含む燃料ガスを生成するFPS(Fuel Processing System)であり、原料ガスから水素を製造する触媒(図示せず)と、触媒を加熱する燃焼器18とを有している。触媒は改質触媒であり、改質器19内に設けられている。改質器19には、原料ガス経路24が接続されており、該原料ガス経路24を通じて原料ガスが供給されるようになっている。原料ガス経路24には、原料ガスを送るためのブロワ25が設けられている。また、原料ガス経路24におけるブロワ25と改質器19との間には、後述する第2熱交換器22が設けられており、原料ガスは該第2熱交換器22により加熱されるようになっている。
【0032】
また、改質器19には、水供給経路28が接続されており、該水供給経路28には水タンク26に接続されている。水タンク26は、水蒸気分離膜16で除去された水蒸気を凝縮した水38が貯められる容器である。水供給経路28には、例えばポンプ32と、気化器34とが設けられている。ポンプ32は、水タンク26内の水38を水供給経路28へ送りだすものである。気化器34は、ポンプ32の下流側に設けられ、水供給経路28に送り出された水38を気化させて水蒸気を生成するものである。改質器19は、この水供給経路28を通じて供給された水蒸気を利用して、原料ガスを改質して、水素を含む燃料ガスを生成するようになっている。つまり、燃料処理装置14は、水蒸気分離膜16で除去された水蒸気を用いて原料ガスを改質し、燃料ガスを生成するようになっている。そして、この燃料ガスは、燃料ガス経路42を通じて、第1燃料電池11のアノード(図示せず)へ供給されるようになっている。
【0033】
燃料処理装置14の燃焼器18には、空気供給経路44と、オフガス経路46とが接続されている。この燃焼器18は、空気供給経路44を通じて供給された空気と、オフガス経路46を通じて供給されたバーナガス(後述するオフガス)との混合ガスを燃焼させ、改質器19内の触媒を加熱する。燃焼器18からの排気は、排気経路48を通じて排出される。
【0034】
第1燃料電池11は、燃料処理装置14から供給される燃料ガスを用いて発電を行う、例えば燃料電池スタックである。この第1燃料電池11は、例えば750℃程度で作動する高温型の燃料電池(固体酸化物形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池)である。図示は省略するが、第1燃料電池11は、電解質層と、該電解質層の表裏面にそれぞれ積層されたアノード及びカソードとを有している。アノードは燃料極であり、カソードは空気極である。
【0035】
カソードには、空気供給経路44を通じて空気(酸化ガス)が供給される。このカソードでは、酸素と炭酸ガス(溶融炭酸塩形燃料電池の場合のみ)と電子が、電解質層で電気化学的に反応して酸素イオン(固体酸化物形燃料電池の場合)や炭酸イオン(溶融炭酸塩形燃料電池の場合)となり、電解質膜を移動する。
【0036】
一方、アノードには、燃料ガス経路42を通じて、燃料処理装置14から燃料ガスが供給される。このアノードでは、水素が電解質層を移動してきた炭酸イオンや酸素イオンと反応し、水、炭酸ガス(溶融炭酸塩形燃料電池の場合のみ)、電子が生成される。アノードで生成された電子は、外部回路を通ってカソードに移動する。
【0037】
そして、このようにして電子がアノードからカソードに移動することにより、第1燃料電池11において発電が行われる。カソードでの未反応ガスは、下流側の空気供給経路44を通じて第2燃料電池12へ供給される。
【0038】
水蒸気分離膜16は、第1燃料電池11から排出され第1燃料電池11において未反応の燃料ガスを含むオフガスから、水蒸気を気体の状態で除去するものである。水蒸気分離膜16は、オフガス経路52に設けられており、水の凝縮点よりも高い温度(例えば100℃以上)で、オフガスから水蒸気を除去することができる。水蒸気分離膜16の種類としては、高分子系、高分子−無機分子ハイブリッド膜、ゼオライト系があり、例えば表1に示されるように、100℃以上での水蒸気分離を行った実績が報告されている。
【0039】
【表1】
【0040】
再生燃料ガスは、再生燃料ガス経路54を通じて、第2燃料電池12へ供給されるようになっている。再生燃料ガス経路54には、第1熱交換器21が設けられている。この第1熱交換器21は、オフガス経路52を流れるオフガスと、再生燃料ガス経路54を流れる再生燃料ガスとの間で熱交換を行い、オフガスを例えば200℃程度に冷却すると共に再生燃料ガスを第2燃料電池12の作動温度に対応して再度加熱するものである。
【0041】
一方、オフガス経路52における水蒸気分離膜16の下流側には、第2熱交換器22及び水タンク26が設けられている。水蒸気分離膜16で除去された水蒸気は、第2熱交換器22で冷却され、水タンク26で凝縮されて水38となり、該水タンク26に貯えられるようになっている。水タンク26の上部にはオフガス経路46が接続されている。水タンク26で凝縮しない二酸化炭素等のガスは、該オフガス経路46を通じて、燃料処理装置14の燃焼器18へ供給されるようになっている。第2熱交換器22は、原料ガス経路24を流れる原料ガスと、オフガス経路52を流れるオフガスとの間で熱交換を行い、オフガスを冷却すると共に原料ガスを加熱するものである。
【0042】
この他、空気又は水蒸気と、オフガスとの間で熱交換を行う熱交換器を設けてもよい。つまり、本実施形態における熱交換器は、再生燃料ガス、原料ガス、空気、水蒸気、及び該水蒸気を凝縮した水38の少なくとも1つとオフガスとの間で熱交換を行うものである。
【0043】
第2燃料電池12は、オフガスから水蒸気を除去した再生燃料ガスを用いて発電を行う、例えば燃料電池スタックである。この第2燃料電池12は、例えば750℃程度で作動する高温型の燃料電池(固体酸化物形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池)である。図示は省略するが、第2燃料電池12も、第1燃料電池11と同様に、電解質層と、該電解質層の表裏面にそれぞれ積層されたアノード及びカソードとを有している。アノードには、再生燃料ガス経路54を通じて、再生燃料ガスが供給される。
【0044】
第2燃料電池12の作動原理は、第1燃料電池11と同様であり、再生燃料ガスを用いて発電が行われる。反応によってカソードで生成された空気は、下流側の空気供給経路44を通じて、燃料処理装置14の燃焼器18へ供給される。
【0045】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1において、本実施形態に係る多段式燃料電池システム10では、燃料処理装置14において、原料ガスから水素を含む燃料ガスが生成される。具体的には、燃料処理装置14において、改質器19内の触媒を燃焼器18で加熱することで、原料ガスが例えば水蒸気改質されて、水素を含む燃料ガスが生成される。改質には、水タンク26から水供給経路28を通じて供給される水38を気化器34で気化させた水蒸気を利用することができる。
【0046】
燃料処理装置14で生成された燃料ガスは、燃料ガス経路42を通じて第1燃料電池11へ供給される。第1燃料電池11では、燃料ガスを用いて発電が行われる。第1燃料電池11から排出されるオフガスは、未反応の燃料ガス及び水蒸気等を含んでいる。この水蒸気は、水蒸気分離膜16により、気体の状態でオフガスから除去される。これにより、水素濃度が高められた再生燃料ガスが生成される。再生燃料ガスは、再生燃料ガス経路54を通じて、第2燃料電池12へ供給される。第2燃料電池12では、この再生燃料ガスを用いて発電が行われる。
【0047】
なお、オフガス経路52を流れるオフガスと、再生燃料ガス経路54を流れる再生燃料ガスとの間では、第1熱交換器21による熱交換が行われる。この第1熱交換器21は、水蒸気分離膜16に至る前のオフガスを該水蒸気分離膜16に適した温度に向けて冷却すると共に、第2燃料電池12に至る前の再生燃料ガスを第2燃料電池12の発電温度に適した温度に向けて加熱する。
【0048】
水蒸気分離膜16で除去された水蒸気は、オフガス経路52における水蒸気分離膜16の下流側に流れ、第2熱交換器22により冷却され、更に水タンク26で凝縮されて水38となり、該水タンク26に貯えられる。水タンク26に所定量以上の水38が貯まった際には、例えばオーバーフローによりドレン排水される。水タンク26で凝縮しない二酸化炭素等のガスは、オフガス経路46を通じて、燃料処理装置14の燃焼器18へ供給される。
第2熱交換器22は、原料ガス経路24を流れる原料ガスと、オフガス経路52を流れるオフガスとの間で熱交換を行い、オフガスを冷却すると共に原料ガスを加熱する。第2熱交換器22により原料ガスを加熱することで、従来再生燃料ガスの加熱に使用されていた熱エネルギーを、燃料処理装置14での改質反応(吸熱反応)に有効利用できる。
【0049】
本実施形態に係る多段式燃料電池システム10では、オフガス中の水蒸気が、水蒸気分離膜16により、気体の状態で該オフガスから除去されるので、水の凝縮に必要な温度までオフガスを冷却する必要がない。従って、再生燃料ガスを第2燃料電池12に適した発電温度まで加熱する際の加熱幅が小さくなる。本実施形態の場合、再生燃料ガスを200℃から750℃へ昇温するので、加熱幅は例えば550℃である。従って、再生燃料ガスを加熱するための第1熱交換器21等を簡素化でき、追加の加熱装置を不要とすることができる。また、従来再生燃料ガスの加熱に使用されていた熱エネルギーを、給湯等に有効利用できるようになる。
【0050】
水タンク26の水38は、ポンプ32により水供給経路28へ送り出され、気化器34で気化されて水蒸気となり、燃料処理装置14の改質器19へ供給される。改質器19は、この水供給経路28を通じて供給された水蒸気を利用して、原料ガスを改質して、水素を含む燃料ガスを生成することができる。この水蒸気は、元は水蒸気分離膜16で除去された水蒸気である。このように、本実施形態では、燃料処理装置14が、水蒸気分離膜16で除去された水蒸気を用いて原料ガスを改質するので、システムの水自立化を図ることができる。
【0051】
このように、本実施形態に係る多段式燃料電池システム10では、燃料電池の排熱を従来よりも有効利用できるようにして、構成を簡素化しつつシステムの効率を高めることができる。
【0052】
[第2実施形態]
図2において、本実施形態に係る多段式燃料電池システム20では、水蒸気分離膜16で除去された水蒸気が、気体のまま燃料処理装置14での改質反応に用いられる構成となっている。具体的には、オフガス経路52における水蒸気分離膜16の下流側が、水供給経路28を通じて、例えば燃料処理装置14の改質器19に直接接続されている。水供給経路28には、ブロワ33が設けられている。水蒸気分離膜16で除去された水蒸気は、このブロワ33を用いて、燃料処理装置14の改質器19に供される。水供給経路28には、第1実施形態における第2熱交換器22(図1)が設けられていないので、原料ガスは、燃料処理装置14の改質器19に直接供給される。なお、水供給経路28を原料ガス経路24に接続して、水蒸気を原料ガスに混入するようにしてもよい。
【0053】
これにより、水蒸気分離膜16でオフガスから除去された水蒸気が気体のまま改質器19で原料ガスと混合されて改質される。従って、第1実施形態における水タンク26やポンプ32(図1)が不要となるので、システムの構成が簡素となる。
【0054】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0055】
[第3実施形態]
図3において、本実施形態に係る多段式燃料電池システム30では、第2実施形態と同様に、水蒸気分離膜16で除去された水蒸気が、気体のまま原料ガスと混合される構成となっている。具体的には、オフガス経路52が水蒸気分離膜16のフィード側16Aに配置され、原料ガス経路24が水蒸気分離膜16の透過側16Bに通されている。
【0056】
オフガス経路52を通るオフガス中の水蒸気は、水蒸気分離膜16をフィード側16Aから透過側16Bへ矢印A方向に通過し、該透過側16Bに流される原料ガスに気体のまま直接混合される。この原料ガス及び水蒸気は、ブロワ25により燃料処理装置14の改質器19へ供給されて改質され、燃料ガスとなる。従って、第2実施形態における水供給経路28及びブロワ33(図2)が不要となるので、システムの構成が更に簡素となる。
【0057】
他の部分については、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0058】
[第4実施形態]
図4において、本実施形態に係る多段式燃料電池システム40は、第1実施形態に、二酸化炭素除去部56を追加して構成されている。この二酸化炭素除去部56は、オフガスが流れるオフガス経路52において、第1熱交換器21の上流側(高温部)に設けられ、オフガス中の二酸化炭素を除去するものである。第1熱交換器21を通過する前のオフガスは750℃程度と比較的高温であるので、二酸化炭素除去部56としては、この温度で使用可能なものが選択される。二酸化炭素除去部56は、オフガス経路46に接続されている。
【0059】
第2燃料電池12に供給される再生燃料ガスは、オフガスから二酸化炭素及び水蒸気を除去したものである。具体的には、オフガス経路52を通るオフガスは、まず二酸化炭素除去部56において二酸化炭素が除去され、第1熱交換器21で冷却された後、水蒸気分離膜16において水蒸気が除去されて、再生燃料ガスとなる。
【0060】
二酸化炭素除去部56でオフガスから除去された二酸化炭素は、オフガス経路46を通じて、燃料処理装置14の燃焼器18へ供給される。
【0061】
この多段式燃料電池システム40では、オフガス中の水蒸気が除去されるだけでなく、オフガス中の二酸化炭素が除去されて再生燃料ガスが生成されるので、該再生燃料ガスを用いて発電を行う第2燃料電池12の性能を向上させることができる。
【0062】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0063】
[第5実施形態]
図5において、本実施形態に係る多段式燃料電池システム50は、第2実施形態と同様に、水蒸気分離膜16で除去された水蒸気が、気体のまま原料ガスと混合される構成となっている。また、第4実施形態と同様に、オフガスが流れるオフガス経路52において、第1熱交換器21の上流側(高温部)に、二酸化炭素除去部56が設けられている。
【0064】
水蒸気分離膜16でオフガスから除去された水蒸気が気体のまま改質器19で原料ガスと混合されて改質されるので、第1実施形態における水タンク26やポンプ32(図1)が不要となるので、システムの構成が簡素となる。
【0065】
また、オフガス中の水蒸気が除去されるだけでなく、オフガス中の二酸化炭素が除去されて再生燃料ガスが生成されるので、該再生燃料ガスを用いて発電を行う第2燃料電池12の性能を向上させることができる。
【0066】
他の部分については、第1実施形態、第2実施形態又は第4実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0067】
[第6実施形態]
図6において、本実施形態に係る多段式燃料電池システム60は、第3実施形態と同様に、水蒸気分離膜16で除去された水蒸気が、気体のまま原料ガスと直接混合される構成となっている。また、第4実施形態と同様に、オフガスが流れるオフガス経路52において、第1熱交換器21の上流側(高温部)に、二酸化炭素除去部56が設けられている。
【0068】
オフガス経路52を通るオフガス中の水蒸気は、原料ガス経路24を通る原料ガスに気体のまま直接混合される。この原料ガス及び水蒸気は、ブロワ25により燃料処理装置14の改質器19へ供給されて改質され、燃料ガスとなる。従って、第2実施形態における水供給経路28及びブロワ33(図2)が不要となるので、システムの構成が更に簡素となる。
【0069】
また、オフガス中の水蒸気が除去されるだけでなく、オフガス中の二酸化炭素が除去されて再生燃料ガスが生成されるので、該再生燃料ガスを用いて発電を行う第2燃料電池12の性能を向上させることができる。
【0070】
他の部分については、第1実施形態、第3実施形態又は第4実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0071】
[第7実施形態]
図7において、本実施形態に係る多段式燃料電池システム70は、第4実施形態において、二酸化炭素除去部56を、オフガス経路52における第1熱交換器21の下流側に設けたものである。第1熱交換器21を通過したオフガスは200℃程度と比較的低温であるので、二酸化炭素除去部56としては、この温度で使用可能なものが選択される。
【0072】
第1熱交換器21の下流側における二酸化炭素除去部56の位置は、水蒸気分離膜16の上流側でも下流側でもよい。二酸化炭素除去部56が、二酸化炭素を吸収して除去する形式の場合には、該二酸化炭素除去部56を、水蒸気分離膜16下流側に配置することができる。
【0073】
しかしながら、二酸化炭素除去部56が電気化学分離によって二酸化炭素を除去する形式の場合には、該二酸化炭素除去部56は、水蒸気分離膜16の上流側に配置する必要がある。これは、電気化学分離に水が必要とされるため、水蒸気が除去された後では二酸化炭素を除去できなくなるためである。
【0074】
ここで、二酸化炭素除去部56が電気化学分離式である場合の原理について簡単に説明する。図11に示されるように、二酸化炭素除去部56は、アノード62と、電解質膜64と、カソード66とを有し、アノード62とカソード66の間に電解質膜64が挟まれている。アノード62とカソード66には、電源58が接続されている。この電源としては、第1燃料電池11又は第2燃料電池12を用いることができる。アノード62には、オフガス経路52が接続されている。カソード66の一方には空気供給経路68が接続され、他方にはオフガス経路46が接続されている。アノード62及びカソード66に電圧を印加すると、アノード62とカソード66で夫々次のような反応が生じ、二酸化炭素が除去される。
【0075】
アノード62:2H20→2H2+02 02+2C02+2e−→CO3−2
カソード66:CO3−2→02+2C02+2e−
【0076】
これによりオフガスから除去された二酸化炭素等は、空気供給経路68から供給される空気によりパージされてオフガス経路46へ排出される。
【0077】
本実施形態に係る多段式燃料電池システム70では、オフガス経路52を通るオフガスが、まず第1熱交換器21で冷却された後、二酸化炭素除去部56において二酸化炭素が除去され、水蒸気分離膜16において水蒸気が除去されて、再生燃料ガスとなる。
【0078】
この多段式燃料電池システム70では、オフガス中の水蒸気が除去されるだけでなく、オフガス中の二酸化炭素が除去されて再生燃料ガスが生成されるので、該再生燃料ガスを用いて発電を行う第2燃料電池12の性能を向上させることができる。
【0079】
他の部分については、第1実施形態又は第4実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0080】
[第8実施形態]
図8において、本実施形態に係る多段式燃料電池システム80は、第5実施形態において、二酸化炭素除去部56を、オフガス経路52における第1熱交換器21の下流側(低温部)に設けたものである。
【0081】
水蒸気分離膜16でオフガスから除去された水蒸気が気体のまま改質器19で原料ガスと混合されて改質されるので、第1実施形態における水タンク26やポンプ32(図1)が不要となるので、システムの構成が簡素となる。
【0082】
また、オフガス中の水蒸気が除去されるだけでなく、オフガス中の二酸化炭素が除去されて再生燃料ガスが生成されるので、該再生燃料ガスを用いて発電を行う第2燃料電池12の性能を向上させることができる。
【0083】
他の部分については、第1実施形態、第2実施形態、第4実施形態又は第5実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0084】
[第9実施形態]
図9において、本実施形態に係る多段式燃料電池システム90は、第6実施形態において、二酸化炭素除去部56を、オフガス経路52における第1熱交換器21の下流側に設けたものである。
【0085】
オフガス経路52を通るオフガス中の水蒸気は、原料ガス経路24を通る原料ガスに気体のまま直接混合される。この原料ガス及び水蒸気は、ブロワ25により燃料処理装置14の改質器19へ供給されて改質され、燃料ガスとなる。従って、第2実施形態における水供給経路28及びブロワ33(図2)が不要となるので、システムの構成が更に簡素となる。
【0086】
また、オフガス中の水蒸気が除去されるだけでなく、オフガス中の二酸化炭素が除去されて再生燃料ガスが生成されるので、該再生燃料ガスを用いて発電を行う第2燃料電池12の性能を向上させることができる。
【0087】
他の部分については、第1実施形態、第3実施形態、第4実施形態又は第6実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0088】
[第10実施形態]
図10において、本実施形態に係る多段式燃料電池システム100では、第1実施形態において、水蒸気分離膜16が、オフガスから水蒸気及び二酸化炭素を除去するものとなっている。水蒸気分離膜16として、「Zi Tong et al., "Water vapor and CO2 transport through amine-containing facilitated transport membranes", Reactive & Functional Polymers (2014)に記載の膜を用いることができる。
【0089】
オフガス経路52を通るオフガスは、まず第1熱交換器21で冷却された後、水蒸気分離膜16において水蒸気及び二酸化炭素が除去されて、再生燃料ガスとなる。
【0090】
本実施形態では、水蒸気分離膜16により、オフガス中の水蒸気及び二酸化炭素が除去されるので、二酸化炭素除去部56(第4実施形態から第9実施形態)を別途設ける必要がない。このため、システムを更に簡素化することができる。
【0091】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0092】
[実施例]
第1燃料電池(SOFC1)及び第2燃料電池(SOFC2)が、直列に配置された2段式の多段式燃料電池システムにおいて、従来例と、第1燃料電池のオフガスから水蒸気(H20)のみを回収した場合、二酸化炭素(CO2)を回収した場合、その両方(水蒸気及び二酸化炭素)を回収した場合について、夫々解析を行った。
【0093】
なお、従来例は、凝縮器を用いて、オフガスから水蒸気を除去する構成である。水蒸気のみを回収する構成は、第1〜第3実施形態に相当する。水蒸気及び二酸化炭素を回収する構成は、第4〜第10実施形態に相当する。
【0094】
SOFCスタックでの反応は、750℃での平衡反応とした。改質器に供給される単位時間当たりの水蒸気の分子数Sと、改質器に供給される単位時間当たりの原料ガスの炭素原子数Cとの比であるスチームカーボン比(S/C)を、2.5とした。
【0095】
表2に、各々の場合の開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)を解析した結果を示す。表2において、開回路電圧とは、燃料電池に負荷をかけていない状態の両端子間の電圧である。Ufは、有効に利用された燃料の割合(燃料利用率)である。平均OCVとは、燃料電池スタックの入口部のOCVと出口部のOCVの平均である。
【0096】
この結果、何れの場合でも、従来例と比較して、SOFC2の平均OCVが向上し、これに伴って全体OCVも向上することがわかった。特に、水蒸気及び二酸化炭素を回収する場合は顕著である。
【0097】
【表2】
【0098】
また、水蒸気を除去するために凝縮器を用いる従来例と比較して、本実施形態のように水蒸気分離膜を用いることで、再生燃料ガスの加熱幅を小さくすることができる。200℃で使用可能な水蒸気分離膜を用いて、オフガスから水のみを除去したと仮定すると、10kW級のSOFCシステムにおいて、210Wの熱的メリットが生じると試算された。また、回収した水を凝縮せず、水蒸気のまま改質用に燃料処理装置に供給したと仮定すると、10kW級のSOFCシステムにおいて、2.23kWの熱的メリットが生じると試算された。
【0099】
[他の実施形態]
以上、本発明の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0100】
例えば第1実施形態等において、第1熱交換器21が設けられるものとしたが、オフガスの冷却装置と、再生燃料ガスの加熱装置を設けて、第1熱交換器21を設けない構成としてもよい。
【0101】
燃料処理装置14が、水蒸気分離膜16で除去された水蒸気を用いて原料ガスを改質するものとしたが、他から供給される水蒸気を用いて改質を行ってもよい。
【符号の説明】
【0102】
10…多段式燃料電池システム、11…第1燃料電池、12…第2燃料電池、14…燃料処理装置、16…水蒸気分離膜、16B…透過側、20…多段式燃料電池システム、21…第1熱交換器(熱交換器)、22…第2熱交換器(熱交換器)、30…多段式燃料電池システム、38…水、40…多段式燃料電池システム、50…多段式燃料電池システム、52…オフガス経路、56…二酸化炭素除去部、60…多段式燃料電池システム、70…多段式燃料電池システム、80…多段式燃料電池システム、90…多段式燃料電池システム、100…多段式燃料電池システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11