特許第6573869号(P6573869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573869仮想サンプルレートを増大させた音声フィルタリング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573869
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】仮想サンプルレートを増大させた音声フィルタリング
(51)【国際特許分類】
   H03H 17/00 20060101AFI20190902BHJP
   G10L 19/26 20130101ALI20190902BHJP
   G10L 15/02 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   H03H17/00 621Z
   H03H17/00 601J
   G10L19/26 Z
   G10L15/02 200A
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-504419(P2016-504419)
(86)(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公表番号】特表2016-519482(P2016-519482A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】AU2014000325
(87)【国際公開番号】WO2014153609
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年3月24日
(31)【優先権主張番号】61/805,469
(32)【優先日】2013年3月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/805,406
(32)【優先日】2013年3月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/805,432
(32)【優先日】2013年3月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/805,466
(32)【優先日】2013年3月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/805,449
(32)【優先日】2013年3月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/805,463
(32)【優先日】2013年3月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/819,630
(32)【優先日】2013年5月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/903,225
(32)【優先日】2013年11月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515267714
【氏名又は名称】バラット,ラックラン,ポール
【氏名又は名称原語表記】BARRATT,Lachlan,Paul
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】バラット,ラックラン,ポール
【審査官】 竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/063361(WO,A1)
【文献】 特開2008−197284(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0319065(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 17/00−17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号をデジタルフィルタリングする方法であって、前記方法が、
音声フィルタのインパルス応答であって、複数の近傍サンプル点を含むインパルス応答によって表される音声フィルタを用意するステップと、
前記複数の近傍サンプル点の近傍に位置する複数の中間サンプル点を導入することによって、前記音声フィルタのインパルス応答のサンプルレートを増大させたサンプルレートまで増大させるステップと、
別の音声フィルタの別のインパルス応答によって表される別の音声フィルタを用意するステップであって、前記別のインパルス応答が、その近傍サンプル点の近傍間の複数の中間サンプル点を含む前記増大させたサンプルレートで与えられる、ステップと、
それぞれの前記インパルス応答について、
i)前記インパルス応答を表す1つ以上の波形に基づいてそれぞれの前記複数の中間サンプル点に対する重み付けを計算するステップと、
ii)前記それぞれの中間サンプル点で前記インパルス応答に前記重み付けを施すステップと、
前記インパルス応答と前記別のインパルス応答とを互いに畳み込むことによって、前記音声フィルタの前記インパルス応答を前記別の音声フィルタの別のインパルス応答に適用して、複合音声フィルタを用意するステップと、
前記複合音声フィルタを用いて前記音声信号をフィルタリングするステップと、
それぞれの前記インパルス応答の波形にタイムドメイン指数因子から得られる平均曲線を適用するステップを含んでおり、
前記平均曲線が、
で表されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記各中間サンプル点に対する重み付けを計算する前記ステップが、(i)前記それぞれの近傍サンプル点において前記音声フィルタの前記インパルス応答を表す近傍波形を指定するステップと、(ii)前記各指定された波形を前記近傍サンプル点と前記中間サンプル点との間でタイムドメインでシフトするステップと、(iii)前記中間サンプル点における前記シフトされた波形の値を合わせて重み付けを得るステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記指定された波形が、前記近傍サンプル点と前記中間サンプル点との間の中間にタイムドメインでシフトされることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法において、前記各中間サンプル点に対する重み付けを計算する前記ステップが、(i)前記音声フィルタの前記インパルス応答を表し、かつ前記中間サンプル点と一列に並ぶようにそのタイムドメインでシフトされた波形を設けるステップと、(ii)前記シフトされた波形をタイムドメインで拡大させるステップと、(iii)前記近傍サンプル点における前記拡大させた波形の値を合わせて重み付けを得るステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、仮想波形がタイムドメインで2倍に拡大されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法において、前記重み付けが、所定数の前記近傍サンプル点にわたり施されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記複合音声フィルタが、一列のフィルタの組み合わせであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記一列のフィルタが共に、フィルタリングされる前記音声信号を表す周波数帯域幅を定めることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記複合音声フィルタが、ナイキスト周波数に近いローパスフィルタであることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記平均曲線が、それが適用される前記インパルス応答の波形の各周波数に反比例する幅に調整されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記インパルス応答が、シンク関数によってタイムドメインで表されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記インパルス応答が、絶対値の正弦関数によってタイムドメインで表されることを特徴とする方法。
【請求項13】
音声信号を複合音声フィルタを用いてデジタルフィルタリングさせる指示を含む非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記指示が、プロセッサによって実行された際、前記プロセッサに、
前記フィルタのインパルス応答によって表される音声フィルタを用意させることであって、前記インパルス応答が複数の近傍サンプル点を含み、
前記複数の近傍サンプル点の近傍に位置する複数の中間サンプル点を導入することによって、前記音声フィルタの前記インパルス応答のサンプルレートを増大させたサンプルレートに増大させ、
別の音声フィルタの別のインパルス応答によって表される別の音声フィルタを用意させることであって、前記別のインパルス応答が、その近傍サンプル点の近傍間に複数の中間サンプル点を含む増大させたサンプルレートで用意され、
それぞれの前記インパルス応答について、
i)前記インパルス応答を表す1つ以上の波形に基づいて、それぞれの前記複数の中間サンプル点に対する重み付けを計算させ、
ii)前記それぞれの中間サンプル点で前記インパルス応答に前記重み付けを施させ、
前記インパルス応答と前記別のインパルス応答とを互いに畳み込むことによって、前記音声フィルタの前記インパルス応答を前記別の音声フィルタの別のインパルス応答に適用して、複合音声フィルタを用意させ、
前記複合音声フィルタを用いて前記音声信号をフィルタリングさせ、
それぞれの前記インパルス応答の波形にタイムドメイン指数因子から得られる平均曲線を適用し、
前記平均曲線が、
で表されることを特徴とするコンピュータまたはデバイス可読媒体。
【請求項14】
音声信号をデジタルフィルタリングするシステムであって、前記システムは、
複数の近傍サンプル点を含むインパルス応答であって、前記フィルタのインパルス応答によって表される音声フィルタと、
プロセッサと、
を含むことを特徴とするシステムであって、
前記プロセッサが、
前記複数の近傍サンプル点の近傍に複数の中間サンプル点を導入することによって、前記音声フィルタのインパルス応答のサンプルレートを増大させたサンプルレートまで増大させ、
別の音声フィルタの別のインパルス応答によって表される別の音声フィルタを用意することであって、前記別のインパルス応答が、その近傍サンプル点の近傍間の複数の中間サンプル点を含む前記増大させたサンプルレートで与えられ、
それぞれの前記インパルス応答について、
i)前記インパルス応答を表す1つ以上の波形に基づいてそれぞれの前記複数の中間サンプル点に対する重み付けを計算し、
ii)前記それぞれの中間サンプル点で前記インパルス応答に前記重み付けを施し、
前記インパルス応答と前記別のインパルス応答とを互いに畳み込むことによって、前記音声フィルタの前記インパルス応答を前記別の音声フィルタの別のインパルス応答に適用して、複合音声フィルタを用意し、
前記複合音声フィルタを用いて前記音声信号をフィルタリングさせ、
それぞれの前記インパルス応答の波形にタイムドメイン指数因子から得られる平均曲線を適用する
ように構成されており、
前記平均曲線が、
で表されることを特徴とするシステム。
【請求項15】
実行された際、請求項1に記載の方法を実施する指示を含むことを特徴とする非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2013年3月26日に提出された米国特許出願第61/805,469号明細書の優先権を主張するものであり、その内容が参照によってここに含められるものとする。本願は、2013年3月26日にすべて提出された、米国特許出願第61/805,406、第61/805,432号明細書、第61/805,466号明細書、第61/805,449号明細書および第61/805,463号明細書に関し、必要であればこれらの優先権を主張するものであり、その内容が参照によってここに含められるものとする。本願はまた、2013年5月5日に提出された米国特許出願第61/819,630号明細書および2013年11月12日に提出された米国特許出願第61/903,225号明細書にも関し、必要であればこれらの優先権を主張するものであり、その内容が参照によってここに含められるものとする。
【0002】
本発明は、概して、音声信号をデジタルフィルタリングする方法に関する。本発明は、特に、音声イコライゼーション(EQ)における音声信号のデジタルフィルタリングに関するものであるが、これに限定されない。本発明は、フィルタリング画像とデジタル通信およびデジタル処理に関連する信号を含む他の信号とを含めた他のデジタルフィルタリングにも及ぶものである。
【背景技術】
【0003】
デジタル録音およびデジタル再生では、音声を表すアナログ信号がデジタル信号に変換され、それ自体が加工され、記録される。変換は、アナログ−デジタルコンバータ(ADC)で実行される。記録されたデジタル信号は、デジタル−アナログコンバータ(DAC)でアナログ信号に再変換可能である。アナログ信号は、アンプやスピーカーなど、従来の音響機器を用いて再生可能である。デジタル信号はDACの前に加工可能であり、再生する前にその質を高めることができる。この加工には音声EQが含まれ、例えば周波数応答の異常を補正するために、音声の周波数スペクトルのうち選択した成分がフィルタリングされる。デジタル信号はまた、デジタル信号への変換またはアナログ信号への再変換から発生する問題を解決するためにフィルタリングされることもある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様により、音声信号をデジタルフィルタリングする方法を提供し、前記方法は、
近傍サンプル点を含む所定のサンプルレートの音声フィルタを用意するステップと、
音声フィルタのサンプルレートを所定のサンプルレートから増大させたサンプルレートまで増大させるステップであって、増大させたサンプルレートにおいて近傍サンプルフィルタ間に中間サンプル点が位置するステップと、
サンプルレートであって、その近傍サンプル点の近傍間の中間サンプル点を含む増大させたサンプルレートで別の音声フィルタを用意するステップと、
音声フィルタをほぼ表す1つ以上の波形に基づいて、各中間サンプル点に対する重み付けを計算するステップと、
各中間サンプル点で音声フィルタに重み付けを施すステップと、
他方の音声フィルタに音声フィルタを適用して複合音声フィルタを用意するステップであって、前記フィルタが、音声フィルタと他方の音声フィルタとの畳み込みによって適用され、前記畳み込みが、音声フィルタの近傍サンプル点のうち少なくとも1つが他方の音声フィルタの中間サンプル点のうち少なくとも1つと一致するように、音声フィルタを他方の音声フィルタに対応させてシフトすることを含むステップと、
複合音声フィルタを用いて音声信号をフィルタリングするステップと、
を含む。
【0005】
各中間サンプル点に対する重み付けを計算するステップは、(i)各近傍サンプル点において音声フィルタをほぼ表す近傍波形を指定するステップと、(ii)各指定した波形を近傍サンプル点と中間サンプル点との間でタイムドメインでシフトするステップと、(iii)中間サンプル点におけるシフトされた波形の値を合わせて重み付けを得るステップと、を含むことが好ましい。
【0006】
指定された近傍サンプルは、近傍サンプル点と中間サンプル点との間のほぼ中間にタイムドメインでシフトされることが好ましい。
【0007】
各中間サンプル点に対する重み付けを計算するステップは、(i)音声フィルタをほぼ表し、かつ中間サンプル点と一列に並ぶようにそのタイムドメインでシフトされた仮想波形を設けるステップと、(ii)シフトされた仮想波形をタイムドメインで拡大するステップと、(iii)近傍サンプル点における拡大した仮想波形の値を合わせて重み付けを得るステップと、を含むことが好ましい。
【0008】
指定した近傍サンプルは、タイムドメインで約2倍に拡大されることが好ましい。
【0009】
重み付けは、所定数の前記近傍サンプル点にわたり施されることが好ましい。
【0010】
複合音声フィルタは、一列のフィルタの組み合わせであることが好ましい。一列のフィルタは共に、フィルタリングされる音声信号を概して表す周波数帯域幅を定めることが、さらに好ましい。
【0011】
複合音声フィルタは、ナイキスト周波数に近いローパスフィルタであることが好ましい。
【0012】
1つ以上の波形は、それぞれが、各音声フィルタに送られたインパルスによって発生したインパルス応答を含むことが好ましい。方法は、さらに、インパルス応答の周波数成分に平均曲線を適用するステップを含むことが、さらに好ましい。平均曲線は、それが適用されるインパルス応答の各周波数成分に比例する幅に調整されることが、またさらに好ましい。
【0013】
インパルス応答は、シンク関数によってタイムドメインで表されることが好ましい。25または、インパルス応答は、絶対値の正弦関数によってタイムドメインで表されることが好ましい。
【0014】
本発明の第2の態様により、音声信号を30複合音声フィルタを用いてデジタルフィルタリングさせる指示を含むコンピュータまたはデバイス可読媒体を提供し、前記指示は、プロセッサによって実行された際、前記プロセッサに、
近傍サンプル点を含む所定のサンプルレートで音声フィルタを用意させ、
音声フィルタのサンプルレートを、所定のサンプルレートから増大させたサンプルレートに増大させ、増大させたサンプルレートにおいて近傍サンプル点間に中間サンプル点が位置し、
サンプルレートであって、その近傍サンプル点の近傍間に中間サンプル点を含む増大させたサンプルレートで別の音声フィルタを用意させ、
音声フィルタをほぼ表す1つ以上の波形に基づいて、各中間サンプル点に対する重み付けを計算させ、
各中間サンプル点で音声フィルタに重み付けを施させ、
音声フィルタを他方の音声フィルタに適用して複合音声フィルタを用意させ、前記フィルタは、音声フィルタと他方の音声フィルタとの畳み込みによって適用され、前記畳み込みは、音声フィルタの近傍サンプル点のうち少なくとも1つが他方の音声フィルタの中間サンプル点のうち少なくとも1つと一致するように、音声フィルタを他方の音声フィルタに対応させてシフトすることを含み、
複合音声フィルタを用いて音声信号をフィルタリングさせるものである。
【0015】
本発明の第3の態様により、音声信号をデジタルフィルタリングするシステムを提供し、前記システムは、
近傍サンプル点を含む所定のサンプルレートの音声フィルタと、
プロセッサと、
を含むシステムであって、
プロセッサは、
音声フィルタのサンプルレートを所定のサンプルレートから増大させたサンプルレートに増大させ、増大させたサンプルレートにおいて近傍サンプル点間に中間サンプル点が位置し、
サンプルレートであって、その近傍サンプル点の近傍間に中間サンプル点を含む増大させたサンプルレートで別の音声フィルタを用意し、
音声フィルタをほぼ表す1つ以上の波形に基づいて、各中間サンプル点に対する重み付けを計算し、
各中間サンプル点において音声フィルタに重み付けを施し、
音声フィルタを他方の音声フィルタに適用して複合音声フィルタを用意し、前記フィルタは、音声フィルタと他方の音声フィルタとの畳み込みによって適用され、前記畳み込みは、音声フィルタの近傍サンプル点のうち少なくとも1つが他方の音声フィルタの中間サンプル点のうち少なくとも1つと一致するように、音声フィルタを他方の音声フィルタに対応させてシフトすることを含み、
複合音声フィルタを用いて音声信号をフィルタリングする、
ように構成される。
【0016】
本発明の第4の態様により、画像をデジタル10フィルタリングする方法を提供し、前記方法は、
近傍サンプル点を含む所定のサンプルレートの画像フィルタを用意するステップと、
画像フィルタのサンプルレートを、所定のサンプルレートから増大させたサンプルレートまで増大させるステップであって、増大させたサンプルレートにおいて近傍サンプル点間に中間サンプル点が位置するステップと、
所定のサンプルレートであって、その近傍サンプル点の近傍間に中間サンプル点を含む所定のサンプルレートで別の画像フィルタを用意するステップと、
画像フィルタをほぼ表す1つ以上の波形に基づいて、各中間サンプル点に対する重み付けを計算するステップと、
各中間サンプル点において画像フィルタに重み付けを施すステップと、
画像フィルタを他方の画像フィルタに適用して複合画像フィルタを用意するステップであって、前記画像フィルタが、画像フィルタと他方の画像フィルタとの畳み込みによって適用され、前記畳み込みが、画像フィルタの近傍サンプル点のうち少なくとも1つが他方の画像フィルタの中間サンプル点のうち少なくとも1つと一致するように、画像フィルタを他方の画像フィルタに対応させてシフトすることを含むステップと、
複合画像フィルタを用いて画像信号をフィルタリングするステップと、
を含む。
【0017】
本発明の第5の態様により、変換器または計測器の変位から得られる電子信号を含むデジタル信号をデジタルフィルタリングする方法を提供し、前記方法は、
近傍サンプル点を含む所定のサンプルレートでデジタルフィルタを用意するステップと
音声フィルタのサンプルレートを所定のサンプルレートから増大させたサンプルレートまで増大させるステップであって、増大させたサンプルレートにおいて近傍サンプル点間に中間サンプル点が位置するステップと、
所定のサンプルレートであって、その近傍サンプル点の近傍間に中間サンプル点を含む所定のサンプルレートで別のデジタルフィルタを用意するステップと
デジタルフィルタをほぼ表す1つ以上の波形に基づいて各中間サンプル点に対する重み付けを計算するステップと、
各中間サンプル点においてデジタルフィルタに重み付けを施すステップと、
デジタルフィルタを他方のデジタルフィルタに適用して複合デジタルフィルタを用意するステップであって、前記デジタルフィルタが、デジタルフィルタと他方のデジタルフィルタとの畳み込みによって適用され、前記畳み込みが、デジタルフィルタの近傍サンプル点のうち少なくとも1つが他方のデジタルフィルタの中間サンプル点のうち少なくとも1つと一致するように、デジタルフィルタを他方のデジタルフィルタに対応させてシフトすることを含むステップと、
複合デジタルフィルタを用いてデジタル信号をフィルタリングするステップと、
を含む
【0018】
ここに説明する本発明の一部の実施形態は、音声信号をデジタルフィルタリングする方法に関するものであり、以下の添付の図面を参照して、単に一例として説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、デジタル音声の録音および再生について本発明の実施形態を適用する概略図である。
図2図2は、本発明の一部の実施形態の音声フィルタのインパルス応答である。
図3図3は、サンプルレートを増大させた図2のインパルス応答の拡大図である。
図4図4は、インパルス応答のサンプルレートを増大させる一例の方法の概略図である。
図5図5は、相当する音声値にかけられる中間サンプル点に対する重み付けを表すグラフである。
図6図6は、本発明の一実施形態によるサンプルレートを調整する一例の方法の概略図である。
図7図7は、インパルス応答のサンプルレートを増大させる別の一例の方法の概略図である。
図8図8は、本発明の一部の実施形態による各インパルス応答に適用した平均曲線を説明するものである。
図9図9は、本発明の一部の実施形態による各インパルス応答に適用した平均曲線を説明するものである。
図10図10は、インパルス応答の周波数を関数とした異なる幅の平均曲線を表すグラフである。
図11図11は、サンプリングを調整していない周波数応答と比較した、サンプリングを調整した本発明の一実施形態のフィルタの周波数応答である(破線で詳細に示す)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここにおける本発明の実施形態の一部は、複合音声フィルタを適用することにより音声信号をデジタルフィルタリングする方法に向けたものである。複合音声フィルタは、一方の音声フィルタを別の音声フィルタに適用することにより得られ得るものであり、それぞれのフィルタは、近傍サンプル点を含む同一の所定のサンプルレートを有する。他方の音声フィルタはまた、その近傍サンプル点の近傍間に1つ以上の介在サンプル点を含むものもある。一方の音声フィルタは、他方の音声フィルタに対応させて調整されたサンプルレートで他方の音声フィルタに適用され得る。一部の実施形態では、調整されたサンプルレートが、他方のフィルタの近傍サンプル点の数に対応する介在サンプル点の数と反比例するものもあり得る。
【0021】
図1は、デジタル音声の録音および再生に本発明の一部の実施形態を適用したものを示している。アナログ音声信号10は、アナログ−デジタルコンバータ(ADC)12でデジタル音声信号に変換され得る。デジタル音声信号には、その後、デジタルプロセッサ14において、例えば音声イコライゼーション(EQ)の信号処理が施され得る。処理されたデジタル信号は、サンプルレートを増大させられる前に記録メモリ16でダウンサンプルされて記録され、再生前にそのレゾリューションを増大させられる。レゾリューションが比較的高いこのデジタル音声信号は、その後、デジタル−アナログコンバータ(DAC18)でアナログ信号20に再変換され得る。
【0022】
本発明の一部の実施形態は、
i)デジタル音声信号がサンプルレートを増大させられるか、またはオーバーサンプリングされるADC12であって、一部の実施形態では重み付けを施すADC12、
ii)デジタル信号プロセッサ14、または、例えばデジタル信号がローパスフィルタまたはバンドパスフィルタによってフィルタリングされ得るEQに関連するデジタルフィルタ、および/または、
iii)フィルタリングされた音声信号が、再生前にサンプルレートが増大させられ得るか、またはアップサンプリングされ得る、記録メモリ16のダウンストリーム、
において適用可能であることが理解されるものである。
【0023】
ここにおける一部の実施形態は、コンピュータプログラムコードまたはソフトウェアに組み込まれた方法に関する。デジタル信号プロセッサ14のデジタルフィルタは、特定の周波数応答によって表され得る。特定の周波数応答は、一般に、本発明の様々な実施形態のソフトウェアまたは方法によって特徴づけられ得るフィルタのインパルス応答によって決まり得る。ここに記載した一部の実施形態は基本のタイプの周波数応答を含み得るものであり、デジタルフィルタは、この周波数応答によって、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、および帯域除去フィルタまたはノッチフィルタを含めて分類され得る。デジタルフィルタは、有限インパルス応答(FIR)フィルタまたは無限インパルス応答(IIR)フィルタとして大きく分類され得る。
【0024】
一部の実施形態では、調整されたサンプルレートを含めた音声フィルタリングを容易に理解するために、複合音声フィルタは、簡素化のために二つの(2)音声フィルタから得られるが、いかなる数のフィルタも使用し得ることが理解されるものである。複合音声フィルタは、一般に、一列のフィルタを含み得る。
【0025】
一部の実施形態では、一列のフィルタは共に、フィルタリングされる音声信号またはスペクトルを表す周波数帯域幅を定め得るものである。一部の実施形態では、各フィルタに送られたインパルスによってインパルス応答が発生する。各フィルタのインパルス応答は、次の数式により、シンク関数によって表され得る。
ここで、Ipfは、ローパスフィルタのための折点周波数であり、xはx軸の時間変数,e−(qx)2は平均曲線を表しており、qは平均曲線のアスペクト比を表している。シンク関数が余弦成分の和であることは、理解されるものである。
【0026】
図2は、数式1のインパルス応答を説明するものである。a[0]はインパルスが発生した時点であり、a[n]はインパルス応答の近傍サンプル点を示しており、ここでnは、所定のサンプルレートにおけるサンプル点の数であることが理解されるものとする。一部の実施形態では、所定のサンプルレートは44.1kHz(サンプル毎秒)であり得るが、他のいかなるサンプルレートも目的に応じて使用し得ることは理解されるものである。
【0027】
一部の実施例では、各音声フィルタが、所定のサンプルレートから増大させられたサンプルレートとなり得る。図3は、サンプルレートを増大サンプルレートまで増大させた図2のインパルス応答の拡大図を説明するものである。単に説明することを目的として、a[0]およびa[1]などの近傍サンプル点間に、a[0a]からa[0i]まで割り当てて等間隔に配置した9つ(9)の中間サンプル点を配置し、所定のサンプルレートを10倍(10)に増大させた。所定のサンプルレートは、実際には、増大サンプルレートが44,100kHzとなる1,000倍まで増大させられ得る。
【0028】
一部の実施形態では、フィルタを相互に畳み込むことによって、複合音声フィルタを得るものもある。パルス応答aおよびbのこの畳み込みは、サンプルの配列によって表され得るものであり、これはまた次の数式によっても数学的に定義可能である。
ここで、Nは、インパルス応答aおよびbそれぞれに対するサンプルの数であり、kは、インパルス応答bの各サンプルの0からN−1までである。このため、サンプルの配列は、2N−1行および2N−1列を含むことになる。配列の各行のサンプル値の和は、複合音声フィルタを表し得る。一部の実施形態では、複合音声フィルタは、インパルス応答を無限数のサンプルにわたって積分することにより数学的に表され得る。
【0029】
複合音声フィルタは、一部の実施例では、ナイキスト周波数に近づけたローパスフィルタであり得る。ナイキスト周波数以上の周波数は、実質的には、様々なインパルス応答においてサンプルレートを増大させる際に除去される。複合フィルタまたは他の複合フィルタは、目的に応じ、バンドパスフィルタまたは帯域除去フィルタとしても機能し得る。
【0030】
一部の実施形態では、複合音声フィルタは、増大させられたサンプルレートで高まった精度の利点を得て“構築され”得る。複合音声フィルタは、音声信号をフィルタリングする前に、所定のサンプルレートに戻され得る。複合フィルタはこのように、仮想サンプルレートを増大させた状態で、所定のサンプルレートで音声信号に適用され得るものであり、プロセッサ電力の観点では負担が少ない。
【0031】
一部の実施形態では、各音声フィルタにおけるサンプルレートの増大が、i)シフトさせた近傍音声信号、および/またはii)拡大させた仮想音声信号を含み得る様々な方法によって実行され得る。
【0032】
シフトさせた音声信号を用いたインパルス応答の重み値については、近傍のインパルス応答が、定められるべき中間サンプル点の両側に指定され得る。これらの指定された近傍信号はそれぞれ、近傍サンプル点と中間サンプル点との間でタイムドメインでシフトされ得る。一部の実施例では、それぞれシフトされ指定された近傍インパルス応答が相当する中間サンプル点でもたらす値の和によって、適切な重み付けが算出され得る。この方法を、図4に概略的に示す。重み付けは、所定数の近傍サンプル点、例えば1,024個のサンプル点にわたりかけられ得る。
【0033】
図5は、相当するインパルス応答に施されるa[oa]からa[oi]までの各中間サンプル点に対する重み付けを説明するものである。
【0034】
一部の実施形態では、音声フィルタの畳み込みが、音声フィルタの近傍サンプル点が、それが適用される他の音声フィルタの少なくとも介在サンプル点のそれぞれと一列に並ぶかまたは一致するように調整されたサンプルレートで実行され得る。これには、音声フィルタを、他方の音声フィルタに対応させて調整されたサンプルレートでシフトすることが含まれ得る。例えば、他方の音声フィルタがその近傍サンプル点の近傍間のほぼ中間に位置する介在サンプル点を含む場合、フィルタを相互に適用するために調整されたサンプルレートは、所定のサンプルレートのほぼ二分の一となり得る。図6は、サンプルレートを調整する1つの方法を概略的に説明するものである。一部の実施形態では、フィルタのサンプルレートは、例えば、ナイキスト周波数が約22kHzである場合、フィルタの周波数を例えばナイキスト周波数の約二分の一、すなわち約11kHzまで半減させることにより、調整され得る。
【0035】
サンプルレートは、一部の実施形態では、一インパルス応答おきに畳み込むことにより調整され得る。これは、図6の最上段のインパルス応答が、実線で詳細に示した3つの(3)インパルス応答と畳み込まれ、破線で詳細に示したその他のインパルス応答は事実上無視されることを意味する。結果として得られる音声フィルタ、すなわち複合音声フィルタは、破線で詳細に示した図6の最下段のインパルス応答であり、一部の実施例では、次の数式により表すことができる。
【0036】
所定のサンプルレート44.1kHzに対して、本例で調整されたサンプルレートは、22.05kHzである。他方の音声フィルタがその近傍サンプル点の近傍間に9つの(9)介在サンプル点を含む場合、調整されたサンプルレートは、所定のサンプルレートの十分の一となり得る。これは、所定のサンプルレート44.1kHzに対応させて調整されたサンプルレート4.41kHzに相当する。サンプルレートを調整することにより、各中間サンプル点に対する重み付けを計算する際の指定された近傍サンプル点のシフトが“補正される”と理解される。指定された近傍サンプルのタイムドメインでのシフトは、概して、音声フィルタの畳み込みにおけるサンプルレートの調整と比例する。このため、指定された近傍信号を近傍サンプル点と中間サンプル点との中間にシフトすることは、サンプルレートを約二分の一倍に調整することを意味し得る。
【0037】
インパルス応答aおよびbの畳み込みにより、例えば数式2によって表されるサンプルの配列がもたらされ得る。しかし、調整されたサンプルレートによれば、インパルス応答aにはN個のサンプル、インパルス応答bにはM個のサンプルがあり得る。このためサンプルの配列は、{N+M}−1行およびM列を含み得る。配列の各行に対するサンプル値の和は、複合音声フィルタを表し得る。
【0038】
拡大させた仮想音声信号を用いたインパルス応答の値の重み付けでは、相当するインパルス応答が仮想インパルス応答として事実上複製され、そのタイムドメインは定められる中間サンプル点と一列に並ぶようにシフトされる。仮想され、シフトされたインパルス応答は、その後、そのタイムドメインで拡大され得る。一部の実施例では、近傍サンプル点における拡大させたインパルス応答の値を合計することによって、適切な重み付けが計算され得る。この方法を、図7に概略的に示す。重み付けは、所定数の近傍サンプル点、例えば1,024個のサンプル点にわたり適用されることが望ましい。
【0039】
一部の実施形態では、指定された近傍信号が、タイムドメインで約2倍に拡大され得る。これにより、所定のサンプルレートの二分の一に調整したサンプルレートが“補正”され得る。中間サンプル点に対する重み付けを計算するのに他の拡大因子が用いられ、調整されたサンプルレートがこの拡大因子に反比例し得ることは、理解されるものである。
【0040】
一部の実施形態では、インパルス応答に適用した平均曲線が、それが適用されるインパルス応答の周波数に比例する幅に調整され得る。図8は、比較的高い周波数を有するインパルス応答に適用される約4つ(4)のサンプルからなる幅を有する平均曲線を説明するものである。図9は、比較的低い周波数を有する別のインパルス応答に適用された約8つ(8)のサンプルからなる幅を有する調整された平均曲線を示すものである。両例では、平均曲線の幅、つまりqが、対応するインパルス応答の周波数にほぼ比例し得るのが見られる。これは図10に概略的に示されており、平均曲線の幅がz軸において増大し、インパルス応答の周波数が低減している。
【0041】
図11の周波数応答の比較曲線から、調整されたサンプルレートにより、周波数応答が理想化ローパスフィルタをより表し得ることがわかる。本発明の一実施形態により調整されたサンプルレートを用いた周波数応答は、調整されたサンプルレートのない周波数応答と比較して、よりベル状の特徴を示している(破線で詳細に示した)。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明した今、音声信号をデジタルフィルタリングする方法が、少なくとも従来の技術を上回る以下の利点を有することが当業者に明らかであると思われる。
1.複合音声フィルタは、その周波数応答において比較的“滑らかな”フィルタをもたらす増大させたサンプルレートで得られ得る。
2.複合フィルタは、例えばEQについて改善されたフィルタリングをもたらし得る。
3.複合フィルタの“設計”は、大幅に増大させたサンプルレートのフィルタで構築される限り、アナログに近いものであり得る。
4.複合音声フィルタは、アナログフィルタおよび従来のデジタルフィルタに本来ある不要な共振を、大幅に低減させ得る。
5.この方法により、より滑らかで、この点でよりアナログフィルタに近い周波数応答がもたらされる。
6.複合フィルタは、サンプルレートの増大を必要とせずに、比較的高いレゾリューションで相当する音声に適用され得る。
7.フィルタリングされた音声は、フィルタリングされる信号に対して、実質的に位相コヒーレントであり得る。
【0043】
当業者は、ここに説明した本発明は、具体的に説明した内容の変形および変更が可能であることを理解するものとする。例えば、インパルス応答は、実際にはいかなる波形でもあり得る。インパルス応答は、数式で表した場合、シンク関数に限定されず、他の波形も含まれる。例えば、
i)タイムドメインで表された絶対値の正弦関数、
ii)ゼロ(0)から正の無限大のみまでの値の正弦関数、
iii)正の値のみのシンク関数(余弦成分の和)、
であるが、限定はされない。
【0044】
音声信号の処理は、音響効果に限定される必要はなく、超音波およびソナーを含む他の音声の応用にまで及ぶ。本発明はまた、音声信号の他に、計測器、例えば、一般に変位を電子信号に変換するひずみ計または他の変換器から得られるような物理的変位から得られる信号を含む他の信号にまで及ぶ。本発明はまた、デジタル通信に関連する信号のデジタルフィルタリングをも含む。
【0045】
一部の実施形態における本発明は、画像化に適用され得る。例えば、画像の画素マトリクス内の各画素が、調整されたサンプルレートでフィルタを相互に適用することにより得られる複合フィルタを用いて、フィルタリングされ得る。調整されたサンプルレートは、他方のフィルタの近傍サンプル点の数に対応させた介在サンプル点の数に反比例し得る。
【0046】
すべてのこのような変形および変更は、本発明の範囲内にあると考慮されるものであり、その特性は上述の説明から定められるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11