(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573876
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】空隙形成用組成物、その組成物を用いて形成された空隙を具備した半導体装置、およびその組成物を用いた半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20190902BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20190902BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20190902BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20190902BHJP
H01L 21/312 20060101ALI20190902BHJP
H01L 21/314 20060101ALI20190902BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20190902BHJP
H01L 23/532 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/00
C08G61/12
H01L21/316 P
H01L21/312 Z
H01L21/314 Z
H01L21/90 N
H01L21/90 P
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-523501(P2016-523501)
(86)(22)【出願日】2015年5月26日
(86)【国際出願番号】JP2015065030
(87)【国際公開番号】WO2015182581
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2017年12月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-111552(P2014-111552)
(32)【優先日】2014年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511293803
【氏名又は名称】アーゼッド・エレクトロニック・マテリアルズ(ルクセンブルグ)ソシエテ・ア・レスポンサビリテ・リミテ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】中 杉 茂 正
(72)【発明者】
【氏名】絹 田 貴 史
(72)【発明者】
【氏名】能 谷 剛
【審査官】
三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/126411(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/146723(WO,A1)
【文献】
特開2009−265450(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/022068(WO,A1)
【文献】
特開2012−138503(JP,A)
【文献】
特開2013−140980(JP,A)
【文献】
特表2005−533880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
H01L 21/302−21/302,400
21/461
H01L 21/88− 21/ 90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造において、多孔質材料の空孔、溝、または凹部に充填して犠牲領域を形成させ、その後に除去することによって、前記材料の形状を保護するための犠牲領域形成用組成物であって、
下記式(1):
【化1】
または下記式(2):
【化2】
[式中、
Ar
1、Ar
2、およびAr
2’はそれぞれ独立に、1個以上のベンゼン環を含む芳香族基であり、前記芳香族基はアルキル、
およびアルコキシ
からなる群から選択される置換基で置換されていてもよく、
L
1〜L
2はそれぞれ独立に、酸素、
アルキレン、スルホン、
および下記一般式(3):
【化3】
{式中、
Ar
3は1個以上のベンゼン環を含む芳香族基であり、前記芳香族基はアルキル、
およびアルコキシ
からなる群から選択される置換基で置換されていてもよく、
L
3は窒素、
およびホウ素
からなる群から選択される3価原子である。}からなる群から選択される。]
で表される少なくとも1種の繰り返し単位を5つ以上含
み、質量平均分子量が1,000〜1,000,000であるポリマーと、
溶剤と、
を含んでなることを特徴とする
犠牲領域形成用組成物。
【請求項2】
前記Ar1、Ar2、およびAr2’がベンゼン環を1個含む芳香族基である、請求項1に記載の犠牲領域形成用組成物。
【請求項3】
前記ポリマーの含有率が、組成物の総質量を基準として0.2〜20質量%である、請求項1または2に記載の犠牲領域形成用組成物。
【請求項4】
前記ポリマーを、不活性ガス雰囲気中または空気中、400℃で1時間加熱した際の重量減少が5%以下、かつ600℃で1時間加熱した際の重量減少が80%以上である請求項1〜3に記載の犠牲領域形成用組成物。
【請求項5】
複数の空孔を有する多孔質材料を具備してなる半導体装置を製造する方法であって、
前記多孔質材料に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の犠牲領域形成用組成物を塗布して前記組成物を前記空孔中に充填し、
前記組成物に含まれる溶媒の一部またはすべてを蒸発させて犠牲材料からなる犠牲領域を形成させ、
前記多孔質材料の表面に凹部を形成させ、
前記凹部に金属材料を充填して金属配線を形成させ、
前記犠牲材料を選択的に除去することによって、前記犠牲領域を中空状態に戻す工程を含むことを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記多孔質材料の空孔率が5〜70%である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記犠牲材料の除去が、加熱により犠牲材料を分解させて除去する方法、プラズマ処理によって除去する方法、犠牲材料を溶解する溶媒によって溶解させて除去する方法、高エネルギー線を照射して除去する方法のいずれかにより行われる、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などにおける金属配線間に容易に空隙構造を形成させることが可能な空隙形成用組成物、およびその組成物を用いた金属配線間の空隙形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子などにおける層間絶縁膜として、CVD法などの真空プロセスで形成されたシリカ(SiO
2)膜が多用されている。また、主に平坦化を目的として、SOG(Spin on Glass)膜と呼ばれるテトラアルコキシランの加水分解生成物を主成分とする塗布型の絶縁膜も使用されている。近年、半導体素子などの高集積化に伴い、配線相互間の寄生容量を低減して配線遅延を改善することを目的に、低誘電率の層間絶縁膜に対する要求が高まっている。配線相互間の寄生容量を低減させる方法として、例えば特許文献1、2、および3に記載されているような、配線間に空隙が形成された半導体装置が提案されている。これらの文献に記載された方法では、まず金属配線の間を有機レジストやシリカ化合物などの充填物で埋めた後、エッチングもしくはアッシングによりその充填物を除去して金属配線間に空隙を形成させている。しかし、このような方法は操作が煩雑であり、改善の余地があった。また、配線間に空隙を形成させるために用いる充填物が、例えば特許文献4、5、および6に提案されている。しかしながら、これらの充填物は400℃付近での熱安定性が十分ではなく、配線相互間の寄生容量の十分な低減ができないため、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−172068公報
【特許文献2】特開平8−83839公報
【特許文献3】特開2001−85519公報
【特許文献4】特開2003−342375公報
【特許文献5】特開2004−63749公報
【特許文献6】特開2009−275228公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、特定の耐熱温度と特定の熱分解温度を有する空隙形成用組成物と、それを用いた半導体装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による空隙形成用組成物は、
下記式(1):
【化1】
または下記式(2):
【化2】
[式中、
Ar
1、Ar
2、およびAr
2’はそれぞれ独立に、1個以上のベンゼン環を含む芳香族基であり、前記芳香族基はアルキル、アリール、アルコキシ、ニトロ、アミド、ジアルキルアミノ、スルホンアミド、イミド、カルボキシ、スルホン酸エステル、アルキルアミノ、およびアリールアミノからなる群から選択される置換基で置換されていてもよく、
L
1〜L
2はそれぞれ独立に、酸素、硫黄、アルキレン、スルホン、イミド、カルボニルもしくは下記一般式(3):
【化3】
{式中、
Ar
3は1個以上のベンゼン環を含む芳香族基であり、前記芳香族基はアルキル、アリール、アルコキシ、ニトロ、アミド、ジアルキルアミノ、スルホンアミド、イミド、カルボキシ、スルホン酸エステル、アルキルアミノ、およびアリールアミノからなる群から選択される置換基で置換されていてもよく、
L
3は窒素、ホウ素、およびリンからなる群から選択される3価原子である。}からなる群から選択される。]
で表される少なくとも1種の繰り返し単位を5つ以上含むポリマーと、
溶剤と、
を含んでいることを特徴とするものである。
【0006】
さらに、本発明による配線間の空隙形成方法は半導体基板上に形成された多孔質である絶縁膜の表面を前記空隙形成用組成物で被覆する工程と、前記空隙形成用組成物を半導体基板上に埋め込む工程と、前記空隙形成用組成物を除去する工程により金属配線間に空隙を形成する事を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、多孔質材料に、特定の耐熱温度と特定の熱分解温度を有するポリマーを含む空隙形成用組成物を適用することによって、多層配線間に簡便に空隙を形成することができ、所望の特性を有する半導体装置を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(A)〜(D)は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部分を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明すると以下の通りである。
【0010】
[空隙形成用組成物]
本発明は空隙形成用組成物に関するものである。ここで、空隙形成用組成物とは、半導体装置の製造過程などにおいて、基板の金属配線間などに空隙を形成させるための組成物である。より具体的には、基板表面の空隙や空孔などを充填することができ、その後一定の温度以下では安定であり、一定の温度を超えると気化などにより容易に除去できるという性質を有するものである。
この空隙形成用組成物は、特定のポリマーと溶剤とを含んでなる。この特定のポリマーは、
下記式(1):
【化4】
または
下記式(2):
【化5】
[式中、
Ar
1、Ar
2、およびAr
2’はそれぞれ独立に、1個以上のベンゼン環を含む芳香族基であり、前記芳香族基はアルキル、アリール、アルコキシ、ニトロ、アミド、ジアルキルアミノ、スルホンアミド、カルボキシ、スルホン酸エステル、アルキルアミノ、およびアリールアミノからなる群から選択される置換基で置換されていてもよく、
L
1およびL
2はそれぞれ独立に、酸素、硫黄、アルキレン、スルホン、イミド、カルボニルもしくは下記一般式(3):
【化6】
{式中、
Ar
3は1個以上のベンゼン環を含む芳香族基であり、前記芳香族基はアルキル、アリール、アルコキシ、ニトロ、アミド、ジアルキルアミノ、スルホンアミド、イミド、カルボキシ、スルホン酸エステル、アルキルアミノ、およびアリールアミノからなる群から選択される置換基で置換されていてもよく、
L
3は窒素、ホウ素、およびリンからなる群から選択される3価原子である。}からなる群から選択される。]
で表される少なくとも1種の繰り返し単位を含むものである。このポリマーは、前記の繰り返し単位を5つ以上含んでいる。また、繰り返し単位を2種類以上含む場合には、繰り返し単位をランダムに含むランダムポリマーであっても、各繰り返し単位のブロックを含むブロックコポリマーであってもよい。また、このポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲で前記した繰り返し単位とは異なる繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0011】
一般式(1)および(2)において、Ar
1、Ar
2、およびAr
2’は1個以上のベンゼン環を含む芳香族基である。これらの芳香族基は好ましくはベンゼン環をひとつだけ含むものであるが、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合芳香環を含んでいてもよい。また、Ar
1、Ar
2、およびAr
2’は2価基であるが、その結合手の位置は、特に限定されず、o−位、m−位、またはp−位のいずれであってもよい。しかしながら、合成の容易性や耐熱性の観点から、p−位に二つの結合手を有することが好ましい。また、Ar
1、Ar
2、およびAr
2’は置換基を有していてもよい。置換基としてはアルキル、アリール、アルコキシ、ニトロ、アミド、ジアルキルアミノ、スルホンアミド、カルボキシ、スルホン酸エステル、アルキルアミノ、およびアリールアミノからなる群から選択されるが、この置換基が過度に嵩高いと、ポリマー主鎖による特性が損なわれることがあるので、置換基に含まれる炭素数が10以下であることが好ましい。
【0012】
また、L
1およびL
2は芳香環を結合する連結基である。この連結基は、酸素、硫黄、アルキレン、スルホン、イミド、およびカルボニルから選択される。連結基がアルキレンの場合には、その炭素数が1〜3である、比較的短いアルキレン基が好ましい。また、一般式(3)で表される連結基であってもよい。一般式(3)においてAr
3はAr
1などと同じ構造の芳香族基(ただし、1価基)から選択される。なお、Ar
3が置換基としてさらに芳香族基を有する場合には、ポリマーはいわゆる分岐鎖構造を有することになる。本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で分岐鎖構造を有していてもよいが、分岐が多いポリマーを用いると耐熱性が低下する傾向にある。このため、本発明に用いられるポリマーは直鎖状構造を有することが好ましい。
【0013】
また、L
3は、窒素、ホウ素、またはリンのいずれかから選択され、特に限定されない。これらのうち、ポリマーの入手または合成の容易さの観点から窒素またはホウ素であることが好ましい。
【0014】
従来、空隙形成用組成物には、芳香環を含むポリマーが用いられていたが、それらはほとんどの場合ポリスチレンのように側鎖に芳香環を有するものであった。これに対して、本発明者らの検討によれば、芳香環を主鎖中に含み、芳香環同士が、前記したL
1、またはL
2で表される連結基によって結合されている場合に、熱安定性が高く、空隙形成用組成物に用いると優れた特性を発揮することが見出された。
【0015】
本発明に用いることができるポリマーの分子量は、目的に応じて任意に調整することができる。一般的には、質量平均分子量が、1,000〜1,000,000であることが好ましく、3,000〜500,000であることがより好ましい。本発明において、質量平均分子量とは、ポリスチレン換算の質量平均分子量をいう。また、組成物を塗布する場合の浸透性や、形成される被膜の均一性などの観点からポリマーの分子量分布は小さいことが好ましい。
【0016】
本発明による空隙形成用組成物は、溶媒を含む。この溶媒は、前記ポリマーを溶解し得ることが必要である。
【0017】
このような溶媒は、たとえば、水、エタノール、イソプロパノール(IPA)、乳酸エチル(EL)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、メチルアミルケトン(MAK)、テトラヒドロフラン(THF)、γ−ブチロラクトン(GBL)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、クロロホルム、アセトニトリル、およびトルエンなどが挙げられる。これらのうち、溶解性の観点から、THF、GBL、NMP、DMAC、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、クロロホルム、またはトルエンが好ましく、塗布性の観点から、THF、GBL、シクロヘキサノン、クロロベンゼンまたはトルエンが好ましい。また、必要に応じてこれらの溶媒を2種類以上組み合わせて用いてもよい。たとえば、経時安定性の観点からは、THF、GBL、NMP、DMAC、シクロヘキサノンとクロロベンゼンとの混合溶媒が好ましい。
【0018】
本発明による空隙形成用組成物は、前記ポリマーと前記溶媒とを必須とするものである。ここで、組成物に含まれるポリマーの含有量は、対象となる空隙のサイズ、組成物の粘度などに応じて適切に調整されるが、組成物の総質量を基準として、一般に0.2〜20質量%、好ましくは0.3〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0019】
本発明による空隙形成用組成物は、必要に応じてその他の成分を含むこともできる。具体的には、界面活性剤、平滑剤、および殺菌剤などが挙げられる。これらのうち、組成物の塗布性の観点から組成物は界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤は、従来知られている任意のものを用いることができるが、特にアルキレングリコール鎖含有界面活性剤が好ましい。これらの添加剤は原則的に微細パターン形成用組成物の性能には影響を与えないものであり、通常組成物の全質量を基準として一般に1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.05%以下の含有量とされる。
【0020】
また、本発明による空隙形成用組成物は、幅の狭いトレンチや小さな空孔内に浸透する必要があるため、その粘度が重要な意味を有する場合がある。組成物の粘度は、用いる目的などに応じて適切に調整される。しかしながら、空隙形成用組成物を空孔内に浸透させる場合には、塗布後の組成物を高温条件下におくことで粘度を低下させて空孔内に浸透させることもできる。このような場合には、常温において比較的粘度の高い組成物であっても空孔内に十分に浸透させることができる。
【0021】
[配線間の空隙形成方法、および半導体装置の製造方法]
本発明による配線間の空隙形成方法および半導体装置の製造方法は、あらかじめ形成されていた空隙、空孔、溝、凹部などを有する材料を、半導体装置の製造過程において保護するものである。本発明においては、このような材料を総称して多孔質材料という。本発明を適用しようとする低誘電率材料の多くは複数の空孔を有する多孔質材料である。すなわち、そのような多孔質材料は密度が低いために、たとえばドライエッチング処理などを施すと、物理的または化学的に損傷を受けやすい。また、材料中に空孔が含まれる材料は、その表面に空孔に起因する凹部などが散在するが、その縁部は平坦部分に比較して、物理的または化学的に損傷を受けやすい。本発明による第二の方法は、そのような損傷を防止するものである。このような方法を図面を参照しながら説明すると以下の通りである。
【0022】
まず、多孔質材料100の表面に空隙形成用組成物101を塗布する(
図1(A))。多孔質材料としては、たとえば二酸化ケイ素やポリアミドからなる材料が挙げられる。また、多孔質材料に形成されている空孔または空隙の大きさや空孔率は、目的とする半導体装置に求められる性能などに応じて変化するが、一般的には空孔の平均直径は100nm以下であり、好ましくは40nm以下である。また一般に空孔率は5〜70%であり、好ましくは5〜50%である。ここで、空孔の平均直径は透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定することができ、また空孔率は誘電率を用いて対数混合法則に従って計算することにより求めることができる。
【0023】
多孔質材料100の表面に塗布された空隙形成用組成物は、経時により多孔質材料に浸透して空孔を充填するが、加圧または加熱により浸透を加速することもできる。特に加温することが好ましい。温度上昇によって組成物の粘度が下がり、空孔への浸透が加速されるためである。なお、空隙形成用組成物の塗布性や浸透性などを考慮して、用いる溶媒を選択することが好ましい。
【0024】
多孔質材料100に空隙形成用組成物を十分に浸透させた後、加熱するなどによって組成物中の溶媒の一部またはすべてを蒸発させて空孔内の組成物を固化させて、犠牲材料101Aに転換させる。その後、必要に応じて表面に露出している犠牲材料を除去し、空孔内が犠牲材料で埋められた多孔質材料が得られる(
図1(B))。この埋められた空孔部分が犠牲領域となる。
【0025】
引き続き、プラズマエッチングまたはドライエッチングなどにより材料の表面を加工して、たとえば溝構造103のような凹部を形成させる(
図1(C))。また、この方法において多孔質材料の表面加工に採用されるプラズマエッチングまたはドライエッチングは、犠牲材料を除去する際に行われるプラズマ処理とは異なる条件で行われる。具体的には、多孔質材料が二酸化ケイ素からなるものである場合には、ドライエッチングに用いるガスとしてCF
4、CHF
3、およびそれらの混合ガスが選択されるのが一般的である。このとき、本発明による方法では、空孔内が犠牲材料で満たされていることによって、材料全体の機械的強度も高いため、リソグラフィー処理、プラズマエッチング、またはドライエッチングによる損傷を受けにくい。
【0026】
プラズマ処理またはエッチング処理の後、溝構造103に、例えば化学気相成長法などにより金属材料を充填して金属配線を形成させた後、犠牲材料を選択的に除去する。犠牲材料を選択的に除去する方法は特に限定されないが、加熱により犠牲材料を分解させて除去する方法、プラズマ処理によって除去する方法、犠牲材料を溶解する溶媒によって溶解させて除去する方法、高エネルギー線を照射して除去する方法などが好ましく、加熱によって行うことが特に好ましい。犠牲材料の分解除去を加熱によって行う場合には、材料全体を加熱することによって、空孔に充填されていた犠牲材料101Aを分解気化させて除去することができる(
図1(D))。この結果、犠牲領域が中空状態に戻って空隙104が形成される。このようにして、プラズマエッチングまたはドライエッチングの過程において損傷を与えることなく、表面が加工された多孔質材料を得ることができる。このように損傷を受けていない多孔質材料を用いて製造された半導体装置は欠陥が少ないので、高い生産性で製造することができる。
【0027】
このような半導体装置の製造方法において、空隙形成用組成物は塗布性および多孔質材料への浸透性に優れていることが好ましい。このため、溶媒としては、MIBKなどの非極性溶媒が好ましく用いられる。組成物の浸透性を良好に維持するために、組成物に含まれるポリマーの分子量を調整することもできる。このような場合、ポリマーの質量平均分子量は、一般に1,000〜150,000であり、1,500〜50,000であることが好ましい。また、プラズマエッチングまたはドライエッチングの際には分解気化せず、その後の加熱によっては完全に分解気化することが好ましい。プラズマエッチングまたはドライエッチングの条件や、加熱温度は種々の理由によって調整されるため、犠牲材料が分解気化する温度はそれに応じて調整される。しかし、一般的には、犠牲材料は例えば400℃で実質的に分解気化せず、例えば600℃で、実質的に完全に分解気化することが好ましい。具体的には、不活性ガス雰囲気中または空気中で犠牲材料を400℃で1時間加熱した際の重量減少が5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、かつ600℃で1時間加熱した際の重量減少が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。なお、本発明による空隙形成用組成物は、固形分のほとんどが前記のポリマーであるため、この組成物から形成される犠牲材料は、実質的に前記のポリマーからなるものである。このため、犠牲材料の重量減少と、ポリマーそのものの重量減少とは実質的に一致する。
【0028】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り質量基準である。また、試験、および評価は下記の通りに行った。
【0029】
[分子量]
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリマーの数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を、ポリスチレン換算値として測定した。
[重量減少]
窒素雰囲気中もしくは空気中、重量測定法(TG)により、20℃/minで昇温し、400℃で1時間加熱した際の重量変化と600℃で1時間加熱した際の重量変化をそれぞれ測定した。
[多孔質SiO
2へのポリマー組成物の埋め込みおよび空隙形成の確認]
分光エリプソメーターにより、波長633nmにおける屈折率の変化によりポリマーの埋め込みと空隙形成の有無を確認した。
【0030】
[ポリマー合成例1]
(ポリ−4−メチルトリフェニ
ルアミン(ポリマーP1)の合成)
撹拌器、凝縮器、加熱装置、窒素導入管および温度制御装置を取り付けた反応器に窒素雰囲気下において塩化鉄(III)(無水)(519部)、クロロホルム(4330部)を加え、反応温度を50℃に保持した。その後、クロロホルム(440部)に溶解させた4−メチルトリフェニルアミン(212部)を加えて攪拌した。その後、反応温度を50℃に保持して0.5時間反応させた。
【0031】
反応終了後、反応溶液をアセトン(54000部)に注いで、粉体をろ過した。その粉体をクロロホルム(4000部)に溶解させ、不溶部分をろ過で取り除き、そのろ液に1質量%のアンモニア水溶液(4000部)を加えてクロロホルム溶液を抽出した。さらに、クロロホルム溶液を濃縮して、その溶液をアセトン(54000部)に注いで、粉体をろ過し、90℃で真空乾燥することによりポリマーP1を85部(収率:40%)得た。
GPC(テトラヒドロフラン)により分子量を測定したところ、数平均分子量Mn=2170Da、質量平均分子量Mw=3991Da、分子量分布(Mw/Mn)=1.84であった。
【0032】
[ポリマー合成例2]
(ポリ−4−メチルトリフェニ
ルアミン(ポリマーP2)の合成)
反応時間を0.5時間から1時間に変えた以外は合成例1と同様に行ったところ、ポリマーP2を87部(収率:41%)得た。GPC(クロロホルム)により分子量を測定したところ、数平均分子量Mn=3157Da、質量平均分子量Mw=6030Da、分子量分布(Mw/Mn)=1.91であった。
【0033】
[実施例1]
ポリマーP1(10部)にシクロヘキサノン(275部)を添加し、室温で30分間撹拌して、空隙形成用組成物を調製した。
【0034】
調製した空隙形成用組成物を多孔質なSiO
2ウエハ上にスピンコートにより塗布し、150℃、窒素雰囲気下において5分間真空ホットプレート上にて加熱して、空隙形成用ポリマー薄膜を得た。この空隙形成用ポリマー薄膜の重量減少を前記方法により測定したところ、400℃(空気雰囲気下)で1時間加熱した際の重量減少は0.03%であり、600℃(空気雰囲気下)で1時間加熱した際の重量減少は99.23%であった。
【0035】
次に空隙形成用ポリマー薄膜を330℃、窒素雰囲気下で5分間真空ホットプレート上にて加熱して、空隙形成用ポリマー薄膜を多孔質なSiO
2ウエハに埋め込んだ。さらに、調製した溶剤であるシクロヘキサノンにて20秒間リンスすることにより、多孔質なSiO
2ウエハ上の余分な空隙形成用ポリマー薄膜を除去した。この空隙形成用ポリマー薄膜が埋め込まれた多孔質なSiO
2ウエハを分光エリプソメーターで測定した結果、波長633nmでの屈折率(n値)は1.46であった。さらに、400℃、空気雰囲気下で1分間加熱後の多孔質なSiO
2ウエハを分光エリプソメーターで測定した結果、波長633nmでの屈折率(n値)は1.46であった。また、600℃で1時間、空気雰囲気下で加熱することにより空隙形成用ポリマー薄膜を加熱分解させた。加熱分解後の多孔質なSiO
2ウエハを分光エリプソメーターで測定した結果、波長633nmでの屈折率(n値)は1.31であり、未処理の多孔質なSiO
2ウエハの屈折率(n値)と同様の値であった。
【0036】
[実施例2〜7および比較例1〜2]
空隙形成用組成物の各成分を、表1に示す通りに変更したほかは実施例1と同様にして、実施例2〜7および比較例1〜2の組成物を調製し、評価した。得られた結果は表1に示す通りであった。
【符号の説明】
【0039】
100 多孔質材料
101 空隙形成用組成物
101A 犠牲領域
103 溝構造
104 空隙