【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項1,8,13,15,および16により、本発明により達成される。従属請求項は、本発明の好適な実施形態を包含する。
【0007】
ここで、本発明は、固体伝播音の解析により医療用インペラポンプを監視する方法であって、上記インペラポンプ内に発生する固体伝播音を測定する工程と、上記インペラポンプの固体伝播音の測定値を、第1の基準曲線および/または第1の制限値と比較する工程と、上記インペラポンプの上記固体伝播音の測定値が上記基準曲線と異なる場合、および/または、上記測定値が上記制限値を超過している場合に、上記インペラポンプの動作に障害が生じていると判定する工程と、上記インペラポンプの動作に障害が生じていることを示す指標として信号を出力する工程と、を備える方法を包含する。
【0008】
本発明による解決方法では、上記インペラポンプ内の上記インペラが、動作中、ポンプヘッドと時折衝突することにより、または、気泡によって移動させられることにより、評価対象の固体伝播信号を生成するという事実を利用する。
【0009】
本発明の具体的な実施の形態は、主請求項に従属する従属請求項から得られる。
【0010】
本発明のある可能な実施形態では、上記方法を用いて、上記インペラポンプ内の空気量を検出してもよい。
【0011】
ここで、検出された空気量と、上記インペラポンプの固体伝播音の測定値とのうち少なくとも一つが上記基準曲線と異なる場合、および/または、上記空気量と上記測定値とのうち少なくとも一つが上記制限値を超過している場合に、上記インペラポンプの通気が実行されてもよい。
【0012】
ある可能な実施の形態では、この目的のために、溜まった空気は、上記インペラポンプ室の通気口を介して排出される。
【0013】
上記インペラポンプのインペラが上記インペラポンプの筐体と衝突したことを別の障害として検出してもよい。
【0014】
本発明によれば、上記インペラポンプの動作中に上記固体伝播音の測定が実行され得る。従って、具体的には、上記医療用途での動作の進行中に上記インペラポンプを監視することが可能である。
【0015】
ここで、上記インペラポンプは、医療装置、具体的には透析器に配置されてもよく、特に好ましくは血液透析、血液濾過、血液透析濾過、および腹膜透析のいずれか一つを実行するための透析器内に配置されてもよい。
【0016】
上記インペラポンプは、さらに、上記透析器の体外血液回路または透析液回路内に配置されてもよい。
【0017】
ここで、本発明による方法は、具体的には、固体伝播音の解析に基づいて、血液透析、血液濾過、および血液透析濾過のいずれか一つを実行する体外血液回路内に配置された第1のインペラポンプを監視し、および/または、血液透析、血液透析濾過、および腹膜透析のいずれか一つを実行する透析液回路内に配置された第2のインペラポンプを監視するために使用可能であり、この方法は、上記第1のインペラポンプを制御することにより上記体外血液回路を動作させ、および/または、上記第2のインペラポンプを制御することにより上記透析液回路を動作させる、工程と、上記第1のインペラポンプ内に発生する上記固体伝播音を測定し、および/または、上記第2のインペラポンプ内に発生する上記固体伝播音を測定する、工程と、上記第1のインペラポンプの固体伝播音の測定値を第1の基準曲線および/または第1の制限値と比較し、および/または、上記第2のインペラポンプの固体伝播音の測定値を第2の基準曲線および/または第2の制限値と比較する、工程と、上記第1のインペラポンプの固体伝播音の測定値が上記第1の基準曲線と異なる場合、および/または、上記測定値が上記第1の制限値を超過している場合に、上記第1のインペラポンプの動作に障害が生じていると判定し、および/または、上記第2のインペラポンプの固体伝播音の測定値が上記第2の基準曲線と異なる場合、および/または、上記測定値が上記第2の制限値を超過している場合に、上記第2のインペラポンプの動作に障害が生じていると判定する、工程と、上記第1のインペラポンプの動作に障害が生じていることを示す指標として信号を出力し、および/または、上記第2のインペラポンプの動作に障害が生じていることを示す指標として信号を出力する、工程と、を備える。
【0018】
本発明によれば、上記方法を用いて、上記インペラポンプ内の空気量を検出し得る。
【0019】
上記インペラポンプの上記インペラが上記インペラポンプの筐体と衝突したことを別の障害として検出してもよい。
【0020】
本発明によれば、上記第1のインペラポンプには第1の固体伝播音センサを、上記第2のインペラポンプには第2の固体伝播音センサを設け、上記固体伝播音を電気信号に変換する。各インペラポンプの駆動装置は、例えば、上記固体伝播音センサを有してもよい。上記第1の固体伝播音センサおよび/または上記第2の固体伝播音センサは、上記電気信号を制御処理部に転送するための信号線を有する。
【0021】
本発明は、本発明による方法を実施する医療装置をさらに包含する。ここで、その医療装置は、具体的には、血液処理装置であってもよい。
【0022】
本発明によれば、上記医療装置、具体的には、血液透析、血液濾過、および血液透析濾過の少なくとも一つ、または腹膜透析を実行するための血液処理装置は、固体伝播音の解析により前記インペラポンプの少なくとも一つを監視する、本発明による方法を実施するためにプログラムされ且つ構成された制御処理部を備える。この目的のために、上記制御処理部は、信号線を用いて、上記少なくとも一つのインペラポンプの上記少なくとも一つの固体伝播音センサに接続される。さらに、上記制御処理部は、信号線を用いて、上記少なくとも一つのインペラポンプの駆動装置に接続され、上記少なくとも一つのインペラポンプを制御してもよい。
【0023】
上記血液処理装置が体外血液処理用の血液処理装置である場合、上記インペラポンプは、例えば、上記体外血液回路内の血液および/または上記透析液回路内の透析液を送り出すために使用され得る。
【0024】
上記血液処理装置が腹膜透析器である場合、上記インペラポンプは、上記透析液回路内の透析液を送り出すために使用され得る。ここで、上記透析液は、患者の腹腔内に送り込まれる。腹腔内では、患者の腹膜が半透膜として作用する。血液から除去されるべき物質は、この半透膜を経由して上記透析液中に移動する。消費された透析液は、滞留時間の後、その分だけ上記腹腔からさらに送り出される。
【0025】
上記インペラポンプの具体的な用途とは別に、空気の取り込みに関して上記インペラポンプの特性を利用してもよい。
【0026】
上記インペラポンプ内の空気量が増加するにつれて、測定された固体伝播音の振幅が大きくなる。インペラポンプ室の容積中の空気量に依存する、測定された固体伝播音の振幅の対応する指標を、上記血液処理装置の上記制御処理部に格納することにより、上記インペラポンプ内に溜まった空気の量を、上記固体伝播音の振幅の最新の測定値から算出してもよい。制限値は固定してもよい。制限値を超過すると、警報信号が発令され得る。上記指標および/または制限値は、特定の血液ホースキットおよび/または透析液ホースキットと組み合わされた基礎を成すインペラポンプに適用される。
【0027】
上記血液処理装置の上記制御処理部は、好適には、コンピュータプログラムが格納されるデータメモリを有する。上記コンピュータプログラムのプログラムコードは、上記少なくとも一つの固体伝播音センサの信号を評価するようにプログラムされる。障害のない動作時の上記少なくとも一つのインペラポンプの固体伝播音の基準曲線が上記データメモリに格納されてもよい。これにより上記固体伝播音の測定値がこの基準曲線とは異なる場合に、上記インペラポンプの動作に障害が生じていると判定し得る。上記少なくとも一つのインペラポンプの固体伝播音の制限値を上記データメモリに格納してもよい。上記制限値を超過すると、上記インペラポンプの動作に障害が生じていると判定される。
【0028】
インペラポンプ室の容積中の空気量に依存する、測定された固体伝播音の振幅の指標を、障害のない動作における血液処理の開始時に取得し、制限値を算出してもよい。しかしながら、上記指標として実験により求められたデータを使用し、および/または、実験結果に基づいて制限値を固定するともに、上記制御処理部のメモリに対して上記指標および上記制限値を固定的に格納することも可能である。
【0029】
本発明により体外血液回路内で作動するインペラポンプ内の空気を検出すれば、送り出された血液の流れの中への空気の混入に対する一つの防護策が得られる。
【0030】
本発明に係る、上記インペラポンプ内の空気の検出は、具体的には、上記インペラポンプを直接的にバブルトラップとして使用している最中にインペラポンプを監視するために使用され得る。その後、一時的に滞留した空気は、血流と共に送出される前に、通気口を介して上記インペラポンプ室から適切なタイミングで排出され得る。このような通気は、具体的には、上記インペラポンプの空気量と、固体伝播音の測定値とのうち少なくとも一つが基準曲線とは異なる場合、および/または、上記空気量と、上記測定値とのうち少なくとも一つが制限値を超過している場合に、上記制御処理部により自動的に開始され得る。具体的には、弁アクチュエータをこのために作動させてもよい。
【0031】
検出された空気量は、上記インペラポンプのポンプ速度にさらに影響を及ぼす。そのため、送り出された液体の量のバランスを取る際に、本発明により検出された空気量を考慮に入れてもよい。好適には、対応する機能は上記制御処理部内で実現される。
【0032】
本発明に係る医療装置、具体的には、本発明に係る血液処理装置は、制御処理部と、インペラポンプ用の装置側駆動装置とを備える。
【0033】
本発明は、インペラポンプ室を有する医療用インペラポンプをさらに包含する。上記インペラポンプ室は通気口を有する。上記通気口は、好ましくは、上記インペラポンプ室の中央領域に設けられる。
【0034】
ここで、インペラは中央領域を有してもよく、この中央領域から外側に羽根が延在し、これらの羽根を介して流体が送り出されてもよい。上記通気口は、好ましくは、上記インペラポンプ室における、上記インペラの上記中央領域に軸方向に隣接して位置する領域に配置される。
【0035】
ここで、上記インペラポンプは、上記通気口を介して上記インペラポンプ室の通気を制御可能にする弁を有してもよい。
【0036】
ある可能な実施の形態では、上記弁は、上記インペラポンプが組み込まれるカセットの結合領域に配置される。
【0037】
本発明は、インペラポンプ室を有する医療用インペラポンプをさらに包含する。上記インペラポンプは、固体伝播音センサまたは上記固体伝播音センサ用の結合点を有する。
【0038】
上記インペラポンプの上記インペラは、好ましくは磁気的に支持され、障害のない動作においては、移送された流体(具体的には血液または透析液)に摩擦を伴って接触するに過ぎない。このような動作は、「非接触」とも呼ばれる。磁石は、好ましくは、上記インペラ内の中央に配置され、および/または、射出成形プロセスにおいてプラスチックにより被覆成形される。
【0039】
上記インペラポンプは、上述したように、具体的には、本発明に係る方法を実施するため、または、本発明に係る医療装置と組み合わせて使用するためのものである。
【0040】
上記インペラポンプは、好ましくは、インペラを有する筐体を備え、体外血液ホースキットまたは透析液ホースキットの構成機器である。このようなホースキットは、具体的には、使い捨てカセット(より具体的には、使い捨て血液カセットまたは使い捨て透析液カセット)として設計される。上記体外血液ホースキットまたは透析液ホースキットは、本発明に係る医療装置(具体的には、血液処理装置)に結合されるように構成される。
【0041】
本発明は、上述のように、本発明に係るインペラポンプを有する使い捨てカセットをさらに包含する。上記使い捨てカセットは、好ましくは、本発明に係る医療装置(具体的には、血液処理装置)の結合領域に結合するための結合領域を有する。ここで、上記使い捨てカセットに組み込まれた上記インペラポンプは、具体的には、上記インペラポンプ用の装置側駆動装置に結合されてもよい。ここで、上記駆動装置は、好ましくは、上記医療装置の結合領域の一領域に配置される。さらに、少なくとも一つの弁アクチュエータが、上記結合領域の一領域に設けられてもよい。上記使い捨てカセットの弁が上記弁アクチュエータに結合され、上記弁アクチュエータによって弁が作動されてもよい。ここで、上記弁は、上記インペラポンプ室を通気するために使用可能であってもよい。
【0042】
上記制御処理部は、好適には、コンピュータプログラムが格納されたデータメモリを備える。上記コンピュータプログラムのプログラムコードは、血液用インペラポンプを制御し、対応する固体伝播音信号を評価し格納するようにプログラムされる。
【0043】
ここで、上に述べた本発明の着想は、血液回路や透析液回路内のインペラポンプだけでなく、医療装置内のインペラポンプのいかなる用途においても実現可能である。しかしながら、血液回路または透析液回路内のインペラポンプとともに使用されることが特に好ましい。