特許第6573886号(P6573886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573886吸収性二峰性ポリマーブレンド組成物、加工方法、及びそれから作製される医療機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573886
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】吸収性二峰性ポリマーブレンド組成物、加工方法、及びそれから作製される医療機器
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20190902BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20190902BHJP
   A61L 17/00 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   C08L67/04
   C08G63/08
   A61L17/00
【請求項の数】12
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2016-538666(P2016-538666)
(86)(22)【出願日】2014年12月8日
(65)【公表番号】特表2017-500401(P2017-500401A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】US2014069006
(87)【国際公開番号】WO2015088944
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年12月1日
(31)【優先権主張番号】61/914,464
(32)【優先日】2013年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/533,274
(32)【優先日】2014年11月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ジャミオルコフスキー・デニス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェリック・ササ
(72)【発明者】
【氏名】ケリー・ブライアン・エム
(72)【発明者】
【氏名】ディフェリス・クリストファー
【審査官】 尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0149640(US,A1)
【文献】 特開昭61−179140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00− 67/08
C08G 63/00− 63/91
A61L 17/00− 17/94
A61L 31/00− 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性ポリマーブレンドであって、
約100モルパーセント〜約70モルパーセントの重合ラクチド及び約0モルパーセント〜約30モルパーセントの重合グリコリドを含む、少なくとも50重量パーセントのラクチドリッチなポリマーを含む第1の吸収性ポリマーと、
ポリ(p−ジオキサノン)を含む第2の吸収性ポリマーと、を含み、
前記吸収性ポリマーブレンド中の前記ポリ(p−ジオキサノン)の最高重量パーセントが50重量パーセントであり、更に、前記第1の吸収性ポリマー及び前記第2の吸収性ポリマーのうちの少なくとも前記第2の吸収性ポリマーが
(a)約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、約60〜95重量%の第1の成分ポリマーと、
(b)約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、約5〜40重量%の第2の成分ポリマーと、のブレンドを含み、前記第1の重量平均分子量が前記第2の重量平均分子量の、少なくとも約2倍である、二峰性分子量分布ポリマーであり、
前記第1の吸収性ポリマーが、単峰性分子量分布ポリマー、又は、二峰性分子量分布ポリマーであり、
前記第1の吸収性ポリマーが前記単峰性分子量分布ポリマーであるとき、前記吸収性ポリマーブレンド中の、二峰性分子量分布である前記ポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは6.8重量%であり、前記第1の吸収性ポリマーが二峰性分子量分布ポリマーであるとき、前記吸収性ポリマーブレンド中の、二峰性分子量分布である前記ポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは3.1重量%である、吸収性ポリマーブレンド。
【請求項2】
前記第1の吸収性ポリマーが、ポリ(L(−)−ラクチド)、ポリ(D(+)−ラクチド)、ポリ(L(−)−ラクチド)/ポリ(D(+)−ラクチド)ステレオコンプレックス、及びラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の吸収性ポリマーブレンド。
【請求項3】
前記第1又は第2の吸収性ポリマーのうちの少なくとも1つが、酸末端封鎖末端基を更に含む、請求項1に記載の吸収性ポリマーブレンド。
【請求項4】
前記第1の吸収性ポリマーが、二峰性分子量分布ポリマーである、請求項1に記載の吸収性ポリマーブレンド。
【請求項5】
前記第1の吸収性ポリマーが、約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、第1の量のポリラクチド又はラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーと;約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、第2の量のポリラクチド又はラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーと、を含み、前記第1の重量平均分子量が前記第2の重量平均分子量の、少なくとも約2倍であり、前記第1及び第2の量の前記第1の吸収性ポリマーの実質的に均質なブレンドが、約60/40〜95/5重量/重量パーセントの比で形成されている、請求項4に記載の吸収性ポリマーブレンド。
【請求項6】
前記第1の吸収性ポリマーが、単峰性分子量分布ポリマーである、請求項1に記載の吸収性ポリマーブレンド。
【請求項7】
前記第1の吸収性ポリマーが、約50,000〜約500,000ダルトンの重量平均分子量を有する、ポリ(L(−)−ラクチド)、ポリ(D(+)−ラクチド)、ポリ(L(−)−ラクチド)/ポリ(D(+)−ラクチド)ステレオコンプレックス、又はラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーである、請求項6に記載の吸収性ポリマーブレンド。
【請求項8】
前記第2の吸収性ポリマーが、約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、第1の量のポリ(p−ジオキサノン)ポリマーと;約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、第2の量のポリ(p−ジオキサノン)ポリマーと、を含み、前記第1の重量平均分子量が前記第2の重量平均分子量の、少なくとも約2倍であり、前記第1及び第2の量の前記第2の吸収性ポリマーの実質的に均質なブレンドが、約60/40〜95/5重量/重量パーセントの比で形成されている、請求項1に記載の吸収性ポリマーブレンド。
【請求項9】
前記第1の吸収性ポリマーが、約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、第1の量のポリラクチド又はラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーと;約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、第2の量のポリラクチド又はラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーと、を含み、前記第1の重量平均分子量が前記第2の重量平均分子量の、少なくとも約2倍であり、前記第1及び第2の量の前記第1の吸収性ポリマーの実質的に均質なブレンドが、約60/40〜95/5重量/重量パーセントの比で形成され、前記第2の吸収性ポリマーが、約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、第1の量のポリ(p−ジオキサノン)ポリマーと;約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、第2の量のポリ(p−ジオキサノン)ポリマーと、を含み、前記第1の重量平均分子量が前記第2の重量平均分子量の、少なくとも約2倍であり、前記第1及び第2の量の前記第2の吸収性ポリマーの実質的に均質なブレンドが、約60/40〜95/5重量/重量パーセントの比で形成されている、請求項4に記載の吸収性ポリマーブレンド。
【請求項10】
請求項1に記載の吸収性ポリマーブレンドを含む医療機器。
【請求項11】
請求項1に記載の吸収性ポリマーブレンドを医療機器に加工する工程を含む、医療機器の製造方法。
【請求項12】
融加工を含む、請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関連する技術分野は、吸収性ポリマー、より具体的には、医療機器の製造に有用な吸収性二峰性分子量ポリマーブレンドである。
【背景技術】
【0002】
吸収性ポリマー及びこのようなポリマーから作製される医療機器は、当該技術分野において公知である。従来の吸収性ポリマーとしては、ポリ乳酸、ポリラクチド、ポリ(p−ジオキサノン)、ポリグリコール酸、ポリグリコリド、及び様々な組み合わせのラクチド、グリコリド、p−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトンのコポリマー等が挙げられる。吸収性ポリマーは、ポリマーが、インビボで破壊され、代謝されるか又は他の方法で(例えば、加水分解によって)分解され、患者の身体から排出されるような化学的性質を有するように設計される。吸収性ポリマーから作製される埋め込み型医療機器を使用することの利点は数多くあり、例えば、インプラントがその機能を果たした後に取り出すための更なる手術を行う必要がなくなることが挙げられる。理想的には、インプラントが「一時的に存在すること」が望ましい場合、組織が治癒するまで支援を行うことができる。
【0003】
吸収性とは、生体吸収性、再吸収性、生体再吸収性、分解性、又は生分解性も含み得る総称であることを意味する。同様に、吸収とは、生体吸収も含み得る総称であることを意味する。
【0004】
医療機器を製造するために用いられる吸収性ポリマーは、場合によっては、製造された医療機器に特定の特徴及び特性(吸収速度、機械的特性、埋め込み後の機械的特性の損失速度(例えば、破壊強度の保持)、及び寸法安定性等を含む)を与えるように操作された吸収性ポリマー及びコポリマーのポリマーブレンドであった。
【0005】
吸収性ポリマー及びポリマーブレンドから医療機器を製造するために用いられている多くの従来の方法が存在する。これら方法としては、射出成形、溶媒流延、押出、機械加工、切削、及び様々な組み合わせ、並びに等価な方法が挙げられる。特に有用かつ一般的な製造方法は、従来の射出成形法を用いる熱形成である。熱射出成形等の製造方法では、不十分な特性、特に、例えば、許容できない寸法安定性、機械的特性、及び埋め込み後の経時的な機械的特性の保持を有する成形部品が得られる場合があることが、当該技術分野において公知である。低い寸法安定性については、多くの理由が存在する。その理由としては、製造プロセス中に誘導される残留応力の存在が挙げられる。別の理由は、ポリマー成分のうちの少なくとも1つのガラス転移温度が低すぎる場合、特に、ポリマー成分が、成形後に容易には結晶化しない場合である。
【0006】
したがって、当該技術分野では、剛性及び強度、優れた埋め込み後の機械的特性の保持、優れた吸収特性、製造可能性、並びに優れた寸法安定性等の優れた機械的特性を有する吸収性医療機器を製造するために、熱射出成形法及び他の従来の方法で使用できる新規吸収性ポリマーブレンドが必要とされている。
【0007】
射出成形法を用いる場合、キャビティ充填中に剪断応力を低減するプロセス条件及び設計要素が、通常、流動起因残留応力の低減に役立つことが知られている。同様に、十分なパッキング及び均一な金型冷却を促進する条件も、通常、熱起因残留応力を低減する傾向を有する。射出成形部品内の残留応力を完全に排除することは、ほぼ不可能ではないにせよ、多くの場合非常に困難である。残留応力を有する部品の反りを防ぐために使用されている手法としては、(1)まだ金型内に存在している間に部品を結晶化させて機械的剛性を増大させ、歪みに抵抗するよう試みること、及び(2)高いガラス転移温度(T)を有する樹脂を使用することが挙げられる。
【0008】
この後者の場合は、遙かにより高い温度でのみ鎖運動性が生じるので、エチレンオキシド(EO)滅菌、出荷、及び保管中に部品が耐えることが期待され得る中程度の温度では部品が保護される状況を説明している。高いガラス転移温度を有する材料は、例えば吸収性等の望ましい他の特性を必ずしも有していない場合がある。残留応力は、部品の収縮及び反りの主な原因であると考えられる。部品は、金型から排出される際、射出成形サイクル中、又は製品の通常の保管若しくは出荷中に遭遇する高温に曝露された際、反ったり寸法的に歪んだりすることがある。特に、滅菌中に遭遇するEO等の可塑剤の存在下では、わずかな高温への曝露でさえも問題になる。
【0009】
先行技術においては、溶融ブレンドされた吸収性ポリマーから熱形成された医療機器における寸法安定性の欠如の問題に対処する試みが行われてきた。Smithの米国特許第4,646,741号には、止血鉗子及び二部品ステープルを作製するために使用される、ラクチド/グリコリドコポリマー及びポリ(p−ジオキサノン)の溶融ブレンドが開示されている。Smithの溶融ブレンドは、寸法安定性を有する成形物品を提供する。Smithは、ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)の量が25重量パーセントを超えることを要求し、より少ない量を否定している。Smithのポリマーブレンドは、医療機器の製造のための使用に関連する欠点を有し、該欠点としては、剛性又はヤング率が制限される、埋め込んだ際の機械的特性の保持が短い、水分に対する感受性が高く、製造中の許容可能な屋外保管時間が制限される、及び、定量化が困難であるが、熱加工がより困難であることが挙げられる。
【0010】
前述の通り、残留応力は、部品の収縮及び反りの主な原因であると考えられる。流動起因残留応力は、熱成形ポリマー医療機器に影響を及ぼし得ることが知られている。応力無負荷の長鎖ポリマー分子は、溶融温度よりも高い温度で(即ち、溶融状態において)、平衡のランダムコイル状態に従う傾向がある。熱加工(例えば、射出成形)中、分子は、ポリマーが剪断及び伸長されるときの流動方向に向く。固化は、通常、ポリマー分子がその平衡の状態まで完全に緩和する前に生じ、次いで、幾つかの分子配向が成形部品内で固定される。この種の凍結した(frozen-in)応力負荷状態は、多くの場合、流動起因残留応力と呼ばれる。流動方向に対して平行及び垂直な方向における異方性の不均一な収縮及び機械的特性は、伸長した分子構造によって導入される。
【0011】
冷却も、残留応力をもたらす場合がある。例えば、金型壁からその中心までの冷却速度のばらつきが、熱起因残留応力を生じさせ得る。更に、2つの表面の冷却速度が不均衡である場合、非対称的な熱起因残留応力が生じ得る。このような不均衡な冷却により、部品全体にわたる非対称的な張力−圧縮パターンが生じ、部品の反りを引き起こす傾向がある曲げモーメントを生じさせる。その結果、不均一な厚さ又は不十分にしか冷却されていない領域を有する部品は、不均衡に冷却されやすく、ひいては残留熱応力を受けやすい。中程度に複雑な部品の場合、熱起因残留応力分布は、不均一な壁厚、金型冷却、及び金型制約により、更に複雑化する。
【0012】
一般的な従来の滅菌方法は、滅菌プロセスサイクルにおいてエチレンオキシドに曝露することであることに留意すべきである。吸収性ポリマー機器は、多くの場合、エチレンオキシド(EO)ガスに対する曝露によって滅菌される。EOは、ラクチド−グリコリドコポリマーの可塑剤として作用することができ、Tをわずかに低下させることができる。このことから、特にTよりも高い温度に曝露されたとき、射出成形部品に「収縮」及び/又は「反り」が生じる場合がある。これにより、吸収性医療機器用にラクチド−グリコリドポリマー材料を使用するとき、更なる加工及び取り扱い上の課題が増す。EO滅菌プロセスは、部品をEOガスに曝露するだけでなく、部品を高温にも曝露することに留意するべきである。これは、通常、ほんのわずかな高温に処理を制限する必要があるので、加工の困難さが増大する。EOは、合成吸収性ポリエステルの可塑剤として作用し得るので、収縮及び反り、並びに全体寸法不安定性の問題が深刻化する場合が多い。
【0013】
加工中の剪断応力を低減又は排除するために従来使用されている多くの加工方法が存在する。キャビティ充填中に剪断応力を低減するプロセス条件及び設計要素は、流動起因残留応力の低減に役立つ。ポリマー部品は、多くの場合、熱処理(熱的にアニール)されて、性能特性が変化する。熱処理加工を行う理由は、ポリマーの形態発展、例えば、結晶化及び/又は応力緩和を完了させることである。首尾良く行われた場合、得られる部品は、より良好な寸法安定性を示すことができ、また、より良好な機械的強度を示すことができる上、埋め込み後の機械的特性の保持に影響を与え得る。
【0014】
射出成形機から排出された、まだ歪んでいない射出成形部品は、室温に冷却/クエンチされ得、寸法的に安定に見える場合がある。しかし、通常、応力が依然として存在し、ポリマー鎖が移動できる任意の時間に、歪みが推進され得る。前述の通り、これは、温度の上昇又はEOガス等の可塑剤への曝露に伴って生じ得る。この寸法歪みの潜在的な推進力を克服するために、多くの方策が取られてきた。そうした方策としては、例えば、(熱)アニーリングが挙げられる。
【0015】
部品が寸法的に拘束され得る場合、2つの目標に向かって熱アニーリングを使用することができる。1つは、応力低下としても知られている、ポリマー鎖内の分子配向の量の低減を試みることであり、もう1つは、部品内における結晶化度を増大させて機械的剛性を高め、歪みに抵抗することである。
【0016】
容易に結晶化する幾つかのポリマーを用いると、部品がまだ金型内に存在している間に該部品を結晶化させることができるが、これは異例の状況である。ここで、金型キャビティは、部品の形状を画定するよう作用するだけではなく、結晶化プロセス中に部品の形状を制限する作用も有し得る。結晶化がより困難なポリマーを用いると、サイクルタイムが極めて長くなり、射出成形法が非実用的になる。したがって、完全なポリマー形態発展が行われる前に、部品を金型から排出する必要がある。
【0017】
半結晶性ポリマーから調製される射出成形部品は、多くの場合、熱処理によりアニールしてその結晶化度レベルを増大させ、そのポリマー形態発展を完了させることができる。多くの場合、部品を物理的に拘束して、避けるよう試みている歪みを避けなければならない。一旦結晶化すると、部品の機械的剛性が増大して、通常は歪む条件に曝露された場合に歪みに抵抗する。好適な物理的制約を提供することは、多くの場合大きな労働力を要し、経済的に負担がかかるため、困難である場合が多い。
【0018】
物理的拘束の必要なく排出された部品をアニールすることが好ましいが、アニーリングプロセス中に部品が歪み、意図する用途について部品が許容できないものになることが度々発生する。
【0019】
部品をアニールして、熱緩和によって残留成形応力(molded-in-stresses)を低減することが、業界において知られている。応力を解放するのに必要な時間及び温度は様々であるが、多くの場合、全体的な歪みを避けるためにT未満で行わなければならない。その場合にも、結果は大きく変動し得る。より高分子量の樹脂では、歪みを生じさせることなく応力レベルを低減することがより困難である。高分子量のポリエステルと比較すると、低分子量の高流動ポリエステルにおいて熱緩和により残留成形応力を低減することは比較的容易であろう。
【0020】
ポリマーブレンドの分子量に関しては、高分子量は、通常、より高い応力レベルを発現し、応力緩和により長時間/より高温を必要とする。これは事実であるが、高い機械的特性及び生物学的性能を実現するには高分子量が必要な場合が多い。この状況は、多くの場合、機器の製造業者に問題を提起する。
【0021】
より高い結晶化度を付与して機械的剛性を増大させ、歪みに対してより強く抵抗するために、又は歪みの推進力を低下させるために分子配向を減少させるために、理想的には、歪みを引き起こさない温度で熱処理(アニーリング)することにより部品を加工する。残念なことに、一般的に使用される合成吸収性ポリエステルの性質に起因して、この処理は、多くの場合、歪みを避けることがほぼ不可能な、ガラス転移温度を超える温度にする必要がある。
【0022】
例えば、ポリラクチドホモポリマー又はポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマー装置について考慮されたい。これらの射出成形部品の応力が負荷されたポリマー鎖は、そのガラス転移温度以上に加熱されたとき、緩和し、その自然状態(「ランダムな3次元コイル」)に戻る傾向がある。これは、反り、収縮、又は全体寸法変形として観察される。この潜在的な変形に起因して、成形ポリラクチド系部品を生産するときにそれをアニールしないことが業界の一般的な慣行である。これらの成形されたままのポリラクチド部品は、完全な非晶質又は非結晶質ではないにせよ、結晶化度が非常に低く、したがって、中程度の残留応力を有する場合、それぞれのガラス転移温度以上の温度に曝露された場合に変形する傾向がある。EO滅菌、出荷、及び保管中に通常遭遇する条件下で寸法的に安定な状態を保つために高い剛性を発現し得るように、このような部品をアニールして結晶化度を誘導できることが有利である。
【0023】
例えば、埋め込み型ステープル又はタックの場合等、医療機器が十分なコラム強度を示すことを必要とする医療用途が存在する。明らかに、より小さい断面積を有するこのような要件を有する装置では、それを形成するポリマーは、タックをその意図する用途について適切に機能させたい場合、本質的に剛性でなければならない。
【0024】
ラクチド/グリコリドコポリマー及びポリ(p−ジオキサノン)の溶融ブレンドにおいて、より高い剛性を実現するために、ポリ(p−ジオキサノン)の量を最小化する必要がある。Smithが教示したものとは対照的に、ポリ(p−ジオキサノン)のレベルが25重量パーセントよりも低いラクチドリッチなコポリマーとポリ(p−ジオキサノン)とのブレンドから成形された部品において、寸法安定性が実現できることが見出された。ポリ(p−ジオキサノン)の添加は、こうした低いレベルであっても、最終部品において寸法安定性を実現する可能性を高める。しかし、依然として、任意の量のポリ(p−ジオキサノン)の添加は、一定の結晶化度レベルにおいてブレンドの剛性を低下させると予想されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
このようなポリマーブレンドは公知であるにも関わらず、この技術分野では、剛性、インビボ(インサイチュ)における保持強度、寸法安定性、インビボにおける吸収性、及び製造可能性を含む改善された特性を有する医療機器を提供する新規吸収性ポリマー材料が、このようなポリマー材料から作製される新規医療機器、及びこのようなポリマー材料から医療機器を製造する新規方法と共に、継続して必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の目的は、溶融加工(例えば、射出成形)及び他の加工によって新規吸収性医療機器及び医療機器構成部品を生産するための製造プロセスで用いることができる新規吸収性ポリマーブレンドであって、該機器又は構成部品が、優れた機械的特性(例えば、高い剛性及びコラム強さ)、優れた埋め込み後の機械的特性の保持(例えば、優れた破壊強度保持)、許容可能な吸収速度、及び優れた寸法安定性を有するブレンドを提供することである。
【0027】
したがって、新規な吸収性ポリマーブレンド組成物が開示される。ポリマーブレンドは、第1の吸収性ポリマーと第2の吸収性ポリマーとを有する。第1のポリマーは、約100モルパーセント〜約70モルパーセントの重合ラクチド及び約0モルパーセント〜約30モルパーセントの重合グリコリドを含む、少なくとも50重量パーセントのラクチドリッチなポリマーを含み、第2のポリマーは、ポリ(p−ジオキサノン)を含む。ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)の最高重量パーセントは50重量パーセントであり、ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは、ポリマーブレンドが製品に寸法安定性を与えるのに十分である。第1の吸収性ポリマー、若しくは第2の吸収性ポリマー、又は第1の吸収性ポリマー及び第2の吸収性ポリマーは、二峰性分子量分布ポリマーである。すなわち、これらは、二峰性分子量分布を有する。各二峰性分子量分布ポリマーは、約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量分布を有する、約60〜95重量%の第1の成分ポリマーと、約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、約5〜40重量%の第2の成分ポリマーと、のブレンドを含む。更に、前記第1の分子量分布の前記第2の分子量分布に対する重量平均分子量比は、少なくとも約2:1である。
【0028】
本発明の別の態様は、吸収性ポリマーブレンドである。ブレンドは、約100モルパーセント〜約70モルパーセントの重合ラクチド及び約0モルパーセント〜約30モルパーセントの重合グリコリドを含む、少なくとも50重量パーセントのラクチドリッチなポリマーを含む第1の吸収性ポリマーと、ポリ(p−ジオキサノン)を含む第2の吸収性ポリマーとを有する。ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)の最高重量パーセントは50重量パーセントであり、ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは、ポリマーブレンドが製品に寸法安定性を有効に与えるのに十分である。第1の吸収性ポリマー及び第2の吸収性ポリマーのうちの一方又は両方は、二峰性分子量分布ポリマーである。各二峰性分子量分布ポリマーは、
(a)約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、約60〜95重量%の第1の成分ポリマーと、
(b)約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、約5〜40重量%の第2の成分ポリマーと、のブレンドを含み、前記第1の分子量の前記第2の分子量に対する重量平均分子量比は、少なくとも約2:1である。
【0029】
ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは、ラクチドリッチなポリマー中の重合ラクチドのモル量に依存し、
ラクチドリッチなポリマーが単峰性分子量分布を有し、ポリ(p−ジオキサノン)が二峰性分子量分布を有するとき、式:
ポリ(p−ジオキサノン)の重量パーセント=
(215.6212/重合ラクチドのモルパーセント)2.7027−1.177
によって計算される。ポリマーブレンドは、製品に寸法安定性を与える。
【0030】
本発明の更なる別の態様は、吸収性ポリマーブレンドである。ブレンドは、約100モルパーセント〜約70モルパーセントの重合ラクチド及び約0モルパーセント〜約30モルパーセントの重合グリコリドを含む、少なくとも50重量パーセントのラクチドリッチなポリマーを含む第1の吸収性ポリマーと、ポリ(p−ジオキサノン)を含む第2の吸収性ポリマーとを有する。ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)の最高重量パーセントは50重量パーセントであり、ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは、ポリマーブレンドが製品に寸法安定性を有効に与えるのに十分である。第1の吸収性ポリマー及び第2の吸収性ポリマーのうちの一方又は両方は、二峰性分子量分布ポリマーである。各二峰性分子量分布ポリマーは、
(a)約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、約60〜95重量%の第1の成分ポリマーと、
(b)約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、約5〜40重量%の第2の成分ポリマー、とのブレンドを含み、前記第1の分子量の前記第2の分子量に対する重量平均分子量比は、少なくとも約2:1である。
【0031】
ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは、ラクチドリッチなポリマー中の重合ラクチドのモル量に依存し、
ラクチドリッチポリマーが二峰性分子量分布を有し、ポリ(p−ジオキサノン)が単峰性又は二峰性の分子量分布を有するとき、式:
ポリ(p−ジオキサノン)の重量パーセント=
(215.6212/重合ラクチドのモルパーセント)2.7027−4.877
によって計算される。ポリマーブレンドは、製品に寸法安定性を与える。
【0032】
本発明の更に別の態様は、上記新規ポリマーブレンドから作製される医療機器である。
【0033】
本発明の更なる態様は、上記ポリマーブレンドから医療機器を製造する方法である。
【0034】
本発明のこれらの及び他の態様及び利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明を例証する埋め込み型ステープル又はタック/ストラップの図面であり、小さな断面積を有する機器を示す。
図2】上記機器の限界寸法を示す、図1の機器の図面である。
図3】不十分な寸法安定性と、熱アニーリング後に許容できないレベルの反りとを示す、図1の装置の射出成形されたタック/ストラップの写真である。
図4】優れた寸法安定性と、熱アニーリング後に許容し得るレベルの反りとを示す、図1の機器の射出成形タック/ストラップの写真である。
図5】ダンベル試験対象品の図である。
図6】10重量パーセントのポリ(p−ジオキサノン)を有する実施例4Cのポリマー組成物から作製された、アニーリング前のサンプルSTR 11−7の射出成形タックの写真である。
図7】10重量パーセントのポリ(p−ジオキサノン)を有する実施例4Cのポリマー組成物から作製された、アニーリング後のサンプルSTR 11−7の射出成形タックの写真であり、該射出成形タックは、アニーリング後に許容できない反りを示す。
図8】20重量パーセントのポリ(p−ジオキサノン)を有する実施例4Cのポリマー組成物から作製された、アニーリング前のサンプルSTR 11−8の射出成形タックの写真である。
図9】20重量パーセントのポリ(p−ジオキサノン)を有する実施例4Cのポリマー組成物から作製された、アニーリング後のサンプルSTR 11−8の射出成形タックの写真であり、該射出成形タックは、アニール後に優れた寸法安定性及び許容し得るレベルの反りを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
解決すべき問題I:
大部分の吸収性樹脂は、やや低いガラス転移温度を有し、形成される部品を十分な程度結晶化させなければ低たわみ温度につながる。所与の部品を形成するための射出成形プロセス中の結晶化度の発現速度は、金型中で十分に結晶化させるためにサイクルタイムが増大するので、経済的理由(例えば、時間当たりに製造される部品)から非常に重要である。しかし、恐らくは性能的理由からより重要なことには、サイクルタイムが長いと、バレルにおける滞留時間が長くなり、樹脂の分解につながる。この分解により、樹脂の分子量が低下し、その結果、機械的特性が低下し、埋め込み後、経時的な機械的特性の損失がより速くなり得る。
【0037】
したがって、成形部品における寸法安定性の発現を支援するために、吸収性樹脂の結晶化速度を増大させることが望ましい。
【0038】
更に、吸収性樹脂の結晶化速度を増大させて、射出成形中のサイクルタイムを短縮し、より速い速度で部品を形成することが望ましく、これによって、経済的利点がもたらされる。
【0039】
更に、バレルにおける樹脂の滞留時間を短縮させて、不所望の熱分解を避けるために、吸収性樹脂の結晶化速度を増大させ、射出成形中のサイクルタイムを短縮して成形部品を形成することが望ましい。これにより、より高い性能特性を有する、より高分子量の部品が得られると予測される。つまり、成形中の分解を最小化すると、よりロバストな製造プロセスが得られる。
【0040】
関連する問題点は、(上述の結晶化速度とは対照的に)発現する結晶化度の最高レベルである。部品の歪み、及び収縮又は反り等の寸法不安定性の他の形態を最小化するために、十分なレベルの結晶化度を発現させなければならない。射出成形部品が示す分子配向が高いほど、歪みの推進力が大きくなる。分子配向が大きいと、その様々な形態における歪みに抵抗するために、より高レベルの結晶化度が必要になる。更に、より低いガラス転移温度を有する合成吸収性ポリマーは、より歪みやすいので、同様に、部品においてより高レベルの結晶化度を発現させる必要がある。
【0041】
したがって、成形部品において発現する結晶化度の百分率を増大させて、該部品の寸法安定性を高めることが望ましい。
【0042】
解決すべき問題I(寸法安定性の発現を支援する/より速い速度で部品を形成する/性能特性を高める/よりロバストな製造プロセスを提供する/剛性を高める):
本発明者らは、良好な寸法安定性を有する埋め込み型医療機器の製造において有用な少なくとも2つの吸収性ポリマーの吸収性ポリマーブレンドを提供できることを見出した。該吸収性ポリマーブレンドは、二峰性分子量分布を有する形態のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマー又はポリラクチドホモポリマーから選択される第1の吸収性ポリマーを提供し、それをポリ(p−ジオキサノン)とブレンドすることによって実現された。また、該吸収性ポリマーブレンドは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマー又はポリラクチドホモポリマーから選択される第1の吸収性ポリマーを、第2の吸収性ポリマーである二峰性分子量分布を有する形態のポリ(p−ジオキサノン)とブレンドすることによっても実現可能である。あるいは、該吸収性ポリマーブレンドは、二峰性分子量分布を有する形態のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマー又はポリラクチドホモポリマーから選択される第1の吸収性ポリマーを提供し、それを二峰性分子量分布を有する形態のポリ(p−ジオキサノン)とブレンドすることによって実現可能である。
【0043】
より速い結晶化速度を提供することは、成形部品における寸法安定性の発現を支援する、すなわち、より速い速度で部品を形成することができる可能性があり、また、サイクルタイムがより短いと、通常長いサイクルタイム中に生じる熱分解の量が減少し、それによって、性能特性が高まる。結晶化がより速くかつ熱加工中の分解がより少ないと、よりロバストな製造プロセスが実現される。最後に、成形部品において実現される結晶化度レベルがより高いと、部品の剛性を増大させることができる。
【0044】
より速い結晶化速度、及び成形部品において実現されるより高い百分率の結晶化度の発現により、更に、ブレンドの組成をより低レベルのポリ(p−ジオキサノン)にシフトさせることができる可能性があることに留意すべきである。低Tポリマー成分であるポリ(p−ジオキサノン)を低減すると、剛性が更に高まる。
【0045】
本発明のブレンドの利点は、速く結晶化する能力であり、これは、加工、特に射出成形にとって特に重要である。金型において物品が結晶化するのが速いほど、寸法安定性を増大させ、反りを避ける形態を発現させるために必要なサイクルタイムが短くなる。更に、サイクルタイムの短縮には経済的利点もある。しかし、サイクルタイムが短いことにより、ポリマーが高温の機械内に存在する時間も短縮される。これにより、分子量の低下の形態の分解の量及び生じ得る変色が低減され、部品の品質が更に改善される。更に、分子量の保持は、より高い機械的特性及び埋め込み後の分子特性の保持につながり得る。金型から排出する前に部品において必要とされる結晶化度の量は、樹脂のガラス転移温度に加えて、樹脂の分子量に依存する。樹脂のガラス転移温度が低いほど、成形部品において寸法安定性を与えるために必要な結晶化度のレベルが高くなる。
【0046】
場合によっては、成形部品を金型の外で、すなわち、部品を成形機から排出した後に結晶化させることが有利である。高速で部品を結晶化させる能力は、加工上の理由から有利である。迅速な結晶化は、部品が更に加工されるとき、部品の寸法安定性を与えるのに非常に役立つ。本発明のポリマーブレンドは、対照(単峰性分子量分布を有する成分に基づくブレンド)よりも速い速度で結晶化することが示される。
【0047】
解決すべき問題II:
所与の組成物、すなわち、ブレンド成分比が不変のままである組成物では、より高い剛性が必要な場合があり、これは、より高い弾性率を必要とすると解釈することができる。所与の組成物では、成形部品において発現する結晶化度の百分率を増大させて、該部品の剛性を高めることができる。次いで、問題は、「熱処理を与えること以外に、どのようにして成形部品における結晶化度レベルを増大させるか?」ということである。
【0048】
解決すべき問題II(所与の全体組成における剛性の増大):
本発明は、更に、二峰性分子量分布を示す好ましいブレンド成分を選択するという理由で、同じ全体組成の既に入手可能な吸収性ブレンドよりも高い弾性率を有する、成形部品における寸法安定性が依然として良好な埋め込み型医療機器を作製するのに好適なポリマーブレンドを提供する。
【0049】
なお、問題/解決策Iでは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマーにおける結晶化速度及び発現する全体結晶化度を増大させることによって、ポリ(p−ジオキサノン)の重量パーセントを低下させることができる。ここで、本発明者らは、ブレンド成分比が不変のままである場合を考慮している。
【0050】
二峰性分子量分布を有する第1の吸収性ポリマー、第2の吸収性ポリマー、又は両吸収性ポリマーを提供することによって見出された。本発明は、結晶化速度及び成形部品において発現する全体結晶化度を増大させるという理由で、既に入手可能な吸収性ブレンドよりも高い弾性率を有する、成形部品における寸法安定性が依然として良好な埋め込み型医療機器を作製するのに好適なポリマーブレンドを提供する。
【0051】
結晶化の速度又は動力学に加えて、部品で発現する結晶化度の最高レベルも非常に重要である。部品で発現する結晶化度レベルが不十分である場合、部品が、必要とされる寸法安定性を有しないことがある。本発明のブレンドは、より高い結晶化度レベルを本発明のブレンドが有する特定の条件下で、対照よりも速く結晶化し、これにより、より剛性である等、より優れた機械的特性を有する物品を得ることができる。完全にアニールされた場合でさえも、本発明のブレンドの結晶化度レベルは、対照よりも高いことが示される。
【0052】
解決すべき問題III(所与の全体組成における吸収速度の増大):
所与の弾性率レベルについて、吸収速度を増大させて、機器が体内に存在する時間を低減する必要があることがある。
【0053】
問題の解決法III:
寸法安定性を有する埋め込まれた医療機器の吸収速度を増大させる目的で、本発明者らは、良好な寸法安定性を有する埋め込み型医療機器の製造において有用な少なくとも2つの吸収性ポリマーの吸収性ポリマーブレンドを提供する。該吸収性ポリマーブレンドは、二峰性分子量分布を有する形態のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマー又はポリラクチドホモポリマーの群から選択される第1の吸収性ポリマーを提供し、それをポリ(p−ジオキサノン)とブレンドすることによって実現された。また、該吸収性ポリマーブレンドは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマー又はポリラクチドホモポリマーから選択される第1の吸収性ポリマーを、第2の吸収性ポリマーである二峰性分子量分布を有する形態のポリ(p−ジオキサノン)とブレンドすることによっても実現可能である。あるいは、該吸収性ポリマーブレンドは、二峰性分子量分布を有する形態のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマー又はポリラクチドホモポリマーから選択される第1の吸収性ポリマーを提供し、それを二峰性分子量分布を有する形態のポリ(p−ジオキサノン)とブレンドすることによって実現可能である。
【0054】
二峰性分子量分布を有するブレンド成分を提供することにより、更なるインハウス加工、滅菌、パッケージング、輸送、保管等の間の反り及び寸法不安定性を避けるために加工されるように成形部品を適切に安定化させながら、好ましい本発明のブレンドを、単峰性分子量ポリマーに基づくブレンド成分で作製された対応するブレンドよりも速く、埋め込み後に分解させることができる。埋め込み後の分解は、体内における経時的な機械的特性の損失がより速くなることに加えて、体内で吸収するのに必要な時間が短くなることを含むことを意味すると指摘される。
【0055】
米国特許第8,450,431 B2号及び同第8,236,904 B2号は、その全文が参照により本明細書に組み込まれる。更に、同一出願人による、同時係属中の米国特許出願第12/887,995号(2010年9月22日出願)は、その全文が参照により本明細書に組み込まれる。用語「二峰性」又は「二峰性分子量分布」が本願で用いられるが、それは、「正規分布の(normally distributed)」ポリエステルから予測される、より広いM/M値を有する分子量分布を意味する。Mとは、重量平均分子量を意味し、Mとは、数平均分子量を意味し、高分子化学の分野で周知の概念である。「正規分布の」ポリエステルは、典型的に、高い機械的特性を示すのに必要な分子量において、2に近いM/M値を有する(M/M=[1+p](式中、「p」は、反応の程度であり、更に中程度に高い分子量において1に近い値に近づく)。二峰性分布を検出するために、ゲル浸透クロマトグラフィー[GPC]を用いることができる。しかし、微量成分の量が少ない場合、確認するのが難しい場合がある。これらの場合、対象のポリエステルのM/M値を調べることが求められることがある。二峰性分子量分布を有する(コ)ポリマーに関する幾つかの分子量データについては、以下の表1を参照されたい。次いで、これら二峰性(コ)ポリマーを更にブレンドして、本発明のブレンドを得る。
【0056】
【表1】
【0057】
本発明の新規ポリマーブレンドは、二峰性分子量分布を有する吸収性ポリエステルポリマー及びコポリマーから作製される。好ましくは、ブレンド成分の1つは、二峰性分子量分布を有するポリ(L(−)−ラクチド)、ポリ(D(+)−ラクチド)、又はラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーのいずれかである。ラクチドリッチなポリマーは、約100モルパーセント〜約70モルパーセントの重合ラクチド及び約0モルパーセント〜約30モルパーセントの重合グリコリドを含む。他のブレンド成分は、吸収性ポリマーであるポリ(p−ジオキサノン)である。ポリ(p−ジオキサノン)は、単峰性又は二峰性分子量分布を有し得る。ポリ(p−ジオキサノン)が二峰性分子量分布を有する場合、ラクチド系ポリマーは、単峰性分子量分布を有してよい。
【0058】
ラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーの場合、ラクチドは、実質的にL(−)−ラクチド又はD(+)−ラクチドのいずれかであり、具体的には、メソ−ラクチド又はラセミ−ラクチド(後者はL(−)−ラクチド及びD(+)−ラクチドの50/50ブレンドである)を避けることを理解されたい。更に、任意の比率のポリ(L(−)−ラクチド)及びポリ(D(+)−ラクチド)で作製されるステレオコンプレックスを使用することができ、高い強度又は高い弾性率が必要な場合、50/50混合物が特に有利であることが理解される。更に、ラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーは、任意の比率のポリ(L(−)−ラクチド−コ−グリコリド)とポリ(D(+)−ラクチド−コ−グリコリド)とのステレオコンプレックスであってもよく、この場合も、50/50混合物が特に有利である。
【0059】
ラクチド系ポリマー成分が事実上二峰性であってもよく、又はp−ジオキサノン系ポリマー成分が事実上二峰性であってもよく、又はラクチド系及びp−ジオキサノン系成分の両方が、事実上二峰性であってもよい。ここで、第1の成分、具体的には、二峰性分子量を有するものについて考える。この第1の成分は、ポリ(L(−)−ラクチド)、ポリ(D(+)−ラクチド)、ポリ(L(−)−ラクチド)/ポリ(D(+)−ラクチド)ステレオコンプレックスで作製される二峰性分子量ブレンドであってよく、又はラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーは、約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、第1の量のポリラクチド又はラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーと、約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、第2の量のポリラクチド又はラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーと、を含む二峰性ポリマー組成物から作製してよい。第1の分子量分布の第2の分子量分布に対する重量平均分子量比は、少なくとも約2:1であり、第1及び第2の量の吸収性ポリマーの実質的に均質なブレンドは、約60/40〜95/5重量/重量パーセントの比で形成されている。
【0060】
単峰性分子量分布の第1の成分の場合、それは、約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、ポリ(L(−)−ラクチド)、ポリ(D(+)−ラクチド)、ポリ(L(−)−ラクチド)/ポリ(D(+)−ラクチド)ステレオコンプレックス、又はラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーで構成され得る。
【0061】
第1の二峰性分子量ブレンド成分[ポリ(L(−)−ラクチド)、ポリ(D(+)−ラクチド)、ポリ(L(−)−ラクチド)/ポリ(D(+)−ラクチド)ステレオコンプレックス、ラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリ(L(−)−ラクチド−コ−グリコリド)及びポリ(D(+)−ラクチド−コ−グリコリド)のステレオコンプレックス]は、従来の方法で製造される。好ましい製造方法は、以下の通りである。この方法における第1の工程は、ラクチドのグリコリドに対するモル比100/0〜70/30、モノマーの反応開始剤に対する比約400:1〜約2,000:1で、適切なラクチドモノマー[L(−)又はD(+)等]及びグリコリドモノマーの開環重合(ROP)を実施することである。次の工程は、ラクチドのグリコリドに対するモル比100/0〜70/30、モノマーの反応開始剤に対する比約100:1〜約400:1で、適切なラクチドモノマー[L(−)又はD(+)等]及びグリコリドモノマーのROPを実施することである。最後の工程は、溶媒又は溶融ブレンド技術のいずれかを用いることによって第1の成分と第2の成分とをブレンドすることであり、溶融ブレンド技術が好ましい。
【0062】
第2のブレンド成分であるポリ(p−ジオキサノン)は、事実上単峰性又は二峰性の分子量分布であり得る。後者の場合、二峰性分子量分布を有する第2のブレンド成分は、約50,000ダルトン〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、第1の量のポリ(p−ジオキサノン)ポリマーと、約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、第2の量のポリ(p−ジオキサノン)ポリマーとを含み得る。第1の分子量分布の第2の分子量分布に対する重量平均分子量比は、少なくとも約2:1である。該第1及び第2の量の吸収性ポリマーの実質的に均質なブレンドは、約60/40〜95/5重量/重量パーセントの比で形成されている。
【0063】
本発明の新規ポリマーブレンドにおいて有用な第2の成分である単峰性ポリ(p−ジオキサノン)又はポリ(p−ジオキサノン)の二峰性分子量ブレンドは、従来の方法で製造される。例えば、第1の工程は、モノマーの反応開始剤に対する比約400:1〜約2,000:1でp−ジオキサノンのROPを実施して、より高分子量のポリ(p−ジオキサノン)を得ることである。次の、すなわち第2の工程は、モノマーの反応開始剤に対する比約100:1〜約400:1でp−ジオキサノンのROPを実施して、より低分子量のポリ(p−ジオキサノン)を得ることであるが、ただし、この第2のp−ジオキサノンポリマーの得られる重量平均分子量は、第1のp−ジオキサノンポリマーの重量平均分子量比の半分以下である。第3の、すなわち最後の工程は、溶媒又は溶融ブレンド技術のいずれかを用いることによって第1及び第2のp−ジオキサノンポリマー成分をブレンドすることであり、溶融ブレンド技術が好ましい。
【0064】
単一のブレンド手順で複数のブレンド成分を合わせることにより、必要な(溶液又は溶融)ブレンド操作の数を有利に低減できることを理解されたい。例えば、より高分子量のラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマー、より低分子量のラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマー、より高分子量のポリ(p−ジオキサノン)、及びより低分子量のポリ(p−ジオキサノン)を、単一の溶融ブレンド操作で合わせてよい。
【0065】
本発明の新規なポリマーブレンドは、従来の加工設備を使用して、様々な従来の方法で個々の成分から製造することができる。製造プロセスの例としては、開環及び重縮合型の化学反応、脱揮及び樹脂乾燥、タンブル乾燥機における乾式ブレンド、溶液ブレンド、押出溶融ブレンド、射出成形、熱アニーリング、並びにエチレンオキシド滅菌プロセスが挙げられる。後で混合物の溶融混合を行う乾式ブレンドへの代替は、ブレンドされる成分を押出成形機に供給する2つ以上のフィーダー、好ましくはロスインウェイトフィーダーの使用を含んでよく、この押出成形機は、単軸又は二軸の種類であってよい。あるいは、複数の押出成形機を使用して、例えば共押出にてブレンド成分の溶融物を供給してもよい。残留モノマーを除去するため及び樹脂を乾燥させるための樹脂成分又はブレンドの脱揮は、適切な温度スキーム又は流動床乾燥を用い、再度適切な温度スキームを用いて、真空タンブル乾燥を含む様々な手段によって実施することができる。
【0066】
本発明の目的のために、この種のブレンドは、様々な組成物を用いて同様に生成することができる。あるいは、正規分布の分子量のポリラクチド又はポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマーを、標準的な分子量及び標準的な正規分布の分子量のポリ(p−ジオキサノン)及びより低分子量及び標準的な正規分布の分子量のポリ(p−ジオキサノン)と合わせることによって本発明のブレンドを作製することができる。すなわち、全成分を乾燥混合し、次いで、単一の溶融ブレンドに供する。
【0067】
更に、二峰性分子量分布を有するラクチド/グリコリド[L/G]コポリマーを、標準的な分子量分布又は二峰性分子量分布のポリ(p−ジオキサノン)と合わせることによって、本発明の実施形態を作製することができる。これら変形例又は実施形態は、まず、別々の溶融ブレンド操作で二峰性成分を作製し、次いで、第2の溶融ブレンド操作で成分を合わせるか、又は全ての成分を単一の操作で合わせることによって、作製することができる。これは、本発明の二峰性ブレンドを作製する好ましい方法であり得る。
【0068】
本発明のブレンドは、熱プロセスにより作製してもよい。本発明のポリマーブレンドを生産するために利用できる従来の熱加工の例としては、2軸ブレンド又は単軸押出成形、共押出、同時ベント式スクリューの真空脱揮を伴う2軸ブレンド、熱脱揮を用いる真空タンブル乾燥、高温での溶媒抽出によるモノマーの除去、及び樹脂アニーリングを含むことができる、押出成形機における溶融ブレンドが挙げられる。
【0069】
ポリマー成分、及び本発明のブレンドは、ペレット化、造粒、及び粉砕等の従来の方法によってサイズ調整され得る。
【0070】
本発明の更なる実施形態は、適切にサイズ調整されたブレンド成分の粒子を射出成形機のホッパーに直接供給することである。粒径は、実験で容易に求めることができる。粒子が円筒形である場合、約5〜20mgの平均ペレット重量を提供する、0.152〜0.229センチメートル(0.060〜0.090インチ)の直径が適切であり得る。好適な粉砕材料(ground material)は、Cumberlandグラインダーの排出口で0.48cm(3/16”)の篩を使用して生産することができる。フィルム又は繊維押出等であるが、これらに限定されない他の加工手法にこの技術を適用し得ることは、当業者には明らかであろう。ポリマーブレンド成分の熱履歴の制限は、早期分解の可能性を避ける点で有利である。熱加工の更なる方法は、射出成形、圧縮成形、吹込み成形、吹込みフィルム、熱成形、フィルム押出、繊維押出、シート押出、異形押し出し、メルトブローン不織布押出、共押出、チューブ押出、発泡、回転成形、カレンダリング、及び押出成形等のプロセスを含むことができる。既に述べた通り、適切にサイズ調整されたブレンド成分の粒子は、これら熱加工手段を用いて溶融物中でブレンドされ得る。
【0071】
製造プロセス設備の他の例としては、例えば、容量が8リットル〜284リットル(2ガロン〜75ガロン)の範囲の化学反応器、28リットル〜566リットル(1立方フィート〜12立方フィート)の範囲のプロセス脱揮乾燥機、直径が約2.5センチメートル〜8センチメートル(約1インチ〜約3インチ)の単軸及び2軸押出成形機、並びにサイズが約7〜約40トンの範囲の射出成形機が挙げられる。
【0072】
必要に応じて、本発明のポリマーブレンドは、更なる従来の成分及び治療剤を含有し得る。成分、添加剤、又は剤は、抗菌特性、薬物の制御溶出、放射線混濁、及びオッセオインテグレーション(osseointegration)を含む更なる効果を本発明のポリマーブレンド及び医療機器に提供するために存在する。
【0073】
このような他の成分は、所望の効果又は特性を有効に提供するのに十分な量で存在する。典型的には、成分の量は、約0.1重量パーセント〜約20重量パーセント、より典型的には約1重量パーセント〜約10重量パーセント、好ましくは約2重量パーセント〜約5重量パーセントである。
【0074】
抗菌剤の例としは、5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノール(トリクロサンとしても知られている)等のポリクロロフェノキシフェノールが挙げられる。
【0075】
放射線混濁剤の例としては、硫酸バリウムが挙げられ、オッセオインテグレーション剤の例としては、リン酸三カルシウムが挙げられる。
【0076】
本発明のポリマーブレンドにおいて使用することができる様々な治療薬は、膨大である。広くは、本発明の医薬組成物を介して投与することができる治療剤としては、例えば、抗生物質及び抗ウイルス剤等の抗感染剤;鎮痛剤及び鎮痛剤の組み合わせ;食欲抑制剤;駆虫剤;抗関節炎剤;抗喘息剤;癒着防止剤(adhesion preventatives);抗けいれん剤;抗うつ剤;抗利尿剤;止瀉剤;抗ヒスタミン剤;抗炎症剤;抗偏頭痛製剤;避妊薬;制嘔吐剤;抗新生物剤;抗パーキンソン薬;鎮痒剤;抗精神病剤;解熱剤、鎮痙剤;抗コリン作用剤;交感神経刺激剤;キサンチン誘導体;ピンドロール及び抗不整脈剤等のカルシウムチャネル遮断剤及びβ遮断剤を含む循環器用製剤;降圧剤;利尿剤;全身冠血管、末梢、及び大脳を含む血管拡張剤;中枢神経系刺激剤;鬱血除去剤を含む咳及び感冒製剤;エストラジオール、及びコルチコステロイドを含む他のステロイド等のホルモン;催眠剤;免疫抑制剤;筋弛緩剤;副交感神経遮断剤;精神刺激剤;鎮静剤;精神安定剤;天然由来の又は遺伝子操作されたタンパク質、多糖類、糖タンパク質、又はリポタンパク質;オリゴヌクレオチド、抗体、抗原、コリン作動剤、化学療法剤、止血剤、血栓溶解剤、放射性医薬品、及び細胞増殖抑制剤(cystostatic agent)が挙げられるが、これらに限定されない。治療上有効な投与量は、インビトロ又はインビボにおける方法によって決定し得る。各特定の添加剤について、必要とされる最適な投与量を決定するために、個々の決定を行ってよい。所望の結果を得るための有効な投与量レベルの決定は、当業者の範囲内である。また、添加剤の放出速度は、治療される治療状態に応じて、有利なプロファイルを決定するために当業者の範囲内で変動し得る。
【0077】
好適なガラス又はセラミックとしては、ヒドロキシアパタイト、置換アパタイト、リン酸テトラカルシウム、アルファ型及びベータ型のリン酸三カルシウム、リン酸オクタカルシウム、ブラッシュ石、モネタイト、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、リン酸塩ガラス等のリン酸塩、カルシウム及びマグネシウムの炭酸塩、硫酸塩、及び酸化物、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
本発明のポリマーブレンド中に含まれ得る好適なポリマーとしては、合成又は天然ポリマーであり得る好適な生体適合性、生分解性ポリマーが挙げられる。好適な合成生体適合性、生分解性ポリマーとしては、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、シュウ酸ポリアルキレン、ポリアミド、チロシン由来ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含有するポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、ポリジグリコレート(polydiglycolate)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーが挙げられる。追加の好適なポリマーを含むことは、製作される機器における寸法安定性の獲得に依存することを理解されたい。
【0079】
本発明の目的のために、上記任意の脂肪族ポリエステルとしては、ラクチドのホモポリマー及びコポリマー(乳酸、D−、L−、及びメソラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、及びこれらのブレンドが挙げられるがこれらに限定されない。
【0080】
好適な天然ポリマーとしては、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、ラミニン、ゼラチン、ケラチン、コンドロイチン硫酸、及び脱細胞化組織が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
好ましくはないが、本発明の医療機器は、本発明の吸収性ポリマーブレンドに加えて非吸収性ポリマーを含有してもよい。このような機器の例としては、メッシュ、縫合糸及びステープルを挙げることができるが、これらに限定されず、この場合、吸収性及び非吸収性ポリマーの両方の特性が有利である。
【0082】
好適な非吸収性ポリマーとしては、アクリル;ポリアミド−イミド(PAI);ポリアリールエーテルケトン(PEEK);ポリカーボネート;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、及びポリブテン−1(PB−1)等の熱可塑性ポリオレフィン;
ポリイソブチレン(PIB)、エチレンプロピレンゴム(EPR)等のポリオレフィンエラストマー(POE);ポリブチレンテレフタレート(PBT);ポリエチレンテレフタレート(PET);ナイロン6及びナイロン66等のポリアミド(PA);ポリフッ化ビニリデン(PVDF);ポリフッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF/HFP);ポリメチルメタクリレート(PMMA)、並びにこれらの組み合わせ、並びに等価物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本発明のポリマーブレンドから成形され得る医療機器の例は、図1に示すような組織タック10である。図1は、本発明を例証する埋め込み型ステープル又はタックの図面であり、小さな断面積を有する機器を示す。この機器の材料は、タックをその意図する用途について適切に機能させた場合、本質的に剛性でなければならない。
【0084】
タック10は、近位端22において接続ストラップ部材30によって接続されている2つの脚部材20を有していることが分かる。遠位端26は、それから遠位側に延びるかかり部材50を有していることが分かる。かかり部材50は、遠位組織穿刺点60、及び点72を有する近位かかり70を有する。図2を参照すると、かかり部材50は、寸法Yとして示す長さ74を有していることが分かる。点60は、寸法Xとして示す距離76だけ離間していることが分かる。
【0085】
本発明のポリマーブレンドから作製され得る好適なタックは、参照により全文が本明細書に組み込まれる、同一出願人による米国特許出願第12/464,143号、同第12/464,151号、同第12/464,165号、及び同第12/464,177号にも開示及び記載されている。
【0086】
本発明の新規ポリマーブレンドから成形される物品の寸法安定性を評価した。評価のために選択した物品は、ヘルニア修復用の5mmの腹腔鏡機器であり、脚部、及び前記脚部の末端に組織を保持する手段を備えるステープル又はストラップの形態であった。この機器は、図2に図示されている。物品は、幾何学的に複雑であり、アニーリング工程後に従来のエチレンオキシド滅菌法を用いて滅菌された。この機器を用いて、腹腔鏡及び開腹手技において補綴メッシュを軟組織に固定した。
【0087】
図1に記載の装置について、先端間(tip-to-tip)距離は限界寸法である。図2を参照されたい。図2は、該機器の限界寸法を示す、図1の機器の図面である。これらの寸法は、寸法安定性の欠如により変化した場合、機器の乏しい性能及び/又は故障につながり得る。図1に記載の物品について0.292センチメートル(0.115インチ)未満の先端間距離は、容認可能であるとされたが、0.292センチメートル(0.115インチ)以上の先端間距離は、許容できないとされ、「故障モード1」又は「fm1」として示された。同様に、図1に示す物品のかかり部材の長さも、限界寸法であると考えられた。0.354センチメートル(0.136インチ)以下のかかり長さは、許容できないと考えられ、「故障モード2」又は「fm2」として示された。
【0088】
写真画像及び寸法は、Keyenceデジタル顕微鏡、モデルVHX−600を使用して倍率20倍で捕捉し得る。
【0089】
図3は、熱アニーリング後に許容できない反りを示す、本発明の範囲外のポリマー組成物から作製された、図1に示す設計に基づいて射出成形されたタックの写真である。
【0090】
図4は、熱アニーリング後に許容し得る反りを示す、本発明のポリマー組成物から作製された、図1に示す設計に基づいて射出成形されたタックの写真である。
【0091】
本発明のブレンドは、様々な溶融加工技術を用いて医療機器を製作するために用いることができることを理解されたい。上記実施例の一部に示す通り、射出成形は、適用可能な技術の1つである。更に、これら本発明のブレンドを利用して様々な設計を使用できることが理解される。
【0092】
生産された1つのこのような機器は、直径0.51センチメートル(0.20インチ)及び厚み0.13センチメートル(0.05インチ)の実質的にディスク状の末端を有する、長さ0.89センチメートル(0.35インチ)のダンベルの形態であった。2枚のディスク間の接続は、直径0.157センチメートル(0.062インチ)の実質的に円形の断面を有していた。図5は、このダンベル機器の機械製図を提供する。この設計を、対照としての85/15ラクチド/グリコリドコポリマー、及び本発明のポリマーブレンド、具体的には、10重量パーセントの二峰性ポリ(p−ジオキサノン)及び90重量パーセントの85/15(モル基準)二峰性ラクチド/グリコリドコポリマーの溶融ブレンドを用いて射出成形した。ポリ(p−ジオキサノン)は、80,000ダルトンの重量平均分子量を有する、90重量パーセントの樹脂と、10,000ダルトンの重量平均分子量を有する、10重量パーセントの樹脂とで構成されている。同様に、85/15ラクチド/グリコリドコポリマーは、90,000ダルトンの重量平均分子量を有する、90重量パーセントの樹脂と、10,000ダルトンの重量平均分子量を有する、10重量パーセントの樹脂とで構成されている。このブレンド組成物は、係属中の米国特許出願第12/887,995号の範囲外であることに留意すべきである。
【0093】
このように生産した物品を、それぞれ、60、70、及び80℃で8、4、及び4時間、拘束することなく熱アニールした。85/15ラクチド/グリコリドコポリマーから成形された機器は、このアニーリング工程後に実質的な収縮及び反りを示した。本発明のブレンドから成形された装置は、アニーリング後に実質的に収縮及び反りを有していなかった。
【0094】
本発明のブレンドの更なる実施形態は、ポリラクチドポリマー又はラクチド及びグリコリドのコポリマーである第1の吸収性ポリマータイプと、ポリ(p−ジオキサノン)である第2の吸収性ポリマータイプとを有し、前記第1の吸収性ポリマータイプ、又は第2の吸収性ポリマータイプ、又は前記第1の吸収性ポリマータイプ及び前記第2の吸収性ポリマータイプは、第1のポリマー成分及び第2のポリマー成分を含む。第1のポリマー成分は、第2のポリマー成分の重量平均分子量よりも高い重量平均分子量を有し、これら成分のうちの少なくとも一方は、カルボン酸基によって少なくとも部分的に末端封鎖されている。新規ポリマーブレンドは、インビボにおける分解及び破壊強度保持が操作された、寸法安定性を有する医療機器を製造するのに有用である。
【0095】
本発明の好ましい実施形態では、ポリマーブレンドが、全体に散在する紫色の着色剤又は色素を有しているので、手術野において射出成形部品を視認できる。この色素、D&CバイオレットNo.2は、ポリ(p−ジオキサノン)ホモポリマーの一部としてブレンドに導入される。あるいは、着色剤は、ラクチド系ポリマーの一部としてブレンドに導入してもよい。更に別の変形例では、色素は、溶融ブレンド又は乾式ブレンド工程中等、ポリマー成分をブレンドするときに添加してもよい。着色剤は、上記手法に加えて、様々な従来の方法で本発明のポリマー組成物に添加し得ることが当業者に明らかであろう。着色剤は、十分に有効な量、例えば、ポリマーブレンド又は医療機器の約0.01重量パーセント〜約0.3重量パーセントの、D&CバイオレットNo.2及びD&CブルーNo.6を含み得る。色が必要ないか又は望ましくない手術用途については、着色されていないポリ(p−ジオキサノン)ホモポリマーをブレンドで使用するので、手術用物品は、色を有しない。
【0096】
本発明のポリマーブレンドから作製される本発明の吸収性医療機器としては、従来の医療機器、特に、埋め込み型医療機器、例えば、ステープル、タック、クリップ、縫合糸、組織固定用機器、メッシュ固定用機器、吻合用機器、縫合糸及び骨アンカー、組織及び骨ネジ、骨プレート、プロステーシス、支持構造体、組織増強用機器、組織結紮用機器、パッチ、基材、メッシュ、再生医療スカフォールド、薬物送達用機器、及びステント等、並びに等価物が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0097】
以下の実施例は、本発明の原理及び実施を説明するものであるが、これらに限定されるものではない。以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を示すものであるが、それらは、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の十分な説明に寄与するものとして解釈されるべきである。
【0098】
(実施例1)
85/15ポリ(L(−)−ラクチド−コ−グリコリド):正規分布の分子量のポリマーの合成
撹拌手段を備える、好適な従来の57リットル(15ガロン)ステンレス鋼オイルジャケット付反応器に、43.778kgのL(−)−ラクチド及び6.222kgのグリコリドを、121.07gのドデカノール及び9.02mLの0.33Mオクタン酸第一錫トルエン溶液と共に添加した。反応器を密閉し、12RPMの回転速度で上向き方向に攪拌しながらパージサイクルを開始した。反応器を、27Pa(200mTorr)未満の圧力まで排気し、次いで、1気圧をわずかに超える圧力まで窒素ガスを導入した。このサイクルを数回繰り返して、確実に乾燥雰囲気とした。
【0099】
窒素の最終導入の終了時に、1気圧をわずかに超えるように圧力を調整した。油温がおよそ130℃に達するまで、容器を180℃/時間の速度で加熱した。モノマーが完全に溶融し、バッチ温度が110℃に達するまで、容器を130℃で保持した。この時点で、撹拌回転を下向き方向に切り替えた。バッチ温度が120℃に達したら、撹拌機の速度を7.5RPMに低下させ、およそ185℃の油温を用いて、およそ60℃/時間の加熱速度で、溶融塊が180℃に達するまで容器を加熱した。2.5時間の間、油温をおよそ185℃で維持した。
【0100】
反応時間の終了時に、撹拌機の速度を5RPMに低下させ、油温を190℃に上昇させ、続くアニーリングのために、ポリマーを容器から好適な容器に排出した。この容器を、105℃に設定した窒素アニーリング炉内におよそ6時間の間導入した。この工程中、炉内への窒素流を維持して、水分による分解を低減した。
【0101】
このアニーリングサイクルが完了したら、ポリマー容器を炉から取り出し、室温まで放冷した。ここで、結晶化したポリマーを容器から取り出し、袋に詰め、約−20℃に設定された冷凍庫に最低24時間入れた。ポリマーを冷凍庫から取り出し、サイジング用篩を備える従来のCumberland造粒機に入れて、およそ0.48センチメートル(3/16インチ)のサイズのポリマー顆粒を生成した。次いで、顆粒を篩にかけて、あらゆる「微粒子」を取り除き、次いで、計量した。粉砕されたポリマーの正味重量は39.46kgであり、次いで、これを85リットル(3平方フィート)の従来のPatterson−Kelleyタンブル乾燥機に入れた。
【0102】
乾燥機を密閉し、圧力を27Pa(200mTorr)未満まで低下させる。圧力が27Pa(200mTorr)を下回ったら、タンブラーの回転を8〜15RPMの回転速度で作動させ、バッチを10時間にわたって真空状態にした。10時間の真空状態の後、32時間の間、油温を120℃の温度に設定した。この加熱時間の終了時、回転及び高真空を維持しながら、少なくとも4時間の間、バッチを放冷した。容器を窒素で加圧することによってポリマーを乾燥機から取り出し、スライドゲートを開け、ポリマー顆粒を長期保管用の待機容器に下ろした。
【0103】
長期保管容器は、樹脂が真空下で保管されるように、気密であり、排気を可能にする弁を装備していた。樹脂の特性評価を行った。樹脂は、ヘキサフルオロイソプロパノール中で25℃及び約0.10g/dLの濃度で測定したとき、1.79dL/gの固有粘度を示した。10℃/分の昇温速度を用いる示差走査熱量測定(DSC)により、ガラス転移温度が59℃、溶融転移が150℃であることが明らかになり、溶融熱は約35J/gであった。核磁気共鳴(NMR)分析により、樹脂が、重合したL(−)−ラクチド及びグリコリドのランダムコポリマーであり、モル基準で約85パーセントの重合L(−)−ラクチド及び約15パーセントの重合グリコリドの組成を有することが確認された。
【0104】
(実施例2)
85/15ポリ(L(−)−ラクチド−コ−グリコリド):低分子量ポリマーの合成
撹拌手段を備える、好適な従来の8リットル(2ガロン)ステンレス鋼オイルジャケット付反応器に、5.253kgのL(−)−ラクチド及び0.747kgのグリコリドを、48.43gのドデカノール及び1.08mLの0.33Mオクタン酸第一錫トルエン溶液と共に添加した。反応器を密閉し、25RPMの回転速度で上向き方向に攪拌しながらパージサイクルを開始した。反応器を、27Pa(200mTorr)未満の圧力まで排気し、次いで、1気圧をわずかに超える圧力まで窒素ガスを導入した。このサイクルを数回繰り返して、確実に乾燥雰囲気とした。
【0105】
窒素の最終導入の終了時に、1気圧をわずかに超えるように圧力を調整した。油温がおよそ130℃に達するまで、容器を180℃/時間の速度で加熱した。モノマーが完全に溶融し、バッチ温度が110℃に達するまで、容器を130℃で保持した。この時点で、撹拌回転を下向き方向に切り替えた。バッチ温度が120℃に達したら、撹拌機の速度を20RPMに低下させ、およそ185℃の油温を用いて、およそ60℃/時間の加熱速度で、溶融塊が180℃に達するまで容器を加熱した。2.5時間の間、油温をおよそ185℃で維持した。
【0106】
反応時間の終了時に、撹拌機の速度を4RPMに低下させ、油温を190℃に上昇させ、続くアニーリングのために、ポリマーを容器から好適な容器(アルミニウムパイ皿)に排出した。実施例1に既に記載したのと同じ手法を用いて、アニーリング、乾燥、及び粉砕手順を実施した。
【0107】
得られた乾燥コポリマー85/15ポリ(L(−)−ラクチド−コ−グリコリド)樹脂は、10℃/分の昇温速度を用いてDSCによって測定したとき、54℃のガラス転移温度、152℃の融点、及び42J/gの溶融エンタルピーを有していた。樹脂は、41,000ダルトンの重量平均分子量を有しており、ヘキサフルオロイソプロパノール中で25℃、約0.10g/dLの濃度で測定したとき、0.83dL/gの固有粘度を示した。核磁気共鳴分析により、樹脂が、重合したL(−)−ラクチド及びグリコリドのランダムコポリマーであり、モル基準で約85パーセントの重合L(−)−ラクチド及び約15パーセントの重合グリコリドの組成を有することが確認された。
【0108】
(実施例3)
ポリ(p−ジオキサノン):標準分子量ポリマーの合成
撹拌手段を備える、好適な従来の246リットル(65ガロン)ステンレス鋼オイルジャケット付反応器に、164.211kgのp−ジオキサノンモノマー(PDO)を、509グラムのドデカノール、164グラムのD&CバイオレットNo.2染料、及び100グラムの0.33Mオクタン酸第一錫トルエン溶液と共に添加した。反応器を密閉し、12RPMの回転速度で上向き方向に攪拌しながらパージサイクルを開始した。反応器を、67Pa(500mTorr)未満の圧力まで真空排気し、続いて、窒素ガスを導入した。このサイクルを数回繰り返して、確実に乾燥雰囲気とした。
【0109】
窒素の最終導入の終了時に、1気圧をわずかに超えるように圧力を調整した。油温がおよそ100℃に達するまで、容器を180℃/時間の速度で加熱した。バッチ温度が50℃に達するまで、油温を100℃で保持し、この時点で、撹拌機の回転を下向き方向に変更した。バッチ温度が90℃に達したら、油温を95℃に再設定した。これら条件を維持し、容器からサンプルを取って、Brookfield粘度を測定した。ポリマーバッチ粘度が少なくとも110センチポアズに達したら、バッチの排出準備が整った。撹拌機の速度を5RPMに低下させ、容器排出口に予熱フィルターを取り付けた。ポリマーを窒素パージ下で容器から好適な容器内に排出し、覆い、80℃に設定した窒素硬化炉に移した。約96時間の間、固体状態重合を開始した。この工程中、炉内への窒素流を維持して、水分による分解を最小化した。
【0110】
この固体状態硬化サイクルが完了したら、ポリマー容器を炉から取り出し、室温まで放冷した。結晶化したポリマーを容器から取り出して、約−20℃に設定された冷凍庫に最低24時間入れた。次いで、ポリマーを冷凍庫から取り出して、ポリマー顆粒のサイズを約0.48cm(約3/16インチ)まで小さくするために、サイズ調整篩を装備したCumberland造粒機内で粉砕した。次いで、顆粒を篩にかけてあらゆる「微粒子」を除去し、次いで、566リットル(20平方フィート)従来のPatterson−Kelleyタンブル乾燥機に入れた。
【0111】
乾燥機を密閉し、圧力を2mmHg未満まで低下させた。一旦圧力が2mmHgを下回ったら、乾燥機の回転を6RPMの回転速度で作動させ、加熱なしで10時間維持した。10時間の真空時間後、油温を120℃/時の昇温速度で95℃に設定した。32時間の間、油温を95℃で維持した。この加熱時間の終了時、回転及び真空を維持しながら、少なくとも4時間の間、バッチを放冷した。容器を窒素で加圧することによってポリマーを乾燥機から取り出し、排出弁を開け、ポリマー顆粒を長期保管用の待機容器に下ろした。保管容器は、樹脂が真空下で保管されるように、気密であり、排気を可能にする弁を装備していた。
【0112】
樹脂の特性評価を行った。樹脂は、ヘキサフルオロイソプロパノール中で25℃及び約0.10g/dLの濃度で測定したとき、1.90dL/gの固有粘度を示した。10℃/分の昇温速度を用いる示差走査熱量測定(DSC)により、ガラス転移温度が約−8℃(摂氏マイナス8度)、溶融転移が約114℃であることが明らかになり、溶融熱は約88J/gであった。核磁気共鳴分析により、樹脂が、ホモポリマーポリ(p−ジオキサノン)であり、残留モノマー含有率が2パーセント未満であることが確認された。
【0113】
(実施例4)
A)二峰性分子量ポリ(p−ジオキサノン)の調製
他の箇所(米国特許第8,236,904 B2号)に記載されている手順に従って、二峰性分子量ポリマーブレンドを調製した。実施例1の85/15Lac/Glyコポリマー及びポリ(p−ジオキサノン)二峰性分子量ブレンドに基づく、新たな本発明のブレンド組成物の調製について、本明細書の実施例4に記載する。
【0114】
ポリ(p−ジオキサノン)二峰性分子量ブレンドは、80,000ダルトンの重量平均分子量を有する、70重量パーセントのポリ(p−ジオキサノン)と、24,000ダルトンの重量平均分子量を有する、30重量パーセントのポリ(p−ジオキサノン)ポリマーとを含有していた。この乾燥ペレットの形態の70/30ポリ(p−ジオキサノン)二峰性分子量ブレンドにおける熱量測定(DSC)データにより、ガラス転移温度が−5℃、融点が107℃、熱溶融62/J/gであることが明らかになり、これは、約50パーセントの結晶化度レベルに対応している。非等温及び等温静止条件下で、ポリ(p−ジオキサノン)ブレンドは、それぞれ、標準分子量及び低分子量の個々の単峰性ポリ(p−ジオキサノン)成分よりもはるかに速く結晶化した。
【0115】
B)単峰性ラクチド/グリコリドコポリマーと二峰性分子量ポリ(p−ジオキサノン)ブレンドとの乾式ブレンド
分離した(粉砕された)形態の適切な量の85/15ラクチド/グリコリドコポリマー及びポリ(p−ジオキサノン)二峰性分子量ポリマー成分を乾式ブレンドで合わせた。これら乾式ブレンドは、特定の用途及び外科的必要性に応じて、重量基準で生成される。本実施例では、実施例4Aに記載の二峰性分子量ポリ(p−ジオキサノン)ポリマー20重量パーセント、及び実施例1に記載のラクチド/グリコリドコポリマー80重量パーセントを、直後に記載する通り乾式ブレンドした。
【0116】
清浄な従来の85リットル(3立方フィート)のPatterson−Keller乾燥機に、実施例1の85/15ラクチド/グリコリドコポリマーの顆粒4.0kg、及び実施例4Aの70/30ポリ(p−ジオキサノン)二峰性分子量ブレンドのペレット1.0kgを添加した。乾燥機を密閉し、容器の圧力を27Pa(200MTorr)未満まで低下させた。回転を7.5RPMで開始し、最低1時間継続させた。次いで、乾式ブレンドを携帯式真空保存容器に排出し、溶融ブレンド工程の準備が整うまで、これら容器を真空下に置いた。
【0117】
C)単峰性ラクチド/グリコリドコポリマーと二峰性分子量ポリ(p−ジオキサノン)ブレンドとの溶融ブレンド
乾式ブレンドが生成され、少なくとも3日間真空状態にしたら、溶融ブレンド工程を開始した。従来のZSK−30二軸押出成形機に、残留モノマーを揮発させるための二重真空ポートを利用して、溶融ブレンド用に設計されたスクリューを取り付けた。スクリューの設計は、運搬、圧縮、混合、及び密封要素を含む、幾つかの異なる種類の要素を含んでいた。押出成形機に3つ穴ダイプレートを取り付け、40°F〜70°Fに設定した水温の冷水浴を、押出成形機の吐出口付近に置いた。ストランドペレタイザ及びペレット分級機を、水浴の端部に置いた。押出成形機の温度域を160℃〜180℃の温度に加熱し、真空冷却トラップを−20℃に設定した。プレコンディショニングしておいた乾式ブレンド顆粒を真空から取り出し、窒素パージ下で二軸供給ホッパーに入れた。押出成形機のスクリューを175〜225RPMの速度に設定し、フィーダーのスイッチを入れて、乾式ブレンドを押出成形機に供給した。
【0118】
ポリマーの溶融ブレンドを、供給が一定になるまで押出成形機を通じてパージし、その時点で、2つの真空ポートに真空を適用した。ポリマーブレンドの押出ストランドを、水浴を通じてストランドペレタイザに供給した。ペレタイザによって、ストランドを適切なサイズのペレットに切断した。直径1mm及び長さおよそ3mmのペレットで十分であることが見出された。次いで、ペレットを分級機に供給した。分級機により、通常ペレット当たり約10〜15mgの重量である所望のサイズに比べて、実質的に大きすぎる及び小さすぎるペレットを分離した。このプロセスは、ポリマー乾式ブレンド全体が、押出成形機において溶融ブレンドされ、実質的に均一なペレットが形成されるまで継続した。押出成形プロセス全体を通してサンプルを採取し、固有粘度、分子量、及び組成等のポリマー特性について測定した。溶融ブレンドプロセスが完了したら、ペレット化されたポリマーをポリエチレンバッグに入れ、計量し、−20℃未満の冷凍庫で保管して、残留モノマーが脱揮するのを待った。
【0119】
ポリマー溶融ブレンドを従来の85リットル(3立方フィート)のPatterson−Kelley乾燥機に入れ、これを真空下に置いた。乾燥機を密閉し、圧力を27Pa(200mTorr)未満まで低下させた。圧力が27Pa(200mTorr)を下回ったら、乾燥機の回転を10RPMの回転速度で作動させ、加熱なしで6時間維持した。6時間後、油温を120℃/時の昇温速度で85℃に設定した。12時間の間、油温を85℃で維持した。この加熱時間の終了時、回転及び真空を維持しながら、少なくとも4時間の間、バッチを放冷した。容器を窒素で加圧することによってポリマーの溶融ブレンドのペレットを乾燥機から取り出し、排出弁を開け、ポリマーペレットを長期保管用の待機容器に下ろした。保管容器は、本発明の樹脂ブレンドを真空下で保管できるように、気密であり、排気を可能にする弁を装備していた。
【0120】
本発明の樹脂ブレンドの特性評価を行った。得られた20重量パーセントのポリ(p−ジオキサノン)、80重量パーセントのラクチド/グリコリドコポリマー溶融ブレンド組成物は、6,600グラムの標準重量を用いて190℃で測定したとき、0.113g/10分のメルトフローインデックスを示した。示差走査熱量測定により、ガラス転移温度が約58℃であり、2つの溶融転移温度が約106℃及び148℃であることが明らかになった。1回目の昇温(昇温速度10℃/分)中に計算された熱溶融は、27.2J/gであった。
【0121】
(実施例5)
二峰性分子量ラクチド/グリコリドブレンドと単峰性ポリ(p−ジオキサノン)ホモポリマーとの乾式ブレンド
本実施例では、二峰性成分がポリ(p−ジオキサノン)成分ではなくL/Gコポリマーであったことを除いて、実施例4の手順に従って、一連の二峰性分子量ラクチド/グリコリド組成物を、実施例3に記載のポリ(p−ジオキサノン)ホモポリマーと乾式ブレンドした。乾式ブレンドは、2.5、5.0、7.5、10、及び20重量パーセントの最終ブレンド濃度で、単峰性の標準的な分子量のポリ(p−ジオキサノン)成分を用いて作製した。
【0122】
(実施例6)
二峰性分子量ラクチド/グリコリドブレンドと単峰性ポリ(p−ジオキサノン)ホモポリマーとの溶融ブレンド
実施例4Cに上記した方法に従って、ラクチド/グリコリド二峰性分子量ブレンド及び単峰性ポリ(p−ジオキサノン)ホモポリマーを含む様々な組成物の溶融ブレンドも作製した。以下の表2に概説するポリマー及び溶融ブレンドを、これら方法を用いて作製した。
【0123】
【表2】
【0124】
(実施例7)
本発明のブレンド組成物の結晶化動力学評価
示差走査熱量測定(DSC)を用いて、本発明のブレンド組成物の結晶化動力学を調べた。以下の方法/条件を用いた。
a)1回目の熱測定−5〜8ミリグラムの対象サンプルを、窒素パージを備えたDSCパン内で−60℃[摂氏マイナス60度]にクエンチし、次いで、10℃/分の一定加熱速度で走査を行った。
b)2回目の熱測定−次いで、185℃のDSCパン内にて溶融させ、次いで、−60℃に急速にクエンチ(−60℃/分)した対象サンプルを、5℃/分の一定の加熱速度で185℃に加熱した。
【0125】
対照及び本発明のブレンドのペレットに関して得られたDSC結果の要約を下の表3に示す。ペレットは、ほぼ最高レベルの結晶化度を発現させるのに十分な高温脱揮を受けた。これは「1回目の昇温」の結果に反映される。「2回目の昇温」の結果は、周知の通り、熱履歴が消去されているため、試験サンプルの固有の結晶化特性を反映する。
【0126】
【表3】
【0127】
2回目の昇温のΔH値(表3の最後の列)は、本発明のブレンドの結晶化が対照[20%のPDSホモポリマーを含む標準的な85/15Lac/Gly、サンプル7A]よりも速いことを示すことに留意すべきである。すなわち、本発明のブレンドのΔH値は、対照のサンプル7Aのわずか1.0J/gに対して3.3〜19.1J/gであった。
【0128】
更に、本発明のブレンド及び対照のサンプルをほぼ最適な熱加工条件に供して、それぞれの樹脂をその最高実用レベルまで結晶化させたとき、1回目の昇温測定から得られたΔH値(表3の5番目の列)から明らかである通り、本発明のブレンドは、対照よりもわずかに高い結晶化度レベルを達成した。
【0129】
驚くべきことに、本発明のブレンド7B(実施例4C)における二峰性PDS部分の存在は、表3における2回目の昇温のDSCデータによって示される通り、結晶化が困難な85/15Lac/Glyコポリマーの結晶化を促進することが観察された。明確化のために言うと、標準的な[単峰性分子量分布]85/15Lac/Glyと20重量パーセントの二峰性ポリ(p−ジオキサノン)とのブレンドから作製されたサンプル7Bは、対照であるサンプル7Aの1.0J/gの値と比べて4.5J/gのΔHを有していた。驚くべきことに、4.5J/gの溶融吸熱の大部分は、結晶化が困難な85/15L/G部分に由来していた。対照であるサンプル7Aは、20重量パーセントの単峰性ポリ(p−ジオキサノン)とブレンドされた標準的な[単峰性]85/15Lac/Glyコポリマーであった。
【0130】
本発明のブレンドの結晶化速度と成形部品の寸法安定性との相関を実験で確認した。本願でデータを更に提供する。
【0131】
(実施例8A)
対照ポリマー及びブレンド、並びに本発明の二峰性ブレンドのストラップ及びダンベルへの射出成形
射出成形は、プラスチック工業において周知のプロセスである。射出成形は、プラスチックを溶融させ、混合し、次いで、溶融樹脂を好適に成形された金型に射出することによって、様々な形状及びサイズの部品を生産するように設計されている。本発明の目的のために、2つの射出成形形状(ストラップ及びダンベル)について研究した。これら形状は、それぞれ図1及び5に示されている。樹脂が固化した後、一般に、部品を金型から排出し、そのプロセスを継続した。本発明の目的のために、従来の30トンの電気的に制御された射出成形機を使用した。実施例1、4、及び6のポリマー及びブレンドを、以下の方法で、射出成形機によって加工した。
【0132】
ポリマーを、窒素パージ下で、ホッパーから重力によって加熱バレルに供給し、溶融させた。このポリマーをスクリュー型プランジャーによってバレル中を前方に移動させ、最終的に、バレルの遠位端におけるスクリューの前方の加熱チャンバに移動させた。次いで、スクリューを並進運動にて前進させ、これにより、金型に接して据え付けられたノズルを通して溶融ポリマーを押し込み、ゲート及びランナーシステムを介して、特別に設計された金型キャビティに前記ポリマーを入れた。ポリマーを金型キャビティ内で部品に成形し、一定期間所与の温度で放冷した。次いで、部品を金型から取り出すか、又は排出し、ランナーから分離した。
【0133】
射出成形サイクルは、プロセス中の一連の事象全体からなっていた。金型を密閉したときに射出成形サイクルを開始し、次いで、溶融ポリマーを金型キャビティ内に射出した。キャビティが充填されたら、保持圧力を維持して、材料の収縮を補った。次に、スクリュー−プランジャーの向きを変え、後退させ、次の「ショット」をスクリューの前方に供給した。バレル内で次のショットを準備しながら、金型内の部品を十分な温度まで冷却し、金型を開放し、部品を排出した。金型の密閉と同時に次のサイクルを開始した。サイクルタイムは、約25秒間〜約75秒間の範囲であり、部品のサイズ及び材料の組成を含む多数の要因に基づいていた。
【0134】
(実施例8B)
成形部品のアニーリング
実施例8Aの物品を射出成形したら、次いで、アニーリングサイクルに供してポリマーの形態を完了させた。物品が歪まないように部品を水平面内で支持するアニーリング用固定具を使用して、実施例8Aの物品をアニールした。このアニーリング用固定具は、アニーリング中の高温における歪みに対する抵抗を支援することを意図したものであるが、寸法的に不安定な部品の反りは防止しない。実施例8Aの物品に用いたアニーリングサイクルは、60℃で8時間、70℃で4時間、次いで80℃で4時間の3つの工程で構成されていた。60℃の工程の目的は、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)相の結晶化温度に達する前に、ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)相を更に結晶化させることである。70℃の工程を開始して、サイクルの最終工程に達する前に、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)相を結晶化させる。最後に、80℃の工程は、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)相を更に結晶化させる。所与の装置及び所与の組成物について、特定の重要な性能特性を最適化するアニーリング条件を見出すことができることに留意すべきである。これら有利なアニーリング条件は、実験、アニーリング温度及びアニーリング時間の変更、並びに応答の測定を通して開発することができる。
【0135】
実施例8Aの射出部品をアニールしたら、それを実施例8Bのアニール部品として同定した。
【0136】
(実施例9)
アニールされたダンベルの熱量測定特性
[5〜8mgのサンプル重量を用いて、昇温速度10℃/分で]示差走査熱量測定(DSC)を用いて、多数のアニールされたダンベルに関する熱量測定データを得た。これらは、正規分布の分子量を有する実施例1の未処理85/15L/Gコポリマーに基づくサンプル[サンプルDB 9B];80重量パーセントの正規分布の分子量の85/15 L/Gコポリマーと、20重量パーセントの同様に正規分布の分子量のPDSとの対照ブレンド[DB 9A];80重量パーセントの正規分布の分子量の85/15L/Gコポリマーと、20重量パーセントの二峰性分子量分布のPDSとの本発明のブレンド[DB 9C];80〜97.5重量パーセントの二峰性分子量分布の85/15L/Gコポリマーと、2.5〜20重量パーセントの正規分布の分子量のPDSとの本発明のブレンド[それぞれ、サンプルDB 9D、DB 9E、DB 9F、DB 9G]を含んでいた。DSCの結果を以下の表4にまとめる。
【0137】
【表4】
【0138】
上記表4に示したDSC結果から、多数の結論が考えられる。PDSのガラス転移温度は、この成分を含有するブレンドで同定した。これは、相分離形態を示している。85/15L/GコポリマーとPDSとのブレンドに基づく物品において、溶融挙動により、重なり合ってはいるが、2つの溶融転移温度、Tm1及びTm2が観察された。これら溶融転移温度のうちの1つはPDSに対応し、1つはL/Gコポリマーに対応していた。PDSに基づく溶融吸熱は、102℃〜106℃の範囲であり、一方、L/Gに基づく溶融は、147℃〜150℃の範囲であった。これは、相分離形態を更に示すものである。溶融吸熱の重複性に起因する、複合溶融熱ΔHを表4の最後の列に報告する。溶融熱が部品の結晶化度レベルに比例することは、十分に確立されている。したがって、本発明者らは、ΔHmに従うことによって、結晶化レベルをモデル化することができる。
【0139】
表4に列挙したL/Gコポリマー及びPDSのブレンドに基づく樹脂から調製されたアニール処理済成形物品は全て、L/Gコポリマー単独[サンプルDB 9B]と比較したとき、より高いΔH値を示したことに留意されたい。これらより高いΔH値は、より高い結晶化度レベルが予測されることを示す。
【0140】
予想外なことに、80重量パーセントの正規分布の分子量の85/15L/Gコポリマーと20重量パーセントの二峰性分子量分布のPDSとの本発明のブレンドであるサンプルDB 9Cは、正規分布の対照サンプルDB 9Aが示すよりもはるかに高いΔH値を示すことが見出された。
【0141】
80重量パーセントの二峰性分子量分布の85/15L/Gコポリマーと20重量パーセントの正規分布の分子量のPDSとの本発明のブレンドに基づくサンプルDB 9Dも、予想外に、正規分布の対照サンプルDB 9Aが示すよりもはるかに高いΔH値を示した。これは、ブレンド成分のいずれかが二峰性分子量分布を有するとき、より高いΔH値が観察されることを示す。より高いΔH値の重要性は、より高い結晶化度値を有することの多数の利点に関連している。これは、より高い剛性及び強度等のより高い機械的特性に加えて、形成される物品のより優れた寸法安定性を含む。
【0142】
ここで、より低いレベルのPDSブレンド成分を含有するサンプルであるサンプルDB 9D、DB 9E、DB 9F、及びDB 9Gにおいて得られた結果に注目する。これら各ブレンドは、二峰性分子量分布を有する85/15L/Gコポリマーを用いて作製された。すなわち、38.3、31.2、29.0、及び29.2J/GのΔH値は、それぞれ、20、10、5、及び2.5重量パーセントのPDSブレンド成分レベルで得られた。これら値は全て、未処理の85/15のみ[サンプルDB 9B]について観察されたよりも高く、わずか2.5重量パーセントのPDSブレンド成分しか含まないサンプル[サンプルDB 9G]でさえも、20重量パーセントのPDSを含有する対照ブレンド[サンプルDB 9A]と同等のΔH値を示した(前者が、本発明の二峰性組成物に基づく場合)。わずか2.5重量パーセントのPDSしか含有しないブレンドが、20重量パーセントのPDSを含有するブレンドと同等のΔH値を有することは、かなり予想外である。ブレンド中のPDSの量を最小化することには利点がある。その利点としては、より剛性及び強度の高い物品の生産が挙げられる。該ブレンドから調製される物品の埋め込み後の機械的強度の保持も、より低いレベルのPDSブレンド成分により延長される。
【0143】
(実施例10)
対照ブレンド及び一連の本発明の二峰性ブレンド組成物から作製されたアニール処理済ダンベルの引っ張り特性
実施例8A及び8Bに記載した通り射出成形によって作製されたダンベルの形態のアニール処理済試験試料(具体的には、サンプルDB 9A、DB 9C、DB 9D、DB 9E、DB 9F、及びDB 9G)を、機械的特性に関して調べた。
【0144】
0.44kN(100lbs.)のロードセルを用い、従来の機械的試験機Instron Model 5544(Norwood,MA,USA)を利用して、アニール処理済ダンベルを試験した。機器は全て、試験時間において較正の範囲内であった。破砕するまで、試料に速度1.3cm/分(0.5インチ/分)の張力を負荷した。最大の力を試料の引っ張り強度として記録した。試験試料の力−伸長曲線の線形領域上に位置する2つの点をつなぐ線の勾配としてヤング率を計算した。下記の式を使用した。
E=(ΔF/A)/(ΔL/L
(式中、Eは、計算されるヤング率であり、ΔFは、選択した点において測定された力の変化であり、A0は、試料の初期断面積であり、ΔLは、選択した点におけるクロスヘッド変位の変化であり、L0は、試料のゲージ長である。)計算で考慮した初期断面積及びゲージ長は、それぞれ、1.83cm(2.83×10−3インチ)及び0.64センチメートル(0.25インチ)であった。データの要約を表5に示す。
【0145】
【表5】
【0146】
上記表5のデータは、同量のPDS(20%)について、二峰性ブレンドから作製されたアニール処理済ダンベルが、単峰性ポリマーであることを除いて同じ全体組成で作製された対照ブレンドよりも強度及び剛性が高いことを示す。これは、表4から明らかである通り(サンプルDB 9C及び9D)、本発明の二峰性ブレンドから作製されたアニール処理済ダンベルの結晶化度レベルが高いことに起因する可能性がある。
【0147】
また、上記表5のデータは、PDS含量が減少するとともに、本発明の二峰性ブレンドから作製されたダンベルの強度及び剛性が、次第に高くなることを示す。しかし、医療物品の寸法安定性が重要な要件である場合、PDSのレベルを制限なく低下させることはできないことが見出された。
【0148】
(実施例11)
寸法安定性
ストラップの形態の実施例8A及び8Bの成形物品[即ち、アニーリング前及び後の成形物品](別名:タック又はステープル;図1及び2を参照)を、寸法安定性について試験した。アニーリング前及びアニーリング後に、成形物品の寸法を測定し、更に、写真画像を撮影した[図6図9を参照]。寸法が正確に一致することは期待しないが、許容できないレベルの歪みが存在することは明らかである。場合によっては、過剰の歪みにより、機能性が低下する。
【0149】
ストラップの形態の実施例8A及び8Bの試験物品は、幾何学的に複雑であり、多数の限界寸法を有する。例えば、成形物品の脚が過剰に歪むと、機器が組織を貫通したり保持したりする能力が低下する。同様に、成形物品のかかりが著しく収縮した場合、組織を保持する能力が低下するため、機能性が低下する。全ての設計は、それ自体の限界寸法を有する。実施例8A及び8Bのストラップの設計は、寸法安定性に関する挑戦的な機器の代表であると考えられ、これは一つには、幾何学的に複雑であるためであると考えられる。具体的には、この微細な部品サイズは、射出成形中に分子配向を増大させる傾向があり、その結果、アニーリング、及び/又は滅菌、及び/又は保管において見られる高温において、排出された部品[すなわち、金型キャビティから取り出した後の物品]の歪みの推進力が増大する。部品を「合格/不合格」方式で評価及び特性評価した。成形物品の性質は、全体的な反りの影響に基づき、過剰な歪みが明らかではない場合、その物品は合格であるとみなす。同様に、過剰な歪みが明らかである場合、部品は不合格であるとする。本来、射出成形物品は全て、成形後にある程度の残留応力を有するので、耐えられるレベルの歪みを示す物品は、寸法安定性試験に合格したものとする。実施例8A及び8Bの物品について、先端間(tip-to-tip)距離は限界寸法である。図1を参照されたい。
【0150】
図2は、機器の限界寸法を示す、図1の機器の図面である。これらの寸法は、寸法安定性の欠如により変化した場合、機器の乏しい性能及び/又は故障につながり得る。実施例8A及び8Bのストラップ物品については、0.292センチメートル(0.115インチ)未満の先端間距離は、許容し得るとしたが、0.292センチメートル(0.115インチ)以上の先端間距離は、許容できないとし、「故障モード1」又は「fm1」として示した。同様に、実施例8A及び8Bのストラップのかかり部材の長さも、限界寸法であると考えた。0.345センチメートル(0.136インチ)以下のかかり長さは、許容できないとみなし、「故障モード2」又は「fm2」として示した。写真画像及び寸法は、Keyenceデジタル顕微鏡モデルVHX−600を使用して倍率20倍で撮像した。試験結果の概要を下の表6に示す。
【0151】
【表6】
【0152】
上記表6では、実施例8Bのアニール処理済ストラップの熱量測定特性が、寸法安定性試験の結果と共に提示されている。熱量測定データは、本願で前述したDSC(1回目の昇温)試験の結果であった。「1回目の昇温」DSC測定値を用いて、アニール処理済ストラップの溶融熱ΔHm(J/g)を計算した[実施例8Bを参照]。これら値は、試験物品中に存在する相対的な結晶化度レベルと正比例する。
【0153】
表6に示す物品は、ブレンド成分が単峰性であるブレンドに基づくアニール処理済ストラップ[STR 11−1];単峰性コポリマーである実施例1のラクチド/グリコリドコポリマーのみに基づくアニール処理済ストラップ[STR 11−2];及び二峰性ブレンド成分に基づく2群のアニール処理済ストラップ試験物品である。一方の場合、アニール処理済ストラップは、ラクチド系ブレンド成分が二峰性であるブレンドに基づいており、少量ブレンド成分であるポリ(p−ジオキサノン)のレベルは、2.5、5、又は10重量パーセントであった。他方の場合、アニール処理済ストラップは、ポリ(p−ジオキサノン)ブレンド成分が二峰性であるブレンドに基づいており;少量ブレンド成分である二峰性ポリ(p−ジオキサノン)のレベルは、5、10、又は20重量パーセントであった。
【0154】
85/15ラクチド/グリコリド(単峰性)コポリマーに基づく実施例STR 11−1のストラップ物品(実施例STR 11−1のストラップ物品は、対照群−対照1としての役割を果たした)の実験により、物品はアニーリング後に結晶化度を示すが、成形部品は、このプロセス中に形状を保持できなかったことが明らかになった。すなわち、これらは寸法的に不安定であり、著しい歪みが観察された。
【0155】
実施例STR 11−2の射出成形ストラップは、80%の(単峰性)85/15L/Gコポリマーと20%の(単峰性)PDSとの先行技術のブレンドに基づいており、第2の対照群−対照2を表す。予想通り、これら物品は、寸法安定性を有した。寸法安定性は、20重量パーセントの(単峰性)ポリ(p−ジオキサノン)の存在によってもたらされる。実施例STR 11−2のアニール処理済ストラップは、33.6J/gのΔHmを示し、これは、著しいレベルの結晶化度を示す。しかし、(単峰性)ポリ(p−ジオキサノン)ブレンド成分の存在は、物品の剛性を低下させる。ブレンド中に存在するポリ(p−ジオキサノン)の量を最少化することにより、特定の用途において有利な、より剛性の高い物品が得られる。しかし、超精密な成形物品において寸法安定性を実現するためには、最低約12.4重量パーセントのポリ(p−ジオキサノン)が必要であることが示されている。
【0156】
実施例STR 11−3〜STR 11−5の射出成形ストラップは、ラクチド系ブレンド成分が二峰性であるブレンドに基づく。具体的には、これらは、単峰性PDSとブレンドされた二峰性85/15L/Gコポリマーから作製され、前者のポリマーは、それぞれ、2.5、5、及び10重量パーセントで存在する。実施例STR 11−5の物品は、寸法安定性を示し、これは、PDSが10重量パーセントのレベルで存在する場合に対応している。アニール処理済射出成形ダンベルにおいて得られた結果をまとめた表4の結晶化データに基づいて、80%の二峰性85/15L/Gコポリマー及び20% PDSのブレンドに基づく物品は、寸法的に安定であると予測される。なお、(a)未処理単峰性85/15L/Gコポリマー、(b)80%の単峰性85/15L/Gコポリマー及び20%の単峰性PDSに基づくブレンド、並びに(c)80%の二峰性85/15L/Gコポリマー及び20%の単峰性PDSに基づくブレンドのΔH値は、それぞれ、26.5、28.9、及び38.3J/gであった。明らかに、単峰性85/15L/Gコポリマーブレンド成分を二峰性85/15L/Gコポリマー成分に置換することにより、ΔHが非常に大きく増大した(9.4J/g、32%の増大)。なお、実施例STR 11−5のアニール処理済ストラップは,わずか10重量パーセントの(単峰性)PDSを用いて作製されたが、2倍の量の20パーセントの(単峰性)PDSブレンド成分を用いて作製された対照2、実施例STR 11−2が示した値33.6に近い32.1J/gのΔHmを示した。
【0157】
実施例STR 11−6〜STR 11−8のアニール処理済射出成形ストラップは、ポリ(p−ジオキサノン)ブレンド成分が二峰性であるブレンドに由来するストラップに基づいていた。具体的には、これらは、二峰性PDSとブレンドされた単峰性85/15 L/Gコポリマーから作製され、前者のポリマーは、それぞれ、5、10、及び20重量パーセントで存在していた。実施例STR 11−8の物品は、寸法安定性を示し、これは、PDSが20重量パーセントのレベルで存在する場合に対応している。この実施例のΔH35.4J/gは、対照物品である実施例STR 11−2が示した値である33.6J/gを上回っていた。5及び10重量パーセントの二峰性PDSを用いて作製された対応するストラップは、表6に記す通り寸法安定性を示さなかった。これら両方の場合では、それぞれ、27.1J/g及び28.5J/gとΔHm値が低いことから明らかであるように、結晶化度のレベルがより低かった。寸法安定性は、物品のΔH(又は結晶化度)に依存することが見出され、アニール処理済物品が約30J/gを超えるΔHmを示した場合、該物品は、寸法的に安定である傾向を有していた。
【0158】
寸法安定性又は不安定性の更なる証拠は、10又は20重量パーセントのポリ(p−ジオキサノン)ブレンド成分を有する実施例4Cのポリマー組成物から作製された射出成形ストラップが示されている、図6図9の写真に提示されている。図6は、10重量パーセントのポリ(p−ジオキサノン)を有する実施例4Cのポリマー組成物から作製された、アニーリング前のサンプルSTR 11−7の射出成形タックの写真であり、図7は、10重量パーセントのポリ(p−ジオキサノン)を有する実施例4Cのポリマー組成物から作製された、アニーリング後のサンプルSTR 11−7の射出成形タックの写真である。この射出成形タックは、アニーリング後、許容できない反りを示す。
【0159】
図8は、20重量パーセントのポリ(p−ジオキサノン)を有する実施例4Cのポリマー組成物から作製された、アニーリング前のサンプルSTR 11−8の射出成形タックの写真であり、図9は、20重量パーセントのポリ(p−ジオキサノン)を有する実施例4Cのポリマー組成物から作製された、アニーリング後のサンプルTR 11−8の射出成形タックの写真である。この射出成形タックは、アニーリング後、優れた寸法安定性及び許容し得るレベルの反りを示す。
【0160】
表6に提示したデータに戻って、実施例11−2〜11−9のアニール処理済ストラップの場合、2つの別個のガラス転移現象及び2つの別個の溶融吸熱が観察されたことが分かる。これらは、ポリ(p−ジオキサノン)[PDS]ブレンド成分及びラクチド系ブレンド成分に対応していた。2つのガラス転移温度の観察は、成分の不混和性の証拠として一般に受け入れられている。ポリ(p−ジオキサノン)に基づくガラス転移温度は全て、約−8℃〜約−13℃であったが、ラクチドリッチ系ブレンド成分に関連するガラス転移温度は、約53℃〜約58℃であった。
【0161】
表6に示す様々なブレンドから作製されたアニール処理済射出成形物品では、2つの融点が観察された。2つの融点の観察は、各ブレンド成分が半結晶性である証拠である。ポリ(p−ジオキサノン)に基づく溶融温度は全て、102℃〜105℃であったが、ラクチドリッチ系ブレンド成分に関連する溶融温度は、146℃〜149℃であると観察された。
【0162】
本願の発明の概念は、様々な方法で実施できると考えられる。更なる実施の例を以下に提供する。実施例12〜14は、ケースI、ケースII及びケースIIIの3つの実施分類を支持する。
【0163】
ケースIは、第1の吸収性ポリマータイプが、より高分子量のラクチドリッチなL/Gコポリマーと、より低分子量のラクチドリッチなL/Gオリゴマーとの混合物で構成されている状況を指す。より高分子量及びより低分子量の結晶化可能なポリラクチドホモポリマーの混合物を、本願の他の箇所に記載した通り、この第1の吸収性ポリマータイプのために使用できることに留意する。ケースIでは、第2の吸収性ポリマータイプは、単峰性ポリ(p−ジオキサノン)である。
【0164】
ケースIIは、第1の吸収性ポリマータイプが、単峰性のラクチドリッチなL/Gコポリマー(又は結晶化可能なポリラクチドホモポリマー)で構成され、第2の吸収性ポリマータイプが、より高分子量及びより低分子量のポリ(p−ジオキサノン)の混合物で構成されている状況を指す。
【0165】
ケースIIIは、第1の吸収性ポリマータイプが、より高分子量のラクチドリッチなL/Gコポリマー(又は結晶化可能なポリラクチドホモポリマー)及びより低分子量のラクチドリッチなL/Gコポリマーの混合物で構成され、第2の吸収性ポリマータイプが、より高分子量及びより低分子量のポリ(p−ジオキサノン)の混合物で構成されている状況を指す。
【0166】
本明細書に記載する実施形態を下の表7にまとめることができる。
【0167】
【表7】
【0168】
ケースI(二峰性分子量分布を有するラクチド/グリコリドコポリマー成分)
ラクチド/グリコリドコポリマーブレンド成分を、ラクチド/グリコリドコポリマー及びより低分子量のラクチド/グリコリドコポリマーの混合物に置換し得ることを理解されたい。特に有用なのは、重量平均分子量が2倍以上異なるラクチド/グリコリドコポリマー混合物である。更に、より低分子量のラクチド/グリコリドコポリマー成分の重量平均分子量は、少なくとも10,000ダルトンでなければならない。特に有利なのは、より低分子量のラクチド/グリコリドコポリマー成分が、本発明のブレンド中に存在する全ラクチド/グリコリドコポリマーの5〜40重量パーセントを占めるときであると理解されたい。
【0169】
以下の実施例は、本発明の原理及び実施を説明するものであるが、これらに限定されるものではない。以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を示すものであるが、本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきではなく、本発明の十分な説明に寄与するものとして解釈されるべきである。
【0170】
(実施例12)
ケースI(二峰性分子量分布を有するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)成分)
80,000ダルトンの重量平均分子量を有するラクチド/グリコリドコポリマーのペレット又は粉砕材料65キログラムを、30,000ダルトンの重量平均分子量を有するラクチド/グリコリドコポリマーのペレット又は粉砕材料16キログラムと乾燥混合する。この混合物を配合すると、ラクチド/グリコリドコポリマーの二峰性ブレンドが得られる。このブレンドを、更に、ポリ(p−ジオキサノン)が最終ブレンドの約20重量パーセントを占めるように、およそ72,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(p−ジオキサノン)と配合する。
【0171】
あるいは、原材料が、80,000ダルトンの重量平均分子量を有するラクチド/グリコリドコポリマー64キログラム、30,000ダルトンの重量平均分子量を有するラクチド/グリコリドコポリマー16キログラム、及びおよそ72,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(p−ジオキサノン)20キログラムに基づく、単一の溶融配合を実施してもよい。したがって、ポリ(p−ジオキサノン)の量は、最終ブレンドの約20重量パーセントを占め、ラクチド/グリコリドコポリマーは、より高分子量のラクチド/グリコリドコポリマーの分子量の、より低分子量のラクチド/グリコリドコポリマーの分子量に対する比が(64/16=)4である二峰性ブレンドを用いて作製される。
【0172】
組成が異なる類似のブレンドを同様の方法で作製できることが当業者には明らかなはずである。
【0173】
ケースII(二峰性分子量分布を有するポリ(p−ジオキサノン)成分)
更に、ポリ(p−ジオキサノン)をポリ(p−ジオキサノン)とより低分子量のポリ(p−ジオキサノン)との混合物に置換してよいことが理解される。特に有用なのは、重量平均分子量が2倍以上異なるポリ(p−ジオキサノン)混合物である。更に、より低分子量のポリ(p−ジオキサノン)成分の重量平均分子量は、少なくとも10,000ダルトンでなければならない。特に有利なのは、より低分子量のポリ(p−ジオキサノン)成分が、本発明のブレンド中に存在する全ポリ(p−ジオキサノン)の5〜40重量パーセントを占めるときであると理解されたい。
【0174】
(実施例13)
ケースII(二峰性分子量分布を有するポリ(p−ジオキサノン)成分)
75,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(p−ジオキサノン)のペレット又は粉砕材料14キログラムを、25,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(p−ジオキサノン)のペレット又は粉砕材料4キログラムと乾燥混合する。この混合物を配合すると、ポリ(p−ジオキサノン)の二峰性ブレンドが得られる。このブレンドを更に、ポリ(p−ジオキサノン)が最終ブレンドの約18重量パーセントを占めるように、82,000ダルトンの重量平均分子量を有するラクチド/グリコリドコポリマーと配合する。
【0175】
あるいは、原材料が、82,000ダルトンの重量平均分子量を有するラクチド/グリコリドコポリマー82キログラム、75,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(p−ジオキサノン)14キログラム、及びおよそ25,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(p−ジオキサノン)4キログラムに基づく、単一の溶融配合を実施してもよい。
【0176】
組成が異なる類似のブレンドを同様の方法で作製できることが当業者には明らかなはずである。
【0177】
ケースIII(両成分が二峰性分子量分布を有する)
ラクチド/グリコリドコポリマーブレンド成分をラクチド/グリコリドコポリマーとより低分子量のラクチド/グリコリドコポリマーとの混合物に置換してもよいこと、及びポリ(p−ジオキサノン)をポリ(p−ジオキサノン)とより低分子量のポリ(p−ジオキサノン)との混合物に置換してもよいことを理解されたい。特に有用なのは、重量平均分子量が2倍以上異なるラクチド/グリコリドコポリマー混合物である。更に、より低分子量のラクチド/グリコリドコポリマー成分の重量平均分子量は、少なくとも10,000ダルトンでなければならない。特に有利なのは、より低分子量のラクチド/グリコリドコポリマー成分が、本発明のブレンド中に存在する全ラクチド/グリコリドコポリマーの5〜40重量パーセントを占めるときであると理解されたい。同様に、特に有用なのは、重量平均分子量が2倍以上異なるポリ(p−ジオキサノン)混合物である。更に、より低分子量のポリ(p−ジオキサノン)成分の重量平均分子量は、少なくとも10,000ダルトンでなければならない。特に有利なのは、より低分子量のポリ(p−ジオキサノン)成分が、本発明のブレンド中に存在する全ポリ(p−ジオキサノン)の5〜40重量パーセントを占めるときであると理解されたい。
【0178】
(実施例14)
ケースIII(両成分が二峰性分子量分布を有する)
90,000ダルトンの重量平均分子量を有するラクチド/グリコリドコポリマーのペレット又は粉砕材料、合計77.4キログラムを、10,000ダルトンの重量平均分子量を有するラクチド/グリコリドコポリマーのペレット又は粉砕材料8.6キログラムと乾燥混合する。この混合物を配合すると、ラクチド/グリコリドコポリマーの二峰性ブレンドが得られる。85,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(p−ジオキサノン)のペレット又は粉砕材料、合計12.6キログラムを、10,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(p−ジオキサノン)のペレット又は粉砕材料1.4キログラムと乾燥混合する。この混合物を配合すると、ポリ(p−ジオキサノン)の二峰性ブレンドが得られる。
【0179】
これら2つのブレンドを、(二峰性)ポリ(p−ジオキサノン)が最終ブレンドの約14重量パーセントを占めるように、更に配合する。
【0180】
あるいは、原材料が、90,000ダルトンの重量平均分子量を有するラクチド/グリコリドコポリマー77.4キログラム、10,000ダルトンの重量平均分子量を有するラクチド/グリコリドコポリマー8.6キログラム、及びおよそ85,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(p−ジオキサノン)12.6キログラム、及びおよそ10,000ダルトンの重量平均分子量を有するポリ(p−ジオキサノン)1.4キログラムに基づく、単一の溶融配合を実施する。したがって、(二峰性)ポリ(p−ジオキサノン)の量は、最終ブレンドの約14重量パーセントを占め、(二峰性)ラクチド/グリコリドコポリマーは、最終ブレンドの約86重量パーセントを占める。
【0181】
より高分子量のラクチド/グリコリドコポリマーの分子量の、より低分子量のラクチド/グリコリドコポリマーの分子量に対する比は、(77.4/8.6=)9であり、より高分子量のポリ(p−ジオキサノン)ポリマーの分子量の、より低分子量のポリ(p−ジオキサノン)ポリマーの分子量に対する比は、(12.6/1.4=)9である。
【0182】
組成が異なる類似のブレンドを同様の方法で作製できることが当業者には明らかなはずである。
【0183】
二峰性分子量分布を有する本発明の新規ポリマーブレンドは、多くの利点を有する。利点は多く、例えば、以下を含む。吸収性樹脂の結晶化速度を増大させると、成形部品における寸法安定性の発現に役立つ。
【0184】
吸収性樹脂の結晶化速度を増大させると、適切な部品を形成するための射出成形中に必要なサイクルタイムを短縮することができる。このより速い生産速度は、経済的利点をもたらす。吸収性樹脂の結晶化速度を増大させると、成形部品を形成するための射出成形中のサイクルタイムが減少し、バレルにおける樹脂の滞留時間を減少させ、それによって、不所望の熱分解を避けることができる。これにより、より高い性能特性を有する、より高分子量の部品が得られると予測される。また、成形中の分解を最小化すると、よりロバストな製造プロセスが得られる。
【0185】
成形部品において実現される、より高い予測結晶化度レベルでは、部品の剛性を増大させることができる。
【0186】
より速い予測結晶化速度、及び成形部品において実現されるより高い百分率の結晶化度の発現により、更に、ブレンドの組成をより低レベルのポリ(p−ジオキサノン)にシフトさせることができることに留意すべきである。低Tポリマー成分であるポリ(p−ジオキサノン)を低減すると、剛性が更に高まる。
【0187】
新規ポリマーブレンドは、結晶化速度、及び成形部品において発現する全体結晶化度を増大させるという理由で、既に入手可能な吸収性ブレンドよりも高い弾性率を有する、成形部品における寸法安定性が依然として良好な埋め込み型医療機器を作製するのに好適である。
【0188】
二峰性分子量分布を有するブレンド成分を提供することにより、更なるインハウス加工、滅菌、パッケージング、輸送、保管等の間の反り及び寸法不安定性を避けるために加工されるように成形部品を適切に安定化させながら、好ましい本発明のブレンドを、単峰性分子量ポリマーに基づくブレンド成分で作製された対応するブレンドよりも速く、埋め込み後に分解させることができる。
【0189】
(実施例15)
ラクチドリッチなポリマーが単峰性分子量分布を有する場合の、本発明における二峰性ポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントの計算
既に記載した通り、ポリ(p−ジオキサノン)の最低レベルは、ブレンド中に存在するラクチド系ポリマー中に存在する重合ラクチドのモル量に依存する。単峰性分子量分布を有するラクチド系ポリマー及び二峰性分子量分布を有するポリ(p−ジオキサノン)の場合、二峰性ポリ(p−ジオキサノン)の重量パーセントは、下記等式を用いて計算することができる。
ポリ(p−ジオキサノン)の重量パーセント=
(215.6212/重合ラクチドのモルパーセント)2.7027−1.177
【0190】
例えば、単峰性ラクチド−コ−グリコリドコポリマーの組成が82/8(モル基準)であったとき、ブレンド中の二峰性ポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは、12.5パーセントであると計算され、最高量は50であった。同様に、単峰性ラクチド−コ−グリコリドコポリマーの組成が86/14(モル基準)であった場合、ブレンド中の二峰性ポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは、10.8パーセントであると計算され、最高量は50であった。表8は、本発明のブレンド中の最低及び最高重量パーセントとして表される、二峰性ポリ(p−ジオキサノン)の範囲のチャートを含む。
【0191】
【表8】
【0192】
(実施例16)
ラクチドリッチなポリマーが二峰性分子量分布を有する場合の、本発明における単峰性又は二峰性ポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントの計算
二峰性分子量分布を有するラクチド系ポリマー及び単峰性又は二峰性の分子量分布を有するポリ(p−ジオキサノン)の場合、ポリ(p−ジオキサノン)の重量パーセントは、下記等式を用いて計算することができる。
ポリ(p−ジオキサノン)の重量パーセント=
(215.6212/重合ラクチドのモルパーセント)2.7027−4.877
ここで、ラクチド系ポリマーは、
二峰性分子量分布を有する。
【0193】
例えば、二峰性ラクチド−コ−グリコリドコポリマーの組成が82/8(モル基準)であったとき、ブレンド中の単峰性又は二峰性のポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは、8.8パーセントであると計算され、最高量は50であった。同様に、二峰性ラクチド−コ−グリコリドコポリマーの組成が86/14(モル基準)であった場合、ブレンド中の単峰性又は二峰性のポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは、7.1パーセントであると計算され、最高量は50であった。表9は、本発明のブレンド中の最低及び最高重量パーセントとして表される、ポリ(p−ジオキサノン)の範囲のチャートを含む。この場合のポリ(p−ジオキサノン)は、単峰性ポリマー又は二峰性ポリマーであり得ることに留意すべきである。
【0194】
【表9】
【0195】
以上、本発明をその詳細な実施形態について図示及び説明してきたが、当業者であれば、特許請求される発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明の形態及び詳細に様々な変更を行い得る点は理解されるであろう。
【0196】
〔実施の態様〕
(1) 吸収性ポリマーブレンドであって、
約100モルパーセント〜約70モルパーセントの重合ラクチド及び約0モルパーセント〜約30モルパーセントの重合グリコリドを含む、少なくとも50重量パーセントのラクチドリッチなポリマーを含む第1の吸収性ポリマーと、
ポリ(p−ジオキサノン)を含む第2の吸収性ポリマーと、を含み、
前記ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)の最高重量パーセントが50重量パーセントであり、前記ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは、前記ポリマーブレンドが製品に寸法安定性を有効に与えるのに十分であり、更に、前記第1の吸収性ポリマー及び前記第2の吸収性ポリマーのうちの一方又は両方が、二峰性分子量分布ポリマーであり、各二峰性分子量分布ポリマーが、
(a)約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、約60〜95重量%の第1の成分ポリマーと、
(b)約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、約5〜40重量%の第2の成分ポリマーと、のブレンドを含み、前記第1の分子量の前記第2の分子量に対する重量平均分子量比が、少なくとも約2:1である、吸収性ポリマーブレンド。
(2) 前記第1のポリマーが、ポリ(L(−)−ラクチド)、ポリ(D(+)−ラクチド)、ポリ(L(−)−ラクチド)/ポリ(D(+)−ラクチド)ステレオコンプレックス、及びラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーからなる群から選択されるポリマーを含む、実施態様1に記載のブレンド。
(3) 前記第1又は第2のポリマーのうちの少なくとも1つが、酸末端封鎖末端基(acid-capped end groups)を更に含む、実施態様1に記載の吸収性ポリマーブレンド。
(4) 前記第1の吸収性ポリマーが、二峰性分子量分布ポリマーである、実施態様1に記載の吸収性ポリマーブレンド。
(5) 前記第2の吸収性ポリマーが、単峰性分子量分布ポリマーである、実施態様4に記載の吸収性ポリマーブレンド。
【0197】
(6) 前記第1のポリマーが、約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、第1の量のポリラクチド又はラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーと;約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、第2の量のポリラクチド又はラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーと、を含み、前記第1の分子量分布の前記第2の分子量分布に対する重量平均分子量比が、少なくとも約2:1であり、前記第1及び第2の量の前記吸収性ポリマーの実質的に均質なブレンドが、約60/40〜95/5重量/重量パーセントの比で形成されている、実施態様4に記載のブレンド。
(7) 前記第1の吸収性ポリマーが、単峰性分子量分布ポリマーである、実施態様1に記載の吸収性ポリマーブレンド。
(8) 前記第1のポリマーが、ポリ(L(−)−ラクチド)、ポリ(D(+)−ラクチド)、ポリ(L(−)−ラクチド)/ポリ(D(+)−ラクチド)ステレオコンプレックス、及びラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーからなる群から選択されるポリマーを含み、前記ブレンドが、約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、実施態様7に記載のブレンド。
(9) 前記第2の吸収性ポリマーが、二峰性分子量分布ポリマーである、実施態様7に記載の吸収性ポリマーブレンド。
(10) 前記第2のポリマーが、約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、第1の量のポリ(p−ジオキサノン)ポリマーと;約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、第2の量のポリ(p−ジオキサノン)ポリマーと、を含み、前記第1の分子量分布の前記第2の分子量分布に対する重量平均分子量比が、少なくとも約2:1であり、前記第1及び第2の量の前記吸収性ポリマーの実質的に均質なブレンドが、約60/40〜95/5重量/重量パーセントの比で形成されている、実施態様9に記載のブレンド。
【0198】
(11) 前記第1及び第2のポリマーが、それぞれ、二峰性分子量分布ポリマーである、実施態様1に記載の吸収性ポリマーブレンド。
(12) 前記第1のポリマーが、約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、第1の量のポリラクチド又はラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーと;約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、第2の量のポリラクチド又はラクチドリッチなラクチド/グリコリドコポリマーと、を含み、前記第1の分子量分布の前記第2の分子量分布に対する重量平均分子量比が、少なくとも約2:1であり、前記第1及び第2の量の前記吸収性ポリマーの実質的に均質なブレンドが、約60/40〜95/5重量/重量パーセントの比で形成され、前記第2のポリマーが、約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、第1の量のポリ(p−ジオキサノン)ポリマーと;約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、第2の量のポリ(p−ジオキサノン)ポリマーと、を含み、前記第1の分子量分布の前記第2の分子量分布に対する重量平均分子量比が、少なくとも約2:1であり、前記第1及び第2の量の前記吸収性ポリマーの実質的に均質なブレンドが、約60/40〜95/5重量/重量パーセントの比で形成されている、実施態様11に記載のブレンド。
(13) 吸収性ポリマーブレンドであって、
約100モルパーセント〜約70モルパーセントの重合ラクチド及び約0モルパーセント〜約30モルパーセントの重合グリコリドを含む、少なくとも50重量パーセントのラクチドリッチなポリマーを含む第1の吸収性ポリマーと、
ポリ(p−ジオキサノン)を含む第2の吸収性ポリマーと、を含み、
前記ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)の最高重量パーセントが50重量パーセントであり、前記ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは、前記ポリマーブレンドが製品に寸法安定性を有効に与えるのに十分であり、更に、前記第1の吸収性ポリマー及び前記第2の吸収性ポリマーのうちの一方又は両方が、二峰性分子量分布ポリマーであり、各二峰性分子量分布ポリマーが、
(a)約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、約60〜95重量%の第1の成分ポリマーと、
(b)約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、約5〜40重量%の第2の成分ポリマーと、のブレンドを含み、前記第1の分子量の前記第2の分子量に対する重量平均分子量比が、少なくとも約2:1であり、
更に、前記ブレンド中の前記ポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは、前記ラクチドリッチなポリマー中の重合ラクチドのモル量に依存し、
前記ラクチドリッチなポリマーが単峰性分子量分布を有し、前記ポリ(p−ジオキサノン)が二峰性分子量分布を有するとき、式:
ポリ(p−ジオキサノン)の重量パーセント=(215.6212/重合ラクチドのモルパーセント)2.7027−1.177
によって計算され、前記ポリマーブレンドが製品に寸法安定性を与える、吸収性ポリマーブレンド。
(14) 吸収性ポリマーブレンドであって、
約100モルパーセント〜約70モルパーセントの重合ラクチド及び約0モルパーセント〜約30モルパーセントの重合グリコリドを含む、少なくとも50重量パーセントのラクチドリッチなポリマーを含む第1の吸収性ポリマーと、
ポリ(p−ジオキサノン)を含む第2の吸収性ポリマーと、を含み、
前記ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)の最高重量パーセントが50重量パーセントであり、前記ブレンド中のポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは、前記ポリマーブレンドが製品に寸法安定性を有効に与えるのに十分であり、更に、前記第1の吸収性ポリマー及び前記第2の吸収性ポリマーのうちの一方又は両方が、二峰性分子量分布ポリマーであり、各二峰性分子量分布ポリマーが、
(a)約50,000〜約500,000ダルトンの第1の重量平均分子量を有する、約60〜95重量%の第1の成分ポリマーと、
(b)約10,000〜約50,000ダルトンの第2の重量平均分子量を有する、約5〜40重量%の第2の成分ポリマーと、のブレンドを含み、前記第1の分子量の前記第2の分子量に対する重量平均分子量比が、少なくとも約2:1であり、
前記ブレンド中の前記ポリ(p−ジオキサノン)の最低重量パーセントは、前記ラクチドリッチなポリマー中の重合ラクチドのモル量に依存し、
前記ラクチドリッチなポリマーが二峰性分子量分布を有し、前記ポリ(p−ジオキサノン)が単峰性又は二峰性の分子量分布を有するとき、式:
ポリ(p−ジオキサノン)の重量パーセント=(215.6212/重合ラクチドのモルパーセント)2.7027−4.877
によって計算され、前記ポリマーブレンドが製品に寸法安定性を与える、吸収性ポリマーブレンド。
(15) 実施態様1に記載の吸収性ポリマーブレンドを含む医療機器。
【0199】
(16) 実施態様13に記載の吸収性ポリマーブレンドを含む医療機器。
(17) 実施態様14に記載の吸収性ポリマーブレンドを含む医療機器。
(18) 実施態様1に記載の吸収性ポリマーブレンドを医療機器に加工する工程を含む、医療機器の製造方法。
(19) 実施態様13に記載の吸収性ポリマーブレンドを医療機器に加工する工程を含む、医療機器の製造方法。
(20) 実施態様14に記載の吸収性ポリマーブレンドを医療機器に加工する工程を含む、医療機器の製造方法。
【0200】
(21) 前記方法が溶融加工を含む、実施態様18に記載の方法。
(22) 前記方法が溶融加工を含む、実施態様19に記載の方法。
(23) 前記方法が溶融加工を含む、実施態様20に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9