特許第6573889号(P6573889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573889無段変速機用の様々なタイプの横断部材を備える駆動ベルトを組み立てる方法、およびこのように組み立てられた駆動ベルト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573889
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】無段変速機用の様々なタイプの横断部材を備える駆動ベルトを組み立てる方法、およびこのように組み立てられた駆動ベルト
(51)【国際特許分類】
   F16G 5/16 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   F16G5/16 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-542938(P2016-542938)
(86)(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公表番号】特表2017-500517(P2017-500517A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2014079327
(87)【国際公開番号】WO2015097294
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年12月21日
(31)【優先権主張番号】1040569
(32)【優先日】2013年12月24日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エリク ファン デル ノル
(72)【発明者】
【氏名】アリー ヘリト イサーク ファン デル フェルデ
(72)【発明者】
【氏名】ヘオルフ キュルズ
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−133894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ベルト(3)を組み立てる方法であって、前記駆動ベルト(3)は、無端キャリヤ(31)と、該無端キャリヤ(31)に連続的に取り付けられた横断部材(32)の列とを備え、該横断部材(32)にはそれぞれ、前側本体面(39)と、後側本体面(38)とが設けられており、前記前側本体面(39)と、前記後側本体面(38)との間には、前記横断部材(32)が厚さ方向に延びており、前記横断部材(32)には、プーリ接触面(37)が設けられており、該プーリ接触面(37)の間に前記横断部材が幅方向に延びており、前記プーリ接触面(37)は、前記駆動ベルト(3)を取り付けることができる変速機のプーリ(1,2)のプーリディスク(4,5)と接触するようになっており、前記厚さ方向(T32−I;T32−II)で互いに異なる寸法を有する少なくとも2つのタイプ(32−I,32−II)の横断部材(32)が前記駆動ベルト(3)に設けられている、駆動ベルト(3)を組み立てる方法において、
少なくとも最初、前記駆動ベルト(3)の前記横断部材(32)の列を、少なくとも2つの部分(RS1,RS2)において組み立て、
前記部分のうちの第1の列部分(RS1)を、前記横断部材(32)の前記タイプ(32−I,32−II)の所定の順序に従って前記横断部材(32)から組み立て、
前記部分のうちの第2の列部分(RS2)を、前記横断部材(32)の前記少なくとも2つのタイプ(32−I,32−II)のうちの一方のみから組み立て、
前記横断部材(32)の列が最初に組み立てられた後、前記無端キャリヤ(31)の周方向長さと、前記駆動ベルト(3)の前記横断部材(32)の列の前記第1および第2の列部分(RS1;RS2)の組み合わされた長さとの差を決定し、その後、前記横断部材(32)の前記2つのタイプ(32−I;32−II)のうちの一方のタイプの複数の横断部材(32)を、前記第2の列部分(RS2)から取り外し、前記横断部材(32)の前記2つのタイプ(32−I;32−II)のうちの他方の複数の横断部材(32)を付加し、取り外される横断部材(32)の数と付加される横断部材(32)の数とは、決定された前記長さの差に関連する、ことを特徴とする、駆動ベルト(3)を組み立てる方法。
【請求項2】
前記第1の列部分(RS1)は、前記駆動ベルト(3)に含まれた全ての前記横断部材のうちの少なくとも95%、最大で98%を含む、請求項1記載の駆動ベルト(3)を組み立てる方法。
【請求項3】
前記駆動ベルト(3)の前記横断部材(32)の列は、少なくとも3つの列部分(RS1,RS2,RS3)から成り、そのうち第3の列部分(RS3)を、前記横断部材の前記少なくとも2つのタイプ(32−I,32−II)のうちの複数のタイプの横断部材(32)から任意の順序で組み立てる、請求項記載の駆動ベルト(3)を組み立てる方法。
【請求項4】
前記第1の列部分(RS1)は、前記駆動ベルト(3)に含まれた全ての前記横断部材(32)のうちの少なくとも70%を含む、請求項記載の駆動ベルト(3)を組み立てる方法。
【請求項5】
前記第3の列部分(RS3)は、前記駆動ベルト(3)に含まれた全ての前記横断部材(32)のうち最大で25%を含む、請求項記載の駆動ベルト(3)を組み立てる方法。
【請求項6】
前記第3の列部分(RS3)は、前記駆動ベルト(3)の前記横断部材(32)の前記2つのタイプ(32−I;32−II)のうちの特定の1つのタイプを最大で70%を含む、請求項4または5記載の駆動ベルト(3)を組み立てる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速機用の駆動ベルトであって、当該駆動ベルトは、特に、変速機の2つのプーリの周囲に配置されるようになっており、当該駆動ベルトは、複数の別個の横断エレメント、すなわち、変速機プーリに接触する横断部材と、変速機において横断部材を支持および案内する1つまたは複数の無端の、すなわち環状のキャリヤとを含む、無段変速機用の駆動ベルトに関する。このタイプの駆動ベルトは、プッシュベルトも呼ばれる。
【0002】
駆動ベルトの無端キャリヤは、通常、互いに重ね合わされた、連続的でフレキシブルな複数の金属バンドから成り、リングセットとしても知られている。無端キャリヤは、横断部材に設けられた凹所に少なくとも部分的に挿入されている。駆動ベルトが1つの無端キャリヤしか有さない場合、このようなキャリヤは、通常、駆動ベルトの半径方向外側に向かって開放した、横断部材の中央の凹所に取り付けられている。しかしながら、通常、駆動ベルトには少なくとも2つの無端キャリヤが設けられている。各無端キャリヤは、横断部材の2つの凹所のうちのそれぞれ1つに取り付けられており、これらの凹所自体は、横断部材、すなわち駆動ベルトのそれぞれの軸方向側もしくは側方側に向かって開放している。
【0003】
駆動ベルトの横断部材は、1つまたは複数の無端キャリヤの周囲に沿って実質的に連続的な列において摺動可能に配置されており、これにより、これらの部材は、駆動ベルトの移動に関連した力を伝達することができる。横断部材は、2つの本体面を有する。本体面は、少なくとも部分的に互いに実質的に平行に延びており、横断部材の周方向側面によって横断部材の(局所的な)厚さにわたって互いから分離されている。キャリヤの周囲に沿って見ると、横断部材は比較的小さな寸法、すなわち厚さを有しており、これにより、駆動ベルトには数百の横断部材が存在する。湾曲した軌道をベルトがたどることができるように、隣接する横断部材は互いに対して傾斜することができるように設計されている。このような相対的な傾斜を提供しかつ制御するために、互いに接触した、駆動ベルトにおける2つの隣接する横断部材の2つの本体面のうちの一方には、半径方向で凸状に湾曲したそれぞれの本体面の軸方向および半径方向に延びるセクションの形式の(いわゆる)揺動エッジが設けられている。これに関して、半径方向とは、駆動ベルトが円形の状態に配置されたときに駆動ベルトに関して規定されることに留意されたい。
【0004】
大部分が軸方向、すなわち幅方向に向けられた横断部材の側面の部分は、波形であり、特にこのようなプーリの2つの円錐形のシーブの間に幅方向で締め付けられることによって、変速機プーリと摩擦を生じながら係合するようになっている。横断部材と、円錐形のプーリシーブとの間の摩擦接触により、これらの間で力が伝達され、これにより、駆動ベルトは、一方の変速機プーリから他方の変速機プーリへ駆動トルクおよび回転運動を伝達することができる。
【0005】
典型的には、駆動ベルトの横断部材の大部分は同じ形状を有するが、少なくとも、互いに同じ厚さを有する横断部材のみを含む標準的なベルトと比べて、変速機の作動中にプーリの連続的に衝突する横断部材によって生ぜしめられるノイズを減衰させるために、互いに異なる厚さを有する横断部材を1つの駆動ベルトに有することもまた、例えば米国特許出願公開第2006−0079361号明細書から公知である。特に、米国特許出願公開第2006/0079361号明細書によれば、その厚さのみが異なる第1および第2の横断部材の双方から複数の駆動ベルトがランダムに組み立てられ、変速機の作動中に発生するノイズが、これらの駆動ベルトの全てについて測定される。変速機によって発生される最小のノイズに関連する駆動ベルトに関して、前記第1および第2の横断部材の順序が決定され、このような決定された順序に従って駆動ベルトの大量生産が行われる。
【0006】
駆動ベルトにおいて異なる厚さの横断部材を適用する同じ原理の別の例は、米国特許第8104159号明細書によって提供されている。米国特許第8104159号明細書によれば、駆動ベルトにおける横断部材の総数は、横断部材の2つ以上の連続的なグループに分割され、このような各グループは、ランダムに混在させられたより薄い横断部材とより厚い横断部材との特定の比によって規定される。
【0007】
駆動ベルトの横断部材の厚さをランダムにするこれらの公知の駆動ベルト組立て方法は実際に変速機ノイズを低減することにおいては成功であることができるが、この組立て方法は、駆動ベルトを大量生産するのには適していない。特に、これらの公知の方法は、製造された駆動ベルトごとの、より薄い横断部材とより厚い横断部材との比に関して、いかなる柔軟性も提供せず、また、駆動ベルトに組み込まれた横断部材の完全な列の長さに影響すること、例えば、個々の横断部材の厚さおよび/または無端キャリヤの周方向長さにおける製造公差を補償することは、不可能である。
【0008】
本開示の課題は、発生された前記変速機ノイズに関して好ましいが、駆動ベルトの大量生産にも好都合な、駆動ベルト組立て方法を提供することである。本開示によれば、このような課題は、以下の請求項1による駆動ベルト組立て方法によって達成される。このような新規の駆動ベルト組立て方法では、駆動ベルトに含まれた横断部材の完全な列は、少なくとも2つの列部分もしくは列セクションで設けられており、そのうち一方の列セクションは、少なくともその厚さに関して異なる2つ以上のタイプの横断部材の特定の順序に従って駆動ベルトの無端キャリヤに設けられており、そのうち他方の列セクションは、無端キャリヤの残りの周方向長さを横断部材によって埋めることによって組み立てられており、この後者の横断部材は、これにより、前記他方の列セクションを構成する。
【0009】
この場合、前記一方の列セクションにおける横断部材の前記所定の順序は、例えば米国特許出願公開第2006/0079361号明細書に記載されているように経験的手段によって、または(コンピュータ)モデリングによって、変速機の作動中に最小限のノイズのみが発生されるように(予め)規定されている。
【0010】
この組立て方法に従って大量生産された駆動ベルトは、これにより、後続の横断部材が同じ順序を示している、横断部材の完全な列の列セクションと、あらゆるタイプ、すなわち厚さの横断部材を含む列セクションとを有する。この新規の組立て方法の利点は、あらゆるタイプの横断部材から組み立てられた前記他方の1つの列セクションが、製造された駆動ベルトごとに、より薄い横断部材とより厚い横断部材との比に関して所望の柔軟性を提供するということである。この柔軟性はもちろん有利である。なぜならば、この柔軟性は、様々な厚さタイプの横断部材の同様のフレキシブルな製造を可能にするからである。
【0011】
これにより得られるこの新規の組立て方法および駆動ベルトは、特に、このような所定の順序が、駆動ベルトに含まれた横断部材の完全な列の一部のみを含むならば、2つ以上のタイプの横断部材の所定の順序の顕著なノイズ減衰効果を既に得ることができるという観察に依存する。これに関して、このような所定の順序、すなわち前記一方の列セクションは、少なくとも、同じ厚さの横断部材を備えた前記標準的な駆動ベルトに関して、前記顕著なノイズ減衰効果を達成するために、駆動ベルトにおける横断部材の総数の少なくとも70%を好適には有するべきであることが決定された。
【0012】
上記の新規の組立て方法の好適な実施の形態では、以下の3つの後続のステップが組立て方法に含まれる。すなわち、
−無端キャリヤの周方向で駆動ベルトの横断部材の完全な列の横断部材の間に残っている間隙ギャップのサイズを決定する
−その後、このような間隙ギャップが所定の基準を満たすかどうかを決定し、これらの間にミスマッチが生じるならば、
−駆動ベルト組立て方法の前のステップにおいて決定された前記ミスマッチを排除するために、前記他方の列セクションにおける横断部材のうちの1つ、一部または全てを、それぞれの1つまたは複数の他のタイプの1つまたは複数の横断部材、すなわち様々な厚さを有する横断部材によって置き換える。
【0013】
上記の新規の組立て方法にこれらの3つのステップを加えることによって、駆動ベルトに組み込まれた横断部材の完全な列の長さに影響することができる。この影響は、通常、個々の横断部材の厚さおよび/または無端キャリヤの周方向長さにおける製造公差を補償するために望まれる。
【0014】
この後者の新規の組立て方法の好適な実施の形態では、前記他方の列セクションは、最初に、1つのタイプの横断部材、すなわち、同じ厚さを有する横断部材から組み立てられ、新規の組立て方法の最終ステップにおいて、これらの横断部材が、別の1つのタイプ、すなわち厚さの横断部材によって置き換えられる。これらの後者の特徴は、新規の組立て方法の最終ステップを大幅に単純化する。なぜならば、このようにして置き換えられた横断部材の数と、それによって達成される間隙ギャップの減少との間には直接的な関係が存在するからである。
【0015】
しかしながら、この好適な実施の形態では、以下のことが起こり得る。すなわち、前記他方の列セクションは、1つのタイプ、すなわち1つの厚さの横断部材のみを有するか、または1つのタイプ、すなわち1つの厚さの横断部材を主に有しており、これは、ここで目標としていることとは反対に変速機ノイズを増大しそうである。したがって、他方の列セクションが、同じ厚さの横断部材のみを有するか、または同じ厚さの横断部材を主に有する場合には、所定の順序に従って複数の厚さの横断エレメントを有する前記一方の列セクションは、好適には、駆動ベルトにおける横断部材の総数の95〜98%を含むべきである。
【0016】
もちろん、所定の順序に従って複数の厚さの横断エレメントを備える前記一方の列セクションが長くなるほど、製造された駆動ベルトごとに、より薄い横断部材とより厚い横断部材との比に関して、新規の組立て方法によって提供される柔軟性が小さくなる。特に新規の組立て方法の後者の好適な実施の形態に関して、このような柔軟性を高めるために、新規の駆動ベルト組立て方法の別の実施の形態が考え出された。この別の実施の形態では、駆動ベルトに含まれた横断部材の完全な列には、既に説明されている前記一方および他方の列セクションに加えて第3の列セクションが設けられている。この第3の列セクションは、2つ以上のタイプの横断部材、すなわち、互いに異なる厚さを有する横断部材からランダムに組み立てられている。このようなランダムの組立てにより、前記一方の列セクションにおける横断エレメントタイプの前記所定の順序のものと同様のノイズ減衰効果が得られる。しかしながら、第3の列セクションのこのようなランダムの組立ては、付加的に、有利には可変の比に従って複数のタイプの横断部材を含むことを可能にする。これに関して、以下のことが決定された。すなわち、このようなランダムに組み立てられた第3の列セクションは、所定の順序に従って複数の厚さの横断エレメントを含む前記一方の列セクションのノイズ減衰効果を打ち消すことなく、駆動ベルトにおける横断部材の総数の25%までを有することができる。さらに、同じ効果のために、以下のことが決定された。すなわち、前記第3の列セクションは、1つのタイプ、すなわち1つの同じ厚さの70%以下の横断部材を有さなければならない。
【0017】
上記の洞察および実施の形態の背景は、添付の図面に関連して以下で説明される。図面において同一の符号は同一または類似の構造および/または部材を示している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】2つのプーリ上を走行する駆動ベルトを備えた無段変速機の概略的な透視図であり、この駆動ベルトは、無端キャリヤと、無端キャリヤの周囲に沿って一列で配置された複数の横断部材とを有する。
図2】周方向で見た公知の駆動ベルトの断面図を示している。
図3】公知の駆動ベルトの横断部材の幅方向に向けられた図を提供している。
図4】本開示による駆動ベルトの横断部材の1つの列の第1の概略図であり、この列は、2つのタイプの横断部材を含み、各タイプは、そのそれぞれの厚さに関して異なるサイズを有し、この列は、これらの異なるタイプの横断部材の分布によって互いに識別可能な2つのセクションに分割されている。
図5】本開示による駆動ベルトの横断部材の1つの列の第2の概略図である。
図6】本開示による駆動ベルトの横断部材の1つの列の第3の概略図である。
図7】本開示による駆動ベルトの横断部材の1つの列の第4の概略図であり、この列は、異なるタイプの横断部材の分布によって互いに識別可能な3つのセクションに分割されている。
【0019】
図1における無段変速機の概略図は、駆動ベルト3を示している。駆動ベルト3は、2つのプーリ1,2上を走行し、閉鎖された、すなわち無端キャリヤ31と、キャリヤ31に取り付けられかつキャリヤ31の周囲に沿って配置された横断部材32のほぼ隣接した列とを有する。例示された位置において、上側プーリ1は下側プーリ2よりも高速で回転する。各プーリ1,2の2つの円錐形シーブ4,5の間の距離を変化させることによって、それぞれのプーリ1,2における駆動ベルト3のいわゆる走行半径Rを変化させることができ、その結果、2つのプーリ1,2の間の回転速度比iを変化させることができる。これは、変速機の入力軸6と出力軸7との間の回転速度の差を変化させる公知の形式である。
【0020】
図2には、ベルト3の周方向もしくは長さ方向Lに面した、すなわち、駆動ベルト3の軸方向もしくは幅W方向と半径方向もしくは高さH方向とに対して垂直な方向に面した断面図で駆動ベルト3が示されている。この図2は、2つの無端キャリヤ31の存在を示している。無端キャリヤ31は、断面図で示されている。無端キャリヤ31は、駆動ベルト3の横断部材32を支持および案内する。図2には横断部材32のうちの1つが正面図で示されている。
【0021】
駆動ベルト3の横断部材32および無端キャリヤ31は、通常、金属、通常は鋼から形成されている。横断部材32は、プーリのそれぞれの軸方向の側に提供されたプーリ接触面37を介して各プーリ1,2のシーブ4,5の間に加えられる締付力を受け取る。これらのプーリ接触面37は、半径方向外方へ互いに拡開しており、これらの間に規定された角度は、各プーリ1,2の2つのシーブ4,5の間に規定されたV字形角度にほぼ一致する。横断部材32は、前記周方向Lで無端キャリヤ31に沿って移動、すなわち摺動することができ、これにより、変速機プーリ1,2の間で力が伝達されるとき、この力は、互いに押し付けられ、かつ駆動ベルト3とプーリ1,2との回転方向で互いに前方へ押し付けられる横断部材32によって伝達される。駆動ベルト3のこの特定の典型的な実施の形態では、駆動ベルト3の無端キャリヤ31は、それぞれ5つの個々の無端バンドから成る。無端バンドは、互いに同心状に重ね合わされて、無端キャリヤ31を形成している。実際には、無端キャリヤ31は、多くの場合、6つ以上、例えば12までまたはそれ以上の無端バンドを含む。
【0022】
図3において側面図でも示された横断部材32には2つの切欠33が設けられている。これらの切欠33は、互い反対側に配置されており、幅方向に、横断部材32の反対側に向かって開放している。各切欠33は、2つの無端キャリヤ31のそれぞれ1つを収容する。これにより、横断部材32の第1の部分もしくはベース部分34は、無端キャリヤ31の半径方向内側に配置されており、横断部材32の第2の部分もしくは中間部分35は、無端キャリヤ31の間に配置されており、横断部材32の第3の部分もしくは上側部分36は、無端キャリヤ31の半径方向外側に配置されている。それぞれの切欠33の半径方向内側は、横断部材32のベース部分34のいわゆる支持面42によって画定されており、この支持面42は、ほぼ上側部分36の方向へ半径方向外方に面している。この支持面42は、特に変速機プーリ1,2のシーブ4,5の間に締め付けられた駆動ベルト3の部分において、無端キャリヤ31の半径方向内側と接触する。
【0023】
周方向Lで互いに反対に面した横断部材32の2つの本体面38,39の第1の面もしくは後面38は、ほぼ平坦である。横断部材32の他方のもしくは前側の本体面39にはいわゆる揺動エッジ18が設けられている。揺動エッジ18は、半径方向Hで、後面38に対してほぼ平行に延びた前面39の上側部分と、後面38に向かって延びるように傾斜させられた前面39の下側部分との間の移行部を形成している。図2には、揺動エッジ18は一本の線によって概略的にしか示されていないが、実際には、揺動エッジ18は大抵、半径方向Hでは凸状に湾曲させられかつ軸方向Wでは直線的かつ平坦である前記前面39の部分の形式で提供されている。これにより、揺動エッジ18から/よりも半径方向外側に配置された横断部材32の上側部分には、横断部材32の本体面38,39の間にほぼ一定の寸法が提供されており、すなわち、周方向Lで見て、この寸法は典型的には横断部材32の厚さT32と呼ばれる。さらに、横断部材32の上側部分36において、ただし横断部材32の反対側において、突出部40と、凹所41とを提供することが一般的に行われている。駆動ベルト3において、この突出部40と凹所41とは、横断部材32の列における隣接する横断部材32の間で互いに係合する。これにより、隣接する横断部材32は、前記周方向Lに対して垂直方向で互いに対して整列させられる。
【0024】
典型的には、前記厚さT32は、1〜2mmの範囲の値で、駆動ベルト3の横断部材32の実質的に全て、すなわち98%超において同じである。横断部材32の前記厚さT32の典型的な値は1.5mmであり、前記周方向Lの典型的な値は0.7mである。
【0025】
変速機の作動中、すなわちプーリ1,2および駆動ベルト3の回転中、変速機の横断部材32はプーリディスク4,5の間に次々に進入し、それにより、横断部材32とプーリディスク4,5との間の繰り返される接触により、振動が発生し、この振動自体は、変速機が適用された車両の乗員に聞こえるノイズを発生する。駆動ベルト3の横断部材32の列において、互いに異なる厚さの横断部材32を適用することによって、前記繰り返される接触をより不規則にすることが公知の設計原理である。例えば、これに関して、駆動ベルト3の横断部材32の前記列において、互いに異なる厚さの2つのタイプの横断部材32をランダムの分布で適用することが、欧州特許出願公開第0305023号明細書から公知である。米国特許出願公開第2006/0079361号明細書は、前記ノイズレベルに関して複数のこのようなランダムの分布をチェックすることによってさらに一歩進み、駆動ベルト3の大量生産においては、変速機の作動中の最小ノイズレベルに関連したその分布のみ、すなわち、ある厚さの連続する横断部材32の特定の順序のみを適用する。本開示によれば、米国特許出願公開第2006/0079361号明細書の後者のアプローチは、大量生産における一貫性の観点から欧州特許出願公開第0305023号明細書よりも好ましいが、様々な厚さの横断部材32の相対的な使用に関するいかなる柔軟性も提供せず、また、駆動ベルト3に組み込まれた横断部材32の完全な列の長さに影響することができない。
【0026】
公知技術のこれらの制限を克服するために、以下のことがここでは提案される。すなわち、駆動ベルト3の横断部材32の完全な列を、少なくとも2つの列部分もしくは列セクションRS1およびRS2で提供し、そのうち一方の列セクションRS1は、少なくともその厚さT32−I,T32−IIに関して異なる2つ以上のタイプの横断部材32−I,32−IIの所定の順序に従って駆動ベルト3の無端キャリヤ31に設けられており、そのうち他方の列セクションRS2は、無端キャリヤ31の残りの周方向長さをあらゆるタイプ32−I,32−IIの横断部材32によって埋めることによって組み立てられており、図4に概略的に示したように、前記他方の列セクションRS2は、1つのタイプの横断エレメント32−Iのみ、すなわち1つの厚さT32−Iのみの横断エレメント32−Iを含む。
【0027】
留意すべきことは、この図4(およびそれ以降の図)は、本開示の基本的(設計)原理を示すために機能するが、駆動ベルト3に含まれた横断部材32の数の観点からも、これらの横断部材32の絶対的または相対的なサイズおよび形状の観点からも、駆動ベルト3または駆動ベルト3の横断部材32の列の実際の描写を提供していないということである。
【0028】
前記一方の列セクションRS1における横断部材32−I,32−IIの所定の順序は、もちろん、作動中に変速機が最小限のノイズを発生するように(予め)規定されているのに対し、前記他方の1つ列セクションRS2は、より薄い横断部材32−Iとより厚い横断部材32−IIとのあらゆる比に従って組み立てられる。この後者の、他方の列セクションRS2は、これにより、駆動ベルト3への様々なタイプの横断部材32−I,32−IIの組込みは、そのそれぞれの生産速度に関して適応させられることを可能にする。
【0029】
ほとんどの場合、このようにして組み立てられた駆動ベルト3の横断部材32の完全な列における横断部材32の組み合わされた厚さは、その無端キャリヤ31の周方向長さECLの無端長さの周方向と正確に一致するのではなく、図5に示したように、このような周方向長さECLよりも僅かに小さい。したがって、駆動ベルト3の周方向Lでの横断部材32の間の間隙ギャップを減じるために、前記他方の列セクションRS2における、特定のタイプ32−Iまたは32−II、すなわち特定の厚さT32−I,T32−IIの1つまたは複数の横断部材を、次いで、このような間隙ギャップを減じるために、それぞれの別のタイプ32−II;32−I(すなわち厚さT32−I;T32−II)の1つまたは複数の横断部材32と交換することができる。図5および図6のこの例では、最初に組み立てられた駆動ベルト(図5)の前記他方の列セクションRS2における2つの比較的薄い横断部材32−Iは、2つの比較的厚い横断部材32−IIによって置き換えられており、その結果、最終的に組み立てられた駆動ベルト3の横断部材の完全な列は、図6に示したように、その無端キャリヤ31の周方向長さECLの無端長さの周方向と実質的に一致する。しかしながら、概して駆動ベルト3のこのような最終的な組立てにおいて、前記他方の列セクションRS2における複数の比較的薄い横断部材32−Iは、等しい数の比較的厚い横断部材32−IIによって置き換えられるおよび/または前記他方の列セクションRS2における複数の比較的厚い横断部材32−IIは、その数よりも1つ以上多い比較的薄い横断部材32−Iによって置き換えられる。そうすることによって、前記一方の列セクションRSIにおける横断部材32−I,32−IIの所定の順序は影響されないままであり、それによって提供されるノイズ減衰効果も影響されないままである。
【0030】
この後者の2段階組立て方法は、前記他方の列セクションRS2における全ての横断部材32が1つのタイプ32−Iまたは32−IIである場合、比較的単純に行うことができる。しかしながら、大量生産された駆動ベルト3に組み込まれたより薄い横断部材とより厚い横断部材との可変の比の観点から本開示によって目標とされる柔軟性は、これにより実現されない。したがって、本開示による新規の駆動ベルト組立て方法の別の実施の形態では、図7に示したように、駆動ベルトに含まれた横断部材32の完全な列には、第3の列セクションRS3が設けられている。この第3の列セクションRS3は、様々なタイプの横断部材32−I,32−IIの現在の生産速度および/または現在利用可能な在庫を反映させたそれらの間の比に従って、2つ以上のタイプ32−I,32−IIの横断部材32、すなわち、互いに異なる厚さT32−I,T32−IIを有する横断部材からランダムに組み立てられている。
【0031】
本開示は、前記説明の全ておよび添付図面の全ての詳細に加えて、添付の特許請求の範囲の全ての特徴にも関しかつこれらの特徴を含む。請求項1における括弧書きの符号は、請求項の範囲を限定するのではなく、単に、それぞれの特徴の拘束しない例として提供されている。請求項に記載された特徴は、場合によって、任意の製品または任意の方法において別々に適用することができるが、これらの特徴の2つ以上のあらゆる組合せを適用することも可能である。
【0032】
本開示によって提示された発明は、明細書に明示的に言及された実施の形態および/または実施例に限定されるのではなく、その補正、変更および実用的な適用、特に当業者の到達範囲にあるものをも包含する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7