【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書では、本発明を、僧帽弁置換のための単一弁葉の弁を含むステント弁に関して主に述べる。本発明のデバイスは、例えば各部を環にステッチすることによって、ステント構成要素なしでの直接の植込みにも適している。
【0012】
本発明は、人工弁、好ましくは伸張可能な人工弁であって、単一の機能的弁葉から作られる弁構成要素、好ましくは僧帽弁構成要素を有し、ここで、人工弁が、ステント構成要素の内面に取付け可能な少なくとも2つの組織支持体(tissue support)を含む人工弁を提供する。弁構成要素は、1つの弁葉を含み、少なくとも1つの組織支持体は、少なくとも1つの取付領域を含む。取付領域の少なくとも一区域が、内面から本質的に内向きに延びる。弁葉は、前記取付領域の区域で少なくとも1つの組織支持体に取り付けられ、それにより、弁葉は、前記取付領域の間に配置されるか、または1つの組織支持体と一体形成されて、取付領域の上記区域で第2の組織支持体に取り付けられる。
【0013】
本出願の文脈での少なくとも2つの組織支持体は、少なくとも2つの区域が存在することを意味する。少なくとも2つの組織支持体は、2つの一体形成された区域(例えば、1つの区域が、ステントの流入端部の内面を覆い、ステントの流出端部の内面を覆う第2の区域に取り付けられる、連結された区域)、さらには分離された連結されていない区域も含む。
【0014】
組織支持体は、ステントまたは環の全周に沿って、または周の一部のみに沿って延びる。取付領域は、組織支持体全体に沿って、または組織支持体の一部のみに沿って周方向に延びる。
【0015】
好ましくは、人工弁は、ステント構成要素をさらに含む。少なくとも2つの組織支持体は、ステント構成要素の内面に取り付けられ、ステント構成要素の内面を少なくとも部分的に覆う。
【0016】
組織支持体は、ステントの全長が組織支持体で覆われるように、またはステントの長さの一部のみが組織支持体で覆われるように配置される。
【0017】
弁葉は、弁状ステントに直接的に固定して取り付けられず、1つまたはそれ以上の組織支持体を介して間接的に取り付けられる。機能的弁葉の取付部および機能的弁葉自体の全体が、完全にステントの内部にある。したがって、弁葉は、例えば心収縮−心拡張時の開放中、任意のストラットなどで湾曲していない。それにより、そのような湾曲線に沿って生じる応力が回避される。
【0018】
少なくとも1つの弁葉は好ましくは弾性であり、縫合糸は、好ましくは、取付領域から最小距離1mmで、好ましくは1mm〜5mmの範囲内に配置され、それにより、弁葉は、心収縮−心拡張時の弁葉の開放および閉止中、チェーン衝撃(chain shock)を弾性的に吸収する。
【0019】
本発明による一実施形態では、組織支持体および弁葉は、好ましくは弾性である。弾性構成要素により、少なくとも2つの支持組織(support tissue)と、取り付けられた弁葉との構成は弾性である。
【0020】
弁葉の開放および閉止のサイクル中、弁葉に圧力が作用する。これらの圧力は、主に上流または下流方向で弁葉に正味の力を及ぼす。弾性構成によって、正味の力、すなわちチェーン衝撃を弾性的に吸収して緩衝することができる。弾性吸収によって、弁葉、したがってステント弁は、より長い寿命を有する。
【0021】
代替として、組織支持体および/または弁葉は弾性ではない、またはわずかにのみ弾性である。様々な部分の少なくとも1つが弾性である場合、依然として弾性チェーン衝撃吸収がある。
【0022】
組織支持体への弁葉、好ましくは心膜(pericardium)の弁葉の取付けは、ステントへの弁葉の直接の取付けよりもはるかに弾性である。弾性は、材料のみの弾性、例えば心膜の弾性とほぼ同じである。
【0023】
また、弁葉および/または支持組織のために他の生物学的または合成材料を使用することも可能である。これらの部材は、異なる材料からのものでもよく、例えば、1つが合成材料からのもので、1つが生物学的材料からのものである。
【0024】
組織支持体を取り付けるための縫合糸は、好ましくは、ステント全体に沿って延びる。縫合糸は、好ましくは、取付領域に対して1mm〜5mmの範囲内の距離に配置される。そのような距離は、弾性吸収を保証する。
【0025】
好ましくは、少なくとも1つの弁葉は弾性であり、縫合糸は、取付領域から2mmの最小距離で配置され、それにより、組織支持体への挿入線全体に沿って弁葉によって発生されるすべての応力がステント表面に均等に分散される。
【0026】
弁葉は、少なくとも2つの組織支持体の間に挟まれ、これら少なくとも2つの組織支持体とは個別に形成される。複数の弁葉の場合、弁葉はすべて、同じ組織支持体に周方向で取り付けられる。代替として、弁葉は、周方向で互いに並べて配置された複数の個別の支持組織に取り付けられる。
【0027】
そのような固定は、弁葉の両側に取付領域を有する対称配置を生み出す。この構成は、両側がチェーン衝撃を実質的に同一に吸収するので、心収縮−心拡張時の弁葉の開放中の弾性衝撃吸収を最適にする。
【0028】
少なくとも2つの組織支持体は、一体形成され、2回折り畳まれることがあり、それにより、中央の層が機能的弁葉である5層組織が得られる。
【0029】
しかし、好ましくは、少なくとも2つの組織支持体は分離される。次いで、少なくとも2つの組織支持体と弁葉との構成が、中央の層が機能的弁葉である3層組織を生み出す。
【0030】
別個の弁葉を有する構成は、あまり材料を必要とせず、したがって費用対効率がより高い。さらに、この構成は、組織支持体および機能的弁葉の重畳領域を比較的薄くする。薄い領域は、ステントを通過する媒体(medium)とわずかしか干渉せず、より厚い領域に比べて小さい乱流の通過しか許さない。
【0031】
弁葉に取り付けられた取付領域の隣接区域間のステント構成要素の内面は、場合によっては、組織支持体で覆われない。したがって、少なくとも2つの組織支持体が分離された状態で、弁葉に取り付けられた少なくとも2つの組織支持体の区域間のステント構成要素の内面は、別の組織支持体で覆われない。機能的弁葉により、覆われていない内面は、ステントを通過する媒体と直接は接触しない。したがって、この領域の追加の被覆の必要は必ずしもない。この領域を覆わないことにより、必要とされる組織支持体がより少なくなるので、この構成は、より単純で、より高い費用対効率のままにすることができる。
【0032】
取り付けられた弁葉を有さない組織支持体の縁部領域は、好ましくは重畳している。したがって、弁葉に取り付けられていない組織支持体領域間のステントの内面は、組織支持体で覆われる。
【0033】
代替実施形態では、機能的弁葉は、1つの組織支持体と一体形成される。本出願の文脈での「一体形成」は、2つの部材が1部片として形成されることを意味する。一体形成された弁葉は、少なくとも1つのさらなる組織支持体の取付領域に取り付けられる。この取付けは、2層組織をもたらし、そのうちの1層が、機能的弁葉である。
【0034】
そのような2層組織構成は、単純であり、比較的薄い。1つの組織支持体と弁葉との一体構成は、弁葉が1つの組織支持体にしか取り付けられないので、非常に安定している。
【0035】
弁葉は、ステント弁の流入端部に位置された組織支持体と一体形成される。
【0036】
代替として、弁葉は、ステント弁の流出端部に位置された組織支持体と一体形成される。
【0037】
別の好ましい実施形態では、機能的弁葉は、例えば心膜から作られる管体を形成するように1つの組織支持体と一体形成される。
【0038】
管体は、ステント構成要素に固定されるように適用された後部と、機能的弁葉を形成する前部とを有する。他方の組織支持体は、管体の前部(すなわち機能的弁葉)に取り付けられる。
【0039】
有利には、形成される管は、平坦な組織部片から、両端部を縫合することにより得られる。縫合糸は、好ましくは、管体の後部に位置される。
【0040】
組織部片は、実質的に長方形状を有する。好ましくは、長方形の幅は、長方形の中央でより大きい幅を示すように、長方形の長さの一辺に沿って変化する。
【0041】
好ましくは、本明細書で述べる様々な実施形態での弁葉は、縫合糸によって取付領域に取り付けられる。
【0042】
縫合糸は、好ましくは、非吸収性の生体適合性の縫合糸であり、例えば、ポリエステル(ツイストまたはブレード)、ポリプロピレンのモノフィラメント、またはGoretex糸である。さらに、シルク糸または細い金属ワイヤも使用可能である。弁葉は、ミシンを使用して取付領域に取り付けられる。
【0043】
代替として、弁葉は、接着剤で取り付けられる。
【0044】
弁葉がステントに直接取り付けられるのではなく組織支持体に取り付けられるので、取付部、すなわち縫合糸の形状は、ステント構成要素に依存しない。縫合糸は、好ましくは、直線状の間断的なステッチまたは菱形ステッチの形状を有する。ステッチ間の距離は、好ましくはできるだけ短い。この距離は、1.0mm〜1.5mmの範囲でよいが、好ましくは2mm以下である。
【0045】
縫合糸は、弁葉などに関して安定した確実な取付けを可能にすることが示されている。代替として、弁葉は、異なる方法で、例えばクランプまたはステープルによって取り付けられる。
【0046】
好ましくは、少なくとも2つの支持組織は、縫合糸によってステント構成要素の内面に取り付けられる。
【0047】
支持組織は、好ましくは、基本的にはステントの垂直軸に沿った単純な間断的なステッチによってステントにステッチされる。ステッチ間の距離は、好ましくは、1.0mm〜1.5mmである。
【0048】
縫合糸は、組織支持体やステントスカートなどに関してもステントへの安定した確実な取付けを可能にすることが示されている。ステッチの様々な形状、例えば直線または菱形形状を考慮することができる。代替として、組織支持体は、異なる方法で、例えばクランプ、ステープル、または接着剤によって取り付けられる。
【0049】
弁葉および/または組織支持体は、好ましくは心膜から実質的に作られる。
【0050】
本出願の文脈での心膜から実質的に作られるは、主な成分が心膜であるが、他の物質がより少量存在していることを意味する。心膜は、長期安定性を提供することが知られている。さらに、心膜は、良好な生体適合性を有することが示されている。
【0051】
代替として、他の生体適合性材料、例えば生体適合性プラスチックまたは天然の動物の弁葉が使用される。
【0052】
ステント弁は、好ましくは自己伸張可能である。ステント弁は、カテーテルからの解放後、任意の補助手段なく伸張して伸張構成になる。典型的には、自己伸張するステント弁は、Nitinolなどの形状記憶材料から形成される。自己伸張するステント弁を用いると、伸張プロセスのためにカテーテル以外のさらなる手段を身体に導入する必要はない。そのような手段がなければ、合併症の危険がより小さくなる。
【0053】
代替として、ステント弁は、自己伸張可能でなく、バルーンやワイヤなどの補助手段によって伸張可能である。
【0054】
好ましくは、取付領域は、2〜10mmの長さを有する。取付領域は、弁葉が離脱することなく定位置に保定されるように弁葉を取り付けることができるように十分に大きくなければならない。
【0055】
本発明の別の態様は、本発明によるステント弁を含む送達デバイスである。
【0056】
本発明のさらなる態様を図面に関係して説明する。各図は、概略的に以下のものを示す。