【文献】
松尾正之・江刺正喜・飯沼一浩,“生体用絶縁物電極:チタン酸バリウム磁器を用いた生体用誘導電極”,医用電子と生体工学,1973年 6月,第11巻,第3号,p.156−162
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導電性電極部と、該導電性電極部の表面を被覆した絶縁体電極膜と、該導電性電極部に電気的に接続された通電ラインと、前記導電性電極部と前記通電ラインとを少なくとも覆うとともに前記絶縁体電極膜の一部もしくは全部を露出させるように被覆する絶縁性被覆体と、を備えることを特徴とする低周波電気刺激用絶縁体電極において、該絶縁体電極膜の単位面積当たりの静電容量が、0.36[nF/cm2]以上であることを特徴とした人体が刺激を感じることができる低周波電気刺激用絶縁体電極。
前記通電ラインの経路において、前記絶縁体電極膜と直列となるように接続されると共に、前記絶縁体電極膜との合成静電容量を生成するためのコンデンサーを備えたことを特徴とする、請求項1に記載の人体が刺激を感じることができる低周波電気刺激用絶縁体電極。
前記絶縁体電極膜の有する静電容量と、前記絶縁体電極膜と直列に接続されたコンデンサーの静電容量と、の合成静電容量を前記絶縁体電極膜の電極面積で除した単位面積当たりの合成静電容量が、0.36[nF/cm2]以上であることを特徴とした請求項2に記載の人体が刺激を感じることができる低周波電気刺激用絶縁体電極。
前記通電ラインの接続及び解除を可能とするモーメンタリ動作のプッシュスイッチを1又は2以上備えることを特徴とした、上記請求項1乃至3のいずれか1項に記載の人体が刺激を感じることができる低周波電気刺激用絶縁体電極。
前記プッシュスイッチを2以上具備し、全ての前記プッシュスイッチが並列に接続されたことを特徴とする上記請求項4に記載の人体が刺激を感じることができる低周波電気刺激用絶縁体電極。
前記絶縁体電極膜の面が水面下を向いて水に浮くように構成したことを特徴とする請求項1乃至5までのいずれか1項に記載の人体が刺激を感じることができる低周波電気刺激用絶縁体電極。
前記絶縁体電極膜の周囲を囲うように末広がり状の開口を有する水切り弾性体を具備したことを特徴とする請求項1乃至6までのいずれか1項に記載の人体が刺激を感じることができる低周波電気刺激用絶縁体電極。
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の低周波電気刺激用絶縁体電極を少なくとも2個具備し、該低周波電気刺激用絶縁体電極間に少なくとも波高値4[V]以上の方形波パルス電圧を出力できる制御装置を有することを特徴とする低周波電気刺激装置。
前記絶縁体電極膜と直列となるように接続されると共に、前記絶縁体電極膜との合成静電容量を生成するための第二のコンデンサーを、前記制御装置の内部に接続したことを特徴とする、上記請求項8に記載の低周波電気刺激装置。
前記低周波電気刺激装置において、一対の前記絶縁体電極膜の静電容量と、前記第二のコンデンサーの静電容量と、の合成静電容量の2倍の値を前記絶縁体電極膜の電極面積で除した、単位面積当たりの静電容量が0.36[nF/cm2]よりも大きいことを特徴とした、請求項9に記載の低周波電気刺激装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低周波電気刺激を人体に与える場合、導電性電極を人体皮膚に当接し電極間に電圧を印加し電流を流す。皮膚角質層は静電容量をもつ絶縁体膜であるが、毛孔や汗腺は電流を通す抵抗経路となる。特に、皮膚が発汗などで濡れていると電流が流れやすくなる。この抵抗経路を通る電流は導電性電極表面で電子の授受を起こし、水の電気分解などの電気化学反応を起こす。これにより、長時間使用した場合、皮膚表面の水分のpH変化などによる皮膚への悪影響が懸念される。また、皮膚の汗腺や毛孔は相対的に抵抗値が低いために、導電性電極面を直接皮膚に当接した場合、電流が集中してしまい強い刺激痛や火傷を負う恐れがある。また、電源回路の故障により誤って直流が出力した場合、直流電圧がそのまま人体に印加されてしまうという懸念がある。
【0006】
電気風呂ではステンレス電極を用いているが、電極同士を近づけると水の電気分解を起したり、皮膚が直接触れると強い刺激を受けるなどの危険性があるため、電極は、開口部を有する絶縁体カバーとともに浴槽壁に離間して固定されている。このため、使用者が望む身体部位に、自由に電極を当接し、電気刺激を受けることができなかった。
【0007】
本発明は、これらの課題を解決すべくなされたものであり、電極表面が濡れていても電気化学反応が起こらず、また、電極面を皮膚に直接当接しても皮膚の低抵抗部への電流集中を起こさず、更に、水中でも安全に皮膚に当接して使用でき、また、何らかの理由で誤って直流が電極間に出力されてしまっても、直流の流出を遮断できる電極の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る発明では、導電性電極部と該導電性電極部の表面を被覆した絶縁体電極膜と、該導電性電極部に電気的に接続された通電ラインと、前記導電性電極部と前記通電ラインとを少なくとも覆うとともに前期絶縁体電極膜の一部もしくは全部を露出させるように被覆する絶縁性被覆体と、より構成されたことを特徴とする、低周波電気刺激用絶縁体電極とした。請求項2に係る発明では、前記低周波電気刺激用絶縁体電極膜の単位面積当たりの静電容量が0.063[nF/cm
2]以上とした。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記通電ラインの経路において、前記絶縁体電極膜と直列となるように接続されたコンデンサーを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の低周波電気刺激用絶縁体電極とした。また、請求項4では、前記絶縁体電極膜と、前記絶縁体電極膜と直列に接続されたコンデンサーと、の合成静電容量を前記絶縁体電極膜の電極面積で除した単位面積当たりの合成静電容量が、0.063[nF/cm
2]以上であることを特徴とした請求項3に記載の低周波電気刺激用絶縁体電極とした。
【0010】
請求項5に係る発明では、前記通電ラインの接続及び解除を可能とするプッシュスイッチを1または2以上備えることを特徴とした、上記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の低周波電気刺激用電極とした。また、請求項6では、前記プッシュスイッチを2以上具備し、全ての前記プッシュスイッチが並列に接続されたことを特徴とする上記請求項5に記載の低周波電気刺激用絶縁体電極とした。また、請求項7では、前記絶縁体電極膜の面が水面下を向いて水に浮くように構成したことを特徴とする請求項1乃至6までのいずれか1項に記載の低周波電気刺激用絶縁体電極とした。更に、請求項8では、前記絶縁体電極膜の周囲を囲うように末広がり状の開口を有する水切り弾性体を具備したことを特徴とする請求項1乃至7までのいずれか1項に記載の低周波電気刺激用絶縁体電極とした。
【0011】
請求項9に係る発明では、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の低周波電気刺激用絶縁体電極を少なくとも2個具備し、該低周波電気刺激用絶縁体電極間に少なくとも波高値4[V]以上の方形波パルス電圧を出力できる制御装置を有することを特徴とした低周波電気刺激装置とした。また、請求項10に係る発明では、前記制御装置の出力端に回路に直列に第二のコンデンサーを接続したことを特徴とする、上記請求項9に記載の低周波電気刺激装置とした。更に、請求項11に係る発明では、前記制御装置の回路の出力端に、回路に直列に繋がれた第二のコンデンサーと一対の絶縁体電極膜との直列合成静電容量の2倍の値を絶縁体電極膜の電極面積で除した、単位面積当たりの静電容量が0.063[nF/cm
2]よりも大きいことを特徴とした、請求項10に記載の低周波電気刺激装置とした。
【0012】
請求項12に係る発明では、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の低周波電気刺激用電極であって、4.1[nF/cm
2]以上の単位面積当たりの静電容量を有する前記低周波電気刺激用絶縁体電極を偶数個具備し、前記制御装置が周波数2[kHz]以上の交流を出力できることを特徴とする低周波電気刺激装置とした。また、請求項13では、上記電気刺激装置が防水構造を有することを特徴とする、請求項9乃至12のいずれか1項に記載の低周波電気刺激装置とした。
【発明の効果】
【0013】
上記手段により得られる発明の効果について説明する。請求項1に係る発明により、電極面が濡れていても、更には、水中においても、電極面でのpH変化、ガス発生、金属溶出、などの電気化学反応が起こらず、また、電極を皮膚に直接当接しても電流集中による痛みや火傷が起こらず、更に、事故により直流の流出が起こっても、直流の流出を阻止できる、安全で快適な電極を実現できる。
【0014】
請求項2乃至4に係る発明により、人体が許容できる刺激強度の範囲で、人体に通電できるピーク電流値及び実効値電流を最大まで使用できるようになる。また、請求項3に係る発明により、何らかの原因で絶縁体電極膜の絶縁破壊が発生した場合でも人体に印加される電圧の上昇を小さく抑制することができる。
【0015】
請求項5及び6に係る発明により、低周波電気刺激用絶縁体電極を水中で使用しても、使用者が電極の使用を止めると通電が停止されるようになり、電極が通電状態のまま水中に放置される状況の発生を防止できるため、不用意に電極に触れることで意図しない電気刺激を突然受けてしまう事故を防ぐことができる。
【0016】
請求項7に係る発明により、水中での片手持ち方式での使用における利便性が向上する。片手持ち方式の使用では、手に持たない方の電極は水中のどこにあっても良いが、水底に沈んでいるとどこに在るかが分かりにくく、また、踏んでしまう危険性もある。水面に浮いているとそのような不具合がなく使いやすい。請求項8に係る発明により、プッシュスイッチを押したまま電極を水面上に持ち上げた場合でも、電極を把持する腕を伝わる水垂れ通路の連通形成が起こらず、腕への意図しない電気刺激の発生を防止することができる。
【0017】
請求項9に係る発明では、低周波電気刺激用絶縁体電極間に少なくとも波高値4[V]以上の方形波パルス電圧を出力できる低周波電気刺激装置とすることで、最少の印加電圧で感知下限刺激を与えることができるようになる。請求項10に係る発明では、低周波電気刺激装置の制御装置出力端に回路に直列にコンデンサーを接続しているが、これにより、低周波電気刺激用絶縁体電極内部に直列コンデンサーを内蔵する必要が無く、低周波電気刺激用絶縁体電極をコンパクトにできる。また、装置内に複数のコンデンサーを配置し選択できるようにしたり、可変容量コンデンサーを配置したり、することができ、設計の自由度が高まるとともに、より幅の広い出力電圧や実効値電流を選択できるようになる。また、請求項11に係る発明により、人体が許容できる刺激強度の範囲で、人体に通電できるピーク電流値及び実効値電流を最大まで使用できるようになる。
【0018】
請求項12に係る発明により、低周波電気刺激用絶縁体電極を交流の搬送波を用いた干渉波方式の低周波電気刺激装置でも使用できるようになる。更に、請求項13に係る発明では、上記請求項9乃至12に記載の低周波電気刺激装置を防水構造としているので、水中や入浴中での使用においても安全に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[電極基本構成]
以下、図を用いて本発明を詳細に説明する。
図1に本発明の低周波電気刺激用絶縁体電極1の基本構成を示す。2は低周波電気刺激用絶縁体電極1において電極面として機能する絶縁体膜であり、以下、絶縁体電極膜と呼ぶ。絶縁体電極膜2の裏面に導電性電極部3が形成されている。導電性電極部3は複数の層から形成されていてもよい。そして、通電ライン4の芯線4001が導電性電極部3に電気接続点4002で電気的に接続されている。低周波電気刺激用絶縁体電極1の充電部分である導電性部分は絶縁性被覆体5によって被覆されている。絶縁性被覆体は絶縁体電極膜の端部及び表面の一部を被覆していてもよい。
【0021】
絶縁体電極膜2は比誘電率が3から数万程度の絶縁体で構成される。例えばチタン酸バリウムに代表される高誘電率系セラミックでは、比誘電率は数千から数万と極めて高いが、単位膜厚当たりの耐電圧は数[V/μm]程度と低いため、膜厚を厚くして耐電圧と機械的強度を確保することで使用できる。一方、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリフェニレンスルファイド(PPS)などの樹脂薄膜では、比誘電率は3から十程度と低いが、単位膜厚当たりの耐電圧が数十[V]から数百[V/μm]と高いため、膜厚を薄くして使うことができる。TiO2、HfO2、Ta2O5、ダイヤモンドライクカーボンなど無機の薄膜も候補となる。
【0022】
[低周波電気刺激装置の基本構成]
図2a及びbに低周波電気刺激装置の基本構成を示す。低周波電気刺激装置50は、電源スイッチ51、表示部52、指示操作部53、などを有し方形波パルスや交流を出力できる制御装置54、及び、少なくとも一対の低周波電気刺激用絶縁体電極1などから構成される。指示操作部53において、使用者は、電気刺激の種類や強度を選択できる。この指示が制御部に伝達され、昇圧部及び波形生成部で指示に応じた電圧、周波数、波形などが作られて、低周波電気刺激用絶縁体電極1の対に印加される。制御装置54の出力電圧は家庭用では200[V]以下であり、医用では500[V]以下である。また、基本周波数は一般的には1200[Hz]以下である。干渉波を用いる場合の搬送波では2[kHz]から10[kHz]程度の交流を用いる。パルス電圧を出力する場合、パルス幅は数十[μ秒]から数百[μ秒]が一般的である。低周波電気刺激装置は防水構造であることが望ましい。通電ライン4の取込部には防水コネクターや防水グランドなどを用い、制御装置には、防水型携帯電子機器や風呂用コントローラ、或は、カメラの防水ケースなどの既存技術を用いて防水構造とすることができる。
【0023】
[低周波電気刺激用絶縁体電極の使用形態例]
図3に、本発明の低周波電気刺激用絶縁体電極1の使用例として、入浴中に使用している様子を示す。低周波電気刺激用絶縁体電極対をベルト状の支持体6に取り付け、腰部に絶縁体電極膜が当接するようにベルト状の支持体を腰に巻き付けて入浴している。低周波電気刺激は温熱刺激と同時に患部に与えることで効果と快適感が高まるが、家庭用低周波治療器に関するJIS規格では、電気刺激と加熱を同時に与えることを禁じている。このため、世の中の製品では、電気刺激と温熱刺激を交互に行うなどの工夫がなされている。本発明の低周波電気刺激用絶縁体電極を入浴中に使用すれば、入浴による温熱効果と電気刺激によるマッサージ効果を同時に得ることができ相乗効果が得られる。
【0024】
本発明の低周波電気刺激用絶縁体電極は室内でも使用できる。室内においては、通常の導電性電極と同様に、電極表面にハイドロゲルを貼り付けたり、水を含んだ吸水布やスポンジなどを介在させて皮膚に当接することで使用できる。
【0025】
[等価回路の説明]
低周波電気刺激用絶縁体電極を人体に当接したときの等価回路を
図4aに示す。Cins[F]は絶縁体電極膜の静電容量、Cskin[F]は皮膚の静電容量、Rskin[Ω]は皮膚の抵抗、Rbody[Ω]は人体内部の抵抗、をそれぞれ示している。この回路にE[V]の方形波bが印加された場合、
図4cに示すような電流I[A]が流れる。電流は電圧印加と同時に立ち上がり、ピーク電流(Ip=E/Rbody)が流れた後、指数関数的に減衰する。電流の大きさがIpの1/e(eは自然対数の底で約2.7)に減衰する時間は時定数τと呼ばれるが、τは近似的にC(合成)×Rbody[秒]で与えられる。ここで、C(合成)とはCinsとCskinをすべて直列合成した静電容量である。尚、
図4cの電流波形はCinsが比較的大きい場合を示している。
【0026】
C(合成)を小さくすると、時定数τが小さくなり波形が痩せて尖鋭になる。更に印加電圧Eを高くすると、時定数τは変わらないまま、Ipが高くなる。CinsをCskinより大幅に大きくしてもC(合成)の値はCskinに漸近するだけでCskinの値を超えることはない。
【0027】
[作用効果の説明]
後述する実施例1で、チタン酸バリウムの燒結膜を用いて電極面積3.6[cm
2]の低周波電気刺激用絶縁体電極を作っている。この電極を用いて、入浴中の人体表面にこの電極対を当接し、低周波パルス電圧を印加した。その結果、絶縁体膜を電極として用いても快適な電気刺激が得られることが判明した。人体が電気刺激を感じ始めるときの方形波波高値電圧、つまり出力電圧、の半分の電圧を片側の電極当たりの感知下限電圧と定義し、また、刺激が強くて負担に感じ始めるときの方形波波高値電圧、つまり出力電圧、の半分の電圧を片側の電極当たりの許容上限電圧と定義して、これらの電圧を測定した。その結果を
図6に示す。
【0028】
横軸は片側の電極の単位面積当たりの静電容量Cn[nF/cm
2]であり、縦軸は出力電圧の半分の電圧[V]で示してある。つまり、電極間にはこの電圧の2倍の電圧が印加されている。感知下限電圧も許容上限電圧もCnが小さくなると急激に立上る。逆に、Cnが大きくなると電圧の低下は飽和し横ばいになる。許容上限電圧の場合、Cnが3.6[nF/cm
2]以下になると電圧が急激に上昇してしまうため、これが電極面積3.6[cm
2]での実用上の最小値であると考えられる。同様に、感知下限電圧では、0.46[nF/cm
2]が最小値と考えられる。一方、許容上限電圧の最小値は約30[V]であり、感知下限電圧の最小値は約7[V]である。
【0029】
本測定では、Cnの値を変化させているが、これは、チタン酸バリウムの比誘電率や膜厚を変えている訳ではなく、実は、チタン酸バリウム電極に直列にコンデンサーを接続して合成静電容量を変えているだけである。つまり、
図6の横軸の片側電極の単位面積当たりの静電容量とは、絶縁体電極膜の静電容量とコンデンサーの静電容量の直列合成値を電極面積で除した値を意味している。この様な操作をしても、合成静電容量と同一の値をもつ低周波電気刺激用絶縁体電極を単独で使用した時と、電流波形や刺激感は全く同じであり、電極面が絶縁体である限り、電極面での電気化学反応を起こさないなど、低周波電気刺激用絶縁体電極としての効果も変わらない。
【0030】
このように、静電容量の大きい低周波電気刺激用絶縁体電極に、静電容量の小さいコンデンサーを直列合成することで、合成静電容量が小さくなり許容上限電圧が上昇する。この結果、ピーク電流値、実効値電流、そして、1回のパルスによる系全体の容量成分への充電エネルギーを大きくすることができ、人体への作用力を大きくすることができる。それでいて、低周波電気刺激用絶縁体電極に印加される電圧は低く抑えられるので、許容上限電圧が上昇しても低周波電気刺激用絶縁体電極の耐電圧が脅かされることはない。このことはまた、高い許容上限電圧下において何らかの原因により絶縁体電極膜が絶縁破壊を起こしても、人体に印加される電圧の増加を小さく抑制できることを意味する。
【0031】
図5を用いて具体的に説明する。静電容量の大きい低周波電気刺激用絶縁体電極に静電容量の小さいコンデンサーC(直)を直列接続したときの等価回路を
図5dに示す。また、
図5eは、この回路の左端に
図4bで示した方形波パルス電圧E[V]を印加したときの、各構成要素における電位プロファイルを示したものである。t=0で示す線は、方形波パルス電圧が印加された瞬間のプロファイルであり、容量性成分での電圧降下はなく、電圧Eはすべて人体抵抗Rbodyに印加されている。このとき、
図4cで示したピーク電流Ipが流れるが即座に指数関数的に減少する。
【0032】
t=満充電後の線は、容量性成分への充電が行われ、更に、Cskinの放電が行われた後の電位プロファイルを示している。コンデンサーC(直)の静電容量が小さいため、満充電後の電圧は殆どコンデンサーC(直)で降下しており、低周波電気刺激用絶縁体電極での電圧降下は小さくなっている。また、Cskinは放電後なので人体への印加電圧はゼロとなっている。
【0033】
さて、もし、
図5eにおいて、左側の低周波電気刺激用絶縁体電極Cinsが絶縁破壊して導通したとすると、このCinsが負担していた電圧分が人体に印加されることになる(Vbodyで示す)。しかし、Vbodyは出力電圧Eに対して小さい値であるため、人体への印加電圧を低く抑えることができる。
【0034】
このように、皮膚や絶縁体電極膜の静電容量よりも小さい静電容量を有するコンデンサーを直列接続することで、同じ刺激強度におけるピーク電流値、実効値電流、1回のパルス当たりの充電エネルギーを大きくできるだけでなく、絶縁体電極膜が絶縁破壊した場合でも人体への印加電圧の上昇を抑制し安全性を高めることができる。
【0035】
[絶縁体電極膜の材料]
絶縁体電極膜に使用できる無機材料の例としては、チタン酸塩系材料として、CaTiO3、BaTiO3、SrTiO3、Bi2TiO5、Bi4Ti3O12、La2TiO5、CeTiO4、PbTiO3、ZrTiO3等、錫酸塩系材料として、BaSnO3、SrSnO3、PbSnO3等、ジルコン酸塩系材料として、BaZrO3、CaZrO3、Bi4Zr3O12等、ニオブ酸塩系材料として、MgNbO3、CaNbO3、SrNbO3、BaNbO3、PbNbO3等、タンタル酸塩系材料として、LiTaO3、BaTaO3、SrTaO3、CaTaO3、MgTaO3、SrBi2Ta2O9等、ビスマス層状系材料として、Bi3TiNbO9、PbBi2Nb2O9、Bi4Ti3O12、Bi2SrTa2O9、Bi2SrNb2O9、Sr2Bi4Ti5O18、Ba2Bi4Ti5O18等、を主成分とする化合物などが挙げられる。
【0036】
また、樹脂のフィルムや薄膜も候補となる。耐水性のある樹脂であって、フィルムコンデンサーのようにフィルム化できる樹脂、或は、コーティングや溶媒キャスト、電界噴霧、電着などで薄膜化できる樹脂、或は、樹脂素材をターゲットとした蒸着やスパッタなどの真空成膜プロセス等でミクロンオーダーに薄膜化できる樹脂、などである。具体的には、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBN)、不飽和ポリエステル(UP)、アルキド、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、エポキシ(EP)、パラ系芳香族ポリアミド、メタクリル(PMMA)、メラミン(MF)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、シリコーン(SI)、アセチルセルロース、プロピオン酸セルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、アイオノマー、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルスチレン(AS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSU)、フェノール(PF)、ポリウレタン(PUR)、ジアリルフタレート、フラン、などから選択できる。
【0037】
特に、好適に使用できる材料としては、、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やPVDF系の共重合体、例えば、P(VDF-TrFE)、P(VDF-VF)などのコポリマや、P(VDF-TrFE)−CFE)、P(VDF-TrFE-CTFE)などのターポリマー。その他、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)フェノール、メラミン、フラン、セルロース、などが挙げられる。但し、樹脂の1[μm]程度の薄膜は機械的な外力に弱いため、4[μm]以上の厚みが望ましく、より望ましくは10[μm]以上の厚みが好適である。その他、TiO2、La2O3、HfO2、ZrO2、Ta2O5、HfSiO4、Y2O3、Nb2O3、ZrSiO4、マイカ、Si3N4、SiC、ダイヤモンドライクカーボン、などが挙げられる。
【0038】
[導電性接合層について]
絶縁体電極膜2の裏面に形成する導電性電極部3の構成は絶縁体電極膜の材料や製法によって異なる。例えば絶縁体電極膜としてチタン酸バリウムを主成分とする化合物を用いる場合、還元雰囲気中ではなく大気中で燒結することにより絶縁性を高めることができる。しかし、金属電極部を同時に大気燒結すると金属電極部が酸化してしまうため、セラミック燒結膜を単独で燒結する必要がある。このため、燒結後、裏面に導電性接合層を形成することになる。この場合、スパッタリングや蒸着などの真空成膜プロセスで白金、アルミニウム、ニッケル、チタンなどの金属薄膜を形成できる。或は、銀などの導電性微粒子を分散したペーストを塗布してから高温焼成して有機成分を分解排除し、金属薄膜を形成してもよい。
【0039】
セラミック燒結膜は割れやすいため、裏面に強度のある支持体を必要とする。例えば銅などの金属板を支持体とする場合は、チタン酸バリウムの裏面に形成された金属薄膜と銅板とを導電性接着剤で接着する。この様にして、導電性電極部が形成できる。
【0040】
PVDFやPVDCなどの樹脂フィルムを絶縁体電極膜として用いる場合は、樹脂フィルムの裏面に上記と同様に、スパッタリングや蒸着プロセスにより導電性接合膜を形成したり、PEDOT/PSSなどの有機導電性インキを塗布して導電性接合層を形成できる。但し、有機導電性インキはシート抵抗値が高いので、更に、導電性の箔やシートや基板を貼り合わせたり、或は、フレキシブルな導電性接着剤などを上塗りすることで、導電性電極部を形成できる。導電性基板上に真空プロセスや塗布などにより、直接、絶縁体膜を形成する場合は、導電性基板そのものが導電性接合部として機能し導電性電極部となる。
【0041】
[絶縁性被覆体について]
絶縁性被覆体は、低周波電気刺激用絶縁体電極の中で電気が通ずる導電性電極部や通電ラインの芯線などの充電部分を被覆し、電極周囲の水分との絶縁性を確保するとともに、電極を機械的に保護する役目を持つ。
図1のように、樹脂やエラストマーを用いた一体成形をしたものでも良いし、或は、複数の樹脂部品を用いて構成し、樹脂部品間の界面や低周波電気刺激用絶縁体電極面との界面を接着剤やシーラントで封止したり、パッキンやOリングを介在させて螺子や圧入係止機構などにより圧着結合した構成でもよい。
【0042】
[通電ラインについて]
通電ラインには絶縁被覆電線やビニルキャブタイヤケーブルなどが使用できる。絶縁被覆電線を水中で使用する場合は、防水保護配管として、例えば、シリコーンチューブや軟質フッ素樹脂チューブなどを絶縁性被覆体と接合し、その中に、絶縁被覆電線を挿通してもよい。通電ラインの長さは2m前後となるが、絶縁被覆電線をシリコーンチューブの中に挿通する場合、表面の摺動抵抗が大きいため挿通しにくい。フッ素被覆電線、及び/或は、軟質フッ素樹脂チューブを用いた場合は、摺動抵抗が小さく挿通しやすいため、チューブの内径を必要以上に大きくする必要がない。
【0043】
[低周波電気刺激用絶縁体電極の使用形態]
低周波電気刺激用絶縁体電極は室内においても、或は、水中や入浴中でも、使用できる。室内で使用する場合は、従来使われている導電性電極と同様に、電極表面に、ハイドロゲルを貼り付けたり、或は、水を含んだ吸水布やスポンジなどを介在させて皮膚に当接することで使用できる。濡れた低周波電気刺激用絶縁体電極を直接皮膚に当接しても使用できるが、電極表面及び皮膚が乾燥してしまうと電気刺激を全く感じなくなる。
【0044】
一方、水中や入浴中に使用する場合は、水中であることによる独特な事情が存在する。まず、典型的な使用形態について説明する。一つ目の使用形態は、
図7に示すように、両手で電極を一つずつ持ち、電気刺激を与えたい部位に両方の電極を当接したり近接させたりして使用する形態(両手持ち方式)である。二つ目は、
図8に示すように、一方の電極は水中或は水面に放置しておいて、他方を手にもって人体部位に当接したり近接させたりする形態(片手持ち方式)。そして三つ目は
図9に示すように、電極対を支持体に固定しておいて皮膚に当接する形態(支持体固定方式)。そして四つ目は、
図10に示すように、電極を浴槽壁などに固定しておいてそこへ皮膚を当接する方式(壁面固定方式)である。
【0045】
両手持ち方式では、胸、腹部、足などに電気刺激を与えるのに都合が良い。水中での電気刺激では電極表面が皮膚に当接していなくても、近接させるだけでも電気刺激を感じることができる。刺激が強いときは電極を少し皮膚から離すと刺激が柔らかくなる。つまり、出力電圧を変えなくても電極を近づけたり離したりすることで容易に快適な刺激強度を見つけることができる。
【0046】
腕や肘や手、指先などの部位に電気刺激を与えたいときには両手で電極を持つわけにはゆかず、片手持ちでしか刺激を与えることができない。片手持ち方式では放置する側の電極は水中にあればよく、電極間が1[m]以上離れていてもよい。放置する側の電極は浴槽壁に取り付けてあってもよいし、電極表面が下を向いて水面に浮いていてもよい。導電性電極を室内で用いる場合、指先や関節などの曲率の大きな部位には電極を当接しにくかったが、水中では手持ちの電極を指などに少しずつ近づけてゆくことで快適な刺激条件を見つけることができる。
【0047】
背中や肩や首の後ろ側などの部位では電極を手に持って当接することは難しい。このような場合は、
図9c2に示すようなベルト状の支持体6に電極を取り付けて体に巻き付けたり、
図9c1に示すクッション性の支持体7や椅子の背もたれ状の支持体などに電極対を取り付けてそこへ背中を押し付けたりすることができる。また、電極対を浴槽壁や浴槽の上面に固定的に設置(
図10)し、そこへ首や肩や背中を押し付けてもよい。
【0048】
[プッシュスイッチ]
上述したように水中で使用する場合、電極を皮膚から離しても電流は流れるため、制御装置側では使用を終了したのかどうか判定ができない。使用者が出力強度を高強度にしたまま電極を水中に放置しても出力が出続けることになる。それを知らずに第三者が不用意に電極表面に触れた場合、強い衝撃を受ける恐れがある。このような事故を未然に防止するためには使用者が使用をしないときには電気刺激出力が停止する機構が必要である。
【0049】
図11に絶縁性被覆体表面にプッシュスイッチを有する低周波電気刺激用絶縁体電極104を示す。9は絶縁性被覆体504の側面に設けられた手持ちプッシュスイッチである。使用者が電極を手に持つときに指先で押下することで出力回路が接続し、手を離すと出力回路が切断する。また10は絶縁性被覆体裏面に設けられた当接プッシュスイッチを示している。電極を電極支持体に取り付けた状態で人体が電極表面に当接する押圧力を感知して出力回路を接続し、押圧力が解放されると出力回路が切断する。このようなスイッチを設けることで使用者が利用しないときには出力回路を切断することができる。
【0050】
一対の低周波電気刺激用絶縁体電極において、スイッチは両方の電極に設けられていてもよいが、片手持ち方式もあるので一方の電極にだけ設けられていてもよい。一つの電極に手持ちプッシュスイッチ9と当接プッシュスイッチ10のどちらか片方のスイッチが設けられていてもよいが、両方が設けられていてもよい。また、手持ちプッシュスイッチや当接プッシュスイッチが夫々複数設けられていてもよい。一つの電極に二つ以上のスイッチが設けられている場合はそれらのスイッチがすべて並列に接続されていてどれか一つがオンすると出力回路が接続され、すべてのスイッチがオフしたときに出力回路が切断するように構成する。
【0051】
図11の4044は低周波電気刺激用絶縁体電極104内に設けられた端子台であり、導電性電極部304に接続された取り出しリード線4043と通電ラインの芯線4041が、お互いが並列に接続された手持ちプッシュスイッチ9と当接プッシュスイッチ10を介して接続されている。プッシュスイッチには防水型モメンタリープッシュスイッチが好適であるが、これに限るものではない。低周波電気刺激用絶縁体電極を浴槽壁に固定する場合は、当接プッシュスイッチは電極表面や浴槽壁表面に設けてもよい。
【0052】
[直列合成用コンデンサー]
低周波電気刺激用絶縁体電極は直列合成用のコンデンサーを接続せずに使用できるが、コンデンサーを接続して使用することもできる。
図11の13は直列合成用のコンデンサーを示している。端子台4044において出力回路に直列に接続されている。目標とする合成静電容量に応じて、耐電圧や静電容量を決め、汎用のフィルムコンデンサーなどから適宜選択できる。
【0053】
[水垂感電防止のための水切り]
低周波電気刺激用絶縁体電極を水中で使用するとき、手持ちプッシュスイッチを押したまま電極を水面上に持ち上げることが起こり得る。このとき、電極面の水が腕を伝って水面まで流れ落ちる。電極面と水面との間に水の通路が連通形成された瞬間、電流が流れピリッと刺激を受けてしまうことがある。これを避けるためには、
図11に示すように、電極面からの滴下流が分断され連通しないように、末広がり状の水切り11を設けることで回避できる。水切りの材質はシリコーンゴムなどの絶縁性のエラストマー成型体が好適である。水切りは末広がりになっている必要がある。水の連通を阻止するだけであれば電極面に垂直な壁状でも効果はあるが、その場合、電極を皮膚から少し離しても電界の広がりが起こらず、刺激強度の調整がしにくい。末広がり状の場合は、皮膚から電極を離すことで電界が広がるので、刺激強度の調節が容易になる。
【0054】
[浮力体]
前述したように、片手持ち方式では、一方の電極を水に浮かせて使用することもあるため、少なくとも一つの電極は電極面を下にして浮くようにすると使い勝手が良くなる。浮力を持たせるには、電極内部に空間を設けることで浮力をもたせてもよいし、絶縁性被覆体に比重が1より小さい材料を用いてもよい。また、
図11に示すように電極の裏面に浮力体12を貼り付けてもよい。浮力体12は当接プッシュスイッチ10を覆うように固定されているが、押圧力を受けて当接プッシュスイッチを押すことができる。浮力体の材料は、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ユリア樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、などの独立気泡発泡体から選択できる。特に、浮力に優れるポリスチレン独立気泡発泡体が好適である。浮力体を電極裏面に貼り付けるには、耐水性接着剤、マジックテープ、両面テープ、その他、固定部材を用いた固定など適宜選択できる。
【0055】
[水保持体]
前述したように本発明の低周波電気刺激用絶縁体電極は水中になくても、電極面と皮膚との界面に濡れ接触が確保されていれば皮膚に電気刺激を与えることができる。但し、電極表面と皮膚との間で濡れ接触が失われるとその部分では刺激を感じなくなる。
図9で示したように入浴しながら首の後ろや肩などに電極を当接する場合、通常、これらの部位は水面上にある。皮膚が濡れている間は電気刺激を感じることはできるが、電極表面に連続気泡発泡体や吸水布などの水保持体を配することで、より安定して電気刺激を受けることができる。また、水中で低周波電気刺激用絶縁体電極を当接する場合、皮膚に直接絶縁体膜を当接して用いるが、絶縁体膜を皮膚から数ミリ程度離間すると刺激が柔らかくなり快適な刺激になる。この離間距離を手で維持するのは難しいが、絶縁体膜表面に水保持体を配置することで容易に離間距離を保つことができる。
【0056】
水保持体の材料としては、連続気泡発泡体や吸水繊維、或は、吸水性ポリマーを少量、吸水繊維に担持させたものなどから選択できる。厚みは1ミリから10ミリ程度でよい。連続気泡発泡体としては、ポリウレタン製吸水スポンジをはじめ、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ユリア樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、などの連続気泡発泡体が選択できる。特に、ポリエーテル系ウレタン樹脂の連続気泡発泡体は弾性に優れ加水分解性が低く好適である。
【0057】
また吸水繊維としては、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレン、セルロース、綿、やこれらを混成して成る繊維などで、繊維の極細化や異形化、多孔化などにより吸水性を高めたものが選択できる。また、アクリル繊維を加水分解し変成した吸水繊維やアクリル酸などのカルボン酸に部分的にスルホン酸類を混合あるいは架橋した吸水繊維なども選択できる。また、吸水性ポリマーを少量、吸水繊維などに担持させたものも選択できる。吸水性ポリマーとしては、でんぷんのアクリル酸重合体、ポリアクリル酸ナトリウム塩の架橋物、ポリエチレンオキシドの架橋物、などが選択できる。
【0058】
[電極支持体]
図9C1のようなクッション性の支持体7の材質は、連続気泡発泡体だと水を吸収して重くなってしまい取り扱いがし難くなる。独立気泡発泡体だと水に浮いてしまい沈めるのに難儀する。フィルター用のスポンジや繊維を三次元状に編んだ網状弾性体が好適である。特に、ゴム弾性をもつ熱可塑性エラストマーからなる連続線条のランダムループを三次元構造化したものが好適である。水キレが良く弾力性が十分にあり、浴槽の角に枕を置くようにおいて首を当接することもでき好都合である。
図9C2の巻き付け型支持体の場合は、ポリウレタン弾性繊維よりなるストレッチ素材などで作られたベルトに電極を取り付けそれを背中や肩などに巻きつけて使用する。電極の取り付けには、マジックテープやフックなどの係止機構を用いることができる。
【実施例1】
【0059】
絶縁体電極膜にチタン酸バリウムを主成分とする複合酸化物の燒結膜を用いて、
図12に示す低周波電気刺激用絶縁体電極101を製作した。高誘電率系チタン酸バリウムパウダー(Y5V-180、共立マテリアル株式会社製)を大気中で燒結し、直径3[cm]、厚さ100[μm]の絶縁体電極膜201を作成した。絶縁体電極膜201の裏面に、導電性ペースト((株)ノリタケカンパニーリミテド、NP−4311A)を塗布し焼成を経て約15[μm]厚の導電性接合層3011を形成した。次に導電性接着層3012として藤倉化成(株)ドータイトXA-874を用いて、厚さ2[mm]の銅板よりなる導電性基板3013と接着することで導電性電極部301を構成した。導電性基板3013の裏面に取り出しリード線4013を半田付けし端子台4014に接続した。端子台4014で取り出しリード線とフッ素被覆電線よりなる通電ライン401の芯線4011が接続されている。通電ライン401は防水配管としての軟質フッ素チューブ4015の中に納められている。防水配管4015は硬質塩化ビニル製のハウジング5011の側面に螺合取り付けされた防水グランド(株式会社タカチ電機工業製、IP68樹脂製)4016に挿通され防水固定されている。この電極の導電性充電部分は、絶縁性被覆体501を構成する、ハウジング5011、カバーリング5012、そして、防水シーラント5013により被覆され、防水構造の中に納められている。
【0060】
本絶縁体電極膜の有効面積は3.6[cm
2]であった。また、40℃水中での静電容量は、方形波波高値15[V]以下では平均417[nF]、15[V]以上30[V]以下では平均405[nF]であった。チタン酸バリウム(Y5V-180)は室温以上に昇温することにより顕著に比誘電率が低下する。更に、印加するDC電圧が高くなることでも大幅に比誘電率が低下する(所謂DCバイアス特性)。しかし、40℃の環境下ではDCバイアス特性は緩和し、比較的にフラットな特性となる。
【0061】
[測定1:入浴での感知下限電圧と許容上限電圧の測定]
このチタン酸バリウム電極対を用いて、水温40℃の風呂に入浴中の被験者に、水中で低周波電気刺激を与えた。波高値を徐々に上昇させながらパルス電圧を印加し、初めて電気刺激を感じるときの出力電圧の半分の電圧(感知下限電圧)、及び、刺激強度が許容範囲の上限と感じるときの出力電圧の半分の電圧(許容上限電圧)を、片側の電極の単位面積当たりの静電容量Cn[nF/cm
2]を0.46から113[nF/cm
2]まで10段階に変化させて測定した。
【0062】
矩形波パルスのオンタイムは300[μ秒]、周波数は50[Hz]、同一極性のパルスを200回発生した後、0.5[秒]の休止期間を入れ、その後、反対極性のパルスを200回発生し、以降、このセットを繰り返す波形とした。低周波電気刺激用絶縁体電極の場合、感知下限電圧は、周波数を5[Hz]から1200[Hz]まで変化させても殆ど変わらず一定である。よって、標準的な周波数として50[Hz]とした。低周波電気刺激用絶縁体電極の当接箇所は、面積100[cm
2]までの電極が安定して当接できる部位として、また、最も一般的な当接部位として、腰部(背中下部)の背骨を挟んだ左右とした。単位面積当たりの静電容量の変更は、前述のとおり、チタン酸バリウム電極にコンデンサーを直列合成することで行った。測定結果は
図5で説明したとおりである。
【実施例2】
【0063】
図13を用いて他の実施例を説明する。本実施例では絶縁体電極膜202として、厚さ1.2[μm]のポリフェニレンスルファイドフィルム(東レ株式会社製トレリナ(登録商標))を用いた。本フィルムの裏面には導電性接合層3021としてNi薄膜が蒸着されている。導電性基板3023としてのステンレス基板上に導電性接着層3022として低粘度導電性接着剤を塗布し、その上にポリフェニレンスルファイドフィルムに蒸着されたNi薄膜面を貼り合わせた。ステンレス基板3023の裏面に通電ライン402の芯線4021を導電性接着剤を用いて接続し、電気接続点4022とした。通電ライン402にはビニルキャブタイヤケーブルを用いた。通電ライン先端部にクランプ4023を取り付け通電ラインへの引っ張り力を受け止められるようにした。電極ハウジング5021側面には貫通孔が設けられゴムブッシング4024が嵌合固定されている。ゴムブッシングに通電ライン402を挿通した。電極ハウジング5021の内部に低粘度エポキシをポッティングし、絶縁体電極膜202及び導電性電極部302から構成される電極板をその上に載せ、電極板の端面及び表面の端部が覆われるように低粘度エポキシを充填し防水シーリング5022を形成した。
【0064】
この電極の静電容量を測定した。電極表面を水で濡らしてから金属電極を載せて、端子間にパルス電圧を印加し、オシロスコープで電流波形を獲得し、これを数値処理することで充電電流量を把握し、室温におけるパルス波印加時の静電容量を測定した。この結果、2.5[nF/cm
2]が得られた。
【0065】
[電極面積と刺激感の測定]
次にこの電極を用いて、電極の有効面積が5[cm
2]、10[cm
2]、30[cm
2]、50[cm
2]、70[cm
2]、及び100[cm
2]のそれぞれのケースにおいて、片側の電極の単位面積当たりの静電容量Cn[nF/ cm
2]を変化させたときに、初めて電気刺激を感じ始める電圧(感知下限電圧)を測定した。本測定は水中ではなく室内で行った。電極の表面に厚さ1[mm]程度の吸水布を載せ、十分に吸水させた状態で腰に当接した。有効面積の変更は電極表面にそれぞれの有効面積に相当する開口部を有する樹脂シートを載せることで行った。その他の測定条件は上記実施例1と同様である。
【0066】
測定結果を
図14に示す。片側の電極の単位面積当たりの静電容量Cnが同じであれば、電極面積が大きいほど感知下限電圧が低くなることが分かる。但し、30[cm
2]から100[cm
2]への変化は小さく低下傾向が飽和している。各電極面積のデータについて最少二乗法により累乗曲線を用いて近似曲線を求めるとR二乗値は0.98以上となり良い近似が得られる。これらの曲線を用いてCnが1[nF/cm
2]のときの感知下限電圧を求めた結果を
図15に示す。この結果より、電極面積50[cm
2]以上では感知下限電圧は変化しないと考えられる。つまり、電極面積を50[cm
2]としておけば、最も感じやすい条件で測定できることが分かる。
【実施例3】
【0067】
図16を用いて本実施例を説明する。外形寸法が28[mm□]のチタン酸バリウム燒結膜203を9枚作成し、同一平面上に並置し、電気的に並列接続することで電極面積50[cm
2]の低周波電気刺激用絶縁体電極103を構成した。実施例1と同様の材料構成で導電性電極部303を作成した。これらの導電性電極部303の裏面にリード線4033を半田付けし電気接続点4032を形成した。九本のリード線4033を端子台4034に接続し、通電ライン403の芯線4031と接続した。実施例1と同様に通電ライン403は軟質フッ素チューブよりなる防水配管4035に挿通され、また、軟質フッ素チューブは防水グランド4036によって樹脂製電極ハウジング5031に固定されている。九個の電極板は電極ハウジングの上面に載せエポキシ系接着剤5033で接着固定した。
【0068】
[電極面積50[cm
2]での刺激感測定]
上記実施例1と同様の方法で、片側の電極の単位面積当たりの静電容量Cnを変化させたときの感知下限電圧及び許容上限電圧を測定した。この結果を
図17に示す。縦軸は出力電圧の半分の電圧[V]であり、横軸は片側の低周波電気刺激用絶縁体電極、或は、片側の低周波電気刺激用絶縁体電極とコンデンサーの直列体、の単位面積当たりの静電容量Cn[nF/cm
2]である。●は許容上限電圧、▲は感知下限電圧である。Cnの最大値は200[nF/cm
2]である。これはチタン酸バリウム膜の室温での静電容量である。片側印加電圧の最大値は255[V]まで印加している。
【0069】
図17の原点付近の縦軸を拡大したものが
図18である。感知下限電圧は44[nF/cm
2]以上では約2[V]で一定となっている。一方、許容上限電圧は94[nF/cm
2]以上では約9[V]で一定となっている。つまり、許容上限電圧を下げるという観点ではCnをこれ以上大きくしても有効ではない。
図17の原点付近の横軸を拡大したものが
図19である。感知下限電圧、許容上限電圧ともに、Cnが小さくなるにつれ急激に電圧が上昇している。
【0070】
感知下限電圧(U[V]とおく)について、Cnが4[nF/cm
2]よりも小さい範囲で被験者数5人のデータについて、最少二乗法により累乗近似曲線を求めた。その結果、(2)式が得られた。
U = 17.7*Cn^-0.861 (2)
(R^2 = 0.9551 )
【0071】
Cnを小さくしてゆくと感知下限電圧が急速に上昇してしまい安全性や有効性の観点から望ましくない。JIS規格でも最大出力電圧は500[V]と規定している。つまり、実用上のUの最大電圧は250[V]と考えられる。上記(2)式を用いて、U= 250VのときのCnを求めると、Cn = 0.063[nF/cm
2]が得られる。この値が、低周波パルス電圧を用いて人体に電気刺激を与えるために必要な、片側の電極における単位面積当たりの最少の静電容量であると言える。
【0072】
一方、許容上限電圧では、Cnが0.36[nF/cm
2]のときに255[V]となっている。従って、許容上限までの刺激を感じさせるために必要な最小のCnは約0.36[nF/cm
2]と考えられる。このとき電極間には波高値510[V]が印加され、ピーク電流は2.3[A]に達しているが、時定数は1[μ秒]程度であり、人体が傷害を受けるようなことは起こらない。
【0073】
Cnが200[nF/cm
2]及び0.36[nF/cm
2]において、許容上限電圧を印加したときの、充放電電流の波形データをデジタルオシロスコープに取込み、計算により実効値電流を求めると、200[nF/cm
2]のときは約11[mA]であり、0.36[nF/cm
2]のときは約25[mA]となり、約2.5倍に増加している。
【0074】
以上の結果より、低周波電気刺激を人体に与える低周波電気刺激用絶縁体電極において、最少感知刺激を与えるためには、0.063[nF/cm
2]以上の片側の電極の単位面積当たりの静電容量が必要であり、更に、許容上限刺激を与えるためには0.36[nF/cm
2]以上の片側の電極の単位面積当たりの静電容量が必要であると結論できる。また、低周波電気刺激装置の出力電圧としては、感知下限刺激を与えるためには4[V]以上の、許容上限刺激を与えるためには18[V]以上の、出力電圧が必要であると結論できる。
【0075】
[低周波電気刺激装置の形態例]
図20を用いて、低周波刺激装置における制御装置の出力端に、回路に直列に合成用コンデンサーを接続した回路の要部について説明する。波形生成部で双極性或は単極性の方形波パルスが生成され、出力端子56から電極1の対へ印加される。出力端子56の直前に直列合成用コンデンサー55を直列に接続した。図では二つの出力端にそれぞれ一つのコンデンサーを接続しているが、コンデンサーはどちらか一方に接続してもよい。また、コンデンサーを複数並列に並べて、接続するコンデンサーを選択できるようにしても良いし、或は、静電容量を可変できるコンデンサーを接続してもよい。上述のようにコンデンサーをどちらか一方に接続した場合は、一対の絶縁体電極膜の静電容量と、直列接続されたコンデンサーと、の全ての直列合成静電容量の値を2倍した値が、低周波電気刺激用絶縁体電極一つ当たりの静電容量となる。
【0076】
[交流印加]
本発明では、低周波方形波パルス電圧を低周波電気刺激用絶縁体電極に印加することで、人体が電気刺激を感じることができることを説明したが、電極表面で電気化学反応が起こらない、低抵抗部に電流が集中しない、などのメリットは、方形波以外のパルス波でも、或は、交流であっても、有効である。交流を印加した場合は静電容量C[F]を有する低周波電気刺激用絶縁体電極は単に1/(2πfC)の抵抗体となる。ここで、fは周波数[Hz]である。干渉波型電気刺激装置では、一般的に、搬送波として2[kHz]から10[kHz]の交流が用いられている。このことから低周波電気刺激用絶縁体電極を干渉波型電気刺激装置に用いる場合に求められる、最少の単位面積当たりの静電容量を求めることができる。
【0077】
例えば、電極面積を10[cm
2]としたとき、皮膚の静電容量は150[nF]、Rskinは1440[Ω]、Rbodyは300[Ω]、程度の値となる。従って、2[kHz]の交流を印加した場合の皮膚のインピーダンスは498[Ω]となる。つまり、皮膚のインピーダンスが498[Ω]であっても、干渉波型電気刺激を有効に人体に与えることができると言える。一方、10[kHz]の交流を印加した場合の皮膚のインピーダンスは106[Ω]となる。従って、10[kHz]においては、498−106=392[Ω]のインピーダンスを皮膚の外側に追加しても有効に使用できることになる。10[kHz]で392[Ω]となるときの静電容量は41[nF]となる。つまり、低周波電気刺激用絶縁体電極の単位面積当たりの静電容量が41÷10=4.1[nF/cm
2]以上あれば、低周波電気刺激用絶縁体電極を干渉波型電気刺激装置においても使用できることになる。この結果は、電極面積を変えても変わらない。