特許第6573922号(P6573922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6573922-ペーパーロール製造装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573922
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】ペーパーロール製造装置
(51)【国際特許分類】
   D21F 9/00 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   D21F9/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-18329(P2017-18329)
(22)【出願日】2017年2月3日
(65)【公開番号】特開2018-123459(P2018-123459A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2018年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190080
【氏名又は名称】コアレックス信栄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 暁
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−141890(JP,A)
【文献】 特表2012−518101(JP,A)
【文献】 特表2001−515153(JP,A)
【文献】 特開平07−138893(JP,A)
【文献】 特開平06−264389(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/173474(WO,A1)
【文献】 特開平05−125688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B−D21J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙料の抄紙および脱水を行う第1および第2抄紙機と、
前記第1または第2抄紙機が脱水した紙材を乾燥させる乾燥機と、
前記第1抄紙機が脱水した紙料と前記第2抄紙機が脱水した紙料とを切替えて前記乾燥機へ供給する切替え機構部と、
前記乾燥機が乾燥させた紙料を巻上げてペーパーロールを形成させる巻上げ機と、
を備え、
前記第1抄紙機は、900(m/分)以下の抄紙速度で動作し、
前記第2抄紙機は、前記第1抄紙機よりも速い抄紙速度で動作し、
前記巻上げ機は、前記第1抄紙機と前記第2抄紙機の各抄紙速度に対応した速さで前記ペーパーロールの巻上げを行う、
ことを特徴とするペーパーロール製造装置。
【請求項2】
前記第2抄紙機は、
高低差を設けて前記第1抄紙機の上方に設置したサクションフォーマと、
前記サクションフォーマ脱水した紙料を、該サクションフォーマよりも低い位置に設置された前記乾燥機へ搬送する搬送部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のペーパーロール製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型のペーパーロールを製造するペーパーロール製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、古紙を利用して再生紙を製造するときには、当該古紙をパルプへ加工して水に離解させて白水等を生成する。次に、この白水から長網や円網などを用いて紙料を抄い上げ、脱水ならびに乾燥の各工程を行い、所望の柔軟性や強度等を備えた紙質の大型ペーパーロールなどを製造している(例えば、特許文献1参照)。
特に、原反ロールなどの大型ペーパーロールは、1ロールの製造時間が長くなることから、可能な限り製造時の各工程を高速化することが望まれており、抄紙工程や脱水工程を高速で行うように構成されたサクションフォーマ等や、以降の乾燥、ロール巻上げなどの工程についても迅速に処理する装置が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5288480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように抄紙を行うとき、繊維の向き等を揃えて所望の強度を備えると共に、柔軟な使用感が得られる紙を製造するためには、円網等によって抄い上げられた紙料の繊維の並ぶ向き等を揃えて成形ならびに乾燥させる必要があり、製造装置のサクションフォーマも比較的低速で動作するものが使用されている。
また、大型のペーパーロールを製造する場合には、製造時間を短縮するため、高速動作を可能にしたサクションフォーマ等が用いられるが、撥水する際に紙繊維の配向性が乱雑になり、乾燥後の柔軟性が損なわれてしまう。
即ち、製造時間を可能な限り短縮して大量の製紙を行うためには、製造する紙質に応じてサクションフォーマなどを使い分ける必要があり、各々異なる構成の製造装置を複数台設置することになる。そのため、設置や維持に必要なコストが増大し、また設置スペースも相当確保しなければならないという問題点があった。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みなされたもので、設置スペースを抑えるとともに紙質の異なるペーパーロールを、製造時間を抑制して製造することができるペーパーロール製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るペーパーロール製造装置は、紙料の抄紙および脱水を行う第1および第2抄紙機と、前記第1または第2抄紙機が脱水した紙材を乾燥させる乾燥機と、前記第1抄紙機が脱水した紙料と前記第2抄紙機が脱水した紙料とを切替えて前記乾燥機へ供給する切替え機構部と、前記乾燥機が乾燥させた紙料を巻上げてペーパーロールを形成させる巻上げ機とを備え、前記第1抄紙機は、900(m/分)以下の抄紙速度で動作し、前記第2抄紙機は、前記第1抄紙機よりも速い抄紙速度で動作し、前記巻上げ機は、前記第1抄紙機と前記第2抄紙機の各抄紙速度に対応した速さで前記ペーパーロールの巻上げを行うことを特徴とする。
【0007】
また、前記第2抄紙機は、高低差を設けて前記第1抄紙機の上方に設置したサクションフォーマと、前記サクションフォーマ脱水した紙料を、該サクションフォーマよりも低い位置に設置された前記乾燥機へ搬送する搬送部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造する紙質に対応したサクションフォーマを選択して大型のペーパーロールを製造することにより、装置の設置スペースを抑制するとともに、製造に要する時間を可能な限り短縮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例によるペーパーロール製造装置の概略構成を示す説明図である。
図2図1のペーパーロール製造装置に備えられる抄紙脱水部の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の一形態となる実施例を図面に基いて説明する。
(実施例)
図1は、本発明の実施例によるペーパーロール製造装置の概略構成を示す説明図である。この図は、例えば古紙等を溶解したパルプを用いて、原反ロールなどの大型ペーパーロールを製造する製造装置1の構成を示している。なお、この図においては、古紙等からパルプを製造する装置、当該パルプを水に離解して白水を生成する装置、この白水を抄紙脱水部5へ供給する装置または設備などの図示を省略している。
【0011】
製造装置1は、工場等の建屋内に設置され、当該建屋の床面2に固定されており、白水から紙料を抄って脱水を行う抄紙脱水部5、抄紙脱水部5によって脱水された紙料を乾燥させる乾燥機6、乾燥機6によって乾燥させた紙材をロール状に巻上げて、例えば原反ロール4を形成させる巻上げ機8などを備えている。
抄紙脱水部5の設置位置下側となる床面2には、抄紙や脱水を行う際に飛び散った水滴などを所定位置へ排水する排水トレンチ3が設けられている。
乾燥機6は、抄紙脱水部5から取得した紙料を表面に張り付けるヤンキードライヤー6aを備えており、ヤンキードライヤー6aの下端部分には、当該ヤンキードライヤー6a表面に張り付いている紙材を剥がずドクター8が備えられている。また、製造装置1は、ドクター8によって剥がされた紙材を、前述の巻上げ機8まで搬送する搬送機等を備えている。
【0012】
図2は、図1のペーパーロール製造装置に備えられる抄紙脱水部の概略構成を示す説明図である。図2に示した抄紙脱水部5は、低速脱水用のサクションフォーマ22を有する第1抄紙機11と、高速脱水用のサクションフォーマ32を有する第2抄紙機12とを備えている。また、抄紙脱水部5は、前述のヤンキードラム6aの例えば下側部分に接するタッチロールを備えた切替え機構部13を備えている。
抄紙脱水部5は、床面2に第1抄紙機11を設置固定しており、第2抄紙機12を、図示を省略したフレーム材やマウント材などを用いて第1抄紙機11の上方に設置固定している。
【0013】
第1抄紙機11は、サクションフォーマ22によって抄い上げた紙料を第1トランスファフェルト20へ載置するように構成されている。第1トランスファフェルト20は、切替え機構部13のタッチロールとサクションフォーマ22との間を循環移動するように、複数のローラ等によって支持されており、また、当該第1トランスファフェルト20を上記のように循環移動させる駆動部(図示省略)等と接続(接触)するように設置構成されている。
第2抄紙機12は、サクションフォーマ32によって抄い上げた紙料を第2トランスファフェルト30へ載置するように構成されている。第2トランスファフェルト30は、切替え機構部13のタッチロールとサクションフォーマ32との間を循環移動するように、複数のローラ等によって支持されており、また、当該第2トランスファフェルト30を上記のように循環移動させる駆動部(図示省略)等と接続(接触)するように設置構成されている。
【0014】
切替え機構部13は、第1トランスファフェルト20に載置されている紙料と、第2トランスファフェルト30に載置されている紙料のいずれか一方をヤンキードライヤー6aに張り付けるように構成されており、例えば、第1トランスファフェルト20と第2トランスファフェルト30とを上記のタッチロールに掛け替えて、いずれか一方のトランスファフェルトをヤンキードライヤー6aと接触させ、脱水した紙料をヤンキードライヤー6aの表面へ張り付けるように構成されている。
第2トランスファフェルト30は、第2抄紙機12が第1抄紙機11の上方に配置されていることから、第1トランスファフェルト20に比べて高い位置を移動し、また、大きな勾配を有する配置がなされており、高低差の大きな位置について循環移動を行うように設置されている。
【0015】
具体的には、第2トランスファフェルト30は、切替え機構部13のタッチロールよりも高い位置に設置されているサクションフォーマ32と、上記のタッチロールとの間を循環移動するように設置されており、高位置や勾配等を利用して第2トランスファフェルト30に載置された紙料からの脱水効率を高めるように、もしくは脱水によって生じた水を下方へ除去するように配置構成されている。
【0016】
第1トランスファフェルト20と第2トランスファフェルト30は、前述のようにそれぞれローラ等によって支持され、それぞれのトランスファフェルトの移動経路には、抄紙された紙料の脱水もしくは圧搾・搾水を行うプレスパートが構成されている。
遅い抄紙速度で動作する第1抄紙機11は、ワイヤパート等で抄紙した紙料を第1トランスファフェルト20にヘッドボックス21で載置し、ヘッドボックス21の近傍に設置したサクションフォーマ22のプレスロールなどと接触させることによって、当該第1トランスファフェルト11に載置されている紙料の脱水、もしくは圧搾・搾水を行い、大部分の水分を除去するように構成されている。
【0017】
また、速い抄紙速度で動作する第2抄紙機12は、例えばヘッドボックス31において抄紙した紙料を第2トランスファフェルト30へ載置し、ヘッドボックス31に近接させたサクションフォーマ32のプレスロールなどと接触させることにより、当該第2トランスファフェルト30に載置されている紙料の脱水、もしくは圧搾・搾水を行うように構成されている。
なお、第1抄紙機11は、例えば900(m/分)以下の抄紙速度で動作し、第2抄紙機12は、例えば1800(m/分)以上の抄紙速度で動作する。
ヘッドボックス31における抄紙ならびに脱水は、第2抄紙機12の抄紙速度を実現するように行われることから、抄紙速度が速くなるほど、紙料の脱水時間を十分長く設定することが難しくなる。
【0018】
製造装置1は、図2等に示したように、第2抄紙機12を第1抄紙機11の上方に設置している。
即ち、ヘッドボックス31、もしくはサクションフォーマ32等は、高い位置に設置することによって周囲の構造物を少なくして配置することができ、白水から抄った紙料を脱水するとき、水滴等を効率よく周辺に発散させることが可能になる。
また、第2トランスファフェルト30は、高い位置に設置されたサクションフォーマ32と、低い位置に設置された乾燥機6、もしくは切替え機構部13との間に設置されており、必然的に勾配または高低差を有するものとなる。
第2トランスファフェルト30に紙料を載置し、上記の勾配等を有する位置を搬送させると、当該紙料に含まれている水分が下方へ排出される。即ち、サクションフォーマ32等によって脱水された紙料から、さらに水分を除去することが可能になる。
【0019】
製造装置1は、高速の抄紙速度で動作する第2抄紙機12を、第1抄紙機11に対して所定の高低差を設けて、高い位置に設置することにより、第1抄紙機11と第2抄紙機12のどちらかを動作させた場合でも、即ち、どのような抄紙速度で動作させた場合でも、乾燥機6へ搬送する紙料から十分な脱水を行うことができるようにしたものである。
第2抄紙機12と第1抄紙機11との高低差は、第2抄紙機12、もしくはサクションフォーマ32の抄紙速度に応じて設定される。サクションフォーマ32等による脱水時間は、抄紙速度が速くなるほど短くなるため、周囲の構造物が少なく、水滴の発散を効率良く行うことができる高さが生じ、また、当該紙料を搬送する第2トランスファフェルト30に、紙料から十分な水分量が排除される勾配、もしくは高低差が生じるものである。
【0020】
乾燥機6、もしくはヤンキードライヤー6aは、切替え機構部13のタッチロールに到達した紙料を乾燥させるもので、第1抄紙機11ならびに第2抄紙機12のいずれかによって抄紙脱水された紙料を、ヒーター等によって暖められたヤンキードライヤー6aの表面に張り付けて乾燥させるように構成されている。即ち、乾燥機6は、第1トランスファフェルト20または第2トランスファフェルト30のうち、切替え機構部13のタッチロールに掛けられているトランスファフェルトによって移送されてきた紙料を高温の環境下で乾燥させる。
【0021】
また、乾燥機6は、第1抄紙機11または第2抄紙機12の、それぞれの抄紙速度に対応させた乾燥速度で稼働し、ヤンキードライヤー6aは、第1トランスファフェルト20の移動速度または第2トランスファフェルト30の移動速度に応じた回転速度で動作するように構成されている。
なお、第1抄紙機11によって脱水された紙料と第2抄紙機12によって脱水された紙料に、脱水後の含水量に差異がある場合には、乾燥機6の内部温度(ヤンキードライヤー6aの表面温度)等を、各紙料の脱水状態に対応させて調整可能に構成してもよい。
【0022】
ヤンキードライヤー6aによって乾燥させた紙材は、図1に示したドクター7によって当該ヤンキードライヤー6aの表面から剥がされ、幅広ペーパーが生成される。製造装置1は、上記の幅広ペーパーを巻上げ機8によって巻き上げ、ロールペーパー4を形成させる。
巻上げ機8は、ヤンキードライヤー6aから送り出される幅広ペーパーの速さに応じた速度で巻上げを行うように構成されており、第1抄紙機11が生成した紙材の幅広ペーパーを巻上げるときよりも第2抄紙機12が生成した紙材の幅広テープを高速で巻上げるように構成されている。
【0023】
上記のように構成することにより、抄紙速度を切替えて所望の紙質のペーパーロールを製造することができ、特に、大型のペーパーロールを可能な限り短時間で製造することを可能にすることができる。また、製造装置の設置スペースを抑制することができる。
また、高速の抄紙速度で動作する第2抄紙機12を、所定の高低差を設けて第1抄紙機11の上方に設置したので、第1抄紙機11と第2抄紙機12のどちらを用いた場合でも、紙料から十分に脱水することができる。
【符号の説明】
【0024】
1製造装置
2床面
3排水トレンチ
4原反ロール
5抄紙脱水部
6乾燥機
6aヤンキードライヤー
7ドクター
8巻上げ機
11第1抄紙機
12第2抄紙機
13切替え機構部
20第1トランスファフェルト
21ヘッドボックス
22サクションフォーマ
30第2トランスファフェルト
31ヘッドボックス
32サクションフォーマ
図1
図2