特許第6573935号(P6573935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573935ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂の調製及び用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573935
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂の調製及び用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/06 20060101AFI20190902BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20190902BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20190902BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20190902BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20190902BHJP
   C08K 5/03 20060101ALI20190902BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20190902BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   C08G59/06
   C08G59/62
   C08J5/24CFC
   C08L63/00 Z
   C08K5/49
   C08K5/03
   C08K3/22
   C08K3/36
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-88840(P2017-88840)
(22)【出願日】2017年4月27日
(65)【公開番号】特開2018-184578(P2018-184578A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2017年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】李政中
(72)【発明者】
【氏名】呉振華
(72)【発明者】
【氏名】余昭憲
【審査官】 三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−179021(JP,A)
【文献】 特開平7−10961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00− 59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の化学構造式1で示されるジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂。
【化1】
式中、Xは1〜5の整数であり、Yは1〜5の整数であり、Rは、水素、C1−C10アルキル基、フェニル基、フェニルヒドロキシ基である。
【請求項2】
請求項1に記載の化学構造式1のジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂の調製方法であって、該方法は以下の2ステップを含み、
ステップ1(ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂の合成)は、(a1)ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の1モルのフェノール性ヒドロキシル基(フェノール基OH)及び(a2)2,6−ジメチルフェノール1〜2.5モルを、溶媒(沸点>110℃)に添加し、酸触媒を添加し、95〜115℃に加熱し、0.8〜1.5モルのアルデヒド化合物を水中に溶解してアルデヒド化合物が20〜50重量%である水溶液を調製し(アルデヒド化合物が液体であれば水溶液を調製しない)、該水溶液を先の反応混合物に滴下し、前記アルデヒド化合物の水溶液と95〜115℃で1〜6時間に亘って反応させ、一般的な前記酸触媒には、メタンスルホン酸(MSA)、p-トルエンスルホン酸(PTSA)、シュウ酸及び塩酸が含まれ、前記酸触媒の使用レベルは、前記ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の使用レベルの0.5〜5重量%であり、前記アルデヒド化合物には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサル、ベンズアルデヒドが含まれ、前記溶媒は、メチルイソブチルケトン(MIBK)又はメチルベンゼンであり、該溶媒の使用レベルは、前記ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の使用レベルの5〜20重量%であり、滴下での添加及び反応後に熟成反応を30分〜2時間に亘って行い、その反応後に前記酸触媒をアルカリで中和し、該アルカリには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミンである一般的な工業用アルカリが含まれ、pH6〜7に中和後に、前記溶媒及び前記2,6−ジメチルフェノールを除去するために175〜185℃に加熱し、175〜185℃に達した後、急な沸騰を避けるためにゆっくりと真空度を真空度<5torrまで下げ、真空度<5torrの状況下で175〜185℃を1時間に亘って維持し、メチルイソブチルケトン(MIBK)又はメチルベンゼンの溶媒を連続して添加し、脱塩及び洗浄のために水を添加して、濾過、該溶媒の除去後に前記ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂を得るステップ、
ステップ2(ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂の合成)は、ステップ1で調製された前記ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂を、水酸化ナトリウム(NaOH)の存在下で過度のエピクロロヒドリンと反応させて、ステップ(1)〜(5)に示されるようにして、ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を調製するステップであり、
(1)プレ反応:グラム当量の比1:1〜8の前記ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂及び前記エピクロロヒドリン(ECH)を共溶媒に添加し、該共溶媒の使用レベルは、前記ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂の10〜40重量%であり、前記共溶媒にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)又はアルコールが含まれ、49.5%のNaOHを添加し、前記ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂:NaOHのグラム当量の比は、1:0.1〜0.2であり、プレ反応温度は50〜100℃であり、プレ反応時間は2〜4時間であり、
(2)主反応:(1)の反応混合物に49.5%のNaOHを、NaOH:前記ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂のグラム当量の比0.77〜0.97:1で滴下し、反応温度は60〜65℃であり、真空度は160〜190torrであり、滴下時間は2〜5時間であり、主反応の間に水とECHを一緒に沸騰させることによって反応系から水を除去し、相分離バレルでの相分離によって下層の前記ECHを前記反応系に戻し、水相を排出し、
(3)前記エピクロロヒドリンの除去:前記エピクロロヒドリンECHを160℃の温度及び真空度<5torrで除去し、
(4)精製反応:溶媒を添加して樹脂溶液の30〜50%の固形分を調製し、精製反応のために20%のNaOHを添加し、該NaOHの使用レベル=加水分解性塩素の測定値÷35.5×40×精製係数1.5×樹脂の重量÷0.2であり、精製反応温度は70〜90℃であり、精製反応時間は1〜3時間であり、
(5)反応後に、脱塩及び液体分離のために水を添加し、分離された液体の中和及び洗浄後に樹脂溶媒を濾過し、前記溶媒の除去後に前記ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を得る、
方法。
【請求項3】
次の要素を含むガラス繊維基板用のエポキシ樹脂のワニスであって、
(1)請求項1に記載の前記ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂であって、その含有量は樹脂の30〜80%であり(該樹脂の総含有量は、要素1〜4の含有量の合計に等しい)、
(2)多官能性若しくは二官能性、又は変性エポキシ樹脂であって、その含有量は前記樹脂の0〜25%であり、o−クレゾールフェノールアルデヒドエポキシ樹脂、フェノールアルデヒドエポキシ樹脂、ベンズアルデヒド−フェノール多官能性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノールエポキシ樹脂、ビスフェノールA型ホルムアルデヒドエポキシ樹脂、テトラフェノールエタンフェノールアルデヒドエポキシ樹脂、トリ−(ヒドロキシフェニル)メタンフェノールアルデヒドエポキシ樹脂、2,6−ジメチルフェノールのフェノールアルデヒドエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びエポキシドとイソシアネートの共重合体から選択され、
(3)硬化剤であって、その含有量は前記樹脂の15〜60%であり、フェノール樹脂、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ベンズアルデヒド−フェノールのフェノール樹脂、メラミン−フェノールのフェノール樹脂(メラミン−フェノールノボラック)、活性エステル硬化剤、スチレン無水マレイン酸共重合体(SMA)、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン(BPAベンゾオキサジン)、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン(BPFベンゾオキサジン)、ジシクロペンタジエン−フェノールベンゾオキサジン(Dicyclopentadiene-phenol Benzoxazine)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、及びこれらの硬化剤の2つ以上から選択され、
(4)難燃剤であって、その含有量は前記樹脂の10〜40%であり、反応型難燃剤及び添加型難燃剤が含まれ、リン含有ビスフェノールA型フェノールアルデヒド硬化剤(リン含有量5〜10%)、ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン(リン含有量13.4%、窒素含有量8%)、及びテトラブロモビスフェノールA(臭素含有量58.5%)、リン含有エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂から選択され、
(5)充填剤であって、その含有量は全ワニス要素の0〜45%であり(固体の状態で計算され、ワニスの全要素含有量は、要素1〜5の含有量の合計と等しい)、二酸化ケイ素及び水酸化アルミニウムから選択され、
(6)凝固促進剤であって、その含有量はエポキシ樹脂+硬化剤(すなわち、要素1〜3の含有量の合計)の0.01〜0.2%であり、ジメチルイミダゾール、ジフェニルイミダゾール、ジエチルテトラメチルイミダゾール及びベンジルジメチルアミンから選択され、(7)溶媒であって、その含有量は前記全ワニス要素の50〜70%であり、アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン、ジメトキシエタノール(MCS)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、及びメチルベンゼンから選択される、
エポキシ樹脂のワニス。
【請求項4】
要素(2)の前記エポキシドとイソシアネートの共重合体のイソシアネートが、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、メチルベンゼンイソシアネート(TDI)又はそれらの異性体である、請求項3に記載のエポキシ樹脂のワニス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂及びその調製法を開示する。本発明によるこの新しいジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂は、積層板用の組成物に代えて用いられた場合、その硬化生成物は、高耐熱性、高いガラス転移温度Tg、低誘電率Dk、低誘電正接Dfを有し、高性能プリント基板の絶縁材料、半導体封止材としての使用に、及び他の高信頼性電子部品に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ジシクロペンタジエン−フェノールエポキシ樹脂を開示する。それは、特別な架構式構造を備えたエポキシ樹脂であり、脂環式の6原子から成る環及び5員環、芳香族のベンゼン環、ジシクロペンタジエンを構造的に含有し、高耐熱性及び低極性を有し、硬化剤によって硬化されたその硬化生成物は、低吸水性及び優れた電気特性(低誘電率Dk、低誘電正接Df)を有する。ジシクロペンタジエン構造は、硬化生成物の内部応力を低減する機能を有する。したがって、そのジシクロペンタジエン−フェノールエポキシ樹脂は、ガラス繊維積層板及びプリント基板産業で常に使用される。また、延長反応が、高周波数及び高速度電子製品の特性要件を満たすための高性能、より良好な電気特性、並びに低誘電率及び低誘電正接を有するベンゾオキサジン樹脂、活性エステル樹脂、ベンゼンアルケニル樹脂などを合成するために、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のフェノール性ヒドロキシル基(フェノール性OH基)に対して更になされる。しかし、長期に亘るジシクロペンタジエン−フェノールエポキシ樹脂の電気特性に関する発明者の調査は、誘電率Dkの低下におけるより良好な効果、及び誘電正接Dfの低下におけるより小さな効果を有することを示す。
【0003】
特許文献2は、触媒の存在下で2,6−ジメチルフェノールとアルデヒドを反応させることによって合成された二官能性2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂を提供する。二官能性2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒドエポキシ樹脂は、NaOHの存在下で、二官能性2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂及びエピクロロヒドリン(ECH)から合成される。それは高対称性の化学構造、低分子双極子モーメント及び他の特性を有するので、2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂は、誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を効果的に低下させることができ、2,6−ジメチルフェノールは、低誘電率(Dk)及び低誘電正接(Df)を備えた物質−ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)を合成するための原料である。PPE物質は、非常に低い誘電率(Dk)、低い誘電正接、及び小さな信号伝送損失を特徴とする。特許文献2での二官能性2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒドエポキシ樹脂は、誘電率及び誘電正接(Df)を効果的に低下させることができるが、二官能性2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒドエポキシ樹脂の構造的な硬化生成物は、低い架橋密度、低いガラス転移温度Tg及び低い耐熱性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】台湾特許第216439号明細書
【特許文献2】台湾特許出願公開第201038151号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子装置について、電子通信製品の高速伝送を達成するために高速及び高周波信号伝送が必要であり、継続した開発の傾向である。加えて、電子部品は軽く、薄く、短くかつ小さくなる傾向にあるので、低誘電率(Dk)、低誘電正接(Df)、高耐熱性及び高いガラス転移温度Tgを備えた樹脂の研究開発は、プリント基板産業において求められる課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、上記課題を解決するために、本発明はジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を提供する。この共重合体のエポキシ樹脂は、2つの樹脂の優れた電気特性(低誘電率Dk及び低誘電正接Df)だけでなく、上記2つの樹脂よりも高い耐熱性を有する。それはジシクロペンタジエンフェノールエポキシ樹脂及び2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒドエポキシ樹脂の優れた電気特性、特に2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒドエポキシ樹脂の低誘電正接Dfを有するので、本発明によるジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエン−フェノールエポキシ樹脂よりも良好な電気特性を有する。また、その共重合体は、付加反応によってジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂が結合され、エピクロロヒドリンと反応されてジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂の共重合体のエポキシ樹脂を調製する。ジシクロペンタジエン−フェノールエポキシ樹脂及び2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒドエポキシ樹脂と比べて、本発明による共重合体のエポキシ樹脂は、より多い官能基数、より高い硬化及び架橋密度、より高い耐熱性、並びにより良好な機械特性を備えた反応性のエポキシ基を有する。本発明によるこの新しいエポキシ樹脂が積層板用の組成物に代えて用いられた場合、その硬化生成物は、低誘電率(Dk)、低誘電正接(Df)、良好な機械特性及び高いガラス転移温度Tg、並びに硬化性樹脂の硬化生成物の高耐熱性を有し、電子通信製品の高速伝送並びに電子装置の高速及び高周波信号伝送の要求を満たす銅被覆基板、プリント基板、半導体封止材に適している。
【0007】
本発明によるジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂の調製方法は、より多くの官能基数(6−12)を備えたジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂を合成するための低誘電率Dk及び低誘電正接Dfを備えたジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの縮合反応ステップと、ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を調製するために、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂をNaOH状況下で過度のエピクロロヒドリンと反応させるステップとを含む。ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂及びジシアンジアミドDicy、フェノール樹脂PN硬化剤、スチレン無水マレイン酸共重合体SMA、ベンゾオキサジン樹脂(Benzoxazine)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)及び活性エステル樹脂(活性エステル)などの一般的なエポキシ樹脂硬化剤によって調製されるエポキシ樹脂硬化生成物は、低誘電率(Dk)、低誘電正接(Df)、良好な耐熱性及び高いTgを有する。
【0008】
本発明は、化学構造式1で示される分子構造を備えた新たなジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を提供する。
【化1】
式中、Xは1〜5の整数であり、Yは1〜5の整数である。Rは、水素、C1−C10アル
キル基、フェニル基、フェニルヒドロキシ基である。
この新しいジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体
のエポキシ樹脂は、2つのステップで調製される。ステップ1は、(a1)以下の化学構
造式2によって示されるジシクロペンタジエンフェノール樹脂を(a2)2,6−ジメチ
ルフェノールと、(a3)アルデヒド化合物による酸触媒の存在下で反応させ、ジシクロ
ペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂
を合成する。
【化2】
(a1)ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の1モルのフェノール性水酸基(フェノー
ル基OH)、(a2)2,6−ジメチルフェノール1〜2.5モル及び(a3)アルデヒ
ド化合物0.8〜1.5モルを反応させる。ステップ2は、ジシクロペンタジエンフェノ
ールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体を、NaOH状況下で過度のエピクロロヒ
ドリンと反応させて、ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの
共重合体のエポキシ樹脂を調製する。ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチ
ルフェノールの共重合体:エピクロロヒドリン(ECH)のグラム当量比は、1:1〜8
であり、ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体:N
aOHのグラム当量比は、1:0.95〜1.1である。


【0009】
本発明によるジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂及び2,6−ジメチルフェノール樹脂などの優れた電気特性(低誘電率Dk及び低誘電正接Df)を備えた2つの樹脂の反応結合及びエポキシ化によって特徴付けられ、それにより低誘電率Dk及び低吸水性などのジシクロペンタジエンフェノール樹脂の特徴、並びに低誘電率Dk及び低誘電正接Dfなどの2,6−ジメチルフェノールエポキシ樹脂の特徴を有する。したがって、この新しいジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエンフェノールエポキシ樹脂よりも良好な電気特性(低誘電率Dk及び低誘電正接Df)を有する。調製方法は、2つの樹脂を結合するための、酸触媒の存在下でのアルデヒド化合物を用いたジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの縮合及び脱水反応ステップ、すなわち、共重合体を調製するために架橋剤としてアルデヒド化合物を用いることによって、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂での複数の反応点を2,6−ジメチルフェノールと結合することを含む(次の式を参照)。
【化3】
共重合体構造でのフェノール性ヒドロキシル基(フェノール基OH)の官能基数fは、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のフェノール性ヒドロキシル基の数(n+2)と、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂に結合する2,6−ジメチルフェノールの数x+y+2に等しく、そしてx+y=nであり、すなわちf=2n+4である。ジシクロペンタジエンフェノール樹脂又は2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂と比べて、その共重合体はフェノール性ヒドロキシル基のより多くの官能基数を含有する。フェノール性ヒドロキシル基の官能基数は、アルデヒド化合物のグラム当量に直接的に比例する。アルデヒド化合物のグラム当量が大きくなる程、結合される架橋剤が多くなり、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体でのフェノール性ヒドロキシル基の官能基数が多くなる。フェノール性ヒドロキシル基の平均分子量Mn及びグラム当量150g/eqは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分析される。理論式によれば、官能基数=Mn÷フェノール性ヒドロキシル基のグラム当量であり、理論平均官能基数は6〜10である。エポキシ化は、より多くの官能基、硬化後のより良好な耐熱性及び高いガラス転移温度Tgを有するジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を合成するために、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と、2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール性ヒドロキシル基とに対して行なわれ、それによって低Dk及び低Df、良好な耐熱性及び高いTgを有する、予期されたジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を得る。
【0010】
本発明は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂の調製方法を更に提供する。その方法は次の2つのステップを含む。ステップ1は、(a1)ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の1モルのフェノール性ヒドロキシル基(フェノール基OH)と(a2)2,6−ジメチルフェノール1〜2.5モルを酸触媒に加え、水中に0.8〜1.5モルのアルデヒド化合物を溶解し、その溶液を上記反応混合物に滴下し、95〜115℃で1〜6時間に亘ってアルデヒド化合物の水溶液と反応させる。一般的な酸触媒は、メタンスルホン酸(MSA)、p-トルエンスルホン酸(PTSA)、シュウ酸及び塩酸などである。酸触媒の含有量は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の含有量の0.5〜5重量%である。アルデヒド化合物には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサル、ベンズアルデヒドなどが含まれる。反応及び中和後に、2,6−ジメチルフェノールを除去し、溶媒を洗浄及び除去してジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂を得る。ステップ2は、ステップ1で調製されたジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂を、一般的なエポシキ化の条件下においてNaOHの存在下で過度のエピクロロヒドリンと反応させて、ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を調製する。ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体:エピクロロヒドリン(ECH)のグラム当量比は、1:1〜8であり、ジシクロペンタジエン−フェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体:NaOHのグラム当量比は、1:0.95〜1.1である。エポシキ化のプレ反応及び主反応の温度は、50〜100℃である。エピクロロヒドリンを除去し、精製反応、脱塩、中和、洗浄、溶液濾過、及び溶媒除去後に、本発明のジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を得る。
【0011】
本発明は、次の(1)〜(7)を含むガラス繊維基板用のエポキシ樹脂のワニスを更に開示する。(1)本発明のジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂。その含有量は、樹脂の30〜80%である(樹脂の総含有量は、要素1〜4の含有量の合計に等しい)。(2)多官能性若しくは二官能性、又は変性エポキシ樹脂。その含有量は樹脂の0〜25%であり、o−クレゾールフェノールアルデヒドエポキシ樹脂、フェノールアルデヒドエポキシ樹脂、ベンズアルデヒド−フェノール多官能性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノールエポキシ樹脂、ビスフェノールA型ホルムアルデヒドエポキシ樹脂、テトラフェノールエタンフェノールアルデヒドエポキシ樹脂、トリ−(ヒドロキシフェニル)メタンフェノールアルデヒドエポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、2,6−ジメチルフェノールのフェノールアルデヒドエポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びエポキシドとイソシアネートの共重合体から選択される。(3)硬化剤。その含有量は樹脂の15〜60%であり、フェノール樹脂、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ベンズアルデヒド−フェノールのフェノール樹脂、メラミン−フェノールのフェノール樹脂(メラミン−フェノールノボラック)、活性エステル硬化剤、スチレン無水マレイン酸共重合体(SMA)、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン(BPAベンゾオキサジン)、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン(BPFベンゾオキサジン)、ジシクロペンタジエン−フェノールベンゾオキサジン(Dicyclopentadiene-phenol Benzoxazine)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、及び上記硬化剤の2つ以上から選択される。(4)難燃剤。その含有量は樹脂の10〜40%であり、反応型難燃剤及び添加型難燃剤を含み、リン含有ビスフェノールA型フェノールアルデヒド硬化剤(リン含有量5〜10%)、ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン(リン含有量13.4%、窒素含有量8%)、及びテトラブロモビスフェノールA(臭素含有量58.5%)から選択される。(5)充填剤。その含有量は全ワニス要素の0〜45%であり(固体の状態で計算される。ワニスの全要素含有量は、要素1〜5の含有量の合計と等しい。)、二酸化ケイ素及び水酸化アルミニウムから選択される。(6)凝固促進剤。その含有量はエポキシ樹脂+硬化剤(すなわち、要素1〜3の含有量の合計)の0.01〜0.2%であり、ジメチルイミダゾール、ジフェニルイミダゾール、ジエチルテトラメチルイミダゾール及びベンジルジメチルアミンから選択される。(7)溶媒。その含有量は全ワニス要素の50〜70%であり、アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン、ジメトキシエタノール(MCS)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、及びメチルベンゼンから選択される。
【0012】
本発明のジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂により得られる硬化生成物及び熱硬化後のそのワニスは、例えばPCB用の絶縁材料、EMC半導体封止材及び高信頼性モータ/電子部品、並びに優れた電気特性及び耐熱性を必要とするコーティング及び接着などの様々な用途に用いられ得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂の調製方法及び用途を提供し、熱硬化後のそのワニスによって調製された硬化生成物は、優れた耐熱性、低誘電率、低誘電正接(Df)、高いTgなどを有し、電子産業の高速及び高周波数の開発傾向に適合する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のより明確な理解のために、詳細な説明が以下に提供される。
【0015】
本発明のジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエンフェノールエポシキ樹脂及び2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒドエポシキ樹脂といった優れた電気特性を備えた2つの樹脂が、グラフト反応によって結合され、したがって本発明の共重合体のエポキシ樹脂は、上記の2つの樹脂よりも良好な電気特性(低誘電率Dk及び低誘電正接Df)、耐熱性及びTg特性を有するという最も明白な利点を有する。ジシクロペンタジエンフェノール樹脂及び2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂は、酸触媒の存在下でのグラフト反応によってアルデヒド化合物で結合され、次にエポシキ樹脂を調製するためにエピクロロヒドリンでエポシキ化反応が行なわれる。グラフト反応での結合により、本発明のエポシキ樹脂はエポシキ基のより多くの官能基数、硬化後のより高い架橋密度を有し、それにより上記の2つの樹脂よりも良好な電気特性(低誘電率Dk及び低誘電正接Df)、耐熱性及びTg特性を有する。
【0016】
明確に、本発明のジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂の調製方法は、2つのステップを含む。ステップ1(ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂の合成)は、(a1)ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の1モルのフェノール性ヒドロキシル基(フェノール基OH)及び(a2)2,6−ジメチルフェノール1〜2.5モルを、中間にある沸点及び低水溶性を備えた溶媒(沸点>110℃)に添加し、酸触媒を添加し、95〜115℃に加熱する。0.8〜1.5モルのアルデヒド化合物を水中に溶解して、アルデヒド化合物の20〜50重量%の水溶液を調製する(アルデヒド化合物が液体であれば、水溶液を調製しない。)。その水溶液を上記反応混合物に滴下し、アルデヒド化合物の水溶液と95〜115℃で1〜6時間に亘って反応させる。一般的な酸触媒は、メタンスルホン酸(MSA)、p-トルエンスルホン酸(PTSA)、シュウ酸及び塩酸などを含む。酸触媒の使用レベルは、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の使用レベルの0.5〜5重量%であり、アルデヒド化合物には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサル、ベンズアルデヒドなどが含まれる。反応過程では、水の除去はアルデヒド化合物の完全反応をもたらすことができ、溶媒の添加は水と共に沸騰することによって水を除去し、相分離によって水相を除去する。溶媒は、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルベンゼン、及び中間にある沸点及び低水溶性を備えた他の溶媒から選択される。溶媒の使用レベルは、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の使用レベルの5〜20重量%である。滴下での添加及び反応後に、熟成反応を30分〜2時間に亘って行う。反応後に、酸触媒をアルカリで中和する。アルカリには、限定でないが水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミンなどの一般的な工業用アルカリが含まれる。pH6〜7に中和後に、溶媒及び2,6−ジメチルフェノールを除去するために175〜185℃に加熱する。175〜185℃に達した後、急な沸騰を避けるためにゆっくりと真空度を真空度<5torrまで下げる。真空度<5torrの状況下で、175〜185℃を1時間に亘って維持する。メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルベンゼンなどの溶媒を連続して添加し、脱塩及び洗浄のために水を添加して、濾過、溶媒の除去後にジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂を得る。
【0017】
ステップ2(ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂の合成)は、ステップ1で調製されたジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂を、水酸化ナトリウム(NaOH)の存在下で過度のエピクロロヒドリンと反応させて、ステップ(1)〜(5)に示されるようにして、ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を調製する。(1)プレ反応:グラム当量比1:1〜8のジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂及びエピクロロヒドリン(ECH)を共溶媒に添加する。その使用レベルは、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂の10〜40重量%である。共溶媒には、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)又はアルコールが含まれる。49.5%のNaOHを添加する。ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂:NaOHのグラム当量比は、1:0.1〜0.2である。プレ反応温度は50〜100℃であり、プレ反応時間は2〜4時間である。(2)主反応:その反応混合物に49.5%のNaOHを、NaOH:ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂のグラム当量比0.77〜0.97:1で滴下する。反応温度は60〜65℃であり、真空度は160〜190torrであり、滴下時間は2〜5時間である。主反応の間に水とECHを一緒に沸騰させることによって反応系から水を除去し、相分離バレルでの相分離によって下層のECHを系に戻し、水相を排出する。(3)エピクロロヒドリンの除去:過剰なエピクロロヒドリンECHを160℃の温度及び真空度<5torrで除去する。(4)精製反応:溶媒を添加して樹脂溶液の30〜50%の固形分を調製し、精製反応のために20%のNaOHを添加する。NaOHの使用レベル=加水分解性塩素の測定値÷35.5×40×精製係数1.5×樹脂の重量÷0.2である。精製反応温度は70〜90℃であり、精製反応時間は1〜3時間である。(5)反応後に、脱塩及び液体分離のために水を添加し、分離された液体の中和及び洗浄後に樹脂溶媒を濾過し、溶媒の除去後に本発明のジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を得る。
【0018】
本発明のジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂に関する調製方法の更なる詳細な記載は、例えば、下記ステップ1、2を含む。ステップ1は、(a1)ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の1モルのフェノール性ヒドロキシル基(フェノール基OH)及び(a2)2,6−ジメチルフェノール1〜2.5モルを、中間にある沸点及び低水溶性を備えた溶媒(沸点>110℃)に添加し、酸触媒を添加し、95〜115℃に加熱する。0.8〜1.5モルのアルデヒド化合物を水中に溶解して、アルデヒド化合物の20〜50重量%の水溶液を調製し(アルデヒド化合物が液体であれば、水溶液を調製しない。)、その水溶液を上記反応混合物に滴下する。反応過程での高い割合の転換及び高反応速度を達成するために、中間にある沸点及び低水溶性を備えた溶媒及び相分離バレルでの相を使用して水を分離して水相を排出することによって水を除去し、下層のECHを系に戻す。より良好な反応効率及びより完全な反応を達成するために、アルデヒド化合物の水溶液を滴下で添加する。このステップでの反応は、2つの結果をもたらし得る。第1に、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂は、そのジシクロペンタジエン−フェノールとアルデヒドを、又は2,6−ジメチルフェノールとアルデヒドを反応させることによって結合される。第2に、2,6−ジメチルフェノールは、その2,6−ジメチルフェノールとアルデヒドを反応させることによって結合される。調製された生成物の重量平均分子量は、アルデヒド化合物の使用レベルと正の相関関係を有する。アルデヒド化合物の使用レベルは、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの全グラム当量であり、添加されるアルデヒド化合物の使用レベルのグラム当量は、好ましくは0.8〜1.2である。

【0019】
ステップ2は、ステップ1で得られたジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂を、一般的なエポキシ化条件下で、ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂に合成する。すなわち、ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を調製するために、水酸化ナトリウムの存在下で過度のエピクロルヒドリでエポキシ化反応させる。
【実施例】
【0020】
本発明の好ましい実施例は、以下の実施例により詳述される。
【0021】
実施例A(ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂Aの合成)
【0022】
ジシクロペンタジエンフェノール樹脂(南亞塑膠工業股▲分▼有限公司、NPEH−772L、軟化点85℃)170g(1モルのフェノール性ヒドロキシル基)、2,6−ジメチルフェノール170g、溶媒のメチルイソブチルケトン(MIBK)30g、触媒のメタンスルホン酸MSA1.7gを混合して、107℃に加熱し、107℃で23%のホルムアルデヒド溶液130gを滴下して添加した後に3.5時間に亘って反応させ、107℃で1時間に亘って熟成反応を行った。反応後に、0.8gの49.5%水溶液のNaOHを添加してpH6〜7まで中和し、脱水のために140℃に加熱し、185℃まで連続的に加熱し、ゆっくりと真空度を5torrまで下げた。温度及び真空度が設定値の185℃及び5torrに達した後に、その温度及び真空度を1時間に亘って維持した。冷却及び真空解除後に溶媒のメチルイソブチルケトン550gを添加し、80℃で60分間に亘って攪拌し、水50gを添加し、層化のために80℃で放置し、下層の含塩層を除去した。洗浄のために水50gを添加し、層化のために80℃で放置し、下層の水層を除去し、もう1回繰り返して洗浄した。溶液の濾過後に、120℃で脱水し、180℃に加熱し、真空度を5torr未満に下げ、溶媒のメチルイソブチルケトン(MIBK)を除去して、ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂Aを99.5%の収率で得た。性質状態:平均分子量Mw2500、軟化点126℃、フェノール性ヒドロキシル基のグラム当量150g/eq。
【0023】
ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂A150g、エピクロロヒドリン555g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルPM166gを混合して、60℃に加熱し、3時間のプレ反応のために49.5%のNaOHを12.1g添加した。その混合溶液に主反応のために62℃及び真空度180torrで4時間に亘って49.5%のNaOHを66g滴下し、150℃及び10torrで主反応を終了し、その状態を1時間に亘って維持した後に脱水及びECHを除去した。溶媒のメチルイソブチルケトン207gを80℃で30分に亘って添加及び溶解し、精製水196gを添加し、80℃で攪拌した後に層化のために15分間放置し、そして下層の水層を除去した。分析によれば、樹脂の加水分解性塩素は2500ppmであった。80℃で精製反応を行い、49.5%の水酸化ナトリウム1.75g及び精製水2gを添加して2時間に亘って反応させた。溶媒MIBK276g及び精製水50gを連続して添加し、80℃で攪拌した後に相分離のために15分間放置し、下層の水層を除去した。精製水30g及び10%のNaH2PO4を20g添加し、相分離のために15分間放置し、pH6〜7である時に下層の水層を除去した。精製水40gを添加し、相分離のために15分間放置し、下層の水層を除去した。循環式脱水のために1時間に亘って117℃に加熱し、溶液の濾過後に150℃に加熱し、徐々に真空度を5torrまで下げ、1時間に亘って150℃及び5torrに維持して、本発明のジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂Aを得た。
性質状態:エポキシ当量228g/eq、加水分解性塩素240ppm、重量平均分子量Mw3500。
【0024】
実施例B(ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂Bの合成)
【0025】
ジシクロペンタジエンフェノール樹脂(南亞塑膠工業股▲分▼有限公司、NPEH−772L、軟化点110℃)180g(1モルのフェノール性ヒドロキシル基)、2,6−ジメチルフェノール170g、溶媒のメチルイソブチルケトン(MIBK)30g、触媒のメタンスルホン酸MSA1.7gを混合して107℃に加熱し、107℃で23%のホルムアルデヒド溶液130gを滴下して添加した後に3.5時間に亘って反応させ、107℃で1時間に亘って熟成反応を行った。反応後に、0.8gの49.5%水溶液のNaOHを添加してpH6〜7まで中和し、脱水のために140℃に加熱し、185℃まで連続的に加熱し、ゆっくりと真空度を5torrまで下げた。温度及び真空度が設定値の185℃及び5torrに達した後に、その温度及び真空度を1時間に亘って維持した。冷却及び真空解除後に溶媒のメチルイソブチルケトン550gを添加し、80℃で60分間に亘って攪拌し、水50gを添加し、層化のために80℃で放置し、下層の含塩層を除去した。洗浄のために水50gを添加し、層化のために80℃で放置し、下層の水層を除去し、もう1回繰り返して洗浄した。溶液の濾過後に、120℃で脱水し、180℃に加熱し、真空度を5torr未満に下げ、溶媒のメチルイソブチルケトン(MIBK)を除去して、ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂Bを99.5%の収率で得た。性質状態:平均分子量Mw2800、軟化点129℃、フェノール性ヒドロキシル基のグラム当量154g/eq。
【0026】
ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂B154g、エピクロロヒドリン555g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルPM166gを混合して60℃に加熱し、3時間のプレ反応のために49.5%のNaOHを12.1g添加した。その混合溶液に主反応のために62℃及び真空度180torrで4時間に亘って49.5%のNaOHを66g滴下し、150℃及び10torrで主反応を終了し、その状態を1時間に亘って維持した後に脱水及びECHを除去した。溶媒のメチルイソブチルケトン207gを80℃で30分に亘って添加及び溶解し、精製水196gを添加し、80℃で攪拌した後に層化のために15分間放置し、そして下層の水層を除去した。分析によれば、樹脂の加水分解性塩素は2200ppmであった。80℃で精製反応を行い、49.5%の水酸化ナトリウム1.70g及び精製水2gを添加して2時間に亘って反応させた。溶媒MIBK276g及び精製水50gを連続して添加し、80℃で攪拌した後に相分離のために15分間放置し、下層の水層を除去した。精製水30g及び10%のNaH2PO4を20g添加し、相分離のために15分間放置し、pH6〜7である時に下層の水層を除去した。精製水を40g添加し、相分離のために15分間放置し、下層の水層を除去した。循環式脱水のために1時間に亘って117℃に加熱し、溶液の濾過後に150℃に加熱し、徐々に真空度を5torrまで下げ、1時間に亘って150℃及び5torrに維持して、本発明のジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂Bを得た。
性質状態:エポキシ当量232g/eq、加水分解性塩素210ppm、重量平均分子量Mw3800。
【0027】
実施例1〜5で調製された銅被覆板の物理的性質について表1に示す。
【0028】
実施例1〜5では、ガラス繊維基板を調製するために、本発明のジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂が、良好な耐熱性及び低誘電率を備えた樹脂ワニスの要素として使用された。樹脂ワニスの組成を表1に示す。例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、ブタノン、又はアセトンなどの溶媒によって既知の方法で調節された固形分を備えた65%の樹脂ワニスによるガラス繊維基板の調製は、上記樹脂溶液に7628ガラス繊維クロスを浸漬し、170℃で数分乾燥させ(温度浸漬機を含む)、乾燥時間を制御することによって乾燥された浸漬シートの溶融粘度を調節し、その最小値は4000〜10000ポアズであり、最後に積層によって2つの35μmの銅被覆層間に8つの浸漬シートを重ね合わせ、25kg/cm2の圧力及び温度上昇制御
【化4】
で高温圧縮後に1.6mmの銅被覆積層板を得た。
【0029】
【表1】
【0030】
比較例1〜3
【0031】
本発明のジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を使用せずに、比較例として低誘電率を備えた他のエポキシ樹脂を使用した。その組成を表2に示す。比較例1において、ベンズアルデヒド−フェノールエポキシ樹脂(南亞塑膠工業股▲分▼有限公司 NPPN−443)が使用された。比較例2において、2,6−ジメチルフェノールのフェノールアルデヒドエポキシ樹脂(南亞塑膠工業股▲分▼有限公司 NPPN−260)が使用された。比較例3において、ジシクロペンタジエン−フェノールエポキシ樹脂(南亞塑膠工業股▲分▼有限公司 NPPN−272H)が使用された。
【0032】
【表2】
【0033】
上記試験結果によれば、本発明のジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を調合で代わりに使うことによって調製されたガラス繊維基板は、比較例1でのベンズアルデヒド−フェノールエポキシ樹脂、比較例2での2,6−ジメチルフェノール、及び比較例3でのジシクロペンタジエン−フェノールエポキシ樹脂から調製されたものよりも低い誘電率Dk及び誘電正接Dfを有する。また、本発明のジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を調合で代わりに使うことで、Tgは比較例1〜3で調製されたものよりも高い。
【0034】
1.水吸収率試験(プレッシャークッカー試験PCTにより2時間)
試験方法:エッチングされた基板を5cm2の正方形試験シートに切り、オーブンで105℃で2時間焼いた後に、試験シートを2atm、120℃で120分間に亘ってプレッシャークッカーに入れた。PCT前後で試験シートの重量差を記録し、それを試験シートの最初の重量で除して、水吸収率を得た。
【0035】
2.288℃の半田耐熱性(PCTにより2時間)
試験方法:PCTを経た試験シートを288℃の錫ストーブに浸し、層間剥離の時間を記録した。
【0036】
3.288℃の耐熱性(含銅)
熱機械分析装置によって分析された。試験方法:銅被覆積層板を6.35cm2の正方形試験シートに切り、オーブンで105℃で2時間焼いた後に、試験シートを熱機械分析装置の試験デッキに入れた。ゼロ設定後に10℃/分で288℃まで加熱し、288℃に維持し、銅被覆積層板の層間剥離の時間を記録した。
【0037】
4.誘電率試験
試験方法:銅被覆のない基板を5cm×5cmの正方形試験シートに切り、105℃のオーブンで2時間焼いた後に、厚さ測定器で厚さを測定した。そして、試験シートをインピーダンスアナライザ(Agilent社のE4991A)に入れて3点の平均誘電率Dkを得た。
【0038】
5.誘電正接試験
試験方法:銅被覆のない基板を5cm×5cmの正方形試験シートに切り、105℃のオーブンで2時間焼いた後に、厚さ測定器で厚さを測定した。そして、試験シートをインピーダンスアナライザ(Agilent社のE4991A)に入れて3点の平均誘電正接Dfを得た。
【0039】
6.ガラス転移温度試験
示差走査熱量計(DSC)によって分析され、温度上昇速度は20℃/分とした。
【0040】
7.分子量Mw
ゲルクロマトグラフィーGPCによって分析され、標準分子量を備えたポリスチレンによって補正された。