【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、上記課題を解決するために、本発明はジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を提供する。この共重合体のエポキシ樹脂は、2つの樹脂の優れた電気特性(低誘電率Dk及び低誘電正接Df)だけでなく、上記2つの樹脂よりも高い耐熱性を有する。それはジシクロペンタジエンフェノールエポキシ樹脂及び2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒドエポキシ樹脂の優れた電気特性、特に2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒドエポキシ樹脂の低誘電正接Dfを有するので、本発明によるジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエン−フェノールエポキシ樹脂よりも良好な電気特性を有する。また、その共重合体は、付加反応によってジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂が結合され、エピクロロヒドリンと反応されてジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂の共重合体のエポキシ樹脂を調製する。ジシクロペンタジエン−フェノールエポキシ樹脂及び2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒドエポキシ樹脂と比べて、本発明による共重合体のエポキシ樹脂は、より多い官能基数、より高い硬化及び架橋密度、より高い耐熱性、並びにより良好な機械特性を備えた反応性のエポキシ基を有する。本発明によるこの新しいエポキシ樹脂が積層板用の組成物に代えて用いられた場合、その硬化生成物は、低誘電率(Dk)、低誘電正接(Df)、良好な機械特性及び高いガラス転移温度Tg、並びに硬化性樹脂の硬化生成物の高耐熱性を有し、電子通信製品の高速伝送並びに電子装置の高速及び高周波信号伝送の要求を満たす銅被覆基板、プリント基板、半導体封止材に適している。
【0007】
本発明によるジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂の調製方法は、より多くの官能基数(6−12)を備えたジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂を合成するための低誘電率Dk及び低誘電正接Dfを備えたジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの縮合反応ステップと、ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を調製するために、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂をNaOH状況下で過度のエピクロロヒドリンと反応させるステップとを含む。ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂及びジシアンジアミドDicy、フェノール樹脂PN硬化剤、スチレン無水マレイン酸共重合体SMA、ベンゾオキサジン樹脂(Benzoxazine)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)及び活性エステル樹脂(活性エステル)などの一般的なエポキシ樹脂硬化剤によって調製されるエポキシ樹脂硬化生成物は、低誘電率(Dk)、低誘電正接(Df)、良好な耐熱性及び高いTgを有する。
【0008】
本発明は、化学構造式1で示される分子構造を備え
た新たなジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を提供する。
【化1】
式中、Xは1〜5の整数であり、Yは1〜5の整数である。Rは、水素、C
1−C
10アル
キル基、フェニル基、フェニルヒドロキシ基である。
この新しいジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体
のエポキシ樹脂は、2つのステップで調製される。ステップ1は、(a1)以下の化学構
造式2によって示されるジシクロペンタジエンフェノール樹脂を(a2)2,6−ジメチ
ルフェノールと、(a3)アルデヒド化合物による酸触媒の存在下で反応させ、ジシクロ
ペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂
を合成する。
【化2】
(a1)ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の1モルのフェノール性水酸基(フェノー
ル基OH)、(a2)2,6−ジメチルフェノール1〜2.5モル及び(a3)アルデヒ
ド化合物0.8〜1.5モルを反応させる。ステップ2は、ジシクロペンタジエンフェノ
ールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体を、NaOH状況下で過度のエピクロロヒ
ドリンと反応させて、ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの
共重合体のエポキシ樹脂を調製する。ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチ
ルフェノールの共重合体:エピクロロヒドリン(ECH)のグラム当量比は、1:1〜8
であり、ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体:N
aOHのグラム当量比は、1:0.95〜1.1である。
【0009】
本発明によるジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂及び2,6−ジメチルフェノール樹脂などの優れた電気特性(低誘電率Dk及び低誘電正接Df)を備えた2つの樹脂の反応結合及びエポキシ化によって特徴付けられ、それにより低誘電率Dk及び低吸水性などのジシクロペンタジエンフェノール樹脂の特徴、並びに低誘電率Dk及び低誘電正接Dfなどの2,6−ジメチルフェノールエポキシ樹脂の特徴を有する。したがって、この新しいジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエンフェノールエポキシ樹脂よりも良好な電気特性(低誘電率Dk及び低誘電正接Df)を有する。調製方法は、2つの樹脂を結合するための、酸触媒の存在下でのアルデヒド化合物を用いたジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの縮合及び脱水反応ステップ、すなわち、共重合体を調製するために架橋剤としてアルデヒド化合物を用いることによって、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂での複数の反応点を2,6−ジメチルフェノールと結合することを含む(次の式を参照)。
【化3】
共重合体構造でのフェノール性ヒドロキシル基(フェノール基OH)の官能基数fは、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のフェノール性ヒドロキシル基の数(n+2)と、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂に結合する2,6−ジメチルフェノールの数x+y+2に等しく、そしてx+y=nであり、すなわちf=2n+4である。ジシクロペンタジエンフェノール樹脂又は2,6−ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂と比べて、その共重合体はフェノール性ヒドロキシル基のより多くの官能基数を含有する。フェノール性ヒドロキシル基の官能基数は、アルデヒド化合物のグラム当量に直接的に比例する。アルデヒド化合物のグラム当量が大きくなる程、結合される架橋剤が多くなり、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体でのフェノール性ヒドロキシル基の官能基数が多くなる。フェノール性ヒドロキシル基の平均分子量Mn及びグラム当量150g/eqは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分析される。理論式によれば、官能基数=Mn÷フェノール性ヒドロキシル基のグラム当量であり、理論平均官能基数は6〜10である。エポキシ化は、より多くの官能基、硬化後のより良好な耐熱性及び高いガラス転移温度Tgを有するジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を合成するために、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と、2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール性ヒドロキシル基とに対して行なわれ、それによって低Dk及び低Df、良好な耐熱性及び高いTgを有する、予期されたジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を得る。
【0010】
本発明は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂の調製方法を更に提供する。その方法は次の2つのステップを含む。ステップ1は、(a1)ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の1モルのフェノール性ヒドロキシル基(フェノール基OH)と(a2)2,6−ジメチルフェノール1〜2.5モルを酸触媒に加え、水中に0.8〜1.5モルのアルデヒド化合物を溶解し、その溶液を上記反応混合物に滴下し、95〜115℃で1〜6時間に亘ってアルデヒド化合物の水溶液と反応させる。一般的な酸触媒は、メタンスルホン酸(MSA)、p-トルエンスルホン酸(PTSA)、シュウ酸及び塩酸などである。酸触媒の含有量は、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂の含有量の0.5〜5
重量%である。アルデヒド化合物には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサル、ベンズアルデヒドなどが含まれる。反応及び中和後に、2,6−ジメチルフェノールを除去し、溶媒を洗浄及び除去してジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂を得る。ステップ2は、ステップ1で調製されたジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のフェノール樹脂を、一般的なエポシキ化の条件下においてNaOHの存在下で過度のエピクロロヒドリンと反応させて、ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を調製する。ジシクロペンタジエンフェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体:エピクロロヒドリン(ECH)の
グラム当量比は、1:1〜8であり、ジシクロペンタジエン−フェノールと2,6−ジメチルフェノールの共重合体:NaOHの
グラム当量比は、1:0.95〜1.1である。エポシキ化のプレ反応及び主反応の温度は、50〜100℃である。エピクロロヒドリンを除去し、精製反応、脱塩、中和、洗浄、溶液濾過、及び溶媒除去後に、本発明のジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂を得る。
【0011】
本発明は、次の(1)〜(7)を含むガラス繊維基板用のエポキシ樹脂のワニスを更に開示する。(1)本発明のジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂。その含有量は、樹脂の30〜80%である(樹脂の総含有量は、要素1〜4の含有量の合計に等しい)。(2)多官能性若しくは二官能性、又は変性エポキシ樹脂。その含有量は樹脂の0〜25%であり、o−クレゾールフェノールアルデヒドエポキシ樹脂、フェノールアルデヒドエポキシ樹脂、ベンズアルデヒド−フェノール多官能性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノールエポキシ樹脂、ビスフェノールA型ホルムアルデヒドエポキシ樹脂、テトラフェノールエタンフェノールアルデヒドエポキシ樹脂、トリ−(ヒドロキシフェニル)メタンフェノールアルデヒドエポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、2,6−ジメチルフェノールのフェノールアルデヒドエポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びエポキシドとイソシアネートの共重合体から選択される。(3)硬化剤。その含有量は樹脂の15〜60%であり、フェノール樹脂、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ベンズアルデヒド−フェノールのフェノール樹脂、メラミン−フェノールのフェノール樹脂(メラミン−フェノールノボラック)、活性エステル硬化剤、スチレン無水マレイン酸共重合体(SMA)、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン(BPAベンゾオキサジン)、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン(BPFベンゾオキサジン)、ジシクロペンタジエン−フェノールベンゾオキサジン(Dicyclopentadiene-phenol Benzoxazine)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、及び上記硬化剤の2つ以上から選択される。(4)難燃剤。その含有量は樹脂の10〜40%であり、反応型難燃剤及び添加型難燃剤を含み、リン含有ビスフェノールA型フェノールアルデヒド硬化剤(リン含有量5〜10%)、ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン(リン含有量13.4%、窒素含有量8%)、及びテトラブロモビスフェノールA(臭素含有量58.5%)から選択される。(5)充填剤。その含有量は全ワニス要素の0〜45%であり(固体の状態で計算される。ワニスの全要素含有量は、要素1〜5の含有量の合計と等しい。)、二酸化ケイ素及び水酸化アルミニウムから選択される。(6)凝固促進剤。その含有量はエポキシ樹脂+硬化剤(すなわち、要素1〜3の含有量の合計)の0.01〜0.2%であり、ジメチルイミダゾール、ジフェニルイミダゾール、ジエチルテトラメチルイミダゾール及びベンジルジメチルアミンから選択される。(7)溶媒。その含有量は全ワニス要素の50〜70%であり、アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン、ジメトキシエタノール(MCS)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、及びメチルベンゼンから選択される。
【0012】
本発明のジシクロペンタジエンフェノール樹脂と2,6−ジメチルフェノールの共重合体のエポキシ樹脂により得られる硬化生成物及び熱硬化後のそのワニスは、例えばPCB用の絶縁材料、EMC半導体封止材及び高信頼性モータ/電子部品、並びに優れた電気特性及び耐熱性を必要とするコーティング及び接着などの様々な用途に用いられ得る。